(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6590774
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】コンテンツ配信システムのサーバ装置、転送装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 13/00 20060101AFI20191007BHJP
H04L 12/741 20130101ALI20191007BHJP
【FI】
G06F13/00 520C
G06F13/00 351A
H04L12/741
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-184651(P2016-184651)
(22)【出願日】2016年9月21日
(65)【公開番号】特開2018-49473(P2018-49473A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2018年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】横田 健治
(72)【発明者】
【氏名】栗原 淳
(72)【発明者】
【氏名】田上 敦士
【審査官】
安藤 一道
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−149714(JP,A)
【文献】
特開2015−233269(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0227166(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 13/00
H04L 12/741
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配信を要求するコンテンツのコンテンツ名を含む要求パケットを、当該コンテンツ名に基づき転送するコンテンツ配信システムの転送装置であって、
転送した要求パケットの応答としてコンテンツ及びリスト情報を含むデータ・パケットを受信すると、当該要求パケットの送信元の転送装置の識別子と当該リスト情報とに基づき当該コンテンツを当該送信元の転送装置に送信可能であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段が送信可能であると判定すると前記データ・パケットを前記送信元の転送装置に送信する通信手段と、
を備えており、
前記コンテンツ配信システムの複数の転送装置の識別子は、複数のビットで示され、
データ・パケットに含まれるリスト情報は、前記コンテンツ配信システムの複数の転送装置の内、当該データ・パケットに含まれるコンテンツの送信先とすることができる転送装置の識別子のビット毎の論理演算により生成される、或いは、前記コンテンツ配信システムの複数の転送装置の内、当該データ・パケットに含まれるコンテンツの送信先とすることができない転送装置の識別子のビット毎の論理演算により生成されることを特徴とする転送装置。
【請求項2】
転送した要求パケットの応答としてコンテンツ及びリスト情報を含むデータ・パケットを受信すると、当該コンテンツをキャッシュするか否かを判定し、キャッシュすると判定すると、当該コンテンツを当該リスト情報に関連付けてキャッシュするキャッシュ手段をさらに備えており、
前記判定手段は、前記キャッシュ手段がキャッシュしているコンテンツを要求する要求パケットを受信すると、当該要求パケットの送信元の転送装置の識別子と当該コンテンツに関連付けられたリスト情報と、に基づき当該コンテンツを当該送信元の転送装置に送信可能であるか否かを判定し、
前記通信手段は、前記判定手段が送信可能であると判定すると、前記キャッシュ手段にキャッシュされたコンテンツ及び当該コンテンツに関連付けられたリスト情報を含むデータ・パケットを、前記要求パケットの送信元の転送装置に送信することを特徴とする請求項1に記載の転送装置。
【請求項3】
前記コンテンツ配信システムの複数の転送装置はグループ化されており、
同じグループの転送装置には同じ識別子が付与されることを特徴とする請求項1又は2に記載の転送装置。
【請求項4】
前記転送装置の識別子は、1つのビットのみが第1の値で、残りのビットが前記第1の値とは異なる第2の値であり、
データ・パケットに含まれるリスト情報は、前記コンテンツ配信システムの複数の転送装置の内、当該データ・パケットに含まれるコンテンツの送信先とすることができる転送装置の識別子に基づき生成され、
前記判定手段は、前記リスト情報と、前記要求パケットの送信元の転送装置の識別子とのビット毎の論理演算の結果、前記複数のビットの総てのビットが同じ値になると、前記要求パケットの送信元の転送装置への送信が不可であると判定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の転送装置。
【請求項5】
