特許第6590844号(P6590844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6590844
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20191007BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20191007BHJP
   H01L 21/8222 20060101ALI20191007BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20191007BHJP
   H01L 29/74 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   H01L27/04 H
   H01L27/04 C
   H01L27/04 P
   H01L27/04 L
   H01L27/06 T
   H01L29/74 F
   H01L29/74 G
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-24147(P2017-24147)
(22)【出願日】2017年2月13日
(65)【公開番号】特開2018-133359(P2018-133359A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2018年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆司
(72)【発明者】
【氏名】副島 成雅
(72)【発明者】
【氏名】蟹江 陽介
(72)【発明者】
【氏名】島 健悟
【審査官】 辻 勇貴
(56)【参考文献】
【文献】 特表2014−517517(JP,A)
【文献】 特開2011−091223(JP,A)
【文献】 特開2008−172262(JP,A)
【文献】 特開2015−065274(JP,A)
【文献】 特開2010−050328(JP,A)
【文献】 特表2016−516332(JP,A)
【文献】 特開2008−218818(JP,A)
【文献】 特開2006−278911(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/016089(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/822
H01L 21/8222
H01L 27/04
H01L 27/06
H01L 29/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイリスタと、コイルL,キャパシタC及び抵抗Rを有するLCR回路と、を備える保護回路で用いられる半導体装置であって、
サイリスタ構造が作りこまれている半導体層と、
前記半導体層上に設けられている絶縁膜と、
前記絶縁膜上に配置されており、保護対象回路と接続する一対の電極と、
を備えており、
前記コイルL,キャパシタC及び抵抗Rのうちの少なくとも1つが、前記絶縁膜内に配置されているとともに、前記絶縁膜に設けられている第1孔を充填する第1金属配線によって前記サイリスタ構造のアノードと接続しており、
前記一対の電極の一方が、前記絶縁膜に設けられている第2孔を充填する第2金属配線により、前記コイルL,キャパシタC及び抵抗Rのうちの少なくとも1つと接続している、半導体装置。
【請求項2】
前記一対の電極の他方が、前記絶縁膜に設けられている第3孔を充填する第3金属配線により、前記サイリスタ構造のカソードと接続している請求項に記載の半導体装置。
【請求項3】
サイリスタと、コイルL,キャパシタC及び抵抗Rを有するLCR回路と、を備える保護回路で用いられる半導体装置であって、
サイリスタ構造が作りこまれている半導体層と、
前記半導体層上に設けられている絶縁膜と、
前記絶縁膜上に配置されており、保護対象回路と接続する一対の電極と、
を備えており、
前記コイルL,キャパシタC及び抵抗Rのうちの少なくとも1つが、前記絶縁膜内に配置されているとともに、前記絶縁膜に設けられている第1孔を充填する第1金属配線によって前記サイリスタ構造のアノードと接続しており、
前記コイルL,キャパシタC及び抵抗Rの全てが、前記絶縁膜内に配置されている、半導体装置。
【請求項4】
サイリスタと、コイルL,キャパシタC及び抵抗Rを有するLCR回路と、を備える保護回路で用いられる半導体装置であって、
サイリスタ構造が作りこまれている半導体層と、
前記半導体層上に設けられている絶縁膜と、
前記絶縁膜上に配置されており、保護対象回路と接続する一対の電極と、
を備えており、
