特許第6590581号(P6590581)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6590581
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】阻集器
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/16 20060101AFI20191007BHJP
【FI】
   E03F5/16
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-155512(P2015-155512)
(22)【出願日】2015年8月5日
(65)【公開番号】特開2017-31762(P2017-31762A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】501482732
【氏名又は名称】下田エコテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100365
【弁理士】
【氏名又は名称】増子 尚道
(72)【発明者】
【氏名】水摩 堅一
(72)【発明者】
【氏名】田渕 寛
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−320787(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3058291(JP,U)
【文献】 特開2000−070974(JP,A)
【文献】 特開平11−324097(JP,A)
【文献】 特開2000−084304(JP,A)
【文献】 実開昭60−058689(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0025573(US,A1)
【文献】 実開昭50−114972(JP,U)
【文献】 特開2002−336882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00−11/00
E03B 1/00−11/16
E02D 29/00
E02D 29/045−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に埋設され内部に被処理排水を収容して当該被処理排水中に含まれる夾雑物を分離する分離槽と、
当該分離槽に前記被処理排水を導入する流入部と、
当該分離槽から処理後の排水である処理排水を排出する流出部と
を備えた阻集器であって、
前記分離槽は、
樹脂を主体とする材料からなり前記被処理排水を内部に収容可能な槽本体と、
当該槽本体の外面を被覆するように備えられて当該槽本体と一体となって前記分離槽の肉厚を厚くする増肉層と
を有し、
前記阻集器は、前記槽本体の側壁外面に沿って当該槽本体の周囲を取り囲むように延在して前記分離槽が埋設後に周囲から受ける土圧荷重に対抗するフレーム状の側面補強材を備え、
当該側面補強材は、前記槽本体と前記増肉層との間に挟まれて前記分離槽と一体化されている
ことを特徴とする阻集器。
【請求項2】
前記分離槽の上縁部に当該分離槽の上面開口を取り囲むように延在して当該分離槽が埋設後に周囲から受ける土圧荷重に対抗するフレーム状の上縁補強材
をさらに備えた請求項1に記載の阻集器。
【請求項3】
前記上縁補強材は、前記槽本体と前記増肉層との間に挟まれて前記分離槽と一体化されている
請求項2に記載の阻集器。
【請求項4】
前記分離槽の底板部と略同一の大きさを有し、当該底板部に沿うように備えられて当該分離槽が埋設後に周囲から受ける土圧荷重に対抗するパネル状の底面補強材
をさらに備えた請求項1から3のいずれか一項に記載の阻集器。
【請求項5】
前記底面補強材は、前記槽本体と前記増肉層との間に挟まれて前記分離槽と一体化されている
請求項4に記載の阻集器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂分や固形物などの夾雑物が混在する汚水から夾雑物を分離除去する阻集器に係り、特に樹脂製の分離槽を備え、地中に埋設して設置する埋設型のグリーストラップに関する。
【背景技術】
【0002】
下水道への油の流出を防ぐため業務用の厨房ではグリーストラップ(阻集器)の設置が義務付けられている。この阻集器は一般に、分離槽、受け籠(バスケット)およびトラップを備え、排水はバスケットを通して分離槽に流入する。排水に含まれる食べ物カスのような比較的大きな固形状のゴミはバスケットで捕捉され、液体の排水のみが分離槽に溜められる。排水に含まれる油は水に浮いて分離槽の上部に集まり、槽底部の水だけがトラップを通って下水に排出される。
