(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリビニルアミンの油中水型エマルジョン(A)と、前記カチオン性あるいは両性水溶性高分子の油中水型エマルジョン(B)の配合比率が、3:7〜7:3(質量比)であることを特徴とする請求項1に記載の活性汚泥沈降方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明における配合組成物を構成するポリビニルアミンの油中水型エマルジョン(A)は、公知のポリビニルアミンの製造方法で製造することができる。1mol/L濃度のNaCl水溶液中での25℃における固有粘度が4.0〜10.0dL/g、0.2質量%水溶液粘度が10〜200mPa・sであり、アミノ化度が30〜80モル%の範囲を有していれば、何れの製造方法を採用しても良いが、基本的にはN−ビニルカルボン酸アミドの重合物の油中水型エマルジョンを加水分解して製造する方法が好ましい。この方法は、先ず、N−ビニルカルボン酸アミド単量体を水、水と非混和性の炭化水素からなる油状物質、油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する界面活性剤を混合し、強攪拌し油中水型エマルジョンを形成させた後、重合することにより合成する方法である。N−ビニルカルボン酸アミド単量体の重合物を酸または塩基にて加水分解する方法は、原料となる単量体の合成が容易であり、N−ビニルカルボン酸アミドのラジカル重合反応物の加水分解で比較的容易に高分子量の重合物が得られ、安全性も高いことから有用である。この様なポリビニルアミンの油中水型エマルジョンを製造する方法は、特表平10−500714号公報や特開平5−117313号公報、特開2012−153747号公報等に開示されている。
【0009】
これらの公知の製造方法の中でも特開2012−153747号公報に開示されている様に界面活性剤としてポリオキシアルキレンアルキルエーテルの共存するN−ビニルカルボン酸アミド重合物水溶液の油中水型エマルジョンを酸又は塩基の存在下、加水分解することによって製造する方法では高い分子量のものが安定して得られるため好適な製造方法である。以下、この方法に則したポリビニルアミンについて説明するが公知の製造方法を組み合わせて使用しても良い。本発明におけるポリビニルアミンの油中水型エマルジョンの物性が得られれば如何なる方法も適用できる。
【0010】
N−ビニルカルボン酸アミド単量体の例としては、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミドが挙げられるが、N−ビニルホルムアミドを使用することが好ましい。
【0011】
水と非混和性の炭化水素からなる油状物質の例としては、パラフィン類あるいは灯油、軽油、中油等の鉱油、あるいはこれらと実質的に同じ範囲の沸点や粘度等の特性を有する炭化水素系合成油、あるいはこれらの混合物が挙げられる。含有量としては、油中水型エマルジョン全量に対して20〜50質量%であり、好ましくは20〜35質量%である。
【0012】
油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する界面活性剤の例としては、非イオン性界面活性剤のポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレンアルコールエーテル系、ポリオキシエチレンアルキルエステル系、あるいは分子量が1000以上のブロックおよび/またはグラフト型の高分子界面活性剤等である。具体的には、2〜10好ましくは3〜7のHLB値を有する分子量1000未満の界面活性剤、例えばグリセロールモノ−、ジ−、およびトリ−、オレエート、ステアレートあるいはパルミテートといったグリセロール脂肪酸エステル、ソルビタンモノ−、ジ−、およびポリ−、オレエート、ステアレートあるいはパルミテートといったソルビタン脂肪酸エステル、さらにこれらのエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドの付加物が例示できる。分子量1000以上のブロックおよび/またはグラフト型の高分子界面活性剤としては、12−ヒドロキシステアリン酸とポリ(エチレンオキサイド)の反応物であるポリエステル・ブロック−ポリ(エチレンオキシド)・ブロック−ポリエステル・ブロックコポリマーが例示できる。またこれらの中から二つ以上の界面活性剤を併用することも可能である。特に分子量1000未満の界面活性剤と分子量1000以上のブロックおよび/またはグラフト型の高分子界面活性剤を併用することが好ましく、添加量としては、油中水型エマルジョン全量に対して0.5〜10質量%であり、好ましくは1〜5質量%の範囲である。
