(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6590437
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】半導体電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/00 20070101AFI20191007BHJP
【FI】
H02M1/00 H
H02M1/00 L
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-158460(P2013-158460)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-29397(P2015-29397A)
(43)【公開日】2015年2月12日
【審査請求日】2016年7月13日
【審判番号】不服2017-18360(P2017-18360/J1)
【審判請求日】2017年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091281
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】村津 宏樹
【合議体】
【審判長】
國分 直樹
【審判官】
山田 正文
【審判官】
山澤 宏
(56)【参考文献】
【文献】
実開平4−121395(JP,U)
【文献】
特開2009−153257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の正負極間に接続された上下アームが、互いに並列接続された複数の半導体スイッチにより構成され、各アームの複数の半導体スイッチを同一の駆動回路によりそれぞれ同時にオン・オフさせる半導体電力変換装置であって、前記駆動回路が、前記半導体スイッチの短絡を検出する手段を備えた半導体電力変換装置において、
前記駆動回路と、前記複数の半導体スイッチの制御信号入力端子及び電流出力端子と、の間の信号線に、スイッチ間電流抑制部を設け、
前記上下アームのうち一方のアームの少なくとも1個の半導体スイッチが短絡故障し、かつ、前記他方のアームの複数の半導体スイッチが同時にオンした時に、
前記スイッチ間電流抑制部により、前記他方のアームの複数の半導体スイッチの前記電流出力端子間に流れるスイッチ間電流を抑制することで、前記一方のアームの短絡故障した半導体スイッチに近い前記他方のアームの半導体スイッチの前記制御信号入力端子の電圧の上昇を抑制する半導体電力変換装置であり、
前記スイッチ間電流抑制部を定電圧ダイオードにより構成し、この定電圧ダイオードを前記複数の半導体スイッチの前記制御信号入力端子と前記電流出力端子との間にそれぞれ接続することにより、前記定電圧ダイオードが、前記複数の半導体スイッチの前記制御信号入力端子と前記電流出力端子との間の電圧をそれぞれ定電圧に保って前記他方のアームの複数の半導体スイッチの前記電流出力端子間に流れるスイッチ間電流を抑制することを特徴とする半導体電力変換装置。
【請求項2】
直流電源の正負極間に接続された上下アームが、互いに並列接続された複数の半導体スイッチにより構成され、各アームの複数の半導体スイッチを同一の駆動回路によりそれぞれ同時にオン・オフさせる半導体電力変換装置であって、前記駆動回路が、前記半導体スイッチの短絡を検出する手段を備えた半導体電力変換装置において、
前記駆動回路と、前記複数の半導体スイッチの制御信号入力端子及び電流出力端子と、の間の信号線に、スイッチ間電流抑制部を設け、
前記上下アームのうち一方のアームの少なくとも1個の半導体スイッチが短絡故障し、かつ、前記他方のアームの複数の半導体スイッチが同時にオンした時に、
前記スイッチ間電流抑制部により、前記他方のアームの複数の半導体スイッチの前記電流出力端子間に流れるスイッチ間電流を抑制することで、前記一方のアームの短絡故障した半導体スイッチに近い前記他方のアームの半導体スイッチの前記制御信号入力端子の電圧の上昇を抑制する半導体電力変換装置であり、
前記スイッチ間電流抑制部を抵抗により構成し、
