(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リーフは、前記リーフの長手方向の距離をLとし、軸方向の幅をDとした場合、前記リーフの回転軸側の端部から0.1L以下に含まれ、かつ、前記リーフの軸方向の端部から0.1D以下に含まれる範囲に、厚み方向に貫通した端部穴が設けられていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のシール装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シール装置は、複数の薄板のリーフの先端部が回転軸から離れるように変位するが、リーフによって変位(変形)に差が生じる場合がある。変位が大きくなるリーフは、他のリーフよりも疲労が蓄積し、損傷する場合がある。リーフは、回転軸側の部分である先端が損傷しやすい。リーフが損傷するとシール性能が低下する。
【0005】
本発明は、リーフの損傷を抑制することができ、性能の低下を抑制できるシール装置及び回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るシール装置は、回転軸の周囲に複数のリーフを回転軸の周方向に隣接して配置し、前記回転軸の周囲の空間を前記回転軸の軸方向に関して2つの空間に分けるリーフ積層体と、前記軸方向に関して前記リーフ積層体の一側に配置され、前記リーフ積層体の前記一側の側端部と対向する対向面を有するサイドシール板と、を備え、前記リーフ積層体は、複数の前記リーフのうち、少なくとも1つのリーフが、前記サイドシール板よりも回転軸側に、隣接する前記リーフの前記軸方向の端面と対面する折り返し部を有することを特徴とする。これにより、一部のリーフが大きく変形することを抑制することができ、リーフに疲労が蓄積し、損傷する恐れをより低減することができる。
【0007】
また、前記リーフ積層体は、折り返し部と、隣接する前記リーフの前記軸方向の端面との距離が0.005mm以下であることが好ましい。また、前記リーフ積層体は、折り返し部と、隣接する前記リーフの前記軸方向の端面と、が圧接することがより好ましい。これにより、リーフと折り返し部とを好適に接触させることができ、一部のリーフが大きく変形することを抑制することができ、リーフに疲労が蓄積し、損傷する恐れをより低減することができる。
【0008】
また、前記リーフの長手方向の距離をLとした場合、前記折り返し部は、前記リーフの回転軸側の端部から0.1L以下に含まれる範囲に設けられていることが好ましい。これにより、リーフの変形が大きい部分に折り返し部を設けることができ、一部のリーフが大きく変形することをより好適に抑制することができる。
【0009】
また、前記折り返し部は、厚さ方向に貫通する折り返し部穴が形成されていることが好ましい。これにより、流体の流れに対する抵抗を小さくすることができる。
【0010】
また、前記折り返し部穴は、一方の端部が前記折り返し部の延在方向の端部に繋がっているスリットであることが好ましい。これにより、流体の流れに対する抵抗を小さくすることができる。
【0011】
また、前記折り返し部は、周方向の先端に前記リーフ側の突出した突出部を有し、前記突出部は、隣接する前記リーフの間に挿入されることが好ましい。これにより、一部のリーフが大きく変形することをより確実に抑制することができる。
【0012】
また、前記リーフは、前記リーフの長手方向の距離をLとし、軸方向の幅をDとした場合、前記リーフの回転軸側の端部から0.1L以下に含まれ、かつ、前記リーフの軸方向の端部から0.1D以下に含まれる範囲に、厚み方向に貫通した端部穴が設けられていることが好ましい。これにより、一部のリーフが大きく変形することを抑制することができ、リーフに疲労が蓄積し、損傷する恐れをより低減することができる。
【0013】
本発明に係る軸シール装置は、回転軸の周囲に複数のリーフを回転軸の周方向に隣接して配置し、前記回転軸の周囲の空間を前記回転軸の軸方向に関して2つの空間に分けるリーフ積層体と、前記軸方向に関して前記リーフ積層体の一側に配置され、前記リーフ積層体の前記一側の側端部と対向する対向面を有するサイドシール板と、を備え、前記リーフ積層体は、複数の前記リーフのうち、少なくとも1つのリーフが、前記リーフの長手方向の距離をLとし、軸方向の幅をDとした場合、前記リーフの回転軸側の端部から0.1L以下に含まれ、かつ、前記リーフの軸方向の端部から0.1D以下に含まれる範囲に、厚み方向に貫通した端部穴が設けられていることを特徴とする。これにより、一部のリーフが大きく変形することを抑制することができ、リーフに疲労が蓄積し、損傷する恐れをより低減することができる。
