(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6590882
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】信号解析装置及び信号解析装置のダイナミックレンジ最適化方法
(51)【国際特許分類】
G01R 23/16 20060101AFI20191007BHJP
G01R 23/173 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
G01R23/16 D
G01R23/173 A
G01R23/173 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-176569(P2017-176569)
(22)【出願日】2017年9月14日
(65)【公開番号】特開2019-52906(P2019-52906A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2018年1月5日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(72)【発明者】
【氏名】大谷 暢
(72)【発明者】
【氏名】木村 淳一
(72)【発明者】
【氏名】徳山 貴斗
【審査官】
名取 乾治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−190943(JP,A)
【文献】
特開昭54−067362(JP,A)
【文献】
特許第5148581(JP,B2)
【文献】
特開2008−259035(JP,A)
【文献】
特開2017−026314(JP,A)
【文献】
特開2005−003623(JP,A)
【文献】
特開2011−127994(JP,A)
【文献】
特開2008−232809(JP,A)
【文献】
特開2018−044815(JP,A)
【文献】
特開昭62−225964(JP,A)
【文献】
特開昭57−099010(JP,A)
【文献】
特開平03−035172(JP,A)
【文献】
特開平11−064405(JP,A)
【文献】
特開2001−343408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 23/16
G01R 23/173
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験対象(1)から出力される無線信号を被測定信号として受信し、当該被測定信号に対して解析処理を行う信号解析装置(100)であって、
前記被試験対象から出力された変調信号を減衰させる第1の減衰器(10)と、
前記第1の減衰器により減衰された前記変調信号を局部発振器(12)の出力と混合して中間周波数信号に変換する周波数変換部(11)と、
前記中間周波数信号を減衰させる第2の減衰器(20)と、
前記第2の減衰器により減衰された前記中間周波数信号をサンプリングしてディジタルデータに変換するA/D変換器(21)と、
前記A/D変換器から出力された前記ディジタルデータに対して解析処理を行う信号解析部(22)と、
前記被試験対象から出力された前記変調信号の信号レベルを測定する、前記信号解析部に含まれる解析処理部(22b)を構成する信号レベル測定部(23)と、
前記信号レベル測定部により測定された前記信号レベルに応じて、前記第1及び第2の減衰器の減衰量をあらかじめ定められた値に設定して前記信号解析装置のダイナミックレンジを粗設定する減衰量設定部(28)と、
前記第1及び第2の減衰器が前記減衰量設定部によってそれらの減衰量が設定された状態で、前記第1の減衰器から前記A/D変換器までを経由した前記被測定信号が入力されて前記A/D変換器のオーバーフロー状態を検出する、前記信号レベル測定部と同じく前記解析処理部を構成するオーバーフロー検出部(24)と、
前記オーバーフロー検出部によりオーバーフロー状態が検出された場合に、前記第2の減衰器の減衰量を増加させる減衰量調整部(29)と、を備え、
前記第2の減衰器の減衰量が自動調整されて前記ダイナミックレンジが最適化されることを特徴とする信号解析装置。
【請求項2】
前記オーバーフロー検出部は、前記A/D変換器から出力された前記ディジタルデータが前記A/D変換器の出力の上限値に到達したか否かに基づいて、前記A/D変換器のオーバーフロー状態を検出することを特徴とする請求項1に記載の信号解析装置。
【請求項3】