キャパシタCと抵抗Rの少なくとも一方が、前記絶縁膜内に配置されているとともに、前記絶縁膜に設けられている第1孔を充填する第1金属配線によって前記サイリスタ構造のアノードと接続している、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、半導体装置に関する。特に、本明細書は、IC回路等に過電圧が印加されることを防止する保護回路で用いられる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、サイリスタ構造を備える半導体装置を利用し、保護対象回路を過電圧から保護する保護回路が開示されている。保護対象回路の電源線にサージ等の過電圧が印加されると、半導体装置がオンし、保護対象回路を過電圧から保護する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−50328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、電源線に高電圧が印加されたときに、半導体装置(サイリスタ)がオンすることにより、保護対象回路に過電圧が印加されることを防止している。しかしながら、電源線に過電圧が高速で、例えば数ナノ秒で印加されると、サイリスタがオンする前に、保護対象回路に過電圧が印加されることがある。サイリスタと保護対象回路の間にLCR回路を配置し、サイリスタとLCR回路で保護回路を構成すれば、サイリスタがオンするまでの間、保護対象回路に過電圧が印加されることを防止することができる。しかしながら、サイリスタと別にLCR回路を用意し、サイリスタとLCR回路を配線で接続すると、その配線に寄生容量が生じたり、配線抵抗が生じることにより、サイリスタのオン動作が妨げられ、保護対象回路への過電圧の印加を防止できないことが起こり得る。本明細書は、サイリスタ構造を備える半導体装置において、保護対象回路の保護性能を向上させる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する半導体装置は、サイリスタと、コイルL,キャパシタC及び抵抗Rを有するLCR回路を備える保護回路で用いられる。半導体装置は、半導体層と、絶縁膜と、一対の電極を備えている。半導体層には、サイリスタ構造が作りこまれている。絶縁膜は、半導体層上に設けられている。一対の電極は、絶縁膜上に配置されており、保護対象回路と接続する。上記保護回路では、コイルL,キャパシタC及び抵抗Rのうちの少なくとも1つが、絶縁膜内に配置されているとともに、絶縁膜に設けられている第1孔を充填する第1金属配線によってサイリスタ構造のアノードと接続している。
【0006】
上記半導体装置では、コイルL,キャパシタC及び抵抗Rのうちの少なくとも1つが、絶縁膜に設けた孔内を充填する金属配線(第1金属配線)によってサイリスタ構造のアノードと接続されている。すなわち、サイリスタ構造(半導体層)とコイルL,キャパシタC及び抵抗Rのうちの少なくとも1つとが、絶縁膜を介して積層されており、両者が埋込み配線(金属配線)によって接続されている。従来、サイリスタとLCR回路を接続する場合、回路基板上に両者を配置し、サイリスタとLCR回路をボンディングワイヤ,プリント配線等で接続する。そのため、配線長さを短くしたり、配線太さを太くすることに限界がある。上記保護回路では、絶縁膜の厚みを調整することにより、配線長さを短くすることができる。また、絶縁膜に設ける孔(第1孔)を大きくすることにより配線太さを太くすることができる。サイリスタとLCR回路の間に生じる寄生容量,配線抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施例の半導体装置を用いた保護回路の回路図を示す。
図2】第1実施例の半導体装置の断面図を示す。
図3】第1実施例の半導体装置の変形例を示す。
図4】第2実施例の半導体装置の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本明細書で開示される技術の特徴を整理する。なお、以下に記す事項は、各々単独で技術的な有用性を有している。
【0009】
本明細書で開示する半導体装置は、保護対象回路の保護回路として、あるいは、保護回路の一部として用いられてよい。なお、保護回路は、サイリスタと、コイルL,キャパシタC及び抵抗Rを有するLCR回路を備えていてよい。半導体装置は、サイリスタ構造と、LCR回路を構成する素子(コイルL,キャパシタC,抵抗R)の少なくとも1つを備えていてよい。半導体装置は、半導体層と、絶縁膜と、一対の電極を備えていてよい。半導体層内には、サイリスタ構造が作りこまれていてよい。半導体層は、p型の半導体基板と、半導体基板上に設けられている素子形成層を備えていてよい。半導体基板及び素子形成層の材料はシリコンであってよい。
【0010】
素子形成層は、n型半導体領域と、n型半導体領域内に設けられているとともに素子形成層の表面に露出しているp型ウェル領域と、p型ウェル領域内の一部に設けられているとともに素子形成層の表層に露出しているn型カソード領域と、p型ウェル領域から離れた位置でn型半導体領域内に設けられているとともに素子形成層の表層に露出しているp型アノード領域備えていてよい。n型カソード領域は、p型ウェル領域によって、n型半導体領域から分離されていてよい。p型アノード領域は、n型半導体領域によって、p型ウェル領域から分離されていてよい。n型カソード領域,p型ウェル領域及びn型半導体領域で構成されるnpnトランジスタと、p型アノード領域,n型半導体領域及びp型ウェル領域で構成されるnpnトランジスタによって、サイリスタが構成されていてよい。この場合、p型ウェル領域は、サイリスタ構造のゲート領域に相当する。
