【実施例1】
【0022】
図1に示す第1実施例の取付金具1は、同図には図示しない屋根面に形成される突状部を挟んで対向状に配設する二つの部材2,3からなり、前記二つの部材2,3は、それぞれ一面側(図面の左側面)と他面側(図面の右側面)とで異なる二種の挟持用受部21A,21B,31A,31Bを備え、一方の部材2に外設部材の取付部222を有する。
なお、図中左側に位置する部材2を第一部材とし、図中右側に位置する部材3を第二部材とする。
【0023】
図1(a)は前記取付金具1の正面図であり、同図(b)はその左側面図、同図(c)はその右側面図、同図(d)はその平面図を示している。
前記取付金具1を構成する第一部材2は、図中左側に位置する部材であって、第二部材3は、図中右側に位置する部材であり、それぞれの左側面を一面側(表側)、右側面を他面側(裏側)としたので、この第1実施例は第一部材2の他面側の挟持用受部21Bと第二部材3の一面側の挟持用受部31Aとが対向状に配設されて同図には図示しない突状部を挟み込む構成である。
【0024】
前記第一部材2は、一面側及び他面側(左方及び右方)に突出する上面部221,221を備える上部22と略鉛直状の縦部21とからなるピース材であり、前記縦部21の一面側(図面の左側)に挟持用受部21Aが形成され、他面側(図面の右側)に挟持用受部21Bが形成される構成である。
これらの挟持用受部21A,21Bについては、
図1(f)に拡大して示したが、一面側の挟持用受部21Aは、上方から順に略平坦状部分211と、上端が外方へ膨出して下方に向かって傾斜する中間凸部分212と、外方へ突出する下方凸部分213と、からなり、長さ割合は概略10:12:1である。他面側の挟持用受部21Bは、上方から順に略平坦状部分214と、略矩形状に外方へ突出する下方凸部分215と、略平坦状の短凹部分216と、からなり、長さ割合は概略20:2:1である。
【0025】
また、この第一部材2の縦部21の上方には、連結ボルト1bを挿通する横孔である通孔217が設けられ、更にその上方には、略三角形状に突出する凸部218,218、219,219が両面に形成され、上部22の略中央には、上方が開放してその内部に取付ボルト(図示せず)の頭部を収容可能な溝部222が形成され、該溝部222が外設部材の取付部となっている。
【0026】
前記第二部材3は、略水平状の横片部32と略鉛直状の縦部31とからなるピース材であり、前記縦部31の一面側に挟持用受部31Aが形成され、他面側に挟持用受部31Bが形成される構成である。
これらの挟持用受部31A,31Bについては、
図1(f)に拡大して示したが、一面側の挟持用受部31Aは、前記第一部材2の他面側の挟持用受部21Bと対称状の構成を有し、上方から順に略平坦状部分311と、略矩形状に外方へ突出する下方凸部分312と、略平坦状の短凹部分313と、からなり、長さ割合は概略20:2:1である。他面側の挟持用受部31Bは、前記第一部材2の一面側の挟持用受部21Aと対称状の構成を有し、上方から順に略平坦状部分314と、上端が外方へ膨出して下方に向かって傾斜する中間凸部分315と、外方へ突出する下方凸部分316と、からなり、長さ割合は概略10:12:1である。
【0027】
また、この第二部材3の縦部31の上方には、連結ボルト1bを挿通する横孔である通孔317が設けられている。
そして、前記第一部材2と前記第二部材3とを連結ボルト1bを用いて連結する。その際には、連結ボルト1bを第一部材2側から前記通孔217,317に挿入して第二部材3側へ突出させた雌ネジ部分12に、座金1e、スプリングワッシャー1dを介してナット1cを締め付けるが、第二部材3の横片部32の端部が第一部材2の凸部218,219間に嵌合するので、下方凸部分215,312へボルト・ナットの締着力が確実に伝わり、また、必要以上の締め付けが防止される。