前記被試験対象から出力される前記変調信号がOFDM変調信号であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の信号解析装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の信号解析装置のダイナミックレンジ最適化方法であって、
被試験対象(1)から出力された変調信号の信号レベルを測定する信号レベル測定ステップ(S1)と、
前記信号レベル測定ステップで測定された前記信号レベルに応じて、第1及び第2の減衰器(10,20)の減衰量をあらかじめ定められた値に設定する減衰量設定ステップ(S2)と、
前記被試験対象から出力された前記変調信号を前記第1の減衰器により減衰させる第1の減衰ステップ(S3)と、
前記第1の減衰ステップで減衰された前記変調信号を局部発振器(12)の出力と混合して中間周波数信号に変換する周波数変換ステップ(S4)と、
前記中間周波数信号を前記第2の減衰器により減衰させる第2の減衰ステップ(S5)と、
前記A/D変換器により、前記第2の減衰ステップで減衰された前記中間周波数信号をサンプリングしてディジタルデータに変換するA/D変換ステップ(S6)と、
前記A/D変換器のオーバーフロー状態が検出されたか否かを判定するオーバーフロー判定ステップ(S7)と、
前記オーバーフロー判定ステップでオーバーフロー状態が検出されたと判定された場合に、前記第2の減衰器の減衰量を増加させる減衰量調整ステップ(S8)と、を含むことを特徴とする信号解析装置のダイナミックレンジ最適化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号解析装置及び信号解析装置のダイナミックレンジ最適化方法に関し、特に、入力ダイナミックレンジを向上させる信号解析装置及び信号解析装置のダイナミックレンジ最適化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被試験対象(Device Under Test:DUT)から出力される無線信号を被測定信号として受信し、当該被測定信号に対して解析処理を行うシグナルアナライザやスペクトラムアナライザなどの信号解析装置が従来から知られている。
【0003】
信号解析装置は、入力された被測定信号の搬送波周波数を中間周波数に変換する周波数変換部と、中間周波数信号の中間周波数を含む所定の通過帯域の信号成分のみを通過させる中間周波(IF)フィルタと、周波数変換部により周波数変換された被測定信号を所定のサンプリングレートでサンプリングしてディジタルデータに変換するA/D変換器(ADC)と、を備えている。
【0004】
近年、無線通信は高周波数化・広帯域化する傾向にあり、中心周波数が数GHz以上かつ帯域幅が数GHz以上の広帯域な変調信号を測定できる信号解析装置が求められている。
【0005】
信号解析装置に入力された変調信号の品質は、信号解析装置のダイナミックレンジの影響を受ける。
図3に示すように、変調信号は、無変調の搬送波の電力が広い帯域幅に拡散されたものであるため、元の無変調信号に比べてS/N比が悪い。よって、変調信号の広帯域化に伴い、測定される信号レベルSと信号解析装置のノイズレベルNのS/N比はより確保しづらい状況になっている。
【0006】
さらに、広帯域信号解析に使われる広帯域ADCは、現状ではビット数が小さいため元々S/N比が悪く、ADCのノイズフロアが信号解析装置のノイズフロアへ与える影響も大きい。
【0007】
また一方で、変調信号はピーク対平均電力比(Peak to Average Power Ratio:PAPR)を持っている。このため、変調信号の信号入力レベルとしては、変調信号の平均電力に加えてPAPR分まで考慮しないとADCがオーバーフローしてしまい、精度の良い解析を行うことが不可能になる。
【0008】
最適なダイナミックレンジを得るためには、信号解析装置内での被測定信号の信号レベルSをADCがオーバーフローしない範囲でなるべく高く、かつノイズレベルNも低くなる設定を探す必要がある。信号レベルSが高過ぎるとオーバーフローが発生し、逆に信号レベルSが低過ぎるとS/N比が劣化し、いずれの場合も測定結果へ悪影響を与える。
【0009】