【0011】
素子形成層は、さらに、n型カソード領域から離れた位置でp型ウェル領域内に設けられているとともに素子形成層の表層に露出しているp型コンタクト領域と、p型アノード領域から離れた位置でn型半導体領域内に設けられているとともに素子形成層の表層に露出しているn型コンタクト領域を備えていてよい。n型カソード領域とp型コンタクト領域は、共通の電極(カソード電極)に接続されていてよい。また、p型アノード領域とn型コンタクト領域は、共通の電極(アノード電極)に接続されていてよい。n型コンタクト領域によって、アノード電極とn型半導体領域のオーミック接触を実現することができる。p型コンタクト領域によって、カソード電極とp型ウェル領域のオーミック接触を実現することができる。なお、アノード電極及びカソード電極は、素子形成層の表面に、互いに離れて設けられていてよい。アノード電極は、電源から伸びる電源線に接続されていてよい。カソード電極は、接地線に接続されていてよい。
【0012】
半導体基板及び素子形成層において、p型不純物としてホウ素(B)が用いられ、n型不純物としてリン(P)が用いられていてよい。半導体基板の不純物濃度は1×1015〜1×1016cm−3に調整されており、n型半導体領域の不純物濃度は1×1017〜1×1018cm−3に調整されており、p型ウェル領域の不純物濃度は1×1017〜1×1018cm−3に調整されており、n型カソード領域の不純物濃度は1×1019cm−3以上に調整されており、p型コンタクト領域の不純物濃度は5×1018cm−3以上に調整されており、p型アノード領域の不純物濃度は5×1018cm−3以上に調整されており、n型コンタクト領域の不純物濃度は5×1018cm−3以上に調整されていてよい。
【0013】
半導体層(素子形成層)上に、絶縁膜が設けられていてよい。絶縁膜の材料として、BPSG(Boron Phosphor Silicate Glass),TEOS−SiO(Tetraethoxysilane based SiO2)等のCVD膜が挙げられる。絶縁膜内に、LCR回路を構成する素子(コイルL,キャパシタC,抵抗R)のうちの少なくとも1つが配置されていてよい。絶縁膜内に配置されている素子は、絶縁膜に設けられている孔を充填している金属配線によって、サイリスタ構造のアノードと接続されていてよい。すなわち、絶縁膜内に配置されている素子が、ビア配線によって、p型アノード領域に接続されているアノード電極に接続されていてよい。絶縁膜内には、LCR回路を構成する素子のうちの2つが配置されていてもよいし、LCR回路を構成する素子の全てが配置されていてもよい。
【0014】
絶縁膜上に、保護対象回路と接続する一対の電極が配置されていてよい。一対の電極の一方(第1電極)は、絶縁膜に設けられている孔を充填している金属配線によって、上記絶縁膜内に配置されている素子(コイルL,キャパシタC,抵抗Rのうちの少なくとも1つ)と接続していてよい。すなわち、第1電極は、ビア配線によって、絶縁膜内に配置されている素子と接続していてよい。また、一対の電極(第2電極)の他方は、絶縁膜に設けられている孔を充填している金属配線によって、サイリスタ構造のカソードと接続されていてよい。すなわち、第2電極は、ビア配線によって、n型カソード領域に接続されているカソード電極に接続されていてよい。ビア配線(金属配線)として、高濃度の不純物(例えば、1×1019cm−3以上)を含むポリシリコン,タングステン,アルミニウム等が挙げられる。
【0015】
サイリスタ構造は、電源線と接地線の間で、保護対象回路と並列に接続されていてよい。また、半導体層上に設けられている絶縁膜内に配置されている素子も、保護対象回路と並列に接続されていてよい。サイリスタ構造及び絶縁膜内に配置されている素子は、保護対象回路よりも上流で、電源線に接続されていてよい。これにより、電源線に過電圧(サージ等)が印加されたときに、保護対象回路に過電圧が印加されることを防止することができる。
【実施例】
【0016】
(第1実施例)
図1及び図2を参照し、保護回路100で用いられる半導体装置80について説明する。図1に示すように、保護回路100は、電源線10と接地線2の間で、IC回路6と並列に接続されている。IC回路6は、保護対象回路の一例である。保護回路100は、IC回路よりも上流(電源V側)で電源線10に接続されている。保護回路100は、キャパシタCと半導体装置80を備えている。半導体装置80は、電源線10と接地線2の間でキャパシタCと並列に接続されており、キャパシタCよりも上流で電源線10に接続されている。半導体装置80は、サイリスタ(SCR)と抵抗RとコイルLを備えている。