【0013】
重合はラジカル重合開始剤を使用し行う。これら開始剤は油溶性あるいは水溶性のどちらでも良く、アゾ系、過酸化物系、レドックス系何れでも重合することが可能である。油溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、1、1’−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2、2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2、2’−アゾビス−2−メチルプロピオネート、2、2’−アゾビス−(4−メトキシ−2、4−ジメチル)バレロニトリル等が挙げられる。
【0014】
水溶性アゾ開始剤の例としては、2、2’−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’−アゾビス[2−(5−メチル−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素化物、2、2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素化物、4、4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等が挙げられる。又、レドックス系の例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等との組み合わせが挙げられる。更に過酸化物の例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウム或いはカリウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート等を挙げることができる。
【0015】
重合温度は、使用する重合開始剤によって適宜決めていき、通常0〜100℃の範囲で行ない、特に10〜60℃の範囲が好ましい。
【0016】
又、分子量の調整のため連鎖移動性を持つ化合物を併用することができ、例えば、2−メルカプトエタノール、2−プロパノール、亜硫酸水素ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等が使用できる。
【0017】
N−ビニルカルボン酸アミドの濃度は適宜設定するが、通常は油中水型エマルジョン全量に対して10〜50質量%の範囲であり、特に15〜40質量%の範囲であることが好ましい。
【0018】
次に油中水型エマルジョンのN−ビニルカルボン酸アミド重合物の加水分解に関して説明する。本発明におけるポリビニルアミンの油中水型エマルジョン(A)は、前記N−ビニルカルボン酸アミド重合物の油中水型エマルジョンを酸または塩基で加水分解し得ることができる。目的に応じて適宜選択することが可能であり、酸の存在下で使用する必要がある場合は、酸により加水分解することが好適である。酸による加水分解では、副生成物としてギ酸が生成し製造槽や貯槽を腐食するため、塩基により加水分解することが好適である。
【0019】
加水分解のために適当な酸としては、加水分解の際にpHを0〜5の範囲とすることができれば制限はなく、ハロゲン化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸といった無機酸、炭素数1〜5の範囲のモノおよびジカルボン酸、スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸といった有機酸が例示でき、特にハロゲン化水素酸およびハロゲン化水素のガスを用いることが好ましく、ハロゲン化水素酸を用いることが最も好ましい。添加量は、ポリマーのホルミル基に対し0.05〜2、更に好ましくは0.4〜1.2当量の範囲で加えることが好ましい。
【0020】