前記転送装置の識別子は、1つのビットのみが第1の値で、残りのビットが前記第1の値とは異なる第2の値であり、
データ・パケットに含まれるリスト情報は、前記コンテンツ配信システムの複数の転送装置の内、当該データ・パケットに含まれるコンテンツの送信先とすることができない転送装置の識別子に基づき生成され、
前記判定手段は、前記リスト情報と、前記要求パケットの送信元の転送装置の識別子とのビット毎の論理演算の結果、前記複数のビットの総てのビットが同じ値になると、前記要求パケットの送信元の転送装置への送信が可能であると判定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の転送装置。
【請求項6】
前記転送装置の識別子は、前記複数のビットの内、所定数以下のビットが第1の値で、残りのビットが前記第1の値とは異なる第2の値であり、
データ・パケットに含まれるリスト情報は、前記コンテンツ配信システムの複数の転送装置の内、当該データ・パケットに含まれるコンテンツの送信先とすることができる転送装置の識別子に基づき生成され、
前記判定手段は、前記リスト情報と、前記要求パケットの送信元の転送装置の識別子とのビット毎の論理演算の結果が前記要求パケットの送信元の転送装置の識別子に一致すると、前記要求パケットの送信元の転送装置への送信が可能であると判定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の転送装置。
【請求項7】
前記転送装置の識別子は、前記複数のビットの内、所定数以下のビットが第1の値で、残りのビットが前記第1の値とは異なる第2の値であり、
データ・パケットに含まれるリスト情報は、前記コンテンツ配信システムの複数の転送装置の内、当該データ・パケットに含まれるコンテンツの送信先とすることができない転送装置の識別子に基づき生成され、
前記判定手段は、前記リスト情報と、前記要求パケットの送信元の転送装置の識別子とのビット毎の論理演算の結果が前記要求パケットの送信元の転送装置の識別子に一致すると、前記要求パケットの送信元の転送装置への送信が不可であると判定することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の転送装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の転送装置としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項9】
配信を要求するコンテンツのコンテンツ名を含む要求パケットを、当該コンテンツ名に基づき転送するコンテンツ配信システムのサーバ装置であって、
前記コンテンツ配信システムは、それぞれが1つ以上の転送装置を含む複数のネットワークを含み、
前記サーバ装置は、
前記複数のネットワークの内、コンテンツの送信先とすることができるネットワーク、或いは、コンテンツの送信先とすることができないネットワークを示す当該コンテンツのリスト情報を保持する保持手段と、
コンテンツを要求する要求パケットを受信すると、当該コンテンツと当該コンテンツのリスト情報を含むデータ・パケットを送信する通信手段と、
を備えており、
前記複数のネットワークそれぞれには複数のビットで示される識別子が付与され、
前記コンテンツのリスト情報は、前記複数のネットワークの内、当該コンテンツの送信先とすることができるネットワークの識別子のビット毎の論理演算により生成される、或いは、当該コンテンツの送信先とすることができないネットワークの識別子のビット毎の論理演算により生成されることを特徴とするサーバ装置。
【請求項10】
前記サーバ装置は、コンテンツの送信先とすることができるネットワーク、或いは、コンテンツの送信先とすることができないネットワークが指定されると、指定されたネットワークの識別子に基づき前記リスト情報を生成する生成手段をさらに備えていることを特徴とする請求項9に記載のサーバ装置。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のサーバ装置としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンテンツ名に基づきルーティングを行うコンテンツ配信システムのサーバ装置、転送装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンテンツを示す名前に基づきコンテンツの要求及び配信を行うコンテンツ配信システムが提案されている。特許文献1及び非特許文献1は、その様なシステムの1つであるコンテンツ・セントリック・ネットワーク(CCN:Content Centric Networking)を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−277234号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】V.Jacobson,et al.,"Networking Named Content",in Proceedings of ACM CoNEXT 2009,2009年12月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CCNにおいて、コンテンツを公開するサーバ装置は当該コンテンツを1つ以上のチャンクと呼ばれるオブジェクトに分割し、クライアント装置は、この分割されたオブジェクト単位でコンテンツを取得する。