【実施例1】
【0019】
図1は、実施例1に係るデュプレクサを示す回路図である。
図1に示すように、デュプレクサは、送信フィルタ50および受信フィルタ52を備えている。送信フィルタ50は共通端子Antと送信端子Txとの間に接続されている。受信フィルタ52は共通端子Antと受信端子Rxとの間に接続されている。送信フィルタ50はラダー型フィルタ51およびキャンセル線路40を備えている。ラダー型フィルタ51は、直列共振器S1からS4、および並列共振器P1からP3を有している。直列共振器S1からS4は、送信端子Txと共通端子Antとの間に直列に接続されている。並列共振器P1からP3は、送信端子Txと共通端子Antとの間に並列に接続されている。キャンセル線路40は、送信端子Txと共通端子Antの間において、ラダー型フィルタ51に並列に接続されている。
【0020】
受信フィルタ52は直列共振器S11からS14、および並列共振器P11からP13を有している。直列共振器S11からS14は、共通端子Antと受信端子Rxの間に直列に接続されている。並列共振器P11からP13、共通端子Antと受信端子Rxとの間に並列に接続されている。
【0021】
送信フィルタ50は、送信端子Txに入力した信号のうち送信帯域の信号を共通端子Antに通過させ、他の信号を抑圧する。受信フィルタ52は、共通端子Antに入力した信号のうち受信帯域の信号を受信端子Rx通過させ、他の信号を抑圧する。送信フィルタ50の通過帯域と受信フィルタ52の通過帯域は異なっており、重なっていない。
【0022】
ラダー型フィルタ51は、受信帯域の信号を抑圧する。しかし、一部の受信帯域の信号54がラダー型フィルタ51を通過する。信号54により送信フィルタ50の受信帯域における減衰特性が低下する。また、信号54が受信フィルタ52を通過し受信端子Rxから出力されると、送信端子Txから受信端子Rxのアイソレーション特性が劣化する。
【0023】
そこで、キャンセル線路40は、受信帯域における信号54と逆位相で振幅がほぼ同じ信号56を生成する。共通端子Antにおいて信号56は信号54をキャンセルする。これにより、減衰域における減衰特性および/またはアイソレーション特性を改善できる。
【0024】
図2は、比較例1におけるキャンセル線路の回路図である。
図2に示すように、入力端子Tinと出力端子Toutとの間にキャパシタCa、縦結合型共振器42およびキャパシタCbが直列に接続されている。入力端子Tinおよび出力端子Toutは
図1における送信端子Txおよび共通端子Antに相当する。キャパシタCaは入力端子Tinと縦結合型共振器42との間に接続されている。キャパシタCbは縦結合型共振器42と出力端子Toutとの間に接続されている。縦結合型共振器42は、IDT44aおよび44bを備えている。IDT44aはキャパシタCaとグランドとの間に接続されている。IDT44bはグランドとキャパシタCbとの間に接続されている。IDT44aおよび44bは弾性波の伝搬方向に配列されている。
【0025】
縦結合型共振器42は、IDT44aと44bとの間隔、IDT44aおよび44bの電極指間ピッチおよび開口長の少なくとも1つを調整することで、信号56の振幅および位相を調整することができる。キャパシタCaおよびCbはキャンセル線路40のインピーダンスを高くすることで、信号56の振幅を調整できる。
【0026】
図3(a)および
図3(b)は、フィルタAおよびBにおける通過特性およびアイソレーション特性を示す図である。フィルタAおよびフィルタBの詳細は後述するが、フィルタAが
図2の比較例1に相当する。フィルタBは実施例1に相当する。フィルタAおよびBを作製し通過特性およびアイソレーション特性を測定した。
図3(a)に示すように、フィルタAおよびBともに送信帯域60が通過帯域であり、受信帯域62が減衰域である。
図3(b)に示すように、受信帯域62におけるアイソレーション特性はフィルタAおよびBとも良好である。しかしながら、
図3(a)のように、フィルタA(比較例1)では受信帯域62の高周波数側に不要応答64が形成されている。
【0027】
不要応答64が生じる理由は明確ではないが、例えば以下のように考えられる。受信帯域62における信号56の振幅を小さくするため、受信帯域62は縦結合型共振器42の減衰域となるようにする。縦結合型共振器42の減衰域は通過帯域の高周波側と低周波側にある。仮に縦結合型共振器42の高周波側の減衰域を受信帯域62に重なるようにすると、通過帯域が送信帯域60に重なってしまう。そこで、縦結合型共振器42の低周波側の減衰域を受信帯域62に重ねる。これにより、受信帯域62の高周波側に通過帯域に起因する不要応答が生じてしまうと考えられる。
【0028】
不要応答64を抑制するため、フィルタAからDについて検討した。
図4(a)から
