(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6590432
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】プロジェクタ及び駆動制御方法
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20191007BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20191007BHJP
F21V 9/40 20180101ALI20191007BHJP
F21V 9/32 20180101ALI20191007BHJP
H04N 9/31 20060101ALI20191007BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20191007BHJP
【FI】
G03B21/14 A
F21S2/00 311
F21V9/40 200
F21V9/32
H04N9/31 500
F21Y115:30
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-536589(P2018-536589)
(86)(22)【出願日】2016年8月31日
(86)【国際出願番号】JP2016075521
(87)【国際公開番号】WO2018042560
(87)【国際公開日】20180308
【審査請求日】2018年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】300016765
【氏名又は名称】NECディスプレイソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】濱村 繁男
【審査官】
佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−14855(JP,A)
【文献】
特開2014−149513(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/021773(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0226306(US,A1)
【文献】
特開2013−11794(JP,A)
【文献】
特開2014−170749(JP,A)
【文献】
国際公開第2005/101090(WO,A1)
【文献】
特開2011−158726(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0073592(US,A1)
【文献】
特開2013−57850(JP,A)
【文献】
特開2012−129135(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/174559(WO,A1)
【文献】
特開2014−56074(JP,A)
【文献】
特開2013−164555(JP,A)
【文献】
特開2014−235323(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/081741(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K9/00−9/90
F21S2/00−45/70
F21V1/00−15/04
G03B21/00−21/10
21/12−21/13
21/134−21/30
33/00−33/16
H04N9/12−9/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源と、
前記光源からの光を励起光にして光を発光する、複数片の蛍光体が円弧状に固定された複数の蛍光体ホイールと、
前記複数の蛍光体ホイールで発光された光を合成する合成光学系と、
前記蛍光体ホイールが発光した光の量が最小値となるタイミングが前記複数の蛍光体ホイール毎にそれぞれ異なるように前記複数の蛍光体ホイールの回転を制御する蛍光体回転制御部と、
を有するプロジェクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクタにおいて、
前記蛍光体ホイールの基準位置をそれぞれ検出する検出部をさらに備え、
蛍光体回転制御部は、前記検出部で検出された前記複数の蛍光体ホイール毎の前記基準位置に基づき前記複数の蛍光体ホイールの回転を制御するプロジェクタ。
【請求項3】
請求項2に記載のプロジェクタにおいて、
前記蛍光体回転制御部は、
前記複数の蛍光体ホイール毎にずらす前記基準位置の角度をΦとしたとき、
Φ=360°/(蛍光体の片数×蛍光体ホイール数)
