特許第6590835号(P6590835)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6590835硫黄およびチオールの含有率が低いガソリンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6590835
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】硫黄およびチオールの含有率が低いガソリンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 65/04 20060101AFI20191007BHJP
   C10G 65/06 20060101ALI20191007BHJP
   C10G 45/08 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   C10G65/04
   C10G65/06
   C10G45/08 A
【請求項の数】22
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2016-565014(P2016-565014)
(86)(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公表番号】特表2017-516890(P2017-516890A)
(43)【公表日】2017年6月22日
(86)【国際出願番号】EP2015056589
(87)【国際公開番号】WO2015165664
(87)【国際公開日】20151105
【審査請求日】2018年3月20日
(31)【優先権主張番号】1453795
(32)【優先日】2014年4月28日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】ゴルネイ ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ルフレーヴ フィリベール
(72)【発明者】
【氏名】プッチ アニック
(72)【発明者】
【氏名】トゥザラン オリヴィエ
【審査官】 上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/0129606(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/013153(WO,A1)
【文献】 特表2007−537332(JP,A)
【文献】 特表2001−519834(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103087771(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第101885985(CN,A)
【文献】 特開2008−127569(JP,A)
【文献】 特表平08−502533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄含有化合物およびオレフィンを含有するガソリンの処理方法であって、少なくとも以下の工程:
a) 該ガソリン、水素および水素化脱硫触媒を、少なくとも1基の反応器において接触させて、硫黄含有化合物の少なくとも一部をHSに転化させる工程であって、その際の温度は、200〜400℃の範囲内であり、圧力は0.5〜5MPaの範囲内であり、毎時空間速度は、0.5〜20h-1の範囲内であり、毎時の標準mで表される水素の流量と、標準条件下の毎時の体積mで表される、処理されるべき供給原料の流量との間の比は、50〜1000Nm/mの範囲内である、工程;
b) 工程a)から得られた流出物中に形成されおよび存在するHSを分離するための工程;
c) 工程b)から得られたHSが激減した流出物を、反応器において、少なくとも1種の遷移金属または鉛の少なくとも1種の硫化物を多孔質担体上に沈着させられて含有する触媒と接触させて、ガソリンを製造する工程であって、工程c)が行われる際の温度は、30〜250℃の範囲内であり、液体毎時空間速度は、0.5〜10h-1の範囲内であり、圧力は、0.2〜5MPaの範囲内であり、H/供給原料の比は、供給原料の体積(m)当たり水素0〜25Nmの範囲内であり、ガソリン中のチオールとオレフィンとが反応してチオエーテルが生成し、工程c)から得られたガソリンは、工程b)から得られた流出物のチオール含有率と比較して低下したチオール含有率を有する、工程;
を含む方法であって、
工程a)の前に、ガソリンの蒸留のための工程を行い、前記ガソリンを少なくとも2個のガソリン留分である、軽質ガソリン留分と重質ガソリン留分に分画し、重質ガソリン留分を工程a)、b)およびc)において処理する方法。
【請求項2】
硫黄含有化合物およびオレフィンを含有するガソリンの処理方法であって、少なくとも以下の工程:
a) 該ガソリン、水素および水素化脱硫触媒を、少なくとも1基の反応器において接触させて、硫黄含有化合物の少なくとも一部をHSに転化させる工程であって、その際の温度は、200〜400℃の範囲内であり、圧力は0.5〜5MPaの範囲内であり、毎時空間速度は、0.520h-1の範囲内であり、毎時の標準mで表される水素の流量と、標準条件下の毎時の体積mで表される、処理されるべき供給原料の流量との間の比は、50〜1000Nm/mの範囲内である、工程;
b) 工程a)から得られた流出物中に形成されおよび存在するHSを分離するための工程;
c) 工程b)から得られたHSが激減した流出物を、反応器において、少なくとも1種の遷移金属または鉛の少なくとも1種の硫化物を多孔質担体上に沈着させられて含有する触媒と接触させて、ガソリンを製造する工程であって、工程c)が行われる際の温度は、30〜250℃の範囲内であり、液体毎時空間速度は、0.5〜10h-1の範囲内であり、圧力は、0.2〜5MPaの範囲内であり、H/供給原料の比は、供給原料の体積(m)当たり水素0〜25Nmの範囲内であり、ガソリン中のチオールとオレフィンとが反応してチオエーテルが生成し、工程c)から得られたガソリンは、工程b)から得られた流出物のチオール含有率と比較して低下したチオール含有率を有する、工程;
を含む方法であって、
工程a)の前に、ガソリンの蒸留のための工程を行って、前記ガソリンを、少なくとも2個のガソリン留分である、軽質ガソリン留分および重質ガソリン留分に分画し、重質ガソリン留分を工程a)において処理し、軽質ガソリン留分を、工程a)から得られた流出物と混合して混合物を生じさせ、前記混合物を工程b)およびc)において処理する方法
【請求項3】
硫黄含有化合物およびオレフィンを含有するガソリンの処理方法であって、少なくとも以下の工程:
a) 該ガソリン、水素および水素化脱硫触媒を、少なくとも1基の反応器において接触させて、硫黄含有化合物の少なくとも一部をHSに転化させる工程であって、その際の温度は、200〜400℃の範囲内であり、圧力は0.5〜5MPaの範囲内であり、毎時空間速度は、0.5〜20h-1の範囲内であり、毎時の標準mで表される水素の流量と、標準条件下の毎時の体積mで表される、処理されるべき供給原料の流量との間の比は、50〜1000Nm/mの範囲内である、工程;
b) 工程a)から得られた流出物中に形成されおよび存在するHSを分離するための工程;
c) 工程b)から得られたHSが激減した流出物を、反応器において、少なくとも1種の遷移金属または鉛の少なくとも1種の硫化物を多孔質担体上に沈着させられて含有する触媒と接触させて、ガソリンを製造する工程であって、工程c)が行われる際の温度は、30〜250℃の範囲内であり、液体毎時空間速度は、0.5〜10h-1の範囲内であり、圧力は、0.2〜5MPaの範囲内であり、H/供給原料の比は、供給原料の体積(m)当たり水素0〜25Nmの範囲内であり、ガソリン中のチオールとオレフィンとが反応してチオエーテルが生成し、工程c)から得られたガソリンは、工程b)から得られた流出物のチオール含有率と比較して低下したチオール含有率を有する、工程;
を含む方法であって、
工程a)の前に、ガソリンの蒸留のための工程を行い、前記ガソリンを少なくとも3個のガソリン留分である、それぞれ、軽質ガソリン留分、中間ガソリン留分および重質ガソリン留分に分画し、次いで、中間ガソリン留分を工程a)、次いで、工程b)および工程c)において処理する方法。
【請求項4】
工程c) のための触媒の遷移金属は、第VIB族からの金属、第VIII族からの金属および銅から選択され、これらは、単独でまたは混合物として用いられる、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
工程c)のための触媒は、
・ 担体;比表面積が70〜350m/gの範囲内であるガンマまたはデルタアルミナによって構成される;
・ 第VIB族からの金属の酸化物;全触媒重量に対して1〜30重量%の範囲内の重量による量;
・ 第VIII族からの金属の酸化物;全触媒重量に対して1〜30重量%の範囲内の重量による量;
を含み、
・ 前記触媒の構成金属の硫化率(%)は、最低60%であり;
・ 第VIII族からの金属と第VIB族からの金属との間のモル比は、0.6〜3モル/モルの範囲内である、請求項に記載の方法。
【請求項6】
第VIII族からの金属はニッケルであり、第VIB族からの金属はモリブデンである、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
工程c)のための触媒は、
・ 担体;比表面積が180〜270m/gの範囲内であるガンマアルミナのみによって構成される;
・ 酸化ニッケル;全触媒重量に対して4〜12重量%の範囲内の重量による量;
・ 酸化モリブデン;全触媒重量に対して6〜18重量%の範囲内の重量による量;
を含み、
・ ニッケル/モリブデンのモル比は、1〜2.5モル/モルの範囲内であり;
・ 前記触媒の構成金属の硫化率(%)は、80%超である、請求項に記載の方法。
【請求項8】
工程b)から得られた流出物を軽質ガソリン留分と混合して混合物を生じさせ、前記混合物を工程c)において処理する、請求項に記載の方法。
【請求項9】
混合物は、50体積%までの軽質ガソリン留分を含有する、請求項2または8に記載の方法。
