特許第6590544号(P6590544)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6590544
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】蓄電池車両の充電所用架線構造
(51)【国際特許分類】
   B60M 1/30 20060101AFI20191007BHJP
   B60M 1/12 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   B60M1/30 351
   B60M1/12 J
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-121855(P2015-121855)
(22)【出願日】2015年6月17日
(65)【公開番号】特開2017-7393(P2017-7393A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078950
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 忠
(72)【発明者】
【氏名】福田 嵩大
(72)【発明者】
【氏名】小林 武弘
【審査官】 清水 康
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−049508(JP,A)
【文献】 特開2002−154352(JP,A)
【文献】 特開2007−274893(JP,A)
【文献】 実公昭22−001578(JP,Y1)
【文献】 実開昭64−018932(JP,U)
【文献】 特開平04−289617(JP,A)
【文献】 実開昭57−148532(JP,U)
【文献】 実開昭48−026468(JP,U)
【文献】 特開昭58−152650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 1/12
B60M 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池車両が停車中に集電装置を介して充電を行うための屋外の充電所に設けられる架線構造であって、
下面に前記集電装置が接触できるように軌条の上方に、軌条に沿って延長するように架設される良導電性金属帯板からなる電車線本体と、
前記電車線本体の延長方向の所定間隔毎に当該電車線本体を吊支するために軌条の側方に設けられる支持構造物と、
前記支持構造物から軌条に直交するように軌条の上方へ延出する支持体と、
前記支持体の下に碍子を介して前記電車線本体をそれの延線方向の所定間隔毎に支持する支持部材と、を具備し、
前記電車線本体は、垂直で平らな延線方向の左右両側面を持ち、延線直交方向に偏平な帯板状に構成され、
前記支持部材は、前記電車線本体の延線方向の所定間隔毎の左右両側面の上縁部に固着される一対の掛け金具と、前記碍子の下端に固着される台座と、この台座の下面に固着され前記掛け金具を支持する一対の支持サドルとを具備し、
前記一対の掛け金具は、第1の辺が前記電車線本体の垂直の側面に固着され、第2の辺が電車線本体の上端から直角に延線直交方向側方へ延出する断面L字状に構成され、
前記の一対の支持サドルは、前記掛け金具の第2の辺の下面を載せ受け、前記台座との間に当該第2の辺を保持する支持片を有し、
前記電車線本体は、前記支持部材による支持部の間に、上面に積雪を生じにくい延線直交方向に偏平な屋外の架空部を形成するように構成されることを特徴とする蓄電池車両の充電所用架線構造。
【請求項2】
前記電車線本体の上縁部の肉厚が上端に向かって漸減することを特徴とする請求項1に記載の蓄電池車両の充電所用架線構造。
【請求項3】
前記電車線本体は、隣接端部が一対の継ぎ目板に挟まれて延長方向に相互接続される所定長さの複数の単位帯板材からなり、
前記一対の継ぎ目板は、前記単位帯板材の上部側面に密着する挟持面と、当該挟持面の上端から直角に内側へ突出して下面が単位帯板材の上面の一部に掛かる突条部とを具備し、単位帯板材を挟んで三者を貫通する複数のボルトにより締め付け固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電池車両の充電所用架線構造。
【請求項4】
前記支持体は、前記碍子の上方に位置して、碍子を覆う雪除け用の屋根部材を具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の蓄電池車両の充電所用架線構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
蓄電池車両は、屋外に設けられる充電所に停車し、充電用架線から集電装置を介してバッテリに充電を行う。本発明は、蓄電池車両の充電所に設けられる架線構造に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池車両が停車してバッテリに充電を行う充電所は、例えば駅や停留所、あるいは線路の途上に設置される。充電所には、大電流充電を行うために、充電用架線が設けられる。充電用架線は、充電所に数メートルから数十メートル程度の距離にわたって架設された剛体トロリなどからなる部分架線である(特許文献1参照)。剛体トロリとしては、断面T型の導電金属レールからなるもの(例えば特許文献2)、アルミT形材の下に一対の支持サドルによってトロリ線を把持固定したもの(例えば特許文献3)、断面Π型のアルミ剛体の下縁にトロリ線を挟持したもの(例えば特許文献4)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−24420号公報
【特許文献2】特開2002−154352号公報
【特許文献3】特開2007−307925号公報