図5(b)は、それぞれフィルタAからDを有するデュプレクサの回路図である。
図4(a)に示すように、フィルタAは、デュプレクサの送信フィルタ50である。キャンセル線路40は、
図2の比較例1と同じである。その他の構成は
図1と同じであり説明を省略する。
図4(b)に示すように、フィルタBでは、キャンセル線路40内のキャパシタCbが設けられておらず、配線の形成されていない離間部46が設けられている。その他の構成はフィルタAと同じであり説明を省略する。
【0029】
図5(a)に示すように、フィルタCでは、キャンセル線路40内のキャパシタCaが設けられておらず、配線の形成されていない離間部46が設けられている。その他の構成はフィルタAと同じであり説明を省略する。
図5(b)に示すように、フィルタDでは、縦結合型共振器42と共通端子Antとの間に配線およびキャパシタCbが設けられていない領域47となっている。その他の構成はフィルタAと同じであり説明を省略する。
【0030】
図6から
図9は、フィルタAからDが形成された圧電基板の平面図である。
図6に示すように、フィルタAにおいて、圧電基板10上に弾性波共振器26、配線30、パッド32およびキャンセル線路40が設けられている。弾性波共振器26はIDT20と反射器22を有する。弾性波共振器26は、直列共振器S1からS4および並列共振器P1からP3を含む。直列共振器S2は直列共振器S21およびS22に直列分割されている。配線30は弾性波共振器26間を電気的に接続する。パッド32は、外部回路と接続するためのパッドであり、バンプまたはボンディングワイヤ等が接続する。パッド32は、送信パッドPtx、共通パッドPantおよびグランドパッドPgndを含む。送信パッドPtxはバンプ等を介し送信端子Txに電気的に接続される。共通パッドPantはバンプ等を介し共通端子Antに電気的に接続される。グランドパッドPgndはバンプ等を介しグランドに電気的に接続される。
【0031】
キャンセル線路40は、縦結合型共振器42、キャパシタCaおよびCb、並びに配線34および36を備えている。配線34は、送信パッドPtxとキャパシタCaとを接続する配線34aと、キャパシタCaと縦結合型共振器42とを接続する配線34bと、を有する。配線36は、縦結合型共振器42とキャパシタCbとを接続する配線36aと、キャパシタCbと共通パッドPantとを接続する配線36bと、を有する。
【0032】
直列共振器S1からS4および並列共振器P1からP3は、送信パッドPtxと共通パッドPantとに挟まれた圧電基板10上の領域38に設けられている。キャパシタCaおよび縦結合型共振器42は、領域38より送信パッドPtx側に設けられている。キャパシタCbは、直列共振器S1からS4が形成された領域より共通パッドPant側に設けられている。このため、配線36aは、領域38に隣接し、送信パッドPtx側から共通パッドPant側に延伸する。直列共振器S1からS4および並列共振器P1からP3の中で最も配線36aと隣接する距離をD1とする。
図6では、直列共振器S4が配線36aと最も隣接している。
【0033】
図7に示すように、フィルタBでは、キャパシタCbが設けられていない。離間部46において、配線36aと36bとが対向する幅はW2であり、配線36aと36bとが離間する距離はD2である。その他の構成はフィルタAと同じであり説明を省略する。
【0034】
図8に示すように、フィルタCでは、キャパシタCaが設けられていない。離間部46において、配線34aと34bとが対向する幅はW2であり、配線34aと34bとが離間する距離はD2である。その他の構成はフィルタAと同じであり説明を省略する。
【0035】
図9に示すように、フィルタDでは、キャパシタCbおよび配線36が設けられておらず領域47となっている。その他の構成はフィルタAと同じであり説明を省略する。
【0036】
図10(a)は、フィルタAからDにおける1ポート弾性波共振器の平面図、
図10(b)は
図10(a)のA−A断面図である。
図10(a)および
図10(b)に示すように、圧電基板10上にIDT20および反射器22が形成されている。IDT20および反射器22は、圧電基板10上に形成された金属膜12により形成される。IDT20は、対向する一対の櫛型電極15を備える。櫛型電極15は、複数の電極指16と、複数の電極指16が接続されたバスバー18を備える。一対の櫛型電極15は、電極指16がほぼ互い違いとなるように、対向して設けられている。バスバー18には配線30が接続されている。圧電基板10上に金属膜12を覆うように温度補償膜14が設けられている。
【0037】