【0014】
また、前記端部穴は、一方の端部がリーフの端部に繋がっているスリットであることが好ましい。これにより、リーフの変形をより好適に抑制することができる。
【0015】
本発明に係る回転機械は、回転軸と、前記回転軸の周囲に配置される上記のいずれかに記載の軸シール装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、リーフの損傷を抑制することができ、シール性能の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、以下で説明する実施形態における構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0019】
図1は、本実施形態に係る回転機械を有するガスタービンシステム1の一例を示す図である。
図1に示すように、ガスタービンシステム1は、圧縮機2と、燃焼器3と、タービン4と、回転軸50を含むロータ5とを備えている。本実施形態において、回転機械は、圧縮機2及びタービン4の少なくとも一方を含む。
【0020】
圧縮機2は、導入された空気を圧縮する。圧縮機2は、ケーシング2Kを有する。ケーシング2Kの内部空間に空気が導入される。
【0021】
燃焼器3は、圧縮機2で圧縮された圧縮空気に燃料を混合して燃焼させる。
【0022】
タービン4は、燃焼器3で発生した燃焼ガスを導入して膨張させ、その燃焼ガスの熱エネルギーを回転エネルギーに変換する。タービン4は、ケーシング4Kを有する。ケーシング4Kの内部空間に燃焼ガスが導入される。
【0023】
ロータ5は、回転軸50と、回転軸50に設けられた動翼51A及び動翼52Aとを有する。動翼51Aは、ケーシング2Kの内部空間に配置された回転軸50の部分51に設けられる。動翼52Aは、ケーシング4Kの内部空間に配置された回転軸50の部分52に設けられる。
【0024】
圧縮機2は、ケーシング2Kに配置された静翼2Aを有する。圧縮機2において、動翼51Aと静翼2Aとは、回転軸50の軸AXと平行な方向(軸方向)に交互に複数配置される。
【0025】
タービン4は、ケーシング4Kに配置された静翼4Aを有する。タービン4において、動翼52Aと静翼4Aとは、回転軸50の軸方向に交互に複数配置される。
【0026】
タービン4において、燃焼器3から導入された燃焼ガスが動翼52Aに供給される。これにより、燃焼ガスの熱エネルギーが機械的な回転エネルギーに変換されて動力が発生する。タービン4で発生した動力の一部は、回転軸50を介して圧縮機2に伝達される。タービン4で発生した動力の一部は、圧縮機2の動力として利用される。
【0027】
また、ガスタービンシステム1は、圧縮機2に配置され、回転軸50を回転可能に支持する軸受を有する支持部2Sと、タービン4に配置され、回転軸50を回転可能に支持する軸受を有する支持部4Sとを有する。
【0028】
ガスタービンシステム1は、回転軸50の周囲をシールする軸シール装置(シール装置)10を備えている。軸シール装置10は、圧縮機2及びタービン4のそれぞれに配置される。
【0029】
圧縮機2に配置される軸シール装置10は、作動気体Gである圧縮空気が高圧側から低圧側に漏出することを抑制する。圧縮機2の軸シール装置10は、静翼2Aの内周部に配置される。また、圧縮機2の軸シール装置10は、支持部2Sに配置される。
【0030】
タービン4に配置される軸シール装置10は、作動気体Gである燃焼ガスが高圧側から低圧側に漏出することを抑制する。タービン4の軸シール装置10は、静翼4Aの内周部に配置される。また、タービン4の軸シール装置10は、支持部4Sに配置される。
【0031】
次に、軸シール装置10について説明する。
図2は、本実施形態に係る軸シール装置10の概略を示す断面図である。
図2は、
図1のA―A線断面図に相当する。
図3は、本実施形態に係る軸シール装置10の一部を模式的に示す斜視図である。
図3は、軸シール装置10の一部を破断して示す。
図4は、回転軸50の軸AXを含む軸シール装置10の概略を示す断面図である。
図5は、軸シール装置10の分解図である。
【0032】
以下の説明においては、圧縮機2及びタービン4のそれぞれに設けられた軸シール装置10のうち、タービン4に設けられた軸シール装置10について説明する。圧縮機2に設けられた軸シール装置10の構造と、タービン4に設けられた軸シール装置10の構造とは同等である。