【0003】
かかる阻集器は、分離槽を地中に埋めるように設置されることがある。例えば、厨房内に阻集器を設置するスペースがなく、厨房から離れた屋外に阻集器を設置する場合である。この場合、厨房のシンクや排水溝から阻集器までの配管に下り勾配をつける必要があることから、阻集器までの距離に応じてその分、分離槽を低い位置に設置する必要があり、阻集器(分離槽)を地表面より低い位置に埋めることがある。また寒冷地においては、分離槽内に溜まった排水が冬期に凍結することを防ぐために分離槽を地中に埋設する場合がある。
【0004】
さらに、このような埋設型の阻集器を開示するものとして、下記特許文献がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−320787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、阻集器を地中に設置する場合、分離槽が周囲の土壌から圧力(土圧)を受けることから、これに耐え得る構造を採る必要がある。
【0007】
図12は阻集器の埋設構造の一例を示すものであるが、この例では、FRP(Fiber Reinforced Plastics/繊維強化プラスチック)で構成した分離槽6を土圧から保護するために分離槽6の周囲にコンクリートの擁壁1を構築し、この擁壁1で土圧荷重を受け止めている。なお、分離槽6をFRPで構成するのは、FRPなどの樹脂材料は、ステンレスのような金属材料と比べて軽量で廉価であり、排水中に含まれることがある酸などの化学物質にも腐食され難い利点があるからである。
【0008】
また、図12中の符号4は擁壁1と分離槽6との間を埋める砂を、符号2は分離槽6を支持するコンクリート層を、符号3はコンクリート層2の下に敷き詰めた砕石をそれぞれ示している。また、分離槽6の一端部には被処理排水を槽内に導入する流入管13を、分離槽6の他端部には挟雑物を分離除去した処理排水を分離槽6から下水道へと流出させる流出管14をそれぞれ備える。さらに分離槽6の上部には、分離槽6の側壁を上方へ延長する枠状の部材であるスリーブ5を地表面の高さまで設置し、スリーブ5の上面開口をマンホール蓋17によって開閉可能に閉塞する。これにより、分離槽6内に設置したバスケット(図示せず)の取り出しや、分離槽6の上面側(地上)から槽内を掃除するなどのメンテナンスが可能となる。
【0009】
ところが、このような構造では、分離槽6の周囲を取り囲むコンクリート擁壁1の構築、すなわち、コンクリートの打設や養生に数日から1週間以上の期間を要することがあるなど設置に時間がかかり、施工性に欠けるうえに、施工費用も嵩む難がある。
【0010】
一方、前記特許文献1に記載の排水槽では、FRPの槽ケースの外面に発泡ウレタン層を介してレジンコンクリート層を備え、このレジンコンクリート層によって土圧荷重を支持することでコンクリート擁壁の施工を不要とする。
【0011】
しかしながらこの特許文献記載の排水槽は、土圧に対抗可能な厚さのレジンコンクリート層を備える必要から槽自体の重量が大きくならざるを得ず(槽の容量にもよるが少なくとも数百kgにはなると考えられる)、人手によって持ち上げることは難しく、工場からの搬出や現場への搬入、現場での設置作業には重機が必要となって必ずしも施工性が良好であるとは言えない。また、レジンコンクリートを使用することから製造コストが嵩み、槽自体も高価なものとなってしまう。
【0012】
したがって、本発明の目的は、より施工性に優れた埋設型の阻集器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係る阻集器は、地中に埋設され内部に被処理排水を収容して当該被処理排水中に含まれる夾雑物を分離する分離槽と、当該分離槽に被処理排水を導入する流入部と、当該分離槽から処理後の排水である処理排水を排出する流出部とを備え、前記分離槽は、樹脂を主体とする材料からなる槽本体と、当該槽本体の外面を被覆するように備えられて当該槽本体と一体となって前記分離槽の肉厚を厚くする増肉層とを有する。また当該阻集器は、分離槽の側壁に沿って当該分離槽を取り囲むように延在して当該分離槽が埋設後に周囲から受ける土圧荷重に対抗するフレーム状の側面補強材を備え、この側面補強材は、前記槽本体と前記増肉層との間に挟まれて前記分離槽と一体化されている。
【0014】
本発明の阻集器では、分離槽は樹脂を主体とする材料からなるが、分離槽の側壁に沿って分離槽を取り囲むように延びるフレーム状の補強材(側面補強材)を備えており、この補強材が土圧による荷重を受け、土圧に対抗して分離槽を保護するから、コンクリート擁壁のような土圧に対抗する構造物を別に設ける必要がなく、分離槽をそのまま地中に埋めることが可能となる。これにより、埋設型阻集器の施工性を向上させることが出来る。
