【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の前処理乾燥機は、植物性のバイオマス燃料の前処理乾燥を行うための前処理乾燥機であって、
円筒形状の乾燥室と、
上記乾燥室の軸方向の一端側に設けられ、上記バイオマス燃料である被処理物を投入する投入口と、
上記乾燥室の軸方向の他端側に設けられ、被処理物を排出する排出口と、
上記乾燥室の軸方向の他端側に設けられ、この乾燥室の接線方向に乾燥用の空気を供給する給気口と、
上記乾燥室の軸方向の一端側に設けられ、この乾燥室から接線方向に空気を排出する排気口と、
上記乾燥室の中心軸と同軸に配置されて回転駆動される回転軸と、
上記回転軸の外周面に螺旋状に配置された撹拌羽根とを備え、
上記乾燥室内の空気の移動方向と被処理物の移動方向が、乾燥室の軸方向において互いに反対であり、
上記乾燥用の空気は、上記被処理物の燃焼熱で加熱された空気であることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、円筒形状の乾燥室内に、乾燥室の軸方向の一端側に設けられた投入口から、被処理物である植物性のバイオマス燃料が投入される。中心軸と同軸に配置された回転軸が回転駆動され、この回転軸の外周面に螺旋状に配置された撹拌羽根により、上記乾燥室内の被処理物が、撹拌されながら、乾燥室の一端から他端に向かって移動する。上記乾燥室の軸方向の他端側に達した被処理物は、排出口から排出される。一方、上記乾燥室の軸方向の他端側に設けられた給気口に、この乾燥室の接線方向に乾燥用の空気が供給される。乾燥用の空気は、被処理物の乾燥に適した温度、例えば150℃以上350℃以下の温度であるのが好ましい。乾燥室内に供給された乾燥用の空気は、この乾燥室内を旋回状に流れ、この乾燥室の軸方向の一端側に設けられた排気口から乾燥室の接線方向に排出される。このように、乾燥室内を空気が旋回状に流れると共に、乾燥室内の空気の移動方向と被処理物の移動方向が、軸方向において互いに反対であるので、被処理物と空気の接触量が、回転炉の中で被処理物が落下するロータリーキルンよりも増大する。したがって、被処理物を、従来よりも効率的に乾燥させることができるので、乾燥に要する時間を短縮できる。その結果、乾燥用の空気を加熱する場合の燃料費を少なくできる。また、被処理物と空気を従来よりも多く接触させることで被処理物を乾燥させるので、空気の温度を従来よりも低くできる。したがって、被処理物の炭化を防止しながら乾燥を行うことができる。また、被処理物の燃焼熱で加熱された空気を乾燥用の空気として用いるので、被処理物を燃料に用いた場合の燃焼熱を利用して、化石燃料を用いることなく有効に、資源のリサイクル活用を行うことができる。また、化石燃料を用いることによるコストアップを防止できる。ここで、被処理物である植物性のバイオマス燃料としては、木質チップや木屑等を挙げることができるが、燃料に用いることができる植物性の材料であれば、これらに限定されない。他の植物性のバイオマス燃料としては、例えば、刈草、籾殻、藁、バカス、椰子の房、大豆の殻、大豆の搾りかす、蕎麦の殻、綿花の殻、向日葵の種子の殻、ヤトロバ(南洋油桐)の殻、コーヒーの焙煎カス(チャフ)等の多様な植物バイオマスを用いることができる。また、被処理物の燃焼熱で加熱された空気とは、被処理物である植物性のバイオマス燃料を燃焼して生成された燃焼ガスと、燃焼ガスとの熱交換により加熱された空気とのいずれも該当する。
【0009】
一実施形態のバイオマス燃料の前処理乾燥機は、上記撹拌羽根の少なくとも一部は、上記被処理物を回転軸の一端側から他端側へ推進する順ピッチが設けられている。
【0010】
上記実施形態によれば、回転軸が回転駆動されることにより、順ピッチが設けられた撹拌羽根により、被処理物が回転軸の一端側から他端側へ推進されるので、乾燥室内で空気が軸方向において反対方向に流れるにもかかわらず、被処理物を効果的に移動させることができる。ここで、ピッチとは、回転軸に対するねじり角をいう。詳しくは、回転軸と直角をなす面に対して撹拌羽根の主要な面が傾斜する角度であり、回転軸と平行の方向に推進力を与える角度である。
【0011】
一実施形態のバイオマス燃料の前処理乾燥機は、上記撹拌羽根の一部は、上記被処理物を回転軸の他端側から一端側へ推進する逆ピッチが設けられている。
【0012】
上記実施形態によれば、撹拌羽根の一部に順ピッチが設けられており、かつ、他の一部に逆ピッチが設けられていることにより、乾燥室内の被処理物が、回転軸の一端側から他端側へ推進する力と、回転軸の他端側から一端側へ推進する力との両方を受ける。これにより、被処理物の混合が促進されるので、乾燥室内の被処理物が偏り無く乾燥する。ここで、逆ピッチが設けられた撹拌羽根は、上記回転軸の軸方向中央の近傍に位置するのが好ましい。上記回転軸の軸方向中央の近傍としては、回転軸の軸方向の中央を中心として、回転軸の全長の3分の1に相当する範囲内と定義することができる。また、逆ピッチを設けた撹拌羽根の数は、1つ以上、かつ、全撹拌羽根の数の半分未満である。
