特許第6590770号(P6590770)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6590770
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】コアキャッチャ
(51)【国際特許分類】
   G21C 9/016 20060101AFI20191007BHJP
【FI】
   G21C9/016
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-151782(P2016-151782)
(22)【出願日】2016年8月2日
(65)【公開番号】特開2018-21778(P2018-21778A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松崎 隆久
【審査官】 村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−128142(JP,A)
【文献】 特開2012−251894(JP,A)
【文献】 特開2017−090400(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2581913(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 9/016
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉格納容器の床面に設置するコアキャッチャにおいて、
上面が円状の皿型に形成された、炉心溶融物を受け止めるための保持層と、
前記保持層の下部に前記保持層の中央を挟んで一方側から他方側まで前記保持層を跨ぐように配管したヘッダ管と、
前記ヘッダ管の延在方向に並べて前記保持層の下部に配置され、前記ヘッダ管から分岐して前記保持層の外周部まで延びる複数の傾斜管と、
対応する傾斜管にそれぞれ接続し、前記保持層の外周部に沿って上方に延在する複数の鉛直管と
を備え、
前記複数の鉛直管は、異なる傾斜管に接続されたもの同士は直接つながることなく独立しており、最も長い傾斜管である最長傾斜管に接続した鉛直管に対して、最も短い傾斜管である最短傾斜管に接続した鉛直管の流路面積を大きくした
ことを特徴とするコアキャッチャ。
【請求項2】
請求項1に記載のコアキャッチャにおいて、
前記傾斜管の前記ヘッダ管から前記保持層の外周部までの長さを配管長さとしたとき、
前記最長傾斜管の配管長さとの差が前記最長傾斜管の外径よりも小さい傾斜管に接続した鉛直管の流路面積を前記最長傾斜管に接続した鉛直管の流路面積と同じとし、前記最長傾斜管の配管長さとの差が前記最長傾斜管の外径よりも大きい傾斜管に接続した鉛直管の流路面積を前記最長傾斜管に接続した鉛直管の流路面積よりも大きくしたことを特徴とするコアキャッチャ。
【請求項3】
請求項2に記載のコアキャッチャにおいて、
前記最長傾斜管の配管長さとの差が前記最長傾斜管の外径よりも大きい傾斜管に接続した鉛直管の流路面積を前記傾斜管の配管長さが長くなるに従い小さくしたことを特徴とするコアキャッチャ。
【請求項4】
請求項2に記載のコアキャッチャにおいて、
前記最長傾斜管の配管長さとの差が前記最長傾斜管の外径よりも大きい傾斜管に接続した鉛直管が複数の分割鉛直管からなることを特徴とするコアキャッチャ。
【請求項5】
請求項4に記載のコアキャッチャにおいて、
前記最長傾斜管に接続した鉛直管の流路面積に対して、前記複数の分割鉛直管の流路面積の和を大きくしたことを特徴とするコアキャッチャ。
【請求項6】
請求項5に記載のコアキャッチャにおいて、
前記最長傾斜管の配管長さとの差が前記最長傾斜管の外径よりも大きい傾斜管のうち、前記最短傾斜管に接続した前記複数の分割鉛直管の流路面積の和を前記最短傾斜管を除く傾斜管に接続した前記複数の分割鉛直管の流路面積の和に対して大きくしたことを特徴とするコアキャッチャ。
【請求項7】
請求項6に記載のコアキャッチャにおいて、
前記複数の分割鉛直管の流路面積の和を前記傾斜管の配管長さが短くなるに従い大きくしたことを特徴とするコアキャッチャ。
【請求項8】
請求項2に記載のコアキャッチャにおいて、
前記最長傾斜管に接続した鉛直管の配管長さに対して、前記最短傾斜管に接続した鉛直管の配管長さを短くしたことを特徴とするコアキャッチャ。
