特許第6590611号(P6590611)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6590611-ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体 図000004
  • 特許6590611-ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6590611
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/32 20060101AFI20191007BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20191007BHJP
   C08J 9/12 20060101ALI20191007BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20191007BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20191007BHJP
   B29C 44/24 20060101ALI20191007BHJP
   B29K 25/00 20060101ALN20191007BHJP
   B29L 9/00 20060101ALN20191007BHJP
【FI】
   B32B5/32
   B32B27/30 B
   C08J9/12CET
   B32B27/20 A
   B29C44/00 A
   B29C44/24
   B29K25:00
   B29L9:00
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-182819(P2015-182819)
(22)【出願日】2015年9月16日
(65)【公開番号】特開2017-56620(P2017-56620A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】岩本 晃
(72)【発明者】
【氏名】直井 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】中村 翔
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−117862(JP,A)
【文献】 特開2013−103467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 5/32
B29C 44/00
B29C 44/24
B32B 27/20
B32B 27/30
C08J 9/12
B29K 25/00
B29K 105/04
B29L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色ポリスチレン系樹脂発泡層の両面に共押出により積層接着された白色ポリスチレン系樹脂発泡層を有する、見掛け密度40〜150kg/mの板状積層発泡体であって、
前記白色ポリスチレン系樹脂発泡層は該発泡層を構成する樹脂組成物100質量%に対して1〜12質量%の白色顔料を含み、該白色顔料が酸化チタンであり、
前記白色ポリスチレン系樹脂発泡層の片面あたりの坪量が15g/m以上であり、
前記発泡体の全体坪量に対する前記白色ポリスチレン系樹脂発泡層の片面あたりの坪量の比率がそれぞれ0.2以下であり、
前記白色ポリスチレン系樹脂発泡層の厚み方向の平均気泡径が0.25mm 以下であり、
前記白色ポリスチレン系樹脂発泡層の片面あたりの厚みがそれぞれ3mm以下であり、
JIS Z8781−4:2013に基づく板状積層発泡体の表面のCIE1976明度指数Lが70以上であり、
前記板状積層発泡体がディスプレイ用パネル又は水耕栽培用のパネルであることを特徴とするポリスチレン系樹脂板状積層発泡体。
【請求項2】
前記黒色ポリスチレン系樹脂発泡層の厚みが1mm以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体。
【請求項3】
前記黒色ポリスチレン系樹脂発泡層の厚み方向の平均気泡径が0.15〜0.70mmであり、かつ、前記白色ポリスチレン系樹脂発泡層の厚み方向の平均気泡径よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体。
【請求項4】
前記白色ポリスチレン系樹脂発泡層の見掛け密度が30〜150kg/mであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体。
【請求項5】
前記黒色ポリスチレン系樹脂発泡層が黒色着色剤を含み、黒色着色剤の配合量が該発泡層を構成する樹脂組成物100質量%に対して0.1〜5質量%であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体。
【請求項6】
前記発泡体の全体坪量が180〜1800g/mであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリスチレン系樹脂発泡板(以下、単に発泡板ともいう)は、その気泡構造により白色を呈し、軽量であると共に、フラット性に優れていることから、展示用の写真やポスター等を貼り付けて使用する、又は発泡板自体の表面に印刷して使用するディスプレイ用パネルとして用いられており、また、近年では、水耕栽培用の定植パネル等としても用いられている。
