特許第6590465号(P6590465)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6590465バイオマス燃料の前処理乾燥機及び燃焼プラント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6590465
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】バイオマス燃料の前処理乾燥機及び燃焼プラント
(51)【国際特許分類】
   F26B 17/20 20060101AFI20191007BHJP
   F23K 1/04 20060101ALI20191007BHJP
   F26B 23/02 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   F26B17/20 B
   F23K1/04
   F26B23/02 A
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-256432(P2013-256432)
(22)【出願日】2013年12月11日
(65)【公開番号】特開2015-114046(P2015-114046A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年9月16日
【審判番号】不服2018-12998(P2018-12998/J1)
【審判請求日】2018年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】591119624
【氏名又は名称】株式会社御池鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100138896
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 淳
(72)【発明者】
【氏名】小林 由和
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀匡
【合議体】
【審判長】 平城 俊雅
【審判官】 大屋 静男
【審判官】 松下 聡
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭58−32239(JP,U)
【文献】 再公表特許第2005/063923(JP,A1)
【文献】 特開2003−245626(JP,A)
【文献】 特開昭50−12652(JP,A)
【文献】 特開2000−97567(JP,A)
【文献】 特開2008−39350(JP,A)
【文献】 特開2009−178712(JP,A)
【文献】 特開2001−321146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 1/00-25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性のバイオマス燃料の前処理乾燥を行うための前処理乾燥機であって、
円筒形状の乾燥室と、
上記乾燥室の軸方向の一端側に設けられ、上記バイオマス燃料である被処理物を投入する投入口と、
上記乾燥室の軸方向の他端側に設けられ、被処理物を排出する排出口と、
上記乾燥室の軸方向の他端側に設けられ、この乾燥室の接線方向に乾燥用の空気を供給する給気口と、
上記乾燥室の軸方向の一端側に設けられ、この乾燥室から接線方向に空気を排出する排気口と、
上記乾燥室の中心軸と同軸に配置されて回転駆動される回転軸と、
上記回転軸の外周面に螺旋状に配置された撹拌羽根とを備え、
上記乾燥室内の空気の移動方向と被処理物の移動方向が、乾燥室の軸方向において互いに反対であり、
上記乾燥室の軸方向において、上記被処理物の排出口が上記乾燥用の空気の給気口よりも他端側に形成されていると共に、上記乾燥用の空気の排気口が上記被処理物の投入口よりも一端側に形成され、
上記乾燥用の空気は、上記被処理物の燃焼熱で加熱された空気であり、150℃以上350℃以下の温度であると共に、20m/s以上30m/s以下の流速であことにより、上記被処理物の炭化を防止しながら乾燥を行うことを特徴とするバイオマス燃料の前処理乾燥機。
【請求項2】
請求項1に記載のバイオマス燃料の前処理乾燥機において、
上記撹拌羽根の少なくとも一部は、上記被処理物を回転軸の一端側から他端側へ推進する順ピッチが設けられていることを特徴とするバイオマス燃料の前処理乾燥機。
【請求項3】
請求項2に記載のバイオマス燃料の前処理乾燥機において、
上記撹拌羽根の一部は、上記被処理物を回転軸の他端側から一端側へ推進する逆ピッチが設けられていることを特徴とするバイオマス燃料の前処理乾燥機。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のバイオマス燃料の前処理乾燥機において、
上記撹拌羽根は、スコップ状に形成されていることを特徴とするバイオマス燃料の前処理乾燥機。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のバイオマス燃料の前処理乾燥機において、
上記給気口は、乾燥室の軸方向に並んで複数個設けられていることを特徴とするバイオマス燃料の前処理乾燥機。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のバイオマス燃料の前処理乾燥機において、
上記給気口は、乾燥室へ供給する乾燥用の空気の流量を調整する流量調整手段を有することを特徴とするバイオマス燃料の前処理乾燥機。
【請求項7】
請求項2に記載のバイオマス燃料の前処理乾燥機において、
