特許第6590460号(P6590460)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6590460慢性疼痛の発痛源の同定及び治療のためのシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6590460
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】慢性疼痛の発痛源の同定及び治療のためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0484 20060101AFI20191007BHJP
   A61B 5/0476 20060101ALI20191007BHJP
   A61B 5/0408 20060101ALI20191007BHJP
   A61B 5/0478 20060101ALI20191007BHJP
   A61B 5/0492 20060101ALI20191007BHJP
   A61N 1/36 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   A61B5/04 320M
   A61B5/04 322
   A61B5/04 320N
   A61B5/04 300J
   A61N1/36
【請求項の数】21
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-511186(P2017-511186)
(86)(22)【出願日】2015年8月24日
(65)【公表番号】特表2017-530745(P2017-530745A)
(43)【公表日】2017年10月19日
(86)【国際出願番号】US2015046485
(87)【国際公開番号】WO2016032931
(87)【国際公開日】20160303
【審査請求日】2018年7月4日
(31)【優先権主張番号】62/041,798
(32)【優先日】2014年8月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514300557
【氏名又は名称】アヴェント インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(74)【復代理人】
【識別番号】100135345
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 政彦
(74)【復代理人】
【識別番号】100142457
【弁理士】
【氏名又は名称】立川 幸男
(74)【復代理人】
【識別番号】100158816
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 智満
(74)【復代理人】
【識別番号】100162444
【弁理士】
【氏名又は名称】勝見 陽介
(72)【発明者】
【氏名】スケピス、エリック・エー
(72)【発明者】
【氏名】ショア、フィリップ・エー
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト、ジョシュア・ディー
【審査官】 永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−523226(JP,A)
【文献】 特表2008−516696(JP,A)
【文献】 特表2003−514607(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0270120(US,A1)
【文献】 特開2015−061619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/04
A61N 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の脳の神経刺激及び脳波モニタリングによって慢性疼痛に関連する神経経路を同定するためのシステムであって、
慢性疼痛の発痛源である疑いがある領域の近くに配置されるプローブと、
脳波用電極と、
前記プローブ及び前記脳波用電極に結合されたコントローラとを含み、
前記コントローラが、前記プローブを介して、慢性疼痛の発痛源である疑いがある標的神経に対して、前記脳における慢性疼痛反応を誘導するのに十分な第1の神経刺激を伝達するように構成されており、さらに、前記コントローラが、前記脳波用電極を介して、ベースライン脳活動、前記第1の神経刺激の結果としての前記脳内の誘発電位活動、またはその両方をモニタするように構成され
当該システムが、誘発電位活動をモニタするために、
(i)増加が、前記プローブが前記慢性疼痛の発痛源のより近くに配置されていることを示し、減少が、前記プローブが前記慢性疼痛の発痛源からより遠く離れて配置されていることを示す誘発電位の振幅、
(ii)減少が、前記プローブが前記慢性疼痛の発痛源のより近くに配置されていることを示し、増加が、前記プローブが前記慢性疼痛の発痛源からより遠く離れて配置されていることを示す誘発電位の潜時、及び
(iii)増加が、前記プローブが前記慢性疼痛の発痛源のより近くに配置されていることを示し、減少が、前記プローブが前記慢性疼痛の発痛源からより遠く離れて配置されていることを示す誘発電位の周波数
の3つのなかの少なくとも1つを測定することを特徴とするシステム。
【請求項2】
当該システムが、前記脳の1若しくは複数の所定の領域における誘発電位活動をモニタし、
前記脳の1若しくは複数の所定の領域における誘発電位活動の存在が、前記標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部であることを示すことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
当該システムが、前記誘発電位の振幅を測定することによって誘発電位活動をモニタすることを特徴とする請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
当該システムが、前記誘発電位の潜時を測定することによって誘発電位活動をモニタすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
当該システムが、前記誘発電位の周波数を測定することによって誘発電位活動をモニタすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
当該システムが、前記脳の1若しくは複数の所定の領域における誘発電位活動をモニタし、
前記脳の1若しくは複数の所定の領域における、所定の振幅、所定の潜時、所定の周波数、所定の形状、またはそれらの組合せを有する誘発電位活動の存在が、前記標的神経が慢性疼痛に関連する前記神経経路の一部であることを示すことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
当該システムが、誘発電位の振幅、誘発電位の潜時、誘発電位の周波数、誘発電位の形状、またはそれらの組合せを測定することによって誘発電位活動をモニタし、
所定の刺激において、前記所定の振幅に十分近い振幅前記所定の潜時に十分近い潜時、前記所定の周波数に十分近い周波数前記所定の形状に十分近い形状、またはそれらの組合せを有する誘発電位が観察された場合には、前記慢性疼痛の治療のために前記標的神経が慢性疼痛に関連する前記神経経路の一部に十分に極めて近接していることを示すことを特徴とする請求項に記載のシステム。
【請求項8】
前記コントローラが、
前記所定の振幅に十分近い振幅前記所定の潜時に十分近い潜時、前記所定の周波数に十分近い周波数前記所定の形状に十分近い形状、またはそれらの組合せを有する前記誘発電位活動が観察される前記標的神経に沿った位置において、前記プローブを介して、神経ブロックを生み出すのに十分である第2の神経刺激を伝達し、
前記第2の神経刺激が伝達されたときに脳波活動をモニタし、
前記神経ブロックの適用中に効果的な神経ブロックと合致する脳波活動が観察された場合に、前記標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部として正しく識別されたことを確認し、
前記神経ブロック中に効果的な神経ブロックと矛盾する脳波活動が観察された場合に、前記標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部ではないと判断するように構成されていることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
当該システムが、標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部として正しく識別されたときに慢性疼痛を治療し、前記コントローラが、前記所定の振幅に十分近い振幅前記所定の潜時に十分近い潜時、前記所定の周波数に十分近い周波数前記所定の形状に十分近い形状、またはそれらの組合せを有する前記誘発電位活動が観察される前記標的神経に沿った前記位置において、前記プローブから、前記慢性疼痛に関連する前記神経経路を障害するのに十分な第3の神経刺激を伝達するように構成されていることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラが、前記標的神経の効果的な障害を確認するべく、前記第1の神経刺激、前記第2の神経刺激、またはその両方を繰り返すことによって前記標的神経の障害が完了していることを検証するようにさらに構成されており、
前記神経経路の効果的な障害と合致する脳波活動が観察された場合には、障害が完了していることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記コントローラが、前記プローブを介して、前記慢性疼痛の発痛源である疑いがない追加的な神経に対して、前記脳における反応を誘導するのに十分な追加的な神経刺激を伝達するように構成されており、さらに、前記コントローラが、前記脳波用電極を介して、ベースライン脳活動、前記追加的な神経刺激の結果としての前記脳内の誘発電位活動、またはその両方をモニタするように構成されていることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記標的神経が慢性疼痛に関連する前記神経経路の一部として正しく識別されることを検証するべく、前記追加的な神経刺激からの前記誘導された反応が、前記第1の神経刺激からの前記誘導された反応と比較され、
前記追加的な神経刺激からの前記誘導された反応を前記第1の神経刺激からの前記誘導された反応と比較した場合の両者の違いが、前記標的神経が慢性疼痛に関連する前記神経経路の一部であることを示すことを特徴とする請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記プローブが経皮用プローブであることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1の神経刺激が、電気的刺激であり、かつ約100Hz以下の周波数及び約0.01〜50mAの振幅で伝達されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記第2の神経刺激が、電気的刺激であり、かつ約1,000〜100,000Hzの周波数及び約0.01〜50mAの振幅で伝達されることを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項16】
前記第3の神経刺激が、電気的刺激であり、かつ約100,000Hzないし約1.5MHzの周波数及び最大約1.4Aの振幅で伝達されることを特徴とする請求項9に記載のシステム。
【請求項17】
前記コントローラが、電気リードを介して前記プローブに接続されたパルス発生器によって、前記第1の神経刺激及び1若しくは複数の追加的な神経刺激を前記プローブに伝達するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
慢性疼痛を治療するための装置であって、
慢性疼痛の発痛源を同定する第1の神経刺激、前記慢性疼痛の発痛源が同定されたことを検証する第2の神経刺激、前記慢性疼痛を治療する第3の神経刺激を含む、複数の神経刺激を標的神経に伝達するための少なくとも1つのプローブと、
複数のビュー領域を表示するように構成されたモニタとを含むことを特徴とする装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つのプローブがRFプローブであることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
当該装置が、複数のRFプローブを含むことを特徴とする請求項18または19に記載の装置。
【請求項21】
当該装置が、複数のチャネルを有するように構成されており、各チャネルが、互いに異なる慢性疼痛の発痛源を治療するように構成されていることを特徴とする請求項18ないし20のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本発明は、2014年8月26日に出願された米国仮出願第62/041,798号に基づく優先権を主張する。当該出願は、全文を引用することを以って本明細書の一部となす。
【背景技術】
【0002】