に設定するプロジェクタ。
【請求項4】
請求項2または3に記載のプロジェクタにおいて、
前記検出部は、
光センサと、前記光センサで読み取り可能な、前記蛍光体ホイールに固定されたインデックスとから成るプロジェクタ。
【請求項5】
複数の光源と、
前記光源からの光を励起光にして光を発光する、複数片の蛍光体が円弧状に固定された複数の蛍光体ホイールと、
前記複数の蛍光体ホイールで発光された光を合成する合成光学系と、
前記蛍光体ホイールに固定された蛍光体の継ぎ目に励起光が照射されるタイミングが前記複数の蛍光体ホイール毎にそれぞれ異なるように前記複数の蛍光体ホイールの回転を制御する蛍光体回転制御部と、
を有するプロジェクタ。
【請求項6】
複数の光源と、
前記光源からの光を励起光にして光を発光する、複数片の蛍光体が円弧状に固定された複数の蛍光体ホイールと、
前記複数の蛍光体ホイールで発光された光を合成する合成光学系と、
を有するプロジェクタにおける前記蛍光体ホイールの駆動制御方法であって、
前記蛍光体ホイールが発光した光の量が最小値となるタイミングが前記複数の蛍光体ホイール毎にそれぞれ異なるように前記複数の蛍光体ホイールの回転を制御する駆動制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の駆動制御方法において、
検出部で前記蛍光体ホイールの基準位置をそれぞれ検出し、
前記検出部で検出された前記複数の蛍光体ホイール毎の前記基準位置に基づき前記複数の蛍光体ホイールの回転を制御する駆動制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の駆動制御方法において、
前記複数の蛍光体ホイール毎にずらす前記基準位置の角度をΦとしたとき、
Φ=360°/(蛍光体の片数×蛍光体ホイール数)
に設定する駆動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の蛍光体ホイールを備えたプロジェクタ及び該蛍光体ホイールの駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のプロジェクタには、光源の長寿命化や低消費電力化を実現するために、レーザダイオードやLED(Light Emitting Diode)等の半導体発光素子を光源に用いる構成がある。そのようなプロジェクタでは、LEDやレーザダイオードが、通常、単一波長光しか出力できないため、光源で発光する光とは異なる波長光(色光)を、蛍光体を用いて生成する構成が知られている。
【0003】
図1は、蛍光体を備えるプロジェクタの一構成例を示すブロック図である。
図2は、
図1に示した蛍光体ホイールの一構成例を示す図であり、同図(a)は蛍光体の平面図、同図(b)は蛍光体ホイールの平面図である。
図3は
図1に示した蛍光体ホイールの発光量の一例を示すグラフであり、
図4は
図3に示した特性を有する2つの蛍光体ホイールの発光量及びその合成光量の一例を示すグラフである。
図1に示すプロジェクタは、励起光源101、ダイクロイックミラー102、蛍光体ホイール103、表示デバイス104、投射レンズ105、映像処理回路106、蛍光体回転制御部107、モーター駆動回路108及びモーター109を備える。
【0004】
励起光源101で発光された光は、ダイクロイックミラー102で反射され、蛍光体ホイール103上に固定された蛍光体に照射される。蛍光体は励起光源101からの光で励起し、該光とは異なる波長の光を発光する。ダイクロイックミラー102は、励起光源101で発光された光を反射し、蛍光体で発光された光を透過させる特性を有するように形成される。そのため、蛍光体で発光された光はダイクロイックミラー102を透過して表示デバイス104に照射される。表示デバイス104は、映像処理回路106から供給された映像信号にしたがって照射光を光変調することで、該照射光の色に対応する映像を形成する。表示デバイス104で形成された映像は投射レンズ105により不図示のスクリーン等へ拡大投射される。
【0005】
映像処理回路106は、映像信号を表示デバイス104へ出力すると共に、表示デバイス104の駆動周期を示す信号を蛍光体回転制御部107に出力する。蛍光体回転制御部107は、表示デバイス104の駆動周期を示す信号にしたがって、モーター駆動回路108によりモーター109の回転速度が一定となるように制御する。モーター109の回転軸には蛍光体ホイール103が固定され、蛍光体ホイール103は、例えば映像処理回路106から出力された表示デバイス104の駆動周期を示す信号と同期しながら回転する。
【0006】
蛍光体ホイール103は、
