特許第6590695号(P6590695)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6590695
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】アルブミン結合ポリペプチド
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/315 20060101AFI20191007BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20191007BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20191007BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20191007BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20191007BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   C07K14/315ZNA
   A61K38/16
   C07K19/00
   C12N15/31
   C12N15/62 Z
   C12P21/02 C
【請求項の数】13
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2015-532462(P2015-532462)
(86)(22)【出願日】2013年9月25日
(65)【公表番号】特表2015-530400(P2015-530400A)
(43)【公表日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】EP2013069946
(87)【国際公開番号】WO2014048977
(87)【国際公開日】20140403
【審査請求日】2016年9月15日
【審判番号】不服2018-10151(P2018-10151/J1)
【審判請求日】2018年7月25日
(31)【優先権主張番号】61/705,223
(32)【優先日】2012年9月25日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12185874.0
(32)【優先日】2012年9月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】307015286
【氏名又は名称】アフィボディ・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】カロリーネ・エクブラド
(72)【発明者】
【氏名】ヨアキム・フェルドウィッシュ
(72)【発明者】
【氏名】キョン−フン・アン
【合議体】
【審判長】 田村 聖子
【審判官】 高堀 栄二
【審判官】 常見 優
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−534486(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/004384(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K14/315-19/00
CA/REGISTRY(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列:
LAX3AKX67ANX10 ELDX14Y−[BM]−LX4344LP
を含むアルブミン結合ポリペプチドであって、
ここで、[BM]は、アミノ酸配列:
GVSDFYKKLI XaKAKTVEGVE ALKXbc
からなるアルブミン結合モチーフであり、かつ互いに独立して、
aは、D及びEより選択され;
bは、D及びEより選択され;かつ
cは、A及びEより選択され、
ここで、互いに独立して、
3は、C、E、Q及びSより選択され;
6は、C、E及びSより選択され;
7は、A及びSより選択され;
10は、A、R及びSより選択され;
14は、A、C、K及びSより選択され;
43は、A及びKより選択され;かつ
44は、A、E及びSより選択される、
アルブミン結合ポリペプチド。
【請求項2】
[BM]の配列が配列番号1である、請求項1に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【請求項3】
そのアミノ酸配列が、以下より選択される1つの定義:
i)配列番号9〜16より選択される;
ii)配列番号9〜16より選択される配列に対して93%以上の同一性を有するアミノ酸配列であり、但し、配列番号9〜16中の23位に対応する位置のアミノ酸がKである、
を満たす配列を含む、請求項1または2に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【請求項4】
そのアミノ酸配列が、配列番号17〜24より選択される、請求項3に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【請求項5】
そのアミノ酸配列が、配列番号17である、請求項4に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【請求項6】
相互作用のKD値が多くとも1x10-9 Mとなるように、アルブミン結合ポリペプチ
ドがアルブミンへ結合する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【請求項7】
i)請求項1〜6のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチドからなる第1部分;及び
ii)所望の生物活性を有するポリペプチドからなる第2部分
を含む、融合タンパク質又はコンジュゲート。
【請求項8】
所望の生物活性を有する第2部分が、治療活性ポリペプチドである、請求項7に記載の融合タンパク質又はコンジュゲート。
【請求項9】
所望の生物活性を有する第2部分が、標的分子と選択的相互作用が可能である結合性ポリペプチドである、請求項7または8に記載の融合タンパク質又はコンジュゲート。
【請求項10】
標識をさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチド、融合タンパク質又はコンジュゲート。
【請求項11】
前記標識が、蛍光色素及び金属、発色性色素、化学発光化合物及び生物発光タンパク質、酵素、放射性核種及び粒子からなる群より選択される、請求項10に記載のアルブミン結合ポリペプチド、融合タンパク質又はコンジュゲート。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチド又は融合タンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項13】
請求項12に記載のポリヌクレオチドを発現させる工程を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチド又は融合タンパク質を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルブミンに対する結合親和性を有する一種の改変ポリペプチドに関する。特に、本発明は、酵素切断に対して高い耐性を有するアルブミン結合ポリペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
血清アルブミン
血清アルブミンは、哺乳動物血清中で最も豊富なタンパク質(40 g/l;ヒト中約0.7 mM)であり、そしてその機能の1つは、脂質及びビリルビンのような分子を結合することである(非特許文献1)。血清アルブミンの半減期は、動物の大きさに正比例しており、ここで、例えばヒト血清アルブミン(HSA)は、19日の半減期を有し、そしてウサギ血清アルブミンは、約5日の半減期を有する(非特許文献2)。ヒト血清アルブミンは、体中に、特に腸及び血液区画に広く分布しており、そこで主に浸透圧(osmolarity)の維持に関与している。構造的に、アルブミンは、3つの相同ドメイン及び全体で584個又は585個のアミノ酸を含む単鎖タンパク質である(非特許文献3)。アルブミンは、17個のジスルフィド架橋及び1個の反応性チオール、C34を含むが、N結合された及びO結合された炭水化物部分がない(前出の非特許文献1;非特許文献4)。グリコシル化の欠如はアルブミンの組換え発現を単純化する。アルブミンのこの特性は、その三次元構造が公知である(非特許文献5)という事実と一緒に、アルブミンを組換え融合タンパク質における使用についての魅力的な候補にした。このような融合タンパク質は、単一のポリペプチド鎖中に、治療用タンパク質(これは、タンパク質自体が投与されると、体から迅速に除去される)と血漿タンパク質(これは、自然な遅いクリアランスを示す)とを一般に組み合わせる(非特許文献6)。このような融合タンパク質は、頻度がより少ない注射及びインビボでのより高いレベルの治療用タンパク質を必要とする場合に、臨床的利点を提供し得る。
【0003】
HSAとの融合又は会合はタンパク質のインビボ半減期を延長する
血清アルブミンには、酵素的又は免疫学的機能が全くなく、従って、生物活性ポリペプチドへカップリングした場合に、望ましくない副作用を示さないだろう。さらに、HSAは、多くの天然及び治療用分子の内因性輸送及び送達に関与する天然の担体である(非特許文献7)。直接血清アルブミンへ又は血清アルブミンへの生体内会合を可能にするペプチド若しくはタンパク質へタンパク質を共有結合する、いくつかの戦略が報告されている。後者のアプローチの例は、例えば、特許文献1中に記載されている。この文献は、とりわけ、他のタンパク質の半減期を延長するために、連鎖球菌プロテインG(streptococcal protein G)に由来するアルブミン結合ペプチド又はタンパク質の使用を記載している。その着想は、細菌に由来するアルブミン結合ペプチド/タンパク質を、血液から迅速に排泄されることがわかっている治療上興味深いペプチド/タンパク質に融合させることである。このようにして生成された融合タンパク質は、生体内で血清アルブミンに結合し、そしてそのより長い半減期から便益をもたらし、それにより融合された治療上興味深いペプチド/タンパク質の正味の半減期が延長される。
【0004】
HSAとの会合は免疫原性を減少させる
生物活性タンパク質のインビボ半減期に対する効果に加えて、生物活性タンパク質及びアルブミン結合性タンパク質の融合物とアルブミンとの非共有結合性会合は、生物活性タンパク質に対する免疫反応を低下させるように作用することが提案された。従って、特許文献2において、生物活性タンパク質に対する免疫反応を低下させる又は排除するためのこの原理の使用が記載されている。
【0005】
細菌受容体タンパク質のアルブミン結合ドメイン
連鎖球菌プロテインGは、連鎖球菌の特定菌株の表面上に存在する二機能性受容体であり、そしてIgG及び血清アルブミンの両方に結合が可能である(特許文献8)。構造は、いくつかの構造的及び機能的に異なるドメイン(非特許文献9)、より正確には3つのIg結合モチーフ及び3つの血清アルブミン結合ドメイン(非特許文献10)による高度な反復性がある。3の血清アルブミン結合ドメインの1つの構造は、決定されており、3へリックスバンドルドメイン(three-helix bundle domain)を示している(非特許文献11)。このモチーフは、ABD(アルブミン結合ドメイン)と命名され、アミノ酸残基46個のサイズである。その文献において、それは後にG148-GA3とも呼ばれた。
【0006】