前記抵抗を、互いに並列接続された前記複数の半導体スイッチの前記電流出力端子の相互間に接続したことを特徴とする半導体電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体スイッチを短絡故障から保護する機能を備えた半導体電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体電力変換装置において、アーム短絡時の半導体スイッチの保護回路としては、半導体スイッチに直列にヒューズを接続し、短絡電流をヒューズの溶断によって遮断するものが一般的であった。しかしながら、最近では、装置の低インダクタンス化や部品点数の削減のために、ヒューズを用いずに半導体スイッチを保護する回路が種々提供されている。
【0003】
例えば、
図4は、特許文献1に記載された半導体スイッチ(IGBT)の保護回路を概念的に示したブロック図、
図5(a)は
図4の通常のスイッチング時における動作波形、
図5(b)は
図4における半導体スイッチの短絡時の動作波形である。
【0004】
図4において、100は、半導体スイッチTに対するゲート信号を生成する駆動回路、200は、半導体スイッチTを有する電力変換装置の主回路である。
駆動回路100は、クランプダイオード等により半導体スイッチTのコレクタ−エミッタ間電圧V
ceを監視するV
ce検出回路101を備えている。
図5(b)に示すように素子点弧オン指令が出力されている時に例えば
他方のアームの半導体スイッ
チに短絡が発生すると、V
ceが通常時のオン状態における低い電圧レベルから高い電圧レベルに移行することに基づいて、
他方のアームの半導体スイッ
チの短絡を検出する。なお、
図6は、IGBTのコレクタ−エミッタ間電圧V
ceとエミッタ電流I
eとの関係を示す特性図である。
【0005】
図4の従来技術では、「素子点弧オン指令」と「V
ceが第1のしきい値V
th1以上であること」とのAND条件により、まず、第1の短絡検出回路102が短絡を検出する。
ここで、
図5(a)に示すように、V
ceに基づく短絡の検出にはある一定時間T
th以上、検出動作をマスクする必要があり、フィルタ回路103がその機能を果たしている。このマスク機能は、半導体スイッチの素子特性や回路インピーダンスに起因して、通常のスイッチング時に、素子点弧オン指令からV
ceが一定の電圧レベル以下になるまでに一定の時間を要するので、短絡の誤検出を防止するために必要とされている。
【0006】
図4の従来技術では、
図5(b)に示すように、第1の短絡検出回路102の出力をフィルタ回路103に入力してマスク期間T
th以上の時間遅れを持たせ、その出力を第2の短絡検出回路104に入力する。そして、マスク期間T
thの経過後も短絡検出状態が継続しており、フィルタ回路103の出力電圧が第2のしきい値V
th2を超えた場合を真の短絡故障と判定して第2の短絡検出回路104が短絡検出信号を出力する。この短絡検出信号により、オフ回路105が素子点弧オフ指令を出力して半導体スイッチTをオフし
、半導体スイッチTを保護している。
【0007】
さて、電力変換装置の容量を増加させる手段の一つとして、
図7に示すように、複数の半導体スイッチを並列に接続して一つのアームを構成する方法が挙げられる。
図7は、電力変換器(インバータ)の一相分の上下アームを、互いに並列接続された半導体スイッチT
11,T
12及びT
21,T
22によりそれぞれ構成した例であり、前記同様に100は駆動回路、200は主回路を示している。なお、300は直流電源、Pは直流電源300の正極、Nは負極、Uは交流出力端子である。
【0008】
図7に示した主回路200において、一アーム内で並列接続された2個の半導体スイッチのうちの一つに短絡故障が発生した場合の動作を、
図8に基づいて説明する。
図8において、例えば下アームの半導体スイッチT
21が短絡故障したときに上アームの半導体スイッチT
11,T
12をオンすると、上下アームが短絡した状態となり、半導体スイッチT
11,T
12,T
21に直流電源300からの短絡電流I
11,I
12,I
21がそれぞれ流れる。このうち、短絡電流I
11,I
12の大小関係は、半導体スイッチT
11,T
12に共通接続されている主回路導体のインダクタンスL
12(流れる電流をI
3とする)によって、I
11>I
12となる。つまり、上アームの半導体スイッチT
11,T
12のうち、短絡故障した下アームの半導体スイッチT
21に至るまでのインダクタンスが小さいスイッチ(この例ではT
