特許第6590654号(P6590654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6590654
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】熱機器
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/18 20060101AFI20191007BHJP
   F24H 4/02 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   F24H1/18 503R
   F24H4/02 S
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-225540(P2015-225540)
(22)【出願日】2015年11月18日
(65)【公開番号】特開2017-96508(P2017-96508A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 宏明
(72)【発明者】
【氏名】足立 郁朗
(72)【発明者】
【氏名】小川 純一
(72)【発明者】
【氏名】近廻 聡
(72)【発明者】
【氏名】河野 秀勇
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−072603(JP,A)
【文献】 特開2014−103782(JP,A)
【文献】 特開2013−088060(JP,A)
【文献】 特開2016−099072(JP,A)
【文献】 特開2016−066613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/18
F24H 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を消費して熱媒を加熱するヒートポンプ熱源を備えるヒートポンプユニットと、ヒートポンプ熱源で加熱された熱媒を貯留するタンクを備えるタンクユニットと、を備えており、通常運転と、通常運転時の最大消費電力よりも低い抑制電力以下で動作する電力抑制運転を有している、熱機器であって、
タンクユニット内に設けられており、電力を消費してタンクユニット内の熱媒を加熱する第1ヒータを有しており、
制御装置は、第1ヒータを駆動させる凍結防止運転と、ヒートポンプ熱源を駆動させ、タンクにヒートポンプ熱源で加熱された熱媒を貯留させる加熱運転と、を実行可能に構成されており、
制御装置は、電力抑制運転中において、
凍結防止運転が実行されていないときに加熱運転を実行し、
凍結防止運転と加熱運転を同時に実行しないように構成されている、熱機器。
【請求項2】
燃料の燃焼によって熱媒を加熱する補助熱源を備える補助熱源ユニットと、
補助熱源ユニット内に設けられており、電力を消費して補助熱源ユニット内の熱媒を加熱する第2ヒータと、をさらに備えており、
制御装置は、凍結防止運転において、第1ヒータまたは第2ヒータの少なくとも一方を駆動させるように構成されており、
制御装置は、電力抑制運転中において、凍結防止運転において第1ヒータと第2ヒータの両方を駆動する場合に、第1ヒータが駆動する時間と第2ヒータが駆動する時間の少なくとも一部が重なりあうように、凍結防止運転を実行する、請求項1の熱機器。
【請求項3】
制御装置は、電力抑制運転中において、加熱運転の実行中に、凍結防止運転を実行すべき場合に、加熱運転を停止して凍結防止運転を実行し、凍結防止運転の終了後に加熱運転を再開する、請求項1または2の熱機器。
【請求項4】
制御装置は、過去の熱媒の使用実績に応じて加熱運転の開始予定時刻を設定し、設定された開始予定時刻になると加熱運転を実行するように構成されており、
制御装置は、電力抑制運転中において、設定された開始予定時刻に加熱運転を実行すると、加熱運転の終了までに凍結防止運転が実行される事になる場合に、加熱運転の開始予定時刻を早める、請求項1から3のいずれか一項の熱機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、熱機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、熱媒を加熱するバーナと、バーナで加熱された熱媒が流れる給湯流路と、給湯流路内の熱媒の凍結を防止するヒータと、バーナに供給される液体燃料の供給量を調整する制御装置と、を備える熱機器が開示されている。制御装置は、ヒータを加熱して給湯流路内の熱媒を加熱する凍結防止運転を可能に構成されている。特許文献1の熱機器は、電力供給元が商用電源である通常運転と、電力供給元が2次電池である電力抑制運転を有している。電力抑制運転中は、通常運転時に使用可能な最大電力よりも低い抑制電力以下で熱機器を動作させる必要がある。特許文献1の熱機器は、電力抑制運転中の凍結防止運転を禁止することで、電力抑制運転中の熱機器の消費電力を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−88060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱媒を加熱する手段として、電力を消費して熱媒を加熱するヒートポンプ熱源を備える熱機器がある。このような熱機器では、特許文献1のようにバーナによって熱媒を加熱する熱機器に比べて、熱媒を加熱するのに必要な電力は大きくなる。このような熱機器でも、特許文献1の熱機器と同様に、通常運転に比べて消費電力が少ない電力抑制運転を備え、必要に応じて電力抑制運転で動作可能なことが好ましい。
【0005】
