【実施例1】
【0015】
実施例1に係るブラシシールにつき、
図1から
図4を参照して説明する。以下、
図1の紙面左右を軸方向、
図4(a)の中心Oから放射状に延びる方向を径方向、中心Oから等距離の円周に沿った方向を周方向として説明する。
【0016】
図1には、タービン等の回転機械にブラシシールが組み込まれた例が示されており、回転機械のハウジング7に形成されたチャネル状の収納部8にブラシシール1が配置され、そのブラシ4aの先端が回転機械のロータ9に近接乃至接触することにより、回転機械内部の高圧側領域Hの蒸気、燃料ガス等の被密封気体は低圧側領域Lに漏れることが抑制されている。
【0017】
図4(a)に示されるように、ブラシシール1は周方向に6分割のセグメント1A、1A、1B、1B、1C、1Cが連結されて円環状に形成されている。
図4(a)においては、説明の便宜上、後述する固定部材の配置・形状等が異なる3種類のセグメント1A、1B、1Cを示しているが、固定部材の配置・形状が同様の1種類のセグメントを6個連結して構成されることが好ましい。
【0018】
ブラシシール1は、低圧側プレート2、高圧側プレート3、ブラシ体4及び固定部材5から主に構成され、ブラシ体4はブラシ4a及び取付部4bから主に構成されている。
ブラシ4aはワイヤを束ねて板状に形成され外周で取付部4bに溶接又はカシメられ、ブラシ4aと取付部4bとは一体に結合され、その断面は略ハンマー形状に形成されている。また、ブラシ4aはワイヤの線径が0.05〜0.5mm、材質が鋼、ニッケル基やコバルト基などの合金、セラミックス、また、取付部4bは略6分円弧状の形状、材質はステンレスである。
【0019】
次に、ブラシシール1の組み立て及び両プレート2、3の詳細な構造について
図3を参照して説明する。両プレート2、3の材質はステンレス、クロム鋼等が好ましい。
【0020】
低圧側プレート2は、径方向かつ周方向に延在する板状部21、板状部21の軸方向に凹み周方向に延在する凹溝22、凹溝22の一側面をなし板状部21から軸方向かつ周方向に延在するリブ23、リブ23の径方向外側に設けられ径方向内側に凹みかつ周方向に延在する凹溝24(低圧側凹部)、リブ23が一側面をなし板状部21の軸方向に凹み周方向に延在する凹溝25、凹溝25の一側面及び板状部21の外周面27の一部をなし板状部21から軸方向かつ周方向に延在する突部26から主に構成されている。
【0021】
高圧側プレート3は、径方向かつ周方向に延在する板状部31、板状部31の軸方向に凹み周方向に延在する段部32、段部32から更に軸方向に凹み周方向に延在する凹溝33、凹溝33の一側面及び外周面38の一面をなし板状部31から軸方向かつ周方向に延在するリブ34、リブ34の径方向内側に設けられ径方向外側に凹みかつ周方向に延在する凹溝35(高圧側凹部)、リブ34の軸方向先端側に設けられ径方向外側に軸方向に凹む段部37が切り欠かれ周方向に延在する突部36から主に構成されている。
【0022】
ブラシシール1の組み立て手順は以下のとおりである。
(ステップ1)低圧側プレート2の凹溝22に、ブラシ4aの一方の取付部4bを嵌入する(
図3(a))。
(ステップ2)次いで、高圧側プレート3を
図3における上方から低圧側プレート2に重ね合わせ、リブ23を凹溝33にかつ突部36を凹溝25に嵌入する(
図3(a))。なお、リブ23と凹溝33、突部36と凹溝25は嵌入されたときに、それぞれわずかに隙間が生じる寸法関係(遊嵌)となっている。なお、遊嵌であるため嵌入が容易であるが、強固な固定という観点からは圧入であってもよい。
この状態で、ブラシ4aの取付部4bはリブ23と段部32がなす空間に収容される(
図3(b))。また、凹溝24と凹溝35が対応する位置に配置され、凹溝24の底面24aから立ち上がる両側面24b、24cは凹溝35の底面35aから立ち上がる両側面35b、35cと略同一面をなし、凹溝24と凹溝35により断面矩形の空間6が形成される。
(ステップ3)
図3(b)に示される状態から、空間6と略同形状の固定部材5を周方向(
図3において紙面に直交する方向)から空間6に挿入する(
図3(c))。
【0023】
ここで、固定部材5は、空間6に嵌入されたときに、わずかに隙間が生じる寸法関係(遊嵌)となっている。また、固定部材5は略6分円弧状の形状、材質はステンレス、クロム鋼等の両プレート2、3よりも線膨張係数が大きいものが好ましい場合がある。このような材料を選定することで、使用時に被密封気体の温度によりブラシシール1が膨張するが、固定部材5が両プレート2、3よりも膨張量が大きいため、いわゆるしまりばめとなり、両プレート2、3を軸方向にがたつきなく固定することができる。なお、固定部材5を空間6に遊嵌するため嵌入が容易であるが、強固な固定という観点からは圧入であってもよい。