【請求項9】
請求項8に記載のコアキャッチャにおいて、
前記最長傾斜管の配管長さとの差が前記最長傾斜管の外径よりも小さい傾斜管に接続した鉛直管の配管長さを前記最長傾斜管に接続した鉛直管の配管長さと同じとし、前記最長傾斜管の配管長さとの差が前記最長傾斜管の外径よりも大きい傾斜管に接続した鉛直管の配管長さを前記最長傾斜管に接続する鉛直管の配管長さよりも短くしたことを特徴とするコアキャッチャ。
【請求項10】
請求項8に記載のコアキャッチャにおいて、
前記複数の鉛直管の配管長さを前記傾斜管の配管長さが短くなるに従い短くしたことを特徴とするコアキャッチャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉格納容器内に設置されるコアキャッチャに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントに備えられた原子炉格納容器の機能の一つに、原子炉圧力容器内に配置された炉心が万一溶融するような事態が発生し、放射性物質が原子炉圧力容器外に放出されても、放射性物質を原子炉格納容器内に閉じ込めて原子力発電プラントの敷地周辺への漏出を防ぐことがある。
【0003】
上述の原子力発電プラントでは、極めて低い確率であるが、何らかの要因により炉心の冷却が不十分となり、炉心が崩壊熱により溶融し高温の炉心溶融物が原子炉圧力容器から原子炉格納容器の床面へ落下する可能性がある。炉心溶融物が床面へ落下した場合でも、その後、適切に冷却水が注水され炉心溶融物が冠水すれば、冷却水により炉心溶融物は上面側から冷却され固化するが、更なる安全性向上のため、炉心溶融物の床面への落下に対策を講じておく必要がある。
【0004】
そこで、原子炉圧力容器から落下する炉心溶融物を受け止めるコアキャッチャを床面に設置する方法が提唱されている。このようなコアキャッチャの一つに、内部に備えた冷却水配管に冷却水を流して、受け止めた炉心溶融物を下面側から冷却する下面冷却型コアキャッチャがある(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−128142号公報
【特許文献2】特開2012−251894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、原子炉格納容器の床面に沿って延在する分配器管路に接続し、前出の床面に対して上方に傾斜する冷却水配管(傾斜管)を炉心溶融物を受け止める面(受面)の下方に複数設け、各傾斜管の端部に原子炉格納容器の側壁に沿って上方に延在する冷却水配管(鉛直管)を接続し、炉心溶融物を下面及び側面側から冷却する。しかしながら、特許文献1のように傾斜管を原子炉格納容器の側壁に向かって櫛歯状に配置する場合、原子炉格納容器の床面は上方から見て円形であるから、傾斜管は分配器管路の延在方向の中心近くで長く、分配器管路の延在方向において前出の中心から遠くなるに従い短くなり、隣り合うもの同士の長さの差が大きくなる。傾斜管が短い領域ほど傾斜管に接続する鉛直管同士の間隔は大きくなるため、短い傾斜管に接続する鉛直管には隣接する鉛直管に外接しないものがある。外接しない鉛直管の間の領域は、鉛直管に対向する領域に比べて除熱量が低くなるため、炉心溶融物を適切に冷却することができない。
【0007】
特許文献2では、複数の傾斜管の端部を原子炉格納容器の側壁に沿って周方向に延在する流路(中間流路)に接続し、この中間流路に鉛直管を周方向に隙間なく接続している。しかしながら、特許文献2では、以下のような課題がある。
【0008】
一般的に、冷却水配管への冷却水の供給機能は如何なる状況でも有効に機能する必要があるため、ポンプ等の動的な駆動源を利用せず、冷却水配管内で崩壊熱による気泡が発生することにより生じる冷却水配管の内外の水頭差を利用し実行している。この方法では、冷却水配管内の気泡量が増加するほど水頭差が大きくなり、冷却水配管に供給される冷却水流量が増加する。
【0009】
原子炉圧力容器から落下した炉心溶融物は受面上に凡そ均一に拡がるため、炉心溶融物から傾斜管への伝熱量は傾斜管の長さに比例する。つまり、傾斜管が長いほど炉心溶融物からの伝熱量は増加し、傾斜管内で発生する気泡量も増加する。傾斜管と鉛直管が一対一で接続する構成では、傾斜管内で発生する気泡量が増加すると、その分、鉛直管内の気泡量も増加するため、長い傾斜管に供給される冷却水流量も増加する。