図2で示すように薄く切り出した蛍光体201が円板202上に接着・固定された構成である。このような蛍光体ホイール103をモーター109により回転させると、励起光源101からの光が蛍光体201の一点に連続して照射されることがない。そのため、励起光源101からの光によって蛍光体201が焼損するのを防止できる。また、蛍光体ホイール103を回転させることで蛍光体201が冷却されるため、蛍光体201を効率よく発光させることができる。
【0007】
しかしながら、
図2(a)及び(b)で示すように、蛍光体201は、例えば6片に分割されて、円板202上にその円周に沿って接着・固定されるため、隣接する蛍光体201間にそれぞれ継ぎ目203が存在する。したがって、蛍光体ホイール103で発光する光は、
図3のグラフで示すように周期的に明るさ(発光量)が低減する。この発光量の低減周期は、
図1に示した表示デバイス104の駆動周期と同期しているため、投射された映像でフリッカが発生する要因となる。
【0008】
さらに、近年のプロジェクタでは、より明るい投射光を実現するために、複数の蛍光体ホイール103を用意し、各蛍光体ホイール103で発光した光を合成し、合成後の光を表示デバイス104に照射する構成がある。そのような複数の蛍光体ホイール103を備える構成では、投射映像におけるフリッカがより増大してしまうことがある。
【0009】
例えば2つの蛍光体ホイール103を備えたプロジェクタにおいて、一方の蛍光体ホイールをa、他方の蛍光体ホイールをbとする。そして、
図4で示すように、蛍光体ホイールaの継ぎ目203以外の発光量をLa、継ぎ目203で低下する発光量をΔLaとし、蛍光体ホイールbの継ぎ目203以外の発光量をLb、継ぎ目203で低下する発光量をΔLbとし、蛍光体ホイールa,bを同期して回転させる場合を考える。
この場合、蛍光体ホイールa,bが、それぞれの継ぎ目203が一致(同期)するように回転すると、
図4の合成光量で示すように、2つの蛍光体ホイールa,bによる合成後の発光量はLa+Lbとなるが、継ぎ目203で低下する発光量もΔLa+ΔLbに増えてしまう。そのため、投射映像におけるフリッカがより増大してしまう。
なお、半導体発光素子を光源に用い、該光源で発光する光とは異なる波長光を、蛍光体を用いて生成する構成は特許文献1、2等にも記載されている。
特許文献1には、青色波長域のレーザ光を出射するレーザダイオードと、青色波長域のレーザ光を励起光にして該青色波長域のレーザ光とはわずかに波長が異なる青色波長域の光を発光する蛍光体とを備え、青色波長域のレーザ光と蛍光体で発光された青色波長域光とを合成することで、表示デバイスに照射する青色光の色度を改善することが記載されている。
特許文献2には、青色波長域のレーザ光を発光するレーザダイオードに供給する電流をPWM(Pulse Width Modulation)変調することで、該レーザダイオードによる青色波長域のレーザ光の発光量を調整することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2016−031402号公報
【特許文献2】特開2015−203741号公報
【発明の概要】
【0011】
本発明は、フリッカを低減させることができる、複数の蛍光体ホイールを備えたプロジェクタ及び該蛍光体ホイールの駆動制御方法を提供することを目的とする。
【0012】
上記目的を達成するため本発明のプロジェクタは、複数の光源と、
前記光源からの光を励起光にして光を発光する、複数片の蛍光体が円弧状に固定された複数の蛍光体ホイールと、
前記複数の蛍光体ホイールで発光された光を合成する合成光学系と、
前記蛍光体ホイールが発光した光の量が最小値となるタイミングが前記複数の蛍光体ホイール毎にそれぞれ異なるように前記複数の蛍光体ホイールの回転を制御する蛍光体回転制御部と、
を有する。
または、複数の光源と、
前記光源からの光を励起光にして光を発光する、複数片の蛍光体が円弧状に固定された複数の蛍光体ホイールと、
前記複数の蛍光体ホイールで発光された光を合成する合成光学系と、
前記蛍光体ホイールに固定された蛍光体の継ぎ目に励起光が照射されるタイミングが前記複数の蛍光体ホイール毎にそれぞれ異なるように前記複数の蛍光体ホイールの回転を制御する蛍光体回転制御部と、
を有する。
【0013】
一方、本発明の駆動制御方法は、複数の光源と、
前記光源からの光を励起光にして光を発光する、複数片の蛍光体が円弧状に固定された複数の蛍光体ホイールと、
前記複数の蛍光体ホイールで発光された光を合成する合成光学系と、
を有するプロジェクタにおける前記蛍光体ホイールの駆動制御方法であって、