11)に大きな短絡電流が流れ、上記インダクタンスが大きいスイッチ(この例ではT
12)には小さな短絡電流が流れることになる。
【0009】
上述した短絡電流I
11,I
12の差が大きいと、駆動回路100からの配線を通じて半導体スイッチT
11,T
12のエミッタ間に電流I
4が流れ、その結果、駆動回路100との間の配線インダクタンスL
11とI
4とによる電圧降下が生じるので、半導体スイッチT
11のゲート電圧が相対的に上昇する。
IGBT等の半導体スイッチはゲート電圧が高いほど大きな短絡電流を流す性質があるため、半導体スイッチT
11,T
12のうち大きな短絡電流が流れている半導体スイッチT
11では、ゲート電圧上昇→短絡電流I
11が増加→エミッタ間電流I
4が増加→ゲート電圧上昇という正帰還になり、前述したマスク期間T
th中に素子の短絡耐量を超える短絡電流が流れると半導体スイッチT
11が破損することとなる。
上記の現象は、主回路導体のインダクタンスL
12が大きいほど、また、同一アーム内の半導体スイッチの並列接続数が多いほど発生しやすくなる。
【0010】
一方、特許文献2では、複数の半導体スイッチを並列接続して使用する場合のアーム保護の高速化について言及しているが、この従来技術でも、マスク期間T
th中に素子が破損する現象を完全に防止することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−153257号公報(段落[0022]〜[0027]、
図1,
図2等)
【特許文献2】特開2012−34528号公報(段落[0021]〜[0024]、
図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、特許文献1,2等の従来技術では、一つのアームが複数の半導体スイッチを並列接続して構成される電力変換装置において、短絡発生時に、並列接続された複数の半導体スイッチの間に流れる電流に起因して短絡電流が増大し、結果的に破損してしまう現象を完全に防止することができなかった。
そこで、本発明の解決課題は、半導体スイッチの短絡故障に伴う破損や装置全体への被害の波及を確実に防止するようにした半導体電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、直流電源の正負極間に接続された上下アームが、互いに並列接続された複数の半導体スイッチにより構成され、各アームの複数の半導体スイッチを同一の駆動回路によりそれぞれ同時にオン・オフさせる半導体電力変換装置であって、前記駆動回路が、前記半導体スイッチの短絡を検出する手段を備えた半導体電力変換装置において、
前記駆動回路と、前記複数の半導体スイッチの制御信号入力端子及び電流出力端子と、の間の信号線に、スイッチ間電流抑制部を設け、
前記上下アームのうち一方のアームの少なくとも1個の半導体スイッチが短絡故障し、かつ、前記他方のアームの複数の半導体スイッチが同時にオンした時に、
前記スイッチ間電流抑制部により、前記他方のアームの複数の半導体スイッチの前記電流出力端子間に流れるスイッチ間電流を抑制することで、前記一方のアームの短絡故障した半導体スイッチに近い前記他方のアームの半導体スイッチの前記制御信号入力端子の電圧の上昇を抑制する
半導体電力変換装置であり、
前記スイッチ間電流抑制部を定電圧ダイオードにより構成し、この定電圧ダイオードを前記複数の半導体スイッチの前記制御信号入力端子と前記電流出力端子との間にそれぞれ接続することにより、前記定電圧ダイオードが、前記複数の半導体スイッチの前記制御信号入力端子と前記電流出力端子との間の電圧をそれぞれ定電圧に保って前記他方のアームの複数の半導体スイッチの前記電流出力端子間に流れるスイッチ間電流を抑制するものである。
【0014】
請求項2に係る発明は、
直流電源の正負極間に接続された上下アームが、互いに並列接続された複数の半導体スイッチにより構成され、各アームの複数の半導体スイッチを同一の駆動回路によりそれぞれ同時にオン・オフさせる半導体電力変換装置であって、前記駆動回路が、前記半導体スイッチの短絡を検出する手段を備えた半導体電力変換装置において、
前記駆動回路と、前記複数の半導体スイッチの制御信号入力端子及び電流出力端子と、の間の信号線に、スイッチ間電流抑制部を設け、
前記上下アームのうち一方のアームの少なくとも1個の半導体スイッチが短絡故障し、かつ、前記他方のアームの複数の半導体スイッチが同時にオンした時に、