特許文献1の電力抑制運転では、凍結防止運転を禁止することで、電力抑制運転中の熱機器の消費電力を抑制している。しかしながら、凍結防止運転を完全に禁止してしまうと、電力抑制運転中に給湯流路内の熱媒が凍結してしまう可能性がある。給湯流路内の熱媒が凍結した場合、凍結した熱媒が溶融するまで、給湯流路内で熱媒を流すことができなくなってしまう。ヒートポンプ熱源と熱媒を貯留するタンクを備える熱機器において、電力抑制運転で動作している間も、タンクへの蓄熱と熱媒の凍結を防止することが両立可能な技術が期待されている。
【0006】
本明細書では、ヒートポンプ熱源を備えた熱機器において、電力抑制運転で動作している間も、熱媒の凍結を防止することが可能な技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書が開示する熱機器は、電力を消費して熱媒を加熱するヒートポンプ熱源を備えるヒートポンプユニットと、ヒートポンプ熱源で加熱された熱媒を貯留するタンクを備えるタンクユニットと、を備えており、通常運転と、通常運転時の最大消費電力よりも低い抑制電力以下で動作する電力抑制運転を有している。熱機器は、タンクユニット内に設けられており、電力を消費してタンクユニット内の熱媒を加熱する第1ヒータを有している。制御装置は、第1ヒータを駆動させる凍結防止運転と、ヒートポンプ熱源を駆動し、タンクにヒートポンプ熱源で加熱された熱媒を貯留させる加熱運転と、を実行可能に構成されている。制御装置は、電力抑制運転中において、凍結防止運転が実行されていないときに加熱運転を実行し、凍結防止運転と加熱運転を同時に実行しないように構成されている。
【0008】
電力抑制運転中、熱機器の消費電力は抑制電力以下に抑える必要がある。しかしながら、加熱運転と凍結防止運転を同時に実行すると、熱機器の消費電力は、抑制電力よりも大きくなる場合がある。上記の構成によると、電力抑制運転中において、制御装置は、凍結防止運転が実行されていないときに、加熱運転を実行する。また、制御装置は、電力抑制運転中において、凍結防止運転と加熱運転同時に実行しない。このため、電力抑制運転中の熱機器の消費電力が、抑制電力よりも大きくなることを防止することができる。また、電力抑制運転中において、凍結防止運転を実行することができる。このため、電力抑制運転中において、タンクへの蓄熱と第1流路内の熱媒の凍結防止を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例に係る給湯システム2の構成を模式的に示す図。
図2】通常運転中(A)と電力抑制運転中(B)の凍結防止運転を模式的に示す図。
図3】特定の世帯において、給湯が行われる時間帯を模式的に示す図。
図4】電力抑制運転中の加熱処理の開始予定時刻の算出を模式的に表す図。
図5】加熱処理を示すフローチャート。
図6】電力抑制運転中の加熱運転の実行中に、凍結防止運転を実行すべき場合の加熱運転および凍結防止運転の動作を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0011】
(特徴1)熱機器は、燃料の燃焼によって熱媒を加熱する補助熱源を備える補助熱源ユニットと、補助熱源ユニット内に設けられており、電力を消費して補助熱源ユニット内の熱媒を加熱する第2ヒータと、をさらに備えていてもよい。制御装置は、凍結防止運転において、第1ヒータまたは第2ヒータの少なくとも一方を駆動させるように構成されていてもよい。この場合、制御装置は、電力抑制運転中において、凍結防止運転において第1ヒータと第2ヒータの両方を駆動する場合に、第1ヒータが駆動する時間と第2ヒータが駆動する時間の少なくとも一部が重なりあうように、凍結防止運転を実行してもよい。
【0012】
上記の構成によると、電力抑制運転中において、第1ヒータが駆動する時間と第2ヒータが駆動する時間を重なるように調整するため、電力抑制運転中において、第1ヒータおよび第2ヒータのいずれも駆動しない時間を長くして、加熱運転を実行可能な時間を確保することができる。
【0013】
(特徴2)制御装置は、電力抑制運転中において、加熱運転の実行中に、凍結防止運転を実行すべき場合に、加熱運転を停止して凍結防止運転を実行し、凍結防止運転の終了後に加熱運転を再開してもよい。
【0014】
上記の構成によると、電力抑制運転において、凍結防止運転は、加熱運転よりも優先して実行される。これにより、タンクユニット内の熱媒の凍結を確実に防止することができる。また、凍結防止運転の終了後に加熱運転を再開するため、加熱運転を確実に終了させることができる。
【0015】
(特徴3)制御装置は、過去の熱媒の使用実績に応じて加熱運転の開始予定時刻を設定し、設定された開始予定時刻になると加熱運転を実行するように構成されていてもよい。この場合、制御装置は、電力抑制運転中において、設定された開始予定時刻に加熱運転を実行すると、加熱運転の終了までに凍結防止運転が実行される事になる場合に、加熱運転の開始予定時刻を早めるとよい。
【0016】
電力抑制運転において、加熱運転実行中に凍結防止運転が実行される場合、熱機器の消費電力が抑制電力を超える虞があるため、加熱運転を中断させなければならない。上記の構成によると、凍結防止運転が実行される前に加熱運転を終了することができる。これにより、加熱運転を中断させることなく、当初に予定していた完了予定時刻までに加熱運転を完了させることができる。
【0017】
(実施例)
図1に示すように、本実施例に係る給湯システム2は、HP(ヒートポンプ)ユニット4と、タンクユニット6と、バーナユニット8を備えている。
【0018】