【0003】
これらの用途では、光がパネルの一面側から他面側へと透過しないことが要求されることがある。光の透過を抑制するためには、パネルを構成する発泡板を黒色等に着色する方法が考えられる。しかしながら、この場合には、パネル表面に印刷することが難しくなり、さらに、ポスター等を貼り付けた際には、発泡板の色がポスターを透かして現れてしまうなど、色合いが本来のものと違うものとなってしまうという問題があった。また、水耕栽培用の定植パネルには、その表面で光を反射することが要求されるが、黒色の発泡板は光を吸収してしまい十分な反射量が得られなくなるという問題があった。
【0004】
これらの課題を解決する方法として、有色の樹脂材料を内層となるようにし、また、無着色の樹脂材料を外層となるようにして、それぞれを成形機に導入し、共押出により有色の発泡層の外側にと無着色の発泡層が積層された円筒積層体を形成して、この円筒積層体をロール間を通過させるなどして押し潰して有色発泡層の両面に無着色の発泡層を配設した、ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3098376号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の方法により得られた板状積層発泡体は、内層を黒色に着色することにより、十分な遮光性は得られるものの、黒色系の内層が外層の白色層に透けて表面に現れ、発泡板が本来有する白色性が損なわれるといった問題があった。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、共押出により製造した、黒色ポリスチレン系樹脂発泡層の両面に白色ポリスチレン系樹脂発泡層を有するポリスチレン系樹脂板状積層発泡体において、内層の黒色系発泡層により十分な遮光性を有するとともに、外層の特定の白色ポリスチレン系樹脂発泡層により、従来の無着色のポリスチレン系樹脂発泡体と変わらぬ外観を有し、製造コストを低く抑えたポリスチレン系樹脂板状積層発泡体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下に記載のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体を提供する。
<1>黒色ポリスチレン系樹脂発泡層の両面に共押出により積層接着された白色ポリスチレン系樹脂発泡層を有する、見掛け密度40〜150kg/mの板状積層発泡体であって、白色ポリスチレン系樹脂発泡層は該発泡層を構成する樹脂組成物100質量%に対して1〜12質量%の白色顔料を含み、該白色顔料が酸化チタンであり、白色ポリスチレン系樹脂発泡層の片面あたりの坪量が15g/m以上であり、発泡体の全体坪量に対する白色ポリスチレン系樹脂発泡層の片面あたりの坪量の比率がそれぞれ0.2以下であり、白色ポリスチレン系樹脂発泡層の厚み方向の平均気泡径が0.25mm 以下であり、白色ポリスチレン系樹脂発泡層の片面あたりの厚みがそれぞれ3mm以下であり、JIS Z8781−4:2013に基づく板状積層発泡体の表面のCIE1976明度指数Lが70以上であり、板状積層発泡体がディスプレイ用パネル又は水耕栽培用のパネルである、ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体。
<2>黒色ポリスチレン系樹脂発泡層の厚みが1mm以上である、<1>に記載のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体。
<3>黒色ポリスチレン系樹脂発泡層の厚み方向の平均気泡径が0.15〜0.70mmであり、かつ、白色ポリスチレン系樹脂発泡層の厚み方向の平均気泡径よりも大きい、<1>又は<2>に記載のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体。
<4>白色ポリスチレン系樹脂発泡層の見掛け密度が30〜150kg/mである、<1>から<3>のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体。
<5>黒色ポリスチレン系樹脂発泡層が黒色着色剤を含み、黒色着色剤の配合量が該発泡層を構成する樹脂組成物100質量%に対して0.1〜5質量%である、<1>から<4>のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体。
<6>発泡体の全体坪量が180〜1800g/mである、<1>から<5>のいずれかに記載のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、共押出により製造した、黒色ポリスチレン系樹脂発泡層の両面に白色ポリスチレン系樹脂発泡層を有するポリスチレン系樹脂板状積層発泡体において、内層の黒色ポリスチレン系樹脂発泡層により十分な遮光性を有するとともに、外層の特定の白色ポリスチレン系樹脂発泡層により、従来の無着色のポリスチレン系樹脂発泡体と変わらぬ外観を有し、製造コストを低く抑えたポリスチレン系樹脂板状積層発泡体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体を示す概略断面図である。
