特許第6590524号(P6590524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6590524
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】計測用分電盤
(51)【国際特許分類】
   H02B 1/42 20060101AFI20191007BHJP
【FI】
   H02B1/42
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-103402(P2015-103402)
(22)【出願日】2015年5月21日
(65)【公開番号】特開2016-220415(P2016-220415A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】特許業務法人なじま特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 孝美
(72)【発明者】
【氏名】筧 友矩
(72)【発明者】
【氏名】出原 侑昌
【審査官】 関 信之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−021801(JP,A)
【文献】 特開2014−193105(JP,A)
【文献】 特開2013−207974(JP,A)
【文献】 特開2003−139803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の母線バーのうち少なくとも1つの母線バーに、
分岐開閉器の一次側端子が接続される分岐バーを複数形成するとともに、
各分岐バーに接続される分岐開閉器に流れる電流を、
CTからなる電流センサが配設された電流計測基板を有する電流計測ユニットによって計測する計測用分電盤において、
前記電流センサと前記電流計測基板とを対向させて配置し、
前記電流計測基板に形成された分岐バー挿通用の貫通孔に、前記電流計測基板を貫通する絶縁隔壁部を前記電流センサと一体又は別体に形成し、
この絶縁隔壁部は、電流センサの電流計測基板に対向する面側にあり、かつ電流センサの通過孔部の内周面よりも外周位置にあることを特徴とする計測用分電盤。
【請求項2】
前記絶縁隔壁部は、CTからなる電流センサの電流計測基板に対向する面より一体に突設されたものであることを特徴とする請求項1に記載の計測用分電盤。
【請求項3】
前記電流計測ユニットは電流計測基板を収納するユニットケースを備え、前記絶縁隔壁部は、ユニットケースと一体に形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の計測用分電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盤内に収納された複数の分岐開閉器に流れる電流の計測手段を備えた計測用分電盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホームエネルギーマネジメントシステム(HEMS)等の普及に伴い、家庭用の分電盤の各分岐開閉器を介して負荷に流れる電流を計測する需要が増加している。このため、分電盤に収納された各分岐開閉器の負荷側に電流センサであるCT(変流器)を配置し、電流を計測することが行われている。
【0003】
この場合、各分岐開閉器にCTをそれぞれ個別に配置したり、各CTに個別に配線したりすることは煩雑である。そこで特許文献1に示すように、同一のプリント基板上に、複数の電流センサからなるセンサユニットを形成することが提案されている。
【0004】
このセンサユニットは、プリント基板の各電流センサに対応する位置に貫通孔を備えており、その内部に分電盤の母線バーと分岐開閉器とを結ぶ分岐バーを貫通させて電流計測を行っている。しかしプリント基板上には様々な電子部品が配置されており、貫通孔の近傍の電子部品と分岐バーとの絶縁距離が確保できなくなることがあった。
【0005】
そこで特許文献1においては、リング状のアモルファスコアの内部に絶縁板の一部を埋戻し、その中心に導体を貫通させる構造とすることによって、導体と電子部品との間の絶縁距離を確保している。
【0006】
ところがこのような構造とするとCTの径を大きくする必要が生ずる。しかしCTの外径は隣合うCTとの間隔を確保するために大きくすることができない。