(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記環状突出部分と後側ストッパとの間の距離は、前記光学素子の厚さ寸法よりも長く、前記環状突出部と前記後側ストッパとの間で前記光学素子が軸線回りに回転可能に保持されることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用フィルター枠。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照して本発明を適用したカメラ用フィルターユニットを説明する。
【0015】
(参考例1)
図1は参考例1のカメラ用フィルターユニットの斜視図である。
図2(a)は
図1のカメラ用フィルターユニットの縦断面図であり、
図2(b)はその部分拡大断面図である。
図1および
図2(a)に示すように、本例のカメラ用フィルターユニット1は、円盤形状の偏光フィルター(光学素子)2と、偏光フィルター2を同軸に保持する内側リング3と、内側リング3を外周側から同軸に保持する前側リング4と、前側リング4を同軸に保持する後側リング5を備える。前側リング4は内側リング3を介して偏光フィルター2を保持している。後側リング5は前側リング4を軸線L回りに回転可能に保持している。内側リング3、前側リング4および後側リング5はカメラ用フィルター枠10を構成している。以下の説明では、内側リング3、前側リング4、後側リング5の軸線Lに沿った方向をカメラ用フィルターユニット1の前後方向Xとする。また、前後方向Xにおいて、前側リング4が位置する側を前側(前方X1)とし、後側リング5の位置する側を後側(後方X2)とする。
【0016】
前側リング4は内側リング3をその前端から露出しない位置に保持している。前側リング4の内周面には、その前端縁から後方X2に向かって一定幅の領域に雌ネジ11が設け
られている。雌ネジ11において内側リング3よりも前側に露出している露出部分はカメラ用フィルターユニット1の前側にキャップやフードを装着するための前側装着部である。後側リング5の外周面には、その後端縁から前方X1に向かって一定幅の領域に雄ネジ12が設けられている。雄ネジ12はカメラ用フィルターユニット1を撮像レンズのレンズ鏡筒やカメラに装着するための後側装着部である。内側リング3、前側リング4および後側リング5はいずれも金属基材から形成されている。本例では、内側リング3、前側リング4および後側リング5はいずれもアルミニウム製である。
【0017】
(前側リング)
図2(b)に示すように、前側リング4は、軸線Lに沿って前後方向Xに延びる前側環状板部分15、前側環状板部分15の後端部分から内周側に向かって軸線Lと直交する半径方向Rに延びる前側環状壁部分16、前側環状壁部分16の内周側の端部分から軸線Lに沿って後方X2に延びる中間環状板部分17、中間環状板部分17の後端部分から内周側に向かって半径方向Rに延びる後側環状壁部分(環状壁部分)18、後側環状壁部分18の内周側の端部分から後方X2に延びる後側環状板部分19、および、後側環状板部分19の後端部分から外周側に向かって後側環状壁部分18よりも短い寸法で突出する環状突出部分20を備える。前側リング4の外周面には、後側環状壁部分18、後側環状板部分19および環状突出部分20によって環状凹部21が形成されている。
【0018】
前側環状板部分15は前方X1から後方X2に向かって厚肉部23と薄肉部24をこの順番に備える。厚肉部23は薄肉部24よりも外周側に突出している。厚肉部23と薄肉部24によって前側環状板部分15の外周面には環状段部25が形成されている。前側環状板部分15の内周面には前側装着部となる雌ネジ11が形成されている。
【0019】
前側環状壁部分16は前後方向Xの厚さ寸法が一定である。中間環状板部分17は半径方向Rの厚さ寸法が一定である。後側環状壁部分18は前後方向Xの厚さ寸法が一定である。
【0020】
後側環状板部分19は後方X2に向かって外周側に傾斜している。より詳細には、後側環状板部分19の外周面の前端部分(後側環状壁部分18に隣り合う部分)には環状溝27が設けられており、後側環状板部分19は環状溝27が形成されている部分が外周側に折り曲げられることによって外周側に傾斜している。すなわち、後側環状板部分19は環状溝27が形成されている部分が外周側に折り曲がる折れ曲がり部分となっている。後側環状板部分19の外周面の後側部分(環状突出部分20に隣り合う部分)には環状の切り欠き部28が設けられている。切り欠き部28は環状溝27よりも浅い。
【0021】
環状突出部分20は後側環状板部分19と直交する方向に突出している。従って、環状突出部分20は外周側に向かって前方X1に延びている。本例では、環状突出部分20の断面形状は先端側に向かって細くなる台形である。ここで、後側環状壁部分18、後側環状板部分19および環状突出部分20によって形成された環状凹部21には、後側リング5に設けられた環状突部45の内周側部分が挿入されている。
【0022】
(内側リング)
内側リング3は、偏光フィルター2を外周側から同軸に保持する環状枠31と、環状枠31の前端縁から内周側に突出して偏光フィルター2の前方X1への移動を規制する環状の前側ストッパ32を備える。前側ストッパ32は環状枠31に保持された偏光フィルター2の外周縁部分に前方X1から当接可能である。
【0023】
環状枠31の内周面は、軸線Lに沿って一定の径寸法で延びる環状面であり、偏光フィルター2を同軸に保持するフィルター保持面33である。環状枠31は、前方X1から後
方X2に向かって厚肉枠部分34と薄肉枠部分35をこの順番に備える。厚肉枠部分34の外周面は薄肉枠部分35の外周面よりも外周側に位置しており、これらの間には半径方向Rに沿って延びる環状後向き面34aが形成されている。厚肉枠部分34の外周面には、前側リング4の雌ネジ11と螺合可能な雄ネジ36が形成されている。薄肉枠部分35には半径方向Rに貫通してフィルター保持面33に開口する接着剤注入用穴37が形成されている。
【0024】
ここで、フィルター保持面33に偏光フィルター2を保持した状態で環状枠31の外周側から接着剤注入用穴37を介して接着剤を注入すれば、この接着剤により偏光フィルター2を内側リング3に固定することができる。なお、接着剤注入用穴37は1つでもよいが、本例では、薄肉枠部分35に等角度間隔で複数設けられている。
【0025】