【0033】
図2に示すように、軸シール装置10は、回転軸50の周囲に配置される複数のシールセグメント11を有する。軸AXと直交する平面内において、シールセグメント11のそれぞれは、円弧状である。本実施形態においては、回転軸50の周囲にシールセグメント11が8つ配置される。
【0034】
図3、
図4、及び
図5に示すように、シールセグメント11は、回転軸50の周囲に配置される複数のリーフ(薄板)20と、回転軸50の軸方向に関してリーフ20の一側に配置された高圧側サイドシール板16と、回転軸50の軸方向に関してリーフ20の他側に配置された低圧側サイドシール板17と、リーフ20を保持する保持リング13及び保持リング14を含む保持部材134と、リーフ20と保持部材134との間に配置される背面スペーサ15とを備えている。
【0035】
図4に示すように、シールセグメント11は、ハウジング9に挿入される。ハウジング9は、静翼2A、支持部2S、静翼4A、及び支持部4Sの少なくとも一つに相当する。ハウジング9は、凹部9aを有する。凹部9aは、回転軸50の外周面に面する開口9kを有する。シールセグメント11の少なくとも一部は、ハウジング9の凹部9aに配置される。凹部9aは、回転軸50の周方向に延在する。凹部9aの外側に、リーフ20の一部が突出する。
【0036】
リーフ20は、可撓性を有する板状部材である。リーフ20は、弾性変形可能である。本実施形態において、リーフ20は、薄い鋼板である。リーフ20の表面の法線は、回転軸50の周方向(回転方向)とほぼ平行である。リーフ20の幅方向は、回転軸50の軸方向とほぼ一致する。リーフ20の厚さ方向は、回転軸50の周方向とほぼ一致する。リーフ20は、回転軸50の周方向に可撓性を有する。リーフ20は、回転軸50の軸方向に高い剛性を有する。
【0037】
リーフ20は、回転軸50の周方向に間隔をあけて複数配置される。リーフ20と、そのリーフ20に隣り合うリーフ20との間に隙間Sが形成される。複数のリーフ20によってリーフ積層体12が形成される。リーフ積層体12は、複数のリーフ20の集合体(積層体)である。本実施形態のリーフ20は、2種類のリーフ20が積層されている。この点については後述する。
【0038】
複数のリーフ20(リーフ積層体12)は、回転軸50の周囲をシールすることによって、回転軸50の周囲の空間を回転軸50の軸方向に関して2つの空間に分ける。本実施形態において、複数のリーフ20は、回転軸50の周囲の空間を高圧空間と低圧空間とに分ける。高圧空間の圧力は、低圧空間の圧力よりも高い。
【0039】
複数のリーフ20のそれぞれは、回転軸50の軸AXに対する放射方向(径方向)に関して外側の基端部(外側端部)20aと、内側の先端部(内側端部)20bと、回転軸50の軸方向に関して高圧空間側の側端部20cと、低圧空間側の側端部20dとを有する。
【0040】
以下の説明において、複数のリーフ20の基端部20aを合わせて適宜、リーフ積層体12の基端部12a、と称し、複数のリーフ20の先端部20bを合わせて適宜、リーフ積層体12の先端部12b、と称し、複数のリーフ20の側端部20cを合わせて適宜、リーフ積層体12の側端部12c、と称し、複数のリーフ20の側端部20dを合わせて適宜、リーフ積層体12の側端部12d、と称する。基端部12aは、複数の基端部20aの集合体である。先端部12bは、複数の先端部20bの集合体である。側端部12cは、複数の側端部20cの集合体である。側端部12dは、複数の側端部20dの集合体である。
【0041】
基端部12aは、径方向に関して外側を向く。先端部12bは、回転軸50の外周面と対向するように、径方向に関して内側を向く。側端部12cは、回転軸50の軸方向に関して一側(高圧空間側)を向く。側端部12dは、回転軸50の軸方向に関して他側(低圧空間側)を向く。先端部12b(先端部20b)は、開口9kを介して凹部9aの外側に配置される。
【0042】
本実施形態において、複数のリーフ20の基端部20aのそれぞれは、背面スペーサ15に固定される。一方、複数のリーフ20の先端部20bのそれぞれは、固定されない。すなわち、本実施形態において、基端部20aは固定端であり、先端部20bは自由端である。複数のリーフ20(リーフ積層体12)は、基端部20aが固定された状態で、保持部材134に保持される。
【0043】
