(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のガイドミラーが、前記複数の分割ミラーから露光面までのそれぞれの光路長が等しくなるように、第1結像面垂直方向に沿ってその中心が同じ位置に配置されていることを特徴とする請求項6に記載の露光装置用露光ヘッド。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
共役面上でパターン像全体を分割する場合、複数の平行平面(ミラー)を組み込んだ光学系を配置する構成となり、複雑なミラー配置の光学系となる。そのため、パターン像を多数(例えば4分割以上)に分割しようとしても、隣接するミラーが干渉し、光量ロスにつながる。また、結像光学系の出射端側でパターン像を多数分割する場合、共役面でパターン像を分割していないため、光束の拡がりによる光量ロスが大きい。
【0006】
したがって、パターン像をより多く分割するとともに、各分割パターン像を十分な解像度で露光面に形成する露光装置用の光学系が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の露光装置用露光ヘッドは、マスクレス露光装置に適用可能であって、複数の光変調素子を2次元配列させた光変調素子アレイと、前記光変調素子アレイで反射した光を、被描画体の露光面に結像させる投影光学系とを備え、前記投影光学系は、第1光学系と、画像分割光学系と、第2光学系とを備える。
【0008】
第1光学系は、前記光変調素子アレイで反射したパターン像の光を、第1結像面に結像させる。画像分割光学系は、分割領域に従って前記第1結像面に形成される(中間像としての)パターン像を分割し、複数の分割パターン像を形成する複数のミラー対を備える。複数のミラー対の配置は分割領域に従っている。例えば分割領域は、光変調素子アレイの受光面上において規定される。第2光学系は、画像分割光学系によって形成された複数の分割パターン像の光を、露光面に結像させる。
【0009】
本発明では、複数のミラー対各々は、第1結像面と交差するように配置される分割ミラーと、前記分割ミラーと平行であって前記分割ミラーからの光を前記第2光学系へ導くガイドミラーとを有する。画像分割光学系は、分割ミラーにより第1結像面近傍においてパターン像を分割する。すなわち、調整可能な焦点深度の範囲で許容されるパターン解像度を得ることができる第1結像面垂直方向に沿った第1結像面付近の光軸方向に沿ったレンジで、パターン像を分割する。
【0010】
そして、複数の分割パターン像が主走査方向および副走査方向に沿って互いに離れて投影されるように、複数の分割ミラーが第1結像面に対してそれぞれ所定の角度で傾斜している。ここで、「第1結像面に対して傾斜している」とは、分割ミラーの反射面法線方向が、第1結像面の法線方向に対して傾斜していることを示す。
【0011】
この場合、反射面の各辺を第1結像面に正射影したときに規定される投影線は、主走査方向、副走査方向の少なくともいずれかの方向に対して傾斜する、あるいは主走査方向、副走査方向ともに平行となる場合両方とも含まれる。例えば、反射面が矩形状であれば、反射面の各辺の射影線は主走査方向および副走査方向に対して平行となるか、あるいはともに傾斜する状態となる。
【0012】
主走査方向、副走査方向に沿って互いに離れて分割パターン像を投影することにより、複数の走査バンドそれぞれにパターン像を投影することが可能となり、一回で走査可能なエリアが分割パターン像の数だけ拡大し、スループットが向上する。
【0013】
複数の分割ミラーの配置については、複数の分割パターン像が露光面においてリング状に投影されるように、それぞれ傾斜させることが可能である。ここで、リング状の投影とは、従来のように斜め一列方向に沿って分割パターン像を投影するのではなく、その一方でランダムな投影でもなく、複数の分割パターン像を辿ったときの軌跡がおよそ輪の形状(円、楕円いずれでもよく、輪ゴムのように形状が崩れていてもよい)となるような像のパターン配置によって特徴づけられる投影を意味する。この場合、分割パターン像の長手方向の縁となるラインが副走査方向に沿って並ぶように投影するのがよい。