また、CCNにおいて、オブジェクトの転送を行った通信装置(以下、転送装置と呼ぶ。)は、当該オブジェクトを保存(キャッシュ)できる。この転送装置は、自装置がキャッシュしているオブジェクトを要求するインタレスト・パケット(要求パケット)をクライアント装置から受信すると、当該インタレスト・パケットをサーバ装置に向けて転送することなく、自装置がキャッシュしているオブジェクトを、当該インタレスト・パケットの送信元のクライアント装置に向けて送信できる。
【0006】
以下に、転送装置の動作の一例を説明する。転送装置は、CS(Contents Store)と、FIB(Forward Information Base)と、PIT(PIT:Pending Interest Table)を管理する。CSは、自装置がキャッシュしているオブジェクトを示す情報である。FIBは、インタレスト・パケットが要求するオブジェクトと、当該インタレスト・パケットを転送すべきインタフェースとの関係を示す情報である。PITは、転送したインタレスト・パケットが要求するオブジェクトと、当該転送したインタレスト・パケットを受信したインタフェースとの関係を示す情報である。
【0007】
転送装置は、インタレスト・パケットを受信すると、CSを検索し、当該インタレスト・パケットが要求するオブジェクトをキャッシュしているか否かを判定する。キャッシュしている場合には、自装置がキャッシュしているオブジェクトを含むデータ・パケットを、当該インタレスト・パケットの送信元のクライアント装置に向けて送信する。なお、当該データ・パケットを送信するインタフェースは、当該インタレスト・パケットを受信したインタフェースである。一方、受信したインタレスト・パケットが要求するオブジェクトをキャッシュしていない場合には、転送装置は、PITを検索して、当該インタレスト・パケットと同じオブジェクトを要求するインタレスト・パケットを既に転送し、当該オブジェクトの受信待ちの状態であるかを判定する。受信待ちの状態であると、受信したインタレスト・パケットを転送せず、当該インタレスト・パケットの受信インタフェースを、当該インタレスト・パケットが要求するオブジェクトに関連付ける様にしてPITを更新する。一方、受信したインタレスト・パケットが要求するオブジェクトの受信待ちでなければ、FIBに基づき判定したインタフェースから当該インタレスト・パケットを転送すると共にPITを更新する。また、転送装置は、オブジェクトを含むデータ・パケットを受信すると、当該オブジェクトの転送先インタフェースをPITに基づき判定して転送し、当該オブジェクトに関する情報をPITから削除する。なお、転送先インタフェースは、当該オブジェクトを要求するインタレスト・パケットを受信したインタフェースである。また、転送装置は、受信して転送したオブジェクトをキャッシュするとCSを更新する。
【0008】
この様に、CCNにおいては、オブジェクトを含むデータ・パケットを、当該オブジェクトを要求するインタレスト・パケットを受信したインタフェースに送信する。よって、オブジェクトは、当該オブジェクトを要求するインタレスト・パケットと同じ経路を逆向きに転送されて、当該オブジェクトを要求したクライアント装置に配信される。インタレスト・パケットには、要求するオブジェクトを示す情報(オブジェクト名)が含まれるが、インタレスト・パケットの送信元のクライアント装置を特定するための情報は含まれない。したがって、保存しているオブジェクトを配信するサーバ装置や転送装置は、オブジェクトを要求したクライアント装置がどの地域又はネットワークに配置されているかを認識できない。
【0009】
一方、現在のインターネットによるコンテンツ配信においては、コンテンツを要求するIPパケットには、要求元のクライアント装置のIPアドレスが設定されている。したがって、コンテンツ配信を行うサーバ装置は、要求元のクライアント装置のIPアドレスに基づき、要求元のクライアント装置が位置する地域・ネットワークを判定することができる。したがって、サーバ装置は、各コンテンツについて配信可能な地域、例えば、国を予め決めておき、コンテンツの要求元のクライアント装置が、当該コンテンツを配信可能な地域内のものであれば要求されたコンテンツを配信し、配信可能な地域内のものでなければ要求されたコンテンツを配信しないといった制御を行うことができる。
【0010】