慢性疼痛を経験するアメリカ人は7000万人に上ると推定されており、或る世界的な研究によれば、慢性疼痛の経験者は人口の10〜55%を占めるという結論が出されている。急性疼痛が治癒の初期段階における炎症反応に関連しているのとは対照的に、国際疼痛学会の定義では、慢性疼痛は外傷後の通常の治癒時間すなわち治癒期を超えて持続する痛みであり、このことは、Bonica, J.J., “The Management of Pain,” Lea & Febiger, Philadelphia, 1953(非特許文献1)及びMerskey, et al., “Classification of Chronic Pain Syndromes and Definitions of Pain Terms,” Second Edition, 1994(非特許文献2)に記載されており、両文献は、引用を以って本明細書の一部となす。慢性疼痛の例には、いくつか挙げると、腰痛、片頭痛、線維筋痛、複合性局所疼痛症候群、癌性疼痛、脊髄損傷痛が含まれる。
【0003】
慢性疼痛に関与する機序はほとんど知られておらず、慢性疼痛の治療は成功しないことが多い。神経焼灼の技術は、痛みを伴う回路の一因となる神経信号の伝達を遮断することによって慢性疼痛を治療する破壊的方法である。この技術においては、医師は、プローブを経皮的に慢性疼痛を引き起こす疑いがある神経の近傍に挿入しかつ該プローブを介して上記神経に焼灼エネルギーを送達する必要がある。
【0004】
痛みを伴う回路の一因となる神経に焼灼プローブを向け、当該神経が慢性疼痛において果たす役割を問い合わせ、プローブを除去せずに神経を治療し、神経が損傷されてもはやバイアブルでないことを直ちに確認し、かつ損傷が慢性疼痛回路の破壊に成功したことを確認するための、実施形態及び定量的方法が必要であることは、既に複数の医師が述べているが、その必要性はこれまでのところ満たされていない。解決策を実現する上での困難は、疼痛のタイプに固有のものである。急性疼痛や侵害受容性疼痛とは異なり、慢性疼痛は、脊髄、脳及び抹消の可塑的変化に影響される。慢性疼痛に関与する神経の可塑的変化には、非神経構造によって可能になる既存の回路、異常な神経回路及び/または変化の増強や変更が含まれ得る。慢性疼痛の最多の予測マーカは、脳由来であり、(1)脳化学、(2)認知、(3)脳形態計測、(4)疼痛の自然変動、及び(5)脳活動を含む。
【0005】
“Towards a theory of chronic pain”, Progress in Neurobiology, Vol. 87, No. 2, February 2009, pages 81?97, A. Vania Apkarian, Marwan N. Baliki, and Paul Y. Geha(非特許文献3)において、執筆者らは、機能的核磁気共鳴イメージング(fMRI)を用いて、慢性腰痛の人における活動的な脳領域を識別した。その結果、執筆者らは、通常の疼痛に典型的ではない、脳の領域(内側前頭前皮質)における神経活性化パターンを発見した。執筆者らは、そのような脳の活動及び部位を用いて慢性腰痛をマーキングすることができることを示唆している。fMRIはヒトにおける慢性疼痛のマーカを識別する能力があるにもかかわらず、fMRI技術そのものは臨床の場にあまり適していない。機能的磁気イメージング技術は、高価であり、貴重な室内空間を占め、制御された動作環境(すなわち非強磁性ツール)を必要とし、かつ記録されたデータの獲得及び分析をタイムリーに提供することができない(時間分解能が低い)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,306,596号明細書
【特許文献2】米国特許第8,187,268号明細書
【特許文献3】米国特許第8,740,897号明細書
【特許文献4】米国特許第7,819,869号明細書
【特許文献5】米国特許第7,824,404号明細書
【特許文献6】米国特許第8,518,036号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Bonica, J.J., “The Management of Pain,” Lea & Febiger, Philadelphia, 1953
【非特許文献2】Merskey, et al., “Classification of Chronic Pain Syndromes and Definitions of Pain Terms,” Second Edition, 1994
【非特許文献3】“Towards a theory of chronic pain”, Progress in Neurobiology, Vol. 87, No. 2, February 2009, pages 81?97, A. Vania Apkarian, Marwan N. Baliki, and Paul Y. Geha
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、慢性疼痛の発痛源または慢性疼痛に関連する神経経路を同定するかまたは探し出すため、及びその発痛源が同定された時点で慢性疼痛を治療するためのシステムや装置が必要とされている。慢性疼痛の発痛源または慢性疼痛に関連する神経経路を同定するかまたは探し出すため、及びその発痛源が同定された時点で慢性疼痛を治療するための実用的かつ効果的な方法も必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、哺乳類の脳の神経刺激及び脳波モニタリングによって慢性疼痛に関連する神経経路を同定するための方法が開示されている。該方法は、慢性疼痛の発痛源である疑いがある標的神経を刺激するようにプローブを配置するステップと、該プローブから、標的神経に対して、脳における慢性疼痛反応を誘導するのに十分な第1の神経刺激を伝達するステップと、該第1の神経刺激の結果としての脳内電位活動をモニタするステップとを含む。
【0010】
一実施形態では、上記方法は、脳の1若しくは複数の所定の領域における誘発電位活動をモニタするステップを含むことができ、脳の1若しくは複数の所定の領域における誘発電位活動の存在は、標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部であることを示す。
【0011】
別の実施形態では、誘発電位活動をモニタするステップは、誘発電位の振幅を測定するステップを含むことができ、誘発電位の振幅の増加は、プローブが慢性疼痛の発痛源のより近くに配置されていることを示すことができ、誘発電位の振幅の減少は、プローブが慢性疼痛の発痛源からより遠く離れて配置されていることを示すことができる。さらに、そのようなモニタリングで、第1の神経刺激を、一定の波形、パルス持続時間、周波数、輝度、またはそれらの組合せで伝達することができる。
【0012】
さらに別の実施形態では、誘発電位活動をモニタするステップは、誘発電位の潜時を測定するステップを含むことができ、誘発電位の潜時の減少は、プローブが慢性疼痛の発痛源のより近くに配置されていることを示すことができ、誘発電位の潜時の増加は、プローブが慢性疼痛の発痛源からより遠く離れて配置されていることを示すことができる。さらに、そのようなモニタリングで、第1の神経刺激を、一定の波形、パルス持続時間、周波数、輝度、またはそれらの組合せで伝達することができる。
【0013】
もう1つの実施形態では、誘発電位活動をモニタするステップは、誘発電位の周波数を測定するステップを含むことができ、誘発電位の周波数の増加は、プローブが慢性疼痛の発痛源のより近くに配置されていることを示すことができ、誘発電位の周波数の減少は、プローブが慢性疼痛の発痛源からより遠く離れて配置されていることを示すことができる。さらに、そのようなモニタリングで、第1の神経刺激を、一定の波形、パルス持続時間、周波数、輝度、またはそれらの組合せで伝達することができる。
【0014】
さらに別の実施形態では、上記方法は、脳の1若しくは複数の所定の領域における誘発電位活動をモニタするステップを含むことができ、脳の1若しくは複数の所定の領域における、所定の振幅、所定の潜時、所定の周波数、所定の形状、またはそれらの組合せを有する誘発電位活動の存在は、標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部であることを示し得る。
【0015】
追加の実施形態では、誘発電位活動をモニタするステップは、誘発電位の振幅、誘発電位の潜時、誘発電位の周波数、誘発電位の形状、またはそれらの組合せを測定するステップを含むことができ、ここで、所定の刺激において、十分な振幅、潜時、周波数、形状、またはそれらの組合せを有する誘発電位が観察された場合には、慢性疼痛の治療のために標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部に十分に極めて近接していることを示し得る。
【0016】
さらに、上記方法は、十分な振幅、潜時、周波数、形状、またはそれらの組合せを有する誘発電位活動が観察される標的神経に沿った位置において、プローブから、神経ブロックを生み出すのに十分な第2の神経刺激を伝達するステップと、第2の神経刺激が伝達されたときに脳波活動をモニタするステップと、神経ブロックの適用中に効果的な神経ブロックと合致する脳波活動が観察された場合に、標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部として正しく識別されたことを確認するステップと、神経ブロック中に効果的な神経ブロックと矛盾する脳波活動が観察された場合に、標的神経は慢性疼痛に関連する神経経路の一部ではないと判断するステップとを含むことができる。
【0017】
さらに、上記方法は、標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部として正しく識別されたときに慢性疼痛を治療するステップを含むことができ、慢性疼痛を治療するステップは、十分な振幅、潜時、周波数、形状、またはそれらの組合せを有する誘発電位活動が観察される標的神経に沿った位置において、プローブから、第3の神経刺激を伝達するステップを含むことができ、第3の神経刺激は、慢性疼痛に関連する神経経路を障害するのに十分な刺激であり得る。
【0018】
さらに、上記方法は、標的神経の効果的な障害を確認するべく、第1の神経刺激、第2の神経刺激、またはその両方を繰り返すことによって、神経経路の障害が完了していることを検証するステップを含むことができ、ここで、神経経路の効果的な障害と合致する脳波活動が観察された場合には、障害は完了している。
【0019】
さらに、上記方法は、プローブを介して、慢性疼痛の発痛源である疑いがない追加的な神経に対して、脳における反応を誘導するのに十分な追加的な神経刺激を伝達するステップと、脳波用電極を介して、脳におけるベースライン活動、追加的な神経刺激の結果としての脳内の誘発電位活動、またはその両方をモニタするステップとを含むことができる。さらに、上記方法は、標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部として正しく識別されることを検証するべく、追加的な神経刺激からの誘導された反応を第1の神経刺激からの誘導された反応と比較するステップを含むこともでき、ここで、追加的な神経刺激からの誘導された反応を第1の神経刺激からの誘導された反応と比較した場合の両者の違いは、標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部であることを示す。
【0020】
一実施形態では、誘発電位活動のモニタリングは、脳波を用いて行われる。別の実施形態では、上記方法を実行するために用いられるプローブは、経皮用プローブであってよい。追加の実施形態では、第1の神経刺激は電気的刺激であってよい。同お様に、他の実施形態では、第2の神経刺激、第3の神経刺激及び追加的な(第4の)神経刺激は電気的刺激であってよい。第1の神経刺激は、約100Hz以下の周波数及び約0.01〜50ミリアンペア(mA)の振幅で伝達することができる。さらに、第1の神経刺激は方形波として伝達することができ、該方形波の各パルスは、約0.01〜10ミリ秒の持続時間を有する。その一方で、第2の神経刺激は、約1,000〜100,000Hzの周波数及び約0.01〜50mAの振幅で伝達することができる。さらに、第3の神経刺激は、約200,000Hzないし約1MHzの周波数及び最大約1.4Aの振幅で伝達することができる。
【0021】
さらに別の実施形態では、神経刺激及び脳波モニタリングによって慢性疼痛に関連する神経経路を同定するためのシステムが開示されている。該システムは、プローブと、脳波用電極と、プローブ及び脳波用電極に結合されたコントローラとを含む。コントローラは、プローブを介して、慢性疼痛の発痛源である疑いがある標的神経に対して、脳における慢性疼痛反応を誘導するのに十分な第1の神経刺激を伝達するように構成されている。さらに、コントローラは、脳波用電極を介して、脳におけるベースライン活動、第1の神経刺激の結果としての脳内の誘発電位活動、またはその両方をモニタするように構成されている。
【0022】
1つの特定の実施形態では、上記システムは、脳の1若しくは複数の所定の領域における誘発電位活動をモニタすることができ、脳の1若しくは複数の所定の領域における誘発電位活動の存在は、標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部であることを示し得る。
【0023】
別の実施形態では、上記システムは、誘発電位の振幅を測定することによって誘発電位活動をモニタすることができ、ここで、誘発電位の振幅の増加は、プローブが慢性疼痛の発痛源のより近くに配置されていることを示すことができ、誘発電位の振幅の減少は、プローブが慢性疼痛の発痛源からより遠く離れて配置されていることを示すことができる。さらに、そのようなモニタリングで、第1の神経刺激を、一定の波形、パルス持続時間、周波数、輝度、またはそれらの組合せで伝達することができる。
【0024】