【請求項10】
工程a)の前およびあらゆる任意の蒸留工程の前に、ガソリンを、水素および選択的水素化触媒と接触させ、前記ガソリン中に含まれるジオレフィンをオレフィンに選択的に水素化させる、請求項1〜のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
工程a)のための触媒は、第VIB族からの少なくとも1種の金属および/または第VIII族からの少なくとも1種の金属を、比表面積が250m/g未満である担体上に含有し、酸化物として表される第VIII族からの金属の量が、触媒の重量に対して0.5〜15重量%の範囲内であり、酸化物として表される第VIB族からの金属の量は、触媒の重量に対して1.5〜60重量%の範囲内である、請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
工程a)のための触媒は、コバルトおよびモリブデンを含み、前記MoO重量含有率と触媒の比表面積との間の比として表されるモリブデンの密度が、7×10-4g/m超である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
水素を加えることなく工程c)を行う、請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
硫黄含有化合物およびオレフィンを含有するガソリンの処理方法であって、少なくとも以下の工程:
a) 該ガソリン、水素および水素化脱硫触媒を、少なくとも1基の反応器において接触させて、硫黄含有化合物の少なくとも一部をHSに転化させる工程であって、その際の温度は、200〜400℃の範囲内であり、圧力は0.5〜5MPaの範囲内であり、毎時空間速度は、0.5〜20h-1の範囲内であり、毎時の標準mで表される水素の流量と、標準条件下の毎時の体積mで表される、処理されるべき供給原料の流量との間の比は、50〜1000Nm/mの範囲内である、工程;
b) 工程a)から得られた流出物中に形成されおよび存在するHSを分離するための工程;
c) 工程b)から得られたHSが激減した流出物を、反応器において、少なくとも1種の遷移金属または鉛の少なくとも1種の硫化物を多孔質担体上に沈着させられて含有する触媒と接触させて、ガソリンを製造する工程であって、工程c)が行われる際の温度は、30〜250℃の範囲内であり、液体毎時空間速度は、0.5〜10h-1の範囲内であり、圧力は、0.2〜5MPaの範囲内であり、H/供給原料の比は、供給原料の体積(m)当たり水素0〜25Nmの範囲内であり、ガソリン中のチオールとオレフィンとが反応してチオエーテルが生成し、工程c)から得られたガソリンは、工程b)から得られた流出物のチオール含有率と比較して低下したチオール含有率を有する、工程;
を含む方法であって、
ガソリンを少なくとも2個のガソリン留分である軽質ガソリン留分と重質ガソリン留分とに分離する触媒塔において工程a)を行い、軽質ガソリン留分を、工程b)および工程c)において処理する方法。
【請求項15】
工程d)をさらに含み、該工程d)において、工程c)から得られた流出物を、分画塔に送り、チオール含有率が低いガソリン留分を、分画塔の頭部から分離し、チオエーテル化合物を含有する炭化水素留分を、分画塔の底部から分離する、請求項1〜14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
工程c)のための触媒の床を含む触媒蒸留塔において工程c)およびd)を連続的に行う、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程b)から得られた流出物を、LPG留分、原油蒸留、熱分解装置、コークス化装置、水素化分解装置またはオリゴマー化装置から得られるガソリン留分、およびオレフィンC留分から選択される炭化水素留分と混合し、混合物を、工程c)において処理する、請求項1〜16のいずれか1つに記載の方法。
【請求項18】
工程b)から得られた流出物を、オレフィンC留分との混合物として処理する場合に、工程c)から得られる流出物を分画して、未反応オレフィンC留分を分離し、前記未反応オレフィンC留分を、工程c)のための反応器に再循環させる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
工程c) のための触媒の遷移金属は、第VIB族からの金属、第VIII族からの金属および銅から選択され、これらは、単独でまたは混合物として用いられる、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
工程c)のための触媒は、
・ 担体;比表面積が70〜350m/gの範囲内であるガンマまたはデルタアルミナによって構成される;
・ 第VIB族からの金属の酸化物;全触媒重量に対して1〜30重量%の範囲内の重量による量;
・ 第VIII族からの金属の酸化物;全触媒重量に対して1〜30重量%の範囲内の重量による量;
を含み、
・ 前記触媒の構成金属の硫化率(%)は、最低60%であり;
・ 第VIII族からの金属と第VIB族からの金属との間のモル比は、0.6〜3モル/モルの範囲内である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
第VIII族からの金属はニッケルであり、第VIB族からの金属はモリブデンである、請求項19または20に記載の方法
【請求項22】
工程c)のための触媒は、
・ 担体;比表面積が180〜270m/gの範囲内であるガンマアルミナのみによって構成される;
・ 酸化ニッケル;全触媒重量に対して4〜12重量%の範囲内の重量による量;
・ 酸化モリブデン;全触媒重量に対して6〜18重量%の範囲内の重量による量;
を含み、
・ ニッケル/モリブデンのモル比は、1〜2.5モル/モルの範囲内であり;
・ 前記触媒の構成金属の硫化率(%)は、80%超である、請求項21に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄およびチオールの含有率が低いガソリンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新しい環境基準を満たすガソリンの製造には、それらの硫黄含有率が実質的に低下させられていることが要求されている。
【0003】
転化ガソリン、より特定的には、接触分解から得られたものは、ガソリンプールの30〜50%を示し得るものであり、このものは、モノオレフィンおよび硫黄の含有率が高いことが知られている。
【0004】
この理由のために、ガソリン中に存在する硫黄の約90%が、接触分解方法から得られたガソリン(これは、以降において、FCC(fluid catalytic cracking:流動式接触分解)ガソリンと称されることになる)によるものとされ得る。それ故に、FCCガソリンは、本発明の方法にとって好ましい供給原料を構成する。
【0005】
広範囲に用いられてきた、硫黄含有率が低い燃料の製造への考えられる経路は、水素の存在下に行われる接触水素化脱硫方法を用いて硫黄リッチなガソリンベースを特に処理することからなる。伝統的な方法により、モノオレフィンの大部分を水素化させることにより非選択的にガソリンが脱硫させられるが、これにより、オクタン価における大きな降下および大きな水素消費が引き起こされる。最新の方法、例えば、Prime G+法(登録商標)は、モノオレフィンの水素化を制限しつつ、その結果として、生じるオクタン価の降下および高い水素消費を制限しつつ、オレフィンを豊富に含む分解ガソリンを脱硫させるために用いられ得る。当該タイプの方法は、例えば特許出願である特許文献1および2に記載されている。
【0006】
脱硫ガソリン中に一般的に存在する残留硫黄含有化合物は、相異なる2族に分離され得る:一方の供給原料中に存在する未転化硫黄含有化合物と再結合反応として知られる二次反応によって反応器中で形成された硫黄含有化合物。硫黄含有化合物のこの後者の族において、主たる化合物は、反応器中で形成されたHSの供給原料中に存在するモノオレフィンへの付加によって得られたチオールである。化学式R−SH(ここで、Rはアルキル基である)を有するチオールは、再結合チオールとしても知られており、一般的に、脱硫ガソリン中の残留硫黄の20〜80重量%を示す。
【0007】
硫黄の含有率が非常に低い、典型的には、欧州において要求されるような10重量ppm未満の硫黄を含有するガソリンを得るには、それ故に、再結合チオールの少なくとも一部を除去することが要求される。再結合チオールの量におけるこの低減は、接触水素化脱硫によって行われ得るが、これは、ガソリン中に存在するモノオレフィンの大部分の水素化を含み、このことにより、ガソリンのオクタン価における大きな低減並びに水素の行き過ぎた消費がもたらされる。
【0008】
これらのデメリットを制限するために、種々の解決方法が文献に記載され、存在するモノオレフィンの水素化を避けてオクタン価を保つように注意深く選択された技術により水素化脱硫の工程と再結合チオール除去の工程とを組み合わせることによって分解ガソリンが脱硫させられる(特許文献3〜6を参照のこと)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1077247号明細書(特開2001−55584号公報)
【特許文献2】欧州特許出願公開第1174485号明細書(特開2002−47497号公報)
【特許文献3】米国特許第7799210号明細書(特開2007−537332号公報)
【特許文献4】米国特許第6960291号明細書(特表2004−532928号公報、特表2004−531622号公報、特表2004−538346号公報)