本発明は、コンテンツの要求パケットのルーティングを、コンテンツ名に基づき転送するコンテンツ配信システムにおいて、コンテンツの配信先を制御できる仕組みを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面によると、配信を要求するコンテンツのコンテンツ名を含む要求パケットを、当該コンテンツ名に基づき転送するコンテンツ配信システムの転送装置は、転送した要求パケットの応答としてコンテンツ及びリスト情報を含むデータ・パケットを受信すると、当該要求パケットの送信元の転送装置の識別子と当該リスト情報とに基づき当該コンテンツを当該送信元の転送装置に送信可能であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段が送信可能であると判定すると前記データ・パケットを前記送信元の転送装置に送信する通信手段と、を備えており、
前記コンテンツ配信システムの複数の転送装置の識別子は、複数のビットで示され、データ・パケットに含まれるリスト情報は、前記コンテンツ配信システムの複数の転送装置の内、当該データ・パケットに含まれるコンテンツの送信先とすることができる転送装置の識別子のビット毎の論理演算により生成される、或いは、前記コンテンツ配信システムの複数の転送装置の内、当該データ・パケットに含まれるコンテンツの送信先とすることができない転送装置の識別子のビット毎の論理演算により生成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、コンテンツの要求パケットのルーティングを、コンテンツ名に基づき転送するコンテンツ配信システムにおいて、コンテンツの配信先を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態によるコンテンツ配信システムの構成図。
【
図2】一実施形態によるコンテンツ配信システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の例示的な実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態は例示であり、本発明を実施形態の内容に限定するものではない。また、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。なお、以下では、コンテンツ配信システムがCCNであるものとして本発明の実施形態の説明を行う。しかしながら、本発明は、コンテンツ名に基づき転送装置がルーティングを行い、よって、コンテンツの要求パケットからはコンテンツの要求元のクライアント装置が配置されている地域、又は、ネットワークを直ちに判定できないコンテンツ配信システムに適用することができる。
【0015】
図1は、本実施形態によるコンテンツ配信システムの構成図である。
図1において、コンテンツ配信システムは、4つのネットワーク31、32、33及び34を含んでいる。例えば、各ネットワークは、運用している事業者により区別することができる。また、各ネットワークは、国等の所定の地域により区別することができる。言い換えると、所定の地域に配置されたクライアント装置を収容するネットワークを1つのネットワークとすることができる。本発明では、ネットワーク毎にコンテンツを送信可能であるか否かを設定して配信制御を行う。
図1の構成において、ネットワーク31は、転送装置21、転送装置22及びサーバ装置1を含み、ネットワーク32は転送装置23を含み、ネットワーク33は転送装置24を含み、ネットワーク34は転送装置25及び26を含んでいる。なお、
図1においては、ネットワーク間を相互接続する転送装置のみを示している。つまり、各ネットワークには図示しない複数の転送装置が含まれ得る。また、
図1では、1つのサーバ装置1のみを示しているが、図示しないサーバ装置がネットワーク31〜34には含まれ得る。
【0016】
<第一実施形態>
以下では、サーバ装置1が保持するコンテンツをネットワーク31及び32には配信可能とするが、ネットワーク33及び34には配信不可とする様に制御する場合について説明を行う。このため、本実施形態では、各ネットワークに識別子(ID)を付与する。
図1においては、ネットワーク31に"0001"を付与し、ネットワーク32に"0010"を付与し、ネットワーク33に"0100"を付与し、ネットワーク34に"1000"を付与している。この様に、本実施形態では、ビット列のある1つの位置のビット値を、他の位置のビット値とは異ならせた識別子を付与する。
図1の例では4つのネットワークがあるため、4ビットの識別子を付与する。本実施形態の識別子の付与方法に従うと、識別子の桁数は、ネットワークの数以上である。
【0017】
転送装置21〜26は、自装置が属するネットワークの識別子を保持している。つまり、例えば、転送装置21は、識別子"0001"を保持し、転送装置25は、識別子"1000"を保持している。以下では、転送装置が保持する、当該転送装置が属するネットワークの識別子を、当該転送装置の識別子とも呼ぶものとする。また、各転送装置は、リンクにより直接接続する転送装置に設定されている識別子を通信により交換する。したがって、転送装置22は、転送装置25の識別子が"1000"であることを認識し、転送装置25は、転送装置22の識別子が"0001"であることを認識する。この様に、コンテンツ配信システムの複数の転送装置は、ネットワークにグループ化されており、同じグループの転送装置には同じ識別子が付与されている。