この結果、電流を精度よく測定するために必要なコイル巻き数を確保することができず、測定精度が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−240619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、電流計測用基板上に複数のCTを配置して各分岐開閉器に流れる電流値の計測を行なう計測用分電盤において、CTの径を大きくすることなく、電流計測用基板上に配置された電子部品と、導電部である分岐バーとの絶縁距離を確保することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、複数本の母線バーのうち少なくとも1つの母線バーに、分岐開閉器の一次側端子が接続される分岐バーを複数形成するとともに、各分岐バーに接続される分岐開閉器に流れる電流を、CTからなる電流センサが配設された電流計測基板を有する電流計測ユニットによって計測する計測用分電盤において、前記電流センサと前記電流計測基板とを対向させて配置し、前記電流計測基板に形成された分岐バー挿通用の貫通孔に、前記電流計測基板を貫通する絶縁隔壁部を前記電流センサと一体又は別体に形成し、この絶縁隔壁部は、電流センサの電流計測基板に対向する面側にあり、かつ電流センサの通過孔部の内周面よりも外周位置にあることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記絶縁隔壁部は、CTからなる電流センサの電流計測基板に対向する面より一体に突設されたものであることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は請求項1の発明において、前記電流計測ユニットは電流計測基板を収納するユニットケースを備え、前記絶縁隔壁部は、ユニットケースと一体に形成されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、電流計測基板に形成された分岐バー挿通用の貫通孔の内側に、電流計測基板を貫通する絶縁隔壁部を形成したので、導電部である分岐バーはこの絶縁隔壁部の内部を通過することとなり、電流計測用基板上に配置された電子部品と、導電部である分岐バーとの絶縁距離を確保することができる。このため、電流センサの内径を大きくすることなく絶縁距離を確保することができ、CTの必要なコイル巻数を確保することができ、精度のよい電流計測が可能である。
【0013】
また、請求項2の発明のように絶縁隔壁部をCTからなる電流センサの電流計測基板に対向する面より一体に突設したり、請求項3のようにユニットケースと一体に形成したりすることにより、部品点数を増加させたり、組立工数を増加させる必要がない利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の計測用分電盤の内部構造を示す斜視図である。
図2】分岐開閉器を取外した状態を示す斜視図である。
図3】分岐開閉器を取外した状態を示す分解斜視図である。
図4】接続状態を示す断面図である。
図5】電流計測ユニットの外観を示す斜視図である。
図6】電流計測ユニットの内部構造を示す斜視図である。
図7】要部の断面図である。
図8】要部の断面斜視図である。
図9】他の実施形態を示す要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態を説明する。
図1は実施形態の計測用分電盤の内部構造を示す斜視図であり、1は主幹分岐開閉器、2は主幹分岐開閉器の二次側に接続された母線バー、3は母線バー2を挟んで2列に配置された複数の分岐開閉器である。母線バー2は2本の電圧極L1、L2と1本の中性極Nとからなり、本実施形態においては、安全を考慮して前面側にN極が配置されているが、これに限定されるものではない。これらの母線バー2は、図2図3に示すバーホルダ4とスペーサ5とによって、等間隔に保持されている。分岐開閉器3は母線バー2にプラグイン接続されるプラグインブレーカである。
【0016】
図3に示されるように、電圧極L1、L2の母線バー2の一方の側面には、分岐開閉器3に向かって延びる分岐バー6が櫛歯状に突設されている。本実施形態では、L1の母線バー2は上側に、L2の母線バー2は下側に分岐バー6が形成されている。これらの分岐バー6の先端には、各列の分岐開閉器3の一次側端子がプラグイン接続される。前面側のN極の母線バー2の幅は、電圧極L1、L2から突設された分岐バー6を覆うサイズとなっている。なお分岐バー6を母線バー2の両側から突設することも可能である。なお、母線バー2に形成した分岐バー6は一体に形成しているものであるが、母線バー2にネジ止めされるものでも良い。
【0017】
各分岐開閉器3は、図2図3に示す分岐開閉器固定板7に固定されている。分岐開閉器固定板7にはスリット8が複数形成されており、分岐開閉器3の底面にはスリット8に係合する突起が形成されている。周知のように、分岐開閉器3の底面の突起をスリット8に嵌めたうえで母線バー2の方向にスライドさせることによって分岐開閉器3は分岐開閉器固定板7に固定されるとともに、図4に示すように分岐開閉器3の一次側端子9に分岐バー6の先端が挿入される。また、N極の母線バー2の先端も分岐開閉器3の一次側端子9にプラグイン接続される。
【0018】
図4に示すように、本発明では母線バー2と分岐開閉器3の一次側端子9との間に、電流計測ユニット10が取付けられている。図5に電流計測ユニット10の外観を示し、図6にその内部構造を示す。図6に示されるように、電流計測ユニット10は1枚の電流計測基板11に複数の電流センサ12を取付けたものであり、ユニットケース13に収納されている。電流センサ12はリング状の鉄心を備えたCTであり、その中心に前記した分岐バー6を通すための通過孔部14を備えている。また電流計測基板11にも、分岐バー6を通すための貫通孔15が形成されている。これらの通過孔部14と貫通孔15に分岐バー6を通すことにより、電流センサ12は分岐バー6を通じて各分岐開閉器3に流れる電流値を計測することができる。