【特許文献5】米国特許第6387249号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2007/114156号明細書(特表2009−517499号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、再結合チオールの除去のための最終工程を用いるこうした組合せは非常に低い硫黄含有率が要求される場合に特に適している一方で、これらは、除去されるべきチオールの量が多い場合に非常に高価であるという結果になり得るようである;例えば、高額な吸着剤または溶媒の消費が不可避である。このような状況は、特に、ガソリンプール中の許容できるチオール含有率が全硫黄仕様より相当低い場合に生じ得、これは、多くの国、特にアジアにおける場合である。燃料中にチオールの形態または硫化水素(HS)の形態で存在する硫黄は、毒性および臭気による問題を引き起こすことに加えて、分配システム中に存在する金属性のおよび非金属性の材料の多くに攻撃を生じさせ得る。それ故に、燃料中のチオールに関するほとんど全ての国における仕様は、非常に低く(典型的にはRSH 10ppm未満)(電位差測定法(ASTM D 3227法)を用いるチオール含有率の測定)、全硫黄仕様が比較的高い(例えば、50〜500重量ppm)場合を含む。他の国は、満たされなければならない否定的な仕様を用いてチオールを定量するために「Doctor Test」測定を採用した(ASTM D4952−12法)。
【0011】
それ故に、所定の場合に、オクタン価を損なうことなしで達成するのが最も困難であるために、最も制限的な仕様は、全硫黄仕様よりもむしろチオールの仕様であるようである。
【0012】
本発明の一つの目的は、硫黄を含有し、その一部はチオールの形態にあるガソリンの処理方法であって、試薬、例えば、水素または抽出溶媒の消費と併せて極力オクタン価の喪失を制限しながら前記炭化水素フラクションのチオール含有率を低下させるために用いられ得る、方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の概要)
本発明は、硫黄含有化合物およびオレフィンを含有するガソリンの処理方法であって、少なくとも以下の工程:
a) 該ガソリン、水素および水素化脱硫触媒を、少なくとも1基の反応器において接触させて硫黄含有化合物の少なくとも一部をHSに転化させる工程であって、その際の温度は200〜400℃の範囲内であり、圧力は、0.5〜5MPaの範囲内であり、毎時空間速度は、0.5〜20h−1の範囲内であり、毎時の標準mで表される水素の流量と、標準条件下の毎時のmで表される処理されるべき供給原料の流量との間の比が50〜1000Nm/mの範囲内である、工程;
b) 工程a)から得られた流出物中に形成されおよび存在するHSを分離する工程;
c) 工程b)から得られた、HSが激減した流出物を、反応器において、少なくとも1種の遷移金属または鉛の少なくとも1種の硫化物を多孔質担体上に沈着させられて含有する触媒と接触させてガソリンを製造する工程であって、工程c)が行われる際の温度は、30〜250℃の範囲内であり、液体毎時空間速度は、0.5〜10h−1の範囲内であり、圧力は、0.4〜5MPaの範囲内であり、H/供給原料の比は、供給原料の体積(m)当たり水素0〜25Nmの範囲内である、工程
を含み、
工程c)から得られたガソリンは、工程b)から得られた流出物のチオール含有率と比較して低下したチオール含有率を有する、方法を提供する。
【0014】
実際に驚くべきことに、ガソリン水素化脱硫反応器の下流で触媒および特定の操作条件を用いることにより、オレフィンとの反応による、再結合チオール(一般的に反応性が低い化合物である)のチオエーテルタイプの化合物への十分な転化がもたらされ得ることが示された。それ故に、脱チオール化工程c)(非脱硫スイートニング工程とも称され得る)が、過酷で高価な水素化脱硫仕上げ工程を必要とすることなく低いチオール含有率仕様を有するガソリンを製造するために用いられ得る。
【0015】
本発明の方法のさらなる利点は、過酷さがはるかに少ない(例えば、操作温度および/または圧力におけるより大きい低下)水素化脱硫工程(工程a))のための操作条件により最終脱硫ガソリン中に非常に低いチオール含有率(例えば、10重量ppm未満)を得るためにそれが用いられ得るという事実から生じ、これは、オクタン価の喪失を制限し、水素化脱硫工程のための触媒の耐用期間を増加させ、さらには、エネルギー消費を低減させるという効果を有する。
【0016】
好ましくは、工程c)の触媒の遷移金属は、第VIB族からの金属、第VIII族からの金属および銅から選択され、これらは、単独でまたは混合物として用いられる。
【0017】
好ましい実施形態によると、工程c)の触媒は、
・ 担体;比表面積が70〜350m/gの範囲内であるガンマまたはデルタアルミナによって構成される;
・ 第VIB族からの金属の酸化物;全触媒重量に対して1〜30重量%の範囲内の量;
・ 第VIII族からの金属の酸化物;全触媒重量に対して1〜30重量%の範囲内の量;
を含み、
・ 前記触媒の構成金属の硫化率(%)は、最低60%であり;
・ 第VIII族からの金属と第VIB族からの金属との間のモル比は、0.6〜3モル/モルの範囲内である。
【0018】
好ましくは、第VIII族からの金属は、ニッケルであり、第VIB族からの金属は、モリブデンである。
【0019】
一つの実施形態によると、工程c)の触媒は、
・ 担体;比表面積が180〜270m/gの範囲内であるガンマアルミナのみによって構成される;
・ 酸化ニッケル;全触媒重量に対して4〜12重量%の範囲内の重量による量;
・ 酸化モリブデン;全触媒重量に対して6〜18重量%の範囲内の重量による量
を含み、
・ ニッケル/モリブデンのモル比は、1〜2.5モル/モルの範囲内であり、
・ 前記触媒の構成金属の硫化率(%)は、80%超である。
【0020】
本発明の方法は、工程b)から得られた流出物を、LPG(liquefied petroleum gas:液化石油ガス)留分、原油蒸留、熱分解装置、コークス化装置、水素化分解装置、またはオリゴマー化のための装置から得られたガソリン留分、およびオレフィンC留分から選択される炭化水素留分と混合する工程を含んでよく、この混合物が工程c)において処理される。工程b)から得られた流出物を、オレフィンC留分との混合物として処理する好ましいバリエーションにおいて、工程c)から得られた流出物は、未反応オレフィンC留分を分離するように分画され、前記未反応オレフィンC留分は、工程c)のための反応器に再循環させられる。この好ましい実施形態において、工程b)から得られた流出物は、オレフィンC留分と混合されて、チオールのオレフィンへの付加のための反応がスイートニング反応器において促進される。有利には、スイートニング工程c)から得られた流出物は、反応しなかったCオレフィンを含有する留分を分離するように分画され、前記オレフィンC留分は、スイートニング反応器に再循環させられる。
【0021】
あるいは、工程a)の前に、ガソリンの蒸留のための工程が行われて、前記ガソリンが少なくとも2個のガソリン留分である軽質ガソリン留分および重質ガソリン留分に分画され、重質ガソリン留分が工程a)、b)およびc)において処理される。
【0022】
別の実施形態によると、工程b)から得られた流出物は、蒸留から得られた軽質ガソリン留分と混合されて、混合物が生じさせられ、前記混合物が、工程c)において処理される。
【0023】
本発明との絡みで、工程a)の前に、ガソリンの蒸留のための工程を行って、前記ガソリンを少なくとも2個のガソリン留分である軽質ガソリン留分および重質ガソリン留分に分画することも可能であり、重質ガソリン留分が工程a)において処理され、軽質ガソリン留分は、工程a)から得られた流出物と混合されて、混合物を生じさせ、前記混合物が工程b)およびc)において処理される。
【0024】
好ましくは、上記の実施形態との絡みで、軽質ガソリン留分との混合物は、50体積%までの軽質ガソリン留分を含有する。
【0025】
本方法の別の実施形態によると、工程a)の前に、ガソリンの蒸留のための工程が行われて、前記ガソリンが少なくとも3個のガソリン留分である、それぞれ、軽質ガソリン留分、中間ガソリン留分および重質ガソリン留分に分画され、次いで、中間ガソリン留分が、工程a)、次いで工程b)および工程c)において処理される。この実施形態において、蒸留から得られた重質ガソリン留分は、有利には、水素化脱硫工程で専用装置において処理され、次いで、HSを除去した後にチオールのスイートニングのための工程を経る。脱硫重質ガソリン留分のスイートニングのための工程は、専用反応器または中間ガソリン留分を処理するものと同一のスイートニング反応器(中間および重質の留分は、混合物としてスイートニング反応器において処理される)のいずれかにおいて行われてよい。
【0026】
工程a)の前およびあらゆる任意の蒸留工程の前に、ガソリンを水素および選択的水素化触媒と接触させて、前記ガソリン中に含まれるジオレフィンをオレフィンに選択的に水素化させることも可能である。ジオレフィンの選択的水素化のためのこの工程は、選択的水素化触媒を含むセクションを備えた触媒蒸留塔において行われてよい。
【0027】
本発明との絡みで、あるいは、工程a)および/またはc)は、少なくとも1個の触媒床を含む触媒塔である反応器において行われてよく、この反応器において、触媒反応とガソリンの少なくとも2個の留分(またはフラクション)への分離の両方が行われる。触媒塔において工程a)が行われる場合、触媒塔から得られた留分は、別々にまたは混合物として工程b)およびc)に送られ、そのチオール含有率が低下させられる。触媒塔において工程a)が行われる別の実施形態によると、軽質留分のみが、チオールを濃縮する触媒塔の頭部から抜き出され、工程b)およびc)に送られる。
【0028】
好ましい実施形態によると、本方法は、工程d)をさらに含み、この工程d)において、工程c)から得られた流出物は、分画塔に送られ、チオール含有率が低いガソリン留分が、分画塔の頭部から分離され、チオエーテル化合物を含有する炭化水素留分が、分画塔の底部から分離される。
【0029】
有利には、工程c)およびd)は、工程c)のための触媒の床を含む触媒蒸留塔において連続的に行われる。
【0030】
好ましくは、工程a)のための触媒は、第VIB族からの少なくとも1種の金属および/または第VIII族からの少なくとも1種の金属を、比表面積が250m/g未満である担体上に含有し、触媒の重量に対する、酸化物として表される、第VIII族からの金属の量は、0.5〜15重量%の範囲内であり、酸化物として表される、第VIB族からの金属の量は、1.5〜60重量%の範囲内である。
【0031】