そこで、入力ダイナミックレンジを向上させたスペクトラムアナライザが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されたスペクトラムアナライザには複数の分割帯域ごとのオーバーフローレベルを管理するための内部レベル可変機構としての可変減衰器が備わっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第5148581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示されたスペクトラムアナライザは、自身の周波数特性を分割帯域ごとに自動的に補正するものであり、各分割帯域において最適なダイナミックレンジを得るための可変減衰器の設定を決めるためには、ユーザ自身がその設定値を試行錯誤的に探さなければならないという問題があった。
【0012】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、自動でダイナミックレンジを最適化することが可能な信号解析装置及び信号解析装置のダイナミックレンジ最適化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る信号解析装置は、被試験対象から出力される無線信号を被測定信号として受信し、当該被測定信号に対して解析処理を行う信号解析装置であって、前記被試験対象から出力された変調信号を減衰させる第1の減衰器と、前記第1の減衰器により減衰された前記変調信号を局部発振器の出力と混合して中間周波数信号に変換する周波数変換部と、前記中間周波数信号を減衰させる第2の減衰器と、前記第2の減衰器により減衰された前記中間周波数信号をサンプリングしてディジタルデータに変換するA/D変換器と、前記A/D変換器から出力された前記ディジタルデータに対して解析処理を行う信号解析部と、前記被試験対象から出力された前記変調信号の信号レベルを測定する
、前記信号解析部に含まれる解析処理部を構成する信号レベル測定部と、前記信号レベル測定部により測定された前記信号レベルに応じて、前記第1及び第2の減衰器の減衰量をあらかじめ定められた値に設定
して前記信号解析装置のダイナミックレンジを粗設定する減衰量設定部と、前記第1及び第2の減衰器が前記減衰量設定部によってそれらの減衰量が設定された状態で、前記第1の減衰器から前記A/D変換器までを経由した前記被測定信号が入力されて前記A/D変換器のオーバーフロー状態を検出する
、前記信号レベル測定部と同じく前記解析処理部を構成するオーバーフロー検出部と、前記オーバーフロー検出部によりオーバーフロー状態が検出された場合に、前記第2の減衰器の減衰量を増加させる減衰量調整部と、を備え
、前記第2の減衰器の減衰量が自動調整されて前記ダイナミックレンジが最適化される構成である。
【0014】
この構成により、本発明に係る信号解析装置は、ユーザが手動で第2の減衰器の減衰量を変化させることなく、自動でダイナミックレンジを最適化した状態で変調信号の解析処理を実行することができる。例えば、本発明に係る信号解析装置は、OFDM変調信号のようなPAPRの大きな変調信号に対しても最適なダイナミックレンジを設定することができる。
【0015】
また、本発明に係る信号解析装置
においては、
前記信号レベル測定部は、前記信号解析部内に構成されている構成であってもよい。また、本発明に係る信号解析装置においては、前記被試験対象から出力される前記変調信号がOFDM変調信号であってもよい。
【0016】
この構成により、本発明に係る信号解析装置は、ユーザが手動で第2の減衰器の減衰量を変化させることなく、自動でダイナミックレンジを最適化した状態で変調信号の解析処理を実行することができる。例えば、本発明に係る信号解析装置は、OFDM変調信号のようなPAPRの大きな変調信号に対しても最適なダイナミックレンジを設定することができる。
【0017】
また、本発明に係る信号解析装置においては、前記オーバーフロー検出部は、前記A/D変換器から出力された前記ディジタルデータが前記A/D変換器の出力の上限値に到達したか否かに基づいて、前記A/D変換器のオーバーフロー状態を検出する構成であってもよい。なお、A/D変換器自体がオーバーフローの検出機能を備えている場合には、A/D変換器がオーバーフロー検出部を構成してもよい。
【0018】
この構成により、本発明に係る信号解析装置は、A/D変換器のオーバーフロー状態を検出することができる。
【0019】