電極指16が励振する弾性波は、主に電極指16の配列方向に伝搬する。伝搬した弾性波は反射器22で反射される。電極指16のピッチPがほぼ弾性波の波長λとなる。弾性波の伝搬方向をX方向、伝搬方向に直交する方向(すなわち電極指16の延伸方向)をY方向とする。X方向およびY方向は、圧電基板10の結晶方位のX軸方向およびY軸方向とは必ずしも対応しない。Y方向において電極指16が重なる長さが開口長APである。圧電基板10として回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板を用いる場合、X方向は結晶方位のX軸方向となる。圧電基板10は、サファイア基板、スピネル基板、アルミナ基板等の絶縁基板またはシリコン基板等の半導体基板上に接合されていてもよい。温度補償膜14の代わりに金属膜12より薄い保護膜が設けられていてもよい。金属膜12は、例えばアルミニウム膜または銅膜である。
【0038】
図11は、フィルタAからDにおける縦結合型共振器の平面図である。
図11に示すように、縦結合型共振器42では、反射器22の間にIDT44aおよび44bが設けられている。IDT44aは配線34bとグランドパッドPgndとの間に接続されている。IDT44bは配線36aとグランドパッドPgndとの間に接続されている。その他の構成は1ポート弾性波共振器と同じであり説明を省略する。
【0039】
図12は、フィルタAからDにおけるキャパシタの平面図である。
図12に示すように、キャパシタCaおよびCbは、電極指28およびバスバー28aを有する一対の櫛型電極25を有する。櫛型電極25の両側に反射器27が設けられている。櫛型電極25の一方の電極指28と櫛型電極25の他方の電極指28はほぼ互い違いに設けられるように、一対の櫛型電極25が平面方向に対向している。櫛型電極25の一方は配線34aまたは36aに接続され、櫛型電極25の他方は配線34bまたは36bに接続されている。隣接する電極指28の離間する距離はD3である。電極指28のピッチPはIDT20の電極指16のピッチとは異なる。反射器27およびピッチPの相違により、櫛型電極25が励振する弾性波が弾性波共振器26に干渉することを抑制する。その他の構成は1ポート弾性波共振器と同じであり説明を省略する。
【0040】
フィルタAおよびBを送信フィルタに用いたデュプレクサについて通過特性およびアイソレーション特性を測定した。フィルタCおよびDを送信フィルタに用いたデュプレクサについて通過帯域およびアイソレーション特性をシミュレーションした。測定条件およびシミュレーション条件は以下である。
フィルタ:E−UTRA(Evolved Universal Terrestrial Radio Access) Operating Bandのバンド26(送信帯域:814MHz−849MHz、受信帯域:859MHz−894MHz)
圧電基板10:膜厚が250μmの128°回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板
金属膜12:膜厚が240nmの銅膜
温度補償膜14:膜厚が950nmの酸化シリコン膜
【0041】
図13は、フィルタAおよびBにおけるキャンセル線路の各寸法等を示す図である。
図13に示すように、キャパシタCa、Cbおよび縦結合型共振器42(DMS)のピッチP、IDT対数、反射器対数、開口長AP、IDTデュティ比、反射器デュティ比、D3および容量値を定めた。またキャンセル線路40におけるD1、D2およびW2を定めた。各値は各フィルタAからDにおいて最適化した値である。縦結合型共振器42にはIDTが複数あるためIDT対数は最小と最大を記載した。フィルタCおよびDについては、キャンセル線路40をそれぞれ
図8および
図9のように配置し、その他をフィルタBと同様とした。
【0042】
図14(a)および
図14(b)は、フィルタAからCにおける通過特性およびアイソレーション特性を示す図である。
図14(a)に示すように、フィルタAでは910MHzから930MHzにおいて不要応答64が生じている。フィルタBおよびCでは910MHzから930MHzにおける不要応答64が抑制されている。
図14(b)に示すように、受信帯域62におけるアイソレーション特性はフィルタAからCでほぼ同じである。このように、フィルタBおよびCでは、フィルタAとアイソレーション特性はほぼ同じであり、不要応答64を抑制できる。
【0043】
図15(a)および
図15(b)は、フィルタBおよびDにおける通過特性およびアイソレーション特性を示す図である。
図15(a)に示すように、フィルタDはフィルタBに比べ910MHzから930MHzにおける減衰特性が良好である。
図15(b)に示すように、フィルタDは、フィルタBに比べ受信帯域62におけるアイソレーション特性が劣化している(実線円65参照)。このように、フィルタDではキャンセル線路40が信号54をキャンセルする信号56を生成できておらず、キャンセル線路として機能していない。
【0044】
フィルタBおよびCにおいて不要応答64を抑制できる理由は明確ではないが、以下のように考察した。
