【実施例】
【0016】
(第1実施例)
図1及び
図2を参照し、保護回路100で用いられる半導体装置80について説明する。
図1に示すように、保護回路100は、電源線10と接地線2の間で、IC回路6と並列に接続されている。IC回路6は、保護対象回路の一例である。保護回路100は、IC回路よりも上流(電源V側)で電源線10に接続されている。保護回路100は、キャパシタCと半導体装置80を備えている。半導体装置80は、電源線10と接地線2の間でキャパシタCと並列に接続されており、キャパシタCよりも上流で電源線10に接続されている。半導体装置80は、サイリスタ(SCR)と抵抗RとコイルLを備えている。
【0017】
半導体装置80は、第1電極8と第2電極4を備えている。第1電極8及び第2電極4は、一対の電極の一例である。第1電極8は、電源線10によって、IC回路6及びキャパシタCと接続されている。第2電極4は、接地線2によって、IC回路6及びキャパシタCと接続されている。第1電極8及び第2電極4は、半導体装置80の外部電極である。サイリスタのアノードAが電源線10に接続されており、カソードKが接地線2に接続されている。また、抵抗R及びコイルLは、サイリスタと直列に接続されている。電源線10は、抵抗R及びコイルLとサイリスタ(アノードA)との間に接続されている。電源Vから供給される電流は、抵抗R及びコイルLを通過して、IC回路6に供給される。
【0018】
図2に示すように、半導体装置80は、半導体層50と、半導体層50上に設けられている絶縁膜60と、絶縁膜60上に設けられている第1電極8及び第2電極4を備えている。半導体層50は、p型の半導体基板54と、サイリスタ構造が作りこまれている素子形成層52を備えている。素子形成層52は、n型半導体領域32と、n型半導体領域32内に設けられているp型ウェル領域34と、p型ウェル領域34内に設けられているn
+型カソード領域36と、p型ウェル領域34内に設けられているp
+型コンタクト領域38と、n型半導体領域32内に設けられているp
+型アノード領域48と、n型半導体領域32内に設けられているn
+型コンタクト領域46を備えている。
【0019】
p型ウェル領域34は、n型半導体領域32内の一部に設けられており、素子形成層52の表面に露出している。p型ウェル領域34が設けられていない部分では、n型半導体領域32が素子形成層52の表面に露出している。n
+型カソード領域36は、p型ウェル領域34内の一部に設けられており、素子形成層52の表面に露出している。n
+型カソード領域36は、p型ウェル領域34によって、n型半導体領域32から分離されている。n
+型カソード領域36と、p型ウェル領域34と、n型半導体領域32によって、npnトランジスタが構成されている。
【0020】
p
+型コンタクト領域38は、n
+型カソード領域36から離れた位置で、p型ウェル領域34内の一部に設けられており、素子形成層52の表面に露出している。カソード電極40が、n
+型カソード領域36及びp
+型コンタクト領域38と接するように、素子形成層52の表面に設けられている。p
+型コンタクト領域38は、カソード電極40とp型ウェル領域34をオーミック接触させるための領域である。カソード電極40は、接地線2に接続されている(
図1も参照)。
【0021】
p
+型アノード領域48は、p型ウェル領域34から離れた位置で、n型半導体領域32内の一部に設けられており、素子形成層52の表面に露出している。p
+型アノード領域48は、n型半導体領域32によって、p型ウェル領域34から分離されている。p
+型アノード領域48とn型半導体領域32とp型ウェル領域34によって、pnpトランジスタが構成されている。pnpトランジスタ(領域48,32,34)とnpnトランジスタ(領域36,34,32)によって、サイリスタが構成されている。
【0022】
n
+型コンタクト領域46は、p
+型アノード領域48から離れた位置で、n型半導体領域32内の一部に設けられており、素子形成層52の表面に露出している。アノード電極44が、p
+型アノード領域48及びn
+型コンタクト領域46と接するように、素子形成層52の表面に設けられている。n
+型コンタクト領域46は、アノード電極44とn型半導体領域32をオーミック接触させるための領域である。アノード電極44は、電源線10に接続されている(
図1も参照)。
【0023】
絶縁膜60が、素子形成層52(半導体層50)の表面に設けられている。絶縁膜の表面には、第1電極8と第2電極4が設けられている。絶縁膜60は、素子形成層52の表面の一部(電極40,44が設けられていない部分)と電極40,44の表面を覆っている。絶縁膜60には、第1孔65,第2孔63及び第3孔61が設けられている。また、絶縁膜60内にコイル68が配置されている。第1孔65は、絶縁膜60の中間部分から、絶縁膜60の裏面まで伸びている。具体的には、第1孔65は、コイル68とアノード電極44の間を伸びている。第2孔63は、絶縁膜60の中間部分から、絶縁膜60の表面まで伸びている。第2孔63は、第1電極8とコイル68の間を伸びている。第3孔61は、絶縁膜60の表面から裏面まで伸びている。第3孔61は、第2電極4とカソード電極40の間を伸びている。
【0024】