リーフ20は、頭部21と胴部22とを有する。基端部20aは、頭部21に配置される。先端部20b、側端部20c、及び側端部20dは、胴部22に配置される。幅方向(回転軸50の軸方向)に関する胴部22の寸法は、頭部21の寸法よりも小さい。厚さ方向(回転軸50の周方向)に関する胴部22の寸法は、頭部21の寸法よりも小さい。胴部22は、胴部22の頭部21との境界部に切欠部20x及び切欠部20yを有する。
【0044】
本実施形態においては、複数のリーフ20は、頭部21の側方突出部21c及び側方突出部21dのそれぞれにおいて溶接により接続される。胴部22は、弾性変形可能である。
【0045】
保持部材134は、リーフ積層体12を保持する。保持部材134は、ハウジング9に支持される。ハウジング9は、凹部9aの内側に支持面9sを有する。保持部材134は、支持面9sに支持される。
【0046】
保持部材134は、保持リング13及び保持リング14を含む。保持リング13及び保持リング14のそれぞれは、回転軸50の周方向に延在する円弧状の部材である。保持リング13は、リーフ20の側方突出部21cを含む頭部21の一部が配置される凹部13aを有する。保持リング14は、リーフ20の側方突出部21dを含む頭部21の一部が配置される凹部14aを有する。背面スペーサ15は、リーフ20の頭部21と保持リング13及び保持リング14との間に配置される。
【0047】
リーフ20の頭部21が背面スペーサ15を介して凹部13a及び凹部14bにはめ込まれる。これにより、リーフ積層体12が保持部材134に保持される。
【0048】
高圧側サイドシール板16は、リーフ20(リーフ積層体12)に隣接するように高圧空間に配置される。低圧側サイドシール板17は、リーフ20(リーフ積層体12)に隣接するように低圧空間に配置される。高圧側サイドシール板16は、高圧空間においてリーフ積層体12の側端部12cの一部と対向するように配置される。低圧側サイドシール板17は、低圧空間においてリーフ積層体12の側端部12dの一部と対向するように配置される。
【0049】
高圧側サイドシール板16は、リーフ20の側端部20c(リーフ積層体12の側端部12c)の少なくとも一部と対向する対向面161と、対向面161の反対方向を向く表面162とを有する。
【0050】
低圧側サイドシール板17は、リーフ20の側端部20d(リーフ積層体12の側端部12d)の少なくとも一部と対向する対向面171と、対向面171の反対方向を向く表面172とを有する。
【0051】
高圧側サイドシール板16は、リーフ20の切欠部20xに配置される凸部16aを有する。切欠部20xに配置された凸部16aは、リーフ20(リーフ積層体12)及び保持リング13により固定される。
【0052】
低圧側サイドシール板17は、リーフ20の切欠部20yに配置される凸部17aを有する。切欠部20yに配置された凸部17aは、リーフ20(リーフ積層体12)及び保持リング14により固定される。
【0053】
本実施形態において、高圧側サイドシール板16の先端部163は、リーフ20の先端部20bよりも回転軸50から離れている。高圧側サイドシール板16は、径方向に関して基端部20a側の側端部20c(側端部12c)の一部と対向し、先端部20b側の側端部20c(側端部12c)の一部と対向しない。
【0054】
本実施形態において、低圧側サイドシール板17の先端部173は、リーフ20の先端部20bよりも回転軸50から離れている。低圧側サイドシール板17は、径方向に関して基端部20a側の側端部20d(側端部12d)の一部と対向し、先端部20b側の側端部20d(側端部12d)の一部と対向しない。
【0055】
また、本実施形態において、低圧側サイドシール板17の先端部173は、高圧側サイドシール板16の先端部163よりも回転軸50から離れている。本実施形態において、回転軸50の径方向に関して、高圧側サイドシール板16の寸法は、低圧側サイドシール板17の寸法よりも大きい。
【0056】
次に、
図1から
図5に加え、
図6、
図7A及び
図7Bを用いて、リーフ積層体について説明する。
図6は、リーフ積層体の概略構成を示す斜視図である。
図7Aは、リーフ積層体の概略構成を示す側面図である。
図7Bは、リーフ積層体の概略構成を示す背面図である。