図16は、フィルタAの模式的な回路図である。
図16に示すように、フィルタAでは
図6のように、配線36aとラダー型フィルタ51との間が隣接しており寄生容量Cfが付加される。
図6の例では、直列共振器S4と配線36aとの間に最も大きな寄生容量Cfが付加される。
【0045】
フィルタAでは、縦結合型共振器42を介した信号56(
図1参照)の振幅が大きく、縦結合型共振器42の通過帯域が不要応答64となる。フィルタBおよびCでは、キャパシタCaまたはCbを設けず離間部46とするため、離間部46のインピーダンスが大きくなる。このため、縦結合型共振器42を通過する信号56の振幅が小さくなり、不要応答64が抑制できる。離間部46を設けることで、受信帯域62における信号56の振幅が信号54に比べ小さくなると、キャンセル線路として機能しなくなる。しかし、受信帯域62における信号56は、寄生容量Cfを介して流れる。これにより、受信帯域62における信号56と54の振幅をほぼ同じにできる。また、縦結合型共振器42により、受信帯域62における信号56と54をほぼ逆位相にできる。フィルタDでは、寄生容量Cfが非常に小さいため、受信帯域62における信号56の振幅が信号54より小さくなる。これにより、キャンセル線路40はキャンセル線路として機能しなくなる。
【0046】
次に、フィルタBおよびCにおける最適な接続をシミュレーションにより検討した。各フィルタにおける配線34および36内に設けられるキャパシタおよび離間部等は以下である。
フィルタA:配線34にキャパシタCaを設け離間部46を設けず、配線36にキャパシタCbを設け離間部46を設けない
フィルタB:配線34にキャパシタCaを設け離間部46を設けず、配線36にキャパシタCbを設けず離間部46を設ける。
フィルタC:配線34にキャパシタCaを設けず離間部46を設け、配線36にキャパシタCbを設け離間部46を設けない。
フィルタB´:配線34にキャパシタCaおよび離間部46を設けず配線34aと34bを短絡し、配線36にキャパシタCbを設けず離間部46を設ける。
フィルタC´:配線34にキャパシタCaを設けず離間部46を設ける。配線36にキャパシタCbおよび離間部46を設けず配線36aと36bを短絡する。
フィルタE:キャンセル線路40を設けない
【0047】
キャパシタCaおよびCbは電極指の延伸方向を弾性波共振器26の電極指と90°回転している。これにより、キャパシタCaおよびCbと弾性波共振器26との干渉をより抑制している。
図13に対応するシミュレーションの条件を最適化している。
【0048】
図17(a)および
図17(b)は、各フィルタにおける通過特性およびアイソレーション特性を示す図である。
図17(a)に示すように、900MHzから920MHzにおける減衰特性は、フィルタAが最も悪く、フィルタC´、C、B´、BおよびEに従いよくなる。
図17(b)に示すように、受信帯域62におけるアイソレーション特性は、フィルタEは悪く、フィルタA、B、C、B´およびC´は同程度であり、フィルタEよりよい。
【0049】
このように、フィルタEはキャンセル線路40を有していないためアイソレーション特性が悪い。フィルタBとC、B´とC´の比較より、キャパシタCaを離間部46に置き換えるより、キャパシタCbを離間部46に置き換えた方がよい。これは、寄生容量CfがキャパシタCbの代わりになるためと考えられる。すなわち、縦結合型共振器42を共通端子Ant側に設け、配線34bと直列共振器等が隣接する場合、キャパシタCaの代わりに離間部46を設けた方がよい。
【0050】
フィルタBとB´、CとC´の比較より、離間部46に置き換えない方のキャパシタCa(またはCb)を設けず配線34aと34b(または配線36aと36b)とを短絡してもよい。なお、キャパシタCaを設けないと、信号56の振幅を縦結合型共振器42および距離D1で調整することになる。よって、信号56の振幅調整のためキャパシタCaまたはCbを設けることが好ましい。
【0051】
図18(a)から
図18(c)は、実施例1における距離D1を示す図である。
図18(a)に示すように、配線36に弾性波共振器26の反射器22が隣接している。この場合、距離D1は反射器22と配線36との距離である。
図18(b)に示すように、弾性波共振器26は反射器22を有していない。この場合、距離D1はIDT20と配線36との距離である。
図18(c)に示すように、配線36に平面方向に凸部36cが設けられている。この場合、距離D1は凸部36cと反射器22との距離である。
【0052】
[実施例1の変形例]
図19は、実施例1の変形例1に係るデュプレクサの回路図である。
図19に示すように、キャンセル線路40は、受信端子Rxと共通端子Antとの間にラダー型フィルタ53に並列に接続されていてもよい。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。キャンセル線路40は、送信端子Txと受信端子Rxとの間に接続されていてもよい。