【0013】
一実施形態のバイオマス燃料の前処理乾燥機は、上記撹拌羽根は、スコップ状に形成されている。
【0014】
上記実施形態によれば、スコップ状の撹拌羽根により、乾燥室内の被処理物を効果的にすくって撹拌すると共に、移動させることができる。ここで、スコップ状とは、羽根本体の幅方向の両側の部分が、中央部よりも、回転軸の他端側に突出した形状をいう。
【0015】
一実施形態のバイオマス燃料の前処理乾燥機は、上記給気口は、乾燥室の軸方向に並んで複数個設けられている。
【0016】
上記実施形態によれば、乾燥室の接線方向に空気を供給する給気口が、乾燥室の軸方向に複数個並んで設けられることにより、乾燥室内に空気の旋回流が効果的に形成される。
【0017】
一実施形態のバイオマス燃料の前処理乾燥機は、上記給気口は、乾燥室へ供給する乾燥用の空気の流量を調整する流量調整手段を有する。
【0018】
上記実施形態によれば、乾燥室に供給する乾燥用の空気の流量を、この乾燥室に供給される被処理物の含水率や量等に対応した流量に流量調整手段で調整することにより、被処理物を安定して所定の含水率に乾燥させることができる。ここで、流量調整手段としては、給気口を開閉するように駆動される扉を含むものを採用できる。また、給気口に連なる空気の供給管に介設された流量調整弁を採用できる。
【0019】
一実施形態のバイオマス燃料の前処理乾燥機は、上記乾燥室内に形成される空気の旋回流の旋回方向と、上記回転軸の回転方向が、互いに同じである。
【0020】
上記実施形態によれば、乾燥室内に形成される空気の旋回流の旋回方向と、この乾燥室と中心軸が一致する回転軸の回転方向とが互いに同じであるので、上記回転軸に取り付けられた順ピッチの撹拌羽根が、空気の旋回流から受ける抵抗力を、小さくできる。また、回転軸の駆動方向に旋回する空気を流すので、回転軸が空気から受ける抵抗力を、小さくできる。したがって、回転軸の駆動装置に作用する負荷を削減できる。
【0021】
一実施形態のバイオマス燃料の前処理乾燥機は、上記被処理物は、30wt%以上70wt%以下の含水率を有する。
【0022】
上記実施形態によれば、30wt%以上70wt%以下の含水率を有する被処理物を効果的に乾燥して、含水率を10wt%以下にすることができる。このような被処理物としては、例えば生木から製造された木質チップや木屑等が挙げられる。ここで、含水率とは、材料に含まれる全ての水の質量を、材料の乾燥前の質量で除した値の百分率であり、所謂ウェットベースの含水率である。すなわち、含水率uは、次の式(1)によって求めた値である。
u=((W1−W2)/W1)×100・・・(1)
ここで、uは含水率(wt%)、W1は乾燥前の材料の質量(g)、W2は乾燥後の材料の質量(g)である。なお、wt%は質量パーセントである。
【0023】
一実施形態のバイオマス燃料の前処理乾燥機は、上記被処理物は、生木を破砕してなる木質チップである。
【0024】
上記実施形態によれば、生木を破砕してなる木質チップは、多くの場合30wt%以上70wt%以下の含水率を有するが、本発明の前処理乾燥機を用いることにより、効果的に含水率を低減することができて、燃焼させた場合の熱量を効果的に向上することができる。したがって、従来は燃料としての使用が困難であった生木の木質チップを、燃料として使用することができ、資源の有効利用を図ることができる。
【0025】
一実施形態のバイオマス燃料の前処理乾燥機は、上記被処理物は、木質チップで作成された使用済みの菌床である。
【0026】
上記実施形態によれば、含水率が30wt%以上70wt以下になることの多い使用済みの廃菌床を、本発明の前処理乾燥機を用いて乾燥させることにより、含水率を効果的に低減することができる。したがって、含水率が高くて従来は再利用が困難であった廃菌床を、燃料として利用することができる。ここで、前処理乾燥機で乾燥させた廃菌床は、そのまま燃料として燃焼させてもよく、あるいは、ペレット状に成形して燃料として燃焼させてもよい。
【0027】
本発明の燃焼プラントは、上記バイオマス燃料の前処理乾燥機と、
上記前処理乾燥機で乾燥された植物性のバイオマス燃料を燃料に用いる燃焼装置とを備え、
上記燃焼装置で植物性のバイオマス燃料を燃焼して生成した燃焼ガスを、乾燥用の空気として上記前処理乾燥機に供給することを特徴としている。
【0028】
上記実施形態によれば、上記前処理乾燥機で植物性のバイオマス燃料の前処理乾燥が行われ、前処理乾燥が行われた植物性のバイオマス燃料が燃焼装置で燃焼される。この燃焼装置でバイオマス燃料を燃焼して生成した燃焼ガスが、乾燥用の空気として上記前処理乾燥機に供給される。このように、バイオマス燃料を用いた燃焼装置の熱を再利用して、バイオマス燃料の前処理乾燥を行うので、化石燃料を用いて前処理乾燥を行う場合と比較して、資源のリサイクル活用を有効に行うことができる。