もう1つの実施形態では、上記システムは、誘発電位の潜時を測定することによって誘発電位活動をモニタすることができ、ここで、誘発電位の潜時の減少は、プローブが慢性疼痛の発痛源のより近くに配置されていることを示すことができ、誘発電位の潜時の増加は、プローブが慢性疼痛の発痛源からより遠く離れて配置されていることを示すことができる。さらに、そのようなモニタリングで、第1の神経刺激を、一定の波形、パルス持続時間、周波数、輝度、またはそれらの組合せで伝達することができる。
【0025】
さらに別の実施形態では、上記システムは、誘発電位の周波数を測定することによって誘発電位活動をモニタすることができ、ここで、誘発電位の周波数の増加は、プローブが慢性疼痛の発痛源のより近くに配置されていることを示すことができ、誘発電位の周波数の減少は、プローブが慢性疼痛の発痛源からより遠く離れて配置されていることを示すことができる。さらに、そのようなモニタリングで、第1の神経刺激を、一定の波形、パルス持続時間、周波数、輝度、またはそれらの組合せで伝達することができる。
【0026】
さらに別の実施形態では、上記システムは、脳の1若しくは複数の所定の領域における誘発電位活動をモニタすることができ、脳の1若しくは複数の所定の領域における、所定の振幅、所定の潜時、所定の周波数、所定の形状、またはそれらの組合せを有する誘発電位活動の存在は、標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部であることを示し得る。
【0027】
追加の実施形態では、上記システムは、誘発電位の振幅、誘発電位の潜時、誘発電位の周波数、誘発電位の形状、またはそれらの組合せを測定することによって誘発電位活動をモニタすることができ、所定の刺激において、十分な振幅、潜時、周波数、形状、またはそれらの組合せを有する誘発電位が観察された場合には、慢性疼痛の治療のために標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部に十分に極めて近接していることを示し得る。
【0028】
さらに、上記システムのコントローラは、十分な振幅、潜時、周波数、形状、またはそれらの組合せを有する誘発電位活動が観察される標的神経に沿った位置において、神経ブロックを形成するのに十分な第2の神経刺激を伝達するプローブを介して、第2の神経刺激を伝達し、第2の神経刺激が伝達された場合に脳波活動をモニタするように構成することができ、さらに、上記システムは、神経ブロックの適用中に効果的な神経ブロックと合致する脳波活動が観察された場合に、標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部として正しく識別されたことを確認し、かつ、神経ブロック中に効果的な神経ブロックと矛盾する脳波活動が観察された場合に、標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部ではないと判断する。
【0029】
追加の実施形態では、上記システムは、標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部として正しく識別されたときに慢性疼痛を治療することができ、コントローラは、十分な振幅、潜時、周波数、形状、またはそれらの組合せを有する誘発電位活動が観察される標的神経に沿った位置において、プローブから、第3の神経刺激を伝達するように構成することができ、第3の神経刺激は、慢性疼痛に関連する神経経路を障害するのに十分な刺激であり得る。
【0030】
さらに、コントローラは、標的神経の効果的な障害を確認するべく、第1の神経刺激、第2の神経刺激、またはその両方を繰り返すことによって、神経経路の障害が完了していることを検証するようにさらに構成することができ、ここで、神経経路の効果的な障害と合致する脳波活動が観察された場合には、障害は完了している。
【0031】
さらに別の実施形態では、コントローラは、プローブを介して、慢性疼痛の発痛源である疑いがない追加的な神経に対して、脳における反応を誘導するのに十分な追加的な神経刺激を伝達するように構成することができ、さらに、コントローラは、脳波用電極を介して、脳におけるベースライン活動、追加的な神経刺激の結果としての脳内の誘発電位活動、またはその両方をモニタするように構成されている。さらに、標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部として正しく識別されることを検証するべく、追加的な神経刺激からの誘導された反応を、第1の神経刺激からの誘導された反応と比較することができ、ここで、追加的な神経刺激からの誘導された反応を第1の神経刺激からの誘導された反応と比較した場合の両者の違いは、標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部であることを示す。
【0032】
本発明のシステムでは、プローブは経皮用プローブであってよい。追加の実施形態では、第1の神経刺激は電気的刺激であってよい。同様に、他の実施形態では、第2の神経刺激、第3の神経刺激、及び追加的な(第4の)刺激は電気的刺激であってよい。第1の神経刺激は、約100Hz未満の周波数及び約0.01〜50mAの振幅で伝達することができる。その一方で、第2の神経刺激は、約1,000〜100,000Hzの周波数及び約0.01〜50mAの振幅で伝達することができる。さらに、第3の神経刺激は、約200,000Hzないし約1MHzの周波数及び最大約1.4Aの振幅で伝達することができる。追加の実施形態では、コントローラは、電気リードを介してプローブに接続されたパルス発生器によって、プローブに第1の神経刺激を伝達することができる。さらに別の実施形態では、コントローラは、電気リードを介してプローブに接続されたパルス発生器によって、プローブに第2の神経刺激を伝達することができる。さらに別の実施形態では、コントローラは、電気リードを介してプローブに接続されたパルス発生器によって、プローブに第3の神経刺激を伝達することができる。
【0033】
追加の実施形態では、慢性疼痛を治療するための装置が開示される。該装置は、慢性疼痛の発痛源を同定する第1の神経刺激、慢性疼痛の発痛源が同定されたことを検証する第2の神経刺激、慢性疼痛を治療する第3の神経刺激を含む、複数の神経刺激を伝達するための少なくとも1つのプローブと、複数のビュー領域を表示するように構成されたモニタとを含む。
【0034】
別の実施形態では、装置は、少なくとも1つのプローブを含むことができる。さらに別の実施形態では、装置は、複数のRFプローブを含むことができる。別の実施形態では、装置は、複数のチャネルを有するように構成することができ、各チャネルは、互いに異なる慢性疼痛の発痛源または部位を治療するように構成されている。
【0035】
別の実施形態では、モニタは、複数のビュー領域を有するディスプレイ画面を含むことができる。さらに、ディスプレイ画面は、第1のビュー領域、第2のビュー領域及び第3のビュー領域を有することができ、ここで、第1のビュー領域は慢性疼痛の発痛源の同定に関する情報を表示し、第2のビュー領域は慢性疼痛の発痛源の検証に関する情報を表示し、第3のビュー領域は慢性疼痛の治療に関する情報を表示する。
【0036】
本発明の他の特徴及び態様については、以下でより詳細に説明する。
【0037】
本明細書の残りの部分において、当業者向けの本発明の全面的かつ実施可能な開示(ベストモードを含む)を、添付の図面を参照しながら、より具体的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】慢性疼痛を診断及び治療するための例示的なシステムの概略図である。
図2】神経を刺激するため、神経線維活動をブロックするべく標的神経の近傍に電気エネルギーを直接送達するため、及び神経を焼灼するために用いられる、或る例示的なプローブの斜視側面図である。
図3】神経を刺激するため、神経線維活動をブロックするべく標的神経の近傍に電気エネルギーを直接送達するため、及び神経を焼灼するために用いられる、別の例示的なプローブの斜視側面図である。
図4(a)】様々な振幅、潜時及び形状を有する誘発電位を示すグラフである。破線は、トリガ時間、すなわち刺激パルスの発現を示す。
図4(b)】単一刺激(垂直破線)によって誘導された複数の誘発電位を示すグラフである。プロットAは、Δtの潜時とともに誘導された誘発電位を示し、ここで、誘発電位は、その後、一定の間隔(例えば、Δt=Δt=Δt)で再発する。プロットBは、ワインドアップと呼ばれる現象であって、刺激が、発生のたびに周波数が増加するような再発誘発電位を誘導する現象を示す。
図4(c)】神経焼灼または高周波神経ブロックの前(プロットA)及び後(プロットB)に記録された誘発電位活動を説明するグラフである。プロットAには刺激(垂直破線)に続いて誘発電位が示されているが、プロットBには存在しない。
図5】慢性疼痛の診断及び治療に用いることができる例示的なキットの上面図である。
図6】単一刺激(垂直破線)によって誘導された誘発電位を、正常な神経(実線波形)と、慢性疼痛に関連する神経(破線波形)とで比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本明細書及び図面における符号の繰り返しの使用は、本発明の同一または類似の特徴または要素を表すものとする。
【0040】
定義
【0041】
本明細書において、「脳波モニタリング」なる語は、脳内の神経または神経学的活動であって、ベースライン、自発的、または誘導されたものであり得る活動の観察を指す。観察は、電極を通して、脳波(EEG)または任意の他の適切な手段によって行うことができる。換言すれば、脳波モニタリングは、脳波図に表されるような脳内の電位の観察を指す。
【0042】
本明細書において、「誘発電位」なる語は、神経刺激を受けての神経学的活動の結果の測定値を指す。例えば、誘発電位は、神経刺激を受けての神経学的活動のバーストを指すことができる。
【0043】
本明細書において、「低周波電気神経刺激」なる語は、誘発電位(EP)を誘導する波形の低周波電気エネルギーの印加を指す。非限定的な実施例として、低周波電気神経刺激が伝達される周波数は、約100ヘルツ(Hz)以下であってよい。
【0044】
本明細書において、「高周波電気神経ブロック刺激」なる語は、刺激またはブロック部位を通る活動電位の伝搬をブロックする波形の高周波電気エネルギーの印加を指す。非限定的な実施例として、高周波電気神経刺激が伝達される周波数は、約1,000〜100,000Hzであってよい。
【0045】
本明細書において、「神経焼灼」なる語は、超高周波刺激を用いて(例えば交流により)脳への痛み信号の伝達を遮断するために神経に損傷をもたらすことを指す。神経焼灼は、切除が行われる神経に関連する疼痛の長期緩和をもたらすことができる。
【0046】
本明細書において、「神経障害(nerve impairment)」なる語は、神経または神経経路あるいはそれらの周辺に源を発する神経学的(例えば痛み)信号が、障害された部位を通って送信されないように、神経または神経経路を破壊、改変、破壊、損傷、または焼灼することを指す。
【0047】
本明細書において、「神経ブロック」なる語は、ニューロンの軸索に沿ったインパルスの通過を可逆的または一時的に遮断、妨害、または阻止することを指す。この語は、ニューロンの軸索に沿ったインパルスの通過を一時的に遮断、妨害、または阻止し、神経を動作不能にすることによって、身体の一部において無感覚を生じさせる局所麻酔薬の形態を含むこともできる。
【0048】
本明細書において、「神経経路」なる語は、神経系の一部分を別の部分に接続する手段を指す。
【0049】
本明細書において、「神経刺激」なる語は、神経を刺激する任意の手段、例えば、限定されるものではないが、電気的刺激、機械的刺激、熱的刺激(低温エネルギーの印加を含むが、これに限定されるものではない)、または化学的刺激などを指す。
【0050】
本明細書において、「超高電気神経刺激」なる語は、刺激部位を通る誘発電位の伝搬を防止または阻害するための、神経を十分に障害する波形の超高周波電気エネルギーの印加を指す。非限定的な実施例として、超高周波電気神経刺激が伝達される周波数は、約100,000Hz以上であってよい。
【0051】
代表的な実施形態の詳細な説明
【0052】
ここで、本発明の様々な実施形態について詳細に言及し、本発明の1つ以上の実施例を以下で説明する。各実施例は、本発明の説明として提供され、本発明を制限するものではない。実際には、本発明において、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、様々な変更形態及び変形形態が可能であることは当業者にとって明らかであろう。例えば、1つの実施形態の一部として図示または説明されている特徴を別の実施形態に用いてさらなる実施形態を生み出すことができる。したがって、本発明は、そのような変更形態及び変形形態を、添付の特許請求の範囲及びその均等範囲に含まれるものとして対象にすることとする。
【0053】
一般的に言えば、本発明は、神経刺激及び脳波モニタリングによって慢性疼痛に関連する神経経路を同定するためのシステム及び方法に関する。該システム及び方法は、急性疼痛と区別される慢性疼痛の発痛源を同定することができることを理解されたい。慢性疼痛は、急性疼痛と比べて、脳の異なる領域で、異なる活性化パターンで観察されるからである。ヒトの脳の内側前頭前皮質及び背外側前頭前野から慢性腰痛の神経学的マーカ(例えば異常な神経活動)が記録されてきた。ヘルペス後神経痛患者におけるアロディニア(異痛症)疼痛は、内皮質、S2及び基底核における活動によって特徴付けられる。同様に、変形性関節症の人の痛みは、内皮質によって特徴付けられる。本発明のシステム及び方法は、標的神経の第1の刺激により、慢性疼痛に関与する神経経路を同定し、その後、標的神経の第2の刺激により、正しい標的神経が同定されたことを検証することができる。その後、標的神経の第3の刺激により、慢性疼痛を治療することができる。さらに、追加的な(第4の)刺激により、慢性疼痛に関連していない追加的な神経を刺激することができ、慢性疼痛に関連する神経からの誘導された反応は正常な神経からの誘導された反応とは異なる特性を有することになるので、結果として得られる誘導された反応は、標的神経が慢性疼痛の発痛源であることの追加的な検証を行うための基準反応として用いることができる。