図6に示すようにリーフ積層体12は、複数のリーフ20が周方向に積層されている。リーフ20は、第1リーフ122と第2リーフ124とを有する。第1リーフ122と第2リーフ124とは、上述したリーフ20の形状である。第1リーフ122は、リーフ20の構造に加え、折り返し部180を有する。第2リーフ124は、折り返し部180を有さない。リーフ積層体12は、周方向において、第1リーフ122と第1リーフ122との間に複数枚の第2リーフ124が配置されている。
【0057】
第1リーフ122は、低圧側サイドシール板17よりも回転軸50側に折り返し部180が設けられている。折り返し部180は、第1リーフ122の回転軸50側の端部に配置されている。折り返し部180は、第1リーフ122の板部に直交する方向、具体的には、回転軸50の周方向に延在する板状の部材であり、第1リーフ122の板部に連結している。折り返し部180は、第1リーフ122の板部に対して、回転軸50の回転方向の下流側に延在している。折り返し部180は、第1リーフ122の板部に近い側の面181が、第2リーフ124の軸方向の端面と対面している。
【0058】
リーフ積層体12は、第1リーフ122に折り返し部180を設けることで、回転軸50の回転時に折り返し部180の面181と第2リーフ124との端面を好適に接触することができ、折り返し部180で対面する第2リーフ124の挙動を拘束することができる。具体的には、一部の第2リーフ124に、他の第1リーフ122、第2リーフ124よりも大きく変形する力が作用した場合、第2リーフ124の軸方向の端面が折り返し部180の面181と接触し、第2リーフ124の変形しようとする力が折り返し部180により受け止められる。また、回転軸50の回転時に折り返し部180の面181と第2リーフ124との端面とが接触することで、折り返し部180の面181により対面する第2リーフ124に一体で動く力が作用する。また、リーフ積層体12は、リーフ20の間隔が位置によって異なり、不均一となるが、折り返し部180を設けることで、第1リーフ122と折り返し部180で対面している複数の第2リーフ124を連動して動かすことができる。これにより、一部のリーフが大きく変形することを抑制することができ、リーフに疲労が蓄積し、損傷する恐れをより低減することができる。
【0059】
リーフ積層体12は、折り返し部18の面181と、第2リーフ124の軸方向の端面との距離Wは0.005mm以下であることが好ましい。距離Wを0.005mm以下とすることで、回転軸50の回転時に折り返し部180の面181と第2リーフ124との端面を好適に接触することができ、折り返し部180で対面する第2リーフ124の挙動を拘束することができる。これにより、一部のリーフが大きく変形することをより確実に抑制することができ、リーフに疲労が蓄積し、損傷する恐れをより低減することができる。リーフ積層体12は、折り返し部18の面181と、第2リーフ124の軸方向の端面と、が圧接することが好ましい。これにより、一部のリーフが大きく変形することをより確実に抑制することができ、リーフに疲労が蓄積し、損傷する恐れをより低減することができる。
【0060】
また、折り返し部180は、第1リーフ122の長手方向の距離をLとし、前記折り返し部180が設けられている領域のリーフの回転軸50側の端部からの距離をLaとした場合、距離Laは、0.1L以下であることが好ましい。つまり折り返し部180は、リーフの回転軸側の端部から距離Laに含まれる範囲に設けることが好ましい。これにより、リーフの変形が大きい部分に折り返し部180を設けることができ、一部のリーフが大きく変形することをより好適に抑制することができる。
【0061】
また、リーフ積層体12は、周方向において、第1リーフ122と第1リーフ122との間に第2リーフ124を2枚以上5枚以下配置することが好ましい。これにより、折り返し部180の強度が低下することを抑制しつつ、簡単に製造することができる。また折り返し部180は、第1リーフ122と第1リーフ122との間に挟まれる枚数の第2リーフ124と対面することが好ましい。これによりリーフ積層体12の第2リーフ124を第1リーフ122で連動して移動させることができる。
【0062】
本実施形態では、リーフ積層体12の低圧側、つまりガスGの流れ方向下流側の端部に折り返し部180を設けることで、本実施形態のように高圧側サイドシール板16と高圧側サイドシール板16よりも短い低圧側サイドシール板17とで挟み込んだ構造とした場合に最も変位が大きくなるリーフ20のガスGの流れ方向下流側の端部で一部のリーフ20の変位が大きくなることを抑制することができる。なお、折り返し部180は、シールセグメント11の構造によっては、リーフ積層体12の高圧側、つまりガスGの流れ方向上流側の端部に設けてもよい。また、軸方向の両方の端部に設けてもよい。