前側ストッパ32は環状枠31の前端縁から内周側に向かって突出する環状突起である。前側ストッパ32は軸線Lと直交する平坦面な環状後端面32aを備える。ここで、前側ストッパ32の環状後端面32aから環状枠31の後端までの幅寸法(フィルター保持面33の幅寸法W)は、フィルター保持面33に保持される偏光フィルター2の厚さ寸法Dよりも長い。フィルター保持面33の前後方向Xの幅寸法Wと偏光フィルター2の厚さ寸法Dの差分は0.03mm以下である。
【0026】
内側リング3は環状枠31の内周側に偏光フィルター2を保持した状態で前側リング4に前側から挿入される。そして、その雄ネジ36を前側リング4の雌ネジ11に螺合させて、環状枠31の後端が前側リング4の後側環状壁部分18に当接するまで捩じ込まれる。環状枠31の後端が後側環状壁部分18に当接すると、内側リング3の環状後向き面34aと前側リング4の前側環状壁部分16が微小な隙間を開けて前後方向Xで対向する。また、環状枠31の薄肉枠部分35の外周面と中間環状板部分17とが半径方向Rで微小な隙間を開けて対向する。ここで、環状枠31の後端が後側環状壁部分18に当接した状態で前側ストッパ32と後側環状壁部分18との間の距離(フィルター保持面33の幅寸法W)は、偏光フィルター2の厚さ寸法Dよりも長い。従って、前側リング4は、偏光フィルター2を前側ストッパ32と後側環状壁部分18との間で軸線L回りに回転可能に保持する。すなわち、前側ストッパ32と後側環状壁部分18は、偏光フィルター2を回転不能に挟持しておらず、偏光フィルター2は接着剤によって内側リング3に回転不能に固定される。ここで、後側環状壁部分18は偏光フィルター2の後方X2への移動を阻止する後側ストッパとして機能する。
【0027】
なお、内側リング3を前側リング4に捩じ込んで環状枠31の後端を後側環状壁部分18に当接させたときに、内側リング3の環状後向き面34aと前側リング4の前側環状壁部分16は当接してもよい。
【0028】
(後側リング)
後側リング5は、軸線Lに沿って前後方向Xに延びる前側環状板部分41、前側環状板部分41の後端部分から内周側に向かって半径方向Rに延びる環状壁部分42、環状壁部分42の内周側の端部分から軸線Lに沿って後方X2に延びる後側環状板部分43を備える。前側環状板部分41は半径方向Rの厚さ寸法が一定である。環状壁部分42の前端面にはグリス保持用凹部44が形成されている。グリス保持用凹部44には前側リング4と後側リング5を円滑に摺動させるためのグリスが保持されている。後側環状板部分43の外周面には後側装着部となる雄ネジ12が形成されている。後側環状板部分43の内周面には、内周側に向かって半径方向Rに突出する環状突部45が設けられている。
【0029】
環状突部45は矩形の切断形状を備える。環状突部45はその前後方向Xの幅寸法が内周側への突出寸法よりも長い。環状突部45は、半径方向Rから見た場合に雄ネジ12と
重なる位置に形成されている。
【0030】
後側リング5が前側リング4を保持した状態では、前側環状板部分41は前側リング4の環状段部25に摺動可能に嵌合する。これにより、前側環状板部分41の外周面41aと前側リング4の前側環状板部分15の厚肉部23の外周面15aは段差なく連続する。環状壁部分42は前側リング4の前側環状壁部分16に後方X2から当接し、後側環状板部分43は前側リング4の中間環状板部分17に外周側から当接する。環状突部45は前側リング4の後側環状壁部分18に後方X2から当接する。また、環状突部45の内周側部分は内側リング3の外周面の環状凹部21に挿入される。これにより、後側リング5は前側リング4を軸線L回りに回転自在に保持する。
【0031】
(カメラ用フィルターユニットの組み立て)
図3はカメラ用フィルターユニット1の組み立て動作の説明図である。カメラ用フィルターユニット1を組み立てる際には、まず、前側リング4と後側リング5を前後方向Xから組み合わせて、後側リング5の環状突部45を前後方向Xで前側リング4の後側環状壁部分18と環状突出部分20の間に位置させる。
【0032】
ここで、前側リング4と後側リング5を組み合わせる前の状態では、
図3(a)に示すように、前側リング4の後側環状板部分19は軸線Lに沿って延びている。従って、環状突出部分20は後側環状板部分19の後端部分から半径方向Rに突出しており、その外周側端面20aは軸線Lと平行に延びている。環状溝27は矩形断面を備える。切り欠き部28は後方X2に向かって下方に切り欠かれており、その断面形状は三角形をしている。また、前側リング4と後側リング5を同軸に配置したときに、前側リング4の環状突出部分20の外周側端面20aは、後側リング5の環状突部45の内周側端面45aと同一面上に位置するか、内周側端面45aよりも僅かに内周側に位置している。従って、前側リング4と後側リング5を同軸に維持しながら前側リング4と後側リング5を接近させることにより、後側リング5の環状突部45を前側リング4の後側環状壁部分18と環状突出部分20の間に位置させることができる。
【0033】
次に、
図3(b)に示すように、後側リング5の環状突部45を前側リング4の後側環状壁部分18に後方X2から当接させた状態とする。そして、前側リング4の後側環状板部分19を外周側に折り曲げて(塑性変形させて)、環状突出部分20を外周側に変位させる。これにより、後側リング5の環状突部45が前側リング4の環状凹部21に挿入された状態を形成する。
【0034】
ここで、前側リング4の後側環状板部分19を外周側に折り曲げる際には、後側環状板部分19に半径方向Rを内周側から外周側に向かう力を加える。これにより、後側環状板部分19は、
図3(c)に示すように、環状溝27の形成により薄肉となっている前端側の部分から折れ曲がる。また、後側環状板部分19が外周側に折れ曲がることにより、環状突出部分20は、環状突部45の内周側端面45aよりも外周側に突出する。従って、環状突部45が環状凹部21に挿入された状態が形成される。なお、切り欠き部28は、後側環状板部分19を外周側に折れ曲げたときに後側環状板部分19と環状突部45の当接を回避するための逃げ部となっている。
【0035】
本例では、環状溝27の形成により後側環状板部分19の前端に薄肉の部分を設け、この薄肉の部分を外周側に折り曲げている。従って、後側環状板部分19を比較的弱い力で精度よく折り曲げることができる。これにより、環状突出部分20を精度よく外周側に変位させることができるので、後側リング5の環状突部45と前側リング4の環状凹部21との間の寸法精度を向上させることができる。よって、前側リング4の環状突出部分20を、後側リング5の環状突部45の後方X2で予め設定した微小な間隔Gを開けて対峙さ