加水分解のために適当な塩基としては、加水分解の際にpHを8〜14の範囲とすることができれば制限はなく、周期律表第一および二a族の金属水酸化物、アンモニアおよびアンモニアのアルキル誘導体が例示でき、周期律表第一および二a族の金属水酸化物およびアンモニアを用いることが好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアの水溶液を用いることが最も好ましい。添加量は、ポリマーのホルミル基に対し0.05〜2、更に好ましくは0.4〜1.2当量の範囲で加えることが好ましい。
【0021】
加水分解したポリビニルアミンの油中水型エマルジョンは、前記酸または塩基で中和することが可能で、pHが6.0〜14.0の範囲に調整することが好ましい。
【0022】
加水分解は、HLB8.0〜14.0の範囲のポリオキシエチレンアルキルエーテルの存在下で行う必要がある。このようなポリオキシエチレンアルキルエーテルの例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルが挙げられる。これらのポリオキシエチレンアルキルエーテルは、N−ビニルカルボン酸アミドの重合時に添加することも、重合後加水分解の前に添加することも可能であるが、重合後、加水分解工程の前に添加する方法が好ましい。
【0023】
意図しない架橋反応を防止する目的で、塩酸ヒドロキシルアミンの存在下で加水分解反応を行うことができる。この塩酸ヒドロキシルアミンは、重合後加水分解の前に添加することが好ましい。
【0024】
加水分解を行う温度は、加水分解率と加水分解を行う時間により適宜選択することが可能であるが、通常40〜100℃、好ましくは60〜90℃の範囲で行う。
【0025】
このようにして得られたポリビニルアミンの1mol/L濃度のNaCl水溶液中での25℃における固有粘度は、本発明の沈降剤として効果を発揮するためには、4.0〜10.0dL/gの範囲である必要がある。尚、固有粘度は、pH7になるまで塩酸中和したポリビニルアミン塩酸塩を測定した値である。固有粘度が4.0dL/g以下であると、凝集力が低下し、10.0dL/gより大きいと水溶液粘度が高くなり、25℃において回転粘度計にて測定した0.2質量%水溶液粘度が100mPa・sを超える可能性が高いため、好ましくは4.0〜8.0dL/g、更に好ましくは4.0〜6.0dL/gの範囲である。これは、重量平均分子量で表すと100万〜500万の範囲であり、100万〜400万の範囲が好適に使用できる。本発明におけるポリビニルアミンの油中水型エマルジョン(A)の0.2質量%水溶液粘度が10〜100mPa・sの範囲であり、粘性が低いため汚泥に添加した時に、分散が良く、懸濁粒子との吸着性が優れること、及びアミノ化度と固有粘度が最適な範囲にあることとの相乗効果で沈降処理効果が促進されると考えられる。
【0026】
本発明におけるポリビニルアミンの油中水型エマルジョン(A)は、N−ビニルカルボン酸アミドの酸あるいはアルカリにより加水分解し、酸アミド基をアミノ基に変換することによりカチオン化するが、加水分解度すなわちアミノ化度は、完全に加水分解するよりも酸アミド基を残しておいた方が、汚泥沈降剤としては好ましい。これは非イオン性基である酸アミド基と親水性基である一級アミノ基とのバランスに由るものと考えられる。従ってアミノ化度は10〜40モル%であることが好ましく、更に好ましくは10〜30モル%の範囲である。
【0027】
加水分解後は、親水性界面活性剤を添加して油の膜で被われたエマルジョン粒子が水になじみ易くし、中の水溶性高分子が溶解しやすくする処理を行なうことが好ましい。親水性界面活性剤の例としては、カチオン性界面活性剤やHLB9〜15のノ二オン性界面活性剤であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルコールエーテル等が例示できる。
【0028】
本発明におけるポリビニルアミンは、乳化重合法により製造された油中水型エマルジョンであり、水溶液重合や逆相懸濁重合で製造されたポリビニルアミン系水溶性高分子に比べて分子量が高いため、ポリマーの収縮により絡み合いが生じ電荷が内包される傾向にあると考えられる。このため、本発明におけるポリビニルアミンの油中水型エマルジョン(A)を汚泥に添加、撹拌されることにより内包されている電荷が高分子の外側に徐々に現れて汚泥中の懸濁物質と電荷の中和作用、再凝集を繰り返す結果、緻密で強固なフロックを形成、ケーキ含水率が低下するものと考えられる。分子量と電荷内包度合いの関係は、分子量が高ければ、必ずしも電荷内包度合いが高いとは限らない。これは、N−ビニルカルボン酸アミド重合体の重合条件や加水分解条件、ポリビニルアミンのアミノ化度等によって影響されるためである。又、単に電荷内包率が高ければ処理効果が高いとは言えず、そのため本発明におけるポリビニルアミンの油中水型エマルジョン(A)の固有粘度が4.0〜10.0dL/gの範囲にあることが必須条件である。