好ましい実施形態によると、工程a)のための触媒は、コバルトおよびモリブデンを含み、前記MoOの重量含有率と触媒の比表面積との間の比として表される、モリブデンの密度は、7×10−4g/m超、好ましくは12×10−4g/m超である。
【0032】
有利には、工程c)は、水素を加えることなく行われる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(発明の詳細な説明)
(供給原料の説明)
本発明は、任意のタイプの化学族、特にはジオレフィン、モノオレフィンおよび硫黄含有化合物を含むガソリンの処理のための方法に関する。特に、本発明は、転化ガソリン、特には、接触分解、流動式接触分解(FCC)、コークス化方法、ビスブレーキング方法または熱分解方法に由来するガソリンの変換への適用のものである。例として、接触分解装置(FCC)から得られたガソリンは、平均で、0.5〜5重量%のジオレフィン、20〜50重量%のモノオレフィンおよび10重量ppm〜0.5重量%の硫黄を含有する。
【0034】
処理されるガソリンの沸点は、一般的に350℃未満、好ましくは300℃未満、大いに好ましくは220℃未満である。本発明の方法が適用可能である供給原料の沸点は、0〜280℃の範囲内、好ましくは30〜250℃の範囲内である。供給原料は、3または4個の炭素原子を含有する炭化水素を含有してもよい。
【0035】
(接触水素化脱硫工程(工程a))の説明)
水素化脱硫工程が行われるのは、処理されるべきガソリンの硫黄含有率を低下させるためであり、硫黄含有化合物をHSに転化させることによる。生じたHSは工程b)において除去される。それを行うことが特に必要であるのは、脱硫させられるべき供給原料が100重量ppm超の硫黄、より一般的には50重量ppm超の硫黄を含有する場合である。
【0036】
水素化脱硫工程は、水素化脱硫を行うのに適した1種以上の触媒を含有する1基以上の水素化脱硫反応器において、処理されるべきガソリンを水素と接触させることからなる。
【0037】
本発明の好ましい実施形態において、工程a)は、選択的に水素化脱硫を行うことを目的として行われ、すなわち、モノオレフィンの水素化のレベルは、80%未満、好ましくは70%未満、大いに好ましくは60%未満である。
【0038】
この工程が行われる際の圧力は、一般的に0.5〜5MPaの範囲内、好ましくは1〜3MPaの範囲内である。温度は、一般的に200〜400℃の範囲内、好ましくは220〜380℃の範囲内である。直列にある複数の反応器において水素化脱硫工程a)が行われる場合、各反応器が操作される際の平均温度は、一般的には最低5℃だけ、好ましくは最低10℃だけ、大いに好ましくは最低30℃だけ先行反応器の操作温度より高い。
【0039】
各反応器において採用される触媒の量は、標準条件下の毎時の体積(m)で表される、処理されるべきガソリンの流量と触媒の体積(m)との間の比(毎時空間速度としても知られている)が、一般的には0.5〜20h−1の範囲内、好ましくは1〜15h−1の範囲内であるようにされる。大いに好ましくは、水素化脱硫反応器は、2〜8h−1の範囲内の毎時空間速度で操作される。
【0040】
水素の流量は、毎時の標準体積(m)(Nm/h)で表される水素の流量と、標準条件下の毎時の体積(m)で表される、処理されるべき供給原料の流量との間の比が、一般的には50〜1000Nm/mの範囲内、好ましくは70〜800Nm/mの範囲内であるようにされる。
【0041】
脱硫レベルは、処理されるべき供給原料の硫黄含有率に依存するが、このものは、一般的には50%超、好ましくは70%超であり、その結果、工程a)から得られた生成物は、100重量ppm未満の硫黄、好ましくは50重量ppm未満の硫黄を含有する。
【0042】
連結状の触媒の任意の場合、本方法は、連続状の水素化脱硫工程を含み、文献EP 1 612 255において教示されるように、工程n+1の触媒の活性は、工程nの触媒の活性の1〜90%の範囲内である。
【0043】
当業者に知られており、かつ、水素の存在下に有機硫黄のHSへの変換のための反応を促進させることができるあらゆる触媒が、本発明との絡みで用いられてよい。しかしながら、本発明の特定の実施形態において、オレフィンの水素化反応と比べて水素化脱硫反応に関して良好な選択性を有する触媒が好ましくは用いられる。
【0044】
好ましくは、工程a)の水素化脱硫触媒は、一般的に、第VIB族からの少なくとも1種の金属および/または第VIII族からの少なくとも1種の金属を担体上に含有する(CAS分類の第VIB族および第VIII族は、それぞれ、CRC出版によって出版されたCRC Handbook of Chemistry and Physics(編集長D.R. Lide、第81版、2000−2001)におけるIUPAC分類の第6族および第8〜10族からの金属に対応する)。第VIB族からの金属は、好ましくは、モリブデンまたはタングステンであり、第VIII族からの金属は、好ましくは、ニッケルおよびコバルトから選択される。大いに好ましい実施形態において、工程a)の触媒は、コバルトおよびモリブデンを含む。
【0045】
酸化物として表される第VIII族からの金属の量は、全触媒重量に対して、一般的には0.5〜15重量%の範囲内、好ましくは1〜10重量%の範囲内である。第VIB族からの金属の量は、全触媒重量に対して、一般的には1.5〜60重量%の範囲内、好ましくは3〜50重量%の範囲内である。
【0046】
触媒担体は、通常、多孔質固体、例えば、アルミナ、シリカ−アルミナ、マグネシア、シリカまたは酸化チタンであり、これらは、単独でまたは混合物として用いられる。大いに好ましくは、担体は、遷移アルミナによって本質的に構成される、すなわち、それは、担体の全重量に対して最低51重量%、好ましくは最低60重量%、大いに好ましくは最低80重量%、さらには最低90重量%の遷移アルミナを含む。それは、場合によっては、遷移アルミナのみによって構成されてよい。
【0047】
水素化脱硫触媒の比表面積は、好ましくは250m/g未満、より好ましくは230m/g未満、大いに好ましくは190m/g未満である。
【0048】
オレフィンの水素化を最小限にするために、モリブデンを単独でまたはニッケルまたはコバルトとの混合物として含み、かつ、MoOの前記重量含有率と触媒の比表面積との間の比として表されるモリブデンの密度が7×10−4g/m超、好ましくは12×10−4g/m超である触媒を用いることが有利である。大いに好ましくは、コバルトおよびモリブデンを含み、MoOの前記重量による量と触媒の比表面積との間の比として表されるモリブデンの密度が7×10−4g/m超、好ましくは12×10−4g/m超である触媒が選択される。
【0049】
有利には、硫化の前に、水素化脱硫触媒の平均細孔径は、20nm超、好ましくは25nm超、さらには30nm超であり、しばしば、20〜140nmの範囲内、好ましくは20〜100nmの範囲内、大いに好ましくは25〜80nmの範囲内である。細孔径は、ASTM D4284−92に従う水銀ポロシメトリによって140°のぬれ角により測定される。
【0050】
金属は、当業者に知られている方法のいずれかを用いて担体上に沈着させられ、例えば、金属の前駆体を含有する溶液の乾式含浸、または過剰含浸である。前記溶液は、所望の濃度で金属の前駆体を溶解させることができるように選択される。例えば、CoMo触媒の合成の場合、モリブデン前駆体は、酸化モリブデンまたは七モリブデン酸アンモニウムであってよい。コバルトのために挙げられてよい例は、硝酸コバルト、水酸化コバルトおよび炭酸コバルトである。前駆体は、一般的に、所望の濃度でそれらを溶解させることができる媒体中に溶解させられる。それ故に、それは、事例に応じて水性媒体および/または有機媒体であってよい。
【0051】
単数種または複数種の金属を導入し、場合によっては、触媒を形付けした後、第1の工程において、触媒は活性にされる。この活性化は、焼成(酸化)とその後の還元、または直接的な還元、または、焼成のみのいずれかに相当してよい。焼成工程は、一般的に100〜600℃、好ましくは200〜450℃の範囲内の温度で、空気の流れ中において行われる。還元工程は、酸化物形態のベース金属の少なくとも一部を金属に転化させるのを可能にする条件下に行われる。一般に、それは、水素の流れ中、好ましくは最低300℃である温度で触媒を処理することからなる。
【0052】
触媒は、好ましくは、少なくとも部分的にその硫化した形態において用いられる。硫黄は、任意の活性化工程、すなわち、焼成または還元の前後に導入されてよい。好ましくは、硫黄または硫黄含有化合物が触媒上に導入された場合に、触媒の酸化のための工程は行われない。硫黄または硫黄含有化合物は、現場外(ex situ)で、すなわち、本発明の方法が行われる反応器の外側で、または、現場内(in situ)、すなわち、本発明の方法のために用いられる反応器内で導入されてよい。この後者の場合、触媒は、好ましくは、少なくとも1種の硫黄含有化合物であって、一旦分解させられると、触媒上に硫黄を固定するに至る、ものを含有する供給原料の通過によって硫化させられる。この供給原料は、気体または液体であってよく、例えば、HSを含有する水素または少なくとも1種の硫黄含有化合物を含有する液体である。
【0053】
好ましくは、硫黄含有化合物は、現場外で触媒に加えられる。例として、焼成工程の後に、硫黄含有化合物は、触媒上に、場合によっては、別の化合物の存在下に導入されてよい。触媒は、次いで、乾燥させられ、次いで、本発明の方法を行うように作用する反応器に移される。この反応器において、触媒は、次いで、水素中において処理されて、主要金属の少なくとも一部が硫化物に変換させられる。触媒を硫化させるのに特に適した手順は、文献FR 2 708 596 および FR 2 708 597に記載されたものである。
【0054】
代替の実施形態において、工程a)は、水素化脱硫触媒を含むセクションを備えた触媒蒸留塔において行われ、この塔において、接触水素化脱硫反応とガソリンの少なくとも2個の留分(またはフラクション)への分離の両方が行われる。好ましくは、触媒蒸留塔は、水素化脱硫触媒の2個の床を含み、供給原料は、塔の触媒の2個の床の間に送られる。
【0055】
(水素およびHSを分離するための工程(工程b)))
この工程が行われるのは、過剰の水素並びに工程a)の間に形成されたHSを、工程a)から得られた流出物から分離するためである。当業者に知られているあらゆる方法が想定されてよい。