プロテインGのアルブミン結合性3ヘリックスドメインと同様のドメインを含有する、連鎖球菌由来のプロテインG以外の細菌性アルブミン結合タンパク質も同定された。このようなタンパク質の例は、PAB、PPL、MAG及びZAGタンパク質である。このようなアルブミン結合タンパク質の構造及び機能の研究は行われており、そして、例えばJohansson及び共同研究者らによって報告されており(非特許文献12;非特許文献13)、彼らは、アルブミン結合を担う3ヘリックスタンパク質ドメインについて「GAモジュール」(プロテインG関連アルブミン結合モジュール)という名称を導入した。さらに、Rozakらは、異なる種特異性及び安定性に関して選択及び研究されたGAモジュールの人工変異体の生成を報告した(非特許文献14;非特許文献15)。本開示において、Johanssonら及びRozakらによる論文において確立された異なる細菌種由来のGAモジュールに関する用語に従う。
【0007】
最近、様々な最適化された特徴を有する、G148-GA3ドメインの変異体が開発された。このような変異体は、例えばPCT公開公報である特許文献3及び特許文献4に開示されている。
【0008】
クロストリパイン
エンドプロテイナーゼArg-Cとしても公知の、クロストリパインは、クロストリジウム・ヒストリチクム(Clostridium histolyticum)から単離され得る二本鎖プロテイナーゼである。クロストリパインは、タンパク質分解活性及びアミダーゼ/エステラーゼ活性を両方とも有することが示された(非特許文献16)。クロストリパイン活性は7.6〜7.9のpH範囲で最適であることが報告された。
【0009】
クロストリパインは、アルギニン残基のカルボキシル基で優先的に切断し(非特許文献17;非特許文献18)、しかし、リジル結合の切断も報告された。クロストリパインは、Argの代わりにLysを含有する基質を受け入れることが示されたが、反応速度はArg含有基質との反応と比べて遅かった。例えば、クロストリパインは、Arg-Arg、Arg-Ala及びLys-Tyr部位でグルカゴンを切断することが報告された。これらの3つの結合の加水分解の相対的初速度は、1、1/7及び1/300である(非特許文献19)。
【0010】
クロストリパイン切断は、生物医学及びバイオテクノロジー適用において頻繁に利用されている。クロストリパイン切断の適用としては、ペプチドマッピング、配列解析、細胞単離、アミド結合の加水分解/縮合、及びペプチド合成が挙げられる。
【0011】
クロストリパインは、例えば、タンパク質精製及び/又は検出のために使用されるタグ(例えば、His6、c-Myc、Flag及びGSTタグ)を切断除去するために使用され得る。さらに、クロストリパイン切断は、前駆体ポリペプチドからのアミド化治療用ポリペプチドの生成の間使用され得、それによって、動物又はヒト対象への投与時の内因性プロテアーゼによるタンパク質分解に対する治療用ポリペプチドの耐性が増加する。
【0012】
この背景の説明の種々のセクションから明らかであるように、アルブミンに対して高親和性を有し、かつ、特にクロストリパインによる、酵素切断に対して高い耐性を示すポリペプチド分子を提供することは、様々な生物医学、バイオテクノロジー及び他の適用の発展において重要な要素であり、従って、当技術分野においてこのようなポリペプチド分子の必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO91/01743
【特許文献2】WO2005/097202
【特許文献3】WO2009/016043
【特許文献4】WO2012/004384
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Peters T, Advances in Protein Chemistry 37:161, 1985
【非特許文献2】McCurdy TR et al, J Lab Clin Med 143:115, 2004
【非特許文献3】Dugaiczyk L et al, Proc Natl Acad Sci USA 79:71, 1982
【非特許文献4】Nicholson JP et al, Br J Anaesth 85:599, 2000
【非特許文献5】He XM and Carter DC, Nature 358:209 1992
【非特許文献6】Sheffield WP, Curr Drug Targets Cardiovacs Haematol Disord 1:1, 2001
【非特許文献7】Sellers EM and Koch-Weser MD, “Albumin Structure, Function and Uses”, eds Rosenoer VM et al, Pergamon, Oxford, p 159, 1977
【非特許文献8】Bjoerck et al, Mol Immunol 24:1113, 1987
【非特許文献9】Guss et al, EMBO J 5:1567, 1986
【非特許文献10】Olsson et al, Eur J Biochem 168:319, 1987
【非特許文献11】Kraulis et al, FEBS Lett 378:190, 1996
【非特許文献12】Johansson et al, J Mol Biol 266:859-865, 1997
【非特許文献13】Johansson et al, J Biol Chem 277:8114-8120, 2002
【非特許文献14】Rozak et al, Biochemistry 45:3263-3271, 2006
【非特許文献15】He et al, Protein Science 16:1490-1494, 2007
【非特許文献16】Mitchell, et al (1968), J Biol Chem 243:4683-4692
【非特許文献17】Labrou et al (2004), Eur J Biochem 271(5):983-92
【非特許文献18】Keil (1992), “Specificity of proteolysis”, Springer-Verlag, pp 335
【非特許文献19】Labouesses (1960), Bull Soc Chim Biol 42:1293-304
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の開示
本発明の第1局面は、アルブミン結合モチーフ(BM)を含むアルブミン結合ポリペプチドであって、このモチーフが、アミノ酸配列:
GVSDFYKKLI XaKAKTVEGVE ALKXbXcI
からなり、
ここで、互いに独立して、
Xaは、D及びEより選択され;
Xbは、D及びEより選択され;かつ
Xcは、A及びEより選択される、
アルブミン結合ポリペプチドを提供することによって、同等に高いアルブミン親和性及びクロストリパイン切断に対する高い耐性を有する新規のポリペプチドに対する必要性を満たす。
【0016】
本発明のこの局面に従うポリペプチドの一実施態様において、XaはDである。
【0017】
本発明のこの局面に従うポリペプチドの一実施態様において、XbはDである。
【0018】
本発明のこの局面に従うポリペプチドの一実施態様において、XcはAである。
【0019】
上記の組み合わせの全てを考慮すると、アルブミン結合モチーフBMの配列は、配列番号1〜8からなる群より選択されることが明らかである。本発明のこの局面に従うポリペプチドの一実施態様において、BMの配列は配列番号1である。
【0020】
そのペプチドがクロストリパインによる切断に対して高い耐性を示す、アルブミン結合ドメイン(ABD)又はその変異体を含む、アルブミン結合ポリペプチドを提供するために、本発明者らは、PEP07843(配列番号27)の変異体を研究した。本発明者らは、本明細書に定義されるBM中の8位に対応するPEP07843の位置におけるリジン残基(K)によるアルギニン残基(R)の置換が、他の変異体と比較してプロテアーゼ安定性に関して予想外に優れた特性を示すことを示し、これらの他の変異体においては、この位置のアルギニン残基を、リジンとは対照的に、クロストリパイン切断の部位として以前に記載されていないアミノ酸によって置換した(実施例3及び図3を参照のこと)。
【0021】
従って、上記で議論したArgからLysへの置換変異が、クロストリパイン切断に対するアルブミン結合ポリペプチドの耐性を安定化及び改善するという知見は、クロストリパインはLys残基のカルボキシル基でペプチドを切断することを示す以前の研究を考慮して、驚くべきことであり、予想外である。
【0022】
本発明のこの局面の一実施態様において、アルブミン結合モチーフが3ヘリックスバンドルタンパク質ドメインの一部を形成する、アルブミン結合ポリペプチドを提供する。例えば、BMは、前記3ヘリックスバンドルタンパク質ドメイン内の、相互接続ループを有する2つのαヘリックスを本質的に構成し得るか又はその一部を形成し得る。
【0023】
本発明の特定の実施態様において、このような3ヘリックスバンドルタンパク質ドメインは、細菌受容体タンパク質の3ヘリックスドメインからなる群より選択される。このような細菌受容体タンパク質の非限定的な例は、プロテインG、MAG、ZAG、PPL及びPABからなる群より例えば選択されるような、連鎖球菌属(Streptococcus)、ペプトストレプトコッカス属(Peptostreptococcus)及びフィネゴルディア属(Finegoldia)の種由来のアルブミン結合受容体タンパク質からなる群より選択され得る。
【0024】
本発明の特定の実施態様において、BMは、例えば連鎖球菌菌株G148由来のプロテインGのドメインのような、プロテインGのドメインの一部を形成する。この実施態様の異なる変形において、BMがその一部を形成する3ヘリックスバンドルタンパク質ドメインは、連鎖球菌菌株G148由来のプロテインGのドメインGA1、ドメインGA2及びドメインGA3からなる群より選択され、特にドメインGA3である。
【0025】
代替の実施態様において、BMは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来の細菌受容体タンパク質プロテインAの5つの3ヘリックスドメインのうちの1つ又はそれ以上の一部を形成し;即ち、3ヘリックスバンドルタンパク質ドメインは、プロテインAドメインA、B、C、D及びEからなる群より選択される。他の同様の実施態様において、BMは、黄色ブドウ球菌由来のプロテインAのドメインBから誘導された、プロテインZの一部を形成する。
【0026】
BMが3ヘリックスバンドルタンパク質ドメイン「の一部を形成する」本発明の実施態様において、これは、BMがオリジナルのドメイン中の同様の構造モチーフを置換するように、BMの配列がオリジナルの3ヘリックスバンドルドメインの配列中へ「挿入される」又は上へ「グラフト化される」ことを意味すると理解される。例えば、理論によって拘束されることを望まないが、BMは、3ヘリックスバンドルの3つのヘリックスのうちの2つを構成すると考えられており、従って、任意の3ヘリックスバンドル内のこのような2ヘリックスモチーフ(two-helix motif)を置換することができる。当業者に理解されるように、2つのBMヘリックスによる3ヘリックスバンドルドメインの2つのヘリックスの置換は、ポリペプチドの基本構造に影響を与えないように行われなければならない。即ち、本発明のこの実施態様に従うポリペプチドのCα骨格の全体的な折り畳みは、例えば、同じ順序で二次構造の同じ要素を有するなど、それがその一部を形成する3ヘリックスバンドルタンパク質ドメインの全体的な折り畳みと実質的に同じである。従って、本発明のこの実施態様に従うポリペプチドがオリジナルのドメインと同じ折り畳みを有する場合、本発明に従うBMは3ヘリックスバンドルドメインの「一部を形成し」、このことは、基本的な構造特性、例えば同様のCDスペクトルをもたらす特性が共有されることを意味する。当業者は、関連する他のパラメータを知っている。
【0027】
本発明のこの局面の一実施態様において、アルブミン結合ポリペプチドは、上記に定義されるアルブミン結合モチーフと、3ヘリックスコンフィギュレーションの残りを構成する追加の配列とを含む、3ヘリックスバンドルタンパク質ドメインである。従って、一実施態様において、アミノ酸配列:
LAX3AKX6X7ANX10 ELDX14Y-[BM]-LX43X44LP
を含むアルブミン結合ポリペプチドであって、
ここで、
[BM]は、上記に定義されるアルブミン結合モチーフであり、
かつ、互いに独立して、
X3は、C、E、Q及びSより選択され;
X6は、C、E及びSより選択され;
X7は、A及びSより選択され;
X10は、A、R及びSより選択され;
X14は、A、C、K及びSより選択され;
X43は、A及びKより選択され;かつ
X44は、A、E及びSより選択される、
アルブミン結合ポリペプチドを提供する。
【0028】
このアルブミン結合ポリペプチドのある特定の実施態様において、X3はEである。
【0029】
このアルブミン結合ポリペプチドのある特定の実施態様において、X6はEである。
【0030】
このアルブミン結合ポリペプチドのある特定の実施態様において、X7はAである。
【0031】
このアルブミン結合ポリペプチドのある特定の実施態様において、X10はAである。
【0032】
このアルブミン結合ポリペプチドのある特定の実施態様において、X14はSである。
【0033】
このアルブミン結合ポリペプチドのある特定の実施態様において、X43はAである。
【0034】
このアルブミン結合ポリペプチドのある特定の実施態様において、X44はAである。
【0035】
当業者に理解されるように、任意のポリペプチドの機能、例えば、本発明に従うポリペプチドのアルブミン結合能力は、ポリペプチドの三次構造に依存する。従って、その機能に影響を与えることなくポリペプチド中のアミノ酸の配列に小さな変化を生じさせることが可能であり得る。従って、本発明は、アルブミン結合特徴及びクロストリパイン切断に対する高耐性が保持されているようなものである、BMの改変変異体を包含する。例えば、アミノ酸残基の特定の機能群(例えば、疎水性、親水性、極性など)に属するアミノ酸残基は、同じ機能群からの別のアミノ酸残基と交換され得るということが可能である。
【0036】
下記の実施例セクションにおいて詳細に説明するように、本発明者らは、個々のアルブミン結合ポリペプチド配列を同定した。これらの配列は、本発明の第1局面に従うアルブミン結合ポリペプチドの個々の実施態様を構成する。これらの個々のアルブミン結合ポリペプチドの配列を図1において配列番号9〜16として示す。
【0037】
従って、この第1局面に従う本発明の一実施態様において、配列番号9〜16より選択されるアミノ酸配列を含むアルブミン結合ポリペプチドを提供する。さらに、配列番号9〜16より選択される配列に対して93%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むアルブミン結合ポリペプチドであって、但し、配列番号9〜16中の23位に対応する位置のアミノ酸がKである、アルブミン結合ポリペプチドが本発明によって包含される。いくつかの実施態様において、本発明のポリペプチドは、配列番号9〜16より選択される配列に対して少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である配列を含み得、但し、配列番号9〜16中の23位に対応する位置のアミノ酸はKである。
【0038】
ある特定の実施態様において、アルブミン結合ポリペプチドは、配列番号9及びそれに対して93%以上の同一性を有する配列より選択される配列を含み、但し、配列番号9中の23位に対応する位置のアミノ酸はKである。いくつかの実施態様において、本発明のポリペプチドは、配列番号9に対して少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である配列を含み得、但し、配列番号9中の23位に対応する位置のアミノ酸はKである。
【0039】
本明細書にわたって用いられる「%同一性」という用語は、以下のように算出され得る。CLUSTAL Wアルゴリズム(Thompson et al, Nucleic Acids Research, 22: 4673-4680(1994))を用いて、問い合わせ配列を標的配列に対して整列させる。整列された配列の最も短いものに対応するウィンドウ上で比較を行う。場合によっては、整列された配列の最も短いものが、標的配列であり得る。他の場合、問い合わせ配列が整列された配列の最も短いものを構成し得る。各位置のアミノ酸残基を比較し、そして標的配列において同一の相関関係を有する問い合わせ配列中の位置のパーセンテージを%同一性として報告する。
【0040】
本明細書に用いられる「アルブミン結合」及び「アルブミンに対する結合親和性」という用語は、例えばBiacore機器におけるような表面プラスモン共鳴技術を用いて試験され得るポリペプチドの性質のことである。例えば、下記の実施例に記載されるように、アルブミン結合親和性は、アルブミン又はそのフラグメントを機器のセンサーチップ上に固定し、そして被検ポリペプチドを含有するサンプルをチップ上に通過させる実験において試験することができる。あるいは、被検ポリペプチドを機器のセンサーチップ上に固定し、そしてアルブミン又はそのフラグメントを含有するサンプルを、チップ上に通過させる。これに関して、アルブミンは、ヒト血清アルブのような哺乳動物からの血清アルブミンであってもよい。次いで、当業者は、アルブミンに対するポリペプチドの結合親和性の少なくとも定性的測定を行うこのような実験によって得られた結果を解釈することができる。定量的測定が望しい場合、例えば、相互作用のKD値を測定するため、表面プラスモン共鳴法を用いてもよい。結合値は、例えばBiacore2000機器(Biacore AB)において定義され得る。アルブミンを測定センサーチップ上に適当に固定化し、そして親和性を測定するポリペプチドのサンプルを系列希釈によって調製し、そして順不同で注入する。次いで、例えば機器製造業者(Biacore AB)によって提供されたBIAevaluation 4.1ソフトウェア又は他の適切なソフトウェアの1:1 Langmuir結合モデルを用いて、結果からKD値を算出してもよい。
【0041】
本発明のこの第1局面に従うアルブミン結合ポリペプチドは、相互作用の相対的KD値が多くとも1 x 10-9 M、即ち1 nMとなるように、アルブミンへ結合する。いくつかの実施態様において、相互作用のKD値は、多くとも1 x 10-10 M、例えば多くとも1 x 10-11 M、例えば多くとも1 x 10-12 M、例えば多くとも1 x 10-13 M、例えば多くとも1 x 10-14 Mである。
【0042】
本発明の一実施態様において、アルブミン結合ポリペプチドが結合するアルブミンは、ヒト血清アルブミン、ラット血清アルブミン、カニクイザル血清アルブミン及びマウス血清アルブミンより選択される。
【0043】
ある特定の実施態様において、アルブミン結合ポリペプチドが結合するアルブミンは、ヒト血清アルブミンである。
【0044】
本発明はまた、アルブミン結合モチーフの片側又は両側に配置された1つ又はそれ以上のアミノ酸をさらに追加して含む、上述のアルブミン結合ポリペプチドを包含する。これらのアミノ酸残基は、ポリペプチドによるアルブミンの結合の強化において役割を果たし得るが、例えば製造、精製、インビボ若しくはインビトロ安定化、ポリペプチドのカップリング又は検出、並びにそれらの任意の組み合わせの1つ又はそれ以上に関連する他の目的にも同様に役立ち得る。
【0045】
従って、本明細書に定義されるアミノ酸配列のN又はC末端におけるαヘリックスのすぐ前又は後にあるアミノ酸は、一実施態様において、立体配置的安定性に影響を及ぼすことがあり得る。改善された立体配置的安定性に寄与し得るアミノ酸残基の1つの例は、前記アミノ酸配列のN末端に位置するセリン残基である。N末端セリン残基は、場合によっては、セリン側鎖のガンマ酸素とグルタミン酸残基のポリペプチド主鎖NHとの間に水素結合を含むことによって、標準的なS-X-X-Eキャッピングボックスを形成し得る。このN末端キャッピングは、いくつかの実施態様においてアルブミン結合モチーフを含む3ヘリックスドメインの第1のαヘリックスの安定化に寄与し得る。
【0046】
従って、本発明のこの局面の一実施態様において、本明細書に定義されるポリペプチド配列のN末端側で少なくとも1つのセリン残基をさらに含む、アルブミン結合ポリペプチドを提供する。換言すれば、アミノ酸配列は、1つ又はそれ以上のセリン残基により始まる。さらに、アルブミン結合ポリペプチドは、前記ポリペプチドのN末端若しくはC末端側のいずれか又は両方で1、2若しくは3又はそれ以上のセリン残基をさらに含み得る。
【0047】
本発明のこの局面の一実施態様において、本明細書に定義されるポリペプチド配列のN末端側にグリシン残基をさらに含む、アルブミン結合ポリペプチドを提供する。
【0048】
本明細書に定義されるアミノ酸配列は、1、2、3、4又は任意の適した数のアミノ酸残基により始まり得ることが理解される。従って、アミノ酸配列は、単一セリン残基、単一グリシン残基又は2つの組み合わせ、例えばグリシン-セリン(GS)の組み合わせ又はグリシン-セリン-セリン(GSS)の組み合わせにより始まり得る。
【0049】
従って、一実施態様において、本明細書に定義されるポリペプチド配列のN末端側にアミノ酸GSをさらに含む、アルブミン結合ポリペプチドを提供する。
【0050】
ある特定の実施態様において、本明細書に定義されるポリペプチド配列のN末端側にアミノ酸GSSをさらに含む、アルブミン結合ポリペプチドを提供する。
【0051】
特に、本発明は、配列番号17〜24、例えば配列番号17として、図1に示される個々のアルブミン結合ポリペプチドの配列を包含する。これらの配列は、本発明の第1局面の上記実施態様に従うアルブミン結合ポリペプチドの個々の実施態様を構成する。
【0052】
さらに別の実施態様において、さらなるアミノ酸残基は、本明細書に定義されるポリペプチド配列のN末端側にグルタミン酸を含む。
【0053】
同様に、そのような3ヘリックスドメインが存在する場合、アルブミン結合モチーフを含む3ヘリックスドメインの第3のαヘリックスの安定性を改善するために、C末端キャッピングを利用してもよい。
【0054】
プロリン残基は、本明細書に定義されるアミノ酸配列のC末端側に存在する場合、キャッピング残基として少なくとも部分的に機能することがある。このような場合、C末端側にプロリン残基の後のリジン残基は、リジン残基のイプシロンアミノ基とポリペプチド主鎖中のリジンの2つ及び3つ前の残基に位置するアミノ酸のカルボニル基との間の水素結合によって、アルブミン結合ポリペプチドの第3のヘリックスのさらなる安定化に寄与し得る。
【0055】
従って、一実施態様において、上記の定義のいずれか1つ又はそれ以上に従うポリペプチド配列のC末端側にリジン残基をさらに含む、アルブミン結合ポリペプチドを提供する。
【0056】
上記で議論したように、さらなるアミノ酸は、アルブミン結合ポリペプチドの製造に関連し得る。特に、プロリンがC末端に存在する実施態様に従うアルブミン結合ポリペプチドが、化学的ペプチド合成によって製造される場合、C末端プロリンの後の1つ又はそれ以上の任意のアミノ酸残基は、利点をもたらすことがある。このようなさらなるアミノ酸残基は、例えば、合成のジペプチド段階でジケトピペラジンのような望ましくない物質の形成を防止することがある。このようなアミノ酸残基の一例は、グリシンである。
【0057】
従って、別の実施態様において、上記の定義のいずれか1つ又はそれ以上に従うポリペプチド配列のC末端側にグリシン残基をさらに含む、アルブミン結合ポリペプチドを提供する。
【0058】
一実施態様において、さらなるアミノ酸は、上に説明したようにプロリン残基のすぐ後に又はさらなるリジン及び/又はグリシン残基の後に、ポリペプチドのC末端側にグリシン残基を含む。
【0059】