HPユニット4は、外気から吸熱して水を加熱する熱源である。HPユニット4は、圧縮機10と、凝縮器12と、膨張弁14と、蒸発器16を備えている。HPユニット4は、冷媒(例えばフロン系冷媒)を、圧縮機10、凝縮器12、膨張弁14、蒸発器16の順に循環させることで、外気から吸熱して水を加熱する。圧縮機10は、冷媒を加圧して高温高圧にする。凝縮器12は、水との熱交換により冷媒を冷却する。凝縮器12の水流路の両端部には、それぞれ、HP往き経路19とHP戻り経路21が接続されている。膨張弁14は、冷媒を減圧して低温低圧にする。蒸発器16は、外気との熱交換により冷媒を加熱する。HPユニット4はさらに、凝縮器12に水を循環させる循環ポンプ18と、凝縮器12に流れ込む水の温度を検出する戻りサーミスタ20と、凝縮器12から流れ出る水の温度を検出する往きサーミスタ22と、外気温度を検出するHP外気温度サーミスタ23と、HPユニット4の各構成要素の動作を制御するHPコントローラ24を備えている。
【0019】
タンクユニット6は、タンク30と、混合弁32と、バイパス制御弁34と、外気温度を検出するタンク外気温度サーミスタ39と、を備えている。タンク30は、外側が断熱材で覆われており、内部に水を蓄える密閉型の容器である。本実施例のタンク30の容量は、例えば100リットルである。HPユニット4の循環ポンプ18が駆動すると、タンク30の底部の水が、タンク往き経路31およびHP往き経路19を介して、凝縮器12へ送られる。凝縮器12で加熱されて高温となった水は、HP戻り経路21およびタンク戻り経路33を介して、タンク30の頂部からタンク30内に戻される。タンク往き経路31とタンク戻り経路33には、電力を消費してタンク往き経路31とタンク戻り経路33内の水を加熱する第1ヒータ35が取付けられている。HPユニット4によって加熱された水がタンク30に流れ込むと、タンク30の内部には、低温の水の層の上に高温の水の層が積み重なった温度成層が形成される。タンク30には、上部の水の温度を検出する上部サーミスタ36と、中間部の水の温度を検出する中間部サーミスタ37と、下部の水の温度を検出する下部サーミスタ38が取り付けられている。本実施例では、上部サーミスタ36はタンク30の頂部から6リットルの位置に配置されており、中間部サーミスタ37はタンク30の頂部から12リットルの位置に配置されており、下部サーミスタ38はタンク30の頂部から30リットルの位置に配置されている。なお、タンク30内がHPユニットで加熱された水で満たされている状態を「満蓄状態」と呼ぶ。
【0020】
タンクユニット6には、給水経路40を介して水道水が供給される。給水経路40には、給水圧力を減圧する減圧弁42と、給水温度TWを検出する入水サーミスタ44と、電力を消費して給水経路40内の水を加熱する第1ヒータ35が取り付けられている。給水経路40は、タンク30の底部に連通するタンク給水経路46と、混合弁32に連通するタンクバイパス経路48に分岐している。タンク給水経路46とタンクバイパス経路48には、それぞれ逆止弁50,52が取り付けられている。また、タンク給水経路46には、電力を消費してタンク給水経路46内の水を加熱する第1ヒータ35が取付けられている。また、タンクバイパス経路48には、混合弁32に流入する水道水の流量を検出する水側水量センサ54と、電力を消費してタンクバイパス経路48内の水を加熱する第1ヒータ35が取り付けられている。タンク30の頂部と混合弁32は、タンク出湯経路56を介して連通している。タンク出湯経路56には、逆止弁58と、電力を消費してタンク出湯経路56内の水を加熱する第1ヒータ35と、混合弁32に流入するタンク30からの水の流量を検出する湯側水量センサ60が取り付けられている。
【0021】
混合弁32は、タンクバイパス経路48から流れ込む水道水と、タンク出湯経路56から流れ込むタンク30からの水を混合して、第1給湯経路62に送り出す。混合弁32は、ステッピングモータによって弁を駆動し、タンクバイパス経路48側の開度(水側の開度)と、タンク出湯経路56側の開度(湯側の開度)を調整する。第1給湯経路62には、混合弁32から送り出される水の温度を検出する混合サーミスタ64が取り付けられている。また、第1給湯経路62において、第1給湯経路62と給湯バイパス経路72の接続部の上流側と下流側には、それぞれ電力を消費して第1給湯経路62内の水を加熱する第1ヒータ35が取付けられている。
【0022】
タンクユニット6からは、第2給湯経路66を介して、台所やシャワー、カラン等の給湯箇所への給湯が行われる。第2給湯経路66には、給湯箇所へ供給される水の温度を検出する給湯出口サーミスタ68と、逆止弁70が取り付けられている。また、第2給湯経路66において、第2給湯経路66と給湯バイパス経路72の接続部の上流側と下流側には、それぞれ電力を消費して第2給湯経路66内の水を加熱する第1ヒータ35が取付けられている。第1給湯経路62と第2給湯経路66の間は、給湯バイパス経路72によって連通している。給湯バイパス経路72には、バイパス制御弁34と、電力を消費して給湯バイパス経路72内の水を加熱する第1ヒータ35が取り付けられている。
【0023】
タンクユニット6はさらに、タンクコントローラ74と、タンクコントローラ74と通信可能なリモコン76を備えている。タンクコントローラ74は、タンクユニット6の各構成要素の動作を制御する。タンクコントローラ74は、不揮発性メモリ75を備えている。リモコン76は、スイッチやボタン等を介して、ユーザからの各種の操作入力を受け入れる。また、リモコン76は、表示や音声によってユーザに給湯システム2の設定や動作に関する各種の情報を通知する。
【0024】