【0056】
第1の好ましい実施形態によると、水素化脱硫工程a)の後に、流出物は、一般的には80℃未満、好ましくは60℃未満である温度に冷却され、炭化水素が凝縮させられる。気相および液相が、次いで、分離ドラムにおいて分離される。脱硫ガソリン並びに一部の溶解したHSを含有する液体フラクションが、安定化塔、すなわち、脱ブタン塔に送られる。この塔は、塔頂留分と底部留分とを分離する。塔頂留分は、残留HSおよびブタンの沸点以下である沸点を有する炭化水素化合物によって本質的に構成され、底部留分は、HS不含有であり、安定化ガソリンと称され、ブタンの沸点より高い沸点を有する化合物を含有する。
【0057】
第2の好ましい実施形態において、凝縮工程の後に、脱硫ガソリン並びに一部の溶解HSを含有する液体フラクションは、ストリッピングセクションに送られる一方で、水素およびHSによって主として構成されるガスフラクションは、精製セクションに送られる。ストリッピングは、炭化水素フラクションを、単独でまたは水素または水蒸気の注入を伴って、蒸留塔において加熱することによって行われてよく、塔頂の軽質化合物並びに残留溶解HSが抽出される。この塔頂の軽質化合物は、液体フラクション中に溶解させることによって同伴される。塔底から回収されるストリッピング済みガソリンの温度は、一般的に120〜250℃の範囲内である。
【0058】
工程b)は、好ましくは、脱チオール化(スイートニング)の工程c)の前の脱硫ガソリン中に残留しているHSの形態にある硫黄が、処理される炭化水素フラクション中に存在する全硫黄の30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満を示すように行われる。
【0059】
(工程b)から得られた脱硫炭化水素フラクションの触媒的スイートニングのための工程(工程c))
この工程は、チオール族からの硫黄含有化合物をより重質のチオエーテルタイプの硫黄含有化合物に変換することからなる。これらのチオールは、本質的に、工程a)において形成されたHSとガソリンのオレフィンとの反応から得られる再結合チオールである。
【0060】
この工程c)において採用される変換反応は、チオールをオレフィンと反応させて、チオエーテルタイプのより重質の硫黄含有化合物を形成することからなる。この工程は、水素の存在下に硫黄含有化合物をHSに変換することを目的とする「従来の」水素化脱硫工程から区別されなければならないことが留意されるべきである。
【0061】
この工程は、供給原料中に存在するオレフィンとの反応によって工程b)の間に完全には除去されなかった残留HSをチオエーテルに転化させるためにも用いられ得る。
【0062】
脱チオール化(またはスイートニング)反応は、少なくとも1種の遷移金属または鉛の少なくとも1種の硫化物を、多孔質担体上に沈着させられて含有する触媒により行われる。この反応は、好ましくは、第VIB族、第VIII族、銅および鉛から選択される金属の少なくとも1種の硫化物を含む触媒により行われる。
【0063】
大いに好ましくは、触媒は、第VIII族(Handbook of Chemistry and Physics, 第76版, 1995-1996の元素周期律分類の第8、9および10族)からの少なくとも1種の元素、第VIB族(Handbook of Chemistry and Physics, 第76版, 1995-1996の元素周期律分類の第6族)からの少なくとも1種の元素および担体を含む。第VIII族からの元素は、好ましくは、ニッケルおよびコバルトから選択されるが、特にはニッケルである。第VIB族からの元素は、好ましくは、モリブデンおよびタングステンから選択され、大いに好ましくはモリブデンである。
【0064】
工程c)のための触媒の担体は、好ましくは、アルミナ、アルミン酸ニッケル、シリカ、炭化ケイ素、またはこれらの酸化物の混合物から選択される。好ましくは、アルミナが用いられ、より好ましくは、高純度アルミナである。好ましくは、水銀ポロシメトリによって測定される全細孔容積が0.4〜1.4cm/gの範囲内、好ましくは0.5〜1.3cm/gの範囲内である担体が用いられる。担体の比表面積は、好ましくは、70〜350m/gの範囲内である。
【0065】
好ましいバリエーションにおいて、担体は、立方晶系のガンマアルミナまたはデルタアルミナである。
【0066】
工程c)において採用される触媒は、好ましくは、
・ 担体;比表面積が70〜350m/gの範囲内であるガンマまたはデルタアルミナによって構成される;
・ 第VIB族からの金属の酸化物;全触媒重量に対して1〜30重量%の範囲内の量;
・ 第VIII族からの金属の酸化物;全触媒重量に対して1〜30重量%の範囲内の量;
を含み、
・ 前記触媒の構成金属の硫化率(%)は、最低60%であり;
・ 第VIII族からの金属と第VIB族からの金属との間のモル比は、0.6〜3モル/モルの範囲内である。
【0067】
特に、工程c)のための触媒が以下の特徴を有する時に性能が改善されることが発見された:
・ 担体は、比表面積が180〜270m/gの範囲内であるガンマアルミナによって構成される;
・ 酸化物の形態にある第VIB族からの元素の酸化物の重量による量は、全触媒重量に対して、4〜20重量%の範囲内、好ましくは6〜18重量%の範囲内である;
・ 酸化物形態で表される第VIII族からの金属の酸化物の量は、全触媒重量に対して、3〜15重量%の範囲内、好ましくは4〜12重量%の範囲内である;
・ 第VIII族からの非貴金属と第VIB族の金属との間のモル比は、0.6〜3モル/モルの範囲内、好ましくは1〜2.5モル/モルの範囲内であり;
・ 前記触媒の構成金属の硫化率(%)は、最低60%である。
【0068】
本発明の大いに好ましい実施形態において、工程c)が採用する触媒は、全触媒重量に対して、4〜12%の範囲内の重量による量の酸化ニッケル(NiOの形態にある)と、全触媒重量に対して、6〜18%の範囲内の重量による量の酸化モリブデン(MoOの形態にある)とを含有し、ニッケル/モリブデンのモル比は、1〜2.5の範囲内であり、金属は、比表面積が180〜270m/gの範囲内であるガンマアルミナのみによって構成される担体上に沈着させられ、触媒を構成する金属の硫化度が80%超である。
【0069】
工程c)のための触媒は、当業者に知られているあらゆる技術を用いて調製されてよく、特には、選択された担体上への金属の含浸による。
【0070】
金属を導入し、場合によっては、触媒を形付けした後、それは、活性化の処理を経る。この処理は、一般的に、元素の分子前駆体を酸化物相に変換することを目的とする。この場合、それは、酸化処理であるが、触媒の単純な乾燥が行われてもよい。焼成とも知られている酸化処理の場合、これは、一般的には、空気中または希釈酸素中で行われ、処理温度は、一般的に200〜550℃の範囲内、好ましくは300〜500℃の範囲内である。
【0071】
焼成の後、担体上に沈着させられた金属は、酸化物の形態にある。ニッケルおよびモリブデンの場合、金属は、主として、MoOおよびNiOの形態にある。処理されるべき供給原料と接触させる前に、触媒は、硫化工程を経る。硫化は、好ましくは、スルホ還元媒体(sulpho-reducing medium)中、すなわち、HSおよび水素の存在下に行われ、金属酸化物は、硫化物、例えば、MoSおよびNiに変換される。硫化は、触媒上にHSおよび水素を含有する流れを、または触媒および水素の存在下にHSに分解することができる硫黄含有化合物を注入することによって行われる。多硫化物、例えば、ジメチルジスルフィド(dimethyldisulphide:DMDS)は、触媒を硫化させるために日常的に用いられるHSの前駆体である。温度は、HSが金属酸化物と反応して金属硫化物を形成するように調節される。この硫化は、脱チオール化反応器の現場内または現場外(反応器の内側または外側)で行われてよく、その際の温度は、200〜600℃の範囲内、より好ましくは300〜500℃の範囲内である。
【0072】
チオールに対するスイートニングのための工程c)は、脱硫させられており、かつ、少なくとも一部のHSを含まないガソリンを、硫化物の形態にある触媒と接触させることからなる。本発明の脱チオール化反応は、チオールとオレフィンとの二重結合上の直接的な付加を介して反応させて式R−S−R(式中、RおよびRは、アルキル基である)を有するチオエーテルタイプの化合物を生じさせることによって特徴付けられ、これらの化合物は、出発チオールの沸点より高い沸点を有する。
【0073】
このスイートニング工程は、水素の非存在下に(水素を加えることまたは補充することなく)または反応器に供給される水素の存在下に行われてよい。好ましくは、それは、水素を加えることなく行われる。水素が用いられる場合、それは、触媒上の水素化表面品質を維持して脱チオール化における高転化率に適切であるようにして供給原料と共に注入される。典型的には、工程c)を操作する際のH/供給原料は、供給原料の体積(m)当たり水素0〜25Nmの範囲内、好ましくは供給原料の体積(m)当たり水素0〜10Nmの範囲内、大いに好ましくは供給原料の体積(m)当たり水素0〜5Nmの範囲内、より好ましくは供給原料の体積(m)当たり水素0〜2Nmの範囲内である。
【0074】
供給原料の全体が、一般的には、反応器の入口に注入される。しかしながら、いくつかの場合には、供給原料の一部または全部を反応器内に配置された2つの連続的な触媒床の間に注入することが有利であってよい。
【0075】
処理されるべきガソリンが触媒と接触させられる際の温度は、30〜250℃の範囲内、好ましくは60〜220℃の範囲内、一層より好ましくは90〜200℃の範囲内であり、液体毎時空間速度(liquid hourly space velocity:LHSV)は、0.5〜10h−1の範囲内であり、液体毎時空間速度の単位は、時間当たりかつ触媒の体積(リットル)当たりの供給原料の体積(リットル)(L/L・h)である。圧力は、0.2〜5MPaの範囲内、好ましくは0.5〜2MPaの範囲内、一層より好ましくは0.6〜1MPaの範囲内である。
【0076】