【0014】
例えば、露光面投影中心に従って規定される4つの象限内それぞれに少なくとも1つの分割パターンが露光面に投影するように、複数の分割ミラーがそれぞれの角度で傾斜している。ここで、露光面投影中心とは、パターン像の中心に位置する光線が画像分割光学系により分割(反射)されずに被描画体(基板W)の露光面に到達したと仮定するときの仮想の点を示す。また、光変調素子アレイが結像光学系の光学中心に位置合わせされている場合、結像光学系の光軸と露光面との交わる点を投影中心と見なすことができる。
【0015】
できるだけ隣り合う分轄パターン像の距離を離すため、例えば、中心側に位置する中心側分割ミラーは、露光面投影中心からの距離が主走査方向よりも副走査方向に沿って離れた位置に分割パターン像が投影されるように、傾斜する構成にするのがよい。また、中心側分割ミラーと隣接する分割ミラーが、露光面投影中心からの距離が副走査方向よりも主走査方向に沿って離れた位置に分割パターン像が投影されるように、傾斜する構成にしてもよい。
【0016】
描画データのタイミング調整などを考慮すれば、複数の分割ミラーは、パターン像の一方の半分の領域に応じた分割パターン像と、他方の半分の領域に応じた分割パターン像とが露光面投影中心に関して点対称的関係となるように、それぞれ傾斜しているのが好ましい。
【0017】
各分割パターン像の鮮明さのバラツキを防ぐことを考慮すると、複数のガイドミラーは、前記複数の分割ミラーから露光面までのそれぞれの光路長が等しくなるように、配置される構成にするのがよい。
【0018】
パターン像をできる限り鮮明にすることを考慮すれば、複数の分割ミラーが、第1結像面に対し、前記投影光学系の焦点深度に応じた角度で傾斜しているのがよい。すなわち、許容されるパターン像の鮮明さに応じた焦点深度の範囲内に反射面が収まるような傾斜角度にすればよい。例えば、複数の分割ミラーが、第1結像面に対し45°以下で傾斜する構成にすることが可能であり、より好ましくは、30°以下、15°以下で傾斜させるのがよい。
【0019】
本発明の他の態様における露光装置用投影光学系は、複数の光変調素子を2次元配列させた光変調素子アレイで反射した光を、第1結像面に結像させる第1結像光学系と、分割領域に従って前記第1結像面に形成されるパターン像を第1結像面近傍で少なくとも4つに分割することにより、少なくとも4つの分割パターン像を形成する画像分割光学系と、少なくとも4つの分割パターン像の光を前記露光面に結像させる第2結像光学系とを備え、前記画像分割光学系が、複数の分割パターン像が主走査方向および副走査方向に沿って互いに離れて投影されるように、少なくとも4つの分割パターン像を形成する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、パターン像の鮮明さを維持しながら、スループット向上を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0023】
図1は、本実施形態である露光装置を模式的に示した斜視図である。
【0024】
露光装置10は、フォトレジストなどの感光材料を塗布した(あるいは貼り付けた)基板Wへパターン光を直接照射するマスクレス露光装置であって、ゲート状構造体12、基台14を備える。基台14には、描画テーブル18を支持するX−Yステージ駆動機構56が搭載され、描画テーブル18上に基板Wが設置される。
【0025】
ゲート状構造体12には光源20a、20bが備えられており、また、パターン形成用の露光ヘッド20
1、20
2が基板Wの上方に並んで配設されている。露光ヘッド20
1は、DMD(Digital Micro-mirror Device)、投影光学系(ここでは図示せず)を備え、光源20aから放射される光に基づいてパターン像を基板Wに投影する。露光ヘッド20
2も同様の構成であり、光源20bの光によってパターン像を投影する。
【0026】