上記乾燥室内に形成される空気の旋回流の旋回方向と、上記回転軸の回転方向が、互いに同じであることを特徴とするバイオマス燃料の前処理乾燥機。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のバイオマス燃料の前処理乾燥機において、
上記被処理物は、30wt%以上70wt%以下の含水率を有することを特徴とするバイオマス燃料の前処理乾燥機。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のバイオマス燃料の前処理乾燥機において、
上記被処理物は、生木を破砕してなる木質チップであることを特徴とするバイオマス燃料の前処理乾燥機。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれかに記載のバイオマス燃料の前処理乾燥機において、
上記被処理物は、木質チップで作成された使用済みの菌床であることを特徴とするバイオマス燃料の前処理乾燥機。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載のバイオマス燃料の前処理乾燥機と、
上記前処理乾燥機で乾燥された植物性のバイオマス燃料を燃料に用いる燃焼装置とを備え、
上記燃焼装置で植物性のバイオマス燃料を燃焼して生成した燃焼ガスを、乾燥用の空気として上記前処理乾燥機に供給することを特徴とする燃焼プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば木質チップ等のバイオマス燃料の前処理に用いる前処理乾燥機と、これを用いた燃焼プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、化石燃料の価格高騰や環境への影響に対処するため、代替燃料として、植物性のバイオマス燃料が着目されている。植物性のバイオマス燃料としては、間伐材や廃木材を破砕してなる木質チップがある。木質チップは、木材の端材、間伐材及び樹皮等の林業系廃棄物や、建築廃材等の建築系廃棄物等から得られるため、資源のリサイクル活用にも資することから、普及が期待されている。
【0003】
木質チップは、材料が生材である場合、含水率が50wt%以上と比較的高いため、燃料として使用する前に乾燥処理を行い、含水率を10wt%程度に低減させる必要がある。従来、木質チップの乾燥処理を行う乾燥機として、ロータリーキルンが広く普及している。この種のロータリーキルンとしては、一端から木質チップが投入され、投入された木質チップを回転動作によって攪拌しながら他端に送る回転炉と、化石燃料で作動して回転炉中に火炎を放射するバーナを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−088373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ロータリーキルンは、回転炉の回転に伴って木質チップが回転炉の内壁面から落下する際に、木質チップが回転炉内の高温空気に接触して乾燥が進行するので、木質チップと高温空気との接触量が比較的少ない。したがって、木質チップを燃料として用いることができる程度に乾燥させるためには、比較的長い乾燥時間が必要であり、バーナの作動時間が長くなって、燃料費が嵩む問題がある。また、乾燥時間を短くしようとしてバーナの発熱量を増大させると、木質チップの表面から炭化が進行する問題がある。さらに、木質チップを燃料として用いるための乾燥処理を、化石燃料を用いて行うことは、資源のリサイクル活用の点で問題があり、また、コストアップの原因となる。
【0006】
そこで、本発明の課題は、バイオマス燃料を、化石燃料を用いることなく、炭化を防止しながら比較的短時間で乾燥できる前処理乾燥機と、これを用いた燃焼プラントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の前処理乾燥機は、植物性のバイオマス燃料の前処理乾燥を行うための前処理乾燥機であって、
円筒形状の乾燥室と、
上記乾燥室の軸方向の一端側に設けられ、上記バイオマス燃料である被処理物を投入する投入口と、
上記乾燥室の軸方向の他端側に設けられ、被処理物を排出する排出口と、
上記乾燥室の軸方向の他端側に設けられ、この乾燥室の接線方向に乾燥用の空気を供給する給気口と、
上記乾燥室の軸方向の一端側に設けられ、この乾燥室から接線方向に空気を排出する排気口と、
上記乾燥室の中心軸と同軸に配置されて回転駆動される回転軸と、
上記回転軸の外周面に螺旋状に配置された撹拌羽根とを備え、
上記乾燥室内の空気の移動方向と被処理物の移動方向が、乾燥室の軸方向において互いに反対であり、
上記乾燥用の空気は、上記被処理物の燃焼熱で加熱された空気であることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、円筒形状の乾燥室内に、乾燥室の軸方向の一端側に設けられた投入口から、被処理物である植物性のバイオマス燃料が投入される。中心軸と同軸に配置された回転軸が回転駆動され、この回転軸の外周面に螺旋状に配置された撹拌羽根により、上記乾燥室内の被処理物が、撹拌されながら、乾燥室の一端から他端に向かって移動する。上記乾燥室の軸方向の他端側に達した被処理物は、排出口から排出される。一方、上記乾燥室の軸方向の他端側に設けられた給気口に、この乾燥室の接線方向に乾燥用の空気が供給される。乾燥用の空気は、被処理物の乾燥に適した温度、例えば150℃以上350℃以下の温度であるのが好ましい。乾燥室内に供給された乾燥用の空気は、この乾燥室内を旋回状に流れ、この乾燥室の軸方向の一端側に設けられた排気口から乾燥室の接線方向に排出される。このように、乾燥室内を空気が旋回状に流れると共に、乾燥室内の空気の移動方向と被処理物の移動方向が、軸方向において互いに反対であるので、被処理物と空気の接触量が、回転炉の中で被処理物が落下するロータリーキルンよりも増大する。したがって、被処理物を、従来よりも効率的に乾燥させることができるので、乾燥に要する時間を短縮できる。