【0029】
次いで、本発明における特定の構造及び組成を有するカチオン性あるいは両性水溶性高分子の油中水型エマルジョン(B)について説明する。
【0030】
本発明における特定の構造及び組成を有するカチオン性あるいは両性水溶性高分子の油中水型エマルジョン(B)は、下記一般式(1)及び/又は(2)で表されるカチオン性単量体80〜100モル%、下記一般式(3)で表されるアニオン性単量体0〜20モル%、非イオン性単量体0〜20モル%を含有させた単量体混合物水溶液を分散相、水に非混和性の有機液体を界面活性剤によって有機液体を連続相となるよう乳化重合したカチオン性あるいは両性水溶性高分子の油中水型エマルジョンである。
一般式(1)
R
1は水素又はメチル基、R
2、R
3は炭素数1〜3のアルキルあるいはヒドロキシアルキル基、R
4は炭素数1〜3のアルキルあるいはアルコキシル基、7〜20のアルキル基あるいはアリール基、Aは酸素またはNH、Bは炭素数2〜4のアルキレン基を表わす、X
1−は陰イオンをそれぞれ表わす。
一般式(2)
R
5は水素又はメチル基、R
6、R
7は炭素数1〜3のアルキル基あるいはヒドロキシアルキル基、X
2−は陰イオンをそれぞれ表わす。
一般式(3)
R
8は水素、メチル基またはカルボキシメチル基、QはSO
3−、C
6H
4SO
3−、CONHC(CH
3)
2CH
2SO
3−、C
6H
4COO
−あるいはCOO
−、R
9は水素またはCOO
−Y
2+、Y
1あるいはY
2は水素または陽イオンをそれぞれ表わす。
【0031】
本発明における特定の構造及び組成を有するカチオン性あるいは両性水溶性高分子の油中水型エマルジョン(B)の製造時、カチオン性単量体として、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等、ジアリルアルキルアミン等の3級塩、塩化メチル等のハロゲン化アルキル等が挙げられ、これらのカチオン性ビニル系単量体は1種を単独で用いることができ、2種以上を組み合わせて用いることもできる。具体的な例としては一般式(1)で表されるカチオン性単量体として、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートあるいはジメチルアミノプロピルアクリルアミドの塩化メチルや塩化エチルなど低級アルキル基のハロゲン化物による四級化物である。例えば(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム塩化物、(メタ)アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウム塩化物等である。又、一般式(2)で表されるカチオン性単量体は、ジアリルメチルアンモニウム塩化物、ジアリルジメチルアンモニウム塩化物等がある。カチオン性単量体のモル数としては、80〜100モル%であるが、90〜100モル%が好ましい。これは、カチオン度が中高モルの方が、汚泥中懸濁粒子の有するアニオン電荷を低下させる中和作用が本発明における沈降剤においては有効に作用するためである。一般式(3)で表されるアニオン性単量体としては、(メタ)アクリル酸あるいはそのナトリウム塩等のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、マレイン酸あるいはそのアルカリ金属塩、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のアクリルアミドアルカンスルホン酸あるいはそのアルカリ金属塩またはアンモニウム塩等が挙げられる。アニオン性単量体のモル数としては、0〜20モル%の範囲である。
【0032】