矩形状の基板Wは、例えばプリント基板、ドライフィルム、ガラス基板などの電子回路用基板であり、プリベイク処理、感光材料の塗布/貼り付け処理等が施されたブランクスの状態で描画テーブル18に搭載される。基板W(描画テーブル18)には、互いに直交するX−Y−Z座標系が規定されており、描画テーブル18はX、Y方向に沿って移動可能であり、さらに、Z軸周りに回転可能である。ここでは、X方向を主走査方向、Y方向を副走査方向と規定する。
【0027】
露光装置10は、露光動作を制御する描画制御部(ここでは図示せず)を備える。描画制御部には、ここで図示しないモニタ、キーボードなどが接続されており、オペレータの操作に従って描画処理に関するセッティングが行われる。突出部31に設けられたCCD19は、基板Wの変形状態を検出し、アライメントが調整された後に露光動作が行われる。
【0028】
図2は、露光ヘッド20
1の内部構成を模式的に示した図である。露光ヘッド20
2も同様の内部構成になっている。
【0029】
図1に示す光源20a、20bから放射された照明光は、照明光学系(図示せず)を介してDMD22に導かれる。DMD22は、数μm〜数十μmの微小矩形状マイクロミラーをマトリクス状に2次元配列させた光変調デバイスであり、例えば1024×768のマイクロミラーによって構成される。
【0030】
DMD22では、メモリセルに格納される制御信号(露光データ)に基づいて、各マイクロミラーがそれぞれ選択的にON/OFF制御される。ON状態のマイクロミラーで反射した光は投影すべきパターンに応じた光束であり、ミラー(図示せず)を介して投影光学系24へ導かれる。
【0031】
投影光学系24は、DMD22からの光を基板Wの露光面に結像させる光学系であり、第1結像光学系25、第2結像光学系26、そして画像分割光学系30を備える。第1結像光学系25は、DMD22からのパターンに応じた光を焦点位置にある結像面(第1結像面)に結像させるとともに、パターン像全体を所定倍率で拡大する。
【0032】
画像分割光学系30は、第1結像光学系25の結像面に形成されるパターン像を6分割し、6つの部分的パターン像(以下、分割パターン像という)を形成する。画像分割光学系30によって形成された6つの分割パターン像は、第2結像光学系26によって基板Wの露光面に形成される。
【0033】
像形成に関して言えば、画像分割光学系30は第2結像光学系26に組み込まれた光学系とみなすことができ、第2結像光学系26の前側焦点位置にある結像面は第1結像光学系25の結像面(焦点位置)に一致し、また、後側焦点位置にある結像面は、基板Wの露光面と一致する。以下では、第1結像光学系25の結像面を共役面ともいう。
【0034】
基板Wが主走査方向Xに沿って移動するのに伴い、DMD22による投影エリア(露光エリア)は基板Wに対して相対的に移動する。投影エリアの位置に応じたパターン光を照射するように露光動作が定められた露光ピッチに従って実行される。これにより、パターンが主走査方向に沿って形成されていく。
【0035】
他の露光ヘッド20
2も同様であり、ラスタ走査をしながら露光動作が行われ、基板全体にパターンが形成されていく。描画処理が終了すると、現像処理、エッチング又はメッキ、レジスト剥離処理などが施され、パターンの形成された基板が製造される。
【0036】
ここでは基板Wの移動方向を主走査方向に一致させているが、基板Wを主走査方向Xに対し微小傾斜した状態で描画テーブル18に配置してもよい。この場合、描画テーブル18が主走査方向Xに沿って移動するとき、露光エリアは基板Wの長手方向(X方向)に対し傾斜した状態で相対移動する。
【0037】
露光方式としては、ステップ&リピート方式あるいは連続移動方式による多重露光方式が適用可能である。ステップ&リピート方式では、描画テーブル18は間欠的にX方向に沿って移動し、それに合わせて各マイクロミラーがON/OFF制御される。一方、連続移動方式では、描画テーブル18が連続的に移動しながら露光ピッチに応じて各マイクロミラーがON/OFF制御される。ここでは、連続移動方式が適用されている。
【0038】
次に、
図3〜12を用いて、パターン像の分割および投影位置について説明する。なお、以下では、パターン像を分割しないとき(分割光学系を備えないとき)の露光エリアの中心点、すなわちDMDの中心位置の投影点を、X−Y−Z座標系の原点と定めて説明する。