この工程c)の間に、チオエーテル化合物を形成するための供給原料のオレフィンと結合するチオールは、典型的には、5〜12個の炭素原子を含有し、より一般的には分枝している。例として、工程c)のための供給原料中に含有されてよいチオールは、2−メチルヘキサン−2−チオール、4−メチルヘプタン−4−チオール、2−エチルヘキサン−3−チオールまたは2,2,4−トリメチルペンタン−4−チオールである。
【0077】
工程c)の終わりに、上記の条件下に処理された炭化水素フラクションのチオール含有率は、それ故に、低下させられている(これらのチオールは、チオエーテル化合物に転化させられた)。一般的に、工程c)の終わりに生じたガソリンは、20重量ppm未満、好ましくは10重量ppm未満、一層より好ましくは5重量ppm未満のチオールを含有する。この工程c)の間、水素の補給を必要とせず、オレフィンは、水素化させられないか、または、わずかにのみ水素化させられ、これは、工程c)からの出口において流出物のオクタン価が、高く維持され得ることを意味する。一般に、オレフィンの水素化は2%未満である。
【0078】
(工程c)から得られたスイートニング済みガソリンの分画のための工程(場合による工程d))
工程c)の終わりに、上記の条件下に処理されたガソリンのチオール含有率は、それ故に、低下させられている。実際に、これらのチオールは、チオエーテルタイプの化合物に転化させられており、その分子量は、出発チオールの分子量よりも大きい。
【0079】
本発明によると、場合によっては、チオールのスイートニングがなされたガソリンを、炭化水素の少なくとも1個の軽質留分と重質留分とに分画するための工程(工程d))が行われる。この分画工程は、工程c)において形成されたチオエーテルタイプの硫黄含有化合物および場合による工程c)の間に反応しなかった最も重質で最も抵抗性の残留チオールが、重質炭化水素留分中に濃縮されるような条件下に行われる。好ましくは、分画工程は、硫黄含有率、特に、チオールおよび硫化物化合物の含有率が低い炭化水素の軽質留分が、130〜160℃の範囲内の終沸点を有するように行われる。明らかに、当業者にとって、前記軽質炭化水素留分中のターゲットの硫黄含有率に応じてカットポイント(すなわち、軽質炭化水素留分についての終沸点)を選択することは可能である。典型的には、軽質ガス留分のチオール含有率は、10重量ppm未満、好ましくは5重量ppm未満、一層より好ましくは1重量ppm未満であり、全硫黄含有率は、50重量ppm未満、好ましくは20重量ppm未満、一層より好ましくは10重量ppm未満である。硫黄およびチオールの含有率が低い軽質炭化水素留分は、有利には、精油所のガソリンプールに送られる。重質の炭化水素留分は、硫黄含有のチオエーテルタイプの化合物およびオレフィンとの付加反応に対して抵抗性であるチオールを濃縮しており、このものは、有利には、より過酷な水素化処理条件(より高い温度、用いられる水素の量がより大きい)を適用する水素化脱硫装置において処理されるか、あるいは、精油所のガスオイルプールに送られる。
【0080】
チオールスイートニングのための工程(工程c))および分画のための工程(工程d))は、同時に、スイートニング触媒を含有する触媒床を備えた触媒塔を用いて行われてよいことが留意されるべきである。好ましくは、触媒蒸留塔は、スイートニング触媒の2床を含み、供給原料は、塔における触媒の2床の間に送られる。
【0081】
(本発明との絡みで採用され得るレイアウト)
低下したチオール含有率を有する脱硫ガソリンを低コストで生じさせるために種々のレイアウトが採用されてよい。最適にされたレイアウトの選択は、処理されかつ製造されるべきガソリンの特徴についての、並びに各製油所における制約についての事情に依存する。
【0082】
下記に記載されるレイアウトは、例証として、限定されないように与えられる。
【0083】
第1のバリエーションにおいて、触媒スイートニング工程c)は、直接的に分離工程b)と直列で行われてよい。特に、触媒スイートニング工程c)が行われる際の温度に適合する温度で分離工程b)が行われる場合、工程b)から得られた流出物は、直接的に工程c)に送られる。工程b)とc)の間の温度が熱交換設備を用いて調節され得ることが想定されてもよい。
【0084】
第2のバリエーションにおいて、触媒スイートニング工程c)の前に、工程b)から得られたガソリンは、LPG(液化石油ガス)留分または硫黄を含有する別のガソリン留分、例えば、原油の蒸留からのガソリン、任意の分解方法から得られたガソリン、例えば、熱分解、コークス化または水素化分解の方法から得られたガソリン、または、オリゴマー化装置から得られたガソリンと混合され、次いで、この混合物が工程c)において処理される。スイートニング工程c)においてチオールとオレフィンの触媒的付加反応(再結合)を促進するために、工程b)から得られたガソリンをオレフィンC炭化水素留分と混合して処理することも可能である。
【0085】
第3のバリエーションにおいて、処理されるべきガソリンの蒸留のための工程が2個の留分(またはフラクション)、すなわち、軽質留分および重質留分を分離するために行われ、重質留分が本発明の方法により処理される。それ故に、第1の実施形態において、重質留分は、水素化脱硫によって処理され(工程a))、次いで、重質の水素化脱硫留分中に存在する形成されたHSが取り出され(工程b))、次いで、(蒸留から得られた)軽質留分は、工程b)から得られた重質留分と混合され、最後に、混合物が工程c)において処理される。あるいは、第3のバリエーションの中の第2の実施形態において、軽質留分は、工程a)から得られた重質の水素化脱硫留分と混合され、得られたこの混合物が工程b)およびc)において処理される。この第3のバリエーションが有する利点は、オレフィンを豊富に含み、かつ、一般的には、硫黄が激減した軽質留分を水素化処理しないことであり、このことは、オレフィンの水素化によるオクタン価の喪失が制限され得ることを意味する。好ましくは、この第3のバリエーションにおいて、工程c)において処理される供給原料は、重質の脱硫留分の全ておよび0〜50体積%の範囲内の一部の軽質留分によって構成される。この第3のバリエーションとの絡みで、軽質留分の沸点範囲は、100℃未満であり、重質留分の温度範囲は、65℃超である。
【0086】
第4のバリエーションにおいて、ガソリンは、2個の留分:第1の軽質留分および第1の重質炭化水素留分に蒸留される。第1の軽質留分の沸点は、処理されるべきガソリンの初期沸点と140℃と160℃の間で位置づけられる最終沸点との間の範囲内である。第1の軽質炭化水素留分は、次いで、水素化脱硫によって処理され(工程a))、次いで、形成されたHSは、水素化脱硫流出物から分離され(工程b))、水素化脱硫流出物中のチオールは、スイートニングされ(工程c))、チオールスイートニング済みの流出物は分画されて(工程d))、第2の軽質ガソリン留分(処理されるべきガソリンの初期沸点と140℃以下の最終沸点との間の範囲内の沸点を有する)と、第2の重質炭化水素留分とが生じる。第2の軽質ガソリン留分のチオールおよびチオエーテルの含有率は低く、第2の重質炭化水素留分は、未転化チオエーテルおよびチオールを含有する。場合によっては、第1および第2の重質炭化水素留分は、混合され、かつ、専用装置において水素化脱硫によって処理されてよい。
【0087】
第5のバリエーションにおいて、ガソリンは、1基以上の蒸留塔を用いて3個の炭化水素留分である、軽質、中間および重質の留分に蒸留される。軽質炭化水素留分の沸点は、好ましくは、処理されるべきガソリンの初期沸点から50℃と90℃との間の最終沸点にわたる範囲内である。このタイプの軽質炭化水素留分は、一般的に、硫黄をほとんど含有しておらず、それ故に、精油所のガソリンプールに直接的に品質向上させられ得る。一般的には50℃から140℃または160℃にわたる範囲内の沸点範囲を有する中間炭化水素留分は、水素化脱硫によって処理され(工程a))、次いで、形成されたHSは、水素化脱硫流出物から分離され(工程b))、水素化脱硫流出物は、チオールのスイートニングがなされ(工程c))、チオールスイートニング済みの流出物は、分画され(工程d))、チオールおよびチオエーテルの含有率が低い第2の中間ガソリン留分と、未転化チオエーテルおよびチオールを含有する第2の重質炭化水素留分とが生じる。場合によっては、第1および第2の重質炭化水素留分は、混合されて、かつ、専用装置において水素化脱硫によって処理されてよい。
【0088】
第6のバリエーションにおいて、処理されるべきガソリンは、最初に、特許出願EP 1 077 247に記載されたような、供給原料中に存在するジオレフィンの選択的水素化からなる予備工程を経る。選択的水素化済みのガソリンは、次いで、少なくとも2個の炭化水素留分または3個の炭化水素留分:軽質留分、中間留分および重質留分に蒸留される。2個の炭化水素留分への分画の場合、第3および第4のバリエーションの場合の上記の工程が適用可能である。3個の炭化水素留分への分画の場合、中間留分は、別個に、水素化脱硫工程(工程a))、次いで、HSを分離するための工程(工程b))、次いで、スイートニング工程(工程c))において処理される。場合によっては、工程c)から得られた流出物は、分画工程d)を経て、チオールおよびチオエーテルの含有率が低い第2の中間ガソリン留分と、未転化チオエーテルおよびチオールを含有する第2の重質炭化水素留分とが生じる。場合によっては、第2の重質炭化水素留分は、水素化脱硫工程の上流の蒸留から得られた重質留分と混合され、この混合物が、専用装置において水素化脱硫によって処理される。
【0089】
触媒床を備えた蒸留塔を含む触媒蒸留塔を同時に用いるジオレフィンの水素化および2または3個の留分への分画の工程を行うことが可能であることが留意されるべきである。
【0090】
第7のバリエーションにおいて、工程a)は、触媒蒸留塔において行われる。この触媒蒸留塔は、水素化脱硫触媒の床を組み入れており、ガソリンを脱硫させることと2個の炭化水素留分である軽質留分と重質留分を分離することとの両方をすることができる。生じた留分は、次いで、別々にまたは混合物として工程b)およびc)に送られる。あるいは、水素化脱硫のための触媒蒸留塔から得られた軽質ガソリン留分のみが、工程b)次いで工程c)において処理される。この場合、工程c)からの流出物は、上記の工程d)に従って2個の炭化水素留分に分画されてよい。再度この場合、水素化脱硫のための触媒蒸留塔から得られた重質留分は、第2の水素化脱硫装置において、単独でまたは水素化脱硫のための触媒蒸留塔から得られた軽質ガソリン留分の分画のための工程d)から得られた重質留分との混合物として処理されてよい。