【0010】
これに対し、特許文献2では、傾斜管を流れる冷却水を一旦全て中間流路で合流させてから鉛直管に供給する構造であるため、鉛直管に流入する気泡量が全ての鉛直管で均一化されることで鉛直管内の気泡量の増加分も減少し、その分、長い傾斜管に供給される冷却水流量が減少し、適切な冷却水流量を供給できない。
【0011】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、冷却水配管に供給される冷却水流量を最適化し、炉心溶融物を適切に冷却することができるコアキャッチャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
原子炉格納容器の床面に設置するコアキャッチャにおいて、上面が円状の皿型に形成された、炉心溶融物を受け止めるための保持層と、前記保持層の下部に前記保持層の中央を挟んで一方側から他方側まで前記保持層を跨ぐように配管したヘッダ管と、前記ヘッダ管の延在方向に並べて前記保持層の下部に配置され、前記ヘッダ管から分岐して前記保持層の外周部まで延びる複数の傾斜管と、対応する傾斜管にそれぞれ接続し、前記保持層の外周部に沿って上方に延在する複数の鉛直管とを備え、前記複数の鉛直管は、異なる傾斜管に接続されたもの同士は直接つながることなく独立しており、最も長い傾斜管である最長傾斜管に接続した鉛直管に対して、最も短い傾斜管である最短傾斜管に接続した鉛直管の流路面積を大きくしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、冷却水配管に供給される冷却水流量を最適化し、炉心溶融物を適切に冷却することができるコアキャッチャを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係るコアキャッチャを適用する原子炉設備の一構成例の概略構成を表す縦断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るコアキャッチャの上面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るコアキャッチャが備える冷却水配管の部分斜視図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るコアキャッチャの上面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係るコアキャッチャが備える冷却水配管の部分斜視図である。
図6】本発明の第3実施形態に係るコアキャッチャが備える冷却水配管の部分斜視図である。
図7】本発明の第4実施形態に係る本実施形態に係るコアキャッチャが備える冷却水配管の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
(構成)
1.原子炉設備
図1は、本実施形態に係るコアキャッチャを適用する原子炉設備の一構成例の概略構成を表す縦断面図である。図1では、改良型沸騰水型原子炉(ABWR)を例示している。以下、本実施形態に係るコアキャッチャをABWRに適用した場合を説明するが、本実施形態に係るコアキャッチャは他の型式の原子炉(例えば、沸騰水型原子炉や加圧水型原子炉)に対しても適用可能である。
【0016】
図1に示すように、鋼製ライナを内張りした鉄筋コンクリート製の原子炉格納容器2には、原子炉圧力容器1が格納されている。原子炉圧力容器1内には原子炉の燃料を保有する炉心(不図示)が収容されている。原子炉格納容器2の外周側には、原子炉格納容器2を取り囲むように原子炉建屋3が設けられている。
【0017】
原子炉格納容器2は、気密性を有するように円筒状に形成されている。原子炉格納容器2の内部には、上部ドライウェル4A、下部ドライウェル4B、サプレッションチャンバ5等が設けられている。
【0018】