第1孔65内に、埋込み配線70が充填されている。埋込み配線70は、第1金属配線の一例である。埋込み配線70は、コイル68とアノード電極44を接続している。埋込み配線70は、n型不純物を1×10
19cm
−3含むポリシリコンである。埋込み配線70に含まれる不純物として、例えばリンが挙げられる。なお、コイル68は、公知の技術を利用して絶縁膜60内に配置することができる。例えば、配線パターンが形成された複数の絶縁シートを積層し、各配線パターンを接続することにより、絶縁膜60内にコイル68を形成することができる。
【0025】
第2孔63内に、埋込み配線66が充填されている。埋込み配線66は、第2金属配線の一例である。埋込み配線66は、第1電極8とコイル68を接続している。埋込み配線66の材料は、埋込み配線70と同一である。また、埋込み配線66の中間部分に、抵抗64が設けられている。抵抗64は、埋込み配線66よりも不純物を低濃度に含むポリシリコンである。抵抗64の不純物濃度は、1×10
14cm
−3〜1×10
17cm
−3に調整されている。埋込み配線66と抵抗64は、不純物濃度が異なる同一の材料(ポリシリコン)で構成されている。抵抗64とコイル68は、埋込み配線66,70によって、第1電極8とアノード電極44の間に接続されている。
【0026】
第3孔61内に、埋込み配線62が充填されている。埋込み配線62は、第3金属配線の一例である。埋込み配線62は、第2電極4とカソード電極40を接続している。埋込み配線62の材料は、埋込み配線66,70と同一である。
【0027】
半導体装置80の利点について説明する。半導体装置80を備える保護回路100では、電源Vから供給される電流は、アノード電極44,コイル68,抵抗64,第1電極8を経て、IC回路6に供給される。そのため、電源線10に過電圧が印加されたときに、サイリスタがオンする前に過電圧がIC回路6に印加されることを防止することができる。また、半導体装置80では、サイリスタ構造上に、コイル68と抵抗64が配置されており、コイル68及び抵抗64が、孔63,65内に充填された埋込み配線66,70によってサイリスタ構造に接続されている。埋込み配線66,70の太さ(断面積)は、孔63,65のサイズによって調整可能である。すなわち、埋込み配線66,70の太さを容易に太くすることができる。また、埋込み配線66,70でサイリスタ構造とコイル68及び抵抗64を接続することにより、配線長さも短くすることができる。半導体装置80を用いることにより、コイル及び抵抗を、ボンデングワイヤ,プリント配線等でサイリスタに接続する従来の形態と比較して、配線抵抗が小さく、配線に寄生容量が生じることを抑制できる。
【0028】
また、従来は、コイル及び抵抗を、回路基板上のサイリスタとは別の位置に配置する。半導体装置80は、コイル及び抵抗がサイリスタ上に配置されているので、回路基板の面積を小さくすることができる。すなわち、半導体装置80を用いることにより、小型の回路基板を実現することができる。なお、第3孔61のサイズも調整可能であり、カソード電極40と第2電極4も埋込み配線62によって低抵抗に接続することができる。
【0029】
また、
図3に示す半導体装置80aのように、第1孔65内の埋込み配線70の中間部分に抵抗64を形成してもよい。この場合、第2孔63内は、埋込み配線66のみであってよい。アノード電極44から第1電極8に向けて、抵抗64,コイル68の順に配置することができる。
【0030】
上記半導体装置80では、埋込み配線66の中間部分の不純物濃度を薄くし、埋込み配線66内に抵抗64を配置している。しかしながら、第2孔63内は、不純物濃度が均一な埋込み配線で充填されてもよい。この場合、第2孔63内に充填する埋込み配線の不純物濃度は、第3孔61内を充填している埋込み配線62より低濃度にする。すなわち、第2孔63内を抵抗で充填する。同様に、半導体装置80aも、第1孔65内が、埋込み配線62より低濃度の埋込み配線で充填されていてよい。また、市販のコイル、抵抗を絶縁膜内に配置し、それらを埋込み配線で接続してもよい。
【0031】
(第2実施例)
図4を参照し、半導体装置180について説明する。半導体装置180は、半導体装置80aの変形例であり、サイリスタ(SCR)とキャパシタCと抵抗RとコイルLを備えている(
図1も参照)。半導体装置180について、半導体装置80aと同一の構成については、半導体装置80aと同じ参照番号を付すことにより、説明を省略することがある。
【0032】
半導体装置180では、第1電極108が埋込み配線66に接続されており、第2電極104が埋込み配線62に接続されている。また、絶縁膜60の外部において、第1電極108と第2電極104の間に絶縁膜90が設けられている。絶縁膜90の厚みはおよそ1μmである。キャパシタ92が、第1電極108と絶縁膜90と第2電極104によって構成されている。半導体装置180は、絶縁膜60の外部にキャパシタ92が設けられているということができる。なお、第1電極と第2電極の間に絶縁膜を設けてキャパシタを構成するという技術は、半導体装置80(
図2を参照)に適用することもできる。
【0033】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。