【0015】
上記側面補強材は、槽本体と、槽本体の外面を覆って分離槽の肉厚を厚くする増肉層との間に挟持されるように分離槽に固定する。また側面補強材の配置位置は、好ましくは、分離槽の高さ方向の中間位置(分離槽の高さの例えば略2分の1の高さ位置)とし、この位置において帯状に分離槽(槽本体)を取り巻いて水平に延びるように側面補強材を設ければ良い。
【0016】
また、槽本体を構成する上記「樹脂を主体とする材料」は、FRP(Fiber Reinforced Plastics/繊維強化プラスチック)、特に、GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics/ガラス繊維強化プラスチック)を好ましく使用することが出来る。軽量で強度も強く、廉価で、金属と比較して酸などの化学物質にも強いからである。増肉層についても槽本体と同様の材料を使用すれば良い。なお、本発明に言う「樹脂を主体とする材料」は、必ずしもFRPやGFRPに限定されるものではなく、他の「樹脂を主体とする材料」を用いることも可能である。また、本発明に言う「樹脂を主体とする材料」とは、樹脂のほかに例えばガラス繊維のような樹脂以外の材料を含むものに限られるものではなく、樹脂のみからなる材料も勿論含む概念である。
【0017】
一方、側面補強材は、土圧に耐え得るように金属や木材などの材料によって構成すれば良い。例えば、後に実施の形態で述べるようにステンレス等の金属製の角パイプなどの金属部材によって側面補強材を構成することが出来る。
【0018】
さらに上記阻集器では、分離槽の上縁部に分離槽の上面開口を取り囲むように延在して分離槽が埋設後に周囲から受ける土圧荷重に対抗するフレーム状の上縁補強材を備えることが好ましい。分離槽の強度を高めるためである。この上縁補強材は、前記側面補強材と同様に、例えば槽本体と増肉層との間に挟まれるように分離槽に固定し一体化すれば良い。
【0019】
同様の理由から、上記阻集器では、分離槽の底板部と略同一の大きさを有し、当該底板部に沿うように備えられて分離槽が埋設後に周囲から受ける土圧荷重に対抗するパネル状の底面補強材をさらに備えることが好ましい。この底面補強材についても側面補強材および上縁補強材と同様に、例えば槽本体と増肉層との間に挟まれるようにすることで分離槽に固定すれば良い。
【0020】
分離槽の内部構造は、特に限定されない。排水中の夾雑物を捕捉するには、従来から知られている網目状のカゴや仕切板などを分離槽内に適宜配置してこれらによって行えば良く、夾雑物を捕捉する手段の種類や配置位置などは特定の構造に特に限定されない。
【0021】
典型的には、一定の大きさ以上の固形物は捕捉するが排水の通過は許容する網状の受け籠(バスケット)を前記流入部に備えてこのバスケットにより比較的大きな固形状のゴミを取り除いた後、流入部と流出部との間に備えた仕切板によって水に浮いた油脂類を分離槽内に留め置き、流出部に備えたトラップによって槽底に沈んだ固形物(カゴによって捕捉できなかった小さなゴミなど)を捕らえて、これらの固形物や油脂などが排水口から下水へ流出することを防ぐようにすれば良い。また、仕切板を備えずに例えば、トラップによって固形物と油脂類の双方を槽内に留める構造とすることも可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、埋設型阻集器の施工性を向上させることが出来る。
【0023】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基づいて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る阻集器を示す側面図である。
図2図2は、前記実施形態に係る阻集器を示す平面図である。
図3図3は、前記実施形態に係る阻集器を示す正面図(流出部側から見た図)である。
図4図4は、前記実施形態に係る阻集器の分離槽の側壁部分の断面図(図2のA−A断面)である。
図5図5は、前記実施形態に係る阻集器の設置状態を示す側面図である。
図6図6は、前記実施形態に係る阻集器の設置状態(マンホール蓋を半分切り欠いて示している)を示す平面図である。
図7図7は、前記実施形態に係る阻集器に使用可能なスリーブを示す平面図である。
図8図8は、前記スリーブを示す側面図である。
図9図9は、前記スリーブを示す正面図である。
図10図10は、前記スリーブの上縁部を示す垂直断面図(図7のB−B断面)である。
図11図11は、前記スリーブの別の構成例の上縁部を示す垂直断面図(図7のB−B断面)である。