また、本発明に係る信号解析装置のダイナミックレンジ最適化方法は、上記のいずれかの信号解析装置のダイナミックレンジ最適化方法であって、被試験対象から出力された変調信号の信号レベルを測定する信号レベル測定ステップと、前記信号レベル測定ステップで測定された前記信号レベルに応じて、第1及び第2の減衰器の減衰量をあらかじめ定められた値に設定する減衰量設定ステップと、前記被試験対象から出力された前記変調信号を前記第1の減衰器により減衰させる第1の減衰ステップと、前記第1の減衰ステップで減衰された前記変調信号を局部発振器の出力と混合して中間周波数信号に変換する周波数変換ステップと、前記中間周波数信号を前記第2の減衰器により減衰させる第2の減衰ステップと、前記A/D変換器により、前記第2の減衰ステップで減衰された前記中間周波数信号をサンプリングしてディジタルデータに変換するA/D変換ステップと、前記A/D変換器のオーバーフロー状態が検出されたか否かを判定するオーバーフロー判定ステップと、前記オーバーフロー判定ステップでオーバーフロー状態が検出されたと判定された場合に、前記第2の減衰器の減衰量を増加させる減衰量調整ステップと、を含む。
【0020】
この構成により、本発明に係る信号解析装置は、ユーザが手動で第2の減衰器の減衰量を変化させることなく、自動でダイナミックレンジを最適化した状態で変調信号の解析処理を実行することができる。例えば、本発明に係る信号解析装置は、OFDM変調信号のようなPAPRの大きな変調信号に対しても最適なダイナミックレンジを設定することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、自動でダイナミックレンジを最適化することが可能な信号解析装置及び信号解析装置のダイナミックレンジ最適化方法を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る信号解析装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る信号解析装置のダイナミックレンジ最適化方法の処理を説明するためのフローチャートである。
【
図3】信号解析装置のダイナミックレンジを説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る信号解析装置及び信号解析装置のダイナミックレンジ最適化方法の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0024】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る信号解析装置100は、第1の減衰器としてのATT10と、周波数変換部11と、第2の減衰器としてのATT20と、A/D変換器(ADC)21と、信号解析部22と、操作部25と、表示部26と、制御部27と、を備え、DUT1から出力された変調信号Smの解析処理を行うものである。さらに、制御部27は、減衰量設定部28と、減衰量調整部29と、を含む。
【0025】
DUT1と信号解析装置100とは同軸ケーブルで接続されていてもよく、あるいは、無線通信で接続されていてもよい。
【0026】
DUT1は、例えば無線通信アンテナとRF回路を有する無線端末機器や基地局などである。DUT1の通信規格としては、セルラ(LTE、LTE−A、W−CDMA(登録商標)、GSM(登録商標)、CDMA2000、1xEV−DO、TD−SCDMA等)、無線LAN(IEEE802.11b/g/a/n/ac/ad等)、Bluetooth(登録商標)、GNSS(GPS、Galileo、GLONASS、BeiDou等)、FM、及びディジタル放送(DVB−H、ISDB−T等)が挙げられる。また、DUT1から出力される変調信号Smの変調方式としては、例えばBPSK、QPSK、QAM、OFDM等が挙げられる。
【0027】
ATT10,20は、内部に抵抗を有し、DUT1から出力された高周波の変調信号Smを後段の信号解析部22において処理可能な信号レベルに減衰させるためのもので、インピーダンスを変化させない電子部品である。
【0028】
周波数変換部11は、ATT10により減衰された変調信号Smを中間周波数信号に変換するものであり、局部発振器12と、周波数混合器13と、IFフィルタ14と、IF増幅器15と、を有する。
【0029】
局部発振器12は、ローカル信号として、元の変調信号Smの周波数の値よりも変換先の周波数の値の分だけ高い周波数あるいは低い周波数の正弦波を発生させるものである。局部発振器12から発振されるローカル信号の周波数は、所望の解析帯域に応じて制御部27により設定される。
【0030】
周波数混合器13は、ATT10で減衰された周波数f
Sの変調信号Smと、局部発振器12から出力された周波数f
Lのローカル信号とを混合し、2つの信号の和及び差の周波数成分を含む出力信号を生成するものである。