【0054】
1つ以上の対象となる標的神経の第1の刺激を実施するために、所望の位置にプローブを配置することにより標的神経を刺激することができ、ここで、刺激される標的神経は、慢性疼痛の発痛源である疑いがある。その後、プローブから標的神経に対して、脳における慢性疼痛反応を誘導するのに十分な第1の神経刺激を伝達することができ、第1の神経刺激の結果としての脳内の誘発電位活動をモニタすることができる。例えば、刺激は、慢性疼痛反応が誘導されるように十分に高い輝度(例えば電流)または電圧で伝達することができる。
【0055】
様々な実施形態では、慢性疼痛に関連する神経経路を同定するために様々な種類のモニタリングを行うことができる。1つの特定の実施形態では、脳の1若しくは複数の所定の領域における誘発電位活動をモニタすることができ、脳の1若しくは複数の所定の領域における誘発電位活動の存在は、その点で刺激されている標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部であることを示し得る。
【0056】
別の実施形態では、第1の神経刺激を伝達することができ、同時に、脳の或る領域における誘発電位の振幅を測定することができる。さらに、慢性疼痛の発痛源である疑いがある領域にプローブが近づけられたら、第1の神経刺激を、一定の波形、パルス持続時間、周波数、輝度、またはそれらの組合せで伝達することができる。そのようなモニタリングで、誘発電位の振幅の増加は、或る誘発電位測定を以前の誘発電位の振幅測定と比較したときに、プローブが慢性疼痛の発痛源のより近くに配置されていることを示し得る。その一方で、誘発電位の振幅の減少は、或る誘発電位の振幅測定を以前の誘発電位振幅測定と比較したときに、プローブが慢性疼痛の発痛源からより遠く離れて配置されていることを示し得る。
【0057】
別の実施形態では、第1の神経刺激を伝達し、結果として得られた誘発電位間の潜時を測定することができる。そのような実施形態では、慢性疼痛の発痛源である疑いがある領域にプローブが近づけられたら、第1の神経刺激を、一定の波形、パルス持続時間、周波数、輝度、またはそれらの組合せで伝達することができることを理解されたい。そのようなモニタリングで、誘発電位間の潜時の減少は、2つの誘発電位間の時間を以前に測定された誘発電位間の時間と比較すると、慢性疼痛の発痛源のより近くにプローブが配置されていることを示し得る。その一方で、誘発電位間の潜時の増加は、2つの誘発電位間の時間を以前に測定された誘発電位間の時間と比較すると、慢性疼痛の発痛源からより遠く離れてプローブが配置されていることを示し得る。その一方で、第1の神経刺激の結果としての、結果として得られた誘発電位間の周波数を測定することもでき、測定された誘発電位の周波数の経時的な増加は、単位時間当たりの測定された誘発電位の数を比較すると、慢性疼痛の発痛源のより近くにプローブが配置されていることを示し得るが、測定された誘発電位の周波数の経時的な減少は、慢性疼痛の発痛源からより遠く離れてプローブが配置されていることを示し得る。
【0058】
さらに別の実施形態では、第1の神経刺激中のモニタリングは、脳の1若しくは複数の所定の領域、例えば、限定されるものではないが、内側前頭前皮質、背外側前前頭皮質、島皮質、または脳の任意の他の領域であって慢性疼痛が現れ得る領域における誘発電位活動をモニタするステップを含むことができる。慢性疼痛アルゴリズム、または治験を通して決定されるような、所定の振幅、所定の潜時、所定の周波数、所定の形状、またはそれらの組合せを有する誘発電位活動が、脳の1若しくは複数の所定の領域に存在するのであれば、刺激されている標的神経は慢性疼痛に関連する神経経路の一部であると結論付けることができる。さらに、誘発電位活動が存在する脳の領域を用いて、経験している特定の種類の慢性疼痛を決定することができる。
【0059】
さらに別の実施形態では、第1の神経刺激中のモニタリングは、所定の刺激手段、レベル、周期またはパラメータにおいて、またはそれらを通して、誘発電位の振幅、潜時、周波数、形状、またはそれらの組合せを測定するステップを含むことができる。そのような実施形態では、所定の刺激手段、レベル、周期またはパラメータにおいて、十分な振幅、潜時、周波数、形状、またはそれらの組合せを有する誘発電位が観察された場合には、標的神経が、本発明のシステム及び方法を用いて慢性疼痛を治療することができるように、慢性疼痛に関連する神経経路の一部に十分に極めて近接していることを示し得る。
【0060】
或る標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部として同定されたら、十分な振幅、潜時、周波数、形状、またはそれらの組合せを有する誘発電位活動が観察された標的神経に沿った位置において、慢性疼痛反応が誘導されたことを示すために、プローブから第2の神経刺激を伝達することができる。第2の神経刺激は、神経ブロックを生み出すのに十分な刺激であり得る。さらに、第2の神経刺激の伝達中に脳波活動をモニタすることができ、神経ブロックの適用中に効果的な神経ブロックと合致する脳波活動が観察される(例えば、最小限の誘発電位活動が観察されるかまたは全く観察されない)場合に、標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部として正しく識別されたことを確認することができる。その一方で、神経ブロック中に効果的なブロックと矛盾する脳波活動が観察される(例えば顕著な誘発電位活動が観察される)場合に、標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部ではないことを確認することができる。
【0061】
標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部であることを同定した後、及び任意選択で神経ブロックによって標的神経が正しく識別されたことの検証後に、第3の神経刺激により慢性疼痛を治療することができる。例えば、第3の神経刺激は、十分な振幅、潜時、周波数、形状、またはそれらの組合せを有する誘発電位活動が観察される標的神経に沿った位置において、プローブから伝達することができ、第3の神経刺激は、慢性疼痛に関連する神経経路を障害するのに十分な刺激であり得る。その後、標的神経の効果的な障害を確認または検証するために、第1の神経刺激、第2の神経刺激、またはその両方を繰り返すことができ、神経経路の効果的な障害と合致する脳波活動が観察される(例えば、最小限の誘発電位活動が観察されるかまたは全く観察されない)場合には、障害は完了しているかまたは十分である。
【0062】
別の実施形態では、標的神経以外の追加的な神経に沿った位置において、プローブから、追加的な神経は慢性疼痛の発痛源である疑いがない追加的な(第4の)神経刺激を伝達することができる。結果として得られた誘導された反応または誘発電位活動を、標的神経の第1の神経刺激からの誘導された反応と比較することができる。例えば、追加的な神経の刺激によって生じる誘導された反応によって示される、振幅、潜時、周波数、形状、またはそれらの組合せは、正常な神経からの誘導された反応または誘発電位の出現の仕方の基準として働くことができ、これは、標的神経の誘導された反応または誘発電位が、追加的な神経の誘導された反応または誘発電位と比較して出現が明確に区別できるかまたは異なっている場合に、標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部であることの検証として用いることができる。
【0063】
上記の特定の種類の神経刺激は、電気的、機械的、化学的刺激など、様々であってよい。伝達される神経刺激の種類にかかわらず、神経刺激は、経皮用プローブなどのプローブを介して、または任意の他の適切な手段によって伝達することができることを理解されたい。プローブに加えて、本発明のシステムは、脳波(EEG)モニタと、EEG電極とを含むことができる。1つの特定の実施形態では、上記システムは、上記神経に対して第1の(低周波)電気神経刺激を伝達するためにプローブに電気的に取り付けられたパルス発生器をさらに含むことができ、そのときに、神経刺激に関連する脳の領域における誘発電位(EP)を、慢性疼痛に関連する特定の神経を同定する手段としてのEEGによって観察することができる。その後、パルス発生器は、神経ブロックとして働く標的神経に第2の(高周波)電気神経刺激を伝達することができる。第2の(高周波)電気神経刺激の結果としてEEG上のEPが沈黙している場合、ユーザは、標的神経が、慢性疼痛に関与する神経経路(すなわち慢性疼痛の発痛源)に関連していることの検証を行うことができ、その後、慢性疼痛に関与する疼痛伝達経路を、疼痛がもはや感じられないように十分に変更または破壊するべく、第3の(超高周波)電気神経刺激により、例えば損傷をもたらす焼灼によって、または任意の他の適切な方法によって、神経または神経経路を障害することができる。その後、標的神経の効果的な障害を確認するべく、障害/焼灼部位における第1の(低周波)電気神経刺激、焼灼部位における第2の(高周波)電気神経刺激、またはその両方を繰り返すことによって、障害/焼灼の成功を検証することができ、神経経路の効果的な障害と合致する脳波活動が観察された場合には、障害は完了している。例えば、EEGにより測定される脳におけるEPが沈黙している場合、ユーザは、患者がもはや慢性疼痛を感じないように患者の慢性疼痛を引き起こす神経が十分に障害または焼灼されたことの検証を行うことができる。1つの特定の実施形態は、上記したようなパルス発生器による電気神経刺激を含むことができるが、プローブまたは他の伝達装置を用いて、機械的、化学的、または他の適切な手段によって神経刺激を行うこともできることも理解されたい。これに関して、ここで、本発明の様々な実施形態について以下で詳細に説明する。
【0064】
図1を参照すると、慢性疼痛管理システムが示されており、該システムは、第1の(低周波)電気神経刺激を用いて、標的神経を探し出しかつ/または慢性疼痛に関連または関与する神経経路を同定することができ、かつ上記標的神経に対して第2の(高周波)電気神経ブロック刺激を伝達することにより当該標的神経が慢性疼痛の発痛源であることを検証することができ、かつ第3の(超高周波)電気神経刺激を伝達することにより標的神経を焼灼するかまたは別な方法で十分に障害することができ、かつ第1の(低周波)電気神経刺激、第2の(高周波)電気神経刺激のいずれか一方または両方を繰り返すことにより標的神経が首尾よく焼灼されることを確実にすることができる。上記システムは、追加的な神経に対して追加的な(第4の)電気神経刺激を伝達することにより、結果として得られた誘導された反応を、上記の如く標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部であることの検証のための基準として用いることができる。通常、電気神経刺激は、経皮用プローブを利用して標的神経に対して伝達することができる。慢性疼痛管理システムは、1つ以上の標的神経に対して、所定の電圧、周波数、振幅(電流)などで所定の電気パルスを制御及び伝達するための複数の装置を含む。図1に示したように、慢性疼痛管理システム100にはプローブ110が含まれており、プローブ110は、電気リード120によって、システム100の残りの部分(パルス発生器130、ユーザインタフェース140、ディスプレイ141、及びコントローラ150を含む)に接続されている。プローブは、経皮用プローブ110または任意の他の適切なプローブであってよい。システム100には、患者監視システム160も含まれており、さらに絶縁型電源システム194が含まれてもよい。各構成要素については、以下で詳細に説明する。
【0065】
プローブ
【0066】
本発明の慢性疼痛管理システム100において、任意の適切なプローブ110を用いることができるが、図2は、適切な経皮用プローブ210の一例をより詳細に示している。図2を参照すると、システム100(図1を参照)において使用可能な、標的神経220を刺激するためのプローブ210が示されている。プローブ210は、コントローラ150に結合させることができ、コントローラ150は、とりわけ、パルス発生器130(図1を参照)を調節する。プローブ210は、リターン分散電極208と、流体成分注入のための流体送達機構211とを含むこともでき、流体送達機構211は、例えばシリンジなどであるが、これに限定されるものではない。パルス発生器130を制御することで高周波(RF)エネルギーなどのエネルギーをプローブ210に供給することができ、その一方で、コントローラ150によって、プローブ210の少なくとも1つの温度センサからの温度フィードバックを測定することもできる。さらに、プローブ210の導電性領域212とリターン分散電極208との間で、インピーダンス測定を行うことができる。インピーダンス測定は、特定の電気特性を有する神経組織の領域を探し出すためにプローブを配置する間に用いることができる。さらに、コントローラ150は、脳波(EEG)、心電図(ECG)測定、筋電図(EMG)測定、または以下で詳細に説明するような治療手順に対する患者の反応を評価するための他の手段によって決定されるような誘発電位(EP)に反応し得る。
【0067】