図2】本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体の製造に用いる押出機の概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を挙げて、本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体について詳細に説明する。図1に本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体の概略断面図を示す。
【0012】
本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体1は、黒色ポリスチレン系樹脂発泡層(以下、単に黒色発泡層と略称する)2の両面に共押出により積層接着された白色ポリスチレン系樹脂発泡層(以下、単に白色発泡層と略称する)3を有する板状積層発泡体である。
【0013】
<黒色発泡層>
ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体1を構成する黒色発泡層2は、ポリスチレン系樹脂、物理発泡剤、必要に応じて黒色着色剤、気泡調整剤及びその他の添加剤を配合した黒色発泡層2を形成する樹脂溶融物を押出発泡させることにより形成するものである。
【0014】
(ポリスチレン系樹脂)
ポリスチレン系樹脂としては、通常、ポリスチレン系樹脂発泡板に用いられるポリスチレン系樹脂であれば特に制限なく用いることができ、例えば、ポリスチレン(GPPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリスチレン−ポリフェニレンエーテル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等を用いることができる。また、これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0015】
なお、黒色発泡層には、上記ポリスチレン系樹脂として、一度も成形に用いられていない新しいポリスチレン系樹脂(バージンポリスチレン系樹脂)や、無着色のポリスチレン系樹脂発泡体等から再生した無着色のポリスチレン系樹脂(無色再生ポリスチレン系樹脂)だけではなく、着色ポリスチレン系樹脂発泡体や着色フィルムがラミネートされたポリスチレン系樹脂発泡体などから再生した有色のポリスチレン系樹脂(有色再生ポリスチレン系樹脂)、また、これらを併用したものを用いることができる。
【0016】
また本発明では、上記ポリスチレン系樹脂以外の樹脂を混合して用いることができる。これらの樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体等のポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、スチレン−共役ジエンブロック共重合体やその水添物等の熱可塑性エラストマー、エチレン−プロピレンゴム、ブタジエンゴム等のゴム等の重合体を含むものを用いることができる。
【0017】
(黒色着色剤)
黒色発泡層は黒色着色剤を含むことが好ましい。これにより、安定して黒色が発現する。黒色着色剤としては、黒色系で濃色の着色剤であれば特に制限なく、例えば、濃色に調整された無機系顔料、有機系の顔料又は染料を用いることができる。
【0018】
これらの着色剤の中でも、無機顔料が好ましく、無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛等の炭素系黒色顔料や、酸化鉄、銅−クロム−マンガン系複合酸化物等の酸化物系黒色顔料を挙げることができる。これらの中でも、カーボンブラックを好適に用いることができる。
【0019】
これらの着色剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。また、2種以上を併用して用いる場合には、カーボンブラックを併用することにより確実な遮光性が得られるため望ましい。
【0020】
なお、確実な遮光性を考慮した場合、黒色発泡層に添加する黒色着色剤の配合量としては、黒色発泡層2を構成する樹脂組成物(樹脂成分と、発泡剤を除く着色剤等の添化剤との混合物)100質量%に対して、0.1〜5質量%の範囲が好ましく、0.1〜3質量%の範囲がより好ましい。黒色着色剤の配合量を上記の範囲とすることにより、確実な遮光性を得ることができる。
【0021】
(物理発泡剤)
物理発泡剤としては、例えば、エタン、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、イソヘキサン、シクロヘキサン等の炭素数2以上6以下の脂肪族炭化水素、塩化メチル、塩化エチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン等の炭素数1以上4以下のハロゲン化脂肪族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の炭素数1以上4以下の脂肪族アルコール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル等の炭素数2以上8以下の脂肪族エーテル等の有機物理発泡剤、又は窒素、二酸化炭素、水等の無機物理発泡剤を用いることができる。
【0022】