【0063】
ここで、折り返し部180の形状は、上記実施形態に限定されない。折り返し部180は、回転時の第2リーフの挙動を拘束することができればよく、配置位置、形状を種々の配置位置、形状とすることができる。
【0064】
図8から
図10は、それぞれ第1リーフの他の例の概略構成を示す側面図である。
図8に示す第1リーフ122aは、折り返し部180aが、第1リーフ122aの板部分よりも回転軸50の回転方向上流側に延在している。このように、折り返し部180aを、回転軸50の回転方向上流側に設けても、リーフ124aが第2リーフ群の最大変形を抑制することで、一部のリーフだけの変位が大きくなることを抑制することができる。
【0065】
図9に示す第1リーフ122bは、折り返し部180bが、第1リーフ122bの板部分の回転軸50の回転方向上流側と下流側の両方に延在している。このように、折り返し部180bを回転方向上流側と下流側の両方に配置した構造としてもよい。
【0066】
図10に示す第1リーフ122cは、折り返し部180cが、径方向において、回転軸50側の端部よりも距離Lb、径方向外側に配置されている。つまり、折り返し部180cは、板部分の回転軸50側の端部から距離Lbの間配置されておらず、距離Lbよりも径方向外側に配置されている。このように折り返し部180cは、第1リーフ122cの回転軸50側の端部に配置しなくてもよい。また、距離Lbの範囲に配置しないことで、折り返し部180cが回転軸50と接する恐れを低減することができる。ここで、距離Lbは、0.05L以上0.1L以下とすることが好ましい。
【0067】
次に、
図11から
図13を用いて、折り返し部の変形例について説明する。
図11は、第1リーフの他の例の概略構成を示す斜視図である。
図11に示す第1リーフ122dは、折り返し部180dに複数の穴(折り返し部穴)182が形成されている。穴182は、折り返し部180dの厚み方向に貫通している。折り返し部180dは、穴182を設けることで、ガスGの流れに対する抵抗を低減することができる。
【0068】
図12は、第1リーフの他の例の概略構成を示す斜視図である。
図12に示す第1リーフ122eは、折り返し部180eに複数のスリット(折り返し部穴)184が形成されている。スリット184は、径方向に複数形成されている。スリット184は、折り返し部180dの厚み方向に貫通している。スリット184は、周方向に延在しており、折り返し部180eの板部分側とは反対側の端部に開口している。折り返し部180eは、スリット184を設けることで、ガスGの流れに対する抵抗を低減することができる。また、折り返し部穴をスリット184とすることで、形成しやすくすることができる。
【0069】
図13は、第1リーフの他の例の概略構成を示す斜視図である。
図13に示す第1リーフ122fは、折り返し部180fの板部分側とは反対側の端部に突出部186が形成されている。突出部186は、面181に設けられ、リーフ20側に突出している。突出部186は、隣接するリーフの間に挿入される。第1リーフ122fは、突出部186を設けることで、第1リーフ122fと突出部186との間の第2リーフをより確実に一体で移動させることができる。
【0070】
また、第1リーフ122は、折り返し部180の面181を加工し、第1リーフ122の他の部分よりも表面粗さを粗くした加工面を設けることが好ましい。これにより、折り返し部180の面181と第2リーフ124とが接触した場合、第2リーフ124の移動をより拘束することができる。
【0071】
図14は、第1リーフの他の例の概略構成を示す斜視図である。
図14に示す第1リーフ122は、折り返し部180の面181に複数の凸部190を設けている。凸部190は、径方向に延在し、周方向に並んでいる。このように、複数の凸部190を設けることで、折り返し部180と第2リーフ124とを接触しやすい状態にすることができ、折り返し部180で第2リーフ124の移動をより拘束することができる。
【0072】
図15は、他の例の軸シール装置の概略を示す断面図である。上記実施形態では、折り返し部を設けたが、本実施形態のリーフは、これに限定されず、折り返し部に加え、または折り返し部に代えてリーフの板部分の所定の領域に穴(端部穴)を設けてもよい。
【0073】