バーナユニット8は、バーナ80と、熱交換器82と、バイパスサーボ84と、水量サーボ86と、湯はり弁88と、外気温度を検出するバーナ外気温度サーミスタ85を備えている。バーナ80は、燃料ガスの燃焼によって熱交換器82を流れる水を加熱する補助熱源機である。バーナ80には、ガス供給管81を介して燃料ガスが供給される。熱交換器82には、バーナ往路90を介して、タンクユニット6の第1給湯経路62からの水が流れ込む。熱交換器82を通過した水は、バーナ復路92を介して、タンクユニット6の第2給湯経路66へ流れ出る。バーナ往路90には、電力を消費してバーナ往路90内の水を加熱する第2ヒータ83と、バーナ往路90を流れる水の流量を調整する水量サーボ86と、バーナ往路90を流れる水の流量を検出する水量センサ91が取り付けられている。バーナ往路90とバーナ復路92の間は、バーナバイパス経路94を介して連通している。バーナバイパス経路94には、電力を消費してバーナバイパス経路94内の水を加熱する第2ヒータ83が取付けられている。バーナ往路90とバーナバイパス経路94の接続部に、バイパスサーボ84が取り付けられている。バイパスサーボ84は、バーナ往路90からバーナバイパス経路94へ流れる水の流量を調整する。バーナ復路92には、熱交換器82から流れ出る水の温度を検出するバーナ給湯サーミスタ96が取り付けられている。バーナ復路92からは、湯はり経路98が分岐している。バーナ復路92において、湯はり経路98の分岐部の下流側には、電力を消費してバーナ復路92内の水を加熱する第2ヒータ83が取付けられている。また、バーナ復路92において、湯はり経路98には、湯はり弁88と、電力を消費して湯はり経路98内の水を加熱する第2ヒータ83と、が取り付けられている。バーナユニット8からは、湯はり経路98を介して、給湯箇所である浴槽への湯はりが行われる。バーナユニット8はさらに、バーナユニット8の各構成要素の動作を制御するバーナコントローラ100を備えている。
【0025】
給湯システム2のHPユニット4、タンクユニット6およびバーナユニット8には、電力供給ユニット9から電力が供給される。電力供給ユニット9は、分電盤102と、蓄電池104と、切替器106を備えている。分電盤102は、商用電源108に接続されており、商用電源108から供給される電力を切替器106と蓄電池104に分配して供給する。蓄電池104は、例えばリチウムイオン二次電池などの二次電池である。蓄電池104は、分電盤102を介して商用電源108から供給される電力を充電することもできるし、充電した電力を切替器106に放電することもできる。蓄電池104には、図示しない保護回路が内蔵されており、放電する電力が上限放電電力(例えば720W)以上になると、切替器106への放電が遮断される。切替器106は、分電盤102を介して商用電源108から供給される電力をHPユニット4、タンクユニット6およびバーナユニット8に供給する状態と、蓄電池104から供給される電力をHPユニット4、タンクユニット6およびバーナユニット8に供給する状態の間で切り替わる。商用電源108からの電力供給が正常に行われている状況では、切替器106は、分電盤102を介して商用電源108から供給される電力をHPユニット4、タンクユニット6およびバーナユニット8に供給する。商用電源108からの電力供給が正常に行われていない状況では、切替器106は、蓄電池104から供給される電力をHPユニット4、タンクユニット6およびバーナユニット8に供給する。以下では、電源の供給元が商用電源108である状態を「通常運転」とし、電源の供給元が蓄電池104から電力が供給されている状態を「電力抑制運転」とする。電力抑制運転において、給湯システム2は、通常運転時の最大消費電力よりも低い抑制電力(例えば、700W)以下で動作する。
【0026】
HPコントローラ24とタンクコントローラ74は、互いに通信可能である。タンクコントローラ74とバーナコントローラ100は、互いに通信可能である。したがって、HPコントローラ24と、タンクコントローラ74と、バーナコントローラ100が協調して制御を行うことで、給湯システム2は凍結防止運転、加熱運転、給湯運転等の各種の動作を行うことができる。また、不揮発性メモリ75には、加熱処理の加熱開始予定時刻および駆動フラグが記憶されている。以下では、HPコントローラ24と、タンクコントローラ74と、バーナコントローラ100を総称して、単にコントローラとも呼ぶ。
【0027】
次いで、給湯システム2の動作について説明する。給湯システム2は、凍結防止運転と、加熱運転と、給湯運転と、を実行することができる。
【0028】
(凍結防止運転)
図2を用いて凍結防止運転について説明する。外気温が低い状態で、加熱運転、給湯運転を行わないまま長時間が経過すると、各経路内の水が滞留し、これらの配管の内部で水が凍結してしまうことがある。水が凍結してしまうと、凍結した水が溶融するまで、加熱運転および給湯運転が実行できない。このため、本実施例の給湯システム2は、各経内の水が凍結しないように凍結防止運転を実行する。凍結防止運転は、タンクコントローラ74が実行する第1凍結防止運転と、バーナコントローラ100が実行する第2凍結防止運転と、で構成される。
【0029】
タンクコントローラ74は、タンク外気温度サーミスタ39が検出する外気温が第1所定温度以下の場合に、第1凍結防止運転を実行する。第1凍結防止運転において、タンクコントローラ74は、第1所定周期にしたがって、複数の第1ヒータ35の駆動・非駆動を切り替える。タンクコントローラ74は、複数の第1ヒータ35を駆動させ、タンクユニット6内の水が流れる流路を加熱し、これらの配管の内部で水が凍結することを防止する。なお、第1所定周期における、複数の第1ヒータ35の駆動時間と非駆動時間は、外気温に基づいて決定される。以下では、第1凍結防止運転において、複数の第1ヒータ35が駆動している場合を「第1駆動運転」とし、複数の第1ヒータ35が駆動していない(非駆動)場合を「第1非駆動運転」と呼ぶ。
【0030】
バーナコントローラ100は、バーナ外気温度サーミスタ85が検出する外気温が第2所定温度以下の場合に、第2凍結防止運転を実行する。第2凍結防止運転において、バーナコントローラ100は、第2所定周期にしたがって、複数の第2ヒータ83の駆動・非駆動を切り替える。バーナコントローラ100は、複数の第2ヒータ83を駆動させ、バーナユニット8内の水が流れる流路を加熱し、これらの配管の内部で水が凍結することを防止する。なお、第2所定周期における、複数の第2ヒータ83の駆動時間と非駆動時間は、外気温に基づいて変更される。以下では、第2凍結防止運転において、複数の第2ヒータ83が駆動している場合を「第2駆動運転」とし、複数の第2ヒータ83が駆動していない(非駆動)場合を「第2非駆動運転」と呼ぶ。また、第1駆動運転と第2駆動運転の少なくとも一方が実行されている場合を、「ヒータ駆動運転」とし、第1駆動運転と第2駆動運転がともに実行されていない場合を「ヒータ非駆動運転」と呼ぶ。