その結果、乾燥用の空気を加熱する場合の燃料費を少なくできる。また、被処理物と空気を従来よりも多く接触させることで被処理物を乾燥させるので、空気の温度を従来よりも低くできる。したがって、被処理物の炭化を防止しながら乾燥を行うことができる。また、被処理物の燃焼熱で加熱された空気を乾燥用の空気として用いるので、被処理物を燃料に用いた場合の燃焼熱を利用して、化石燃料を用いることなく有効に、資源のリサイクル活用を行うことができる。また、化石燃料を用いることによるコストアップを防止できる。ここで、被処理物である植物性のバイオマス燃料としては、木質チップや木屑等を挙げることができるが、燃料に用いることができる植物性の材料であれば、これらに限定されない。他の植物性のバイオマス燃料としては、例えば、刈草、籾殻、藁、バカス、椰子の房、大豆の殻、大豆の搾りかす、蕎麦の殻、綿花の殻、向日葵の種子の殻、ヤトロバ(南洋油桐)の殻、コーヒーの焙煎カス(チャフ)等の多様な植物バイオマスを用いることができる。また、被処理物の燃焼熱で加熱された空気とは、被処理物である植物性のバイオマス燃料を燃焼して生成された燃焼ガスと、燃焼ガスとの熱交換により加熱された空気とのいずれも該当する。
【0009】
一実施形態のバイオマス燃料の前処理乾燥機は、上記撹拌羽根の少なくとも一部は、上記被処理物を回転軸の一端側から他端側へ推進する順ピッチが設けられている。
【0010】
上記実施形態によれば、回転軸が回転駆動されることにより、順ピッチが設けられた撹拌羽根により、被処理物が回転軸の一端側から他端側へ推進されるので、乾燥室内で空気が軸方向において反対方向に流れるにもかかわらず、被処理物を効果的に移動させることができる。ここで、ピッチとは、回転軸に対するねじり角をいう。詳しくは、回転軸と直角をなす面に対して撹拌羽根の主要な面が傾斜する角度であり、回転軸と平行の方向に推進力を与える角度である。
【0011】
一実施形態のバイオマス燃料の前処理乾燥機は、上記撹拌羽根の一部は、上記被処理物を回転軸の他端側から一端側へ推進する逆ピッチが設けられている。
【0012】
上記実施形態によれば、撹拌羽根の一部に順ピッチが設けられており、かつ、他の一部に逆ピッチが設けられていることにより、乾燥室内の被処理物が、回転軸の一端側から他端側へ推進する力と、回転軸の他端側から一端側へ推進する力との両方を受ける。これにより、被処理物の混合が促進されるので、乾燥室内の被処理物が偏り無く乾燥する。ここで、逆ピッチが設けられた撹拌羽根は、上記回転軸の軸方向中央の近傍に位置するのが好ましい。上記回転軸の軸方向中央の近傍としては、回転軸の軸方向の中央を中心として、回転軸の全長の3分の1に相当する範囲内と定義することができる。また、逆ピッチを設けた撹拌羽根の数は、1つ以上、かつ、全撹拌羽根の数の半分未満である。
【0013】
一実施形態のバイオマス燃料の前処理乾燥機は、上記撹拌羽根は、スコップ状に形成されている。
【0014】
上記実施形態によれば、スコップ状の撹拌羽根により、乾燥室内の被処理物を効果的にすくって撹拌すると共に、移動させることができる。ここで、スコップ状とは、羽根本体の幅方向の両側の部分が、中央部よりも、回転軸の他端側に突出した形状をいう。
【0015】
一実施形態のバイオマス燃料の前処理乾燥機は、上記給気口は、乾燥室の軸方向に並んで複数個設けられている。
【0016】
上記実施形態によれば、乾燥室の接線方向に空気を供給する給気口が、乾燥室の軸方向に複数個並んで設けられることにより、乾燥室内に空気の旋回流が効果的に形成される。
【0017】
一実施形態のバイオマス燃料の前処理乾燥機は、上記給気口は、乾燥室へ供給する乾燥用の空気の流量を調整する流量調整手段を有する。
【0018】
上記実施形態によれば、乾燥室に供給する乾燥用の空気の流量を、この乾燥室に供給される被処理物の含水率や量等に対応した流量に流量調整手段で調整することにより、被処理物を安定して所定の含水率に乾燥させることができる。ここで、流量調整手段としては、給気口を開閉するように駆動される扉を含むものを採用できる。また、給気口に連なる空気の供給管に介設された流量調整弁を採用できる。
【0019】
一実施形態のバイオマス燃料の前処理乾燥機は、上記乾燥室内に形成される空気の旋回流の旋回方向と、上記回転軸の回転方向が、互いに同じである。
【0020】
上記実施形態によれば、乾燥室内に形成される空気の旋回流の旋回方向と、この乾燥室と中心軸が一致する回転軸の回転方向とが互いに同じであるので、上記回転軸に取り付けられた順ピッチの撹拌羽根が、空気の旋回流から受ける抵抗力を、小さくできる。また、回転軸の駆動方向に旋回する空気を流すので、回転軸が空気から受ける抵抗力を、小さくできる。したがって、回転軸の駆動装置に作用する負荷を削減できる。
【0021】
一実施形態のバイオマス燃料の前処理乾燥機は、上記被処理物は、30wt%以上70wt%以下の含水率を有する。
【0022】
上記実施形態によれば、30wt%以上70wt%以下の含水率を有する被処理物を効果的に乾燥して、含水率を10wt%以下にすることができる。このような被処理物としては、例えば生木から製造された木質チップや木屑等が挙げられる。ここで、含水率とは、材料に含まれる全ての水の質量を、材料の乾燥前の質量で除した値の百分率であり、所謂ウェットベースの含水率である。すなわち、含水率uは、次の式(1)によって求めた値である。
u=((W1−W2)/W1)×100・・・(1)
ここで、uは含水率(wt%)、W1は乾燥前の材料の質量(g)、W2は乾燥後の材料の質量(g)である。なお、wt%は質量パーセントである。
【0023】
一実施形態のバイオマス燃料の前処理乾燥機は、上記被処理物は、生木を破砕してなる木質チップである。
【0024】