図15に示すリーフ126は、複数の端部穴として、スリット230が形成されている。スリット230は、一方の端部がリーフ126の端部に繋がっている。本実施形態のスリット230は、軸方向に延在し、軸方向の端部に開口している。スリット230は、リーフ126の軸方向の端部(下流側の端部)から距離Daであり、リーフ126の回転軸50側の端部かLcに含まれる範囲である領域220に形成されている。なお、本実施形態では、領域220にスリット230を形成したが、リーフ126の軸方向の端部(上流側の端部)から距離Dbであり、リーフ126の回転軸50側の端部かLcに含まれる範囲である領域222にもスリットを形成してもよい。ここで、距離Da、Dbは、軸方向の幅をDとした場合、0.1D以下となる。また、距離Lcは、リーフの長手方向の距離をLとした場合、0.1L以下となる。
【0074】
リーフ126は、スリット230を領域220(必要に応じて領域222)に設けることで、リーフ126の軸方向の端部で回転軸50の回転時に変形が大きくなる部分で応力が集中することを抑制することができ、リーフ126の変形を小さくすることができる。これにより、リーフ126に蓄積する疲労を低減することができる。また、スリット230を領域220(必要に応じて領域222)に選択的に設けることで、シール性を維持しつつ、疲労の蓄積を低減することができる。またリーフ126は、スリット230を軸方向に延在する穴とすることで、リーフ126と回転軸50との間に開口が形成されることを抑制できる。これにより、シール性を維持しつつ、疲労の蓄積を低減することができる。
【0075】
図16は、リーフの概略構成を示す拡大図である。ここで、スリット230は、
図16に示すように、リーフ126の端部に開口していない側の端部を円弧232とすることが好ましい。円弧232は、スリット230の幅よりも径が大きいことが好ましい。このように円弧232を設けることで、スリット230の端部で、亀裂が生じることを抑制することができる。
【0076】
図17は、リーフの他の例の概略構成を示す拡大図である。
図17に示すリーフ126aは、領域220a、222aにスリット234が形成されている。スリット234は、径方向に延在しており、径方向内側の端部に開口している。また、スリット234は、リーフ126aの端部に開口していない側の端部に円弧236が設けられている。リーフ126aは、リーフ126よりもシール性が低下するが、スリット234を設けた形状としても、疲労の蓄積を低減することができる。
【0077】
また、上記実施形態では、領域220、222にスリット230を設けたが、端部穴としては、リーフ126の延在方向の端部に開口していない穴を形成してもよい。
【0078】
また、リーフ積層体は、上記効果をより好適に得ることができるため、全てのリーフをリーフ126とすることが好ましいが、少なくとも1つがリーフ126であればよい。また、リーフ積層体は、第2リーフ124に代えてリーフ126を配置してもよい。つまり、リーフ積層体を第1リーフ122とリーフ126の組み合わせとしてもよい。また、リーフ積層体は、全てのリーフをリーフ126としてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、組み立てが簡単になり、隙間の管理もより高い精度で行うことができるため、高圧側サイドシール板16と、低圧側サイドシール板17をハウジング9と別体としたが、ハウジング9をサイドシール板として設けてもよい。軸シール装置は、リーフ積層体12の軸方向の端面が対面する部分がサイドシール板となる。
【0080】
図18は、他の例の軸シール装置の概略を示す断面図である。
図18に示す軸シール装置310は、保持部材134にリーフ積層体313が固定されている。リーフ積層体313は、複数のリーフ320が周方向に積層されている。リーフ320は、軸方向の中心に、径方向の外側の端部から径方向内側に延びた凹部324が形成されている。リーフ320の凹部324には、ハウジング9の突起部330が挿入されている。突起部330は、周方向に延在するリング状の部材である。突起部330は、軸方向上流側の面に、緩衝部332が設けられている。緩衝部332は、リーフ320を移動可能な状態で支持しつつ、突出部330とリーフ320との間の隙間を低減している。
【0081】
図18に示すようにハウジング9等の固定部側のリング状の部材がリーフ320の一部に突出した構造とした場合、リーフ320に折り返し部を設けるあるいは、領域220、222に相当する部分に端部穴を設けることで上記と同様の効果を得ることができる。