せることができる。本例では、間隔Gを0.03mm〜0.1mmの間とすることができる。従って、前側リング4を回転させたときに、前側リング4が後側リング5に対してガタつくことを防止できる。また、前側リング4を後側リング5に対してスムーズに回転させることができる。
【0036】
その後、内側リング3に後方X2から偏光フィルター2を挿入して、偏光フィルター2を前側ストッパ32に当接させる。また、接着剤注入用穴37から接着剤を注入して内側リング3に偏光フィルター2を固定する。そして、内側リング3を前方X1から前側リング4に捩じ込み、内側リング3の環状枠31の後端を前側リング4の後側環状壁部分18に当接させる。これによりカメラ用フィルターユニット1は完成する。カメラ用フィルターユニット1が完成した状態では、偏光フィルター2は前側ストッパ32と後側環状壁部分18との間で軸線L回りに回転可能な状態で前側リング4に保持されているが、接着剤によって内側リング3に回転不能に固定されている。
【0037】
なお、内側リング3の環状後向き面34aまたは前側リング4の前側環状壁部分16の前面に接着剤を塗布しておき、この接着剤によって内側リング3を前側リング4に固定してもよい。
【0038】
(作用効果)
本例によれば、前側リング4は環状凹部21に挿入された後側リング5の環状突部45をガイドとして軸線L回りに回転できる。従って、後側リング5により前側リング4を回転自在に保持するためにワッシャーを用いる必要がない。ここで、後側リング5に設けた環状突部45をガイドとして前側リング4を回転させた場合には、ガイド(環状突部45)が歪んだり、ガイド(環状突部45)の姿勢が変化したりすることがない。また、径方向に拡縮するワッシャーなどと比較して、ガイドとなる環状突部45は精度よく形成できる。さらに、本例では、環状突出部分20を精度よく外周側に変位させることができるので、後側リング5の環状突部45と前側リング4の環状凹部21との間の寸法精度が高い。これに加えて、前側リング4と後側リング5の間にワッシャーなどの別の部材が介在しないので、前側リング4と後側リング5を精度よく組み合わせることができる。従って、後側リング5に保持された前側リング4をスムーズに回転させることができる。
【0039】
また、後側リング5の環状突部45は半径方向Rから見た場合に雄ネジ36と重なる位置に設けられている。従って、環状突部45と雄ネジ36を軸線L方向の異なる位置に形成した場合と比較して、カメラ用フィルター枠10を前後方向Xで短縮できる。
【0040】
さらに、偏光フィルター2は前側ストッパ32と後側環状壁部分18の間で軸線L回りに回転可能な状態で前側リング4に保持されており、接着剤によって内側リング3に回転不能に固定されている。従って、偏光フィルター2を前側ストッパ32と後側環状壁部分18(後側ストッパ)によって前後から挟持して回転不能な状態で前側リング4に保持する場合と比較して、偏光フィルター2にかかるストレス(圧力)を小さくできる。偏光フィルター2にかかるストレスが小さければ、偏光フィルター2に歪みなどが発生することを防止できるので、フルハイビジョンの何倍にもなる高解像度の撮影を行う場合などに、より綺麗な撮影画像や撮影動画を得ることができる。
【0041】
また、接着剤注入用穴37は前側リング4の内周側に保持される内側リング3に形成されているので、接着剤注入用穴37が外周側に露出してカメラ用フィルター枠10の外観を毀損することがない。
【0042】
なお、フィルター保持面33の幅寸法Wを偏光フィルター2の厚さ寸法Dと同一としておき、環状枠31の後端を後側環状壁部分18に当接させたときに偏光フィルター2が前
側ストッパ32と後側環状壁部分18との間で回転不能に挟持される構成を採用することもできる。
【0043】
(参考例2)
図4(a)は参考例2のカメラ用フィルターユニットの縦断面図であり、
図4(b)はその部分拡大断面図である。
図4(a)に示すように、本例のカメラ用フィルターユニット1Aは、円盤形状の偏光フィルター(光学素子)2と、偏光フィルター2を同軸に保持する前側リング4と、前側リング4を軸線L回りに回転可能に保持する後側リング5を備える。また、カメラ用フィルターユニット1Aは、前側リング4の内周面に取り付けられて偏光フィルター2の前方X1への移動を規制する前側ストッパ6を備える。前側リング4、後側リング5および前側ストッパ6はカメラ用フィルター枠10Aを構成する。なお、本例のカメラ用フィルターユニット1Aはカメラ用フィルターユニット1と対応する構成を備えるので、対応する部分には同一の符号を付して説明する。
【0044】
図4(a)に示すように、前側リング4の内周面には、その前端縁から後方X2に向かって一定幅の領域に雌ネジ11が設けられている。雌ネジ11において前側ストッパ6よりも前側で露出している前側部分はカメラ用フィルターユニット1Aの前側にキャップやフードを装着するための前側装着部である。後側リング5の外周面には、その後端縁から前方X1に向かって一定幅の領域に雄ネジ36が設けられている。雄ネジ36はカメラ用フィルターユニット1Aを撮像レンズのレンズ鏡筒やカメラに装着するための後側装着部である。前側ストッパ6、前側リング4および後側リング5はいずれも金属基材から形成されており、本例では、前側ストッパ6、前側リング4および後側リング5はアルミニウム製である。
【0045】
(前側リング)
図4(b)に示すように、前側リング4は、軸線Lに沿って前後方向Xに延びる前側環状板部分15、前側環状板部分15の後端部分に連続して当該前側環状板部分15の内周側で軸線Lに沿って後方X2に延びる中間環状板部分(保持部)17、中間環状板部分17の後端部分から内周側に向かって軸線Lと直交する半径方向Rに延びる後側環状壁部分(環状壁部分)18、後側環状壁部分18の内周側の端部分から後方X2に延びる後側環状板部分19、および、後側環状板部分19の後端部分から外周側に向かって後側環状壁部分18よりも短い寸法で突出する環状突出部分20を備える。前側リング4の外周面には、前側環状板部分15と中間環状板部分17によって環状段部25が形成されている。また、前側リング4の外周面には、後側環状壁部分18、後側環状板部分19および環状突出部分20によって環状凹部21が形成されている。