上記実施形態によれば、生木を破砕してなる木質チップは、多くの場合30wt%以上70wt%以下の含水率を有するが、本発明の前処理乾燥機を用いることにより、効果的に含水率を低減することができて、燃焼させた場合の熱量を効果的に向上することができる。したがって、従来は燃料としての使用が困難であった生木の木質チップを、燃料として使用することができ、資源の有効利用を図ることができる。
【0025】
一実施形態のバイオマス燃料の前処理乾燥機は、上記被処理物は、木質チップで作成された使用済みの菌床である。
【0026】
上記実施形態によれば、含水率が30wt%以上70wt以下になることの多い使用済みの廃菌床を、本発明の前処理乾燥機を用いて乾燥させることにより、含水率を効果的に低減することができる。したがって、含水率が高くて従来は再利用が困難であった廃菌床を、燃料として利用することができる。ここで、前処理乾燥機で乾燥させた廃菌床は、そのまま燃料として燃焼させてもよく、あるいは、ペレット状に成形して燃料として燃焼させてもよい。
【0027】
本発明の燃焼プラントは、上記バイオマス燃料の前処理乾燥機と、
上記前処理乾燥機で乾燥された植物性のバイオマス燃料を燃料に用いる燃焼装置とを備え、
上記燃焼装置で植物性のバイオマス燃料を燃焼して生成した燃焼ガスを、乾燥用の空気として上記前処理乾燥機に供給することを特徴としている。
【0028】
上記実施形態によれば、上記前処理乾燥機で植物性のバイオマス燃料の前処理乾燥が行われ、前処理乾燥が行われた植物性のバイオマス燃料が燃焼装置で燃焼される。この燃焼装置でバイオマス燃料を燃焼して生成した燃焼ガスが、乾燥用の空気として上記前処理乾燥機に供給される。このように、バイオマス燃料を用いた燃焼装置の熱を再利用して、バイオマス燃料の前処理乾燥を行うので、化石燃料を用いて前処理乾燥を行う場合と比較して、資源のリサイクル活用を有効に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態の前処理乾燥機を示す側面図である。
図2】前処理乾燥機を示す縦断面図である。
図3】前処理乾燥機の排気口における横断面図である。
図4】前処理乾燥機の給気口における横断面図である。
図5A】前処理乾燥機の給気装置を示す平面図である。
図5B】前処理乾燥機の給気装置を示す平断面図である。
図6A】六角形状の撹拌羽根を示す正面図である。
図6B】六角形状の撹拌羽根を示す側面図である。
図7A】スコップ状の撹拌羽根を示す正面図である。
図7B】スコップ状の撹拌羽根を示す側面図である。
図8】本発明の実施形態の燃焼プラントを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0031】
図1は、本発明の実施形態のバイオマス燃料の前処理乾燥機としての木質チップ乾燥機を示す側面図であり、図2は、木質チップ乾燥機を示す縦断面図である。図3は、木質チップ乾燥機の排気口における横断面図であり、図4は、木質チップ乾燥機の給気口における横断面図である。
【0032】
この木質チップ乾燥機は、植物性のバイオマス燃料としての木質チップを、燃料として用いる前に前処理として乾燥を行うための乾燥機である。この木質チップ乾燥機は、円筒形状の乾燥室1を内部に有する円筒ケーシング2と、乾燥室1の軸方向の一端側に設けられた木質チップ投入口5と、乾燥室1の軸方向の他端側に設けられた木質チップ排出口6を有する。木質チップ投入口5は、乾燥室1の径方向に延在する円筒部材で形成され、円筒ケーシング2の頂部に設けられている。この木質チップ投入口5は、木質チップを貯留して木質チップ乾燥機に供給する定量供給機の切出装置に、ロータリーバルブを介して接続されている。木質チップ排出口6は、乾燥室1の内壁面の接線方向に延在する矩形断面管で形成され、円筒ケーシング2の底部に設けられている。
【0033】
乾燥室1の軸方向の他端側には、乾燥用の空気としての熱風を乾燥室1の接線方向に供給する給気口としての第1スリット13と、第2スリット14と、第3スリット15が設けられている。第1乃至第3スリット13,14,15は、乾燥室1の縦断面視において、乾燥室1の周方向の寸法よりも軸方向の寸法が大きい扁平の矩形状を有する。第1乃至第3スリット13,14,15は、給気装置3によって熱風が供給され、この熱風を、図4の矢印W1で示すように、乾燥室1に接線方向に吹き出すようになっている。第1乃至第3スリット13,14,15の各々には、開閉駆動される図示しない開閉扉が設けられている。開閉扉はスライド式のシャッターであり、乾燥室1に投入される木質チップの量や含水率に応じて第1乃至第3スリット13,14,15の開度を調整し、熱風の流量を調整する。乾燥室1の軸方向の一端側には、上記木質チップ投入口5よりも乾燥室1の端面に近い位置に、乾燥室1から接線方向に空気を排出する排気口4が設けられている。排気口4は、乾燥室1の内壁面の接線方向に延在する矩形断面管で形成され、円筒ケーシング2の側部に設けられている。
【0034】
図5Aは給気装置3を示す平面図であり、図5Bは給気装置3を示す平断面図である。給気装置3は、図示しない燃焼装置で生成された熱風が供給される分配箱32と、分配箱32から第1乃至第3スリット13,14,15に熱風を夫々導く第1乃至第3給気管33,34,35を有する。分配箱32に供給される熱風を生成する燃焼装置は、この木質チップ乾燥機で乾燥された木質チップを燃料に用いて作動するものであり、例えばバーナやボイラ等が該当する。分配箱32は、平面視において乾燥室1の他端側から一端側に向かって奥行が浅くなる扁平の台形柱形状に形成されている。分配箱32の奥行が最も深い他端側の上側面に、燃焼装置で生成された熱風を導く供給ダクト31が接続されている。図4及び図5Bに示すように、第1乃至第3給気管33,34,35は、分配箱32側から乾燥室1側に向かって断面積が狭まるテーパ形状に形成されている。詳しくは、第1乃至第3給気管33,34,35は、分配箱32側から乾燥室1側に向かうにつれて、側面が互いに接近するように傾斜する一方、底面は乾燥室1の接線方向に延在し、上面が底面に接近するように傾斜している。この給気装置3により、供給ダクト31で導かれた熱風を均一に第1乃至第3スリット13,14,15へ供給することができ、第1乃至第3スリット13,14,15から互いに均一な流量及び流速の熱風を乾燥室1へ供給することができる。また、第1乃至第3スリット13,14,15から熱風を乾燥室1の接線方向に安定して吹き出すことができる。