【0018】
さらに、サーバ装置1には、コンテンツを送信(配信)可能なネットワークがユーザにより指定される。サーバ装置1は、コンテンツを送信可能なネットワークがユーザにより指定されると、指定されたネットワークの識別子のビット毎の論理和(OR)を求める。本例では、コンテンツを送信可能なネットワークとしてネットワーク31及び32が指定され、よって、ネットワークの識別子のビット毎の論理和は、"0011"である。この値は、コンテンツの送信先にできるネットワークの総てを識別子で示すものであり、以下では、配信可能リスト情報と呼ぶものとする。
【0019】
サーバ装置1が保持するコンテンツのオブジェクトを要求するインタレスト・パケットを、ネットワーク34に属するクライアント装置が送信し、このインタレスト・パケットが、転送装置25及び転送装置22を介してサーバ装置1に送信されたものとする。この場合、サーバ装置1は、要求されたオブジェクトを含むデータ・パケットを転送装置22に送信するが、サーバ装置1は、当該データ・パケットに配信可能リスト情報を含める。転送装置22は、サーバ装置1からデータ・パケットを受信すると、PITに基づき受信したデータ・パケットの転送先が転送装置25であることを認識する。続いて、転送装置22は、データ・パケットに含まれる配信可能リスト情報と転送装置25の識別子とのビット毎の論理積(AND)を求める。本例においては、配信可能リスト情報が"0011"であり、転送装置25の識別子が"1000"であるので、演算結果は"0000"である。転送装置22は、演算結果のビットの値が総て0であると、受信したデータ・パケットに含まれるオブジェクトを転送装置25に送信できないと判定する。つまり、転送装置22は、転送装置25が、オブジェクトの配信が許可されていないネットワークに属するものと判定する。したがって、転送装置22は、受信したデータ・パケットを廃棄し、転送装置25にはオブジェクトの転送を行わない。これにより、許可されていない地域・ネットワークへのコンテンツの配信を防ぐことができる。
【0020】
一方、転送装置21が転送装置23からインタレスト・パケットを受信して転送し、転送したインタレスト・パケットの応答として、当該インタレスト・パケットが要求するオブジェクトを含むデータ・パケットをサーバ装置1から受信したものとする。配信可能リスト情報が"0011"であり、転送装置23の識別子が"0010"であるので、転送装置21による演算結果は"0010"になる。演算結果のビット列が総て0ではないので、転送装置21は、転送装置23に受信したデータ・パケットを転送する。仮に、インタレスト・パケットを送信したクライアント装置がネットワーク32内の装置であると、最終的に当該データ・パケットは当該クライアント装置に配信される。一方、インタレスト・パケットを送信したクライアント装置がネットワーク33内の装置であるものとする。この場合、転送装置23は、データ・パケットの転送先が転送装置24であることを認識する。しかしながら、配信可能リスト情報が"0011"であり、転送装置24の識別子が"0100"であるので、演算結果は"0000"になり、転送装置23は、データ・パケットを転送装置24に送信することなく廃棄する。
【0021】
また、転送装置は、受信したデータ・パケットを転送したか廃棄したかに拘らず、所定の基準に従い受信したデータ・パケットに含まれるオブジェクトをキャッシュするか否かを判定する。なお、所定の基準とは、キャッシュ用に用意しているメモリに空きがあるか否、空きがない場合には、既にキャッシュされているオブジェクトと、受信したデータ・パケットに含まれるオブジェクトの優先度等に基づく基準とすることができる。転送装置は、受信したデータ・パケットに含まれるオブジェクトをキャッシュすると、CSに当該オブジェクトを示す情報を追加するが、このとき、受信したデータ・パケットに含まれる配信可能リスト情報を、当該オブジェクトに関連付けてCSに追加する。
【0022】
例えば、転送装置23が、あるオブジェクトをキャッシュしているものとする。そして、転送装置23が、転送装置26からキャッシュしているオブジェクトを要求するインタレスト・パケットを受信したものとする。通常のCCNであれば、転送装置23は、キャッシュしているオブジェクトを含むデータ・パケットを転送装置26に送信する。しかしながら、本実施形態では、転送装置23は、キャッシュしているオブジェクトに関連付けられた配信可能リスト情報と転送装置26の識別子とのビット毎の論理積を求めてキャッシュしているオブジェクトを転送装置26に送信可能であるか否かを判定する。本例では、論理積の結果は総てのビットが0であり、よって、転送装置23は、受信したインタレスト・パケットが要求するキャッシュしているオブジェクトを転送装置26には送信しない。なお、キャッシュしているオブジェクトを送信できる場合、転送装置23は、キャッシュしているオブジェクトと、当該オブジェクトに関連付けられた配信可能リスト情報を含むデータ・パケットを生成してインタレスト・パケットの送信元の転送装置に送信する。