【0028】
このように
図1に示す第1実施例の取付金具1は、前記第一部材2の挟持用受部21Bと前記第二部材3の挟持用受部31Aとが略対称状に形成されており、更に前記第一部材2の挟持用受部21Aと前記第二部材3の挟持用受部31Bとが略対称状に形成されているので、2種類の組み合わせが存在するものである。
そして、それぞれの部材(第一部材2及び第二部材3)を反転させるだけの極めて簡易な操作にて複数種のハゼ部等の突状部(の形状)に応じた挟持用受部を選択することができる。
【0029】
図2(a)は、屋根面に形成される一例の突状部7Aに対し、前記第1実施例の取付金具1を取り付けた状態を示すものであって、
図2(b)はその組み付け状態の途中の状態を示し、
図2(b)は前記取付金具1を取り付ける以前の突状部7Aのみを示している。
【0030】
前記突状部7Aは、図示しない下地上に固定した略L字状の吊子(保持部材)5Aと、その左右に面板部41の側縁42を立ち上げて内側へ折り返した(折返し片43)構成の屋根材4A,4Aと、該屋根材4A,4Aの側縁42,42及び折返し片43,43に上方から被せるように配設したカバー材6Aと、からなる構成である。なお、図中、51は下地上に沿わせる略水平状の固定片(横片)であり、52は略鉛直状の起立片(縦片)であり、保持部材5Aの縦片52に左右から屋根材4A,4Aの側縁42,42を沿わせた状態で、上方からカバー材6Aを弾性的に嵌合させて取り付けたものである。前記カバー材6Aは、取付状態の形状より、左右の脚片61,61の下端62,62が近接するように成形されるので、上方から取り付ける際に弾性に抗して拡開され、取り付けた状態でも内側への弾性反発力は作用している。
【0031】
そして、前記構成の突状部7Aに対し、前記第1実施例の取付金具1は、一方側(左側)に配置する第一部材2の他面側の挟持用受部21Bと他方側(右側)に配置する第二部材3の一方側の挟持用受部31Aとを対向状に配置させ、連結ボルト1bにナット1cを締め付けることにより、挟持状に保持している。
具体的に前記取付金具1は、カバー材6Aの左右の脚片61,61に挟持用受部21B,31Aの略平坦状部分214,311が密接状に沿い、カバー材6Aが覆っていない屋根材4A,4Aの側縁42,42に下方凸部分215,312が密接状に沿う状態で保持している。この状態では、例え取付金具1を上方へ持ち上げるような応力が作用しても、下方凸部分215,312がカバー材6Aの下端62,62に係止するので、取付金具1の抜き取りが防止される。
【0032】
図2(c)は、前述のように突状部7Aに対する取付金具1の組み付け状態の途中を示すものであり、当然のことながら、この時点ではナット1cは外れない程度に組み付けられているに過ぎない(締め付けられていない)。
【0033】
図2(d)は、第2実施例の取付金具1'を示すものであるが、前記第1実施例の取付金具1を構成する第一部材2と第二部材3とをそれぞれ反転して組み合わせた状態であって、一面側及び他面側を反転した各部材2,3をそれぞれ第一部材2'、第二部材3'とするが、各挟持用受部21A,21B,31A,31B、及びその具体的形状については、部材名称も符号も前記第1実施例と全く変更していない。
したがって、この第2実施例の取付金具1'は、第一部材2'の挟持用受部21Aと第二部材3'の挟持用受部31Bとが対向状に配設されている構成である。
【0034】
図2(e)は、屋根面に形成される一例の突状部7Bに対し、前記第2実施例の取付金具1'を取り付けた状態を示すものであって、
図2(g)はその組み付け状態の途中の状態を示し、
図2(f)は前記取付金具1'を取り付ける以前の突状部7Bのみを示している。