前記スイッチ間電流抑制部により、前記他方のアームの複数の半導体スイッチの前記電流出力端子間に流れるスイッチ間電流を抑制することで、前記一方のアームの短絡故障した半導体スイッチに近い前記他方のアームの半導体スイッチの前記制御信号入力端子の電圧の上昇を抑制する半導体電力変換装置であり、
前記スイッチ間電流抑制部を抵抗により構成し、
前記抵抗を、互いに並列接続された前記複数の半導体スイッチの前記電流出力端子の相互間に接続したものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば
、定電圧ダイオード、抵抗等からなるスイッチ間電流抑制部を設けたため、一方のアームの半導体スイッチが短絡し、かつ、他方のアームの複数の半導体スイッチが同時にオンして上下アームが短絡状態となった際に、前記複数の半導体スイッチの電流出力端子の間にスイッチ間電流が流れるのを抑制することができる。これにより、上記のスイッチ間電流による電圧降下が、半導体スイッチに対してその短絡電流を増大させる方向に働くのを防ぎ、過大な短絡電流による半導体スイッチの破損や電力変換装置全体に被害が波及するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の
参考形態に係る主要部の回路図である。
【
図2】本発明の第
1実施形態に係る主要部の回路図である。
【
図3】本発明の第
2実施形態に係る主要部の回路図である。
【
図4】特許文献1に記載された従来技術を概念的に示したブロック図である。
【
図6】IGBTのコレクタエミッタ間電圧とエミッタ電流との関係を示す特性図である。
【
図7】電力変換器の一相分の主回路、駆動回路等を示した回路図である。
【
図8】電力変換器の一相分の主回路、駆動回路等を示した回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の
参考形態を示す主要部の回路図であり、電力変換装置の一相分の主回路200Aの主要部を駆動回路100と共に示したものである。なお、以下の実施形態も、半導体スイッチとしてIGBTを用いた場合につき説明する。
図1(a)において、主回路200Aの上アームを構成する半導体スイッチT
11,T
12は、直流電源(図示せず)の正極Pと交流出力端子Uとの間に互いに並列に接続されている。図示されていないが、下アームを構成する半導体スイッチ(
図7,
図8におけるT
21,T
22)は、直流電源の負極Nと交流出力端子Uとの間に互いに並列に接続されている。図中の202は、交流出力端子Uに接続された半導体スイッチT
11,T
12同士の共通接続点であり、203は、主回路導体である
【0020】
半導体スイッチT
11,T
12を同時にオン・オフさせるための駆動回路100と、半導体スイッチT
11,T
12のゲート(制御信号入力端子)及びエミッタ(電流出力端子)との間の信号線210g,210eには、スイッチ間電流抑制部としての、コモンモードコア等のコモンモード抑制素子201Aがそれぞれ設けられている。なお、
図1(b)に示すように、コモンモード抑制素子201Aは、そのインダクタンス成分が信号線210g,210eに直列に接続される。
ここで、コモンモード抑制素子201Aとしては、コモンモードチョークコイルを用いても良い。
【0021】
図示されていないが、駆動回路100は、
図8と同様に、半導体スイッチのコレクタ−エミッタ間電圧V
ceを監視してこの電圧V
ceが所定のしきい値を超えた場合に短絡を検出
する。また、下アームを構成する半導体スイッチも、この駆動回路から素子オン指令及び素子オフ指令が与えられるようになっている。
【0022】
この
参考態において、下アームの一方の半導体スイッチが短絡故障した状態で上アームの半導体スイッチT
11,T
12が同時にオンすると、上下アームが短絡する。この場合、
図8により説明したように、主回路導体203のインダクタンスに起因して半導体スイッチT
11,T
12を流れる短絡電流I
11,I
12に偏りが生じるので、半導体スイッチT
11,T
12のエミッタ間電流(スイッチ間電流)I
4が流れようとするが、コモンモード抑制素子201Aの作用により、上記エミッタ間電流I
4の通流が抑制される。
このため、短絡電流が多く流れている方の半導体スイッチ、例えばスイッチT