【0035】
上記乾燥室1内には、回転駆動されて木質チップを撹拌すると共に乾燥室1の一端側から他端側へ送る撹拌装置7が収容されている。撹拌装置7は、乾燥室1の中心軸と同軸に配置された円筒形の回転軸8と、この回転軸8の外周面に螺旋状に配置された複数の撹拌羽根9を有する。回転軸8は、両端が支持軸10に連結されており、この支持軸10は軸受11によって回転自在に支持されている。一方の支持軸11に、駆動装置としての図示しないモータの回転力が入力されて回転軸8が回転し、撹拌装置7が回転駆動されるようになっている。
【0036】
図6Aは、撹拌装置7に取り付けられた六角形状の撹拌羽根9を示す正面図であり、図6Bは、六角形状の撹拌羽根9を示す側面図である。この撹拌羽根9は、六角形状の羽根本体91と、この羽根本体91を支持する柱部92と、柱部92の基端部に設けられた螺旋切部93を有する。撹拌羽根9は、回転軸8に設けられた螺旋孔に螺旋切部93を螺着し、螺旋切部93に螺合するダブルナットが締結されて回転軸8に固定される。回転軸8に取り付けられた撹拌羽根9は、回転軸8の軸方向視において、60°毎の等角度をおいた位置に放射状に配置される。撹拌羽根9の羽根本体91は、柱部92の螺旋切部93から遠い側に位置する先端縁の両側が、角部を面取りした形状に形成されている。これにより、撹拌羽根9の羽根本体91の先端縁が乾燥室1の円筒形の内側面に近づいた状態で、撹拌装置7が回転可能になっている。
【0037】
撹拌装置7の撹拌羽根9は、回転駆動されたときに木質チップを回転軸8の一端側から他端側へ推進する順ピッチが設けられている。詳しくは、図3に示すように、回転軸8を一端側から見たときの回転軸8の回転方向が、矢印Rで示すように反時計回りであるとき、撹拌羽根9は、回転軸8の側面視において反時計回りの順ピッチが設けられている。ここで、回転軸8の軸方向の中央に位置する撹拌羽根9Aは、回転軸8の側面視において時計回りの逆ピッチが設けられている。複数の順ピッチの撹拌羽根9と共に、逆ピッチの撹拌羽根9Aが配置されていることにより、撹拌装置7の回転駆動時に、順ピッチの撹拌羽根9が木質チップを一端側から他端側へ移動させるのに対して、逆ピッチの撹拌羽根9Aが木質チップを回転軸8の他端側から一端側に移動させる。このようにして、大部分の木質チップを回転軸8の一端側から他端側へ移動させると共に、一部の木質チップを逆方向に移動させることにより、木質チップを効果的に撹拌混合して温度の偏りを少なくしている。逆ピッチの撹拌羽根9Aは、回転軸8の軸方向の中央に限らず、木質チップを撹拌混合すべき所望の位置に配置できるが、回転軸8の軸方向の中央の近傍に配置するのが好ましい。詳しくは、回転軸8の軸方向の中央を中心として、回転軸8の全長の3分の1に相当する範囲内に配置することができる。また、逆ピッチの撹拌羽根9Aは、1つに限らず複数個設けてもよいが、全撹拌羽根9,9Aの合計数の半分未満とする。
【0038】
木質チップ乾燥機の円筒ケーシング2の側面には、乾燥室1や撹拌装置7の保守点検を行うための複数の開口が設けられており、これらの開口に開閉扉17,17,・・・が取り付けられている。円筒ケーシング2は、軸方向の両端部分に設けられた支持脚18,18によって、水平向きに支持されている。
【0039】
上記構成の木質チップ乾燥機は、次のように動作する。
【0040】
まず、図示しない燃焼装置が起動し、矢印W0で示すように供給ダクト31を通して給気装置3の分配箱32に熱風が供給される。熱風の温度は、木質チップの含水率に応じて設定されるが、150℃以上350℃以下が好ましい。分配箱32に供給された熱風は、第1乃至第3給気管33,34,35を通り、第1乃至第3スリット13,14,15から乾燥室1内に、矢印W1で示すように接線方向に供給される。第1乃至第3スリット13,14,15から乾燥室1へ供給される熱風の流速は、20m/s以上30m/s以下が好ましい。熱風の流速及び流量は、乾燥室1に投入される木質チップの量や含水率に応じて、第1乃至第3スリット13,14,15の開閉扉の開度が制御されて調整される。第1乃至第3スリット13,14,15から乾燥室1内に供給された熱風は、乾燥室1の壁面に沿って流れ、矢印WRで示すような旋回流を形成し、乾燥室1の他端側から一端側に向かって進行する。
【0041】
熱風が供給されて乾燥室1内が昇温すると、乾燥室1への木質チップの投入が開始される。すなわち、定量供給機の切出装置が起動すると共にロータリーバルブを開き、矢印P1で示すように木質チップ投入口5に木質チップが投入される。これと共に、モータが起動し、支持軸10に回転力が入力されて撹拌装置7が回転駆動される。木質チップ投入口5から乾燥室1内に投入された木質チップは、撹拌装置7の撹拌羽根9によって乾燥室1の一端側から他端側に向かって送られる。撹拌装置7の駆動速度は、撹拌羽根9の先端部分の周方向の速度が、0.5m/s以上1.5m/s以下となるように設定するのが好ましい。
【0042】
乾燥室1内を、木質チップが一端側から他端側に向かって移動する間、他端側から一端側に向かって流れる熱風の旋回流と接触して木質チップが乾燥する。乾燥室1の他端に達した木質チップは、矢印P2で示すように、木質チップ排出口6から乾燥室1の接線方向に排出される。乾燥室1の一端に達した熱風は、矢印W2で示すように、排気口4から乾燥室1の接線方向に排出される。