【0024】
また、両プレート2、3の径方向は、リブ23と凹溝33の係合、突部36と凹溝25の嵌合により固定される。
【0025】
このようにして、凹溝24及び凹溝35が固定部材5によりキー固定されることとなり、低圧側プレート2及び高圧側プレート3を軸方向に安定した位置で確実に固定することができる。また、低圧側プレート2及び高圧側プレート3の位置決めが容易である。
【0026】
また、固定部材5には低圧側の凹溝24及び高圧側の凹溝35から軸方向からのせん断力が作用する。一方、固定部材5は周方向の長さが軸方向や径方向の長さよりも長く形成されている。そして、固定部材5は周方向の長さが長いため、固定部材5に作用するせん断力に基づく周方向における単位長さあたりのせん断応力は小さい。そのため、固定部材5は径方向の長さが短いものでよく、ブラシシール1をコンパクトに構成できる。
【0027】
また、凹溝24及び凹溝35はいずれも底面24a、35aを有する有底であるため、凹溝24及び凹溝35がなす空間6の開口は、低圧側プレート2及び高圧側プレート3の周方向端部に形成される。また、有底であることによって、固定部材が径方向に抜けない。また、低圧側プレート2及び高圧側プレート3の径方向外側には、凹溝24、凹溝35及び固定部材5が露出しないため、低圧側プレート2及び高圧側プレート3の径方向外周の形状の自由度が高い。そのため、ブラシシール1を組み込むハウジング7の収納部8とのクリアランスの設定が容易となる。さらに、ブラシシール1の外周を外周面27及び外周面38を合わせたとき平坦かつ面一に形成できる。
【0028】
また、ブラシ4a及び取付部4bの外径側は、リブ23及びリブ34、すなわち両プレート2、3により覆われている。リブ23及びリブ34と間に径方向に対する引っ掛かり部分が形成され、径方向への移動が拘束されるため、低圧側プレート2に対する高圧側プレート3の組み立て性に優れる。
【0029】
また、固定部材5と空間6が略同形状であるセグメント1C(
図4(a))の場合には、固定部材5が空間6に周方向に渡って配置されることとなるから、両プレート2、3を強固に固定することができる。
【0030】
また、セグメント1Aのように、1つの空間6に複数の固定部材5A1、5A2、5A1、5A2、5A1、5A2を配置するようにしてもよい。この場合には、1つ1つの固定部材5A1、5A2の周方向長さが短く挿入が容易である。また、複数の固定部材5A1、5A2は、同じ形状でもよいが、断面形状を異なるようにしてもよい。固定部材5A2は側面24b、35b、24c、35cに確実に当接する形状(
図4(b))とし、
固定部材5A1は底面24a、35aに確実に当接する形状とすると、固定部材5A1、5A2は軸方向及び径方向におけるガタを確実に吸収する作用を奏することができる。
【0031】
また、セグメント1Bのように、両プレート2、3に設ける凹溝24、35を周方向の途中まで延びる構成とし、これらの凹溝24、35からなる空間6B1、6B2にそれぞれ固定部材5B1、5B2を嵌入するようにしてもよい。このようにすると、セグメント1Bの周方向の両端のみに固定部材5B1、5B2を嵌入させるだけでよく、固定部材5B1、5B2の装着が簡単である。
【0032】
また、
図4(a)に示されるように、6個のセグメントを連結して円環状のブラシシール1を構成したときに、各セグメントの周端面同士が近接乃至接触している。そして、固定部材5、5A1、5A2、5B1、5B2は両プレート2、3の周方向から嵌入されているため、仮に、固定部材5、5A1、5A2、5B1、5B2が使用中に周方向に移動しようとしても、隣接するセグメントの周端面(又は隣接するセグメントの固定部材)に当接して抜けることが防止されている。
【0033】
また、溶接する箇所は問わないが、例えば、
図2に示されるように周端面における凹溝25と突部36とが接合される箇所50をスポット溶接により固定がより確実となるまた、固定部材5、5A1、5A2、5B1、5B2、低圧側プレート2及び高圧側プレート3の三部材が当接する箇所50’をスポット溶接すれば固定がさらに確実になる。
【0034】
さらに、ブラシシール1の組み立て手順として、低圧側プレート2にブラシ体4を組み付けた後、高圧側プレート3を軸方向から組み付ける例について説明したが、高圧側プレート3を周方向に回動させて組み立ててもよい。また、組み立て順序は、高圧側プレート3にブラシ体4を組み付けた後、低圧側プレート3を組み付ける順であってもよい。