【0046】
前側環状板部分15の内周面には前側装着部となる雌ネジ11が形成されている。中間環状板部分17は半径方向Rの厚さ寸法が一定である。中間環状板部分17の内周面(中間環状板部分17の前端面と後側環状壁部分18の前端面の間に位置する面)は、軸線Lに沿って一定の径寸法で延びる環状面であり、偏光フィルター2を同軸に保持するフィルター保持面17aである。フィルター保持面17aの幅寸法Wは、フィルター保持面17aに保持される偏光フィルター2の厚さ寸法Dよりも長い。フィルター保持面17aの幅寸法Wと偏光フィルター2の厚さ寸法Dの差分は0.03mm以下である。
【0047】
後側環状壁部分18は前後方向Xの厚さ寸法が一定である。後側環状壁部分18はフィルター保持面17aに保持された偏光フィルター2の後方X2への移動を規制する後側ストッパとして機能する。
【0048】
後側環状板部分19は、後方X2に向かって外周側に傾斜している。より詳細には、後側環状板部分19の外周面の前端部分(後側環状壁部分18に隣り合う部分)には環状溝
27が設けられており、後側環状板部分19は、この環状溝27が形成されている部分が外周側に折り曲げられることにより外周側に傾斜している。後側環状板部分19の外周面の後側部分(環状突出部分20に隣り合う部分)には環状の切り欠き部28が設けられている。切り欠き部28は環状溝27よりも浅い。
【0049】
環状突出部分20は後側環状板部分19と直交する方向に突出している。従って、環状突出部分20は外周側に向かって前方X1に延びている。本例では、環状突出部分20の断面形状は先端側に向かって細くなる台形である。ここで、後側環状壁部分18、後側環状板部分19および環状突出部分20によって形成された環状凹部21には、後側リング5の環状突部45の内周側部分が挿入されている。
【0050】
(前側ストッパ)
前側ストッパ6はリング状である。前側ストッパ6は、半径方向Rの高さ寸法が前側リングの中間環状板部分17の半径方向Rの高さ寸法(中間環状板部分17の厚み)よりも長い。また、前側ストッパ6は軸線Lと直交する平坦面な環状後端面6aを備える。前側ストッパ6の外周面には、その全面に、前側リング4の雌ネジ11と螺合可能な雄ネジ51が形成されている。前側ストッパ6は、その雄ネジ51を前側リング4の雌ネジ11に螺合させて、その環状後端面6aが中間環状板部分17の前端面に当接するまで捩じ込まれる。前側ストッパ6が中間環状板部分17に当接した状態では、前側ストッパ6の内周側の端部分がフィルター保持面17aよりも内周側に突出する。従って、前側ストッパ6は、フィルター保持面17aに保持された偏光フィルター2の前方X1への移動を規制できる。
【0051】
(後側リング)
前側リング4は、軸線Lに沿って前後方向Xに延びる前側環状板部分(環状部)41と、前側環状板部分41の後端部分から内周側に向かって半径方向Rに延びる環状壁部分42、環状壁部分42の内周側の端部分から軸線Lに沿って後方X2に延びる後側環状板部分43を備える。前側環状板部分41は半径方向Rの厚さ寸法が一定である。環状壁部分42の前端面にはグリス保持用凹部44が形成されている。グリス保持用凹部44には前側リング4と後側リング5を円滑に摺動させるためのグリスが保持されている。後側環状板部分43の外周面には後側装着部となる雄ネジ12が形成されている。
【0052】
後側環状板部分43の内周面の前端部分には、内周側に向かって半径方向Rに突出する環状突部45が設けられている。環状突部45は矩形の切断形状を備える。環状突部45の前端面は環状壁部分42の前端面と段差なく連続している。環状突部45はその前後方向Xの幅寸法が内周側への突出寸法よりも長い。環状突部45は、半径方向Rから見た場合に雄ネジ12と部分的に重なる位置に形成されている。
【0053】
後側リング5が前側リング4を保持した状態では、前側環状板部分41は前側リング4の環状段部25に擦動可能に嵌合している。これにより、前側環状板部分41の外周面41aと前側リング4の前側環状板部分15の外周面15aは段差なく連続している。後側環状板部分43は前側リング4の中間環状板部分17の後端面に後方X2から当接している。環状突部45は前側リング4の後側環状壁部分18の後端面に後方X2から当接している。また、環状突部45の内周側部分は前側ストッパ6の外周面に設けられた環状凹部21に挿入されている。これにより、後側リング5は前側リング4を軸線L回りに回転自在に保持する。
【0054】
(カメラ用フィルターユニットの組み立て)
カメラ用フィルターユニット1Aを組み立てる際には、まず、前側リング4と後側リング5を同軸にして前後方向Xから組み合わせる。そして、後側リング5の環状突部45を
前側リング4の外周面の環状凹部21に挿入する。後側リング5の環状突部45を前側リング4の外周面の環状凹部21に挿入する組み立て動作は参考例1のカメラ用フィルター枠10と同一である。従って、その説明を省略する。
【0055】
その後、前側リング4に前方X1から偏光フィルター2を挿入して、偏光フィルター2をフィルター保持面17aに保持させる。そして、前側ストッパ6を前方X1から前側リング4に捩じ込み、前側ストッパ6の環状後端面6aを前側リング4の中間環状板部分17に当接させる。これによりカメラ用フィルターユニット1Aは完成する。カメラ用フィルターユニット1Aが完成した状態では、偏光フィルター2は前側ストッパ6と後側環状壁部分18との間で軸線L回りに回転可能な状態で前側リング4に保持されている。
【0056】
なお、前側ストッパ6の環状後端面6aまたは前側リング4の中間環状板部分17の前端面に接着剤を塗布しておき、この接着剤により前側ストッパ6を前側リング4に固定してもよい。
【0057】
(作用効果)
本例によれば、前側リング4は環状凹部21に挿入された後側リング5の環状突部45をガイドとして軸線L回りに回転できる。従って、後側リング5により前側リング4を回転自在に保持するためにワッシャーを用いる必要がない。ここで、後側リング5に設けた環状突部45をガイドとして前側リング4を回転させた場合には、ガイド(環状突部45)が歪んだり、ガイド(環状突部45)の姿勢が変化したりすることがない。また、径方向に拡縮するワッシャーなどと比較して、ガイドとなる環状突部45は精度よく形成できる。さらに、本例では、環状突出部分20を精度よく外周側に変位させることができるので、後側リング5の環状突部45と前側リング4の環状凹部21との間の寸法精度が高い。これに加えて、前側リング4と後側リング5の間にワッシャーなどの別の部材が介在しないので、前側リング4と後側リング5を精度よく組み合わせることができる。従って、後側リング5に保持された前側リング4をスムーズに回転させることができる。