【0031】
通常運転において、タンクコントローラ74とバーナコントローラ100は、第1凍結防止運転と第2凍結防止運転を、それぞれ独立して制御する(図2(A))。すなわち、タンクコントローラ74は第1所定周期にしたがって第1凍結防止運転を実行し、バーナコントローラ100は第2所定周期にしたがって第2凍結防止運転を実行する。このため、通常運転においては、第1駆動運転と第2駆動運転が同時に実行されている状態(ヒータ駆動運転)と、第1駆動運転と第2駆動運転の一方のみが実行されている状態(ヒータ駆動運転)と、第1駆動運転と第2駆動運転が共に実行されていない状態(ヒータ非駆動運転)が存在する。
【0032】
電力抑制運転において、第1凍結防止運転のみが実行される場合、タンクコントローラ74は第1所定周期にしたがって複数の第1ヒータ35を作動させる。一方、電力抑制運転において、第1凍結防止運転と第2凍結防止運転が同時に実行される場合、タンクコントローラ74は、第1凍結防止運転を第2凍結防止運転に協調して制御する(図2(B))。タンクコントローラ74は、バーナコントローラ100から第2所定周期を受信することで、第1凍結防止運転を第2凍結防止運転に協調させる。タンクコントローラ74は、受信した第2所定周期に基づいて、複数の第1ヒータ35の第1駆動運転および第1非駆動運転の実行タイミングを調整する。具体的には、タンクコントローラ74は、複数の第2ヒータ83の第2駆動運転中に複数の第1ヒータ35の第1駆動運転を実行し、複数の第2ヒータ83が第2非駆動運転中の場合は、複数の第1ヒータ35を第1非駆動運転に制御する。一方、バーナコントローラ100は、第2所定周期にしたがって、複数の第2ヒータ83を作動させる。これにより、複数の第1ヒータ35と複数の第2ヒータ83を駆動する場合に、複数の第1ヒータ35の第1駆動運転の時間と複数の第2ヒータ83の第2駆動運転の時間が重なり合う。また、複数の第2ヒータ83が非駆動運転中に、複数の第1ヒータ35の第1駆動運転は実行されない。
【0033】
上述のように、電力抑制運転中、給湯システム2の使用可能な消費電力は抑制電力以下に抑制される。ヒータ駆動運転と加熱運転が同時に実行された場合、抑制電力を超える可能性がある。このため、電力抑制運転において、加熱運転を実行可能な時間を確保するには、ヒータ非駆動時間を長くする必要がある。通常運転の場合、第1又は第2非駆動運転中に第2又は第1駆動運転が実行される場合がある。一方、電力抑制運転中においては、第1駆動運転と第2駆動運転とを同期させることで、第1又は第2非駆動運転中に第2又は第1駆動運転が実行されることはない。このため、電力抑制運転におけるヒータ非駆動運転の時間を、通常運転におけるヒータ非駆動運転の時間よりも長くすることができる。これにより、電力抑制運転において、加熱運転を実行可能な時間を確保することができる。
【0034】
なお、ヒータ駆動運転中、不揮発性メモリ75には駆動フラグが記憶される。不揮発性メモリ75に記憶される駆動フラグは、ヒータ駆動運転からヒータ非駆動運転に切り替わった場合に消去される。また、電力抑制運転中の第1駆動運転の時間は、通常運転中の第1駆動運転の時間よりも長く設定されている。これは、第1駆動運転と第2駆動運転とを同期させることで、複数の第1ヒータ35の非駆動時間(第1非駆動運転の時間)又は複数の第2ヒータ83の非駆動時間(第2非駆動運転の時間)が長くなる場合があるためである。
【0035】
(加熱運転)
加熱運転では、給湯システム2は、HPユニット4を駆動して、タンク30内の水を加熱する。加熱運転は、HPユニット4による加熱後の目標温度TAが低温目標温度TLである低温加熱運転と、HPユニット4による加熱後の目標温度TAが高温目標温度THである高温加熱運転によって構成されている。低温加熱運転は、給湯箇所への給湯に用いるために、タンク30内の水を加熱する。このため、低温加熱運転における低温目標温度TLは、給湯に適した温度(例えば、45℃)に設定されている。高温加熱運転は、タンク30内の水に繁殖する虞のある菌類(レジオネラ菌など)を滅菌させるために、タンク30内の水を加熱する。一般に、タンク30内の水が、低温(例えば60℃以下の温度)の状態で長時間(例えば、96時間)滞留されている場合に、菌類(レジオネラ菌など)が繁殖する虞がある。このため、高温加熱運転における高温目標温度THは、菌類(レジオネラ菌など)を滅菌するのに十分な温度(例えば、65℃)に設定されている。これにより、菌類が繁殖している可能性のある水が給湯されることを防止することができる。なお、高温目標温度THは、低温目標温度TLよりも高いため、高温加熱運転時のHPユニット4の消費電力は、低温加熱運転時の消費電力よりも大きい。
【0036】
加熱運転が開始されると、HPコントローラ24は、圧縮機10を駆動して、圧縮機10、凝縮器12、膨張弁14、蒸発器16の順に冷媒を循環させるとともに、循環ポンプ18を駆動して、タンク30と凝縮器12の間で水を循環させる。これによって、タンク30の底部から吸い出された水は、凝縮器12において沸上げ温度まで加熱されて、タンク30の頂部に戻される。タンク30内の水の所定量が沸上げ温度まで加熱された水で置き換えられると、HPコントローラ24は加熱運転を終了する。
【0037】
(給湯運転)