本発明におけるカチオン性あるいは両性水溶性高分子の油中水型エマルジョン(B)の製造方法としては、特開平10−140496号公報や特開2011−99076号公報等に挙げられる方法に準じて適宜に製造することができる。即ち、カチオン性単量体、アニオン性単量体及び非イオン性単量体からなる単量体混合物を水、水と非混和性の炭化水素からなる油状物質、油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤を混合し、強攪拌し油中水型エマルジョンを形成させた後、重合する。
【0033】
又、分散媒として使用する炭化水素からなる油状物質の例としては、パラフィン類或いは灯油、軽油、中油等の鉱油、或いはこれらと実質的に同じ範囲の沸点や粘度等の特性を有する炭化水素系合成油、或いはこれらの混合物が挙げられる。含有量としては、油中水型エマルジョン全量に対して20質量%〜50質量%の範囲であり、好ましくは20質量%〜35質量%の範囲である。
【0034】
単量体の重合濃度は20〜50質量%の範囲であり、単量体の組成、重合法、開始剤の選択によって適宜重合の濃度と温度を設定する。
【0035】
油中水型エマルジョンを形成するに有効な量とHLBを有する少なくとも一種類の界面活性剤の例としては、HLB1〜8のノニオン性界面活性剤であり、その具体例としては、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。これら界面活性剤の添加量としては、油中水型エマルジョン全量に対して0.5〜10質量%であり、好ましくは1〜5質量%の範囲である。
【0036】
重合後は、転相剤と呼ばれる親水性界面活性剤を添加して油の膜で被われたエマルジョン粒子が水になじみ易くし、中の水溶性高分子が溶解しやすくする処理を行ない、水で希釈しそれぞれの用途に用いる。親水性界面活性剤の例としては、カチオン性界面活性剤やHLB9〜15のノ二オン性界面活性剤であり、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレンアルコールエーテル系等である。
【0037】
重合条件は通常、使用する単量体や共重合モル%によって適宜決めていき、温度としては20〜80℃、好ましくは20〜60℃の範囲で行なう。重合開始はラジカル重合開始剤を使用する。これら開始剤は油溶性或いは水溶性のどちらでも良く、アゾ系、過酸化物系、レドックス系何れでも重合することが可能である。油溶性アゾ系開始剤の例としては、2、2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1、1−アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、2、2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2、2’−アゾビス−2−メチルプロピオネート、2、2’−アゾビス−(4−メトキシ−2、4−ジメチル)バレロニトリル等が挙げられる。
【0038】
水溶性アゾ開始剤の例としては、2、2’−アゾビス(アミジノプロパン)二塩化水素化物、2、2’−アゾビス[2−(5−メチル−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素化物、4、4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等が挙げられる。又、レドックス系の例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウムと亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、トリメチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等との組み合わせが挙げられる。更に過酸化物の例としては、ペルオキソ二硫酸アンモニウム或いはカリウム、過酸化水素、ベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、オクタノイルペルオキサイド、サクシニックペルオキサイド、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート等を挙げることができる。
【0039】