【0023】
以上の構成によりコンテンツの配信先を制御することが可能になる。なお、上記実施形態において、識別子は1つのビットだけを"1"とし、その他のビットを"0"としていたが、逆に、1つのビットだけを"0"とし、その他のビットを"1"とする識別子を使用することができる。この場合、サーバ装置1は、コンテンツの配信可能なネットワークの識別子のビット毎の論理積を求めて配信可能リスト情報とする。そして、各転送装置は、配信可能リスト情報と転送先の転送装置の識別子とのビット毎の論理和を求め、総てのビットが1であると送信不可と判定し、そうでなければ送信可能と判定する。つまり、
図1の説明とは、論理積及び論理和の演算を逆転させる。いずれにしても、配信可能リスト情報と転送装置の識別子との論理演算の結果、総てのビットが同じ値となると送信不可と判定し、そうでなければ送信可能と判定する。
【0024】
<第二実施形態>
第一実施形態では、ユーザがサーバ装置1にコンテンツの送信先とすることができるネットワークを指定し、サーバ装置1は、これにより配信可能リスト情報を生成していた。本実施形態では、ユーザは、コンテンツの送信先とすることができないネットワークを指定し、サーバ装置1は、指定されたネットワークの識別子の論理和により配信不可能リスト情報を生成する。
図1の構成を例にすると、ユーザは、ネットワーク33及び34を指定し、よって、サーバ装置1は、識別子"0100"及び識別子"1000"のビット毎の論理和により配信不可能リスト情報"1100"を生成する。
【0025】
本実施形態でも、各転送装置は、データ・パケットを転送する際に、配信不可能リスト情報と転送先の転送装置の識別子とのビット毎の論理積を求める。そして、論理積の演算結果が総て0ではないと、オブジェクトの配信が許可されていない地域・ネットワークであるとしてオブジェクトの転送を行わない。一方、論理積の演算結果が総て0であると、オブジェクトの配信が許可されている地域・ネットワークであるとして、オブジェクトの転送を行う。例えば、転送装置22がサーバ装置1から受信したデータ・パケットの送信先が転送装置25であるものとする。配信不可能リスト情報"1100"と転送装置25の識別子"1000"とのビット毎の論理積は"1000"であるので、転送装置22は、受信したデータ・パケットを転送装置25に送信しない。一方、転送装置21がサーバ装置1から受信したデータ・パケットの転送先が転送装置23であるものとする。配信不可能リスト情報"1100"と転送装置23の識別子"0010"とのビット毎の論理積は"0000"であるので、この場合、転送装置21は、転送装置23に受信したデータ・パケットを送信する。なお、第一実施形態と同様に、識別子については0と1を反転させることも可能である。しかしながら、本実施形態では第一実施形態と異なり、配信不可能リスト情報と、送信先の転送装置、つまり、インタレスト・パケットの送信元の転送装置の識別子とのビット毎の論理演算の結果、総てのビットが同じ値であると送信可能であり、それ以外は送信不可と判定する。
【0026】
<第三実施形態>
第一実施形態及び第二実施形態においてネットワークの識別子は、ビット列の1つの値のみを第1の値(例えば、"1")とし、他の総てのビットの値を第2の値(例えば、"0")とするものであった。したがって、識別子の桁数はネットワークの数以上とする必要がある。本実施形態では、識別子の桁数を抑えるため、ビット列の1つ以上のビットを第1の値(例えば、"1")とし、他の総てのビットの値を第2の値(例えば、"0")とする識別子を使用する。
図2は、
図1のネットワーク構成から各ネットワークの識別子のみを変更したものである。具体的には、ネットワーク31には"00000001"を付与し、ネットワーク32には"00100010"を付与し、ネットワーク33には"00100001"を付与し、ネットワーク34には"10000010"を付与している。
【0027】
第一実施形態と同様に配信可能リスト情報を生成するものとすると、配信可能リスト情報は、"00000001"及び"00100010"のビット毎の論理和であり、"00100011"となる。転送装置22が転送装置25にデータ・パケットを送信するものとすると、転送装置22は、配信可能リスト情報"00100011"と、転送装置25の識別子"10000010"とのビット毎の論理積を演算する。そして、本実施形態では、演算結果が、送信先である転送装置25の識別子に一致するとデータ・パケットの送信を行う。本例では、演算結果は、"00000010"であり、転送装置25の識別子"10000010"と一致しないため、転送装置22は、データ・パケットを転送装置25に送信しない。
【0028】