【0017】
半導体装置80は、第1電極8と第2電極4を備えている。第1電極8及び第2電極4は、一対の電極の一例である。第1電極8は、電源線10によって、IC回路6及びキャパシタCと接続されている。第2電極4は、接地線2によって、IC回路6及びキャパシタCと接続されている。第1電極8及び第2電極4は、半導体装置80の外部電極である。サイリスタのアノードAが電源線10に接続されており、カソードKが接地線2に接続されている。また、抵抗R及びコイルLは、サイリスタと直列に接続されている。電源線10は、抵抗R及びコイルLとサイリスタ(アノードA)との間に接続されている。電源Vから供給される電流は、抵抗R及びコイルLを通過して、IC回路6に供給される。
【0018】
図2に示すように、半導体装置80は、半導体層50と、半導体層50上に設けられている絶縁膜60と、絶縁膜60上に設けられている第1電極8及び第2電極4を備えている。半導体層50は、p型の半導体基板54と、サイリスタ構造が作りこまれている素子形成層52を備えている。素子形成層52は、n型半導体領域32と、n型半導体領域32内に設けられているp型ウェル領域34と、p型ウェル領域34内に設けられているn型カソード領域36と、p型ウェル領域34内に設けられているp型コンタクト領域38と、n型半導体領域32内に設けられているp型アノード領域48と、n型半導体領域32内に設けられているn型コンタクト領域46を備えている。
【0019】
p型ウェル領域34は、n型半導体領域32内の一部に設けられており、素子形成層52の表面に露出している。p型ウェル領域34が設けられていない部分では、n型半導体領域32が素子形成層52の表面に露出している。n型カソード領域36は、p型ウェル領域34内の一部に設けられており、素子形成層52の表面に露出している。n型カソード領域36は、p型ウェル領域34によって、n型半導体領域32から分離されている。n型カソード領域36と、p型ウェル領域34と、n型半導体領域32によって、npnトランジスタが構成されている。
【0020】
型コンタクト領域38は、n型カソード領域36から離れた位置で、p型ウェル領域34内の一部に設けられており、素子形成層52の表面に露出している。カソード電極40が、n型カソード領域36及びp型コンタクト領域38と接するように、素子形成層52の表面に設けられている。p型コンタクト領域38は、カソード電極40とp型ウェル領域34をオーミック接触させるための領域である。カソード電極40は、接地線2に接続されている(図1も参照)。
【0021】
型アノード領域48は、p型ウェル領域34から離れた位置で、n型半導体領域32内の一部に設けられており、素子形成層52の表面に露出している。p型アノード領域48は、n型半導体領域32によって、p型ウェル領域34から分離されている。p型アノード領域48とn型半導体領域32とp型ウェル領域34によって、pnpトランジスタが構成されている。pnpトランジスタ(領域48,32,34)とnpnトランジスタ(領域36,34,32)によって、サイリスタが構成されている。
【0022】
型コンタクト領域46は、p型アノード領域48から離れた位置で、n型半導体領域32内の一部に設けられており、素子形成層52の表面に露出している。アノード電極44が、p型アノード領域48及びn型コンタクト領域46と接するように、素子形成層52の表面に設けられている。n型コンタクト領域46は、アノード電極44とn型半導体領域32をオーミック接触させるための領域である。アノード電極44は、電源線10に接続されている(図1も参照)。
【0023】
絶縁膜60が、素子形成層52(半導体層50)の表面に設けられている。絶縁膜の表面には、第1電極8と第2電極4が設けられている。絶縁膜60は、素子形成層52の表面の一部(電極40,44が設けられていない部分)と電極40,44の表面を覆っている。絶縁膜60には、第1孔65,第2孔63及び第3孔61が設けられている。また、絶縁膜60内にコイル68が配置されている。第1孔65は、絶縁膜60の中間部分から、絶縁膜60の裏面まで伸びている。具体的には、第1孔65は、コイル68とアノード電極44の間を伸びている。第2孔63は、絶縁膜60の中間部分から、絶縁膜60の表面まで伸びている。第2孔63は、第1電極8とコイル68の間を伸びている。第3孔61は、絶縁膜60の表面から裏面まで伸びている。第3孔61は、第2電極4とカソード電極40の間を伸びている。
【0024】
第1孔65内に、埋込み配線70が充填されている。埋込み配線70は、第1金属配線の一例である。埋込み配線70は、コイル68とアノード電極44を接続している。埋込み配線70は、n型不純物を1×1019cm−3含むポリシリコンである。埋込み配線70に含まれる不純物として、例えばリンが挙げられる。なお、コイル68は、公知の技術を利用して絶縁膜60内に配置することができる。例えば、配線パターンが形成された複数の絶縁シートを積層し、各配線パターンを接続することにより、絶縁膜60内にコイル68を形成することができる。