上部ドライウェル4Aは、原子炉圧力容器1の側面を取り囲むように設けられている。本実施形態では、上部ドライウェル4Aに冷却水を貯留した重力落下式炉心冷却系プール(冷却水供給源)24が設けられている。下部ドライウェル4Bは、原子炉圧力容器1の下方に設けられ、原子炉圧力容器1内の炉心を制御するための制御棒を操作する機器等を収容している。サプレッションチャンバ5は、上部ドライウェル4Aの下方に、下部ドライウェル4Bを取り囲むように設けられている。サプレッションチャンバ5内には、サプレッションプール6が形成されている。サプレッションプール6は、例えば、原子炉圧力容器1からの水蒸気を凝縮する機能を有する。上部ドライウェル4Aと下部ドライウェル4B及びサプレッションチャンバ5とは、鉄筋コンクリート製のダイヤフラム・フロア18により区画されている。また、下部ドライウェル4Bとサプレッションチャンバ5とは、原子炉格納容器2の底部に形成された床面7から上方向に立設するドライウェル壁面(側壁面)19により区画されている。ドライウェル壁面19は、ダイヤフラム・フロア18の端部に接合され、原子炉圧力容器1を支持している。上部ドライウェル4A、下部ドライウェル4B及びサプレッションチャンバ5は、ベント管20によって相互に連通されている。原子炉圧力容器1や配管類の一部が損傷し、原子炉格納容器2内に蒸気が放出された場合、上部ドライウェル4A及び下部ドライウェル4B内に放出された蒸気は、ベント管20を通ってサプレッションプール6に導かれて凝縮され、原子炉格納容器2内の圧力上昇が抑制される。原子炉格納容器2の床面7上には、コアキャッチャ8が設置されている。
【0019】
2.コアキャッチャ
コアキャッチャ8は、下部ドライウェル4Bを挟んで原子炉圧力容器1の底面と対向するように原子炉圧力容器1の下方に設けられている。コアキャッチャ8は、保持層(犠牲層)16及び冷却水配管21を備えている。
【0020】
保持層16は、原子炉圧力容器1から床面7に向かって落下する炉心溶融物12を受け止めて保持し、冷却する機能を有している。保持層16は、冷却水配管21の傾斜管10及び鉛直管11(後述する)で囲まれた空間、具体的には、傾斜管10の上側と鉛直管11の内側とからなる空間に配置されている。保持層16は、上面(原子炉圧力容器1の底部に対向する面)が原子炉格納容器2の内壁面(ドライウェル壁面19の内面)の形状に合わせて円状に形成されたすり鉢型(皿型)の部材であり、耐熱材又はコンクリートで構成されている。
【0021】
保持層16は、囲壁22を備えている。囲壁22は、保持層16の外縁部における保持層16の上面から上方向に立設されている。囲壁22の保持層16の上面からの高さは、保持層16に落下した炉心溶融物12を保持層16上に拘束するのに十分な値に設定されており、具体的には、原子炉圧力容器1内の炉心が全て溶融し保持層16に落下して保持されたときの炉心溶融物12の保持層16の上面からの高さよりも高くなるように設定してある。保持層16とドライウェル壁面19との間に、冷却水配管21の鉛直管11が設けられている。保持層16は、上方から見て、鉛直管11を除く床面7の全体を覆うように設けられている。
【0022】
冷却水配管21は、内部を流れる冷却水により保持層16を冷却する機能を有している。冷却水配管21は、ヘッダ管9、傾斜管10及び鉛直管11を備えている。
【0023】
図2は本実施形態に係るコアキャッチャの上面図、図3は本実施形態に係るコアキャッチャが備える冷却水配管の部分斜視図である。
【0024】
図2に示すように、ヘッダ管9は、保持層16の下部に保持層16の中央を挟んで原子炉格納容器2の内壁面の一方側から他方側まで保持層16を跨ぐように配管されている。本実施形態では、ヘッダ管9の延在方向(一方側から他方側に向かう方向)の両端部に冷却水供給配管(供給配管)23が接続している。供給配管23は、原子炉格納容器2の内壁面に沿って延在し、冷却水供給源24(図1を参照)とヘッダ管9を接続している。供給配管23は、冷却水供給源24に貯留された冷却水をヘッダ管9に導く機能を有している。本実施形態では、供給配管23に開閉弁(不図示)が設けられている。開閉弁は、例えば、原子炉圧力容器1内の温度の変化に伴って閉位置から開位置に切り換わり、冷却水供給源24とヘッダ管9とを連通するように構成されている。なお、供給配管23に開閉弁の代わりに減圧弁を設け、原子炉圧力容器1内の圧力の変化に伴って閉位置から開位置に切り換えて、冷却水供給源24とヘッダ管9とを連通する構成としても良い。
【0025】