前記蛍光体ホイールが発光した光の量が最小値となるタイミングが前記複数の蛍光体ホイール毎にそれぞれ異なるように前記複数の蛍光体ホイールの回転を制御する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、蛍光体を備えるプロジェクタの一構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した蛍光体ホイールの一構成例を示す図であり、同図(a)は蛍光体の平面図、同図(b)は蛍光体ホイールの平面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した蛍光体ホイールの発光量の一例を示すグラフである。
【
図4】
図4は、
図3に示した特性を有する2つの蛍光体ホイールの発光量及びその合成光量の一例を示すグラフである。
【
図5】
図5は、本発明のプロジェクタの一構成例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、
図5に示した蛍光体ホイールの一構成例を示す図であり、同図(a)は蛍光体の固定面を示す平面図、同図(b)は
図5に示したインデックスの形成面を示す平面図である。
【
図7】
図7は、回転タイミング信号と光センサによるインデックスの検出タイミングの関係例を示すグラフである。
【
図8】
図8は、本実施形態のプロジェクタの2つの蛍光体ホイールの発光量及びその合成光量の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明について図面を参照して説明する。
図5は、本発明のプロジェクタの一構成例を示すブロック図である。
図6は、
図5に示した蛍光体ホイールの一構成例を示す図であり、同図(a)は蛍光体の固定面を示す平面図、同図(b)は
図5に示したインデックスの形成面を示す平面図である。
図5で示すように、本発明のプロジェクタは、励起光源510及び520、ダイクロイックミラー530及び531、反射ミラー534、偏光変換素子535及び536、偏光ビームスプリッター501、蛍光体ホイール511及び521、表示デバイス502、投射レンズ503、映像処理回路504、蛍光体回転制御部505、モーター駆動回路512及び522、モーター515及び525、並びに光センサ514及び524を備える。
図5に示すプロジェクタは、2つの励起光源510及び520、並びに蛍光体ホイール511及び521を備え、蛍光体ホイール511及び521で発光された光を合成して表示デバイス502に照射する構成である。
【0016】
励起光源510で発光された光は、ダイクロイックミラー530で反射され、蛍光体ホイール511上に固定された蛍光体に照射される。同様に、励起光源520で発光された光は、ダイクロイックミラー531で反射され、蛍光体ホイール521上に固定された蛍光体に照射される。
【0017】
蛍光体ホイール511上の蛍光体は励起光源510からの光で励起し、該光とは異なる波長の光を発光する。同様に、蛍光体ホイール521上の蛍光体は励起光源520からの光で励起し、該光とは異なる波長の光を発光する。蛍光体ホイール511及び521の蛍光体は、それぞれ同じ波長域の光を発光するものとする。
蛍光体ホイール511上の蛍光体で発光された光は、ダイクロイックミラー530を透過して偏光変換素子535に入射される。一方、蛍光体ホイール521上の蛍光体で発光された光は、ダイクロイックミラー531を透過して反射ミラー534に照射され、反射ミラー534で反射されて偏光変換素子536に入射される。
【0018】
偏光変換素子535は、ダイクロイックミラー530から入射された光を直交する2つの偏光のいずれか一方に変換して出力する。また、偏光変換素子536は、ダイクロイックミラー531から入射された光を、直交する2つの偏光のうち、偏光変換素子535とは異なる偏光に変換して出力する。
偏光変換素子535及び偏光変換素子536から出力された偏光は、偏光ビームスプリッター501で合成されて表示デバイス502に照射される。
図5に示すプロジェクタでは、ダイクロイックミラー530及び531、反射ミラー534、偏光変換素子535及び536、並びに偏光ビームスプリッター501により2つの蛍光体ホイール511及び521で発光された光を合成する合成光学系が形成される。
【0019】
表示デバイス502は、映像処理回路504から供給された映像信号にしたがって照射光を光変調することで、該照射光の色に対応する映像を形成する。表示デバイス502で形成された映像は投射レンズ503により不図示のスクリーン等へ拡大投射される。
励起光源510及び520には、例えば青色波長域のレーザ光を出射するレーザダイオードが用いられる。蛍光体には、例えば青色波長域光を励起光にして黄色波長域光を発光するものが用いられる。表示デバイス502には、DMD(Digital Micro-mirror Device:登録商標)や液晶パネル等が用いられる。
なお、
図5は、偏光変換素子535及び536、並びに偏光ビームスプリッター501を用いて蛍光体ホイール511及び512で発光した光を合成する例を示しているが、光の合成方法は