【0019】
電流計測基板11には、演算処理部等の電子部品や、配線路が搭載されている。演算処理部は電流センサ12の電流計測値をアナログ―デジタル変換したり、電流値から電力を演算したりする演算処理機能を備えているほか、測定値を図1に示す電流計測装置18に送信する機能等を備えている。この電流計測装置18は、各電流センサ12の使用状況表示、電流の使い過ぎの警告通知、外部への電流値の送信等を行なう装置である。本実施形態では図1に示すように、電流計測装置18は計測用分電盤の内部に配置されているが、盤外に設置することも可能である。
【0020】
このように電流計測基板11には電子部品が配置されているため、電流計測基板11の貫通孔15に分岐バー6を貫通させると、電流計測基板11上の電子部品や配線路等と分岐バー6との絶縁距離を確保できなくなる恐れが生ずることは前述の通りである。そこで本発明では図6に示すように、電流計測基板11に形成された分岐バー挿通用の貫通孔15の内側に、電流計測基板11を貫通する絶縁隔壁部16を形成した。
【0021】
図7に示すように、この絶縁隔壁部16は円筒状であり、本実施形態では電流センサ12と一体に形成されている。絶縁隔壁部16は少なくとも電流計測基板11の貫通孔15を貫通するものであり、本実施形態ではユニットケース13の貫通孔17と同一面の位置まで形成している。そしてこの円筒状の絶縁隔壁部16の内部に、図8に示すように分岐バー6を貫通させる。詳しくは、CTからなる電流センサ12の電流計測基板11に対向する面より絶縁隔壁部16が一体に突出するように形成している。その他に、電流センサ12の貫通孔部14を構成する内周面より延長させて絶縁隔壁部16を形成するものであっても良い。このような構造とすることによって、分岐バー6と電流計測基板11との間は絶縁隔壁部16によって遮られ、絶縁距離(空間絶縁距離もしくは沿面絶縁距離)を確保することが可能となる。なお、この絶縁隔壁部16の開放端部はユニットケース13を貫通させるものでも良く、図7に示すように、ユニットケース13と絶縁隔壁部16が重複するように形成することが好ましい。この場合、分岐バー6と電流計測基板11との絶縁距離を確実に確保することが可能となるものである。
【0022】
また、絶縁隔壁部16を電流センサ12とは別途に形成するものであっても良いが、図6図7に示すように、絶縁隔壁部16を電流センサ12に一体に形成することが好ましい。この場合、部品点数が少なくなるとともに、絶縁隔壁部16と電流センサ12間に隙間が生じないので分岐バー6と電流計測基板11との絶縁距離を確保することが可能となるものである。また、電流センサ12の電流計測基板11に対向する面より絶縁隔壁部16を形成する構造のため、CTを貫通しないのでCTのサイズに影響を及ぼすことがないため、CTの必要なコイル巻数を確保することができ、精度のよい電流計測が可能である。
【0023】
以上に説明した実施形態では、1枚の電流計測基板11上に複数の電流センサ12を取付けたが、電流計測基板11は必ずしも1枚である必要はない。例えば複数枚に分割してもよく、電流センサ12と同数に分割して1枚の電流計測基板11に1つの電流センサ12を取付けることも可能である。
【0024】
また以上に説明した実施形態では、絶縁隔壁部16を電流センサ12と一体に形成したが、図9に示す第2の実施形態のように、ユニットケース13の貫通孔17を構成する隔壁を電流計測基板11を貫通するように延長し、且つ、CTからなる電流センサ12の電流計測基板11に対向する面に当接する絶縁隔壁部16としたものである。この場合にも電流計測基板11の内面は円筒状の絶縁隔壁部16によって覆われるので、その内部を貫通する分岐バー6と電流計測基板11との間の絶縁距離を確保することができる。本実施形態の構造は電流センサ12の貫通孔部14の外側に当接する構造であるため、汎用的なCTを用いることが可能である。
【0025】
以上に説明したように本発明によれば、電流計測用基板11上に配置された電子部品と、導電部である分岐バー6との絶縁距離を確保することができる。このため、電流センサ12の内径を大きくすることなく絶縁距離を確保することができ、CTのコイル巻数を変更する必要もないため、精度のよい電流計測が可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 主幹分岐開閉器
2 母線バー
3 分岐開閉器
4 バーホルダ
5 スペーサ
6 分岐バー
7 分岐開閉器固定板
8 スリット
9 一次側端子
10 電流計測ユニット
11 電流計測基板
12 電流センサ
13 ユニットケース
14 通過孔部
15 貫通孔
16 絶縁隔壁部
17 貫通孔
18 電流計測装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9