【0039】
図3は、DMDにおけるパターン像の分割領域を示した図である。
図4は、基板の露光面に投影される6つの分割パターン像の位置を示した図である。
【0040】
図3に示すように、DMD22の反射面には、主走査方向に応じた横方向に等分割された部分領域DM1〜DM6(以下、分割領域という)が定められる。DMD22全体によって形成されるパターン像の光は、
図4に示すように、画像分割光学系30によって部分領域DM1〜DM6ごとに互いに異なる位置へ投影される。投影された分割パターン像DA1〜DA6は、それぞれ分割領域DM1〜DM6のパターン光によって形成される。
【0041】
図4に示すように、6つの分割パターン像DA1〜DA6は、主走査方向Xに沿って互いに所定間隔離れて投影されており、また、副走査方向Yに沿って重ならないように離れており、互いに隣接する走査バンドSB1〜SB6の位置に合わせて投影される。すなわち、仮に主走査方向Xに関して分割パターン像DA1〜DA6を同じ位置に並べると、副走査方向Yに関して連なった1つの像となる。
【0042】
このときの副走査方向Yに沿ったパターン像の並び順は、上から分割パターン像DA1、DA6、DA2、DA5、DA3、DA4の順で並ぶ。すなわち、DMD22の中心側に位置する分割領域DM1、DM4に応じた分割パターン像DA1、DA4が副走査方向Yに沿って原点から遠い位置に投影され、その隣の分割領域DM2、DM5の分割パターン像DA2、DA5が、分割パターン像DA1、DA4とそれぞれ同じ象限内で副走査方向Yに沿って原点からより近い位置に投影される。
【0043】
一方、分割領域DM3、DM6の分割パターン像DA3、DA6は、分割パターン像DA1、DA4、分割パターン像DA2、DA5とは異なる象限内に投影されており、分割パターン像DA2、DA4、分割パターン像DA1、DA5の中間付近の位置にそれぞれ投影される。
【0044】
その結果、分割パターン像DA1〜DA6の投影位置は、副走査方向Yに関して点対称な投影位置関係をもつ。すなわち、分割パターン像DA1、DA4、分割パターン像DA2、DA5、分割パターン像DA3、DA6は、原点に関して対称な位置関係にある。また、DMD22の右半分の部分領域DM1〜DM3、左半分の部分領域DM4〜DM6の間で交互に分割パターン像を副走査方向に沿って投影していることから、分割パターン像DA1〜DA3、分割パターン像DA4〜DA6は、互いに補完する相補的な関係にある。
【0045】
一方、各分割パターン像の原点からの距離(投影中心位置までの距離)XLは一致していない。ここでいう投影中心とは、DMD22によるパターン像の中心に位置する光線が画像分割光学系により分割(反射)されずに被描画体(基板W)の露光面に到達したと仮定するときの仮想の点である。また、DMD22が投影光学系24の光学中心に位置合わせされている場合、第1結像光学系25、第2結像光学系26の光軸と露光面との交わる点を投影中心と見なすことができる。
【0046】
このように画像分割光学系30は、分割パターン像DA1〜DA6を、従来のような斜め一列方向ではなく、すべての象限内に分布するように概ねリング状に投影させる。ここでリング状には、円形のみではなく、非円形の輪や多角形の意を含む。分割パターン像DA1〜DA6はこれらの図形輪郭に沿って配置されるが、分割パターン像DA1〜DA6の向きはリング接線方向に縛られることはなく、所定の角度で配置される。また、分割パターン像の配置がリングを想起させる必要は無く、例えば分割パターン像が4つであったとしても、リング状であると見なす。
【0047】
リング状投影を実現させる画像分割光学系30は、DMD22の分割領域DM1〜DM6に応じて6つのミラー対を備え、各ミラー対は平行平面の組として構成される。以下、ミラー対について説明する。
【0048】
図5は、分割領域DM1に応じたミラー対の配置を示した図である。
図6は、分割領域DM2に応じたミラー対の配置を示した図である。
図7は、分割領域DM3に応じたミラー対の配置を示した図である。
【0049】