プローブ210は、導電性シャフト214及びハンドル216を含むことができる。導電性シャフト214は、その外周面の大部分に沿って絶縁コーティング218を有することができ、絶縁コーティング218は、隣接する剥き出しの導電性領域212で終わっている。導電性領域212は、神経経路204の標的神経220にエネルギーを伝達するように操作可能であり得る。さらに、導電性領域212は、プローブ210を神経経路204内、神経経路204の近傍、または神経経路204の周辺に刺入すること、並びにプローブ210を所望の標的神経220まで導くことを支援することができる。したがって、導電性領域212が様々な寸法及び形状を有することができ、かつ本発明で用いられるプローブ210上の様々な位置に配置され得ることは、当業者に理解されるであろう。例えば、導電性領域212は、様々な手順の要件に従って、尖っているか、鋭いか、鈍いか、または開口している、様々な形状をとることができる。また、第1の実施形態における導電性領域212の長さは約2〜10mmであるが、この長さは手順要件に応じて異なり得る。導電性領域212は、任意選択で医療グレードのステンレス鋼製であってよいが、その他の導電性の生体適合性材料を同様に用いることもできる。
【0068】
一実施形態では、シャフト214及び導電性領域212は、導電性材料製、例えばステンレス鋼製であってよい。その一方で、絶縁コーティング218は、シャフト214の周囲の組織にシャフト214から高周波電流が伝わらないように、任意の種類の絶縁材料で製造することができ、絶縁材料は、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)を含むが、これに限定されるものではない。さらに、シャフト214は、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの開口部222を有することができ、該開口部を通して治療用組成物を投与しかつプローブ210から流出させることができる。
【0069】
導電性領域212を神経経路204の標的神経220に到達するように操作することを容易にするために、プローブ210の導電性シャフト214によってプローブ210に剛性を与えることができ、その場合には、シャフト214は剛体または半剛体であることが好ましい。他の実施形態では、シャフト214は可撓性を有するものであってよい。一実施形態では、シャフト214は、その長さに沿って中空をなし、ルーメンを画定するものであってよい。シャフト214は、導電性領域212及び/または標的神経220に治療用組成物を伝達するため、及びプローブ210に関連する何らかの配線を支持しかつ取り囲むために用いることができる。さらに、シャフト214の遠位端に関連する温度センサ用の配線に加えて、開口先端を有する実施形態においては、シャフト214の内径を、スタイレットまたはオブチュレータを収容するように十分に寸法決定することができる。いくつかの実施形態では、シャフト214の長さは、約5〜15センチメートル(cm)であってよい。しかし、当該長さは、標的神経の位置及び/または実行される手順に従って、この範囲を逸脱するものであってもよいことを理解されたい。
【0070】
一実施形態では、ハンドル216は、該ハンドルに結合されかつシャフト214のルーメンに流体連通する可撓性チューブ224を含むことができる。チューブ224の可撓性は、プローブ210の操縦性を高めることができる。可撓性チューブ224の近位端を流体送達インターフェース接続部226に結合することができる。他の実施形態(図示せず)では、ハンドル216は必須ではなく、可撓性チューブ224をシャフト214に結合することができる。ユーザがより容易にプローブ210を操作することができるように、任意選択でハンドル216に把持部228を設けることもできる。一実施形態では、ハンドル216は、医療グレードの射出成形可能なプラスチックまたは他の材料であって、例えばエチレンオキシドを用いて滅菌可能な材料から製造される。ハンドル216は、開口部マーカ230を有することもでき、開口部マーカ230は、シャフト214の軸に沿って開口部222と一直線上に位置し、かつシャフト214の軸の周りの開口部222の向きを示すために用いることができる。開口部マーカ230は、開口部222の向きを示すことによって、ユーザが標的組織に対して治療用組成物を送達することを可能にする。ハンドル216は、方向マークをさらに含むことができ、方向マークには、プローブ210がシャフト214の軸を中心に例えば180°回転したことを示すための第1の方向マーク232と、プローブ210がシャフト214の軸を中心に例えば90°回転したことを示すための第2の方向マーク234とが含まれる。その結果、ユーザは、第1及び/または第2の方向マーク232、234に注意を向けることによって、神経経路204上または神経経路204の近傍の神経組織にプローブ210が挿入される間にシャフト214の軸を中心としてプローブ210が回転することを防止したり、シャフト214の軸を中心としてプローブ210を所望の向きまで回転させたりすることができる。第1及び第2の方向マーク232、234は、視覚的指示手段または触覚的指示手段であってよく、視覚的指示手段は、ハンドル216と同一平面上に設けることができ、触覚的指示手段は、神経経路204上または神経経路204の近傍の神経組織にプローブ210が挿入されるときにユーザがマーク232、234を見たり感じたりすることができるように、テクスチャ加工したり浮かび上がらせたりすることができる。ハンドル216の近位端は、ストレインリリーフ部236を有することもでき、ストレインリリーフ部236の近位端から遠位端まで把持部228が延在している。図2では、把持部228は、プローブ210をシャフト214の軸を中心に回転させかつ神経経路204上または神経経路204の近傍の神経組織に挿入する間に、ユーザに摩擦点を提供するべく、例えば互いに平行なリッジにより、テクスチャ加工されている。この実施形態では、把持部228上のリッジを用いて、装置の回転角を決定することもできる。一実施形態では、ストレインリリーフ部236は、非丸形(非円形)断面を有することができ、該断面は、正方形、三角形、または機械の歯車のような「鋸歯状」であってよい。ストレインリリーフ部236は、遠位外径をハンドル216に適合するようにより大きくし、近位外径を電気ケーブル238及び可撓性チューブ224を固定するようにより小さくした、テーパ形状をなすものであってよい。このテーパは、ユーザが神経経路204上または神経経路204の近傍の神経組織にプローブ210を進める際に、把持部をより握りやすくし、かつユーザの指を滑りにくくしている。ストレインリリーフ部236は、ユーザのために心地よいハンドルを提供することができ、ユーザのグリッピングの好みに合うものであってよい。図2では、電気ケーブル238及び可撓性チューブ224は、互いに平行にかつ隣接してハンドル216及びストレインリリーフ部236から延出している。注目すべきことに、この実施形態では、電気ケーブル238及び可撓性チューブ224は、互いに対して垂直にハンドル216から延出してはいない。この配置は、握り心地の良さを提供することができ、配置中、回転中、挿入中などにおけるプローブ210の操作の容易性を向上させることができる。
【0071】
1つの特定の実施形態では、コントローラ150から、パルス発生器130(図1)を通り、電気コネクタ240と、電気ケーブル238と、導電性シャフト214とを含む電気的結合を経て、導電性領域212に対して電気エネルギーを供給することができる。導電性領域212を除く全ての電気接点は、電気コネクタ240内に位置するコネクタピンハウジングによってユーザから絶縁させることができる。電気ケーブル238は、コントローラ150を導電性シャフト214に柔軟に結合させることができ、それによって、エネルギーがパルス発生器130(図1)を経て導電性領域212に供給される。電気ケーブル238は、温度データを中継してコントローラ150に送り返すこともできる。1つの特定の実施形態では、電気ケーブル238内の1つの導体が、熱電対線及びRF送達線の両方の機能を果たすことができる。両方の目的のために単一の導体を使用することで、電気ケーブル238の全体質量が減少し、神経経路204における神経組織内、神経組織の近傍、または神経組織の周辺にプローブを配置する間にハンドル216に加えられる力及びモーメントが最小になる。代わりに、別体をなすケーブル及び/または導体を温度センサと併用することもできることは、当業者に理解されるであろう。
【0072】
さらに、患者の体内の組織の或る領域への治療用組成物の投与を可能にするために、流体送達機構211を流体送達インターフェース接続部226に柔軟に結合させて、流体送達インターフェース接続部226を通って可撓性チューブ224を経由してシャフト214に送ることができる。したがって、標的神経220を治療するために、プローブ210を流体送達機構211及びパルス発生器130(図1)に同時に接続することができる。流体送達インターフェース接続部226は、流体が流体送達機構211から可撓性チューブ224へ流れるようにする任意のコネクタ、例えばルアー型コネクタを含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0073】
操作中に、プローブ210は、例えば標的神経220において、神経経路204に近い領域内に挿入される。標的神経220を刺激するべく導電性領域212を用いて電気エネルギーを印加することによって、プローブ210の適切な配置を確認することができるが、詳細については後述する。流体送達機構211を作動させることによって、任意選択で麻酔流体または別の治療用組成物を投与することができる。麻酔薬を含む薬物は別として、投与される治療用組成物は、例えば、導電性のある流体、または必要に応じて組織を加温または冷却するために用いられる流体を含み得る。治療用組成物は、流体送達機構211から出て、流体送達インターフェース接続部226、可撓性チューブ224、及びシャフト214のルーメンを通過して、導電性領域212に至って開口部222から流出することができる。プローブ210に流体送達システムを組み込むことにより、流体送達機構211を流体送達インターフェース接続部226に予め接続することができる。そうすると、治療用組成物を投与するために別の装置を使用したり、ひいては除去したりする必要性がなくなり、その必要性があれば通常は導電性領域212の配置調節を行うべきであったところ、その必要性がなくなることにより、導電性領域212が想定外の動きをする可能性が低下し得る。さらに、可撓性チューブ224を使用することで、治療用組成物を投与するために流体送達機構211を作動させたとき、例えばシリンジのプランジャが押されたときに、ハンドル216及びシャフト214に作用する力をさらに減少させることができる。したがって、プローブ210の適切な配置を確認するための刺激の後、プローブ210の手動操作は最小限に抑えられ、それ故、プローブ210ひいては導電性領域212の位置がずれて適所を外れる可能性が低下する。さらに、プローブ210のシャフト214の遠位端が鋭いかまたは尖っているものを用いると、最初に別体をなすイントロデューサチューブまたは針を挿入する必要なしにプローブ210を挿入することができ、よって、プローブ210の位置がずれる可能性がさらに低下する。しかしながら、イントロデューサの使用も可能であり、かつ本発明の範囲内であると考えられる。
【0074】
任意選択で治療用組成物を投与した後、導電性領域212を通して標的神経220に高周波(RF)エネルギーを印加することができる。プローブ210が標的神経220に接触して電気的に操作される場合、閉回路を形成するためにリターン分散電極208が提供される。エネルギー送達中に流体送達機構211は尚もプローブ210に接続されているので、エネルギーの送達と同時に治療用組成物の送達が可能であることを理解されたい。神経刺激中及び/または治療中に、コントローラ150によるプローブ210の安全な操作を確実にするのを助けるために、温度センサフィードバックを用いて、標的神経220に送達される高周波(RF)エネルギーを自動的に制御することができる。例えば、RFエネルギーの印加中に温度センサフィードバック機構によって測定される身体組織温度が急速に上昇した場合には、例えばどの手順またはステップが実行されているかに基づいて、所望の設定温度までの制御された勾配を提供するために、標的神経220へのRFエネルギー送達を一時停止するかまたは減少させることができる。このようにして、ユーザは、神経組織にRFエネルギーを盲目的に印加することはないが、RFエネルギー送達が組織温度に及ぼす効果をリアルタイムで知らされる。
【0075】
いくつかの実施形態では、既に説明したように、可撓性チューブ224は、流体送達がプローブ210に追加の力を導入しないことを確実にするために必要な機械的遊びを提供することができる。手順にもよるが、プローブ210に他の治療ツール242を柔軟に接続することもできる。したがって、プローブ210には、プローブ210に柔軟に結合されるこれらの治療ツール用の予め形成されたコネクタを設けることができる。
【0076】
図3は、適切な経皮用プローブ310の別の実施形態を示している。プローブ310は、リード120を介してコントローラ150に、ポンプケーブル311、1若しくは複数の近位冷却供給チューブ312、及び1若しくは複数の近位冷却戻りチューブ314を介して1若しくは複数の冷却装置308に、それぞれ結合されることができる。プローブは、コントローラ150によって制御されるパルス発生器130(図1)に結合されることもできる。図3に示したように、プローブ310をリード120に接続することができるように、リード120の遠位領域324において、リード120を2つの遠位端336に分けることができるスプリッタ330を含むことができる。その一方で、リード120の近位端328は、コントローラ150に接続されている。この接続は、例えばリード120の近位端328がコントローラ150内に埋め込まれているような恒久的な接続であっても、あるいは例えばリード120の近位端328が電気コネクタによってコントローラ150に接続され得るような一時的な接続であってもよい。リード120の2つの遠位端336は、プローブ310に結合するため及びプローブ310とコントローラ150との間の電気的接続を確立するために操作可能であるコネクタ340で終端することもできる。