【0035】
前記突状部7Bは、図示しない下地上に、略L字状の吊子(保持部材)5Bの横片51bを固定し、その縦片52bの左右に面板部41bの側縁42bを立ち上げた屋根材4B,4Bを沿わせ、その状態で前記縦片52bの上半部分53bを一方側へ折り曲げて一方の側縁42bの上端に倒し込み、更に上方からカバー材6Bを弾性的に嵌合させて取り付けた。なお、前記カバー材6Bは、取付状態の形状より、左右の脚片61b,61bの下端62b,62bが近接するように成形されるので、上方から取り付ける際に弾性に抗して拡開され、取り付けた状態でも内側への弾性反発力は作用している。
【0036】
そして、前記構成の突状部7Bに対し、前記第2実施例の取付金具1'は、一方側(左側)に配置する第一部材2'の挟持用受部21Aと他方側(右側)に配置する第二部材3'の挟持用受部31Bとを対向状に配置させ、連結ボルト1bにナット1cを締め付けることにより、挟持状に保持している。
具体的に前記取付金具1'は、カバー材6Bの左右の脚片61b,61bに挟持用受部21A,31Bの中間凸部分212,315が密接状に沿い、カバー材6Bが覆っていない屋根材4B,4Bの側縁42b,42bに下方凸部分213,316が密接状に沿う状態で保持している。この状態では、取付金具1'を上方へ持ち上げるような応力が作用しても、下方凸部分213,316がカバー材6Bの下端に係止するので、抜き取りが防止される。
【0037】
図2(g)は、前述のように突状部7Bに対する取付金具1'の組み付け状態の途中を示すものであり、当然のことながら、この時点ではナット1cは外れない程度に組み付けられているに過ぎない(締め付けられていない)。
【0038】
このように第1実施例の取付金具1は、前記第一部材2と前記第二部材3とをそれぞれ反転させるだけの極めて簡易な操作にて異なる2種(この場合は突状部7Aと突状部7Bと)に容易に適応させることができるものである。
【0039】
図3は前記
図2(a)における突状部7Aに対し、第3実施例の取付金具1Zを取り付けた状態を示す。
この第3実施例の取付金具1Zは、第一部材2Zと第二部材3Zの長さがほぼ同様であり、前記第1実施例の取付金具1の凸部(218,218、219,219)が設けられない以外は、全く同様であるから、図面に同一符号を付して説明を省略する。即ちこの第3実施例における第一部材2Zは、凸部218,218、219,219)が設けられない以外は前記第1実施例における第一部材2と全く同一であり、この第3実施例における第二部材3Zは、縦長に形成されている以外は前記第1実施例における第二部材3と全く同一であり、各挟持用受部21A,21B,31A,31B、及びその具体的形状については、部材名称も符号も前記第1実施例と全く変更していない。
したがって、この第3実施例の取付金具1Zは、第一部材2Zの挟持用受部21Bと第二部材3Zの挟持用受部31Aとが対向状に配設されて前記突状部7Aを挟み込む構成である。
【0040】
なお、前記突状部7Aを挟持用受部21Bと挟持用受部31Aとで挟み込む構成については、既に
図2(a)の第1実施例と全く同様であるから、この第3実施例ではその説明の重複を避ける。
【0041】
図3は、前記突状部7Aに対して前記第3実施例の取付金具1Zを取り付け、更にその取付部(=溝部222)に雪止め材としてのアングル材9を固定する構成を示すものである。
図3(a)では、突状部7Aを挟んで左奥側に第一部材2Zを、右手前側に第二部材3Zを配設しており、それぞれ二箇所に形成した通孔217,317に対し、左奥側から連結ボルト1b,1bを右手前側へ挿通させ、ナット1c,1cを締め付けて突状部7Aにこの取付金具1Zを一体的に固定する。
【0042】