あるいは、ポリペプチド製造は、存在する場合、本明細書に定義されるアミノ酸配列のC末端プロリン残基のアミド化から利益を得てもよい。この場合、C末端プロリンは、カルボキシル炭素においてさらなるアミン基を含む。本明細書に記載されたポリペプチド、特にそのC末端がプロリン又はペプチド合成中にラセミ化することが知られている他のアミノ酸で終結するものの一実施態様において、上記のC末端へのグリシンの付加又は存在する場合、プロリンのアミド化は、C末端アミノ酸残基のラセミ化に伴う潜在的な問題に対処することもできる。このようにアミド化されたポリペプチドを、化学合成ではなく組換え法により製造しようとする場合、C末端アミノ酸のアミド化は、当技術分野で公知のいくつかの方法によって、例えば、PAM酵素のアミド化を用いることにより実施することができる。
【0060】
当業者は、ペプチド合成用に予め作製された異なるタイプのマトリックスによるような、C末端修飾を実施する方法を知っている。
【0061】
従って、さらなるアミノ酸残基は、化学的カップリングの目的のために、例えばアフィニティーマトリックスを得るためのクロマトグラフィー樹脂に又は金属放射性核種と錯化するためのキレート部分に加えられた1つ又はそれ以上のアミノ酸残基を含んでもよい。この一例は、ポリペプチド鎖中の最初又は最後の位置での、即ち、N又はC末端での、システイン残基の付加である。このようなさらなるアミノ酸残基はまた、ポリペプチドの精製又は検出のための「タグ」、例えば、タグに対して特異的な抗体との相互作用のための、ヘキサヒスチジル(His6)タグ、又はグルタチオン-S-トランスフェラーゼタグ(GST-タグ)、又は「myc」(「c-Myc」)タグ又は「FLAG」タグを含み得る。当業者は他の選択肢を知っている。
【0062】
上で議論された「さらなるアミノ酸残基」は、なんらかの所望の機能、例えば、第1のアルブミン結合ドメインと同じ結合機能、又は別の結合機能、又は治療機能、又は細胞傷害機能、又は酵素機能、又は蛍光機能、又はそれらを混合したものを有する1つ又はそれ以上のポリペプチドドメインを構成してもよい。本発明に従うこのようなポリペプチド中の連結されたポリペプチド「単位」は、公知の有機化学方法を使用して共有結合によって連結してもよく、又は、ポリペプチドの組換え発現のための系において1つ又はそれ以上の融合ポリペプチドとして発現してもよく、又は、直接的に若しくはいくつかのアミノ酸を含むリンカーを介して、任意の他の方法で連結してもよい。
【0063】
別の実施態様において、さらなるアミノ酸残基は、ポリペプチドのN及び/又はC末端でシステイン残基を含む。このようなシステイン残基は、本明細書に定義されるアミノ酸配列のすぐ前及び/又は後にあり得るか、又は上記の任意の他のさらなるアミノ酸残基の前及び/又は後にあり得る。ポリペプチド鎖へのシステイン残基の付加によって、アルブミン結合ポリペプチドの部位特異的コンジュゲーションのためのチオール基を得ることができる。あるいは、セレノシステイン残基をポリペプチド鎖のC末端に導入して部位特異的コンジュゲーションを促進することができる(Cheng et al, Nat Prot 1:2, 2006)。
【0064】
従って、本発明のこの局面の別の実施態様において、上記の定義のいずれか1つ又はそれ以上に従うポリペプチド配列のN末端側にシステイン残基をさらに含む、アルブミン結合ポリペプチドを提供する。
【0065】
別の実施態様において、上記の定義のいずれか1つ又はそれ以上に従うポリペプチド配列のC末端側にシステイン残基をさらに含む、アルブミン結合ポリペプチドを提供する。
【0066】
本発明のこの局面の一実施態様において、2つ以下のシステイン残基、例えば、1つ以下のシステイン残基を含む、アルブミン結合ポリペプチドを提供する。
【0067】
さらに、本発明はまた、アルブミンに対して親和性を有するポリペプチドの多量体、即ち、モノマー単位として少なくとも2つのアルブミン結合ポリペプチド又はそのフラグメントを含むポリペプチド鎖を包含する。例えば、アルブミンの精製方法において又はアルブミン結合機能を利用する治療方法において、本発明に従うポリペプチド1つで可能であるよりもアルブミンのさらにより強い結合を得ることが、興味深い場合がある。この場合、ポリペプチドの二量体、三量体又は四量体などの、多量体の提供は、必要なアビディティー効果を与え得る。多量体は、適切な数の本発明に従うポリペプチドからなり得る。このような多量体中のモノマーを形成する、本発明に従うこれらのポリペプチドドメインは全て、同一のアミノ酸配列を有してもよいが、それらが異なるアミノ酸配列を有することも同様に可能である。上述したように、本発明に従う多量体中の連結されたポリペプチド「単位」は、公知の有機化学方法を使用して共有結合によって連結してもよく、又は、ポリペプチドの組換え発現のための系において1つ又はそれ以上の融合ポリペプチドとして発現してもよく、又は、直接的に若しくはいくつかのアミノ酸を含むリンカーを介して、任意の他の方法で連結してもよい。
【0068】
さらに、本発明に従うアルブミン結合ポリペプチド又はその多量体が、第1ドメイン又は第1部分を構成し、第2の及びさらなる部分が、アルブミンに結合する機能以外の他の機能を有する、「異種遺伝子型」融合ポリペプチド若しくはタンパク質、又はコンジュゲートも、意図され、本発明の範囲内にある。このようなタンパク質における融合ポリペプチド又はコンジュゲートの第2の及びさらなる部分は、所望の生物活性を適切に有する。
【0069】
従って、本発明の第2局面において、第1局面に従うアルブミン結合ポリペプチドからなる第1部分、及び所望の生物活性を有するポリペプチドからなる第2部分を含む、融合タンパク質又はコンジュゲートを提供する。
【0070】
このような所望の生物活性の非限定的な例は、治療活性、結合活性、及び酵素活性を含む。一実施態様において、所望の生物活性を有する第2部分は、治療活性ポリペプチドである。
【0071】
治療活性ポリペプチドの非限定的な例は、生体分子、例えば、ヒト内生酵素、ホルモン、成長因子、ケモカイン、サイトカイン及びリンホカインからなる群より選択される分子である。アルブミン結合ポリペプチドとの融合物又はコンジュゲートにおいて有用であることが分かり得る治療活性生体分子の非限定的な例は、IL-2、GLP-1、BNP(Alb-β-ナトリウム利尿ペプチド)、IL-1-RA(インターロイキン-1受容体拮抗薬)、KGF(ケラチノサイト増殖因子)、ステムジェン(Stemgen)(登録商標)、成長ホルモン(GH)、G-CSF、CTLA-4、ミオスタチン、第VII因子、第VIII因子、第IX因子及び第X因子、並びにそれらの任意の組み合わせ又はサブグループからなる群より選択される。
【0072】
適切な生体分子のさらなる非限定的な例は、非ヒト生物活性タンパク質、例えば、細菌毒素(例えば、緑濃菌外毒素並びにブドウ球菌及び連鎖球菌スーパー抗原)、酵素(例えば、RNase及びβ-ラクタマーゼ)及び活性化タンパク質(例えば、ストレプトキナーゼ)からなる群より選択されるタンパク質である。
【0073】
別の実施態様において、所望の生物活性を有する第2部分が、標的分子と選択的相互作用が可能である結合性ポリペプチドである、融合タンパク質又はコンジュゲートを提供する。第2の及び任意のさらなる部分は、標的分子、アルブミンが除外されないが典型的にはアルブミン以外の標的分子、と選択的相互作用(結合)が可能である結合性部分より選択される。
【0074】
このような結合性ポリペプチドは、抗体、及び抗体結合活性を実質的に保持しているそのフラグメント及びドメイン;マイクロボディ、マキシボディ、アビマー及び他の低分子量ジスルフィド結合タンパク質;並びにブドウ球菌プロテインA及びそのドメイン、他の3ヘリックスドメイン、リポカリン、アンキリンリピートドメイン、セルロース結合ドメイン、γクリスタリン、緑色蛍光タンパク質、ヒト細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4、クニッツ(Kunitz)ドメインのようなプロテアーゼ阻害剤、PDZドメイン、SH3ドメイン、ペプチドアプタマー、スタフィロコッカスヌクレアーゼ、テンダミスタット、フィブロネクチンタイプIIIドメイン、トランスフェリン、ジンクフィンガー及びコノトキシンからなる群より選択されるスカフォールド由来の結合タンパク質;からなる群より例えば選択され得る。
【0075】
いくつかの実施態様において、前記標的結合性ポリペプチドの結合のための標的分子は、アルツハイマー病のアミロイドβ(Aβ)ペプチド;他の疾患関連のアミロイドペプチド;細菌毒素及びヘビ毒のような毒素;フォンビルブランド(von Willebrand)因子のような血液凝固因子;IL-13のようなインターロイキン;ミオスタチン;TNF-α、TNF-α受容体、IL-1、IL-8及びIL-23のような炎症誘発性因子;C3及びC5のような補体因子;ヒスタミン及びIgEのような過敏症メディエーター(hypersensitivity mediator);CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD40、CD52、CD70、cMet、HER1、HER2、HER3、HER4、CAIX(炭酸脱水酵素IX)、CEA、IL-2受容体、MUC1、PSMA、TAG-72のような腫瘍関連抗原;並びにG-CSF、GM-CSF、成長ホルモン(GH)、インスリン及びソマトスタチンのような他の生体分子からなる群より選択され得る。
【0076】
当業者に理解されるように、第1局面に従うアルブミン結合ポリペプチドは、融合タンパク質において又は任意の他の部分のコンジュゲートパートナーとして有用であり得る。従って、治療活性ポリペプチド、結合ポリペプチド及び標的分子の上記リストは、なんら限定されるものとして解釈すべきではない。
【0077】
融合ポリペプチド又はコンジュゲートの作製についての他の可能性も意図される。従って、本発明の第1局面に従うアルブミン結合ポリペプチドは、標的結合に加えて又は標的結合の代わりに他の機能を示す、第2の又はさらなる部分へ共有結合され得る。一例は、1つ又はそれ以上のアルブミン結合ポリペプチドと、レポーター又はエフェクター部分として役立つ酵素活性ポリペプチドとの融合物である。融合タンパク質を形成するためにアルブミン結合ポリペプチドへカップリングされ得る、レポーター酵素の例は、当業者に公知であり、β-ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ホースラディシュペルオキシダーゼ及びカルボキシペプチダーゼなどの酵素を含む。本発明に従う融合ポリペプチド又はコンジュゲートの第2の及びさらなる部分についての他の選択肢は、同様に非限定的に、蛍光性ポリペプチド、例えば、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ及びそれらの変異体を含む。
【0078】
本発明のこの局面の一実施態様において、さらなる部分が、第2部分のものと同一であっても異なっていてもよい、さらなる所望の生物活性を有するポリペプチドからなる、融合タンパク質又はコンジュゲートを提供する。ある特定の実施態様において、第2部分は、治療活性ポリペプチド、ヒト内生酵素、ホルモン、成長因子、ケモカイン、サイトカイン、リンホカイン、IL-2、GLP-1、BNP、IL-1受容体アゴニスト、KGF、ステムジェン(登録商標)、GH、G-CSF、CTLA-4、ミオスタチン、第VII因子、第VIII因子、第IX因子及び第X因子、並びに細菌毒素、酵素及び活性化タンパク質からなる群より選択される非ヒト生物活性タンパク質より選択され得;さらなる部分は、上記に定義される、標的分子と選択的相互作用が可能である結合性ポリペプチドを含み得る。別の特定の実施態様において、第2の及びさらなる部分は、各々、上記に定義される、標的分子と選択的相互作用が可能である結合性ポリペプチドを含む。
【0079】