これらの物理発泡剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、ポリスチレン系樹脂との相溶性、発泡効率の観点からイソブタン、ノルマルブタン又はこれらの混合物を主成分とするものを好適に用いることができる。
【0023】
物理発泡剤の添加量は、本発明で規定する黒色発泡層2の平均気泡径等に応じて適宜調整することができるが、通常、黒色発泡層2を形成するための樹脂組成物100質量部に対して、2〜12質量部の範囲が好ましく、3〜9質量部の範囲がより好ましい。なお、発泡剤として、上記物理発泡剤以外に化学発泡剤を併用して用いることもできる。
【0024】
(気泡調整剤)
気泡調整剤としては、有機系又は無機系のいずれのものを用いることができる。無機系の気泡調整剤としては、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウム、硼砂等のホウ酸金属塩、塩化ナトリウム、水酸化アルミニウム、タルク、ゼオライト、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0025】
また、有機系の気泡調整剤としては、リン酸−2,2−メチレンビス(4,6−tert−ブチルフェニル)ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム等を挙げることができる。また、クエン酸と重炭酸ナトリウム、クエン酸のアルカリ塩と重炭酸ナトリウム等の化学発泡剤を組み合わせたもの等も用いることができる。これらの気泡調整剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0026】
気泡調整剤の添加量は特に限定されるものではないが、通常、黒色発泡層2を構成する樹脂組成物100質量%に対して、0.1〜0.5質量%の範囲が好ましく、0.1〜0.3質量%の範囲がより好ましい。
【0027】
(その他の添加剤)
黒色発泡層2を成形するための材料成分としては、上記成分の他、本発明の目的を阻害しない範囲において各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、無機充填剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0028】
<白色発泡層>
ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体1を構成する白色発泡層3は、ポリスチレン系樹脂、白色着色剤、物理発泡剤、必要に応じて気泡調整剤及びその他の添加剤を配合した白色発泡層3を形成する樹脂溶融物を押出発泡させることにより形成するものである。
【0029】
(ポリスチレン系樹脂)
ポリスチレン系樹脂としては、上記スチレン系樹脂と同様のものを用いることができる。
【0030】
(白色顔料)
白色顔料としては、特定の明度指数が得られるものであれば特に制限はなく、例えば、白色系の無機顔料、有機顔料を用いることができる。
【0031】
これらの着色剤の中でも無機顔料が好ましく、無機顔料としては、例えば、酸化チタン(TiO)、鉛白、亜鉛華、硫酸バリウム等を挙げることができる。これらの中でも、高い明度指数を得る観点から酸化チタンを用いるのが望ましい。
また、これらの白色顔料は1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0032】
発泡板に添加する白色顔料の量としては、白色発泡層3を構成する樹脂組成物(樹脂成分と、発泡剤を除く白色顔料等の添化剤との混合物)100質量%に対して、1〜12質量%、好ましくは2〜6質量%の範囲である。白色顔料の配合量を1質量%未満とした場合には、白色度が不十分となり、黒色発泡層2が透過して現れ、本発明で規定する明度指数が得られない場合がある。また、12質量%より多くした場合には、配合した白色顔料自体が核材の役目を果たして表面のキメが細かくなり過ぎ、コルゲートと呼ばれる波状模様が発生し、発泡板のフラット性が損なわれる場合がある。
【0033】
(物理発泡剤)
物理発泡剤としては、黒色発泡層2を形成する際に用いられる発泡剤と同様のものが使用できる。
【0034】
物理発泡剤の添加量は、本発明で規定する白色発泡層3の平均気泡径や、所望の見かけ密度等に応じて適宜調整することができるが、通常、白色発泡層3を形成するための樹脂組成物100質量部に対して、2〜6質量部の範囲が好ましく、3〜5質量部の範囲がより好ましい。
【0035】
(気泡調整剤)
気泡調整剤としては、黒色発泡層2を形成する際に用いられる気泡調整剤と同様のものが使用できる。
【0036】
気泡調整剤の添加量は、特に限定されるものではないが、通常、白色発泡層3を形成するための樹脂組成物100質量%に対して、0.3〜2.0質量%の範囲が好ましく、0.5〜1.5質量%の範囲がより好ましい。
【0037】
(その他の添加剤)
白色発泡層を成形するための材料成分としては、上記成分の他、本発明の目的を阻害しない範囲において各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、難燃剤、無機充填剤、防藻剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0038】
(ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体の製造方法)