図12図12は、従来の阻集器の設置状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1から図11に示すように、本発明の一実施形態に係る阻集器11は、排水から油脂や固形物などの挟雑物を分離する分離槽12と、この分離槽12に処理すべき排水(被処理排水)を導入する流入管13と、挟雑物を分離して取り除いた排水(処理排水)を分離槽12から下水道へと流出させる流出管14とを備えている。
【0026】
分離槽12は、有底無蓋の略直方体の全体形状を有する。より具体的には、長方形の平面形状を有する平板状の底板と、底板の周縁(底板4辺の各縁)から上方へ立ち上がる側壁と、側壁の上縁から略水平且つ外方へ張り出すフランジ部12cとを有する。
【0027】
また分離槽12は、GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)で形成した槽本体12aと、分離槽12の上縁部に固定した上縁補強材21と、分離槽12の側壁に固定した側面補強材31と、分離槽12の底板に固定した底面補強材41と、これらの補強材21,31,41および槽本体12の外表面を覆うように形成した増肉層12bとを有する。
【0028】
増肉層12bは、槽本体12aと同様にGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)からなり、上縁補強材21、側面補強材31および底面補強材41をそれぞれ槽本体12aに設置(仮固定)した後に、槽本体12aの外面全体を被覆するように増肉層12bを形成することで、これらの補強材21,31,41を分離槽12に固定し一体化する。またこのような増肉層12bの形成によって分離槽12自体の肉厚も厚くなり強度が増す。なお、増肉層12bを形成する方法は、例えば、吹付けや塗布、或いはシート状のGFRPを貼り付けるなどの方法によれば良い。
【0029】
上縁補強材21は、ステンレス製の山形鋼(アングル)を使用しこれを槽本体12aの外形形状に合わせて長方形のフレーム状(額状)に形成したもので、槽本体12aの上縁部の周囲を取り囲むように且つフランジ部12cに沿うように配置する(図4参照)。
【0030】
一方、側面補強材31は、ステンレス製の角パイプを使用しこれを上縁補強材21と同様に槽本体12aの外形形状に合わせて長方形のフレーム状(額状)に形成したもので、槽本体12aの高さの略半分の高さ位置において槽本体12aの周囲を取り囲むように水平に且つ帯状に(鉢巻状に)延びるよう配置する。
【0031】
なお、槽本体12aは底面から上方へ向かうほど水平断面が大きくなるようにテーパ状に形成してあり、すなわち、槽本体12aの側面は上方へ向かうほど外方へ広がるように傾斜させてある。また、上縁補強材21の内周の大きさは、上縁補強材21の固定位置(槽本体12aの上縁位置)における槽本体12aの外周面と略一致するサイズとしてあり、したがって上縁補強材21を槽本体12aの底面側から槽本体12aに嵌め込むと、槽本体12aの上縁位置で上縁補強材21の内周面が槽本体12aの側面に当接して留まることとなる。
【0032】
同様に、側面補強材31はその内周の大きさを側面補強材31の固定位置(槽本体12aの高さの略半分の高さ位置)における槽本体12aの外周面と略一致するサイズとしてあり、側面補強材31を槽本体12aの底面側から槽本体12aに嵌め込むと、槽本体12aの高さの略半分の高さ位置で側面補強材31の内周面が槽本体12aの側面に当接して留まる。
【0033】
他方、底面補強材41は、平板状の木材板(例えば合板)を使用しこれを槽本体12aの底面と略同一の長方形形状および大きさとし、これを槽本体12aの底面に重ねるように槽本体底面の外側に配置する。
【0034】
そして、上記各補強材21,31,41を槽本体12aに配置した状態で増肉層12bを形成する。具体的には、上記各補強材21,31,41および槽本体12aの外面を覆うようにGFRPをコーティングし、これにより各補強材21,31,41を槽本体12aと一体化することが出来る。なお、槽本体12aへの各補強材21,31,41の配置や増肉層12bの形成は、槽本体12aを上下逆さまにひっくり返した状態で行えば作業が容易となる。
【0035】
槽本体12aならびに増肉層12bの肉厚寸法は特に限定されないが、槽本体12aを例えば3mm程度、増肉層12bを例えば7mm程度とし、これにより分離槽12の肉厚を10mm程度とすることが出来る。
【0036】
なお、埋設用ではない既存の阻集器として、分離槽の肉厚が上記槽本体12aの肉厚と同じ3mm程度のものが現在使用されているが、本発明ないし本実施形態によれば、このような埋設用ではない阻集器の分離槽を槽本体12aとして利用して埋設用の阻集器を製造することも可能となる。このように本発明には、分離槽(槽本体)を据置用阻集器と埋設用阻集器とで兼用できる利点もある。