【0077】
1若しくは複数の冷却装置308を用いることができ、冷却装置308は、プローブ310に位置しかつプローブ310に最も近い材料の温度を低下させる任意の手段を含むことができる。冷却装置308は、流体を、冷却装置308から、1若しくは複数の近位冷却供給チューブ312、プローブ310、1若しくは複数の近位冷却戻りチューブ314を通って、冷却装置308に戻るように循環させるように操作可能である2つの蠕動ポンプを含むことができる。流体は、水または任意の他の適切な流体であってよい。他の実施形態では、冷却装置308は、1台のみの蠕動ポンプ、または1若しくは複数の電熱冷却装置、または任意の他の冷却手段を含むことができる。冷却装置308は、少なくとも一方向に、任意選択で双方向に、コントローラ150と通信するように操作可能であり得る。このようにして、冷却装置308とコントローラ150との間にフィードバック制御を確立することができる。フィードバック制御には、コントローラ150、プローブ310、及び冷却装置308が関与するが、任意の2つの装置間の任意のフィードバックも考慮される。フィードバック制御は、例えば、コントローラ150の構成要素であり得る制御モジュールに実装することができる。この実施形態では、コントローラ150は、プローブ310と、そして冷却装置308と、双方向に通信するように操作可能であり得る。ここで、双方向通信は、別の装置との信号の送受信が可能であることを指す。
【0078】
フィードバック制御の例として、コントローラ150は、プローブ310から温度測定値を受信することができる。例えば、温度測定値に基づいて、コントローラ150は、何らかの動作、例えば、パルス発生器130(図示せず)からプローブ310へ送られる出力の調整を行うことができる。例えば、温度測定値が低い場合にはプローブ310への出力を増加させ、温度測定値が高い場合には減少させることができる。場合によっては、コントローラ150は、プローブ310への出力を終了することができる。このように、コントローラ150は、プローブ310から信号(例えば温度測定値)を受信し、適切な動作を判断し、信号(例えば減少または増加した出力)をプローブ310に送り返すことができる。あるいは、コントローラ150は、プローブ310に供給される冷却流体の流量または程度を増加または減少させるために、1若しくは複数の冷却装置308に信号を送信することができる。
【0079】
あるいは、1若しくは複数の冷却装置308が1若しくは複数の蠕動ポンプを含む場合、1若しくは複数のポンプは、コントローラ150に流体流量を伝えることができ、この流量を調整するようにポンプに命令するコントローラ150からの通信を受信することができる。場合によっては、1若しくは複数の蠕動ポンプは、流量を変えるかまたは一定期間止めることによってコントローラ150に応答することができる。冷却装置308が止められた状態では、プローブ310に関連する如何なる温度センサも冷却流体の影響を受けず、周囲組織温度のより正確な測定を行うことができる。
【0080】
さらに他の実施形態では、1若しくは複数の冷却装置308は、プローブ310間の距離に応じて、係脱または冷却の速度を低下させることができる。例えば、所望の温度を達成するために領域内に十分な電流密度が存在するように上記距離が十分に短い場合には、冷却はほとんどまたは全く必要とされないであろう。そのような実施形態では、エネルギーは、治療すべき神経組織の領域を通して、第1及び第2のエネルギー送達装置392間において優先的に集中しており、それによって帯状野損傷(strip lesion)を形成する。帯状野損傷は、アクティブ電極が同様の寸法のリターン電極に極めて近接しているときに形成される被加熱組織の長楕円形の容積によって特徴付けられる。このことは、所与の出力において、電流密度が電極間において優先的に集中しており、温度の上昇が電流密度に起因するために起こる。
【0081】
1若しくは複数の冷却装置308は、例えば、冷却流が妨げられている場合や、1若しくは複数の冷却装置308の蓋が開いている場合に、1若しくは複数の冷却装置308に関連する1若しくは複数の起こり得る誤り及び/または異常をコントローラ150に警告するために、パルス発生器130と通信することもできる。パルス発生器130は、次に、ユーザへの警告、手順の中断、活動の変更のうちの少なくとも1つによって、誤り信号に従って作動することができる。
【0082】
さらに他の実施形態では、コントローラ150は、1若しくは複数の冷却装置308のうちの1つのみと通信することができ、あるいは装置間の通信は一方向であってよい。例えば、1若しくは複数の冷却装置308は、コントローラ150から入力信号を受信するが、コントローラ150に信号を送り返さないように操作可能であり得る。上記のフィードバックシステムに加えて、コントローラ150は、脳波(EEG)、心電図(ECG)測定、筋電図(EMG)測定、または後述するような治療手順に対する患者の反応の何か他の測定による誘発電位(EP)に反応し、その後、それに応じて反応することができる。
【0083】
図3に示したように、1若しくは複数の冷却装置308とコントローラ150との間の通信を促進する手段は、コントローラ150を1若しくは複数の冷却装置308に電気的に接続するポンプケーブル311の形態をとることができる。他の実施形態では、コントローラ150及び1若しくは複数の冷却装置308は、RS−232ケーブル、光ファイバケーブル、USBケーブル、Firewire(登録商標)(IEEE1394)ケーブルまたは他の電気的結合手段により接続することができる。さらに別の実施形態では、コントローラ150と1若しくは複数の冷却装置308との間の通信は、何か他の通信プロトコル、例えば、限定されるものではないが、赤外線、無線、ブルートゥース(登録商標)などを用いて達成することができ、本発明はこの点において限定されるものではない。
【0084】
図3に示したように、1若しくは複数の近位冷却供給チューブ312は、その遠位端において、近位供給チューブコネクタ316を含むことができる。さらに、1若しくは複数の近位冷却戻りチューブ314は、その遠位端において、近位戻りチューブコネクタ318を含むことができる。
【0085】
一実施形態では、プローブ310は、近位領域360、ハンドル380、中空の細長いシャフト384、及び遠位先端領域390を含むことができ、遠位先端領域390はエネルギー送達装置392を含む。近位領域360は、遠位冷却供給チューブ362、遠位供給チューブコネクタ366、遠位冷却戻りチューブ364、遠位戻りチューブコネクタ368、プローブアセンブリケーブル370、及びプローブケーブルコネクタ372を含むことができる。この実施形態では、遠位冷却供給チューブ362及び遠位冷却戻りチューブ364は、プローブ310の操縦性を高めることができるように可撓性チューブであってよいが、剛性チューブを用いる別の実施形態も可能である。
【0086】
一実施形態では、近位供給チューブコネクタ316は、遠位供給チューブコネクタ366と連動するように操作可能であり得、近位戻りチューブコネクタ318は、遠位戻りチューブコネクタ368と連動するように操作可能であり得る。このことは、プローブ310のモジュール性を維持しつつ冷却流体を流すことができる回路の確立に資する。
【0087】
さらに、図3に示した実施形態では、プローブケーブルコネクタ372は、プローブアセンブリケーブル370の近位端に配置することができ、かつコネクタ340のうちの1つに可逆的に結合するように操作可能であるので、コントローラ150とプローブ310との間において電気的接続を確立することができる。プローブアセンブリケーブル370は、プローブ310の特定の構造にもよるが、1若しくは複数の導体を含むことができる。例えば、プローブアセンブリケーブル370は5つの導体を含むことができ、それによって、プローブアセンブリケーブル370は、コントローラ150によって決定されるパルス発生器130(図1)からのRF電流をエネルギー送達装置392に伝達することができるだけでなく、後述するように、コントローラ150に複数の温度検出装置を接続することもできる。
【0088】
エネルギー送達装置392は、遠位先端領域390に隣接する神経組織の領域にエネルギーを送達する任意の手段を含むことができる。例えば、エネルギー送達装置392は、後述するように、パルス発生器130からの高周波(RF)エネルギーを含むことができる。一実施形態では、エネルギー送達装置392には電極が含まれる。電極の活性領域は、長さ2〜20ミリメートル(mm)であってよく、電極によって送達されるエネルギーは、RF範囲の電流の形態の電気的エネルギーであってよい。いくつかの実施形態では、コントローラ150からのフィードバックは、所与の測定値、例えばインピーダンスや温度に応答して、エネルギー送達装置392の露出領域を自動的に調節することができる。このことは、エネルギー送達装置392に関連する調節可能な絶縁スリーブの使用によって、達成することができる。絶縁スリーブの調節は、スリーブをエネルギー送達装置に沿って近位または遠位に摺動させることにより達成することができる。絶縁スリーブの調節は、他の実施形態では手動で行うこともできる。あるいは、エネルギー送達装置392に最も近い遠位先端領域390に沿って追加的な導電性領域を提供することができる。そのような実施形態では、追加的な導電性領域のうちの1つ以上及びエネルギー送達装置392を通じてエネルギーを選択的に送達することによって、神経障害の範囲、例えば、焼灼手順中に形成された損傷の大きさまたは形状を改変することができる。さらに、1若しくは複数のエネルギー送達装置392は、当分野で公知であるような、アクティブ電極及びリターン電極の任意の組合せを含むことができる。
【0089】
図2及び図3は、用いることができる適切なプローブの例であることを理解されたい。しかし、他の適切なプローブを用いることもでき、そのようなプローブは、ヒリアーら(Hillier, et al.)による米国特許第7,306,596号明細書(特許文献1)、ゴダラら(Godara, et al.)による米国特許第8,187,268号明細書(特許文献2)、及びレオンら(Leung, et al.)による米国特許第8,740,897号明細書(特許文献3)に記載されており、各特許文献は、全文を引用することを以って本明細書の一部となす。さらに、標的神経に対して神経刺激を伝達するために2つ以上のプローブ310を用いることができることも理解されたい。ここで、神経刺激の伝達のために、パルス発生器(後述)の複数のチャネルに複数のプローブを接続することができ、各チャネルは、慢性疼痛の互いに異なる部位または発痛源を治療するために用いることができる。例えば、上背部の第1の領域を治療するべくパルス発生器の第1のチャネルに第1のプローブを接続することができ、背部の第2の領域を治療するべくパルス発生器の第2のチャネルに第2のプローブを接続することができ、背部の第3の領域を治療するべく第3のチャネルに第3のプローブを接続することができ、背部の第4の領域を治療するべく第4のチャネルに第4のプローブを接続することができる。
【0090】
パルス発生器
【0091】
ここで、図1に戻ると、プローブ110は、電気リード120を介してパルス発生器130に接続することができる。一実施形態では、パルス発生器130は、バイポーラ定電流刺激装置であってよい。1つの例示的な刺激装置は、英国のディジタイマ社(Digitimer Ltd.)製のDIGITIMER DS5電気刺激装置である。他の定電流及び定電圧のパルス発生器を用いてもよい。さらに、上記のように、慢性疼痛の複数の発痛源または部位の治療を可能にするために、パルス発生器は複数のチャネルを含むことができ、複数のチャネルには複数のプローブが接続されている。各プローブは、パルス発生器から自身のチャネルを経由して刺激を伝達することができるので、このようにして、慢性疼痛の各発痛源または部位を必要に応じて互いに異なる刺激レベルで治療することができる。
【0092】
ユーザインタフェース
【0093】
上記システムは、ユーザインタフェース140を用いることもできる。このユーザインタフェース140は、コントローラ150とインタラクトしかつ絶縁型システムによって電力を供給され得るコンピュータの形態をとることができる。各構成要素については、本明細書で説明する。
【0094】
コンピュータは、コントローラから伝えられた信号を記録するように、かつコントローラの出力を送出するように設計されたソフトウェアを作動させる。ソフトウェアは、プログラム可能であり、EP、EEG信号、ECG信号及びEMG信号などの電気生理学的信号を記録して分析することができ、かつコントローラに刺激を伝達するように指示することができる。
【0095】
さらに、ユーザインタフェース140はモニタ141を含むことができ、該モニタは、ディスプレイ画面(図示せず)を介して複数のビュー領域を表示するように構成することができる。例えば、第1のビュー領域は慢性疼痛の発痛源の同定に関する情報を表示することができ、第2のビュー領域は慢性疼痛の発痛源の検証に関する情報を表示することができ、第3のビュー領域は慢性疼痛の治療に関する情報を表示することができる。
【0096】
患者監視システム
【0097】