以下、本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体の製造方法の一実施形態を説明する。図2に本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体の製造に用いる押出機の概略図を示す。
【0039】
本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体1の製造方法は、まず、黒色発泡層2を成形するための材料であるポリスチレン系樹脂4、その他必要に応じて添加される添加剤(黒色着色剤5、気泡調整剤6等)を第1押出機7に供給して加熱混練し、物理発泡剤8を圧入して更に混練し、発泡適正温度に調整し、黒色発泡層形成用樹脂溶融物9とする。
【0040】
また同時に、白色発泡層3を形成するための材料である、ポリスチレン系樹脂10、白色顔料11、その他必要に応じて添加される添加剤(気泡調整剤12等)を第2押出機13に供給して加熱混練し、物理発泡剤14を圧入して更に混練し、発泡適正温度に調整し、白色発泡層形成用樹脂溶融物15とする。
【0041】
なお、黒色発泡層形成用樹脂溶融物9及び白色発泡層形成用樹脂溶融物15の発泡適正温度とは、それぞれが発泡するのに最適な粘弾性を示す温度を意味する。発泡適正温度は、ポリスチレン系樹脂の種類や溶融粘度、発泡剤の種類や添加量によって適宜定まるものであるが、通常、120〜170℃程度の範囲が考慮される。
【0042】
次に、上記黒色発泡層形成用樹脂溶融物9と白色発泡層形成用樹脂溶融物15との吐出量を制御して環状ダイ16に導入し、環状ダイ16内で黒色発泡層形成用樹脂溶融物9と白色発泡層形成用樹脂溶融物15とを合流積層させてから共押出を行い、黒色発泡層2の外周面に白色発泡層3が積層接着された筒状積層発泡体を製造する。そして、この筒状積層発泡体を引き取りながらピンチロール17に通過させて、筒状積層発泡体の内側の黒色発泡層2の内面同士を融着させて貼り合わせることにより、黒色発泡層2の両面に白色発泡層3が積層接着された本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体1を得ることができる。得られたポリスチレン系樹脂板状積層発泡体1は、用途に応じた寸法に切断して製品とする。
【0043】
なお、上記ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体1の製造にあたって用いられるダイや押出機等の各種装置は、従来押出発泡の分野で用いられてきた公知のものを適宜用いることができる。
【0044】
また、筒状積層発泡体を押出方向に沿って切り開いてシート状の積層発泡体を得て、2枚のシート状の積層発泡体の黒色発泡層2同士を熱融着させて貼り合せることにより、本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体1を得ることもできる。
【0045】
本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体1では、表面の明度指数L、ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体1の見掛け密度、白色発泡層3の片面当たりの坪量、白色発泡層3の厚み方向の平均気泡径、白色発泡層3の片面当たりの厚み及び見掛け密度、黒色発泡層2の厚み、黒色発泡層2の厚み方向の平均気泡径を規定する。以下に本発明の各規定について詳述する。
【0046】
(表面の明度指数L
本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体1において、表面の明度指数Lは70以上、好ましくは80以上、より好ましくは85以上である。明度指数Lが上記範囲であれば、従来の単層の発泡板(無着色)と同様な外観を有する発泡板となる。かかる観点から、その上限は特に限定されるものではないが、通常の単層の発泡板の明度指数Lが85〜90程度であるため、90程度であることが好ましい。
【0047】
なお、本発明における明度指数Lとは、JIS Z8781−4:2013に基づく板状積層発泡体の表面のCIE1976明度指数Lを意味する。
【0048】
(ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体1の見掛け密度、全体厚み、全体坪量)
ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体1の見掛け密度は40〜150kg/m、好ましくは40〜100kg/m、より好ましくは40〜70kg/mの範囲である。見掛け密度が上記範囲内であれば、軽量性と機械強度とのバランスに優れたポリスチレン系樹脂板状積層発泡体とすることができる。同様に、ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体1の全体厚みは、好ましくは3〜30mm、より好ましくは5〜25mmの範囲であり、全体坪量は、好ましくは180〜1800g/m、より好ましくは300〜1500g/mの範囲である。
【0049】
(白色発泡層の片面当たりの坪量)
ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体1における白色発泡層3の片面当たりの坪量は15g/m以上、好ましくは20g/m以上、より好ましくは60g/m以上の範囲である。白色発泡層3の片面当たりの坪量を上記範囲とすることにより、表面外観を美麗なものとすることができるとともに、十分な明度指数とすることが可能となる。白色発泡層の比率が高すぎると、用途によっては発泡板の圧縮強度などの機械的強度が不足することがあることから、発泡板の全体坪量に対する白色発泡層の片面あたりの坪量の比率は、それぞれ0.2以下とすることが好ましく、より好ましくは0.1以下である。
【0050】
(白色発泡層の厚み方向の平均気泡径)
白色発泡層3の厚み方向の平均気泡径は0.25mm以下、好ましくは0.20mm以下、より好ましくは0.15mm以下、さらに好ましくは0.10mm以下の範囲である。厚み方向の平均気泡径を上記範囲とすることにより、十分な明度指数とすることが可能となる。発泡板の製造安定性や機械的強度の観点から、該平均気泡径の下限は概ね0.05mm程度であることが好ましく、より好ましくは0.07mmである。
【0051】
なお、白色発泡層3の厚み方向の平均気泡径は、次のようにして求められる。白色発泡層3の幅方向全幅に亘って、等間隔で10箇所、押出方向に垂直方向の断面を顕微鏡で撮影し、各々の断面写真について白色発泡層3の厚みtを測定する。次に、各断面写真の厚み方向に直線lを引き、直線lと交わる白色発泡層3における全ての気泡数nを数える。このようにして得られたtとnから各断面写真について気泡径(t/n)を計算し、10箇所の(t/n)の算術平均値を白色発泡層3の厚み方向の平均気泡径とする。
【0052】
(白色発泡層の片面当たりの厚み及び見掛け密度)
白色発泡層3の片面当たりの厚み及び見掛け密度は、上記片面当たりの坪量及び厚み方向の平均気泡径の条件を満足し、かつ表面の明度指数Lが上記範囲内であれば特に制限されるものではないが、通常片面当たりの厚みの上限はそれぞれ3mmであることが好ましく、より好ましくは2mmであり、その下限はそれぞれ0.1mmであることが好ましく、より好ましくは0.2mmである。また、見掛け密度は30〜150kg/m、好ましくは30〜80kg/mの範囲が考慮される。
【0053】
(黒色発泡層の厚み)
ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体1における黒色発泡層2の厚みは、十分な遮光性が得られることを条件として用途に応じて適宜設定することができ、特に制限されるものではないが、通常、1mm以上、好ましくは3mm以上の範囲が考慮される。
【0054】
(黒色発泡層の厚み方向の平均気泡径)
黒色発泡層2の厚み方向の平均気泡径は0.15〜0.70mm、好ましくは0.20〜0.60mmの範囲であり、かつ、上記白色発泡層3の厚み方向の平均気泡径よりも大きい平均気泡径とすることが望ましい。黒色発泡層2の厚み方向の平均気泡径を上記条件とすることにより、確実な遮光性が得られるとともに、高い機械強度を得ることができる。黒色発泡層の厚み方向の平均気泡径は、白色発泡層の厚み方向の平均気泡径と同様にして求めることができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体について、実施例により具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0056】
製造装置として、黒色発泡層形成用押出機(第1押出機)として、バレル内径115mmの押出機と、該押出機に接続されたバレル内径150mmの押出機とからなるタンデム型の押出機を用い、該押出機の出口に共押出用環状ダイ(リップ径180mm)を取付け、さらに該共押出用環状ダイスに、白色発泡層形成用押出機(第2押出機)としてバレル内径65mmの押出機を連結させた共押出装置を用いた。
【0057】
なお、上記製造装置に導入する黒色発泡層用及び白色発泡層用の各材料は、以下のものを用いた。
ポリスチレン系樹脂
ポリスチレン(PS):東洋スチレン社製 HRM12N、MFR(200℃、荷重5kg):5.4g/10分
再生ポリスチレン(RPS):雑色回収ポリスチレン樹脂、MFR(200℃、荷重5kg):8.7g/10分
物理発泡剤:工業用ブタン(イソブタン:ノルマルブタン=30:70)
白色顔料:酸化チタン(レジノカラー社製 白色顔料MB、酸化チタン含有量60%)
黒色着色剤:着色用カーボンブラック(大日精化社製 黒色顔料MB、カーボンブラック含有量48%)
気泡調整剤:タルク(大日精化社製 気泡調整剤MB、タルク含有量35%)
【0058】
実施例1〜7及び比較例1〜5について、黒色発泡層形成用のポリスチレン系樹脂、黒色着色剤、気泡調整剤を表1及び表2に示す配合量にて第1押出機に供給し、加熱、溶融、混練し、これに表1及び表2に示す量の物理発泡剤を注入して黒色発泡層形成用樹脂溶融物とした。また、同時に、白色発泡層形成用のポリスチレン系樹脂、白色顔料、気泡調整剤を表1及び表2に示す配合量にて第2押出機に供給し、加熱、溶融、混練し、これに表1及び表2に示す量の物理発泡剤を注入して白色発泡層形成用樹脂溶融物とした。
【0059】