【0058】
また、後側リング5の環状突部45は半径方向Rから見た場合に雄ネジ51と重なる位置に設けられているので、環状突部45と装着部とを軸線L方向の異なる位置に形成した場合と比較して、カメラ用フィルター枠10Aを前後方向Xで短縮できる。
【0059】
さらに、前側リング4は、偏光フィルター2を前側ストッパ6と後側環状壁部分18との間で軸線L回りに回転可能に保持している。従って、偏光フィルター2を前側ストッパ6と後側環状壁部分18(後側ストッパ)によって前後から挟持して回転不能の状態とする場合と比較して、偏光フィルター2にかかるストレス(圧力)を小さくすることができ、偏光フィルター2に歪みなどが発生することを防止できる。
【0060】
なお、
図4(b)に点線で示すように、前側リング4の中間環状板部分17に、軸線Lと交差する方向に貫通してフィルター保持面17aに開口する接着剤注入用穴37を設けることができる。接着剤注入用穴37を設けた場合には、接着剤注入用穴37を介して接着剤を注入することにより、偏光フィルター2を前側リング4に固定できる。ここで、中間環状板部分17は後側リング5の前側環状板部分41の内周側に位置している。従って、中間環状板部分17に接着剤注入用穴37を形成した場合でも、接着剤注入用穴37が外周側に露出してカメラ用フィルター枠10の外観を毀損することがない。
【0061】
また、フィルター保持面17aの幅寸法Wを偏光フィルター2の厚さ寸法Dと同一としておき、偏光フィルター2が前側ストッパ6と後側環状壁部分18との間で回転不能に挟持される構成を採用することもできる。
【0062】
(実施例1)
図5(a)は実施例1のカメラ用フィルターユニットの縦断面図であり、
図5(b)はその部分拡大断面図である。本例のカメラ用フィルターユニット1Bは、円盤形状の偏光フィルター(光学素子)2と、偏光フィルター2を同軸に保持する内側リング3と、内側リング3を外周側から同軸に保持する前側リング4と、前側リング4を同軸に保持する後側リング5を備える。また、本例のカメラ用フィルターユニット1Bは、円盤形状の第2偏光フィルター(第2の光学素子)60と、後側リング5に後方から挿入されて、第2偏光フィルター60を同軸に保持する後側内側リング61を備える。後側内側リング61はアルミニウム製である。
【0063】
前側リング4は内側リング3を介して偏光フィルター2を保持している。後側リング5は後側内側リング61を介して第2偏光フィルター60を保持している。また、後側リング5は前側リング4を軸線L回りに回転可能に保持している。内側リング3、前側リング4、後側リング5および後側内側リング61はカメラ用フィルター枠10Bを構成している。
【0064】
ここで、本例のカメラ用フィルターユニット1Bにおいて、前側リング4が偏光フィルター2を保持する偏光フィルター2の保持構造は参考例1のカメラ用フィルターユニット1と同様である。また、後側リング5が前側リング4を軸線L回りに回転可能に保持する前側リング4の保持構造は参考例1、2のカメラ用フィルターユニット1、1Aと同様である。従って、以下では、後側リング5が第2偏光フィルター60を保持する保持構造を説明する。また、参考例1のカメラ用フィルターユニット1と共通する部分には、同一の符号を付して、その説明を省略する。なお、本例のカメラ用フィルターユニット1Bにおいて、前側リング4が偏光フィルター2を保持する偏光フィルター2の保持構造は参考例2におけるカメラ用フィルターユニット1Aの保持構造と同一でもよい。
【0065】
図5に示すように、後側リング5は、前側リング4よりも後方X2に、内周側に突出する第2環状突出部分(第2の環状突出部分、第2の前側ストッパ)64を備える。また、後側リング5は第2環状突出部分64の後側に厚肉部分65と雌ネジ66を備える。より具体的には、後側リング5の後側環状板部分43は、参考例1、2のカメラ用フィルターユニット1、1Aよりも後方X2に長く延設されており、その内周面に、第2環状突出部分64、厚肉部分65、および、雌ネジ66を備える。
【0066】
第2環状突出部分64は、環状突部45の後方X2に離間する位置において、内周側に向かって半径方向Rに突出する。前後方向Xで環状突部45と第2環状突出部分64の間には前側リング4の環状突出部分20が位置する。厚肉部分65は第2環状突出部分64の半径方向Rの途中位置から一定の厚さで後方X2に延びる。第2環状突出部分64は、厚肉部分65の外周側に第1環状後向き面64aを備える。雌ネジ66は厚肉部分65の後方X2に連続して設けられている。厚肉部分65は雌ネジ66との間に第2環状後向き面65aを備える。後側リング5の後端部分の外周面(後側環状板部分43の後端部分の外周面)には後側装着部となる雄ネジ12が設けられている。
【0067】
後側内側リング61は、第2偏光フィルター60を外周側から同軸に保持する後側環状枠70と、後側環状枠70の後端縁から内周側に突出して第2偏光フィルター60の後方X2への移動を規制する第2後側ストッパ(第2の後側ストッパ)71を備える。第2後側ストッパ71は後側環状枠70に保持された第2偏光フィルター60の外周縁部分に後方X2から当接可能である。後側環状枠70の内周面は、軸線Lに沿って一定の径寸法で延びる環状面であり、第2偏光フィルター60を同軸に保持する後側フィルター保持面72である。
【0068】
また、後側内側リング61は、前方X1から後方X2に向かって薄肉リング部分73と厚肉リング部分74をこの順番に備える。厚肉リング部分74の外周面は薄肉リング部分73の外周面よりも外周側に位置しており、これらの間には半径方向Rに沿って延びる環状前向き面74aが形成されている。厚肉リング部分74の外周面には、後側リング5の雌ネジ66と螺合可能な雄ネジ75が形成されている。薄肉リング部分73には半径方向Rに貫通して後側フィルター保持面72に開口する後側接着剤注入用穴76が形成されている。ここで、後側フィルター保持面72に第2偏光フィルター60を保持した状態で後側環状枠70の外周側から後側接着剤注入用穴76を介して接着剤を注入すれば、この接着剤により第2偏光フィルター60を後側内側リング61に固定することができる。なお、後側接着剤注入用穴76は1つでもよいが、本例では、薄肉リング部分73に等角度間隔で複数設けられている。また、後側接着剤注入用穴76は省略してもよい。