給湯運転では、給湯設定温度の水を給湯箇所へ供給する。コントローラは、水側水量センサ54で検出される流量と、湯側水量センサ60で検出される流量を合算した流量(給湯流量ともいう)が最低動作流量(例えば2.4L/分)以上となると、給湯箇所の開栓や浴槽への湯はりなどにより給湯が開始されたものと判断する。そして、コントローラは、上部サーミスタ36で検出される温度に応じて、以下の非燃焼給湯運転または燃焼給湯運転を実行する。
【0038】
上部サーミスタ36で検出される温度が給湯設定温度以上である場合、コントローラは、非燃焼給湯運転を実行する。非燃焼給湯運転では、コントローラは、バーナ80の燃焼運転を禁止するとともに、混合サーミスタ64で検出される温度が給湯設定温度となるように、混合弁32の開度を調整する。これによって、給湯箇所に給湯設定温度に温度調整された水が供給される。
【0039】
上部サーミスタ36で検出される温度が給湯設定温度未満の場合、コントローラは、燃焼給湯運転を実行する。燃焼給湯運転では、コントローラは、バーナ80の燃焼運転を許可するとともに、混合サーミスタ64で検出される温度が、給湯設定温度よりもバーナ80の最小加熱能力の分だけ低い温度となるように、混合弁32の開度を調整する。この場合、タンク30の上部から供給される高温の水と、給水経路40から供給される低温の水が、混合弁32において混合された後、バーナ80によって給湯設定温度まで加熱されて、給湯箇所へ供給される。
【0040】
上記の非燃焼給湯運転または燃焼給湯運転を実行中に、給湯流量が最低動作流量を下回ると、コントローラは、給湯箇所の閉栓や浴槽への湯はりの終了などにより給湯が終了したものと判断して、給湯運転を終了する。
【0041】
(加熱処理)
次に、図3〜6を用いて、電力抑制運転中の加熱処理について説明する。加熱処理は、加熱運転を実行させるための処理である。タンクコントローラ74は、不揮発性メモリ75に記憶される加熱開始予定時刻が到来すると、図6の処理を開始する。まず、不揮発性メモリ75に記憶される加熱開始予定時刻の特定方法について説明する。
【0042】
高温加熱運転を実行する場合の加熱開始予定時刻について、タンクコントローラ74は、前回の高温加熱運転から所定期間(例えば、96時間)経過した高温加熱開始予定時刻を、不揮発性メモリ75に記憶する。
【0043】
低温加熱運転を実行する場合の加熱開始予定時刻については、過去の給湯の使用実績に応じて、加熱開始予定時刻は特定される。図3を用いて、低温加熱運転を実行する場合の加熱開始予定時刻の特定について説明する。まず、タンクコントローラ74は、特定の世帯の給湯の傾向に基づいて、加熱開始予定時刻を特定する。具体的には、タンクコントローラ74は、特定の世帯において、給湯が行われる度に、給湯が開始された時刻と、給湯が終了した時刻と、を示す時刻情報と、供給された水の量を示す供給量情報と、を記憶する。タンクコントローラ74は、1日分の時刻情報および供給量情報を、特定の世帯の1日分の運転履歴として記憶する。本実施例では、タンクコントローラ74は、特定の世帯の過去7日分の運転履歴を記憶する。このため、タンクコントローラ74は、24時間毎に、8日前の運転履歴を消去して、前日の運転履歴を記憶する。
【0044】
次いで、タンクコントローラ74は、特定の世帯の過去7日分の運転履歴から、過去7日間において、最初の給湯が開始された時刻のうち、最も早い時刻を特定する。以下では、この時刻を「給湯開始時刻S1」と呼ぶ。例えば、タンクコントローラ74は、6:00を給湯開始時刻S1として特定する(図3参照)。なお、最初の給湯では、5L〜20L程度の水が供給される。
【0045】
また、タンクコントローラ74は、特定の世帯の過去7日分の運転履歴から、過去7日間において、湯張り運転が開始された時刻のうち、最も早い時刻を特定する。以下では、この時刻を「湯張り開始時刻B1」と呼ぶ。上記の通り、本実施例では、特定の世帯は、毎日20:00に湯張り運転を開始するように予め設定している。例えば、タンクコントローラ74は、20:00を湯張り開始時刻B1として特定する(図3参照)。なお、湯張り運転では、150L〜180L程度の水が供給される。
【0046】
さらに、タンクコントローラ74は、特定の世帯の過去7日分の運転履歴から、過去7日間において、最後の給湯が終了した時刻のうち、最も遅い時刻を特定する。以下では、この時刻を「給湯終了時刻G1」と呼ぶ。例えば、タンクコントローラ74は、0:00を給湯終了時刻G1として特定する(図3参照)。
【0047】
さらに、タンクコントローラ74は、入水サーミスタ44が測定する給水温度TWに基づいて、第1の所定時間α、第2の所定時間β、および、第3の所定時間γを特定する。
【0048】
次いで、タンクコントローラ74は、給湯開始時刻S1から、特定された第1の所定時間αだけ前の時刻である第1加熱開始予定時刻S0を特定し、湯張り開始時刻B1から、特定された第2の所定時間βだけ前の時刻である第2加熱開始予定時刻B0を特定する。すなわち、タンクコントローラ74は、加熱開始予定時刻として、第1加熱開始予定時刻S0と第2加熱開始予定時刻B0を、不揮発性メモリ75に記憶する。このようにすることで、給湯が開始される前に必要とされる量の加熱された水をタンク30に準備することができる。また、高温加熱運転においては、タンク30内の水に繁殖する虞のある菌類を滅菌することができる。
【0049】
また、電力抑制運転中で凍結防止運転が実行されている場合、タンクコントローラ74は、不揮発性メモリ75に記憶されている加熱開始予定時刻とヒータ駆動運転に基づいて、加熱開始予定時刻を早める場合がある。図4を用いて、電力抑制運転中で凍結防止運転が実行されている場合において、加熱開始予定時刻を早める処理について説明する。図4は、第1凍結防止運転および第2凍結防止運転が実行されている場合である。なお、見易くするため、第1ヒータ35の第1駆動運転については省略している。
【0050】