そして、各層の坪量の比率が表1及び表2に示す値となるように各樹脂溶融物の吐出量を調整し、共押出用環状ダイ中で、黒色発泡層形成用樹脂溶融物と白色発泡層形成用樹脂溶融物とを合流させ、黒色発泡層形成用樹脂溶融物の外周面に白色発泡層形成用樹脂溶融物を積層してから筒状に共押出して、筒状積層発泡体を形成した。該筒状発泡体を引き取りながらピンチロールで挟み込んで、黒色発泡層の内面同士を融着させて貼り合せ、所望の幅及び長さ(630mm×1960mm)に切断することにより、実施例1〜7及び比較例1〜5のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体を得た。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
得られた実施例1〜7及び比較例1〜5のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体について、白色発泡層厚み、白色層比率、黒色発泡層厚み、全体厚み、白色層坪量、全体坪量、白色層見掛け密度、全体見掛け密度、厚み方向の白色層平均気泡径及び黒色発泡層平均気泡径を以下の方法により測定した。その結果を表1及び表2に示す。
【0063】
(厚み)
ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体1(630mm×1960mm)の無作為に選択した箇所から、幅方向全幅に亘って押出方向に100mmの長さに切り出し、幅方向630mm、押出方向100mmの試験片とした。この試験片をさらに幅方向に10等分し、その断面写真をもとに、各試験片の幅方向中央部において、各白色発泡層厚み、黒色発泡層厚み、全体厚みの各厚みを測定した。10等分の各測定点における厚みの算術平均値を各厚みとした。なお、表中の白色発泡層厚みは、2層の白色発泡層の厚みを算術平均して求めた、片面あたりの厚みである。
【0064】
(坪量)
前記10等分の試験片の質量を測定し、それぞれの質量の合計を試験片の面積の合計(630mm×100mm)で割算し、さらにg/mに単位換算して、全体坪量とした。
また、前記試験片から白色発泡層のみを切り分け、その部分の質量を測定し、それぞれの質量の合計を試験片の面積の合計(630mm×100mm)で割算し、さらに2で割算し、g/mに単位換算して、白色発泡層の片面あたりの坪量を求めた。
【0065】
(見掛け密度)
前記全体坪量を上記全体厚みで割り算し、さらにg/cmに単位換算して、全体見掛け密度とした。また、白色発泡層の片面あたりの坪量をその片面あたりの厚みで割算し、さらにg/cmに単位換算して、白色発泡層の見掛け密度を求めた。
【0066】
(厚み方向の平均気泡径)
前記10等分の試験片に対し、それぞれ黒色発泡層及び白色発泡層の厚み(t)を計測した部分の厚み方向の気泡数(n)を数え、前記厚み(t)と、厚み(t)に対応する厚み方向の気泡数(n)から、気泡径(t/n)を求め、10箇所の気泡径(t/n)の算術平均値をそれぞれの発泡層の厚み方向の平均気泡径とした。なお、表中の白色発泡層の厚み方向平均気泡径は、片面あたりの平均気泡数である。
【0067】
また、得られたポリスチレン系樹脂板状積層発泡体について、表面の全反射率の平均値、明度指数(L値)及び全光線透過率を以下の方法で求め、表面状態(外観)を以下の基準で評価した。その結果を表1及び表2に示す。
【0068】
(全反射率の平均値)
紫外可視分光光度計を用いて、380〜770nm間の波長において10nm毎に全反射率を測定し、その算術平均値を求めた。
(明度指数(L値))
JIS Z8781−4:2013に基づいて、発泡板の両面の明度指数(L値)を測定し、そのうちの低い方の値を発泡板の明度指数(L値)とした。なお、単層(無着色)のポリスチレン発泡板(見掛け密度60kg/m、厚み5mm)の明度指数は87.5であった。
(全光線透過率)
JIS K7375:2008に準拠して、発泡板の全光線透過率(%)を求めた。なお、単層(無着色)のポリスチレン発泡板(見掛け密度60kg/m、厚み5mm)の全光線透過率は10.2%であった。
(外観)
発泡板の外観を目視により以下の基準で評価した。
○:白色に見え、従来の単層のポリスチレン系樹脂発泡板と変わらぬ外観を有する。
×:内側の黒色発泡層が透けて見え、灰色がかって見える。
【0069】
表1に示す結果から、本発明に係る実施例1〜7の構成のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体は、全ての明度指数が70以上であり、美麗な外観を有することが確認された。
【0070】
これに対して、表2に示す本発明の条件を満たしていない比較例1〜5の結果では、全ての明度指数が69未満であった。また、全ての外観は実施例と比較して劣っていた。
【0071】
これらの結果から、本発明のポリスチレン系樹脂板状積層発泡体は、共押出により製造した、黒色発泡層の両面に白色発泡層を有するポリスチレン系樹脂板状積層発泡体において、内層の黒色発泡層により十分な遮光性を有するとともに、外層の特定の白色発泡層により高い表面明度指数と優れた全反射率を有し、外観が美麗なポリスチレン系樹脂板状積層発泡体であることが確認された。
【符号の説明】
【0072】
1 ポリスチレン系樹脂板状積層発泡体
2 黒色ポリスチレン系樹脂発泡層
3 白色ポリスチレン系樹脂発泡層
4 ポリスチレン系樹脂
5 黒色着色剤
6 気泡調整剤
7 第1押出機
8 物理発泡剤
9 黒色発泡層形成用樹脂溶融物
10 ポリスチレン系樹脂
11 白色顔料
12 気泡調整剤
13 第2押出機
14 物理発泡剤
15 白色発泡層形成用樹脂溶融物
16 環状ダイ
17 ピンチロール
図1
図2