重合時に構造改質剤、即ち、高分子を構造変性する架橋性単量体を使用しても良い。この架橋性単量体は、単量体総量に対し質量で0.5〜200ppmの範囲で存在させる。架橋性単量体の例としては、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリアリルアミン、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸ジエチレングリコール、ジメタクリル酸トリエチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸−1,3−ブチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、N−ビニル(メタ)アクリルアミド、N−メチルアリルアクリルアミド、アクリル酸グリシジル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、アクロレイン、グリオキザール、ビニルトリメトキシシランなどがあるが、この場合の架橋剤としては、水溶性ポリビニル化合物がより好ましく、最も好ましいのはN,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミドである。又、ギ酸ナトリウム、イソプロピルアルコール、メタリルスルホン酸ナトリウム等の連鎖移動剤を併用することも架橋性を調節する手法として効果的である。添加量としては、単量体総量に対し0.001〜1.0質量%、好ましくは0.01〜0.1質量%存在させる。
【0040】
重合は窒素雰囲気下にて、重合開始剤、例えば2、2’−アゾビス(アミジ
ノプロパン)二塩化水素化物または2、2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩化水素化物のような水溶性アゾ系重合開始剤、あるいは過硫酸アンモニウムおよび亜硫酸水素ナトリウム併用のような水溶性レドックス系重合開始剤を添加し、撹拌下ラジカル重合を行う。
【0041】
次に具体的に本発明におけるポリビニルアミンの油中水型エマルジョン(A)と、特定の構造及び組成を有するカチオン性あるいは両性水溶性高分子の油中水型エマルジョン(B)を含有する配合組成物の使用に関して述べる。本発明における配合組成物を添加すると、活性汚泥に対して緻密で強固なフロックを形成し沈降性に優れる。ポリビニルアミンの油中水型エマルジョン(A)のアミノ化度と固有粘度及び溶解時の粘性が最適な範囲にあること、特定の構造及び組成を有するカチオン性あるいは両性水溶性高分子の油中水型エマルジョン(B)中のカチオン度が中高モルのため汚泥中懸濁粒子の有するアニオン電荷を低下させる中和作用と、架橋吸着による凝集効果が最大限に発揮され汚泥沈降効果が促進されると考えられる。
【0042】
本発明における特定の構造及び組成を有するカチオン性あるいは両性水溶性高分子の油中水型エマルジョン(B)の水溶液粘度は、高分子濃度が0.2質量%になるように完全溶解したときの25℃において回転粘度計にて測定した水溶液粘度が、100〜500mPa・sの範囲が好ましく、更に好ましくは、100〜400mPa・sの範囲である。粘性が低い方が活性汚泥に添加した時に、分散が良く、懸濁粒子との吸着性が優れるためである。
【0043】
本発明における特定の構造及び組成を有するカチオン性あるいは両性水溶性高分子の油中水型エマルジョン(B)を4質量%食塩水中に高分子濃度が0.5質量%になるように完全溶解したときの25℃において回転粘度計にて測定した塩水溶液粘度は、5mPa・s以上、50mPa・s以下の範囲が好ましい。又、1mol/L濃度のNaCl水溶液中での25℃における固有粘度は、4.0〜10.0dL/gの範囲が好ましい。これは、塩水溶液粘度あるいは固有粘度が分子量の指標となり、これらが低すぎると沈降処理性能が不足するためである。塩水溶液粘度あるいは固有粘度が高すぎると溶解時の水溶液粘度が高くなり分散性が低下するため好ましくはない。
【0044】
本発明におけるポリビニルアミンの油中水型エマルジョン(A)と、特定の構造及び組成を有するカチオン性あるいは両性水溶性高分子の油中水型エマルジョン(B)の配合比率は、質量比で2:8〜7:3の範囲が好ましい。この範囲で配合すると、溶解液粘度がある一定の値に抑制され分散性と効果において最大の相乗効果が発揮されるためである。質量比で3:7〜7:3がより好ましい。油中水型エマルジョン(A)と油中水型エマルジョン(B)を含有する配合組成物の溶解液粘度は、例えば0.2質量%溶解液が50mPa・s以上、400mPa・s以下が好ましく、50mPa・s以上、300mPa・s以下が更に好ましく、50mPa・s以上、200mPa・s以下がより一層好ましい。