11のゲート電圧の上昇も抑制されるので、短絡電流が増大し続けるのを防止することができる。
【0023】
ここで、通常の電力変換装置では、EMC対策や素子の誤点弧防止のためにコモンモードコア等を備えている場合が多いため、主回路導体や配線のインダクタンスに応じて短絡時のエミッタ間電流I
4を抑制するのに効果的な特性のコモンモード抑制素子を選定すれば、部品点数の増加を最小限に抑えつつ、半導体スイッチひいては電力変換装置を保護することができる。
【0024】
次に、
図2は、本発明の第
1実施形態を示す主要部の回路図であり、
図1と同一の回路部品については同一の参照符号を付してある。
第
1実施形態では、
図2(a)に示すように、駆動回路100と、主回路200Bの半導体スイッチT
11,T
12のゲート、エミッタとの間の信号線210g,210eに、スイッチ間電流抑制部としての定電圧ダイオード201Bがそれぞれ設けられている。この定電圧ダイオード201Bは、
図2(b)に示すように2個の定電圧ダイオード素子を逆直列に接続して構成されており、半導体スイッチT
11,T
12のゲート−エミッタ間電圧を定電圧に保つように接続することが必要である。
【0025】
この第
1実施形態においては、半導体スイッチの短絡時にエミッタ間電流I
4が流れて駆動回路100と半導体スイッチT
11またはT
12のエミッタとの間の配線に電圧降下が発生したとしても、定電圧ダイオード201Bにより各スイッチのゲート−エミッタ間電圧を一定に保つことができる。従って、短絡電流が多く流れている方の半導体スイッチ、例えばスイッチT
11の短絡電流が増大し続けるのを防止することができ、
図1の参考形態と同一の原理により、上下アームの半導体スイッチの破損を防止することができる。
【0026】
図3は、本発明の第
2実施形態を示す主要部の回路図であり、
図1,
図2と同一の回路部品については同一の参照符号を付してある。
第
2実施形態では、
図3(a),(b)に示すように、駆動回路100と、主回路200Cの半導体スイッチT
11,T
12のエミッタとの間の信号線210eに、スイッチ間電流抑制部としてのエミッタ抵抗201Cが直列に接続されている。
【0027】
この第
2実施形態においては、下アームの半導体スイッチの短絡時に、上アームの半導体スイッチT
11,T
12間に流れるエミッタ間電流I
4をエミッタ抵抗201Cが制限することにより、例えば半導体スイッチT
11のゲート電圧の上昇を防ぐことができる。
よって、
上述した各形態と同様の原理により、短絡電流が増大し続けるのを防止して上下アームの半導体スイッチの破損を防止することができる。
なお、この実施形態では、半導体スイッチT
11,T
12の通常のスイッチング動作時にもエミッタ抵抗201Cにより駆動信号に遅れが生じるので、スイッチング特性の変化に注意することが必要である。
【0028】
上述した各形態では、上アームの半導体スイッチT
11,T
12の信号線210g,210eにスイッチ間電流抑制部(コモンモード抑制素子201Aまたは定電圧ダイオード201Bまたはエミッタ抵抗201C)を設けた場合について説明したが、下アームの2個の半導体スイッチと駆動回路100との間の信号線にも、同様にスイッチ間電流抑制部を設けることができる。これにより、始めに上アームの半導体スイッチが短絡した場合でも、下アームの半導体スイッチの短絡電流の増大を防止することが可能である。
なお、各アームにおける半導体スイッチの並列接続数が2個に限定されないのは言うまでもなく、並列接続されている半導体スイッチごとにスイッチ間電流抑制部をそれぞれ設ければ良い。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、IGBTばかりでなく、パワーバイポーラトランジスタやMOSFET等の半導体スイッチを複数、並列接続して各アームが構成される電力変換装置にも利用可能である。
【符号の説明】
【0030】
100:駆動回路
200A,200B,200C:主回路
201A:コモンモード抑制素子(スイッチ間電流抑制部)
201B:定電圧ダイオード(スイッチ間電流抑制部)
201C:エミッタ抵抗(スイッチ間電流抑制部)
202:共通接続端子
203:主回路導体
210g,210e:信号線
300:直流電源
T
11,T
12,T
21,T
22:半導体スイッチ
P:正極
N:負極
U:交流出力端子