【0037】
地中への埋設にあたっては、分離槽12の上縁が地表面と同じレベルとなる深さより深い位置に分離槽12を埋める必要がある場合には、図5に示すように、分離槽12の側壁を地表面まで上方へ延長する1つまたは複数のスリーブ51を使用すれば良い。
【0038】
このスリーブ51は、図7から図11に示すように、無底無蓋の筒(枠)状の部材で、分離槽12の上面開口と略同じ大きさを有し、このスリーブ51を分離槽12の上面に積み重ねるように設置することで分離槽12の側壁を上方へ延長することが出来る。スリーブ51は分離槽12と同様にGFRPで形成し、土圧に対抗するためその上縁部に分離槽12と同様の上縁補強材52を備える。この上縁補強材52も分離槽12と同じように、スリーブ本体51a(図10参照)に上縁補強材52を嵌め込んだ後、スリーブ本体51aと上縁補強材52を覆うようにスリーブ本体51aの外周面に増肉層51bを形成することでスリーブ本体51aと上縁補強材52とを一体化することにより作製することが出来る。
【0039】
また、図11に示すように当該スリーブ51に側面補強材53を備えても良い。この側面補強材53は、スリーブ本体51aの側面(外周面)を取り囲むように枠状に延在し(図8図9においても符号53で示した)、前記分離槽12の側面補強材31と同様にスリーブ51の側面にかかる土圧荷重に対抗するものである。なお、スリーブ51に備えるこの側面補強材53も、上縁補強材52と同様にスリーブ本体51aと、その外表面に形成する増肉層51bとの間に挟持されるようにスリーブ51に固定すれば良い。
【0040】
最上部のスリーブ51の上面開口(地表面の高さ位置)にはマンホール蓋17を備え、当該開口を開閉可能に閉塞する。分離槽12の内部に設置したバスケット15の取り出しや、地上から槽内を掃除するなどのメンテナンスを可能とするためである。なお、分離槽下面の地盤には、分離槽12の沈下を防ぐため、コンクリート層2と砕石層3を設けている。周囲の土壌10から受ける土圧に耐え得る十分な強度が前記補強材21,31,41と増肉層12bによって(スリーブ51についても同様に補強材52,53と増肉層51bによって)得られるため、分離槽12やスリーブ51の周囲にはコンクリート擁壁を構築する必要はない。
【0041】
また、分離槽12の一端部(流入部)には、被処理排水を分離槽に流し込む流入管13と、固形状の夾雑物を濾し取るバスケット15を備える。このバスケット15は、パンチングメタルや網状部材によって形成し、網目より大きな固形物はバスケット15内に捕捉されるが、排水は通過して分離槽12の中央部に流れ込むようにする。一方、分離槽12の他端部(流出部)には、下水道からの臭気の逆流を防ぐとともに分離槽12内の排水の表面に浮いた油脂を避けて分離槽12の底部から油脂類を含まない排水のみを排出するトラップ管16と、当該排水を下水道へと送り出す流出管14を備える。
【0042】
流入管13から流入した被処理排水はバスケット15内に流れ落ち、バスケット15により固形物が捕捉された後、バスケット15を通過して分離槽12の中央部に流れ込む。分離槽12では、油脂類が槽内に溜まった排水の表面に浮いて分離される。油脂類や固形物が分離され取り除かれた排水は、トラップ管16を通過し、オーバーフローによって流出管14を通じて分離槽12の外へ流れ出し、処理排水として下水道へと送られる。
【0043】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
【0044】
例えば、側面補強材31は、前記実施形態では1本としたが、2本以上備えても良い。また、側面補強材31の配置位置や形状は図示の例に限定されない。また側面補強材31および上縁補強材21は、典型的には金属製とするが、木材その他の材料からなるものであっても良い。底面補強材41も同様に、実施形態では木材としたが、他の材料を使用することも可能である。さらに、流入管13や流出管14の設置位置、分離槽12の内部構造(挟雑物を分離するための構造)についても図示の例に限定されず様々なものであって良い。
【符号の説明】
【0045】
1 コンクリート擁壁
2 コンクリート層
3 砕石(層)
4 砂
5,51 スリーブ
6 分離槽
10 土壌
11 阻集器
12 分離槽
12a 槽本体
12b,51b 増肉層
12c フランジ部
13 流入管
14 流出管
15 バスケット
16 トラップ管
17 マンホール蓋
21,52 上縁補強材
31,53 側面補強材
41 底面補強材
51a スリーブ本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12