【0053】
図20(a)から
図20(c)は、実施例1の変形例2から4におけるキャンセル線路を示す回路図である。
図20(a)のように、配線34にはキャパシタCaおよび離間部46のいずれも設けられていなくてもよい。配線34は、抵抗等が直列に設けられていてもよい。
図20(b)に示すように、配線36aとグランドとの間に1ポート弾性波共振器R1が接続されていてもよい。
図20(c)に示すように、縦結合型共振器42は、3つのIDT44aから44cを有してもよい。縦結合型共振器42が有するIDTの数は4以上でもよい。
【0054】
実施例1およびその変形例によれば、
図7および
図8のように1または複数の直列共振器S1からS4は、領域38に設けられ、送信パッドPtx(入力パッド)と共通パッドPant(出力パッド)との間に直列に電気的に接続されている。1または複数の並列共振器P1からP3は、領域38に設けられ、送信パッドPtxと共通パッドPantとの間に並列に電気的に接続されている。縦結合型共振器42(縦結合型弾性波共振器)は領域38より送信パッドPtx側に設けられている。配線34(第1配線)は送信パッドPtxと縦結合型共振器42とを接続する。配線36(第2配線)は共通パッドPantと縦結合型共振器42とを接続する。離間部46は、配線34または36(第1配線および第2配線のいずれか一方の配線)内に設けられ、離間部46において、配線36と直列共振器および並列共振器との最も隣接する距離D1より大きい距離D2で、配線36aと配線36bと(または配線34aと34bと)が平面方向に離間する。これにより、実施例1のフィルタB、B´、CおよびC´のように、不要応答64を抑制でき、通過帯域外での減衰特性の劣化を抑制できる。
【0055】
フィルタB´およびC´のように、離間部46が設けられてない配線34または36にはキャパシタ素子が設けられていなくてもよい。このとき、配線34または36は直流的導通する線路となっている。配線34または36には抵抗等が直列に接続されていてもよい。
【0056】
フィルタBおよびCのように、キャパシタCaまたはCbは、離間部46が設けられていない配線34または36(第1配線および第2配線の他方の配線)内に直列に設けられている。これにより、キャパシタCaまたはCbのキャパシタンスにより、受信帯域62における信号56の振幅を調整できる。
【0057】
キャパシタCaまたはCb(キャパシタ素子)は、距離D1より小さい距離D3で平面方向に対向する一対の櫛型電極15を有する。これにより、キャパシタCaまたはCbのキャパシタンスを、寄生容量Cfのキャパシタンスより大きくできる。よって、受信帯域62における信号56の振幅をより調整できる。
【0058】
平面方向に対向する電極は櫛型電極15でなくともよいが、平面方向に対向する電極を櫛型電極15とすることで、キャパシタCaまたはCbを小型化できる。
【0059】
フィルタBおよびB´のように、縦結合型共振器42が領域38の送信パッドPtx側に設けられている場合、離間部46は共通パッドPant側に設けられていることが好ましい。すなわち、離間部46は前記第2配線内に設けられていることが好ましい。これにより、減衰特性をより改善できる。
【0060】
配線36が最も隣接する共振器は直列共振器S1からS4でもよいし、並列共振器P1からP3でもよい。ラダー型フィルタ51内を通過する信号54は主に直列共振器S1からS4内を通過する。よって、配線34および36と直列共振器S1からS4および並列共振器P1からP3とは直列共振器の一部において最も隣接することが好ましい。これにより、信号56と54とがキャンセルできる。
【0061】
配線34および36と直列共振器S1からS4とは、最も共通パッドPant側の直列共振器S4において最も隣接することが好ましい。これにより、より共通パッドPant側で信号56と54とがキャンセルできる。
【0062】
配線34、36および縦結合型共振器42は、送信パッドptxから共通パッドPantに直列共振器S1からS4および並列共振器P1からP3を通過するフィルタの通過帯域以外の信号54をキャンセルする信号56を生成する。これにより、信号56と54とがキャンセルし、通過帯域以外の減衰特性の劣化を抑制できる。
【0063】
実施例1およびその変形例において、デュプレクサとして、送信フィルタ50および受信フィルタ52の例を説明したが送信フィルタ同士のデュプレクサ、受信フィルタ同士のデュプレクサでもよい。また、マルチプレクサは、デュプレクサ以外にトライプレクサまたはクワッドプレクサでもよい。
【0064】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。