【0091】
工程c)の間のチオールのチオエーテルへの転化(再結合)を改善するために、軽質留分について工程c)が行われる場合、オレフィンC留分と軽質ガソリンの混合物が、有利には、工程c)の上流で生じさせられて、工程c)は、有利には、軽質留分のみではなく、軽質炭化水素留分とオレフィンC留分を含有する混合物について行われる。工程c)の終わりに、チオールのスイートニングがなされた流出物は、分離塔に送られ、この分離塔は、オレフィンC留分とチオールのスイートニングがなされた軽質留分を分離する。分離塔から抜き出されたオレフィンC留分は、有利には、工程c)のための反応器に再循環させられる。
【0092】
工程c)の間のチオールのチオエーテルへの転化(再結合)を改善するために、中間留分または重質留分について工程c)が行われる場合、軽質ガソリンの全部または一部が、有利には、工程c)の上流で中間または重質の留分に加えられ、その結果、工程c)は、有利には、軽質炭化水素留分によって供給されたオレフィンを含有する混合物について行われる。
【0093】
考えられるバリエーションの全ての中で、以下の2つのバリエーションは、好ましいものである。
【0094】
1. ガソリンは、2個の留分(またはフラクション)である軽質留分(またはフラクション)および重質留分(またはフラクション)に蒸留され、重質留分のみが、水素化脱硫工程a)およびHSを分離するための工程b)において処理され、脱硫ガソリンが安定化させられる。熱交換デバイスを用いて工程b)およびc)の間の温度を任意に調節した後、安定化重質フラクションは、次いで、水素の非存在下にスイートニング工程c)において処理される。この特定の操作様式の利点は、求められる投資をできる限り制限しながら、チオールのスイートニングがなされてガスプールにそれを送る前にその後の処理を必要としないガソリンを生じさせることにある。
【0095】
2. ガソリンは、2個の留分(フラクション)である軽質留分(またはフラクション)および重質留分(フラクション)に蒸留され、重質留分のみが、水素化脱硫工程a)およびHSを分離するための工程b)において処理され、脱硫ガソリンは安定化させられるか、または、ストリッピングにより単純にHS不含有とされる。水素の添加を伴ってまたは伴わずに、工程c)において処理される供給原料は、脱硫重質フラクションの全ておよび10〜50体積%の範囲内で一部の軽質留分を含む。工程c)から得られた流出物は、次いで、工程b)に類似する工程において安定化させられる。この特定の操作様式の利点は、チオエーテルの転化反応に対してチオールに有利であるようにオレフィンリッチな軽質留分を用いることによって工程c)の間のチオールの転化を最大にすることにある。
【0096】
本発明のさらなる特徴および利点は、限定しない例証のみの目的で与えられる以下の説明から明らかになり、添付の図面に対して参照がなされ、この図面において:
図1は、本発明による第1の実施形態に従う方法のレイアウトである;
図2は、本発明による第2の実施形態に従う方法のレイアウトである;
図3は、第3の実施形態による代替方法のレイアウトを示す;
図4は、本発明の方法の第4の実施形態を示す。
【0097】
図面において、類似の要素は、一般的に、同一の参照符号によって指定される。
【0098】
図1を参照すると、本発明の方法の第1の実施形態において、処理されるべきガソリンはライン(1)を介して、水素はライン(3)を介して、水素化脱硫装置(2)に送られる。処理されるガソリンは、一般的に、分解ガソリン、好ましくは、接触分解ガソリンである。ガソリンは、典型的には30〜220℃の範囲内である沸点によって特徴付けられる。例として、水素化脱硫装置(2)は、固定床または流動床の脱硫触媒(HDS)を含有する反応器である;好ましくは、固定床反応器が用いられる。反応器は、上記の操作条件下にHDS触媒の存在下に操作され、硫黄含有化合物が分解され、硫化水素(HS)が形成される。それ故に、HSを含有する流出物(ガソリン)は、ライン(4)を介して前記水素化脱硫反応器(2)から抜き出される。次に、流出物は、HS除去工程(工程b))を経る。これは、図1の実施形態において、安定化塔(5)において流出物を処理することからなり、頂でライン(6)を介したC炭化水素、HSの大部分および未反応水素を含有する流れと、塔の底部からの安定化ガソリンとして知られるガソリンとが分離される。

【0099】
安定化ガソリンは、ライン(7)を介してスイートニング反応器(8)に送られて、安定化ガソリン中のチオールの量が低減させられる(工程c))。この安定化ガソリン中に含まれるチオールは、主として、オレフィン上のHSの反応から得られた再結合チオールである。上記に議論されたように、スイートニング反応器は、二重結合と交わる直接的な付加を介したオレフィン上のチオールの付加反応を引き起こして、チオエーテルタイプの化合物を生じさせることのできる触媒を用いる。このチオエーテルタイプの化合物は、式R−S−R(式中、RおよびRは、アルキル基である)を有し、出発チオールの分子量より大きい分子量を有する。チオールの触媒転化のための反応は、場合によっては、水素の存在下に行われてよく、水素は、ライン(9)を介して供給される。
【0100】
図1に指し示されるように、安定化とチオールスイートニングとがなされたガソリンは、ライン(10)を介して反応器(8)から抜き出され、このものは、有利には、分離塔(11)に送られる。この分離塔(11)は、ライン(12)を介して、安定化軽質ガソリンを塔頂分離するように設計されかつ操作される。この安定化軽質ガソリンの沸点範囲は、好ましくは30〜160℃の範囲内または30〜140℃の範囲内であり、チオールおよび硫黄の全含有率は、それぞれ、10重量ppm未満および50重量ppm未満である。分離塔(11)の底部において、重質ガソリンが、ライン(13)を介して回収され、これは、スイートニング反応器(8)において形成されたチオエーテルタイプの化合物を含有する。軽質ガソリンは、ガソリンプールに送られる一方で、重質ガソリンは、専用の水素化処理装置において水素化脱硫させられるか、または、精油所のディーゼルプールまたは蒸留物ブールに送られるかのいずれかである。
【0101】
図2には、第2の実施形態が示される。第2の実施形態は、図1の実施形態に基づいているが、安定化ガソリンがチオールスイートニング反応器(8)において、ライン(14)を介して供給されるオレフィン炭化水素留分、好ましくはオレフィンC留分の存在下に処理されるという事実において異なっている。このオレフィン留分を加える目的は、反応媒体に活性オレフィンを供給することによってチオールのオレフィンとの付加反応を有利にすることにある。図2に指し示されるように、スイートニング反応器から得られた流出物は、分離塔(15)に送られて、スイートニング反応器(8)において反応しなかったオレフィン留分の一部が回収される。オレフィン留分がC留分であるならば、採用される分離塔(15)は、脱ブタン塔に相当し、これは、塔(15)の頭部からC留分を分離し、ライン(16)を介してスイートニング反応器(8)に再循環させられる。塔(15)の底部から回収された留分(17)は、図1との絡みで記載されるように塔(11)において分画され、ライン(12)を介した、硫黄およびチオールが低量である軽質ガソリン留分と、スイートニング反応器(8)において形成されたチオエーテル化合物を含有する重質ガソリン留分とが提供される。
【0102】
図3により、本発明の方法の第3の実施形態が例証される。処理されるべきガソリン供給原料は、典型的には、30℃と220℃との間で沸騰する炭化水素を含むものであり、このものは、最初に、蒸留塔(20)に送られる。この蒸留塔(20)は、ガソリン供給原料を3個の留分に分画するように構成される。ブタンより軽質な化合物を含みかつブタンを含む塔頂留分が、ライン(21)を介して抜き出される。6〜7個または6〜8個の炭素原子を含有する炭化水素を含む中間留分はライン(22)を介して回収される。最後に、7個または8個超の炭素原子を含有する炭化水素によって構成される底部留分は、ライン(23)を介して抜き出される。
【0103】
分画される前に、ガソリン供給原料は、有利には、ジオレフィンのオレフィンへの選択的水素化のための反応器(19)において予備処理されることも留意されるべきである。この触媒反応は、好ましくは、文献EP 1 445 299またはEP 1 800 750に記載されたような条件下にかつ触媒の存在下に操作される。
【0104】
図3を参照すると、底部留分は、水素化脱硫反応器(24)において、(ライン(25)を介して供給される)水素および水素化脱硫触媒の存在下に上記のように処理される。脱硫流出物は、ライン(26)を介して反応器(24)から抜き出され、ストリッピング塔等のHS分離装置(27)に送られ、そこから、HSおよび水素を本質的に含有するガスフラクションが、ライン(28)を介して分離され、硫黄含有率が低い底部留分は、ライン(29)を介して分離される。
【0105】
図3に指し示されるように、中間ガソリン留分は、本発明の方法を用いて処理される。それ故に、中間ガソリン留分は、ライン(22)を介して水素化脱硫反応器(2)に送られ、そこで、ライン(3)を介して供給される水素の存在下に脱硫がなされる。反応器(2)から得られた流出物は、分離装置(5)において、HDS工程の間に形成されたHSを含有しない。HSが激減した中間ガソリンは、ライン(7)を介して、場合によっては、ライン(9)を介して供給される水素と共に、チオールスイートニング反応器(8)に送られる。オレフィン上の付加によるチオールのチオエーテル化合物への転化を改善するために、塔頂留分(21)中に含有される軽質オレフィン化合物を、ライン(34)を介してスイートニング反応器(8)に供給することが可能である。チオールのスイートニングがなされている中間ガソリン留分は、ライン(10)を介して、分画塔(11)に送られ、この分画塔(11)は、チオールおよび硫黄の含有率が低い中間ガソリン留分と、スイートニング工程の間に生じたチオエーテル化合物が濃縮された中間底部留分とを分離するように操作される。チオールおよび硫黄の含有率が低い中間ガソリン留分は、ライン(12)を介して製油所のガソリンプールに排出される一方で、ライン(13)を介して排出された中間底部留分は、水素化処理装置(例えば、ガスオイル水素化脱硫装置)において脱硫させられるか、または、製油所のガスオイルプールに直接的に送られるかのいずれかである。図3にも示されるように、安定化塔(または脱ブタン塔)(31)においてスイートニング反応器(8)から得られた炭化水素流出物を処理することによって、それを安定にすることが可能であり、安定化塔(31)から、4個以下の炭素原子を含有する軽質炭化水素フラクションが塔頂分離され、チオールのスイートニングがなされた安定化中間ガソリン留分は、底部から分離され、ライン(33)を介して分画塔(11)に送られる。有利には、中間底部留分(13)は、水素化脱硫反応器(24)において、塔(20)において行われた第1の分画工程から得られた底部留分(23)との混合物として脱硫させられてよい。