まず、タンクコントローラ74は、バーナコントローラ100から第2所定周期を受信する。次いで、タンクコントローラ74は、第2所定周期に基づいて、第2凍結防止運転の駆動開始時刻D0を特定する。駆動開始時刻D0が、第1加熱開始予定時刻S0と給湯開始時刻S1(即ち、本実施例においては、第1加熱運転が終了する時刻とほぼ同じ時刻)の間にある場合、タンクコントローラ74は、第4の所定時間xを特定する。第4の所定時間xは、給湯開始時刻S1から駆動開始時刻D0を減算した時間である。次いで、タンクコントローラ74は、第1加熱開始予定時刻S0から、第4の所定時間xだけ前の時刻である第1加熱開始予定時刻S0‘を特定する。次いで、タンクコントローラ74は、不揮発性メモリ75に記憶されている第1加熱開始予定時刻S0を第1加熱開始予定時刻S0’に上書き保存する。これにより、凍結防止運転を実行する前に、加熱運転を完了させることができる。電力抑制運転中、加熱運転と凍結防止運転を同時に実行すると、給湯システム2の消費電力が抑制電力を超えてしまう。このため、凍結防止運転を実行する前に加熱運転が完了していない場合、加熱運転を中断するか、凍結防止運転の開始を遅らせなければならない。駆動開始時刻D0に基づいて、第1加熱開始予定時刻S0を第1加熱開始予定時刻S0‘に早めることで、加熱運転の中断または凍結防止運転の遅延を防止することができる。なお、電力抑制運転中で凍結防止運転が実行されている場合、タンクコントローラ74は、第2加熱開始予定時刻B0、高温加熱開始予定時刻についても同様の処理を実行する。なお、本実施例において、給湯開始時刻S1と加熱運転の終了時刻が同時になっているが、加熱運転により加熱された水の放熱を許容できる範囲で、給湯開始時刻S1よりも前に加熱運転が終了するようにしてもよい。この場合、第4の所定時間xは、加熱運転の終了時刻から駆動開始時刻D0を減算した時間となる。
【0051】
図5図6を用いて、電力抑制運転において、タンクコントローラ74が実行する加熱処理について説明する。上述のように、不揮発性メモリ75には、加熱開始予定時刻として、高温加熱開始予定時刻、第1加熱開始予定時刻、第2加熱開始予定時刻が記憶されている。タンクコントローラ74は、不揮発性メモリ75に記憶されているいずれかの開始予定時刻が到来すると、加熱処理を開始する。なお、電力抑制運転において、加熱運転とヒータ駆動運転が同時に実行されると、給湯システム2の消費電力が抑制電力を超えてしまう。このため、加熱処理は、加熱運転とヒータ駆動運転が同時に実行されることが無いように構成されている。
【0052】
まず、ステップS2において、タンクコントローラ74は、駆動フラグが消去されているか否かを判定する。駆動フラグが消去されている場合(ステップS2でYES)、タンクコントローラ74は、ステップS4に進む。駆動フラグが消去されていない場合(ステップS2でNO)、タンクコントローラ74は、ステップS8に進む。
【0053】
駆動フラグが消去されている場合(ステップS2でYES)とは、ヒータ駆動運転が実行されていない場合である。この場合、ステップS4において、タンクコントローラ74は、サーミスタで検出される温度が、目標温度TA以上であるか否かを判定する。なお、目標温度TAの判定に用いるサーミスタは、加熱運転時の目標加熱量に応じて変更する。例えば、給湯開始時刻S1までに必要な加熱量が5L〜20Lである場合は、下部サーミスタ38を用いる。上述のように、タンク30内の水の温度は、タンク30の上部の温度の方がタンク30の下部の温度よりも高い。このため、タンク30の頂部から30リットルの位置に配置されている下部サーミスタ38を用いることで、目標温度TA以上に加熱された5L〜20L以上の水がタンク30に蓄えられていることを判定できる。また、必要な加熱量が100L(すなわち、満蓄状態)である場合は、戻りサーミスタ20を用いて判定する。タンク30内の水の温度が目標温度TAを超えている場合(ステップS4でYES)、コントローラは、ステップS6に進み、HPユニット4を停止させる。一方、タンク30内の水の温度が目標温度TAを超えていない場合(ステップS4でNO)、タンクコントローラ74は、ステップS10に進み、HPユニット4を駆動させる(加熱運転)。タンクコントローラ74は、タンク30内の水の温度が目標温度TAを超えるまで、加熱運転を継続し、タンク30内の水の温度が目標温度TAを超えたら、HPユニット4を停止させ、加熱運転を終了する。
【0054】
駆動フラグが消去されていない場合(ステップS2でNO)とは、例えば、加熱運転の実行中に、凍結防止運転(詳細にはヒータ駆動運転)が開始される場合である。すなわち加熱運転の実行中に、凍結防止運転の開始条件が成立した場合である。この場合のタンクコントローラ74の処理について、図5図6を用いて説明する。図6は、第1加熱開始予定時刻S0が到来したことで、加熱処理が開始されている。なお、凍結防止運転の開始条件が成立した場合、まずは、ヒータ駆動運転が実行される。
【0055】
図5において、第1加熱開始予定時刻S0が到来すると、タンクコントローラ74は、ステップS2でYESと判定し、ステップS4でNOと判定し、ステップS10において、HPユニット4を駆動させる。駆動開始時刻D1が到来し、凍結防止運転の開始条件が成立した場合、ヒータ駆動運転が実行される。このため、不揮発性メモリ75に駆動フラグが記憶される。この場合、タンクコントローラ74は、ステップS2でNOと判定し、HPユニット4の駆動を停止する(ステップS8)。電力抑制運転において、加熱運転とヒータ駆動運転を同時に実行すると、給湯システム2の消費電力が抑制電力を超えてしまう。このため、タンクコントローラ74は、ヒータ駆動運転の開始を遅らせるか、加熱運転を加熱運転が完了前に停止させなければならない。加熱運転を継続し、加熱運転が完了するまでヒータ駆動運転の開始を遅らせた場合、複数の第1ヒータ35または複数の第2ヒータ83が取付けられている各経路内の水が凍結してしまう可能性がある。