【0043】
こうして、乾燥室1内を、他端側から一端側に向かって熱風の旋回流を形成すると共に、一端側から他端側に向かって木質チップを移動させることにより、乾燥室1の軸方向において、熱風の移動と木質チップの移動を互いに反対向きにしている。これにより、木質チップと熱風との接触量が、ロータリーキルンにおいて被処理物が回転に伴って落下する際に乾燥空気と接触する場合よりも大きくなるので、ロータリーキルンよりも高い効率で木質チップを乾燥させることができる。その結果、生木から作成された木質チップのように含水率が50wt%を超えるものであっても、従来よりも短時間で含水率を10wt%以下に乾燥させることができ、燃料に好適な木質チップが得られる。
【0044】
また、乾燥室1内に熱風の旋回流を形成することにより、乾燥室1内を高速かつ高流量の熱風で満たすことができる。したがって、ロータリーキルンのように乾燥室内にバーナを設置して直線状に炎を噴射するよりも多くの量の熱風を木質チップに接触させることができ、木質チップを効率的に乾燥させることができる。
【0045】
また、木質チップを送る撹拌装置7は、順ピッチを設けた撹拌羽根9と、逆ピッチを設けた撹拌羽根9Aとを有するので、木質チップを適切に撹拌混合しながら、乾燥室1内を一端側から他端側に向けて送ることができる。したがって、乾燥室1内における木質チップの温度の偏りを低減できる。また、乾燥室1内の木質チップの滞在時間を増大させて、木質チップの乾燥を促進することができる。
【0046】
また、本実施形態の木質チップ乾燥機は、木質チップに接触する熱風の量が従来のロータリーキルンよりも多いので、熱風の温度を従来よりも低くしても、木質チップを十分に乾燥させることができる。したがって、木質チップの炭化を防止しながら乾燥を行うことができる。
【0047】
また、本実施形態の木質チップ乾燥機は、乾燥室1内に形成される熱風の旋回流の旋回方向WRと、回転軸8の回転方向Rが互いに同じであるので、回転軸8に取り付けられた順ピッチの撹拌羽根Aが熱風の旋回流から受ける抵抗力を小さくできる。また、回転軸8の駆動方向Rに旋回する熱風を流すので、回転軸8が空気から受ける抵抗力を小さくできる。したがって、回転軸8を回転駆動するモータに作用する負荷を、効果的に削減できる。
【0048】
本実施形態の木質チップ乾燥機は、間伐材、剪定材、端材、廃木材、建築廃材等、種々の木質材料から作成された木質チップを乾燥することができる。特に、生材から形成された木質チップのように含水率が50wt%を超える木質チップを、炭化を防止しながら迅速に乾燥させることができる。また、建築廃材のように含水率が低い材料から形成された木質チップは、比較的低い温度の熱風により、少ない燃料消費によって効果的に乾燥させることができる。
【0049】
また、本実施形態の木質チップ乾燥機は、木質チップを用いた種々の木質廃棄物を乾燥することができる。木質廃棄物としては、菌類の栽培に用いられた廃菌床がある。例えばキノコ類の栽培に用いられた廃菌床は、含水率が30wt%を超え、70wt%程度に達するものも存在する。したがって、廃菌床を処分する場合、化石燃料を用いた焼却処分に付されることが多く、費用の負担と環境への影響が大きいという問題がある。このような状況において、廃菌床を、本実施形態の木質チップ乾燥機を用いて乾燥処理を行うことにより、炭化を防止しながら含水率を10wt%以下に低減させることができる。含水率を10wt%以下に乾燥させた廃菌床は、再生資源材料として、木質ペレットの材料に用いることができる。含水率を10wt%以下に低減した廃菌床や他の木質チップを用いて形成した木質ペレットは、12.6MJ/kg(3000kcal/kg)以上の発熱量を生成することができる。このように、本実施形態の木質チップ乾燥機によれば、従来は廃棄されて焼却処分を行っていた木質廃棄物を、再利用して資源化することが可能となる。
【0050】
上記実施形態において、乾燥室1へ供給する熱風の流量は、第1乃至第3スリット13,14,15に設けた開閉扉としてのシャッターで調整したが、第1乃至第3給気管33,34,35に流量調整弁を設け、この流量調整弁で第1乃至第3給気管33,34,35の流量を調整し、乾燥室1へ供給する熱風の流量を調整してもよい。
【0051】
また、上記実施形態において、撹拌装置7に六角形状の撹拌羽根9,9Aを設けたが、図7Aの正面図と図7Bの側面図に示すようなスコップ状の撹拌羽根を用いてもよい。スコップ状の撹拌羽根109は、図7A及び7Bに示すように、正面視における幅方向の両側部が中央部よりも突出した羽根本体94と、この羽根本体94を支持する柱部92と、柱部92の基端部に設けられた螺旋切部93を有する。羽根本体94は、先端が手前に湾曲したすくい部95と、すくい部95の両側に立設された側壁部96,96を有する。すくい部95が上記中央部に相当する。スコップ状の撹拌羽根109を用いることにより、乾燥室1内の木質チップを、効果的にすくって撹拌すると共に移動させることができる。
【0052】
また、上記実施形態において、円筒ケーシング2を水平向きに支持して乾燥室1を水平向きに配置したが、乾燥室1は傾斜させて配置してもよい。
【0053】
また、上記実施形態において、木質チップ乾燥機に供給される熱風は、この木質チップ乾燥機で乾燥した木質チップを燃料とする燃焼装置で生成したが、各種工場の廃熱等を利用して生成してもよい。
【0054】
図8は、本発明の実施形態の燃焼プラントを模式的に示した図である。この燃焼プラントは、植物性のバイオマス燃料としての木質チップを燃料に用いて温水を製造する温水ボイラプラントである。この温水ボイラプラント100は、本発明の実施形態の木質チップ乾燥機103と、この木質チップ乾燥機103で乾燥させた木質チップを燃料に用いて温水を生成する熱交換器一体型燃焼炉101を有し、この熱交換器一体型燃焼炉101で生成されて水を加熱した後の燃焼ガスを、木質チップ乾燥機103の乾燥用空気として再利用するようになっている。