【0045】
本発明におけるポリビニルアミンの油中水型エマルジョン(A)及び特定の構造及び組成を有するカチオン性あるいは両性水溶性高分子の油中水型エマルジョン(B)は、製品の状態で配合したものを任意の濃度に水で溶解する。あるいは、それぞれを任意の濃度に水で溶解して混合する。これら溶解液は曝気槽から沈殿槽に至る系路に添加されるが、低粘性による効果を最大限に発揮するには添加時の水溶液濃度は、0.05〜0.3質量%が好ましい。添加率は、被処理液のSS濃度などにより異なるが、被処理液に対して通常1〜50ppm、好ましくは2〜15ppmとするのが望ましい。又、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、PAC、硫酸バンド等の無機系凝集剤と併用しても良い。
【0046】
本発明における配合組成物は、水で任意の割合で容易に希釈または溶解され、かつ添加後すぐに効果を発揮するので、排液処理における被処理液の急激な増加や汚泥沈降不良などに対して迅速に対応することができ、処理水への活性汚泥の流出を迅速に防止できる。また形成されるフロックは緻密で沈降性および圧密性に優れているので、固液分離を容易に行うことができ、このため処理水への活性汚泥の流出を簡単な操作で効率良く防止することができる。さらに少量の薬剤添加量で優れた沈降性改善効果を発揮するので、薬剤の使用量を少なくして低コストで処理することができる。
【0047】
本発明における配合組成物の添加場所は、曝気槽から沈殿槽に至る系路であれば特に限定されず、例えば曝気槽、曝気槽から沈殿槽までの間の連絡路、沈殿槽のセンターコア部などで添加することができる。また、曝気槽から沈殿槽までの間に凝集槽を設けて添加することができる。曝気槽に添加する場合は曝気により撹拌されるので特別な撹拌を行う必要はなく、また曝気槽から沈殿槽までの間の連絡路に添加する場合も水が移送される際の撹拌で十分であるので特別な撹拌は必要ない。
【0048】
本発明における配合組成物の添加は連続的に行うこともできるし、間欠的に行うこともできる。また、活性汚泥の沈降性が悪化した場合、または悪化が予想される場合に添加することができる。
【0049】
本発明における配合組成物は、製品のままの状態で添加できるし、水で希釈して添加することもできる。本発明における配合組成物は水に溶解した溶液状態で添加すると直ちに汚泥と反応するため、新たに撹拌装置などを設けることなく、そのまま液の流動する系路に添加しても十分な沈降促進効果が得られるので好ましい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【0051】
特開2012−153747号公報等の方法に基づいて、ポリビニルアミンの油中水型エマルジョン試料群Xを調製した。物性値は、pH7になるまで塩酸中和したポリビニルアミンの塩酸塩単位である。それぞれの試料の物性を表1に示す。又、市販汚泥沈降剤として水溶性高分子試料群Yを用意した。それぞれの試料の物性を表2に示す。
【0052】
(表1)
アミノ化度;仕込みN−ビニルホルムアミドに対するモル分率(モル%)。
固有粘度;1mol/L濃度のNaCl水溶液中での25℃における固有粘度。
0.2質量%水溶液粘度;0.2質量%高分子水溶液をB型粘度計により測定(25℃)。
【0053】
(表2)
0.5質量%塩水溶液粘度;0.5質量%高分子水溶液に4質量%塩化ナトリウムを添加、完全溶解後にB型粘度計により測定(25℃)。
0.2質量%水溶液粘度;0.2質量%高分子水溶液をB型粘度計により測定(25℃)。
【0054】
(実施例1)
沈降性が不良で沈殿槽で流出が発生している活性汚泥、pH7.0、MLSS濃度4590ppm、SVIが212(mL/g)を曝気槽からメスシリンダーに200mL採取し試験に用いた。当該活性汚泥は、高カチオンであるPAM系水溶性高分子が使用されていたが、処理効果が不安定な状況であった。表1の試料−1と試料−Aの0.2質量%溶解液を質量比7:3で配合した組成物(0.2質量%水溶液粘度114mPa・s)を、対処理液5ppm添加後、上下転倒強攪拌5回、弱撹拌5回を行い静置し、対処理液の沈降性を比較するため30分後の沈降界面容積、フロック径、沈降速度を測定した。又、SV(活性汚泥沈殿率:sludge volume)、SVI(汚泥容量指標:sludge volume index)を算出した。同様に試料−1と試料−Aを質量比5:5(0.2質量%水溶液粘度144mPa・s)、質量比3:7(0.2質量%水溶液粘度173mPa・s)で配合した組成物についても同様な試験を実施した。その結果を表3に示す。