本発明のシステムにおいて、患者監視システム160を用いることもできる。患者監視システムは、生理学的信号の獲得、増幅及びフィルタ処理を行うことができ、当該信号をコントローラ150に出力することもできる。患者監視システムは、脳からの電気信号、具体的には誘発電位(EP)を収集するための脳波図(EEG)モニタ170を含む。脳波図モニタ170は、交流(AC)増幅器200Aに結合されたEEG電極172を含む。電極は、脳の任意の領域の電気的活動をモニタすることができるように、当業者に知られている任意の適切な方法で患者の頭皮に配置することができる。いくつかの実施形態では、3〜128本の電極を用いることができる。例えば、5、16、32または64本の電極を用いて、それらを頭皮上または任意の他の適切な位置に配置することによって、EEG測定値を得ることができる。具体的には、経皮用プローブ、例えば、上記の、図2及び図3に示したプローブのうちの1つを介して、標的神経の近傍、標的神経の周囲、または標的神経上の領域に特定のレベルの電気エネルギーが印加されたとき、脳のいずれかの領域におけるEEG測定を記録することによって、対応する誘発電位活動の振幅、電気神経刺激の印加から第1のEPの発現までの潜時、1つのEPの終了から後続のEPの開始までの潜時、複数のEPのバーストが存在する場合の各EPの周波数、及びEPの形状を測定することができる。低周波電気神経刺激時に、この情報の定量分析を通して、慢性疼痛の発痛源である神経経路に関連する標的神経を同定することができ、その後、標的神経をブロックしかつ障害することにより慢性疼痛を治療することができる。
【0098】
図4(a)は、幾つかの誘発電位(1〜4)の振幅、潜時及び形状を示すグラフである。電位は、時間軸に垂直破線として示されている電気的刺激によって誘導される。刺激の輝度が一定であれば、プローブと神経との間の距離が減少するのに伴い、個々のバーストの誘発電位の振幅は増加することになり、医師が痛みを伴う回路に向けてプローブを進めるのを助ける。あるいは、プローブと神経との間の距離が増加するのに伴い、誘発電位の振幅は減少することになる。
【0099】
この場合もやはり、EPの振幅、潜時、周波数及び形状は、脳波モニタリングの位置に基づいて慢性疼痛に関連する神経経路を探し出すのを助けることができる。例えば、神経刺激時の脳の1若しくは複数の所定の領域においてEP活動が観察された場合には、刺激されている標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部であることを示し得る。さらに、別の実施形態では、所定の刺激手段、レベルまたはパラメータにおいて、十分な振幅、潜時、周波数または形状のEPが観察された場合には、標的神経における慢性疼痛を治療するために、プローブを介して刺激されている標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部に十分に極めて近接していることを示し得る。
【0100】
図4(b)は、単一刺激によって活性化された複数の誘発電位を示している。慢性疼痛は、繰り返し電位の存在によって、急性疼痛と識別できると考えられている。プロットAでは、刺激によって誘導された誘発電位はΔtの潜時を有し、かつ図のように、同じニューロンが一定の間隔(例えば、Δt=Δt=Δt)で発火し続けて、長く続く神経の振動または斉射に近づける。プロットBは、「ワインドアップ(wind-up)」として知られている現象を示しており、ここでは、誘発電位が繰り返して発生するが、発生のたびに新たな数の電位及び活性化周波数が示される。
【0101】
図4(c)は、焼灼前(プロットA)及び焼灼後(プロットB)のデータセグメントを示す。プロットAでは、自発またはベースラインEEG活動及び電気的ノイズ、並びに刺激によって誘導された誘発電位によって、データトレーシングが説明されている。神経の焼灼の後、EEGシステムによって記録される自発活動は振幅及び周波数を減少され、刺激(垂直破線)は誘発電位を誘導することができない。
【0102】
上記の実施形態では、EEG測定の時間分解能が高いので、慢性疼痛がプローブ/EEGシステムによって誘導される際に、患者が経験する慢性疼痛に関与する神経経路にどの神経が関連しているかに関する判断をリアルタイムで行うことができる。
【0103】
上記のEEGモニタ170に加えて、患者監視システム160は、心電図(ECG)信号を収集するための心拍数モニタ180と、筋電図(EMG)信号を収集するための筋活動モニタ190とを含むこともできる。心拍数モニタ180は、交流(AC)増幅器200Bに結合されたECG電極182を含むことができる。その一方で、筋活動モニタ190は、AC増幅器200Cに結合されたEMG電極192を含むことができる。どの生理学的パラメータをモニタすべきかにもよるが、他の種類のトランスデューサを用いることもできる。上記のように、患者監視システムにより得られた全ての生理学的信号が、AC信号増幅器/コンディショナ(200A、200B、200C)を通過する。1つの可能な増幅器/コンディショナは、米国ロードアイランド州ウェストウォリックのアストロメッド社(Astro-Med, Inc.)の子会社であるグラス・テクノロジーズ社(Grass Technologies)製のモデルLP511 AC増幅器である。
【0104】
絶縁型電源システム
【0105】
全ての器具は、配電線によって運ばれる出力スパイク及び地絡から保護するために、絶縁型電源装置またはシステム194によって電力を供給することができる。絶縁型電源システムの一例は、米国ロードアイランド州ウェストウォリックのアストロメッド社の子会社であるグラス・テクノロジーズ社製のモデルIPS115絶縁型医療グレード電源システム(Isolated Medical-grade Power System)である。
【0106】
コントローラ
【0107】
患者監視システム160からの、EEGデータ、ECGデータ、EMGデータ、RF温度データなどの波形データ及びデジタル情報を記録することができ、かつパルス発生器130のリアルタイム制御のために波形及びデジタル出力を同時に生成することができるコントローラ150を用いる。コントローラ150は、高速データキャプチャ、独立波形サンプルレート及びオンライン分析を促進するために、オンボードメモリを有することができる。例示的なコントローラ150は、ケンブリッジ・エレクトロニック・デザイン社(英国)製のPower1401データ獲得インタフェースユニットであってよい。
【0108】
電気刺激パラメータ
【0109】
本発明では、刺激の目的に基づいて様々な電気刺激パラメータが用いられる。本発明で考慮される様々な刺激パラメータについては、以下で個々に詳細に説明する。
【0110】
慢性疼痛を誘導するための第1の(低周波)電気神経刺激
【0111】
先ず、脳波モニタリング中にEEGによって観察されるEP活動の存在または変化(すなわち、EPの振幅の増加、潜時の減少、周波数の増加、または形状の十分な変化)によって決定されるような、患者の慢性疼痛の発痛源である神経経路の疑いがあるかまたは該神経経路に関連している可能性のある標的神経において、慢性疼痛反応を誘導するために、低周波電気神経刺激パラメータを利用する。第1の(低周波)電気神経刺激を、一定の波形、パルス持続時間、周波数、輝度、またはそれらの組合せで、例えば、定電流または定電圧で伝達することができる。一般的に言えば、電流密度の方がより良好に制御可能であるので、特定の状況において、電流によって調節される刺激の使用は、電圧によって調節される刺激よりも有利である。さらに、刺激は、単相性(モノフェージック)または二相性(バイフェージック)の方式で伝達することができる。さらに、波形は、方形波、正弦波、またはパルス列であってよい。
【0112】
さらに、第1の(低周波)電気神経刺激が加えられる周波数は、通常約100ヘルツ(Hz)以下である。例えば、第1の(低周波)電気神経刺激が加えられる周波数は、約0.1〜100Hz、例えば約0.1〜75Hz、例えば約0.1〜50Hzであってよい。さらに、パルス持続時間は、約0.01〜10ミリ秒(ms)、例えば約0.05〜5ms、例えば約0.1〜2.5msであってよい。さらに、二相パルスの場合、位相持続時間は、パルスの各部分につき、約0.005〜5ms、例えば約0.025〜2.5ms、例えば約0.05〜1.25msであってよい。さらに、印加される電流は、約0.01〜50ミリアンペア(mA)、例えば約0.25〜40mA、例えば約0.2〜30mAであってよい。また、パルス周期は、1つのパルスの開始から次のパルスの開始までの時間の量であり、かつ位相持続時間、イントラパルス間隔及びインターパルス間隔を含むが、パルス周期は、約0.01〜20ミリ秒(ms)、例えば約0.05〜20ms、例えば約0.1〜5msであってよい。上記の周波数及び電流(輝度)範囲に加えて、当業者には明らかなように、他の周波数及び電流範囲の組合せも本発明で考慮される。
【0113】
神経ブロックのための第2の(高周波)電気神経刺激
【0114】
次に、上記した第1の(低周波)電気神経刺激及びEP活動のEEG測定を通して、標的神経が慢性疼痛の発痛源である神経経路の一部として正しく識別されたことをさらに検証するために、第2の(高周波)電気神経ブロック刺激を実行することができる。そのような高周波電気神経ブロック刺激は、正しい神経(すなわち慢性疼痛反応に関連する神経)が第1の(低周波)電気神経刺激中に脳においてEEGにより観察された慢性疼痛の発痛源である神経経路の一部として識別されたことを検証するために、ニューロンの軸索に沿ってインパルスの通過を一時的にブロックすることができる。効果的な神経ブロックと合致する脳波活動が観察された場合に、正しい神経が慢性疼痛の発痛源である神経経路の一部として同定されたとの確認を行うことができる。例えば、標的神経に伝達された高周波電気神経ブロック刺激を受けての自発慢性疼痛活動またはEP振幅の顕著な減少または沈黙は、刺激の時間からEPの発現までの潜時の増加、複数のEP間の潜時の増加、EPの周波数の減少、またはEPの形状の顕著な変化と同様に、標的神経が慢性疼痛の発痛源に関連しており、かつ正しく識別されたことを示し得る。その一方で、効果的な神経ブロックと矛盾する脳波活動(例えばEP)が観察された場合に、標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部ではないとの確認を行うことができる。例えば、標的神経に伝達された第2の(高周波)電気神経ブロック刺激に反応して自発慢性疼痛活動の著しい減少またはEPの振幅の増加が観察されない場合、このことは、刺激されている標的神経が慢性疼痛の発痛源に関連していないことを示し得る。さらに、神経刺激の印加の時間から第1の誘発電位の発現までの潜時の変化がほとんどまたは全くないこと、複数のEP間の潜時の変化がほとんどまたは全くないこと、あるいはEPの形状の変化がほとんどまたは全くないことは、刺激されている標的神経が慢性疼痛の発痛源に関連していないことを示し得る。
【0115】
第2の(高周波)電気神経刺激は、一定の波形、パルス持続時間、周波数、輝度、またはそれらの組合せで、例えば、定電流または定電圧で加えることができる。さらに、刺激は、単相性または二相性の方式(最も望ましい)で伝達されることができる。さらに、波形は、方形波、正弦波、またはパルス列であってよく、バースト状の複数のパルスは、数ミリ秒ないし数秒のオーダーで伝達されることができ、ここで、各パルス列は、インターバースト間隔(可変,患者固有)であるオフ時間によって隔てられている。通常、高周波電気神経ブロック刺激が加えられる周波数は、約1,000〜100,000Hzである。例えば、周波数は、約1,500〜90,000Hz、例えば約2,000〜80,000Hz、例えば約2,500〜70,000Hzであってよい。さらに、パルス持続時間は、約5〜500マイクロ秒(μs)、例えば約10〜400μs、例えば約20〜300μsであってよい。さらに、二相パルスの場合、位相持続時間は、パルスの各部分につき、約2.5〜250マイクロ秒(μs)、例えば約10〜200μs、例えば約20〜100μsであってよい。さらに、印加される電流は、約0.01〜50mA、例えば約0.25〜40mA、例えば約0.2〜30mAであってよい。また、パルス周期は、約10〜1000μs、例えば約20〜800μs、例えば約40〜600μsであってよい。上記の周波数及び電流(輝度)範囲に加えて、当業者には明らかなように、他の周波数及び電流範囲の組合せも本発明で考慮される。
【0116】
焼灼のための第3の(超高周波)電気神経刺激
【0117】
標的神経が、上記の第1の(低周波)電気神経刺激及びEEG測定によって、慢性疼痛の発痛源である神経経路の一部として識別され、かつ任意選択で、標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部として正しく識別されたことが検証されたら、同じく上記した第2の(高周波)電気神経ブロック刺激を通じて、患者の慢性疼痛に関与していると判断された神経経路を障害することにより、対応する痛み信号が脳に伝達されることを防止することができる。例えば、アブレーションなどの第3の(超高周波)電気神経刺激を用いて神経経路を焼灼することができ、神経経路またはその近傍に損傷が形成される。しかし、焼灼以外の任意の他の適切な障害方法を用いることもできることも理解されたい。例えば、焼灼ではなく、パルス状RF刺激を加えることによって、神経経路を改変または障害することができる。
【0118】