図5〜7に示すように、ミラー対32、34、36は、分割領域DM1、DM2、DM3からの反射光を、それぞれ分割パターン像DA1、DA2、DA3の投影位置(
図4参照)へ導くミラーであり、矩形状の分割ミラー32A、34A、36Aと矩形状ガイドミラー32B、34B、36Bから構成される。ただし、
図5〜7に示す各ミラーのサイズは、ここでは説明を容易にするためにDMD22の各分割領域に合わせたサイズで描かれている。
【0050】
分割ミラー32Aは、その反射面全体が共役面CSと平行でなく、共役面CSと交差する。すなわち、その法線方向が共役面CSの法線方向と平行でなく、傾斜するように配置されている。したがって、共役面CSに対し垂直なZ軸方向に沿って共役面CSからの距離は、分割ミラー32Aの場所によって異なる。
【0051】
また、分割ミラー32Aの矩形状である反射面は、傾斜主走査方向X、副走査方向Yおよびそれぞれ所定の角度で傾斜している。すなわち、分割ミラー反射面各辺を共役面CSに射影したときに規定される投影線は、X軸、Y軸に対してそれぞれ平行でなく傾斜している。ここでは、このような分割ミラー32Aの共役面CSに対する配置を「共役面CS近傍における傾斜配置」という。
【0052】
主走査方向X、副走査方向YおよびZ軸に対する傾斜角度は、
図4に示す分割パターン像DA1の投影位置に応じて定められる。
図4では、分割ミラー32A、ガイドミラー32Bによって、2.5走査バンドの距離だけ分割パターン像DA1を副走査方向Yにシフトさせている。
【0053】
主走査方向Xよりも副走査方向Yに関して原点から離れた位置に分割パターン像DA1を投影させることから、X軸に対する傾斜角度がY軸に対する傾斜角度よりも大きい。また、その反射面の法線方向は+Y方向、+X方向に向いている。分割ミラー32Aと平行平面の関係にあるガイドミラー32Bは、分割ミラー32Aからの光を第2光学系26へ導く。
【0054】
図6に示すミラー対34の分割ミラー34Aも、共役面CSと交差するように配置されており、主走査方向X、副走査方向Yに対してそれぞれ異なる角度で傾斜している。副走査方向Yよりも主走査方向Xに関して原点から離れた位置に分割パターン像DA2を投影させることから、Y軸に対する傾斜角度がX軸に対する傾斜角度よりも大きい。また、分割ミラー32Aに反射した光と干渉しないように、その反射面の法線方向が分割ミラー32Aと比べてより大きく+X側へ向くように傾斜している。
図6では、分割ミラー34A、ガイドミラー34Bによって、0.5走査バンド分だけ副走査方向Yにシフトさせている。
【0055】
さらに、
図7に示すミラー対36の分割ミラー36Aも、共役面CSと交差するように配置されており、主走査方向X、副走査方向Yに対してそれぞれ異なる角度で傾斜している。ここでは、分割パターン像DA1を第4象限に投影させるため、その反射面の法線方向は−X、−Y方向を向いている。
図7では、分割ミラー36A、ガイドミラー36Aによって、1.5走査バンド分だけ副走査方向Yのマイナス方向にシフトさせている。
【0056】
図8は、分割ミラー36Aの共役面CSに対する配置を示した図である。
図9は、分割ミラー36Aの配置角度を示した図である。
【0057】
分割ミラー36Aは、その中心が共役面CS上に位置するように傾斜しており、共役面CSと交差するライン36A
Cを挟んで共役面CSより上側(−Z方向)の領域と下側の領域(+Z方向)に分かれる。分割ミラー36Aの辺(以下、分割辺という)36A
Lの共役面CSに対する傾斜角度は、隣設する分割ミラー34A(
図6参照)の分割辺の傾斜角度とは相違し、X軸方向から見ると互いの辺は交差する。分割ミラー36A、ガイドミラー36Bによって投影パターン像DA3が原点から+X方向、−Y方向に移動していることから明らかなように、交差ライン36A
Cは主走査方向X、副走査方向Yに対して傾斜している。
【0058】
図9に示す分割ミラー36Aの共役面CSに対する傾斜角度αは、できる限りミラー両縁36A
Eが共役面CSから離れない角度に定められる。例えば、30°以下、15°以下に定められる。傾斜角度αを微小角度にすることによって、隣接する分割ミラーとの干渉を避けることができる。他の分割ミラー32A、34Aも、同様に定められる。