【0025】
第2孔63内に、埋込み配線66が充填されている。埋込み配線66は、第2金属配線の一例である。埋込み配線66は、第1電極8とコイル68を接続している。埋込み配線66の材料は、埋込み配線70と同一である。また、埋込み配線66の中間部分に、抵抗64が設けられている。抵抗64は、埋込み配線66よりも不純物を低濃度に含むポリシリコンである。抵抗64の不純物濃度は、1×1014cm−3〜1×1017cm−3に調整されている。埋込み配線66と抵抗64は、不純物濃度が異なる同一の材料(ポリシリコン)で構成されている。抵抗64とコイル68は、埋込み配線66,70によって、第1電極8とアノード電極44の間に接続されている。
【0026】
第3孔61内に、埋込み配線62が充填されている。埋込み配線62は、第3金属配線の一例である。埋込み配線62は、第2電極4とカソード電極40を接続している。埋込み配線62の材料は、埋込み配線66,70と同一である。
【0027】
半導体装置80の利点について説明する。半導体装置80を備える保護回路100では、電源Vから供給される電流は、アノード電極44,コイル68,抵抗64,第1電極8を経て、IC回路6に供給される。そのため、電源線10に過電圧が印加されたときに、サイリスタがオンする前に過電圧がIC回路6に印加されることを防止することができる。また、半導体装置80では、サイリスタ構造上に、コイル68と抵抗64が配置されており、コイル68及び抵抗64が、孔63,65内に充填された埋込み配線66,70によってサイリスタ構造に接続されている。埋込み配線66,70の太さ(断面積)は、孔63,65のサイズによって調整可能である。すなわち、埋込み配線66,70の太さを容易に太くすることができる。また、埋込み配線66,70でサイリスタ構造とコイル68及び抵抗64を接続することにより、配線長さも短くすることができる。半導体装置80を用いることにより、コイル及び抵抗を、ボンデングワイヤ,プリント配線等でサイリスタに接続する従来の形態と比較して、配線抵抗が小さく、配線に寄生容量が生じることを抑制できる。
【0028】
また、従来は、コイル及び抵抗を、回路基板上のサイリスタとは別の位置に配置する。半導体装置80は、コイル及び抵抗がサイリスタ上に配置されているので、回路基板の面積を小さくすることができる。すなわち、半導体装置80を用いることにより、小型の回路基板を実現することができる。なお、第3孔61のサイズも調整可能であり、カソード電極40と第2電極4も埋込み配線62によって低抵抗に接続することができる。
【0029】
また、図3に示す半導体装置80aのように、第1孔65内の埋込み配線70の中間部分に抵抗64を形成してもよい。この場合、第2孔63内は、埋込み配線66のみであってよい。アノード電極44から第1電極8に向けて、抵抗64,コイル68の順に配置することができる。
【0030】
上記半導体装置80では、埋込み配線66の中間部分の不純物濃度を薄くし、埋込み配線66内に抵抗64を配置している。しかしながら、第2孔63内は、不純物濃度が均一な埋込み配線で充填されてもよい。この場合、第2孔63内に充填する埋込み配線の不純物濃度は、第3孔61内を充填している埋込み配線62より低濃度にする。すなわち、第2孔63内を抵抗で充填する。同様に、半導体装置80aも、第1孔65内が、埋込み配線62より低濃度の埋込み配線で充填されていてよい。また、市販のコイル、抵抗を絶縁膜内に配置し、それらを埋込み配線で接続してもよい。
【0031】
(第2実施例)
図4を参照し、半導体装置180について説明する。半導体装置180は、半導体装置80aの変形例であり、サイリスタ(SCR)とキャパシタCと抵抗RとコイルLを備えている(図1も参照)。半導体装置180について、半導体装置80aと同一の構成については、半導体装置80aと同じ参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。
【0032】
半導体装置180では、第1電極108が埋込み配線66に接続されており、第2電極104が埋込み配線62に接続されている。また、絶縁膜60の外部において、第1電極108と第2電極104の間に絶縁膜90が設けられている。絶縁膜90の厚みはおよそ1μmである。キャパシタ92が、第1電極108と絶縁膜90と第2電極104によって構成されている。半導体装置180は、絶縁膜60の外部にキャパシタ92が設けられているということができる。なお、第1電極と第2電極の間に絶縁膜を設けてキャパシタを構成するという技術は、半導体装置80(図2を参照)に適用することもできる。
【0033】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0034】
4,8:一対の電極
50:半導体層
60:絶縁膜
61:第3孔
62:第3金属配線
63:第2孔
65:第1孔
66:第2金属配線
70:第1金属配線
80:半導体装置
SCR:サイリスタ
L:コイル
R:抵抗
C:キャパシタ
図1
図2
図3
図4