【0055】
この温水ボイラプラント100は、熱交換器一体型燃焼炉101と、熱交換器一体型燃焼炉101で加熱された水を貯留する貯湯タンクと、熱交換器一体型燃焼炉101から排出された燃焼ガスが供給される木質チップ乾燥機103と、木質チップ乾燥機103に未乾燥の木質チップを供給する第1定量供給機104と、木質チップ乾燥機103で乾燥された木質チップを一時的に貯留して熱交換器一体型燃焼炉101へ供給する第2定量供給機102と、木質チップ乾燥機103から排出された排気の集塵を行うサイクロン集塵装置105と、この温水ボイラプラント100の動作を制御する制御部108を備える。
【0056】
上記熱交換器一体型燃焼炉101は、燃料を燃焼する燃焼装置に相当する燃焼部202と、燃焼部202の上に連なり、燃焼部202で生成された燃焼ガスが供給されて水との熱交換を行う第1熱交換部203と、第1熱交換部203の上に連なり、第1熱交換部203で熱交換を行った水と燃焼ガスが導かれてこれら水と燃焼ガスの熱交換を更に行う第2熱交換部204とで大略構成されている。
【0057】
燃焼部202は、断熱材及びキャスタブル耐火物で形成された壁で側部が区画された箱状の燃焼室ケーシング内に、直方体の燃焼室208が形成されている。燃焼室208の下側には、底部給気管215を介して送風機264から燃焼空気が供給される底部空気室213が設けられ、この底部空気室213から、燃焼室208の底面に形成された空気供給孔を通して燃焼空気が燃焼室208に供給される。燃焼室208には、ケーシングの壁に形成された開口から、第2定量供給機102の供給コンベヤ113で搬送された燃料としての木質チップが投入される。燃焼室208の上部には、燃焼室208の壁の外側を取り囲む上部空気室228が設けられ、この上部空気室228に上部給気管229を介して送風機264から燃焼空気が供給される。上部空気室228に供給された燃焼空気は、上部空気室228と燃焼室208との間の壁を貫通する複数の空気噴射管から、燃焼室208に供給される。空気噴射管は、燃焼室208の上部を取り囲むように配列されており、これらの空気噴射管から噴射された燃焼空気で燃焼室208内に乱流を形成し、これにより燃焼ガスを混合して燃焼室208における燃料の燃焼を促進するように形成されている。
【0058】
第1熱交換部203は、燃焼部202の燃焼室208の上部に連なる直方体の燃焼ガス室235と、この燃焼ガス室235を取り囲む水ジャケット232を有する。貯湯タンクから給水管270を通して水ジャケット232に供給された水が、燃焼室208から燃焼ガス室235内に導かれた燃焼ガスと熱交換を行って加熱される。水ジャケット232で加熱された水は、第2熱交換部204の水室242に導かれる。水ジャケット232の水を加熱した燃焼ガスは、燃焼ガス室235から、第2熱交換部204に設けられた煙室に導かれる。
【0059】
第2熱交換部204は多管式水熱交換器であり、燃焼ガス室235から導かれた燃焼ガスが流れる煙管243を備える。煙管243は、水ジャケット232で加熱された水が導かれる水室242内に配列されており、煙管243の延在する方向の両端に設けられた複数の煙室を経由して、燃焼ガスの流れる方向が変更される。例えば、3つの煙室を経由する3パス式の水熱交換器とすることができる。第2熱交換部204の水室242の底面は、第1熱交換部203の燃焼ガス室235に臨んでいる。水室242内の水は、燃焼ガス室235の燃焼ガスと、煙管243内を流れる燃焼ガスとの間で熱交換を行って加熱され、排水管271を通って貯湯タンクに戻される。第2熱交換部204で水室202内の水と熱交換を行った燃焼ガスは、煙管243から排出され、供給ダクト31を通して木質チップ乾燥機103に導かれる。
【0060】
木質チップ乾燥機103に導かれた燃焼ガスは、給気装置3によって乾燥室1内へ接線方向に吹き出され、この乾燥室1内を旋回状に流れて木質チップを乾燥させる。乾燥室1で木質チップを乾燥させた燃焼ガスは、排気口4から排出され、サイクロン集塵装置105へ導かれる。
【0061】
サイクロン集塵装置105は、側面に燃焼ガスの吸入口が設けられた円筒部151と、円筒部151の下方に連なって内部に旋回流が形成される逆円錐形の分離部152と、下部が円筒部151と分離部152の内側に同軸に配置され、上部が円筒部151から上方に突出して配置された排気筒153を有する。このサイクロン集塵装置105は、木質チップ乾燥機103で木質チップを乾燥した燃焼ガスを円筒部151の吸入口から吸入し、円筒部151と分離部152で燃焼ガスの旋回流を形成し、この旋回流の遠心力により燃焼ガスに含まれる粉塵を分離する。粉塵が分離された燃焼ガスは、排気筒153を通して誘引ファン106に吸引され、大気に開放される。誘引ファン106としては、遠心式送風機を用いることができる。
【0062】
上記木質チップ乾燥機103で乾燥が行われる前の含水率が50wt%を超える生木の木質チップは、第1定量供給機104のホッパーに貯留される。第1定量供給機104のホッパーの上部には、木質チップを撹拌してブリッジの形成を防止する撹拌羽根が設けられている。第1定量供給機104のホッパーに貯留された生木の木質チップは、供給コンベヤ110で木質チップ乾燥機103へ供給される。供給コンベヤ110と木質チップ乾燥機103との間には、木質チップ乾燥機103が乾燥動作を行う際に燃焼ガスの逆流を防止するロータリーバルブ111が設けられている。
【0063】
上記木質チップ乾燥機103により乾燥が行われて水分量が10wt%以下となった木質チップは、木質チップ排出口6に接続されたロータリーバルブ112を介して第2定量供給機102に送られる。第2定量供給機102のホッパーに貯留された乾燥後の木質チップは、供給コンベヤ113で熱交換器一体型燃焼炉101へ供給される。