【0069】
第2後側ストッパ71は後側環状枠70の後端縁から内周側に向かって突出する環状突起である。第2後側ストッパ71は軸線Lと直交する平坦面な環状前端面71aを備える。ここで、第2後側ストッパ71の環状前端面71aから後側環状枠70の前端70aまでの幅寸法(後側フィルター保持面72の幅寸法)W2は、フィルター保持面33に保持される第2偏光フィルター60の厚さ寸法D2よりも長い。後側フィルター保持面72の前後方向Xの幅寸法W2と第2偏光フィルター60の厚さ寸法D2の差分は0.03mm以下である。
【0070】
後側内側リング61は後側環状枠70の内周側に第2偏光フィルター60を保持した状態で後側リング5に後側から挿入される。そして、その雄ネジ75を後側リング5の雌ネジ66に螺合させて、後側環状枠70の前端70aが後側リング5の第2環状突出部分64(第1環状後向き面64a)に当接するまで捩じ込まれる。後側環状枠70の前端70aが第2環状突出部分64に当接すると、後側内側リング61の環状前向き面74aと後側リング5の第2環状後向き面65aとが微小な隙間を開けて前後方向Xで対向する。また、後側環状枠70の薄肉リング部分73の外周面と後側リング5の厚肉部分65とが半径方向Rで微小な隙間を開けて対向する。
【0071】
ここで、後側環状枠70の前端70aが第2環状突出部分64に当接した状態で第2後側ストッパ71と第2環状突出部分64との間の距離(後側フィルター保持面72の幅寸法)W2は、第2偏光フィルター60の厚さ寸法D2よりも長い。従って、後側リング5は、第2偏光フィルター60を第2後側ストッパ71と第2環状突出部分64との間で軸線L回りに回転可能に保持する。すなわち、第2後側ストッパ71と第2環状突出部分64は、第2偏光フィルター60を回転不能に挟持しておらず、第2偏光フィルター60は接着剤によって後側内側リング61に回転不能に固定される。ここで、第2環状突出部分64は第2偏光フィルター60の前方X1への移動を阻止する第2の前側ストッパとして機能する。
【0072】
なお、後側内側リング61を後側リング5に捩じ込んで、後側環状枠70の前端70aを後側リング5の第2環状突出部分64に当接させたときに、後側内側リング61の環状前向き面74aと後側リング5の第2環状後向き面65aとは当接してもよい。
【0073】
(作用効果)
本例においても、参考例1、2のカメラ用フィルターユニット1、1Aと同様の作用効果を得ることができる。また、本例では、後側リング5に第2偏光フィルター60を保持する。従って、本例では、カメラ用フィルター枠10Bに2枚の光学フィルター(偏光フィルター2および第2偏光フィルター60)を保持できる。さらに、後側リング5は、第2偏光フィルター60を第2後側ストッパ71と第2環状突出部分64との間で軸線L回りに回転可能に保持する。従って、第2偏光フィルター60を第2後側ストッパ71と第
2環状突出部分64によって前後から挟持して回転不能の状態とする場合と比較して、第2偏光フィルター60にかかるストレス(圧力)を小さくすることができる。よって、第2偏光フィルター60に歪みなどが発生することを防止できる。
【0074】
また、後側接着剤注入用穴76は後側リング5の内周側に保持される後側内側リング61に形成されているので、後側接着剤注入用穴76が外周側に露出してカメラ用フィルター枠10Bの外観を毀損することがない。
【0075】
なお、後側フィルター保持面72の幅寸法W2を第2偏光フィルター60の厚さ寸法D2と同一としておき、第2偏光フィルター60が第2後側ストッパ71と第2環状突出部分64との間で回転不能に挟持される構成を採用することもできる。
【0076】
また、後側リング5の雌ネジ66および後側内側リング61の雄ネジ75を省略し、後側内側リング61を接着剤により後側リング5の内周側に固定してもよい。
【0077】
さらに、前側リング4および後側リング5が保持する光学素子は偏光フィルターに限られるものではない。例えば、前側リング4に偏光フィルターを保持し、後側リング5にカラーフィルターを保持することもできる。また、例えば、前側リング4にクロスフィルターを保持し、後側リング5にカラーフィルターを保持することもできる。
【0078】
(実施例2)
図6(a)は実施例2のカメラ用フィルターユニットの縦断面図であり、
図6(b)はその部分拡大断面図である。本例のカメラ用フィルターユニット1Cは、円盤形状の偏光フィルター(光学素子)2と、偏光フィルター2を同軸に保持する内側リング3と、内側リング3を外周側から同軸に保持する前側リング4と、前側リング4を同軸に保持する後側リング5を備える。また、本例のカメラ用フィルターユニット1Cは、円盤形状の第2偏光フィルター(第2の光学素子)60と、後側リング5に後方X2から挿入されて、第2偏光フィルター60を同軸に保持する後側内側リング81を備える。後側内側リング81はアルミニウム製である。
【0079】
前側リング4は内側リング3を介して偏光フィルター2を保持している。後側リング5は後側内側リング81を介して第2偏光フィルター60を保持している。また、後側リング5は前側リング4を軸線L回りに回転可能に保持している。内側リング3、前側リング4、後側リング5および後側内側リング81はカメラ用フィルター枠10Cを構成している。
【0080】
ここで、本例のカメラ用フィルターユニット1Cにおいて、前側リング4が偏光フィルター2を保持する偏光フィルター2の保持構造は参考例1のカメラ用フィルターユニット1と同様である。また、後側リング5が前側リング4を軸線L回りに回転可能に保持する前側リング4の保持構造は参考例1、2のカメラ用フィルターユニット1、1Aと同様である。従って、以下では、後側リング5が第2偏光フィルター60を保持する保持構造を説明する。また、参考例1のカメラ用フィルターユニット1と共通する部分には、同一の符号を付して、その説明を省略する。なお、本例のカメラ用フィルターユニット1Cにおいて、前側リング4が偏光フィルター2を保持する偏光フィルター2の保持構造は参考例2におけるカメラ用フィルターユニット1Aの保持構造としてもよい。
【0081】