【0106】
図4には、触媒蒸留塔を用いる本発明の方法の第4の実施形態が開示される。
【0107】
ガソリン供給原料、例えば、30℃と220℃の間、または、30℃と160℃の間、さらには30℃と140℃の間で沸騰する炭化水素留分が、ライン(1)を介して、第1の触媒蒸留塔(40)に送られる。この第1の触媒蒸留塔(40)は、選択的ジオレフィン水素化触媒を含有する反応セクション(41)を含む。水素化反応を行うために必要とされる水素は、ライン(2)を介して供給される。触媒塔(40)の操作様式は、選択的接触水素化反応が行われ得るだけではなく、塔の頭部における軽質炭化水素留分と塔(40)の底部における重質炭化水素留分とへの分画が行われ得ることを意味する。それ故に、未反応水素と混合された軽質炭化水素留分は、ライン(42)を介して抜き出され、重質炭化水素留分は、ライン(43)を介して抜き出される。軽質留分は、例えば、C留分であり、重質炭化水素留分は、(C−220℃)または(C−160℃)または(C−140℃)の範囲内で沸騰する留分である。
【0108】
重質炭化水素留分は、次いで、本発明の方法に従って処理され、これは、この実施形態では、水素化脱硫触媒の2個の床(46)を含む触媒蒸留塔(45)において行われる水素化脱硫工程からなる。好ましくは、重質炭化水素留分は、(ライン(44)を介した)水素と共に、水素化脱硫触媒の2個の床(46)の間に注入される。触媒蒸留塔(45)はまた、重質炭化水素留分を、(C−140℃)または(C−160℃)の範囲内で沸騰する中間塔頂留分と、それぞれ140℃超または160℃超の沸点を有する底部留分とに分画することを可能にする。本発明によると、中間留分中のチオールの量を低減させるために、この中間留分は、ライン(47)を介して排出され、安定化塔(5)を用いたHSの除去のための工程を経て、塔からライン(6)を介した、HSの大部分を含有する塔頂流と、塔の底部からライン(7)を介した安定化中間留分とが分離される。この安定化中間留分は、スイートニング反応器(8)において処理される。反応器(8)から得られた、チオールのスイートニングがなされた中間留分は、次いで、ライン(10)を介して、塔(11)において分画され、硫黄、チオールおよびチオエーテルの含有率が低いガソリンが(ライン(12)を介して)塔頂回収される。このガソリンは、(C−140℃)または(C−160℃)の範囲内で沸騰する。底部留分は、硫化物を含有し、この硫化物は、一般的に、少なくとも10個の炭素原子を含み、チオールのオレフィンに対する付加反応からより多く生じ、底部留分は、塔(11)の底部からライン(13)を介して抜き出される。場合によっては、図4に指し示されるように、中間留分は、スイートニング反応器(8)において、ライン(49)を介した触媒蒸留塔(40)の頭部から得られた軽質炭化水素留分との混合物として処理される。
【0109】
図4に指し示されるように、反応器(8)から得られた、チオールのスイートニングがなされた中間留分は、場合によっては、安定化塔(31)において行われる安定化工程を経てよく、ここから、C留分およびチオールのスイートニングがなされた中間安定化留分が、それぞれ、前記塔(31)の頭部および底部から抽出される。チオールのスイートニングがなされた安定化中間留分は、次いで、ライン(33)を介して分画塔(11)に送られる。
【0110】
チオールスイートニング工程および分画工程は、スイートニング触媒を含有する触媒床を備えた触媒塔を用いて同時に行われ得ることが留意されるべきである。
【0111】
(実施例1:比較)
水素化脱硫触媒Aは、比表面積が130m/gであり細孔容積が0.9mL/gである、ビーズ状の形態にある遷移アルミナに、それぞれ七モリブデン酸アンモニウムおよび硝酸コバルトの形態にあるモリブデンおよびコバルトを含有する水溶液を「非過剰溶液」含浸させることによって得られた。触媒は、次いで、乾燥させられ、空気中500℃で焼成された。各サンプル中のコバルトおよびモリブデンの含有率は、CoO 3重量%およびMoO 10重量%であった。
【0112】
触媒A 50mLが、管式固定床水素化脱硫反応器中に置かれた。触媒は、最初に、3.4MPaの圧力、350℃で、n−ヘプタン中のジメチルジスルフィドの形態の硫黄2重量%によって構成される供給原料と接触させる、4時間にわたる処理によって硫化させられた。
【0113】
処理される供給原料C1は、接触分解ガソリンであり、55℃の初期沸点、242℃の終点を有し、79.8のMONおよび89.5のRONを有していた。その硫黄含有率は、359重量ppmであった。
【0114】
この供給原料は、触媒Aにより、2MPaの圧力で処理され、水素対処理されるべき供給原料の体積比(H/HC)は、360L/Lであり、毎時空間速度(HSV)は4h−1であった。処理の後、ガソリンと水素の混合物は、冷却され、HSリッチな水素は、液体ガソリンから分離され、ガソリンは、水素の流れを注入することによってストリッピング処理を経て、ガソリン中の残留痕跡量の溶解したHSが除去された。
【0115】
表1には、240℃(A1)または270℃(A2)の水素化脱硫温度における触媒Aの脱硫率(%)およびオクタン価に対する温度の影響が示される。
【0116】
【表1】
【0117】
触媒Aによる供給原料C1の水素化脱硫によって、全硫黄含有率における低下が提供され、チオール含有率も低下した。約11重量ppmのチオールを得るために最低270℃の温度で供給原料を処理することが必要であったことが留意されるべきである。水素化脱硫反応のこの温度上昇は、オレフィンの水素化反応を有利にするという効果も有しており、これは、結果として、脱硫ガソリン中の全オレフィン含有率における降下をもたらした。
【0118】
(実施例2:本発明に合致する)
触媒Bは、モリブデンおよびニッケルを含有する水溶液を用いて、比表面積が135m/gであり細孔容積が0.45mL/gであるアルミン酸ニッケルに含浸させることによって得られた。触媒は、次いで、乾燥させられ、空気中500℃で焼成された。このサンプルのニッケルおよびモリブデンの含有率は、NiO 7.9重量%およびMoO 13重量%であった。
【0119】
実施例1において得られかつ記載されたようなガソリンA1が、水素の非存在下に、脱チオール化触媒Bにより処理された。その際の圧力は1MPaであり、HSVは3h−1であり、温度は100℃であった。処理の後、得られたガソリンB1は冷却された。
【0120】
表2には、得られたガソリンB1の主要な特徴が示される。
【0121】
【表2】
【0122】
それ故に、脱チオール化工程(工程c))を行うことは、水素なしでオレフィンの水素化がなくガソリンA1のチオールが転化させられ得るだろうことを意味する。
【0123】
(実施例3:本発明に合致する)
触媒Dは、モリブデンおよびニッケルを含有する水溶液を用いて、比表面積が239m/gであり細孔容積が0.6mL/gであるアルミナに含浸させることによって得られた。触媒は、次いで、乾燥させられ、空気中500℃で焼成された。このサンプルのニッケルおよびモリブデンの含有率は、NiO 9.5重量%およびMoO 13重量%であった。
【0124】
実施例1において得られかつ記載されたようなガソリンA1が、供給原料C2と混合されて、供給原料C3が得られた。供給原料C2は、軽質分解ガソリンであり、ジオレフィンの選択的水素化を経たものであり、22℃の初期沸点および71℃の終点を有し、MONは82.5であり、RONは96.9であった。その硫黄含有率は、20重量ppmであり、そのチオール含有率は、3重量ppm未満であり、そのオレフィン含有率は、56.7重量%であった。
【0125】
供給原料C3は、ガソリンA1 80重量%を供給原料C2 20重量%と混合することによって得られた。得られた混合物は、22℃の初期沸点および242℃の終点を有するガソリンであった。その硫黄含有率は、73重量ppmであり、そのチオール含有率は、19重量ppmであり、そのオレフィン含有率は31重量%であった。
【0126】
供給原料C3は、水素の存在下に、脱チオール化触媒Dにより処理された。その際の圧力は1MPaであり、毎時空間速度は3h−1であり、水素対処理されるべき供給原料の体積比(H/HC)は2L/Lであり、温度は100℃であった。処理の後、ガソリン混合物は冷却され、水素およびHSを豊富に含む気相と、液体ガソリンフラクションとが回収された。液体フラクションは、水素の流れを注入することによってストリッピング処理を経て、ガソリン中に溶解されたかもしれなかったあらゆる痕跡量のHSが除去された。
【0127】
表3には、ストリッピングの後に得られたガソリンD1の主要な特徴が示される。
【0128】
【表3】
【0129】
本方法は、オレフィンの水素化がなく、それ故に、オクタン価を喪失することなくチオールを選択的にチオエーテルに転化させることによってガソリンA1のチオール含有率を低下させるために用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0130】
図1図1は、本発明による第1の実施形態に従う方法のレイアウトである。
図2図2は、本発明による第2の実施形態に従う方法のレイアウトである。
図3図3は、第3の実施形態による代替方法のレイアウトを示す。
図4図4は、本発明の方法の第4の実施形態を示す。
図1
図2
図3
図4