【0064】
制御部108は、次のようにして温水ボイラプラント100を制御する。まず、水室242及び貯湯タンクに設けられた水位センサの検出情報により、水室242及び貯湯タンク内の水位を確認する。水室242及び貯湯タンク内の水位が基準値よりも少ない場合は、貯湯タンクに水を供給する。水室242及び貯湯タンク内の水位が基準値を満たす場合は、給水管270に介設された循環ポンプを起動すると共に、誘引ファン106と送風機264を起動し、更に、供給コンベヤ113を起動する。循環ポンプを起動することにより、貯湯タンクの水を第1熱交換部203の水ジャケット232へ送る。送風機264を起動することにより、上部給気管229を通して上部空気室228へ燃焼空気を供給すると共に、底部給気管215を通して底部空気室213へ燃焼空気を供給する。供給コンベヤ113を起動することにより、定量供給機102のホッパーから燃料の木質チップを巻き出して、燃焼室208へ燃料を投入する。続いて、燃焼室208の壁面に設けられた着火口から着火バーナによる火炎を噴射させ、燃焼室208へ投入された燃料に着火して、燃料の燃焼を開始する。燃焼室208で生成された燃焼ガスは、第1熱交換部203の燃焼ガス室235と、第2熱交換部204の煙管243と、供給ダクト31と、木質チップ乾燥機103の乾燥室1と、サイクロン集塵装置105を流れると共に、貯湯タンクの水が、給水管270と、第1熱交換部203の水ジャケット232と、第2熱交換部204の水室242と、排水管271とを流れる。
【0065】
木質チップ乾燥機103の乾燥室1へ燃焼ガスの熱風が供給され、乾燥室1内に熱風の旋回流が形成されて乾燥室1内の温度が上昇すると、制御部108は、ロータリーバルブ112、木質チップ乾燥機103の攪拌装置7、ロータリーバルブ111、定量供給機104の供給コンベヤ110を順次起動し、木質チップ投入口5に木質チップを投入する。これにより、木質チップが、熱風の旋回流に接触しながら、乾燥室1内を軸方向において熱風と反対方向に移動し、乾燥室1内で木質チップが熱風に所定時間接触して乾燥する。乾燥した木質チップは、第2定量供給機102のホッパーに投入する。
【0066】
制御部108は、第2熱交換部204の最上流の煙室に設けられたガス温度センサT1により検出された燃焼ガスの温度と、給水管270に設けられた水温度センサT2で検出された温水の入口温度と、排水管271に設けられた水温度センサT3で検出された温水の出口温度とに基づいて、供給コンベヤ113の動作を制御し、燃焼室208に供給する燃料の量を制御すると共に、誘引ファン106と送風機264の動作を制御し、燃焼室208に供給する燃焼空気の量を制御する。温水の入口温度が基準値よりも低いと、制御部108は、供給コンベヤ113による燃焼室208への燃料の供給量を増大すると共に、送風機264の送風量を増大して燃焼室208への燃焼空気の供給量を増大する。また、誘引ファン106の吸引量を増大して、木質チップ乾燥機103を介して熱交換器一体型燃焼炉101から吸引する燃焼ガスの量を増大する。これにより、燃焼室208内で燃料が燃焼して生成される熱量が増大し、水ジャケット232及び水室242で水と熱交換する熱量が増大し、循環する水の温度が上昇して、入口温度が上昇する。こここで、ガス温度センサT1で検出される煙室の燃焼ガスの温度が異常高温に達していないかを確認し、温度センサT4で検出される第2熱交換部204からの燃焼ガスの温度が異常高温に達していないかを確認する。水温度センサT2で検出される入口温度が所定温度に達すると、制御部108は、供給コンベヤ113による燃料の供給量を減少させると共に、送風機264の送風量を減少させて燃焼室208への燃焼空気の供給量を減少させる。これと共に、誘引ファン106の吸引量を減少させて熱交換器一体型燃焼炉101から吸引する燃焼ガスの量を減少させ、給水管270の循環ポンプの送水量を減少させる。
【0067】
このように、本実施形態の温水ボイラプラント100によれば、熱交換器一体型燃焼炉101で燃焼させる燃料としての生木の木質チップに、木質チップ乾燥機103で前処理乾燥を行う。この木質チップ乾燥機103は、熱交換器一体型燃焼炉101で生成されて第1熱交換部203と2熱交換部204で水の加熱に用いられた燃焼ガスを、乾燥用空気として再利用する。したがって、化石燃料を用いて前処理乾燥を行う場合と比較して、資源のリサイクル活用を有効に行うことができ、また、ランニングコストを効果的に低減できる。
【0068】
上記実施形態において、木質チップ乾燥機に供給する乾燥用の空気は、温水ボイラの燃焼ガスを再利用したものであったが、蒸気ボイラ等の他のボイラの燃焼ガスを再利用したものでもよく、また、ボイラに限らず、バーナ等の他の燃焼装置による燃焼熱を利用したものでもよい。すなわち、本発明は、温水ボイラプラントに限らず、燃焼装置を有する種々の燃焼プラントに適用できる。
【0069】
また、上記実施形態において、木質チップの乾燥用の空気として燃焼ガスを用いたが、熱交換により燃焼ガスで加熱された空気を乾燥用空気として用いてもよい。
【0070】
また、上記実施形態において、植物性のバイオマス燃料として木質チップを用いたが、木質チップ以外に、刈草、籾殻、藁、バカス、椰子の房、大豆の殻、大豆の搾りかす、蕎麦の殻、綿花の殻、向日葵の種子の殻、ヤトロバ(南洋油桐)の殻、コーヒーの焙煎カス(チャフ)等の多様な植物バイオマスを用いることも可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 乾燥室
2 円筒ケーシング
3 給気装置
4 排気口
5 木質チップ投入口
6 木質チップ排出口
7 撹拌装置
8 回転軸
9 撹拌羽根
13 第1スリット
14 第2スリット
15 第3スリット
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8