図6に示すように、後側リング5は、前側リング4よりも後方X2に、内周側に突出する第2環状突出部分(第2の環状突出部分、第2の前側ストッパ)84を備える。また、後側リング5は第2環状突出部分84の後側に雌ネジ85を備える。より具体的には、後側リング5の後側環状板部分43は、参考例1、2のカメラ用フィルターユニット1、1
Aよりも後方X2に長く延設されており、その内周面に第2環状突出部分84、および、雌ネジ85を備える。
【0082】
第2環状突出部分84は、環状突部45の後方X2に離間する位置において、内周側に向かって半径方向Rに突出する。前後方向Xで環状突部45と第2環状突出部分84の間には前側リング4の環状突出部分20が位置する。雌ネジ85は第2環状突出部分84の後方X2に連続して設けられている。第2環状突出部分84は雌ネジ85との間に環状後向き面84aを備える。後側リング5の後端部分の外周面(後側環状板部分43の後端部分の外周面)には後側装着部となる雄ネジ12が設けられている。
【0083】
後側内側リング81は、第2偏光フィルター60を外周側から同軸に保持する後側環状枠86と、後側環状枠86の後端縁から内周側に突出して第2偏光フィルター60の後方X2への移動を規制する第2後側ストッパ(第2の後側ストッパ)87を備える。第2後側ストッパ87は後側環状枠86に保持された第2偏光フィルター60の外周縁部分に後方X2から当接可能である。後側環状枠86の内周面は、軸線Lに沿って一定の径寸法で延びる環状面であり、第2偏光フィルター60を同軸に保持する後側フィルター保持面88である。後側内側リング81の外周面には、後側リング5の雌ネジ85と螺合可能な雄ネジ89が形成されている。
【0084】
後側環状枠86には、半径方向Rに貫通して後側フィルター保持面88に開口する後側接着剤注入用穴90が形成されている。ここで、後側フィルター保持面88に第2偏光フィルター60を保持した状態で後側環状枠86の外周側から後側接着剤注入用穴90を介して接着剤を注入すれば、この接着剤により第2偏光フィルター60を後側内側リング81に固定することができる。なお、後側接着剤注入用穴90は1つでもよいが、本例では、薄肉リング部分73に等角度間隔で複数設けられている。また、後側接着剤注入用穴90は省略してもよい。
【0085】
第2後側ストッパ87は後側環状枠86の後端縁から内周側に向かって突出する環状突起である。第2後側ストッパ87は軸線Lと直交する平坦面な環状前端面87aを備える。ここで、第2後側ストッパ87の環状前端面87aから後側環状枠86の前端86aまでの幅寸法(後側フィルター保持面88の幅寸法)W2は、フィルター保持面33に保持される第2偏光フィルター60の厚さ寸法D2よりも長い。後側フィルター保持面88の前後方向Xの幅寸法W2と第2偏光フィルター60の厚さ寸法D2の差分は0.03mm以下である。
【0086】
後側内側リング81は後側環状枠86の内周側に第2偏光フィルター60を保持した状態で後側リング5に後側から挿入される。そして、その雄ネジ89を後側リング5の雌ネジ85に螺合させて、後側環状枠86の前端86aが後側リング5の第2環状突出部分84(環状後向き面84a)に当接するまで捩じ込まれる。
【0087】
ここで、後側環状枠86の前端86aが第2環状突出部分84に当接した状態で第2後側ストッパ87と第2環状突出部分84との間の距離(後側フィルター保持面95の幅寸法)W2は、第2偏光フィルター60の厚さ寸法D2よりも長い。従って、後側リング5は、第2偏光フィルター60を第2後側ストッパ87と第2環状突出部分84との間で軸線L回りに回転可能に保持する。すなわち、第2後側ストッパ87と第2環状突出部分84は、第2偏光フィルター60を回転不能に挟持しておらず、第2偏光フィルター60は接着剤によって後側内側リング81に回転不能に固定される。ここで、第2環状突出部分84は第2偏光フィルター60の前方X1への移動を阻止する第2の前側ストッパとして機能する。
【0088】
(作用効果)
本例においても、参考例1、2のカメラ用フィルターユニット1、1Aと同様の作用効果を得ることができる。また、本例では、後側リング5に第2偏光フィルター60を保持する。すなわち、本例では、カメラ用フィルター枠10Cに2枚の光学フィルターを保持できる。さらに、後側リング5は、第2偏光フィルター60を第2後側ストッパ87と第2環状突出部分84との間で軸線L回りに回転可能に保持する。従って、第2偏光フィルター60を第2後側ストッパ87と第2環状突出部分84によって前後から挟持して回転不能の状態とする場合と比較して、第2偏光フィルター60にかかるストレス(圧力)を小さくすることができる。よって、第2偏光フィルター60に歪みなどが発生することを防止できる。
【0089】
また、後側接着剤注入用穴90は後側リング5の内周側に保持される後側内側リング81に形成されているので、後側接着剤注入用穴90が外周側に露出してカメラ用フィルター枠10Cの外観を毀損することがない。
【0090】
なお、後側フィルター保持面88の幅寸法W2を第2偏光フィルター60の厚さ寸法D2と同一としておき、第2偏光フィルター60が第2後側ストッパ87と第2環状突出部分84との間で回転不能に挟持される構成を採用することもできる。また、後側内側リング81は接着剤により後側リング5の内周側に固定されていてもよい。さらに、前側リング4および後側リング5が保持する光学素子は偏光フィルターに限られるものではない。
【0091】
(参考例3)
図7(a)は参考例3のカメラ用フィルターユニットの縦断面図であり、
図5(b)はその部分拡大断面図である。本例のカメラ用フィルターユニット1Dは、円盤形状の偏光フィルター(光学素子)2と、偏光フィルター2を同軸に保持する内側リング3と、内側リング3を外周側から同軸に保持する前側リング4と、前側リング4を同軸に保持する後側リング5を備える。また、本例のカメラ用フィルターユニット1Dは、円盤形状の第2偏光フィルター(第2の光学素子)60と、後側リング5に後方X2から挿入されて、第2偏光フィルター60の後方X2への移動を規制する第2後側ストッパ91を備える。第2後側ストッパ91はアルミニウム製である。
【0092】
前側リング4は内側リング3を介して偏光フィルター2を保持している。後側リング5は第2偏光フィルター60を保持している。また、後側リング5は前側リング4を軸線L回りに回転可能に保持している。内側リング3、前側リング4、後側リング5、および、第2後側ストッパ91はカメラ用フィルター枠10Dを構成している。