傾斜管10は、保持層16の下部にヘッダ管9の延在方向に並べて複数配置されている。傾斜管10は、ヘッダ管9から分岐して保持層16の外周部まで床面7に対し上り傾斜で延びており、ヘッダ管9に対して線対称に設けられている。上述のように、保持層16の上面は円状に形成されているため、複数の傾斜管10は、ヘッダ管9の延在方向の中心(以下、ヘッダ管9の中心と言う)に近いものほど、その配管長さ(傾斜管10のヘッダ管9から保持層16の外周部までの長さ)が長くなり、ヘッダ管9の中心からヘッダ管9の延在方向に遠くなるに従いその配管長さが短くなる。本実施形態では、複数の傾斜管10を断面視で円形に形成している。以下、複数の傾斜管10のうち、ヘッダ管9の中心から分岐し配管長さが最も長いものを最長傾斜管10A、ヘッダ管9の中心からヘッダ管9の延在方向に最も遠い位置から分岐し配管長さが最も短いものを最短傾斜管10Bと言う場合がある。
【0026】
鉛直管11は、保持層16の外周面に沿って複数配置されており、対応する傾斜管10の保持層16の外周部側の開口部(出口)17にそれぞれ接続している。つまり、本実施形態では、1つの傾斜管10に対し1つの鉛直管11が接続している。鉛直管11は、傾斜管10の出口17から保持層16の外周部に沿って上方に延在しており、鉛直管11の傾斜管10の出口17から遠い側の開口部(出口)13は、保持層16の囲壁22よりも上方に位置している。複数の鉛直管11は、異なる傾斜管10に接続するもの同士が直接つながることなく独立して設けられている。
【0027】
本実施形態では、最長傾斜管10Aの配管長さとの差が最長傾斜管10Aの外径よりも小さい傾斜管10に接続した鉛直管11の流路面積を最長傾斜管10Aに接続した鉛直管11Aの流路面積と同じとし、最長傾斜管10Aの配管長さとの差が最長傾斜管10Aの外径よりも大きい傾斜管10に接続した鉛直管11の流路面積を最長傾斜管10Aに接続した鉛直管11Aの流路面積よりも大きくしており、最長傾斜管10Aに接続した鉛直管11Aに対して最短傾斜管10Bに接続した鉛直管11Bの流路面積を大きくしている。
【0028】
図2に例示する構成では、最長傾斜管10Aと複数の傾斜管10のうちの傾斜管10Cの配管長さの差Dcは、最長傾斜管10Aの外径Daよりも小さい。そのため、最長傾斜管10Aと傾斜管10Cの間に設けられた複数の傾斜管10(傾斜管10Cを含む)に接続した各鉛直管11の流路面積を鉛直管11Aの流路面積と同じとしている。一方、最長傾斜管10Aと傾斜管10Cに隣接する傾斜管10Dの配管長さの差Ddは、最長傾斜管10Aの外径Daよりも大きい。そのため、傾斜管10Dと最短傾斜管10Bの間に設けられた複数の傾斜管10(最短傾斜管10Bを含む)に接続した各鉛直管11の流路面積を鉛直管11Aの流路面積よりも大きくしている。なお、図2に例示する構成では、鉛直管11Aを断面視で円形に、鉛直管11Aの流路面積よりも大きい流路面積を有する鉛直管11を断面視で楕円形にそれぞれ形成している。上述では、複数の鉛直管11のうち、上方から見て、右上の領域に設けられたものについて説明したが、右下、左上及び左下の領域に設けられたものも同様である。
【0029】
なお、図2,3に例示する構成では、最長傾斜管10Aの配管長さとの差が最長傾斜管10Aの外径よりも大きい傾斜管(傾斜管10Dと最短傾斜管10Bの間に設けられた複数の傾斜管)に接続した鉛直管11の流路面積を傾斜管10の配管長さが長くなるに従い小さくし、複数の鉛直管11のうち、鉛直管11Aの断面積が最も小さく、鉛直管11Bの断面積が最も大きくしている。
【0030】
(動作)
本実施形態に係るコアキャッチャ8における動作について、何らかの原因によって炉心溶融物12が原子炉圧力容器1を貫通して落下した万一の場合を想定して説明する。
【0031】
原子炉圧力容器1から落下した炉心溶融物12は、コアキャッチャ8の保持層16で受け止められ、保持される。一方、例えば、原子炉圧力容器1への注水機能の停止による原子炉圧力容器1内の温度(又は圧力)の変化に基づき、下部ドライウェル4B内に冷却水が注水され、炉心溶融物12を上面側から冷却する。さらに、原子炉圧力容器1への注水機能の停止による原子炉圧力容器1内の温度の変化に基づき、開閉弁が閉位置から開位置に切り換わり、冷却水供給源24に貯留された冷却水が供給配管23を介してヘッダ管9に供給される。ヘッダ管9に供給された冷却水は、複数の傾斜管10に流入する。傾斜管10内を流れる冷却水は、炉心溶融物12からの伝熱により一部が水蒸気となる。