一方、転送装置21が転送装置23にデータ・パケットを送信するものとすると、転送装置21は、配信可能リスト情報"00100011"と、転送装置23の識別子"00100010"とのビット毎の論理積を演算する。演算結果は、"00100010"であり、転送装置23の識別子と一致するため、転送装置21は、データ・パケットを転送装置23に送信する。
【0029】
また、転送装置23が転送装置24にデータ・パケットを送信するものとすると、転送装置23は、配信可能リスト情報"00100011"と、転送装置24の識別子"00100001"とのビット毎の論理積を演算する。演算結果は、"00100001"であり、転送装置24の識別子と一致するため、転送装置23は、データ・パケットを転送装置24に送信する。本例において、ネットワーク33への配信は不可との設定がなされており、これは、誤判定の例である。誤判定は、識別子のビット列の1つの値のみを第1の値(例えば、"1")とし、他の総てのビットの値を第2の値(例えば、"0")とすると生じないが、本実施形態の様に、2つ以上の値を第1の値とすることで生じる。なお、誤判定が生じる確率は、第1の値とするビットの最大数が大きくなる程、高くなる。しかしながら、第1の値とするビットの最大数を、識別子に使用するビット列の桁数に対して十分小さくすることで、誤判定が生じる確率を実用可能な程度に小さくすることができる。この様に、ある程度の誤判定を許容するのであれば、所定数以下のビットを第1の値とし、残りのビットを第2の値とする識別子を使用することができる。
【0030】
なお、本実施形態においても第二実施形態の様に配信不可能リスト情報を使用することができる。この場合、配信不可能リスト情報と送信先の転送装置の識別子とのビット毎の論理演算の結果が送信先の転送装置の識別子に一致すると送信不可と判定し、一致しないと送信可と判定する。
【0031】
<装置構成>
図3は、上記各実施形態におけるサーバ装置1の構成図である。コンテンツ保持部11は、公開するコンテンツを保持している。リスト保持部12は、ユーザが指定したコンテンツの送信先とすることができるネットワーク、或いは、コンテンツの送信先とすることができないネットワークに基づき、配信可能リスト情報又は配信不可リスト情報を生成して保持する。なお、配信可能リスト情報又は配信不可リスト情報は、コンテンツに拘らず1つとすることも、コンテンツ毎に設けることもできる。コンテンツ毎に配信可能リスト情報又は配信不可リスト情報を設けることで、コンテンツ毎に配信できるネットワークを制御できる。この場合、ユーザは、コンテンツ毎に配信可能又は配信不可のネットワークを指定する。なお、ユーザが直接、配信可能リスト情報又は配信不可リスト情報を入力する形態であっても良い。処理部13は、通信部14を介してインタレスト・パケットを受信すると、当該インタレスト・パケットが要求するオブジェクトをコンテンツ保持部11から読み出してデータ・パケットを生成する。なお、処理部13は、データ・パケットに当該コンテンツについての配信可能リスト情報又は配信不可リスト情報を含める。そして、処理部13は、通信部14を介してデータ・パケットを送信する。
【0032】
図4は、上記各実施形態における転送装置の構成図である。保持部21は、CS、PIT及びFIBと、キャッシュしているオブジェクトを保持している。処理部22は、通信部23を介してデータ・パケットを受信すると、PITに基づき当該データ・パケットの転送先インタフェースを判定する。処理部22は、次に、当該転送先インタフェースに接続されている転送装置の識別子と、受信したデータ・パケットに含まれる配信可能リスト情報又は配信不可リスト情報との論理演算を行い、データ・パケットの送信が可能か否かを判定する。送信が可能であると、処理部22は、通信部23を介して、判定したインタフェースからデータ・パケットを送信する。一方、送信が不可であると、処理部22はデータ・パケットの送信を行わない。なお、送信が可能であるか否かに拘らず、処理部22は、データ・パケットに含まれるオブジェクトをキャッシュすることができる。処理部22は、オブジェクトをキャッシュすると、当該オブジェクトを示す情報のみならず、データ・パケットに含まれていた配信可能リスト情報又は配信不可リスト情報をCSに保存する。これにより、処理部22が、通信部23を介して、自装置がキャッシュしているオブジェクトを要求するインタレスト・パケットを受信し、インタレスト・パケットをサーバ装置1に向けて転送することなくキャッシュしているオブジェクトを送信する際に、オブジェクトの送信可否を判定することができる。なお、自装置がキャッシュしているオブジェクトを送信できない場合、転送装置は、単に、受信したインタレスト・パケットを廃棄する。
【0033】
なお、本発明によるサーバ装置1、転送装置は、コンピュータを上記サーバ装置1、転送装置としてそれぞれ動作させるプログラムにより実現することができる。これらコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【符号の説明】
【0034】
21:保持部、22:処理部、23:通信部