【0031】
IFフィルタ14は、アナログのバンドパス・フィルタなどで構成され、周波数混合器13からの出力信号をフィルタリングするようになっている。IFフィルタ14は、周波数混合器13によって変調信号Smとローカル信号とを混合させた中間周波数|f
L−f
S|又はf
L+f
Sが所定の周波数範囲内にあるときに、当該中間周波数の中間周波数信号を出力する。
【0032】
IF増幅器15は、IFフィルタ14から出力される中間周波数信号を増幅する固定利得の増幅器である。
【0033】
ATT20は、IF増幅器15により増幅された中間周波数信号を減衰させる可変減衰器である。
【0034】
ADC21は、ATT20により減衰された中間周波数信号を所定のサンプリングレートでサンプリングして、ディジタルデータに変換する。ADC21は、このディジタルデータを信号解析部22に出力するようになっている。
【0035】
信号解析部22は、例えば、直交復調部22aと、解析処理部22bと、を有し、ADC21から出力されたディジタルデータに対して解析処理を実行するようになっている。
【0036】
直交復調部22aは、ADC21から出力されたディジタルデータを直交復調して、互いに直交する直交信号I(t)及びQ(t)を生成するようになっている。直交復調部22aとしては、例えばヒルベルト変換を利用した直交分配器を用いることができる。
【0037】
解析処理部22bは、直交復調部22aから出力された直交信号I(t)及びQ(t)に対して、ディジタルフィルタ処理等のディジタル信号処理を施すようになっている。さらに、解析処理部22bは、上記のディジタル信号処理が施された直交信号I(t)及びQ(t)を用いて、変調信号Smのスペクトラムや、振幅、位相、周波数などの時間変化を求める解析処理を行うようになっている。
【0038】
さらに、解析処理部22bは、信号レベル測定部23と、オーバーフロー検出部24と、を含む。
【0039】
信号レベル測定部23は、ディジタル信号処理が施された直交信号I(t)及びQ(t)を用いて、DUT1から出力された変調信号Smの信号レベルを測定するようになっている。ここで、信号レベル測定部23が測定する信号レベルは、例えば、変調信号Smの電圧の実効値(RMS)や変調信号Smの電力の平均値である。
【0040】
あるいは
図1に破線で示すように、信号レベル測定部23は、パワーメータやパワーセンサ等によって構成され、DUT1から出力されてATT10に入力される前の変調信号Smの信号レベルを測定するものであってもよい。ただし、コストの観点からは、信号レベル測定部23を信号解析部22内に構成した方が、パワーメータやパワーセンサ等の構成を削減することができるため好ましい。
【0041】
オーバーフロー検出部24は、ディジタル信号処理が施された直交信号I(t)及びQ(t)を用いて、ADC21のオーバーフロー状態を検出するとともに、オーバーフロー状態を検出したことを示す検出信号を制御部27に出力するようになっている。例えば、オーバーフロー検出部24は、ADC21から出力されたディジタルデータがADC21の出力の上限値に到達したか否かに基づいて、ADC21のオーバーフロー状態を検出する。
【0042】
なお、ADC21自体がオーバーフローの検出機能を備えている場合には、ADC21がオーバーフロー検出部24を構成してもよい。この場合には、
図1に破線の矢印で示すように、オーバーフロー状態を検出したことを示す検出信号をADC21が制御部27に直接出力することになる。
【0043】
オーバーフロー検出部24は、ADC21の出力が1回でも上限値に到達した場合に検出信号を制御部27に出力するものであってもよく、あるいは、ADC21の出力があらかじめ定められた回数連続して上限値に到達した場合に検出信号を制御部27に出力するものであってもよい。
【0044】
減衰量設定部28は、信号レベル測定部23により測定された信号レベルに応じて、ATT10,20の減衰量をあらかじめ定められた値に設定するようになっている。
【0045】
減衰量調整部29は、オーバーフロー検出部24によりオーバーフロー状態が検出された場合に、減衰量設定部28により設定されたATT20の減衰量を所定量増加させるようになっている。
【0046】
制御部27は、例えばCPU、ROM、RAM、HDDなどを含むマイクロコンピュータ又はパーソナルコンピュータ等で構成され、信号解析装置100を構成する上記各部の動作を制御する。
【0047】