これにより、傾斜管10内には、冷却水と気泡の二相流が形成される。傾斜管10内を流れる冷却水及び気泡は、出口17から鉛直管11に流入する。鉛直管11を流れる冷却水は、炉心溶融物12からの伝熱により一部が水蒸気となる。これにより、鉛直管11内には、冷却水と気泡(傾斜管10から流入した気泡と鉛直管11内で新たに発生した気泡)の二相流が形成される。鉛直管11内を流れる冷却水及び気泡は、鉛直管11の出口13から下部ドライウェル4B内に放出される。下部ドライウェル4B内に放出された冷却水は、囲壁22の内側の空間に流入し、囲壁22、鉛直管11を順次満たしていき、遂にはコアキャッチャ8を冠水させる。一方、鉛直管11の出口13から放出された気泡は、下部ドライウェル4B内を上昇する。
【0032】
以上により、コアキャッチャ8の保持層16に保持された炉心溶融物12は、冷却水により上面側から冷却されつつ、傾斜管10を流れる冷却水により下面側から、鉛直管11を流れる冷却水により側面側からも冷却される。その後、炉心溶融物12の保有熱は時間の経過に伴い減衰し、炉心溶融物12は保持層16上で凝固する。
【0033】
(効果)
(1)ヘッダ管9の中心に近い傾斜管10に接続する鉛直管11は、鉛直管11Aと同じ流路面積としても隣接する鉛直管11同士を密に設けることができるため、保持層16の外周面で除熱量(冷却能力)が低くなる領域は生じ難い。一方、ヘッダ管9の中心から遠い傾斜管10に接続する鉛直管11は、鉛直管11Aと同じ流路面積とすると隣接する鉛直管11同士を密に設けることができないため、保持層16の外周面で除熱量が低くなる領域が生じ炉心溶融物12を適切に冷却することができない。また、炉心溶融物12から各傾斜管10への伝熱量は配管長さに比例するため、各傾斜管10に生じる熱負荷は配管長さに比例して高くなる。従って、複数の傾斜管10のうち、配管長さが長い傾斜管10には短い傾斜管10よりも多くの冷却水を供給する必要もある。
【0034】
これに対し、本実施形態では、最長傾斜管10Aの配管長さとの差が最長傾斜管10Aの外径よりも大きい傾斜管10に接続した鉛直管11の流路面積を鉛直管11Aの流路面積よりも大きくしているため、隣接する鉛直管11同士を密に設けることができる。これにより、保持層16の外周面で除熱量が低くなる領域が生じることを抑制し、炉心溶融物12を適切に冷却することができる。また、本実施形態では、傾斜管10と鉛直管11とを一対一で接続し、複数の鉛直管11同士が直接つながることなく独立して設けている。そのため、配管長さが長い傾斜管10内で発生した気泡を対応する鉛直管11内に全て導くことができ、その分、対応する鉛直管11内の気泡量を増加させることができる。冷却水配管21内の気泡量が増加するほど冷却水配管21に供給される冷却水流量が増加するため、配管長さが長い傾斜管10に積極的に冷却水を供給することができ、冷却水配管21に供給する冷却水流量を最適化することができる。
【0035】
(2)本実施形態では、配管長さが短い傾斜管10に接続した鉛直管11の流路面積を鉛直管11Aの流路面積よりも大きくしている。そのため、配管長さが短い傾斜管10に接続した鉛直管11内のボイド率(流体の単位体積あたりに含まれる気泡の容積の割合)の平均値を低下させることができる。これにより、冷却水の駆動力(冷却水を循環させる能力)を低下させることができ、配管長さが短い傾斜管10に供給される冷却水流量を相対的に減少させ、その分、配管長さが長い傾斜管10に供給される冷却水流量を相対的に増加させることができる。このことも、冷却水配管21に供給する冷却水流量を最適化に寄与する。
【0036】
<第2実施形態>
(構成)
図4は本実施形態に係るコアキャッチャの上面図、図5は本実施形態に係るコアキャッチャが備える冷却水配管の部分斜視図である。図4,5において、上記第1実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0037】
本実施形態に係るコアキャッチャは、複数の鉛直管11の一部が複数の分割鉛直管で構成されている点で第1実施形態に係るコアキャッチャ8と異なる。その他の構成は、第1実施形態に係るコアキャッチャ8と同様である。
【0038】