このため、本実施例では、凍結防止運転の開始条件が成立した駆動開始時刻D1において、HPユニット4を停止させている(図6)(ステップS8)。すなわち、加熱運転を中断して、ヒータ駆動運転を優先的に実行する。ヒータ駆動運転が実行されることで、各経路内の水の凍結を適切に防止することができる。一方、駆動開始時刻D1において、加熱運転は完了していない。したがって、タンクコントローラ74は、駆動フラグが消去されるまでHPユニット4を停止した状態で加熱運転の再開を待機する。駆動完了時刻D2が到来すると、ヒータ駆動運転は完了し、駆動フラグは消去される。これにより、タンクコントローラ74は、ステップS2でYES、ステップS4でNOと判定し、HPユニット4を再駆動させ、加熱運転を再開する。タンクコントローラ74は、タンク30内の水の温度が目標温度TAを超えるまで、加熱運転を継続し、HPユニット4を停止する(ステップS6)。これにより、加熱運転の実行中に、ヒータ駆動運転を実行すべき場合において、ヒータ駆動運転および加熱運転を適切に実行することができる。
【0056】
上述のように、電力抑制運転中に、給湯システム2が使用可能な電力は抑制電力(例えば、700W)以下に制限されている。加熱運転と凍結防止運転(詳細には、ヒータ駆動運転)を同時に実行する場合、抑制電力を超えてしまい、給湯システム2の動作が停止してしまう。上記の構成によれば、電力抑制運転中に、加熱運転と凍結防止運転(詳細には、ヒータ駆動運転)が同時に実行されることはない。これにより、電力抑制運転中の給湯システム2の消費電力を、抑制電力以下に抑えることができるとともに、電力抑制運転中においても、凍結防止運転(詳細には、ヒータ駆動運転)を実行することができる。このため、複数の第1ヒータ35および複数の第2ヒータ83が取付けられている各経路内の水が凍結することを防止することができる。
【0057】
また、上記の実施例では、電力抑制運転中において、第1ヒータ35の第1駆動運転を、第2ヒータ83の第2駆動運転に同期させている。これにより、電力抑制運転中のヒータ非駆動運転の時間は、通常運転中のヒータ非駆動運転の時間よりも長くなっている。上述のように、電力抑制運転中において、加熱運転は、ヒータ非駆動運転中に実行しなければならない。電力抑制運転中のヒータ非駆動運転の時間を長くすることで、加熱運転を実行可能な時間をより長く確保することができる。
【0058】
また、上記の実施例では、加熱運転の実行中に、ヒータ駆動運転を実行すべき場合に、加熱運転を停止してヒータ駆動運転を実行している。このような構成によれば、複数の第1ヒータ35または複数の第2ヒータ83が取付けられている各経路内の水の凍結を確実に防止することができるとともに、加熱運転を確実に完了させることができる。
【0059】
また、上記の実施例では、加熱運転の終了までにヒータ駆動運転が実行される事になる場合に、加熱運転の加熱開始予定時刻を早めている。このような構成によれば、加熱運転の終了までにヒータ駆動運転が実行される事になる場合に、加熱運転を中断することなく、当初に予定していた完了予定時刻までに加熱運転を完了させることができる。
【0060】
ここで、実施例の記載と請求項の記載との対応関係を説明しておく。水が「熱媒」の一例である。圧縮機10、凝縮器12、膨張弁14、蒸発器16から構成されるヒートポンプサイクルが、「ヒートポンプ熱源」の一例である。バーナ80が「補助熱源」の一例である。コントローラが「制御装置」の一例である。ヒータ駆動運転が「凍結防止運転」の一例である。加熱開始予定時刻が「開始予定時刻」の一例である。
【0061】
以上、各実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0062】
上記の実施例では、電源の供給元が蓄電池104の場合を、電力抑制運転にしている。しかしながら、電源の供給元が商用電源108であって、通常運転時の最大消費電力よりも低い抑制電力で動作する場合でもよい。例えば、災害発生時などである。
【0063】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0064】
2 :給湯システム
4 :HPユニット
6 :タンクユニット
8 :バーナユニット
9 :電力供給ユニット
10 :圧縮機
12 :凝縮器
14 :膨張弁
16 :蒸発器
18 :循環ポンプ
19 :HP往き経路
20 :戻りサーミスタ
21 :HP戻り経路
22 :往きサーミスタ
23 :HP外気温度サーミスタ
24 :HPコントローラ
30 :タンク
31 :タンク往き経路
32 :混合弁
33 :タンク戻り経路
34 :バイパス制御弁
35 :第1ヒータ
36 :上部サーミスタ
37 :中間部サーミスタ
38 :下部サーミスタ
39 :タンク外気温度サーミスタ
40 :給水経路
42 :減圧弁
44 :入水サーミスタ
46 :タンク給水経路
48 :タンクバイパス経路
50 :逆止弁
52 :逆止弁
54 :水側水量センサ
56 :タンク出湯経路
58 :逆止弁
60 :湯側水量センサ
62 :第1給湯経路
64 :混合サーミスタ
66 :第2給湯経路
68 :給湯出口サーミスタ
70 :逆止弁
72 :給湯バイパス経路
74 :タンクコントローラ
75 :不揮発性メモリ
76 :リモコン
80 :バーナ
81 :ガス供給管
82 :熱交換器
83 :第2ヒータ
84 :バイパスサーボ
85 :バーナ外気温度サーミスタ
86 :水量サーボ
88 :湯はり弁
90 :バーナ往路
91 :水量センサ
92 :バーナ復路
94 :バーナバイパス経路
96 :バーナ給湯サーミスタ
98 :湯はり経路
100 :バーナコントローラ
102 :分電盤
104 :蓄電池
106 :切替器
108 :商用電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6