なお、信号解析部22、減衰量設定部28、及び減衰量調整部29は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのディジタル回路で構成することや、制御部27による所定のプログラムの実行によりソフトウェア的に構成することが可能である。あるいは、信号解析部22、減衰量設定部28、及び減衰量調整部29は、ディジタル回路によるハードウェア処理と所定のプログラムによるソフトウェア処理とを適宜組み合わせて構成することも可能である。
【0048】
表示部26は、例えばLCDやCRTなどの表示機器で構成され、制御部27から出力される制御信号に応じて、信号解析部22による解析結果などを表示するようになっている。
【0049】
操作部25は、ユーザによる操作入力を行うためのものであり、例えば表示部26の表示画面の表面に設けられたタッチパネルで構成される。あるいは、操作部25は、キーボード又はマウスのような入力デバイスを含んで構成されてもよい。例えば、操作部25により、減衰量調整部29によるATT20の減衰量の増加量を設定することが可能である。
【0050】
以下、本実施形態に係る信号解析装置100のダイナミックレンジ最適化方法について、
図2のフローチャートを参照しながらその処理の一例を説明する。
【0051】
まず、信号レベル測定部23は、DUT1から出力された変調信号Smの信号レベルを測定する(信号レベル測定ステップS1)。
【0052】
次に、減衰量設定部28は、信号レベル測定ステップS1で測定された信号レベルに応じて、ATT10,20の減衰量をあらかじめ定められた値に設定する(減衰量設定ステップS2)。この時点でダイナミックレンジがおおよそ最適に設定される。
【0053】
次に、ATT10は、DUT1から出力された変調信号Smを減衰させる(第1の減衰ステップS3)。
【0054】
次に、周波数変換部11は、第1の減衰ステップS3で減衰された変調信号Smを中間周波数信号に変換する(周波数変換ステップS4)。
【0055】
次に、ATT20は、中間周波数信号を減衰させる(第2の減衰ステップS5)。
【0056】
次に、ADC21は、第2の減衰ステップS5で減衰された中間周波数信号を所定のサンプリングレートでサンプリングして、ディジタルデータに変換する(A/D変換ステップS6)。
【0057】
次に、制御部27は、オーバーフロー検出部24によりADC21のオーバーフロー状態が検出されたか否かを判定する(オーバーフロー判定ステップS7)。肯定判定の場合にはステップS8に進み、否定判定の場合には処理を終了する。
【0058】
次に、減衰量調整部29は、オーバーフロー判定ステップS7でオーバーフロー状態が検出されたと判定された場合に、減衰量設定ステップS2で設定されたATT20の減衰量を所定量増加させる(減衰量調整ステップS8)。減衰量調整ステップS8の処理が終了すると、再び第1の減衰ステップS3の処理が実行される。
【0059】
このようにステップS3〜S8の処理が繰り返されることにより、ADC21がオーバーフローしないぎりぎりの減衰量をATT20に設定することができるため、余分なオーバーフローマージンを持たせずに変調信号SmのPAPRを考慮した最適なダイナミックレンジを得ることができる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態に係る信号解析装置100は、オーバーフロー検出部24の検出結果に応じてATT20の減衰量を段階的に変化させるため、ユーザが手動でATT20の減衰量を変化させることなく、自動でダイナミックレンジを最適化した状態で変調信号Smの解析処理を実行することができる。例えば、本実施形態に係る信号解析装置100は、OFDM変調信号のようなPAPRの大きな変調信号に対しても最適なダイナミックレンジを設定することができる。
【0061】
また、本実施形態に係る信号解析装置100は、ADC21から出力されたディジタルデータがADC21の出力の上限値に到達したか否かに基づいて、オーバーフロー検出部24によりADC21のオーバーフロー状態を検出することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 DUT
10,20 ATT
11 周波数変換部
12 局部発振器
13 周波数混合器
14 IFフィルタ
15 IF増幅器
21 ADC
22 信号解析部
22a 直交復調部
22b 解析処理部
23 信号レベル測定部
24 オーバーフロー検出部
28 減衰量設定部
29 減衰量調整部
100 信号解析装置