【特許文献4】特開2003−39993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の剛体トロリは、いずれも上部に水平の板状部を有するものである。このため、寒冷地では、板状部に雪が積もりやすく、積もった雪が落下して車両や集電装置に損傷を与える危険がある。剛体トロリは、自重が大きい上に、積雪により重量が増すと、大きな撓みを生じることから、支持点間隔を相対的に小さく取る必要があり(例えば25mの架線長さに対し、6mの最大間隔で5箇所の支持点)、これに対応して、支持物にかかる費用がかさむ難点がある。また、剛体トロリ自体、大型重量物で、相対的に高価なものである。したがって、本発明は、積雪を防止し、支持点距離を相対的に大きく取って設備費を抑制できると共に、トロリ自体の材料コストも引き下げることができる充電所用の架線構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、本発明の充電所用の架線構造1は、蓄電池車両が停車中に集電装置を介して充電を行うための屋外の充電所に設けられる架線構造であって、集電装置が接触する電車線本体2と、これを支持する支持構造物3と、支持構造物3から軌条に直交するように軌条の上方へ延出する支持体4と、支持体4の下に碍子5を介して電車線本体2を支持する支持部材6とを具備する。電車線本体2は、帯板状の良導電性金属板からなり、下面に集電装置が接触できるように軌条の上方に、軌条に沿って延長するように架設される。支持構造物3は、電車線本体2の延長方向の所定間隔毎に軌条の側方に設けられる。支持部材6は、一対の掛け金具15と、台座13と、一対の支持サドル14とを具備する。一対の掛け金具15は、電車線本体2の上縁部の両面に固着される。台座13は、碍子5の下端に固着される。一対の支持サドル14は、台座13の下面に固着され、掛け金具15を支持する。一対の掛け金具15は、断面L字状で、第1及び第2の辺15a、15bを有し、第1の辺15aが電車線本体2の側面に固着され、第2の辺15bが電車線本体2の上端から直角に側方へ延出する。一対の支持サドル14は、支持片14bを有し、これが、掛け金具15の第2の辺15bの下面を載せ受け、台座13との間に第2の辺15bを保持する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の架線構造1においては、電車線本体2が帯板状の良導電性金属板からなるから、上部への積雪のおそれがない。電車線本体2が相対的に薄型、軽量であるから、材料費を節減でき、また支持点の間隔を大きく(例えば24mの架線長さに対して10mの最大間隔で3箇所の支持点)取ることができるので、設備費用が削減される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る架線構造の概略的斜視図である。
図2図1の架線構造の一部の正面図である。
図3A図1の架線構造の一部の正面図である。
図3B図1の架線構造の一部の正面図である。
図4図3の部分の側面図である。
図5】電車線本体の接続構造を示すもので、(A)は正面図、(B)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
充電所用の架線構造1は、蓄電池車両が、停車中に集電装置を介して充電を行うための屋外の充電所に設けられる架線構造である。この架線構造は、集電装置が接触する電車線本体2と、これを支持する支持構造物3と、この支持構造物3に基端側が支持される支持体4と、支持体4の下に碍子5を介して電車線本体2を支持する支持部材6とを具備する。
【0009】
電車線本体2は、帯板状のアルミニウム等の良導電性金属板からなり、その下面に集電装置が接触できるように、軌条の上方に、軌条に沿って延長するように架設される。電車線本体2を、複数の単位帯板材2a、2bを接続して構成する場合には、図5に示すように、隣接端部を一対の継ぎ目板16で挟みボルトナット17で締め付けて接続する。
【0010】
支持構造物3は、例えばコンクリート柱からなり、電車線本体2の延長方向の所定間隔毎に軌条の側方に設けられる。
【0011】
支持体4は、例えば、支持構造物3に基端側が支持される水平支持パイプ7と、上端において水平支持パイプ7の先端部に固着され垂直に延出する平行一対の垂直パイプ8と、垂直パイプ8間に架設される吊り金具9とを具備する。水平支持パイプ7は、支持構造物3から軌条に直交するように軌条の上方へ延出する。
【0012】
吊り金具9は、一対の吊り脚10と、それぞれ吊り脚10に支持される水平の支持板11と、その上方の屋根部材12とを具備する。
【0013】
一対の吊り脚10は、上端においてそれぞれ垂直パイプ8に固着され、垂直パイプ8の内側を平行に下方へ延びる。支持板11は、吊り脚10の下端間に水平に支持される。屋根部材12は、切り妻屋根状の庇を有し、支持板11の上方において吊り脚10間に支持され、支持板11上に雪が積もらないように、支持板11を覆う。支持板11の下に碍子5の上端が固着される。
【0014】
支持部材6は、台座13と、一対の支持サドル14と、一対の掛け金具15とを具備する。一対の掛け金具15は、電車線本体2の上縁部の両面に固着される。台座13は、水平板状で、碍子5の下端に固着される。一対の支持サドル14は、台座13の両側下面に固着され、掛け金具15を支持する。一対の掛け金具15は、断面L字状で、第1及び第2の辺15a、15bを有し、第1の辺15aが電車線本体2の側面に固着され、第2の辺15bが電車線本体2の上端から直角に側方へ延出する。
【0015】
一対の支持サドル14は、それぞれ台座13の下面に固着される固定辺14aと、固定辺14aの内側に段部を介して連続する支持片14bとを具備する。支持片14bは、台座13の下面との間に間隔を置いてこれとほぼ平行に延び、掛け金具15の第2の辺15bの下面を載せ受ける。例えば、電車線本体2を両端部と中間の3箇所において支持する場合、中間の支持箇所においては、図3Aに示すように、掛け金具15の第2の辺15bを支持片14bと台座13との間で締め付けて固定し、両端部においては、掛け金具15の第2の辺15bを締め付けることなく、支持片14bの上に載せ受けて、伸縮を許容するように支持する。
【0016】
この架線構造1においては、電車線本体2が帯板状の良導電性金属板からなるから、上部への積雪のおそれがない。必要に応じ、電車線本体2の上縁部の肉厚を上端に向かって漸減させる形状とすることにより、さらなる積雪防止策を講じることができる。碍子5の上方にある屋根部材12が、その下方の支持板11、碍子5、支持部材6への積雪を防止する。したがって、雪の落下による車両や集電装置の損傷事故が起こるおそれがない。電車線本体2が相対的に薄型、軽量であるから、材料費を節減でき、また支持点の間隔を大きく取ることができるので、設備費用が削減される。
【符号の説明】
【0017】
1 架線構造
2 電車線本体
2a 単位帯板材
2b 単位帯板材
3 支持構造物
4 支持体
5 碍子
6 支持部材
7 水平支持パイプ
8 垂直パイプ
9 吊り金具
10 吊り脚
11 支持板
12 屋根部材
13 台座
14 支持サドル
14a 固定辺
14b 支持片
15 掛け金具
15a 第1の辺
15b 第2の辺
16 継ぎ目板
17 ボルト・ナット
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5