本発明に従うアルブミン結合ポリペプチドを組み込んでいる融合タンパク質又はコンジュゲートの本明細書中の説明に関して、第1の、第2の及びさらなる部分の呼称は、一方において本発明に従うアルブミン結合ポリペプチドと、他方において他の機能を示す部分との区別を明確にするために行うことに留意すべきである。これらの呼称は、融合タンパク質又はコンジュゲートのポリペプチド鎖中の異なるドメインの実際の順序を指すものではない。従って、例えば、前記第1部分は、制限なしに、融合タンパク質又はコンジュゲートのN末端、中央、又はC末端に現れ得る。
【0080】
本開示に従うコンジュゲートの一実施態様において、第2部分は、アルブミン結合ポリペプチドのN若しくはC末端に加えられたリジン若しくはシステイン残基を介して、又はそれらが存在するアルブミン結合ポリペプチド内の位置でリジン若しくはシステイン残基を介して、アルブミン結合ポリペプチドへコンジュゲートされる。例えば、アルブミン結合ポリペプチドが、上記に開示される46アミノ酸の配列を含む場合、コンジュゲーションは、X3、X6及びX14より選択される位置で行われ得る。コンジュゲーション部位が、46マー(46-mer)の位置X14のシステインのように、アルブミン結合ポリペプチドのアミノ酸配列内のものである場合、第2部分へのコンジュゲーションを可能にする目的のために、さらなるアミノ酸を、アルブミン結合ポリペプチドに加える必要はない。従って、この局面の一実施態様において、第2部分が、開示される46マーの位置X14に対応する前記第1部分の位置で存在する任意のシステイン残基のチオール基を介して第1部分へコンジュゲートされている、コンジュゲートを提供する。
【0081】
関連した局面において、細胞傷害性薬剤のような有機分子をさらに含む、本開示において定義されたアルブミン結合ポリペプチド、融合タンパク質又はコンジュゲートが提供される。第1局面に従うアルブミン結合ポリペプチドに融合若しくはコンジュゲートされ得るか、又は第2局面に従う融合タンパク質若しくはコンジュゲートと合わせられ得る、細胞傷害性薬剤の非限定的な例は、カリケアマイシン、オーリスタチン(auristatin)、ドキソルビシン、マイタンシノイド(maytansinoid)、タキソール、エクテイナシジン、ゲルダナマイシン、メトトレキセート及びそれらの誘導体、並びにそれらの組み合わせより選択される。以前に、直接アルブミンコンジュゲートを用いてさまざまな障害を治療する試みが行われた。このような直接アルブミンコンジュゲートが、例えば、癌においてドキソルビシンと共に(Kratz et al, J Med Chem 45: 5523-33, 2002)、そして関節リウマチにおいてメトトレキサートと共に(Wunder et al, J Immunol 170:4793-4801, 2003)活用された。アルブミン結合ポリペプチドは、それ自体で又は融合タンパク質若しくはコンジュゲート中の部分として、その高いアルブミン結合能力によってアルブミン複合体を構築する間接的な手段を提供し、従って、上に記載された試みと比較して、代替治療法を提供し得ることを理解すべきである。
【0082】
上記の局面は、例えば、ポリペプチドの検出の目的のために、第1局面に従うアルブミン結合ポリペプチド、又は第2局面に従う融合タンパク質若しくはコンジュゲート中に含まれるアルブミン結合ポリペプチドに、標識基、例えば蛍光色素及び金属、発色性色素、化学発光化合物及び生物発光タンパク質、酵素、放射性核種及び粒子からなる群より選択される標識が付与されたポリペプチドをさらに包含する。特に、本開示は、本明細書に記載されたアルブミン結合ポリペプチド、融合タンパク質又はコンジュゲートと放射性金属のような放射性核種との放射性キレート(radiochelate)からなる、放射標識ポリペプチドを包含する。
【0083】
標識アルブミン結合ポリペプチドが、本開示の第1局面に従うアルブミン結合ポリペプチド及び標識を含む実施態様において、標識ポリペプチドは、例えば、間接的に血清アルブミンを標識化するために用いてもよい。標識ポリペプチドと血清アルブミンとの間の強い会合のため、標識ポリペプチドは、例えば血管透過性及び血液プールの研究に用いてもよい。
【0084】
他の実施態様において、標識アルブミン結合ポリペプチドは、所望の生物活性を有する第2部分をさらに含む融合タンパク質又はコンジュゲート中の部分として存在する。標識は、場合によっては、アルブミン結合ポリペプチドにのみカップリングされ得、そして場合によっては、アルブミン結合ポリペプチド及びコンジュゲート又は融合タンパク質の第2部分の両方にカップリングされ得る。さらに、アルブミン結合部分ではなく第2部分のみへ標識をカップリングし得ることも可能である。従って、さらに別の実施態様において、前記標識が第2部分のみにカップリングされている、第2部分を含むアルブミン結合ポリペプチドを提供する。標識ポリペプチドについて言及する場合、これは、アルブミン結合ポリペプチド並びに第2の及び場合によりさらなる部分を含む融合タンパク質及びコンジュゲートを包含する、本明細書に記載されたポリペプチドの全ての局面への言及と理解しなければならない。従って、標識ポリペプチドは、アルブミン結合ポリペプチド及び、例えば、アルブミン結合ポリペプチドに共有結合され得るか若しくはキレート化され得る、治療的な放射性核種のみを含有し得るか、又はアルブミン結合ポリペプチド、治療的な放射性核種及び第2部分、例えば治療効果のような所望の生物活性を有する小分子を含有し得る。
【0085】
アルブミン結合ポリペプチド、融合タンパク質又はコンジュゲートが放射標識化される実施態様において、このような放射標識ポリペプチドは、放射性核種を含んでもよい。大多数の放射性核種は、金属性を有し、そして金属は、典型的にタンパク質及びペプチド中に存在する元素と安定な共有結合を形成することができない。このため、放射性金属によるタンパク質及びペプチドの標識化は、キレート剤、すなわち、金属イオンと共に、キレートと称する、非共有結合性化合物を形成する多座配位子を用いて実施される。アルブミン結合ポリペプチド、融合タンパク質又はコンジュゲートの実施態様において、放射性核種の取り込みは、キレート化環境の提供を通して可能となり、それにより放射性核種は、ポリペプチドに配位結合、キレート化又は錯体形成され得る。
【0086】
キレート剤の一例は、ポリアミノポリカルボキシレートタイプのキレート剤である。このようなポリアミノポリカルボキシレートキレート剤は、2種類:大環状及び非環状キレート剤に分けることができる。
【0087】
一実施態様において、アルブミン結合ポリペプチド、融合タンパク質又はコンジュゲートは、システイン残基のチオール基又はリジン残基のイプシロンアミン基を介してアルブミン結合ポリペプチドにコンジュゲートされたポリアミノポリカルボキシレートキレート剤によって提供されたキレート化環境を含む。
【0088】
インジウム、ガリウム、イットリウム、ビスマス、放射性アクチニド及び放射性ランタニドの放射性同位体について最も一般的に用いられる大環状キレート剤は、DOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)の種々の誘導体である。一実施態様において、アルブミン結合ポリペプチド、融合タンパク質又はコンジュゲートのキレート化環境は、DOTA又はその誘導体によって提供される。より具体的には、一実施態様において、本開示によって包含されるキレート化ポリペプチドは、DOTA誘導体である1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリス-酢酸-10-マレイミドエチルアセトアミド(マレイミドモノアミド-DOTA)と前記ポリペプチドとを反応させることによって得られる。
【0089】
さらに、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)及びその誘導体をキレート剤として使用してもよい。従って、一実施態様において、ポリアミノポリカルボキシレートキレート剤が1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸又はその誘導体である、アルブミン結合ポリペプチド、融合タンパク質又はコンジュゲートを提供する。
【0090】
最も一般的に用いられる非環式ポリアミノポリカルボキシレートキレート剤は、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)の種々の誘導体である。従って、ジエチレントリアミン五酢酸又はその誘導体によって提供されるキレート化環境を有するポリペプチドも、本開示によって包含される。
【0091】
本発明の第3局面において、本明細書に記載のアルブミン結合ポリペプチド又は融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0092】
さらに、ポリヌクレオチドを発現させる工程を含む、上述のアルブミン結合ポリペプチド又は融合タンパク質を製造する方法、ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、及び発現ベクターを含む宿主細胞を包含する。
【0093】
さらに、前記発現ベクターからの前記ポリペプチドの発現を可能にする条件下で前記宿主細胞を培養する工程、及びポリペプチドを単離する工程を含む、ポリペプチドを製造する方法を包含する。
【0094】
あるいは、本開示のアルブミン結合ポリペプチドは、保護された反応性側鎖を有するアミノ酸及び/又はアミノ酸誘導体を用いる非生物学的ペプチド合成によって製造してもよく、非生物学的ペプチド合成は、
アミノ酸及び/又はアミノ酸誘導体を段階的にカップリングして、保護された反応性側鎖を有する第1局面に従うポリペプチドを形成する工程、
ポリペプチドの反応性側鎖から保護基を除去する工程、及び
水溶液中でポリペプチドを折り畳む工程
を含む。
【0095】
本発明を、さまざまな例となる実施態様に関して記載してきたが、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更を行うことができ、そしてそれらの要素を同等のものと置き換えることができることは、当業者によって理解される。さらに、その必須の範囲を逸脱することなく、多くの改変を行って特定の状況又は分子を本発明の教示に適合させることができる。従って、本発明は、本発明を実施するために考えられた任意の特定の実施態様に限定されることなく、しかし、本発明は、添付の特許請求の範囲内にあるすべての実施態様を包含するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0096】
図1】本発明のアルブミン結合ポリペプチド中に含まれるアルブミン結合モチーフの例(配列番号1〜8)、本発明に従うアルブミン結合ポリペプチドの例(配列番号9〜24)並びに対照ポリペプチド(配列番号25(PEP12381)、26(PEP12379)、27(PEP07843)及び28(PEP06923))のアミノ酸配列のリストである。
図2-1】熱処理前及び後の、記載のアルブミン結合ポリペプチドPEP12379(配列番号26)、PEP12380(配列番号17)、PEP12381(配列番号25)及びPEP07843(配列番号27)の4つのCDスペクトルのオーバーレイを示す。
図2-2】図2−1の続き。
図3】クロストリパインと共に22時間までインキュベートした、記載のアルブミン結合ポリペプチドのサンプルのSDS-PAGE分析の結果を示す。
図4】0.2 Uクロストリパイン/mgポリペプチドと共に20時間までインキュベートした、記載のアルブミン結合ポリペプチドのサンプルのLC/MS分析の結果を示す。
図5】5 Uクロストリパイン/mgポリペプチドと共に22時間までインキュベートした、記載のアルブミン結合ポリペプチドのサンプルのLC/MS分析の結果を示す。
図6】5 Uクロストリパイン/mgポリペプチドと共に22時間までインキュベートした、PEP12380(配列番号17)のサンプルについての代表的なLC/MCクロマトグラムを示す。
図7】ヒト血清アルブミンへの記載のアルブミン結合ポリペプチドPEP12379(配列番号26)の結合を調べるためにBiacore(登録商標)機器において行った結合分析の結果を示す。