【0059】
なお、投影光学系24の焦点深度は、分割パターン像がそれぞれ合焦範囲に収まる焦点深度である。各分割ミラーの共役面CSに対する傾斜角度は、分割パターン像に求められる鮮明さを維持するための焦点深度の範囲内に収まるように定められる。焦点深度の範囲は、要求されるパターンの解像度、投影光学系24の光学特性などに従う。例えば、分割ミラー36の傾斜角度は、少なくとも45°、30°、あるいは15°以下に定めればよい。
【0060】
図10は、3つの分割ミラーおよびガイドミラーの配置関係を示した図である。
図11は、3つの分割ミラーを示した斜視図である。そして、
図12は、ガイドミラーの配置を示した図である。
【0061】
上述したように、分割パターン像DA1、DA2、DA3は、一組の平行平面で構成されるミラー対32A、32B(32)、ミラー対34A、34B(34)、ミラー対36A、36B(36)によって
図10に示す位置に投影される。分割ミラー32A、34A、36A、およびガイドミラー32B、34B、36Bのサイズは、DMD22の各分割領域に応じた共役面CS上における投影領域よりも大きい。
【0062】
特に、ガイドミラー32B、34B、36Bは、分割ミラー32A、34A、36Aが結像面である共役面CSに対して傾斜していることから、分割パターン像の光束の広がりを考慮したサイズに定められている。なお、
図5〜7、10には、分割パターン像DA1〜DA3の光束の広がり範囲LMを示している。
【0063】
また、ガイドミラー32B、34B、36Bは、−Z方向に沿った任意のX−Y平面からの距離(ミラー中心位置までの距離)が等しくなるように配置されている。
図12では、各ガイドミラーから共役面CSまでの距離Z0が等しいことを示している。また、分割ミラー32A、34A、36Aから分割パターン像DA1〜DA3の投影される露光面までの光路長がいずれも同じとなるように、ガイドミラー32Bが配置されている。
【0064】
DMD22の分割領域DM4〜DM6に合わせて配置される3つのミラー対(図示せず)も、同様の配置となっており、6つの分割ミラーが互いに隣り合いながら、それぞれ主走査方向X、副走査方向Yに沿って異なる角度で傾斜している。分割領域DM4、DM5、DM6に応じた分割ミラーの傾斜角度は、それぞれ、分割ミラー32A、34A、36Aに対称的な角度であり、主走査方向X、副走査方向Yの正負が逆になる。また、6つの分割ミラーから分割パターン像DA1〜DA6までの光路長は、いずれも等しい。
【0065】
図13は、描画装置に設けられた描画制御部のブロック図である。
【0066】
描画制御部50は、外部のワークステーション(図示せず)と接続され、モニタ50B、キーボード50Cが接続される露光制御部52を備える。露光制御部52は、露光動作処理を制御し、露光データ生成部76、タイミングコントロール回路73、描画テーブル制御回路53、光源制御部61などの回路へ制御信号を出力する。露光動作処理を制御するプログラムは、露光制御部52内のROM(図示せず)に格納されている。
【0067】
ワークステーション(図示せず)から露光制御部52に入力されるパターンデータは、描画パターンの位置情報(輪郭位置情報)をもつベクタデータ(CAD/CAMデータ)であり、X−Y座標系に基づいた位置座標データとして表される。
【0068】
第1〜第6ラスタデータ生成部72
1〜72
6は、ベクタデータを変換し、それぞれ、走査バンドSB1、SB2、SB3に描画すべきパターンのラスタデータを順次生成する。生成されたラスタデータは、それぞれ第1〜第6バッファメモリ74
1〜74
6に一時的に格納される。
【0069】
各バッファメモリに一時的に格納されるラスタデータは、露光ピッチにあわせて出力される。すなわち、露光ピッチ分だけ部分投影エリアが移動して次の露光動作を実行可能となったとき、ラスタデータ出力が行なわれる。第1〜第6ラスタデータ生成部72
1〜72
6におけるラスタデータの出力制御は、露光制御部52に設けられたアドレス制御回路(図示せず)から出力される制御信号に基づいて行われる。
【0070】