図5に示す構成に限定されるものではない。例えば、ダイクロイックミラー530及び531を透過した光を、それぞれ反射ミラーを用いて合成プリズムへ入射させ、該合成プリズムにより同一方向へ出射させることで合成することも可能である。
【0020】
図6(a)及び(b)で示すように、蛍光体ホイール511及び521は、同じ大きさの6片の蛍光体602が円板603の一方の面上に接着・固定され、任意の1つの蛍光体の継ぎ目604を基準位置として示す、光センサ514及び524で読み取り可能なインデックス601が他方の面上に配置された構成である。
図6に示すインデックス601は、
図5に示した蛍光体ホイール511上のインデックス513及び蛍光体ホイール521上のインデックス523に相当する。本実施形態では、光センサ514及び524、並びにインデックス601により、蛍光体ホイール511及び521の基準位置を検出する検出部を構成する。
【0021】
図5で示すように、蛍光体ホイール511上のインデックス513は、光センサ514によって検出され、その検出信号がモーター駆動回路512に入力される。モーター駆動回路512は、モーター515を駆動することで蛍光体ホイール511を回転させる。同様に、蛍光体ホイール521上のインデックス523は、光センサ524によって検出され、その検出信号がモーター駆動回路522に入力される。モーター駆動回路522は、モーター525を駆動することで蛍光体ホイール521を回転させる。
【0022】
なお、蛍光体ホイール511及び521の回転動作は、インデックス513及び523を用いて制御する構成に限定されるものではない。例えば、蛍光体ホイール511及び521からの発光量を検出し、該発光量の低減周期と同期するように、蛍光体ホイール511及び521の回転を制御してもよい。その場合、発光量が低減する位置を基準位置として用いればよい。蛍光体ホイール511及び521上に複数の蛍光体片が接着・固定されている場合、蛍光体ホイール511及び521は、該蛍光体片の数に応じて回転速度を制御してもよい。例えば、
図2(b)及び
図6(a)で示したように、蛍光体ホイール511及び521上に6片の蛍光体が接着・固定されている場合、蛍光体ホイール511及び521の回転動作は、発光量の低減周期の6倍の周期と同期するように制御してもよい。
【0023】
映像処理回路504は、映像信号を表示デバイス502へ出力すると共に、表示デバイス502の駆動周期を示す信号を蛍光体回転制御部505に出力する。表示デバイス502の駆動周期を示す信号には、例えば映像同期信号(例えば、垂直同期信号)を用いればよい。蛍光体回転制御部505は、表示デバイス502の駆動周期を示す信号にしたがってモーター駆動回路512によりモーター515の回転速度が一定となるように制御する。同様に、蛍光体回転制御部505は、表示デバイス502の駆動周期を示す信号にしたがってモーター駆動回路522によりモーター525の回転速度が一定となるように制御する。また、蛍光体回転制御部505は、モーター駆動回路512及び522により蛍光体ホイール511及び521が同じ回転速度となるように制御する。
【0024】
このとき、蛍光体回転制御部505は、映像処理回路504から出力された表示デバイス502の駆動周期を示す信号から、表示デバイス502の駆動周期に対する蛍光体ホイール511及び521の回転数(回転速度)を計算する。
また、蛍光体回転制御部505は、計算した回転速度でモーター515及び525を回転させるための回転タイミング信号をモーター駆動回路512及び522に出力する。回転タイミング信号は、例えば所定の周期のパルス列から成る信号であり、モーター駆動回路512及び522はパルスの1周期でモーター515及び525が1回転するように駆動する。すなわち、モーター駆動回路512は、回転タイミング信号のパルス列と、光センサ514で検出されたインデックス513の位置を示す信号とが同期するようにモーター515の回転速度を制御する。同様に、モーター駆動回路522は、回転タイミング信号のパルス列と、光センサ524で検出されたインデックス523の位置を示す信号とが同期するようにモーター525の回転速度を制御する。
【0025】
また、本実施形態の蛍光体回転制御部505は、モーター駆動回路512及び522へ出力する回転タイミング信号をそれぞれ任意の角度(位相)だけずらして出力できる機能を備えるものとする。蛍光体回転制御部505は、例えばプログラムにしたがって処理を実行するCPU(Central Processing Unit)及びメモリを備えた情報処理装置(コンピュータ)で実現できる。
【0026】
図7は回転タイミング信号と光センサによるインデックスの検出タイミングの関係例を示すグラフであり、
図8は本実施形態のプロジェクタの2つの蛍光体ホイールの発光量及びその合成光量の一例を示すグラフである。