第3の(超高周波)電気神経刺激は、定電流または定電圧で伝達することができる。波形は、方形波、正弦波、または1つ以上のインパルスであってよい。通常、第3の(超高周波)電気神経刺激が行われる周波数は、少なくとも約100,000Hzである。例えば、周波数は、約100,000Hzないし約1.5メガヘルツ(MHz)、例えば約200,000Hzないし約1MHz、例えば約300,000〜800,000Hzであってよい。さらに、パルス持続時間は、約0.5〜5マイクロ秒(μs)、例えば約1〜4μs、例えば約2〜3μsであってよい。さらに、印加される電流は、約1.4A未満、例えば約0.01〜1.4A、例えば約0.05〜1.2A、例えば約0.1〜1Aの振幅を有することができる。Also、パルス周期は、約1〜10μs、例えば約2〜8μs、例えば約5〜6μsであってよい。上記の周波数及び電流(輝度)範囲に加えて、当業者には明らかなように、他の周波数及び電流範囲の組合せも本発明で考慮される。
【0119】
他の適切な神経障害/神経焼灼技術は、米国特許第7,306,596号明細書(特許文献1)、ゴダラらによる米国特許第7,819,869号明細書(特許文献4)、ゴダラらによる米国特許第7,824,404号明細書(特許文献5)、レオンらによる米国特許第8,518,036号明細書(特許文献6)、及び米国特許第8,740,897号明細書(特許文献3)に記載されており、各特許文献は、全文を引用することを以って本明細書の一部となす。
【0120】
上記の如く神経が障害された後、電気的刺激に応答して、慢性疼痛に関連する脳の領域におけるEEGによって記録されている慢性疼痛に関連する誘発電位活動が著しく減少したかまたは全くないことを検証するために、第1の(低周波)電気神経刺激、第2の(高周波)電気神経刺激、またはその両方を繰り返すことができ、ここで、そのような追加的な電気的刺激は、神経経路及び/または慢性疼痛に関連する標的神経の障害の成功を確認することができる。例えば、EP振幅及び周波数が著しく減少した場合、または潜時が増加した場合、障害の成功を確認することができる。同様に、EPの形状の顕著な変化は、障害の成功を確認することができる。
【0121】
基準のための追加的な神経の第4の(追加的な)電気神経刺激
【0122】
必要に応じて、上記したように、基準反応として働くことができかつ標的神経の第1の電気神経刺激を受けたときに誘導された反応と比較することができる反応を誘導するために、慢性疼痛の発痛源である疑いがある標的神経以外の追加的な神経を刺激することができ、そのような追加的な刺激は、標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部であることを検証する手段として働くことができる。誘導された反応(例えば誘発電位)のそのような比較は図6に示されており、図6は、或る部位における単一刺激(垂直破線)によって誘導された誘発電位を、正常な神経(実線波形)と、慢性疼痛に関連している疑いがある神経(破線波形)とで比較している。図のように、各波形は互いに異なる形状、振幅などを有し、正常な神経(すなわち、慢性疼痛に関連していない追加的な神経)に関連する誘発電位と比較して、より小さな振幅を有するので、これらの相違は、慢性疼痛の発痛源である疑いがある標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部であることを示している。
【0123】
追加的な神経に対する誘導された反応または誘発電位が、慢性疼痛の発痛源である疑いがある標的神経に関連する誘導された反応との比較のための基準反応として働くような、そのような比較/検証を行うために、コントローラは、プローブを介して、慢性疼痛の発痛源である疑いがない追加的な神経に対して、脳における反応を誘導するのに十分な追加的な神経刺激を伝達するように構成することができ、さらに、コントローラは、脳波用電極を介して、脳におけるベースライン活動、追加的な神経刺激の結果としての脳内の誘発電位活動、またはその両方をモニタするように構成されている。さらに、標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部として正しく識別されることを検証するべく、追加的な神経刺激からの誘導された反応を、第1の神経刺激からの誘導された反応と比較することができ、ここで、追加的な神経刺激からの誘導された反応を第1の神経刺激からの誘導された反応と比較した場合の両者の違いは、標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部であることを示す。
【0124】
患者の慢性疼痛の発痛源である神経経路に関連している疑いがない追加的な神経における反応を誘導するために、患者の慢性疼痛の発痛源である神経経路に関連している疑いがある標的神経との比較のための基準を作るために、脳波モニタリング中にEEGによって観察されるEP活動の存在または変化(すなわち、EPの振幅の増加、潜時の減少、周波数の増加、または形状の十分な変化)によって決定されるような、正しい標的神経が探し出されたことを検証するために、低周波電気神経刺激パラメータが用いられる。追加的な電気神経刺激は、一定の波形、パルス持続時間、周波数、輝度、またはそれらの組合せで、例えば、定電流または定電圧で伝達することができる。一般的に言えば、電流密度の方がより良好に制御可能であるので、特定の状況において、電流によって調節される刺激の使用は、電圧によって調節される刺激よりも有利である。さらに、刺激は、単相性または二相性の方式で伝達されることができる。さらに、波形は、方形波、正弦波、またはパルス列であってよい。
【0125】
さらに、追加的な(第4の)電気神経刺激が加えられる周波数は、通常約100ヘルツ(Hz)以下である。例えば、追加的な(第4の)電気神経刺激が加えられる周波数は、約0.1〜100Hz、例えば約0.1〜75Hz、例えば約0.1〜50Hzであってよい。さらに、パルス持続時間は、約0.01〜10ミリ秒(ms)、例えば約0.05〜5ms、例えば約0.1〜2.5msであってよい。さらに、二相パルスの場合、位相持続時間は、パルスの各部分につき、約0.005〜5ms、例えば約0.025〜2.5ms、例えば約0.05〜1.25msであってよい。さらに、印加される電流は、約0.01〜50ミリアンペア(mA)、例えば約0.25〜40mA、例えば約0.2〜30mAであってよい。また、パルス周期は、1つのパルスの開始から次のパルスの開始までの時間の量であり、かつ位相持続時間、イントラパルス間隔及びインターパルス間隔を含むが、パルス周期は、約0.01〜20ミリ秒(ms)、例えば約0.05〜20ms、例えば約0.1〜5msであってよい。上記の周波数及び電流(輝度)範囲に加えて、当業者には明らかなように、他の周波数及び電流範囲の組合せも本発明で考慮される。
【0126】
上記の方法及びシステムに加えて、本発明は、上記で概説した様々な手順を実行するためのキットも含む。図5は、図1ないし図3に示した種々の構成要素の任意の組合せがprovideされる任意の形態の適切な容器402を含むキット400を示している。当然のことながら、キット400は、図1ないし図3に示した物品の全てを含む必要はない。すなわち、コントローラ、パルス発生器、ユーザインタフェース、患者監視システム、増幅器などの構成要素は含まれている必要はないが、適切な電極、例えば、EEG電極172、ECG電極182及びEMG電極192は、キットに含まれていてよい。
【0127】
容器402は、例えば、内部に物品が収容される、取り外し可能な密閉カバーを有する適切なトレイであってよい。例えば、キット400の一実施形態は、上記したような1若しくは複数のプローブ110及び電気リード120が入っている容器402を含むことができる。
【0128】
本発明は、慢性疼痛に関与しているかまたは慢性疼痛の発痛源である神経経路に関連していると考えられる標的神経に極めて近接して配置され得るように皮膚を通して挿入された経皮用プローブを介して様々な周波数レベルの電気神経刺激を伝達する手順を実行するために使用されるアイテムの任意の組合せが入っているキットを含む。例えば、キット400は、追加のアイテム、例えば、ドレープ、部位用ドレッシング材(site dressing)、テープ、皮膚マーカなどを含むことができる。キット400は、包装済みワイプ406、例えば、抗菌ワイプまたはスキンプレップワイプを含むことができる。
【0129】
慢性疼痛の同定、検証及び治療方法
【0130】
本発明はまた、慢性疼痛を同定するため、慢性疼痛の部位を検証するため、及び/または慢性疼痛を治療するための方法を含む。該方法は、慢性疼痛の発痛源である神経経路に関連すると考えられる標的神経を同定するステップと、標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部として正しく識別されたことを検証するステップと、神経を障害するステップと、標的神経が首尾よく障害されたことを検証するステップとを含むことができる。この方法を実施するための様々なステップについて、以下で詳細に説明する。
【0131】
例えば、上記方法は、ユーザ、例えば、医者、ナースプラクティショナー、看護師、技師などが、経皮用プローブを、皮膚の表面を通って、患者の慢性疼痛の発痛源である疑いがある神経である標的神経に向けて進めるステップを含むことができる。次に、プローブの先端が標的神経の近くにきたら、パルス発生器または他の適切な手段により、プローブを介して、標的神経に対して第1の(低周波)電気神経刺激(上記のパラメータを参照)を伝達することができる。このとき、脳の1若しくは複数の所定の領域における誘発電位活動をモニタするために、電極を介してEEG信号を記録することができる。その間、コントローラは、受信した信号及びデータを分析し、検出された神経刺激によって誘導された誘発電位(EP)の強度及び相関をユーザに戻す。通常、プローブと慢性疼痛の発痛源との間の距離が減少するにつれて、脳における、1つ以上の、EEGによって記録されるEPの大きさ(振幅)及び/または相関が増加することになり、複数のEPが存在する場合には、EPの周波数も同様である。その一方で、プローブと慢性疼痛の発痛源との間の距離が減少するにつれて、刺激から第1のEPの発現までの潜時が減少することになる。さらに、プローブと慢性疼痛の発痛源との間の距離が減少した場合には、1つのEPの終了から別のEPの開始までの潜時を増加させることができる。さらに、図4(a)に関連して上記で説明したように、EPの形状は変化し得る。
【0132】
相関が十分である時点で、例えば観察されたEPに対して十分な振幅、潜時、周波数または形状に到達したときに、ユーザは、プローブが慢性疼痛の発痛源である部位に配置されかつ該部位が標的神経をブロック及び/または障害するために適切な部位であることを通知されることができる。例えば、神経を障害する前に、パルス発生器を用いるなどして、標的神経に対して第2の(高周波)電気神経刺激(例えば神経ブロック刺激)(上記のパラメータを参照)を伝達することにより、神経に沿ったインパルスの伝達を一時的に阻止することができ、その点において正しい神経が慢性疼痛の発痛源に関連するものとして同定された場合、EEGによって測定されるEPは、沈黙しているかまたは著しく減少することになる。
【0133】
第2の(高周波)電気神経ブロック刺激の刺激特性が、慢性疼痛の発痛源が正しく識別されたことを検証するのに十分であれば、1つの特定の実施形態では、プローブの電流設定において、障害または焼灼することができる神経組織の容積を決定することができる。当該容積内に神経が含まれる場合には、モニタされる脳の領域に慢性疼痛信号を伝達するEP及び自発活動またはベースライン活動は、第3の(超高周波)電気神経刺激を通して、障害または焼灼により沈黙している状態となることができ、患者は、焼灼後に慢性疼痛を感じないであろう。
【0134】
さらに、本発明で考慮される方法は、プローブを介して、慢性疼痛の発痛源である疑いがない追加的な神経に対して、脳における反応を誘導するのに十分な追加的な神経刺激を伝達するステップと、脳波用電極を介して、脳におけるベースライン活動、追加的な神経刺激の結果としての脳内の誘発電位活動、またはその両方をモニタするステップとを含むことができる。さらに、上記方法は、標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部として正しく識別されることを検証するべく、追加的な神経刺激からの誘導された反応を第1の神経刺激からの誘導された反応と比較するステップを含むこともでき、ここで、追加的な神経刺激からの誘導された反応を第1の神経刺激からの誘導された反応と比較した場合の両者の違いは、標的神経が慢性疼痛に関連する神経経路の一部であることを示すかまたは検証する。
【0135】
上記したような検証が完了した後、ユーザは、上記の第3の超高周波電気神経焼灼パラメータを用いて神経を焼灼することができる。次に、第1の(低周波)電気神経刺激、第2の(高周波)電気神経刺激、またはその両方を繰り返すことによって、十分な障害または焼灼を検証することができる。そのような電気的刺激を受けて、脳においてEEGシステムによって著しく減少したEPが記録された場合には、標的神経が首尾よく障害または焼灼されたと結論付けることができる。他方では、標的神経が首尾よく探し出されていない場合、例えば、第1の電気神経刺激、第2の電気神経ブロック刺激、またはその両方の繰り返しを受けて、脳におけるEPが沈黙することも著しく減少することもなかった場合などに、ユーザは、慢性疼痛の原因である神経経路に関与または関連している神経が首尾よく探し出されるまで、追加的な標的神経に上記した同じ手順を続けることができる。
【0136】
本発明について、その特定の実施形態に関して詳細に説明してきたが、当業者は、上記したことを理解すれば、これらの実施形態の改変形態、変形形態及び等価形態を容易に考案し得るということが理解されよう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等範囲として評価されるべきである。
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図5
図6