図8】ヒト血清アルブミンへの記載のアルブミン結合ポリペプチドPEP12380(配列番号17)の結合を調べるためにBiacore(登録商標)機器において行った結合分析の結果を示す。
図9】ヒト血清アルブミンへの記載のアルブミン結合ポリペプチドPEP12381(配列番号25)の結合を調べるためにBiacore(登録商標)機器において行った結合分析の結果を示す。
図10】ヒト血清アルブミンへの記載のアルブミン結合ポリペプチドPEP07843(配列番号27)の結合を調べるためにBiacore(登録商標)機器において行った結合分析の結果を示す。
図11】ヒト血清アルブミンへの記載のアルブミン結合ポリペプチドPEP06923(配列番号28)の結合を調べるためにBiacore(登録商標)機器において行った結合分析の結果を示す。
【0097】
ここで、本発明に従って行った実験の非限定的な説明を通して本発明をさらに説明する。特に明記しない限り、従来の化学及び分子生物学の方法を一貫して用いた。
【実施例】
【0098】
実施例
以下に記載の研究の目的は、アルブミン結合ドメイン配列内のタンパク質を切断することなく、酵素クロストリパイン(ArgC)でのアルブミン結合ドメインを含有する融合タンパク質の切断を可能にすることであった。ここで、本発明者らは、アルブミン結合ポリペプチドPEP07843(配列番号27)の3つの変異体を設計し、ArgからLysへの置換を特徴とする本発明の変異体PEP12380(配列番号17)が、他の試験した変異体と比較して、プロテアーゼ安定性及びアルブミン結合活性に関して予想外に優れた特性を示すことを示す。
【0099】
本明細書において使用する場合、PEPXXXXXという用語は、本発明の第1局面に関連して定義されたように、アミノ酸残基46個を有し、さらにN末端側にGSS伸長を有する、アルブミン結合ポリペプチドを指す。従って、特に明記しない限り、アミノ酸位置の番号付けは、上述の46アミノ酸ポリペプチド内のアミノ酸残基の位置を指す。
【0100】
実施例1
アルブミン結合ポリペプチド変異体のクローニング、発現及び精製
概要
この実施例において、連鎖球菌菌株G148のプロテインG由来のGA3ドメインから誘導した、アルブミン結合ポリペプチドPEP07843(配列番号27)の3つの変異体を、23位の単一のArgを別のアミノ酸残基で置換することによって作製した。
【0101】
3つの変異体は以下の通りであった:R23N置換を有するPEP12379(配列番号26)、R23K置換を有するPEP12380(配列番号17)、及びR23S置換を有するPEP12381(配列番号25)。
【0102】
ポリペプチドのアミノ酸配列を図1に列挙する。
【0103】
ABD変異体のクローニング及び発現
本質的にWO 2012/004384の実施例1に記載されるように、標準方法を使用して、ABD変異体をクローニングし、大腸菌中で発現させた。
【0104】
ABD変異体の分析
得られたABD変異体をSDS-PAGEによって分析した。SDS-PAGE分析のために、培養由来のサンプル及び最終精製アルブミン結合ポリペプチド変異体由来のサンプルを、NuPAGE LDS
Sample Buffer (Invitrogen)と混合し、70℃で15分間インキュベートし、NuPAGE 4-12 % Bis-Tris Gels (Invitrogen)上へ装填した。分子量マーカーとしてSharp Prestained Standard (Invitrogen)を用い、そして染色のためPhastGel BlueR (GE Healthcare)を用いて、XCell II SureLock Electrophoresis Cell (Novex)中で、NuPAGE MES SDS Running
Buffer (Invitrogen)によりゲルを動かした。
【0105】
本質的にWO 2012/004384の実施例1に記載されるように、緩衝液交換のためにアフィニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー及びサイズ排除クロマトグラフィーを使用する標準クロマトグラフィー方法によって、全てのABD変異体を精製した。
【0106】
結果
SDS-PAGEによる発現分析によって、いかなる量も不溶性フラクション中になく全てのABD変異体が溶けていたことが示された。精製されたタンパク質を-80℃にて溶液中で保存した。凍結融解分析によって、沈殿が視覚的に検出されることなく全てのABD変異体の良好な可溶性が示された。
【0107】
実施例2
円偏光二色性分析
概要
この実施例において、実施例1において得られたABD変異体の二次構造を分析し、それらの融解温度(Tm)を測定した。
【0108】
可変温度測定(下記を参照のこと)の前及び後に195〜250 nmのスキャンを使用して円偏光二色性(CD)分光学によって、ABD変異体の二次構造を分析した。精製されたアルブミン結合ポリペプチド変異体を1xPBS中で最終濃度0.5 mg/mlへ希釈した。円偏光二色性(CD)分析を、光路長1 mmのセル中、Jasco J-810分光偏光計において実施した。αヘリックスタンパク質は208及び222 nmで典型的な最小値を示す。
【0109】
可変温度測定を使用して融解温度Tmを測定した。これらの測定において、温度勾配5℃/分で、20℃から90℃まで221 nmで吸光度を測定した。
【0110】
結果
温度プロットに対するCDにおける転移の中間点を決定することによって、ABD変異体の融解温度を算出した。結果を表2に要約する。
【0111】
3つのABD変異体の全てが、PEP07843と比較して2〜6℃僅かに低いTmを示した。PEP12380は、3つの変異体のうちて最も高い熱的安定性を示した(表2)。
【0112】
タンパク質の可能性のある熱変性を検出するために、熱処理前及び後のCDスペクトルを比較した。全てのABD変異体が、αヘリックスタンパク質について典型的であるように、208及び222 nmで最小値を示した。それらはまた熱処理前及び後で同一のスペクトルを示し、このことは、新規のABD変異体が不可逆的に変性されなかったことを示している。図2は、新規のABD変異体及び比較のためのPEP07843(配列番号27)のCDスペクトルを示す。
【0113】
【表1】
【0114】
実施例3
クロストリパイン切断
概要
実施例1において得られたABD変異体のクロストリパイン切断を評価するために、3つの新しいABD変異体及び対照PEP07843をクロストリパインと共にインキュベートし、反応を定時点で中止した。未切断ABD変異体のままであるパーセンテージをSDS-PAGE及びLC/MS分析によって分析した(実施例4)。
【0115】
クロストリパイン切断
PEP07843及び3つの新しい変異体の酵素消化を、25 mM NaPi緩衝液pH 7.6、150 mM NaCl、1 mM CaAc、2.5 mM DTT中で、Worthington(No. LS001641)製のクロストリパインを使用して行った。クロストリパインを実験の開始前に新たに溶解した。
【0116】
第1実験において、0.2 Uクロストリパイン/mg ABD変異体を25℃で20時間までインキュベートし、しかし、ごく低レベルの切断がSDS-PAGE及びLC/MS分析によって検出された。
【0117】
続いての実験において、クロストリパイン量を5 U/mg ABD変異体へ増加させ、600 rpmで穏やかに振盪しながらサーモミキサー中において25℃で0、1、2、4、6、8及び22時間までサンプルをインキュベートした。
【0118】
反応を4x SDSサンプルバッファーの添加によって中止し、続いて、70℃で15分間インキュベーションしたか(SDS PAGE分析のため)、又はトリフルオロ酢酸(TFA)を最終濃度0.3 %まで添加し、pHをおよそ2へ低下させ、-80℃で凍結させた(LC/MS分析のため)。
【0119】
対照は、クロストリパインを含まず、かつ、クロストリパイン活性を妨げるDTTを省いた反応であった。
【0120】
22時間までクロストリパインと共にインキュベートしたサンプルの分析を、Invitrogen製のNuPAGE 4-12%ゲルを使用してSDS-PAGEによって行った。(図3を参照のこと)。図3において、レーンSは、シャープな分子量マーカー標準(分子量3.5、10、15、20、30、40、50、60、80、110及び160 kDa)を示し、レーンBは、クロストリパインを含むがABD変異体を含まないブランクサンプルを示し、レーン0〜22は、記載のインキュベーション時間(時間)で採取したABD変異体サンプルを示す。
【0121】
結果
結果を表3に要約する。
【0122】
【表2】
【0123】
従って、2時間のクロストリパインインキュベーション後、PEP07843ポリペプチドのおよそ75 %が切断され、4〜22時間のインキュベーション後、100 %が切断された。変異体PEP12379(配列番号26)及びPEP12381(配列番号25)は両方とも、PEP07843と比較してクロストリパイン切断に対してより耐性であったが、22時間のインキュベーション後に、それぞれ、これらの変異体のおよそ90 %及び100 %が消化された。PEP12380(配列番号17)は、22時間のクロストリパインインキュベーション後におよそ50 %のみが切断されていたという事実によって判断されるように、切断に対して最も高いレベルの耐性を示した。
【0124】
実施例4
LC/MS分析
概要
実施例1において得られたABD変異体のクロストリパイン切断のLC/MS-分析を高い及び低い酵素濃度で行い、これは、時間と共に徐々の全長ペプチドの減少及び分解産物の増加を示した。分解産物を質量分析によって同定した。
【0125】
API-ESI及び単一四重極型(single quadruple)質量分析器を備えた、Agilent 1100 LC/MSDシステムを使用して、LC/MS分析を行った。各切断混合物10μlを、流速0.5 ml/分で、Zorbax 300SB-C8 Narrow-Boreカラム(2.1 x 150 mm, 3.5μm, Agilent Technologies)上に注入した。0.5 ml/分で15分間、10〜70 %の溶液Bの線状勾配を用いて溶離を行った。分離を30℃で行った。280及び220nmでイオンシグナル及び吸光度をモニターした。
【0126】
結果
図4及び5は、ABD変異体1 mg当たりそれぞれクロストリパイン0.2 Uと共に20時間まで及び5 Uと共に22時間までインキュベートしたABD変異体サンプルのLC/MS分析を示す。主要ピークを積分し、残存しているt = 0でのインタクトなABD変異体の%へ面積を変換した。
【0127】
得られた結果を表4及び5に列挙し、これらは、異なる時間のクロストリパイン処理後の残存している% ABD変異体を示す。低い及び高いクロストリパイン濃度の両方で、PEP12380は、他の試験したポリペプチドと比較して、経時的な分解産物の最も低い増加を示した。
【0128】
【表3】
【0129】
【表4】
【0130】
図6は、5 Uクロストリパイン/mgポリペプチドと共に22時間までインキュベートしたPEP12380サンプルについての典型的なLC/MSクロマトグラムを示す。同様の結果が、他のABD変異体について得られた。クロマトグラムは、時間と共に徐々の全長ペプチドの減少及び分解産物の増加を示した。
【0131】
主要ピークを積分し、残存しているt = 0でのインタクトなABDの%へ面積を変換した。上述のLC/MS分析を分析のために使用した。
【0132】
実施例5
Biacore分析
概要
ヒト血清アルブミン(HSA)、ラット血清アルブミン(RSA)、カニクイザル血清アルブミン(CSA)及びマウス血清アルブミン(MSA)への、実施例1において得られたABD変異体の結合を、Biacore2000機器を使用して表面プラスモン共鳴によって分析した。
【0133】
材料及び方法