【0093】
ここで、本例のカメラ用フィルターユニット1Dにおいて、前側リング4が偏光フィルター2を保持する偏光フィルター2の保持構造は参考例1のカメラ用フィルターユニット1と同様である。また、後側リング5が前側リング4を軸線L回りに回転可能に保持する前側リング4の保持構造は参考例1、2のカメラ用フィルターユニット1、1Aと同様である。従って、以下では、後側リング5が第2偏光フィルター60を保持する保持構造を説明する。また、参考例1のカメラ用フィルターユニット1と共通する部分には、同一の符号を付して、その説明を省略する。なお、本例のカメラ用フィルターユニット1Dにおいて、前側リング4が偏光フィルター2を保持する偏光フィルター2の保持構造は参考例2におけるカメラ用フィルターユニット1Aの保持構造としてもよい。
【0094】
図7に示すように、後側リング5は、前側リング4よりも後方X2に、内周側に突出する第2環状突出部分(第2の環状突出部分、第2の前側ストッパ)92を備える。また、後側リング5は第2環状突出部分92の後側に厚肉部分93と雌ネジ94を備える。より具体的には、後側リング5の後側環状板部分43は参考例1、2のカメラ用フィルターユ
ニット1、1Aよりも後方X2に長く延設されており、その内周面に第2環状突出部分92、厚肉部分93、および、雌ネジ94を備える。
【0095】
第2環状突出部分92は、環状突部45の後方X2に離間する位置において、内周側に向かって半径方向Rに突出する。前後方向Xで環状突部45と第2環状突出部分92の間には前側リング4の環状突出部分20が位置する。厚肉部分93は第2環状突出部分92の半径方向Rの途中位置から一定厚さで後方X2に延びる。第2環状突出部分92は、厚肉部分93の外周側に第1環状後向き面92aを備える。
【0096】
厚肉部分93は第2偏光フィルター60を外周側から同軸に保持する後側保持部である。すなわち、厚肉部分93の内周面は、軸線Lに沿って一定の径寸法で延びる環状面であり、第2偏光フィルター60を同軸に保持する後側フィルター保持面95である。後側フィルター保持面95の幅寸法W2は、後側フィルター保持面95に保持される第2偏光フィルター60の厚さ寸法D2よりも長い。後側フィルター保持面95の幅寸法W2と第2偏光フィルター60の厚さ寸法D2の差分は0.03mm以下である。
【0097】
雌ネジ94は厚肉部分93の後方X2に連続して設けられている。厚肉部分93は雌ネジ94との間に第2環状後向き面93aを備える。後側リング5の後端部分の外周面(後側環状板部分43の後端部分の外周面)には後側装着部となる雄ネジ12が設けられている。
【0098】
第2後側ストッパ91はリング状である。第2後側ストッパ91は、半径方向Rの高さ寸法が後側リング5の厚肉部分93の半径方向Rの高さ寸法(厚肉部分93の厚み)よりも長い。また、第2後側ストッパ91は軸線Lと直交する平坦面な環状前端面91aを備える。第2後側ストッパ91の外周面には、その全面に、後側リング5の雌ネジ94と螺合可能な雄ネジ96が形成されている。第2後側ストッパ91は、その雄ネジ96を後側リング5の雌ネジ94に螺合させて、その環状前端面91aが厚肉部分93の第2環状後向き面93aに当接するまで捩じ込まれる。第2後側ストッパ91が厚肉部分93に当接した状態では、第2後側ストッパ91の内周側の端部分が後側フィルター保持面95よりも内周側に突出する。従って、第2後側ストッパ91は、後側フィルター保持面95に保持された第2偏光フィルター60の後方X2への移動を規制できる。
【0099】
第2偏光フィルター60を後側リング5に保持させる際には、まず、後側リング5に後方X2から第2偏光フィルター60を挿入して、第2偏光フィルター60を後側フィルター保持面95に保持させる。そして、第2後側ストッパ91を後方X2から後側リング5に捩じ込み、第2後側ストッパ91の環状前端面91aを厚肉部分93の第2環状後向き面93aに当接させる。これによりカメラ用フィルターユニット1Dは完成する。カメラ用フィルターユニット1Dが完成した状態では、第2偏光フィルター60は第2後側ストッパ91と第2環状突出部分92との間で軸線L回りに回転可能な状態で後側リング5に保持される。ここで、第2環状突出部分92は第2偏光フィルター60の前方X1への移動を阻止する第2の前側ストッパとして機能する。
【0100】
(作用効果)
本例においても、参考例1、2のカメラ用フィルターユニット1、1Aと同様の作用効果を得ることができる。また、本例では、後側リング5に第2偏光フィルター60を保持する。すなわち、本例では、カメラ用フィルター枠10Cに2枚の光学フィルターを保持できる。さらに、後側リング5は、第2偏光フィルター60を第2後側ストッパ91と第2環状突出部分92との間で軸線L回りに回転可能に保持する。従って、第2偏光フィルター60を第2後側ストッパ91と第2環状突出部分92によって前後から挟持して回転不能の状態とする場合と比較して、第2偏光フィルター60にかかるストレス(圧力)を
小さくすることができる。よって、第2偏光フィルター60に歪みなどが発生することを防止できる。
【0101】
なお、後側フィルター保持面95の幅寸法W2を第2偏光フィルター60の厚さ寸法D2と同一としておき、第2偏光フィルター60が第2後側ストッパ91と第2環状突出部分92との間で回転不能に挟持される構成を採用することもできる。また、第2後側ストッパ91は接着剤により後側リング5の内周側に固定されていてもよい。さらに、前側リング4および後側リング5が保持する光学素子は偏光フィルターに限られるものではない。
【0102】
(その他の実施の形態)
上記の例では、前側リング4の後側環状板部分19の外周面に環状溝27を設けているが、後側環状板部分19の内周面に環状溝を設け、環状溝が形成されている位置から後側環状板部分19を外周側に折り曲げてもよい。また、後側環状板部分19の内周面および外周面の半径方向Rから見た場合に重なる位置に環状溝を設け、これらの環状溝が形成されている位置から後側環状板部分19を外周側に折り曲げてもよい。さらに、環状溝27および切り欠き部28を省略してもよい。
【0103】
また、前側リング4に、光学素子としてクロスフィルターを保持することもできる。さらに、前側リング4にカラーフィルターを保持し、後側リング5に偏光フィルターやクロスフィルターを保持してもよい。また、前側リング4と後側リング5のそれぞれにカラーフィルターを保持してもよい。