本実施形態では、最長傾斜管10Aの配管長さとの差が最長傾斜管10Aの外径よりも大きい傾斜管に接続する鉛直管を複数(本実施形態では2つ)の分割鉛直管30で構成している。つまり、最長傾斜管10Aの配管長さとの差が最長傾斜管10Aの外径よりも大きい傾斜管に対し分割鉛直管30を複数接続し、傾斜管10内の冷却水及び気泡の出口を複数としている。各傾斜管10に接続した複数の分割鉛直管30は、その流路面積の和が鉛直管11Aの流路面積に対して大きくなるように形成されている。なお、本実施形態では複数の分割鉛直管30を断面視で矩形に形成している。
【0039】
図4に例示する構成では、最長傾斜管10Aと傾斜管10Dの配管長さの差Ddは、最長傾斜管10Aの内径Daよりも大きい。そのため、傾斜管10Dに分割鉛直管30A,30Bを接続している。同様に、傾斜管10Dの最短傾斜管10B側に隣接する傾斜管から最短傾斜管10Bの間の傾斜管(最短傾斜管10Bを含む)にそれぞれ分割鉛直管30C,30D、30E,30F、30G,30Hを接続している。上述では、複数の鉛直管11のうち、上方から見て、右上の領域に設けられたものについて説明したが、右下、左上及び左下の領域に設けられたものも同様である。
【0040】
なお、図2,3に例示する構成では、最長傾斜管10Aの配管長さとの差が最長傾斜管10Aの外径よりも大きい傾斜管10のうち、最短傾斜管10Bに接続した複数の分割鉛直管30G,30Hの流路面積の和を最短傾斜管10Bを除く傾斜管10に接続した分割鉛直管30の流路面積の和に対して大きくしてある。
【0041】
(効果)
本実施形態では、最長傾斜管10Aの配管長さとの差が最長傾斜管10Aの外径よりも大きい傾斜管10に接続する鉛直管11を複数の分割鉛直管30で構成し、最長傾斜管10Aの配管長さとの差が最長傾斜管10Aの外径よりも大きい傾斜管10に分割鉛直管30を複数接続している。そのため、隣接する鉛直管11同士を密に設けることができるとともに、配管長さが長い傾斜管10内で発生した気泡を対応する鉛直管11内に全て導くことができる。また、配管長さが短い傾斜管10に接続した鉛直管11の流路面積を鉛直管11Aの流路面積よりも大きくしてある。以上のことから本実施形態に係るコアキャッチャでも第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0042】
加えて、本実施形態では、必要に応じて分割鉛直管の本数を選択し設置することができるので、第1実施形態に比べて設計自由度を高めることができる。
【0043】
<第3実施形態>
(構成)
図6は、本実施形態に係るコアキャッチャが備える冷却水配管の部分斜視図である。図6において、上記第1実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0044】
本実施形態に係るコアキャッチャは、複数の鉛直管11のうち一部の鉛直管の配管長さが異なる点で第1実施形態に係るコアキャッチャ8と異なる。その他の構成は、第1実施形態に係るコアキャッチャ8と同様である。
【0045】
図6に示すように、本実施形態では、最長傾斜管10Aの配管長さとの差が最長傾斜管10Aの外径よりも小さい傾斜管10に接続した鉛直管11の配管長さを最長傾斜管10Aに接続した鉛直管11Aの配管長さと同じとし、最長傾斜管10Aの配管長さとの差が最長傾斜管10Aの外径よりも大きい傾斜管10に接続した鉛直管11の配管長さを最長傾斜管10Aに接続した鉛直管11Aの配管長さよりも短くしており、最長傾斜管10Aに接続した鉛直管11Aに対して最短傾斜管10Bに接続した鉛直管11Bの配管長さを短くしてある。
【0046】
なお、図6に示すように、本実施形態では、最短傾斜管10Bに接続した鉛直管11Bの配管長さを複数の鉛直管11のうちで最も短くしている。
【0047】
(効果)
本実施形態でも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、本実施形態では、以下の効果が得られる。
【0048】
本実施形態では、最長傾斜管10Aの配管長さとの差が最長傾斜管10Aの外径よりも大きい傾斜管10に接続した鉛直管11の配管長さを最長傾斜管10Aに接続した鉛直管11の配管長さよりも短くしている。つまり、最長傾斜管10Aの配管長さとの差が大きく、熱負荷が最長傾斜管10Aに比べて小さい、配管長さが短い傾斜管に接続した鉛直管11の配管長さを短くしている。そのため、配管長さが短い傾斜管10に接続した鉛直管11内のボイド率の平均値を第1実施形態よりも低下させ、冷却水の駆動力を減少させることができる。これにより、配管長さが短い傾斜管10に供給される冷却水流量をより低下させ、その分、配管長さが長い傾斜管10に供給される冷却水流量をより増加させることができる。