Biacore2000機器(GE Healthcare)におけるBiosensor分析を、製造者の推奨に従ってCM-5チップ(研究グレード;GE Healthcare)の表面のカルボキシル化されたデキストラン層上へのアミンカップリングによって固定化された、HSA(Albucult(登録商標)、Novozymes)、CSA(カニクイザル血清からインハウスで精製)、RSA(Sigma-Aldrich、カタログ番号A6272)及びMSA(Sigma-Aldrich、カタログ番号A3559)で行った。
【0134】
ABD変異体を分析物として使用し、3つの分析物濃度(2.5、10及び40 nM)でチップ上に二重で注入した。会合段階は5分間であり、長い解離段階(60分間)が続き、少なくとも部分的にABD変異体の遅いオフ速度(off-rate)の原因となった。しかし、ABD変異体の非常に遅いオフ速度に起因して、KD値を含む正確な動態パラメータの測定のためにBiacore2000を使用することは可能ではなかった。従って、算出されたKD値は、この実験シリーズにおける比較のためにのみ使用することができ、血清アルブミンへの結合についての実際のKDを反映しなかった。従って、全てのKDを相対的KD値としてのみ与える。
【0135】
BiaEvaluationソフトウェア(GE Healthcare)を用いて結果を分析した。リガンド表面の曲線からブランク表面及びバッファー注入の曲線を減算した。
【0136】
結果
Biacore 2000機器は、技術的な制限があり、非常に高い親和性の測定が妨げられた。従って、Biacore研究の目的は、アルブミンに対するアルブミン結合ポリペプチド変異体の親和性の正確な動態パラメータを決定することではなかった。しかし、結果からアルブミンに対するこれらのABD変異体の相対的親和性の定量的評価を得た。参照表面及びバッファー注入の減算後、BIAevaluationソフトウェアを用い、物質移動について補正し、そして局所的パラメータとしてRUmaxを設定して曲線を1:1(Langmuir)結合モデルに適合させた。HSAへのABD変異体結合のセンサーグラムを図7〜11に示す。同様の結果がRSA、CSA及びMSAについて得られた。
【0137】
HSAへのABD変異体の結合についての見かけの動態パラメータ(KD、ka (kon)及びkd (koff))の要約を表6に与える。同様の結果がRSA、CSA及びMSAについて得られた。表7は、PEP12380及びPEP07843についての異なる種由来の血清アルブミンへの結合を示す。同様の傾向が他のABD変異体について得られた。
【0138】
【表5】
【0139】
【表6】
【0140】
結論として、PEP12380変異体は、上記の動態パラメータによって判断されるように、PEP07843変異体と同様のアルブミン結合特性を示し、一方、変異体PEP12379及びPEP12381は、アルブミンに対してより低い結合親和性を示した。重要なことには、PEP12380は、PEP12379、PEP12381及びPEP07843の全てと比較して、プロテアーゼ安定性に関して優れた特性を示した。
【0141】
実施態様の項目化リスト
1.アルブミン結合モチーフ[BM]を含むアルブミン結合ポリペプチドであって、このモチーフが、アミノ酸配列:
GVSDFYKKLI XaKAKTVEGVE ALKXbXcI
からなり、
ここで、互いに独立して、
Xaは、D及びEより選択され;
Xbは、D及びEより選択され;かつ
Xcは、A及びEより選択される、アルブミン結合ポリペプチド。
【0142】
2.XaがDである、項1に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0143】
3.XbがDである、項1〜2のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0144】
4.XcがAである、項1〜3のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0145】
5.配列が配列番号1である、項1に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0146】
6.前記アルブミン結合モチーフが、3ヘリックスバンドルタンパク質ドメインの一部を形成する、項1〜5のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0147】
7.前記3ヘリックスバンドルタンパク質ドメインが、細菌受容体タンパク質の3ヘリックスドメインからなる群より選択される、項6に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0148】
8.前記細菌受容体タンパク質が、連鎖球菌属、ペプトストレプトコッカス属及びフィネゴルディア属の種由来のアルブミン結合受容体タンパク質からなる群より選択される、項7に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0149】
9.前記アルブミン結合受容体タンパク質が、プロテインG;MAG;ZAG;PPL;及びPABからなる群より選択される、項8に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0150】
10.前記アルブミン結合受容体タンパク質がプロテインGである、項9に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0151】
11.前記アルブミン結合受容体タンパク質が、連鎖球菌菌株G148由来のプロテインGである、項10に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0152】
12.前記3ヘリックスバンドルタンパク質ドメインが、連鎖球菌菌株G148由来のプロテインGのドメインGA1、ドメインGA2及びドメインGA3からなる群より選択される、項11に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0153】
13.前記3ヘリックスバンドルタンパク質ドメインが、連鎖球菌菌株G148由来のプロテインGのドメインGA3である、項12に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0154】
14.アミノ酸配列:
LAX3AKX6X7ANX10 ELDX14Y-[BM]-LX43X44LP
を含み、
ここで、
[BM]は、項1〜5のいずれか1項に記載のアルブミン結合モチーフであり、
かつ、互いに独立して、
X3は、C、E、Q及びSより選択され;
X6は、C、E及びSより選択され;
X7は、A及びSより選択され;
X10は、A、R及びSより選択され;
X14は、A、C、K及びSより選択され;
X43は、A及びKより選択され;かつ
X44は、A、E及びSより選択される、項6に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0155】
15.X3がEである、項14に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0156】
16.X6がEである、項14〜15のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0157】
17.X7がAである、項14〜16のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0158】
18.X10がAである、項14〜17のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0159】
19.X14がSである、項14〜18のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0160】
20.X43がAである、項14〜19のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0161】
21.X44がAである、項14〜20のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0162】
22.そのアミノ酸配列が、以下より選択される1つの定義:
i)配列番号9〜16より選択される;
ii)配列番号9〜16より選択される配列に対して93%以上の同一性を有するアミノ酸配列であり、但し、配列番号9〜16中の23位に対応する位置のアミノ酸がKである、
を満たす配列を含む、アルブミン結合ポリペプチド。
【0163】
23.そのアミノ酸配列が、以下より選択される1つの定義:
iii)配列番号9である;
iv)配列番号9に対して93%以上の同一性を有するアミノ酸配列であり、但し、配列番号9中の23位に対応する位置のアミノ酸がKである、
を満たす配列を含む、項22に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0164】
24.項14〜23のいずれか1項に記載のポリペプチド配列のN末端側に少なくとも1つのセリン残基をさらに含む、項14〜23のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0165】
25.項14〜24のいずれか1項に記載のポリペプチド配列のN末端側にグリシン残基をさらに含む、項14〜24のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0166】
26.項14〜25のいずれか1項に記載のポリペプチド配列のN末端側にアミノ酸GSSをさらに含む、項24及び25のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0167】
27.そのアミノ酸配列が配列番号17〜24より選択される、項26に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0168】
28.そのアミノ酸配列が配列番号17である、項27に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0169】
29.項14〜28のいずれか1項に記載のポリペプチド配列のN末端側にシステイン残基をさらに含む、項14〜28のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0170】
30.項14〜29のいずれか1項に記載のポリペプチド配列のC末端側にリジン残基をさらに含む、項14〜29のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0171】
31.項14〜30のいずれか1項に記載のポリペプチド配列のC末端側にグリシン残基をさらに含む、項14〜30のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0172】
32.項14〜31のいずれか1項に記載のポリペプチド配列のC末端側にシステイン残基をさらに含む、項14〜31のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0173】
33.2つ以下のシステイン残基を含む、項1〜32のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0174】
34.1つ以下のシステイン残基を含む、項33に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0175】
35.相互作用のKD値が多くとも1x10-9 M、例えば多くとも1x10-10 M、例えば多くとも1x10-11 M、例えば多くとも1x10-12 M、例えば多くとも1x10-13 M、例えば多くとも1x10-14 Mとなるように、アルブミン結合ポリペプチドがアルブミンへ結合する、項1〜34のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチド。
【0176】
36.