そして、取付部である第一部材2Zの溝部222に取付ボルト8bを取り付け、該取付ボルト8bに押さえ金具8Aを取り付け、該押さえ金具8Aによりアングル材9を保持する構成である。
なお、前記押さえ金具8Aは、中央に孔811を形成した平面視矩形状の固定部81と、断面略ワ字状の押さえ保持部82とからなるピース材であり、前記アングル材9は、略水平状の横面部91とそれを下端に折曲した縦面部92とからなる断面逆L字状の長尺材である。
そして、前記第一部材2Zの溝部222の側端から六角ボルトである取付ボルト8bの頭部を収容し、立設状に臨ませた取付ボルト8bの雌ネジ部分に、上方から押さえ金具8Aの孔811を挿通させ、該押さえ金具8Aの押さえ保持部82にアングル材9の横面部91及び角部を押さえ保持した。
【0043】
このように施工される
図3の雪止め材9の取付構造は、流れ方向から見た正面図である
図3(c)より明らかなようにアングル材9の雪止め部に相当する縦面部92が流れ方向に正対するように臨むものであって、複数種類の既設屋根に対し、容易に且つ安価に適用できるものであり、実用的価値が極めて高いものである。なお、流れ方向の側方から見た側面図である
図3(d)より明らかなようにある一定以上の積雪は、縦面部92に堰き止められて落雪することがなく雪止めされるものとなる。
【0044】
図4は前記
図2(e)における突状部7Bに対し、第4実施例の取付金具1Z'を取り付けた状態を示す。
この第4実施例の取付金具1Z'は、前記第3実施例の取付金具1Zを構成する第一部材2Zと第二部材3Zとをそれぞれ反転して組み合わせ、一面側及び他面側を反転した各部材2Z,3Zを第一部材2Z'、第二部材3Z'とするが、各挟持用受部21A,21B,31A,31B、及びその具体的形状については、部材名称も符号も前記第3実施例と全く変更していない。
したがって、この第4実施例の取付金具1Z'は、第一部材2Z'の挟持用受部21Aと第二部材3Z'の挟持用受部31Bとが対向状に配設されている構成である。
【0045】
なお、前記突状部7Bを挟持用受部21Aと挟持用受部31Bとで挟み込む構成については、既に
図2(e)の第2実施例と全く同様であるから、この第4実施例ではその説明の重複を避ける。
【0046】
図4は、前記突状部7Bに対して前記第4実施例の取付金具1Z'を取り付け、更にその取付部(=溝部222)に雪止め材としてのアングル材9を固定する構成を示すものである。
図4(a)では、突状部7Bを挟んで左奥側に第一部材2Z'を、右手前側に第二部材3Z'を配設しており、それぞれ二箇所に形成した通孔217,317に対し、左奥側から連結ボルト1b,1bを右手前側へ挿通させ、ナット1c,1cを締め付けて突状部7Bにこの取付金具1Z'を一体的に固定する。
【0047】
そして、取付部である第一部材2Z'の溝部222に取付ボルト8bを取り付け、該取付ボルト8bに押さえ金具8Aを取り付け、該押さえ金具8Aによりアングル材9を保持する構成である。
そして、前記第一部材2Z'の溝部222の側端から六角ボルトである取付ボルト8bの頭部を収容し、立設状に臨ませた取付ボルト8bの雌ネジ部分に、上方から押さえ金具8Aの孔811を挿通させ、該押さえ金具8Aの押さえ保持部82にアングル材9の横面部91及び角部を押さえ保持した。
【0048】
このように施工される
図4の雪止め材9の取付構造でも、流れ方向から見た正面図である
図4(c)より明らかなようにアングル材9の雪止め部に相当する縦面部92が流れ方向に正対するように臨むものであって、複数種類の既設屋根に対し、容易に且つ安価に適用できるものであり、実用的価値が極めて高いものである。なお、流れ方向の側方から見た側面図である
図4(d)より明らかなようにある一定以上の積雪は、縦面部92に堰き止められて落雪することがなく雪止めされるものとなる。