【0049】
また、最長傾斜管10Aの配管長さとの差が最長傾斜管10Aの外径よりも大きい傾斜管10に接続した鉛直管11の配管長さを短くした分、傾斜管10に鉛直管11をより容易に取り付ける(接続する)ことができる。
【0050】
<第4実施形態>
図7は、本実施形態に係るコアキャッチャが備える冷却水配管の部分斜視図である。図7において、上記第1実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0051】
本実施形態に係るコアキャッチャは、複数の鉛直管11の配管長さがそれぞれ異なる点で第1実施形態に係るコアキャッチャ8と異なる。その他の構成は、第1実施形態に係るコアキャッチャ8と同様である。
【0052】
本実施形態では、複数の鉛直管11の配管長さを傾斜管10の配管長さが短くなるに従い短くしてある。つまり、最長傾斜管10Aに接続した鉛直管11Aの配管長さを最も長くし、鉛直管11Aから最短傾斜管10Bに接続した鉛直管11Bに向かって配管長さを徐々に短くして、鉛直管11Bの配管長さを最も短くしてある。
【0053】
(効果)
本実施形態でも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、本実施形態では、以下の効果が得られる。
【0054】
一般的に、配管長さが短い鉛直管に比べて配管長さが長い鉛直管における冷却水の駆動力は高くなる。本実施形態では、複数の鉛直管11の配管長さを傾斜管10の配管長さが短くなるに従って短くしているため、第1実施形態と比較して、配管長さの長い傾斜管により冷却水を供給することができる。従って、冷却水配管21に供給される冷却水流量をより最適化することができる。なお、本実施形態に係る鉛直管11を第2実施形態の構成とした場合でも同様の効果が得られる。
【0055】
<その他>
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することも可能である。
【0056】
上述した各実施形態では、複数の鉛直管11のうち、鉛直管11Aの断面積を最も小さくし、鉛直管11Bの断面積を最も大きくした構成を例示した。しかしながら、本発明の本質的効果は、冷却水配管に供給される冷却水流量を最適化し、炉心溶融物を適切に冷却することができるコアキャッチャを提供することであり、この本質的効果を得る限りにおいては、必ずしも上述した構成に限定されない。最長傾斜管10Aに接続した鉛直管11Aに対して、最短傾斜管10Bを含む配管長さが短い傾斜管10に接続した鉛直管11の流路面積が大きくしてある限りにおいては、例えば、最短傾斜管10Bに接続した鉛直管11Bの流路面積を隣接する鉛直管の流路面積以下とすることもできる。
【0057】
上述した各実施形態では、冷却水供給源24から冷却水供給配管に冷却水を供給する構成を例示した。しかしながら、上述した本発明の本質的効果を得る限りにおいては、必ずしも上述した構成に限定されない。例えば、冷却水供給源24の代わりにサプレッションプール6から冷却水供給配管に冷却水を供給する構成としても良い。
【0058】
また、上述した第1実施形態では、鉛直管11を断面視で円形及び楕円形に形成した構成を例示した。しかしながら、上述した本発明の本質的効果を得る限りにおいては、必ずしも上述した構成に限定されない。例えば、鉛直管11を断面視で矩形に形成しても良い。
【0059】
また、上述した第2実施形態では、分割鉛直管30を断面視で矩形に形成した構成を例示した。しかしながら、上述した本発明の本質的効果を得る限りにおいては、必ずしも上述した構成に限定されない。例えば、分割鉛直管30を断面視で円形又は楕円形に形成しても良い。
【符号の説明】
【0060】
2 原子炉格納容器
7 床面
8 コアキャッチャ
9 ヘッダ管
10 傾斜管
10A 最長傾斜管
10B 最短傾斜管
11 鉛直管
16 保持層
30 分割鉛直管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7