ラスタデータが露光データ生成部76へ送られると、露光データ生成部76では、分割パターン像DA1〜DA6の各投影エリアの位置に応じたラスタデータが統合し、DMD22の各マイクロミラーをON/OFF制御する信号が、DMD22全体に対する1つの露光データとして生成される。DMD22では、露光データ生成部76から出力される露光データに基づき、マイクロミラーがON/OFF制御される。
【0071】
タイミングコントロール回路73は、バッファメモリ74
1〜74
6、露光データ生成部76等に対し、タイミング調整のためクロックパルス信号を同期信号として出力する。また、CCD19から出力される画像信号に基づき、画像処理部62は基板Wに形成されたアライメントマークの位置を検出する。
【0072】
描画テーブル制御回路53は、駆動回路54を介してモータ(図示せず)を備えたX−Yステージ駆動機構56を制御し、これによって描画テーブル18の移動速度、基板送り方向等が制御される。位置検出センサ55は、描画テーブル18の位置、すなわち部分パターン像DA1〜DA6の投影位置について、描画テーブル18に対する相対的位置を検出する。
【0073】
露光ヘッド20
2に対しても、同様にラスタデータ変換処理、DMD駆動処理等に関する回路(図示せず)が設けられており、同様の露光動作処理が行われる。
【0074】
このように本実施形態によれば、それぞれ分割ミラーとガイドミラーとから構成された平行平面の組である6つのミラー対を備えた画像分割光学系30が、DMD22からのパターン像をDMD22の分割領域DM1〜DM6に従って6分割し、6つの分割パターン像DA1〜DA6を主走査方向X、副走査方向Yに沿って互いに離れるように投影位置を移動させる。これによって、スループット向上を図ることができる。
【0075】
平行平面関係にあるミラー対を複数配置することによってパターン像を分割することにより、簡易な光学系を構成することが可能となり、4つあるいはそれ以上の数だけパターン像を分割することができる。特に、中心側の分割パターン像を副走査方向に関してもっとも離れた位置に投影させるため、分割パターン像の距離間隔を広げることができる。
【0076】
そして、中心側の分割ミラーに隣接する中間位置の分割ミラーについては、主走査方向に対してもっとも離れた位置に分割パターン像を投影し、隣接分割ミラー間での分割パターン像の投影位置距離間隔を長くしている。これにより、隣接するミラー間での干渉を避けることができる。特に、パターン像の右側半分、左側半分の分割パターン像を副走査方向に沿って交互に並べることにより、より大きな投影位置の距離間隔をとることができるまた、隣接するミラー間での光の干渉がないように分割ミラーの傾斜角度を抑えることにより、光量ロスを抑えて必要な解像度を得ることができる。
【0077】
さらに、分割パターン像DA1〜DA6の投影位置が、その中心に関して点対称的な位置関係にあって、パターン像の左側半分、右側半分の分割パターン像が相補的な位置関係にあることにより、描画処理における描画タイミングの調整などを容易に設定することができる。そして、分割パターン像DA1〜DAをリング状に配置するとともに、分割パターン像DA1〜DA6が投影される露光面までの全光路長が等しくなるように分割ミラー対(各ガイドミラー)を配置することにより、各分割パターン像の鮮明さが均一となる。
【0078】
パターン像の分割数は任意であり、任意の偶数の数に分割することができる。この場合、分割数に合わせてミラー対を配置すればよい。また、パターン像を奇数の数に分割することも可能である。
【0079】
図14は、奇数の数に分割するときのDMDにおける分割領域を示した図である。DMD22’の反射面を5等分することによって定められる5つの分割領域DM1〜DM5に合わせて5つのミラー対が配置される。分割ミラーの傾斜角度については、偶数の分割時と同様に定められる。
【0080】
本実施形態では、分割パターン像は投影中心からX、Y方向それぞれ離れるように分割ミラーの傾斜角度が設定されているが、例えば中止側分割ミラー32Aの辺を正射影したときの投影線がX方向、Y方向に沿って平行になるように傾斜させてもよい。