図7で示すように、モーター駆動回路512及び522は、光センサ514及び524で検出されたインデックス513及び523の位置を示す信号と、蛍光体回転制御部505から出力された回転タイミング信号とが一定の位相関係となるように、モーター515及び525の回転速度を制御する。
【0027】
本実施形態では、
図6で示したように蛍光体ホイール511及び521上に同じ大きさの6片の蛍光体が円弧状に接着・固定されているため、1片の蛍光体で形成される弧の中心角はそれぞれ60度となる。したがって、蛍光体回転制御部505は、
図7で示すようにモーター駆動回路512及び522へ出力する回転タイミング信号に、互いに30度の位相差を有して出力する。
そのため、蛍光体ホイール511及び521もそれぞれのインデックス(基準位置)513及び523が30度ずれて回転する。すなわち、蛍光体ホイール511及び521は互いの蛍光体602の継ぎ目604が30度ずれて回転する。この場合、蛍光体602の継ぎ目604により発光量が低下する部位は、
図8で示すようになる。
【0028】
ここで、蛍光体ホイール511の継ぎ目604以外の部位で発光している光量をLa、継ぎ目604で低下する光量をΔLaとし、蛍光体ホイール512の継ぎ目604以外の部分で発光している光量をLbとし、継ぎ目604で低下する光量をΔLbと定義する。
このとき、2つの蛍光体ホイール511及び512で発光する光を合成すると、
図8の合成光量で示すように、継ぎ目604以外の部位における光量はLa+Lbとなるが、継ぎ目604による光量低下はΔLaまたはΔLbとなる。この場合、光量低下の発生周期は、1つの蛍光体ホイールを備える背景技術のプロジェクタと比べて2倍となる。そのため、本実施形態のプロジェクタは、1つの蛍光体ホイールを備える背景技術のプロジェクタよりも投射映像におけるフリッカが人の目に感知し難くなる。
【0029】
さらに、合成光量の変化の割合はΔLa/(La+Lb)またはΔLb/(La+Lb)となり、LaとLb、並びにΔLaとΔLbがそれぞれ等しいとすると、合成光量の変化の割合は1つの蛍光体ホイールを備える背景技術のプロジェクタと比べて1/2となる。そのため、本実施形態のプロジェクタは、投射映像におけるフリッカをより低減することができる。
すなわち、蛍光体ホイールに固定された蛍光体の継ぎ目(蛍光体の片の端部)に励起光が照射されるタイミングが複数の蛍光体ホイール毎にそれぞれ異なるように複数の蛍光体ホイールの回転を制御するので、投射映像におけるフリッカをより低減することができる。
換言すると、蛍光体ホイールが発光した光の量が最小値となるタイミングが複数の蛍光体ホイール毎にそれぞれ異なるように複数の蛍光体ホイールの回転を制御するので、投射映像におけるフリッカをより低減することができる。
【0030】
なお、本実施形態では、蛍光体ホイール511及び521上に固定する蛍光体を6片とする例を示したが、蛍光体ホイール511及び521上の蛍光体数はいくつでもよく、また蛍光体ホイール511及び521の数も要求される光量に応じてさらに増やしてもよい。
その場合、蛍光体ホイール毎にずらす基準位置の角度Φは次の式で求めればよい。
Φ=360°/(蛍光体の片数×蛍光体ホイール数)
なお、上式で示した位相差を有する回転タイミング信号で複数の蛍光体ホイールを駆動するのが理想ではあるが、蛍光体ホイール数が増えると、合成光量の変化の割合も小さくなる。したがって、蛍光体602の継ぎ目604に起因する光量の低減位置は等間隔となるように設定する必要はなく、各蛍光体ホイールの継ぎ目604が互いに同期しないようにずらすだけでもフリッカの低減効果が期待できる。
【0031】
また、本実施形態では、インデックス513及び523を、蛍光体602を配置しない蛍光体ホイール511及び521の他方の面に取り付ける例を示したが、インデックス513及び523は、例えばモーター515及び525の回転軸等、光センサ514及び524で読み取り可能であればどこに取り付けてもよい。
【0032】
さらに、本実施形態では、インデックス513及び523、並びに光センサ514及び524を用いて蛍光体ホイール511及び521の基準位置を検出する例を示したが、蛍光体ホイール511及び521の基準位置は、インデックス及び光センサを用いた検出方法に限定されるものではない。蛍光体ホイール511及び521の基準位置は、例えばホール素子を用いてモーター515及び525が備える磁石の磁束を測定することで検出してもよい。
【0033】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されものではない。本願発明の構成や詳細は本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更が可能である。