i)項1〜35のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチドからなる第1部分;及び
ii)所望の生物活性を有するポリペプチドからなる第2部分。
を含む、融合タンパク質又はコンジュゲート。
【0177】
37.前記所望の生物活性が治療活性である、項36に記載の融合タンパク質又はコンジュゲート。
【0178】
38.前記所望の生物活性が結合活性である、項36に記載の融合タンパク質又はコンジュゲート。
【0179】
39.前記所望の生物活性が酵素活性である、項36に記載の融合タンパク質又はコンジュゲート。
【0180】
40.所望の生物活性を有する第2部分が、治療活性ポリペプチドである、項37に記載の融合タンパク質又はコンジュゲート。
【0181】
41.所望の生物活性を有する第2部分が、ヒト内生酵素、ホルモン、成長因子、ケモカイン、サイトカイン及びリンホカインからなる群より選択される、項36に記載の融合タンパク質又はコンジュゲート。
【0182】
42.第2部分が、IL-2、GLP-1、BNP、IL-1受容体アゴニスト、KGF、ステムジェン(Stemgen)(登録商標)、GH、G-CSF、CTLA-4、ミオスタチン、第VII因子、第VIII因子、第IX因子及び第X因子からなる群より選択される、項41に記載の融合タンパク質又はコンジュゲート。
【0183】
43.所望の生物活性を有する第2部分が、細菌毒素、酵素及び活性化タンパク質からなる群より選択される、非ヒト生物活性タンパク質である、項36に記載の融合タンパク質又はコンジュゲート。
【0184】
44.所望の生物活性を有する第2部分が、標的分子と選択的相互作用が可能である結合性ポリペプチドである、項36に記載の融合タンパク質又はコンジュゲート。
【0185】
45.結合性ポリペプチドが、抗体、及び抗体結合活性を実質的に保持しているそのフラグメント及びドメイン;マイクロボディ、マキシボディ、アビマー及び他の低分子量ジスルフィド結合タンパク質;並びにブドウ球菌プロテインA及びそのドメイン、他の3ヘリックスドメイン、リポカリン、アンキリンリピートドメイン、セルロース結合ドメイン、γクリスタリン、緑色蛍光タンパク質、ヒト細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4、クニッツドメインのようなプロテアーゼ阻害剤、PDZドメイン、SH3ドメイン、ペプチドアプタマー、スタフィロコッカスヌクレアーゼ、テンダミスタット、フィブロネクチンタイプIIIドメイン、トランスフェリン、ジンクフィンガー及びコノトキシンからなる群より選択されるスカフォールド由来の結合タンパク質;からなる群より選択される、項44に記載の融合タンパク質又はコンジュゲート。
【0186】
46.前記標的分子が、アルツハイマー病のAβペプチド;他の疾患関連のアミロイドペプチド;細菌毒素及びヘビ毒のような毒素;フォンビルブランド因子のような血液凝固因子;IL-13のようなインターロイキン;ミオスタチン;TNF-α、TNF-α受容体、IL-1、IL-23及びIL-8のような炎症誘発性因子;C3及びC5のような補体因子;ヒスタミン及びIgEのような過敏症メディエーター;CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD40、CD52、CD70、cMet、HER1、HER2、HER3、HER4、CAIX、CEA、IL-2受容体、MUC1、PSMA、TAG-72のような腫瘍関連抗原、並びにG-CSF、GM-CSF、GH、インスリン及びソマトスタチンのような他の生体分子からなる群より選択される、項44及び45のいずれか1項に記載の融合タンパク質又はコンジュゲート。
【0187】
47.第2部分のものと同一であっても異なっていてもよい、さらなる所望の生物活性を有するポリペプチドからなるさらなる部分を含む、項36〜46のいずれか1項に記載の融合タンパク質又はコンジュゲート。
【0188】
48.第2部分が項40〜43のいずれか1項に記載される通りであり、さらなる部分が項44〜46のいずれか1項に記載される通りである、項47に記載の融合タンパク質又はコンジュゲート。
【0189】
49.第2部分及びさらなる部分が、各々個々に、項44〜46のいずれか1項に記載される通りである、項47に記載の融合タンパク質又はコンジュゲート。
【0190】
50.第2部分が、例えば、項14〜35のいずれか1項に記載の第1部分の位置X14で、存在する任意のシステイン残基のチオール基を介して項1〜35のいずれか1項に記載の第1部分へコンジュゲートされている、項36〜49のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【0191】
51.細胞傷害性薬剤をさらに含む、項1〜50のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチド、融合タンパク質又はコンジュゲート。
【0192】
52.細胞傷害性薬剤が、カリケアマイシン、オーリスタチン、ドキソルビシン、マイタンシノイド、タキソール、エクテイナシジン、ゲルダナマイシン、メトトレキセート及びそれらの誘導体、並びにそれらの組み合わせより選択される、項51に記載のアルブミン結合ポリペプチド、融合タンパク質又はコンジュゲート。
【0193】
53.標識をさらに含む、項1〜52のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチド、融合タンパク質又はコンジュゲート。
【0194】
54.前記標識が、蛍光色素及び金属、発色性色素、化学発光化合物及び生物発光タンパク質、酵素、放射性核種及び粒子からなる群より選択される、項53に記載のアルブミン結合ポリペプチド、融合タンパク質又はコンジュゲート。
【0195】
55.システイン残基のチオール基又はリジン残基のアミン基を介してアルブミン結合ポリペプチドにコンジュゲートされたポリアミノポリカルボキシレートキレート剤によって提供されたキレート化環境を含む、項54に記載のアルブミン結合ポリペプチド、融合タンパク質又はコンジュゲート。
【0196】
56.ポリアミノポリカルボキシレートキレート剤が、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸又はその誘導体である、項55に記載のアルブミン結合ポリペプチド、融合タンパク質又はコンジュゲート。
【0197】
57.1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸誘導体が、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリス-酢酸-10-マレイミドエチルアセトアミドである、項56に記載のアルブミン結合ポリペプチド、融合タンパク質又はコンジュゲート。
【0198】
58.ポリアミノポリカルボキシレートキレート剤が、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸又はその誘導体である、項55に記載のアルブミン結合ポリペプチド、融合タンパク質又はコンジュゲート。
【0199】
59.ポリアミノポリカルボキシレートキレート剤が、ジエチレントリアミン五酢酸又はその誘導体である、項55に記載のアルブミン結合ポリペプチド、融合タンパク質又はコンジュゲート。
【0200】
60.項1〜49のいずれか1項に記載のアルブミン結合ポリペプチド又は融合タンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
【0201】
61.項60に記載のポリヌクレオチドを発現させる工程を含む、項1〜49のいずれか1項に記載のポリペプチドを製造する方法。
【0202】
62.項60に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【0203】
63.項62に記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【0204】
64.
i)前記発現ベクターからの前記ポリペプチドの発現を可能にする条件下で項63に記載の宿主細胞を培養する工程、及び
ii)ポリペプチドを単離する工程
を含む、項1〜49のいずれか1項に記載のポリペプチドを製造する方法。
図1
図2-1】
図2-2】
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]