【0055】
(比較例1)
比較試験として実施例1と同様の操作により、各種試料0.2質量%溶解液を対処理液5ppmあるいは10ppm添加後、上下転倒強攪拌5回、弱撹拌5回を行い静置し、対処理液の沈降性を比較するため30分後の沈降界面容積、フロック径、沈降速度を測定した。又、SV、SVIを算出した。その結果を表3に示す。
【0056】
(表3)
SV;活性汚泥沈殿率(sludge volume)。
SVI;汚泥容量指標(sludge volume index)・・・1gの活性汚泥が占める容積をmLで表し、SVI=(SV×10000)/MLSSの式で算出される。
MLSS;活性汚泥浮遊物質(mixed liquor suspended solid)・・・活性汚泥法における曝気槽内の活性汚泥量をppmで表す。
【0057】
本発明における配合組成物を添加時、比較例1と比べて沈降処理効果が優れることが分かる。本発明におけるポリビニルアミンの油中水型エマルジョン(A)の範囲外のアミノ化度を使用した場合では、処理効果が不良であった。又、本発明における範囲内のアミノ化度を有するポリビニルアミンの油中水型エマルジョン(A)あるいは各種試料単独添加時では処理効果が不良であった。
【0058】
(実施例2)
沈降性が不良で沈殿槽で流出が発生している活性汚泥、pH7.6、MLSS濃度5190ppm、SVIが191(mL/g)を曝気槽からメスシリンダーに200mL採取し試験に用いた。当該活性汚泥は、高カチオンであるPAM系水溶性高分子が使用されていたが、処理効果が不安定な状況であった。表1の試料−1と試料−Aの0.2質量%溶解液を質量比3:7で配合した組成物を、対処理液5ppm添加後、上下転倒強攪拌5回、弱撹拌5回を行い静置し、対処理液の沈降性を比較するため30分後の沈降界面容積、フロック径、沈降速度を測定した。又、SV、SVIを算出した。その結果を表4に示す。
【0059】
(比較例2)
比較試験として実施例2と同様の操作により、各種試料0.2質量%溶解液を対処理液5ppmあるいは10ppm添加後、上下転倒強攪拌5回、弱撹拌5回を行い静置し、対処理液の沈降性を比較するため30分後の沈降界面容積、フロック径、沈降速度を測定した。又、SV、SVIを算出した。その結果を表4に示す。
【0060】
(表4)
SV;活性汚泥沈殿率。
SVI;汚泥容量指標。
【0061】
本発明における配合組成物を添加時、比較例2の各種試料単独添加時に比べて沈降処理効果が優れることが分かる。又、実施例2と同様な試験を試料−1と試料−Bの配合、試料−2と試料−Aの配合で実施したが同様に沈殿処理効果が優れた。
【0062】
(実施例3)
沈降性が不良で沈殿槽で流出が発生している活性汚泥、pH7.6、MLSS濃度5190ppm、SVIが190(mL/g)を曝気槽からメスシリンダーに200mL採取し試験に用いた。当該活性汚泥は、高カチオンであるPAM系水溶性高分子が使用されていたが、処理効果が不安定な状況であった。表1の試料−1と試料−Aの0.2質量%溶解液を質量比3:7で配合した組成物を、対処理液10ppm添加後、上下転倒強攪拌5回、弱撹拌5回を行い静置し、対処理液の沈降性を比較するため30分後の沈降界面容積、フロック径、沈降速度を測定した。又、SV、SVIを算出した。その結果を表5に示す。
【0063】
(比較例3)
比較試験として実施例3と同様の操作により、各種試料0.2質量%溶解液を対処理液10ppm添加後、上下転倒強攪拌5回、弱撹拌5回を行い静置し、対処理液の沈降性を比較するため30分後の沈降界面容積、フロック径、沈降速度を測定した。又、SV、SVIを算出した。その結果を表5に示す。
【0064】
(表5)
SV;活性汚泥沈殿率。
SVI;汚泥容量指標。
【0065】
本発明における配合組成物を添加時、比較例3の各種試料単独添加時に比べて沈降処理効果が優れることが分かる。又、実施例3と同様な試験を試料−1と試料−Bの配合、試料−2と試料−Aの配合で実施したが同様に沈殿処理効果が優れた。