(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に開示されるシステムにおいて、流量制御ダンパーにより排ガス高度精製設備への排ガスの供給量を大幅に変動させた場合には、流量制御ダンパーよりも排ガスの流れ方向の下流側にある排ガス高度精製設備のバグフィルタや触媒設備内で排ガスの偏流が生じるおそれがある。なお、「流量制御ダンパーにより排ガス高度精製設備への排ガスの供給量を大幅に変動させた場合」とは、例えば、植物育成設備への必要なCO
2の供給量が低下したため、流量制御ダンパーにより排ガス高度精製設備への排ガスの供給量を大幅に減少させた場合が考えられる。
【0008】
そして、前記のようにバグフィルタや触媒設備内で排ガスの偏流が生じると、バグフィルタや触媒設備の機能に影響を及ぼし、排ガス高度精製設備における排ガス浄化性能に影響を与えるおそれがある。なお、特許文献1においては、作物生産用施設へ供給する排ガスの流量を制御する流量制御ダンパーのような機器に関しては何ら開示されていない。
【0009】
そこで、本開示は上記した問題点を解決するためになされたものであり、排ガス浄化性能が安定して発揮される排ガス供給システムおよび排ガス供給方法を提供すること、を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた本開示の一態様は、燃焼施設にて燃料を燃焼させて発生した二酸化炭素を含む排ガスを植物の栽培施設に供給する排ガス供給システムにおいて、前記排ガスを前記栽培施設へ流すための排ガス通路と、前記排ガス通路を流れる前記排ガスを浄化する排ガス浄化部と、前記栽培施設へ供給する前記排ガスの流量を制御する流量制御部と、を有し、前記流量制御部は、前記排ガス通路にて前記排ガス浄化部よりも前記排ガスの流れ方向の下流側の位置に設けら
れ、前記排ガス通路における前記排ガス浄化部と前記流量制御部との間の位置と、前記排ガス通路における前記排ガス浄化部よりも前記排ガスの流れ方向の上流側の位置との間を接続する循環通路を有し、前記排ガス通路は、前記燃焼施設と排気口とに接続する第1排ガス通路から分岐した第2排ガス通路であること、を特徴とする。
【0011】
この態様によれば、排ガス浄化部を、流量制御部を介さないで、排ガス通路を介して燃焼施設に接続させることができる。そのため、流量制御部による栽培施設への排ガスの供給量に関わらず、燃焼施設から一定量の排ガスを排ガス浄化部に流すことができる。したがって、流量制御部により栽培施設への排ガスの供給量を大幅に変動させた場合であっても、排ガス浄化部の内部で排ガスの偏流が生じ難くなる。ゆえに、排ガス浄化部の機能への影響が生じ難くなるので、排ガス浄化性能が安定して発揮される。
また、排ガスを、排ガス通路における流量制御部よりも上流側の位置から循環通路へ流して、排ガス浄化部よりも上流側の位置へ循環させることができる。これにより、栽培施設にて必要な二酸化炭素の供給量に応じた量の排ガスを流量制御部により栽培施設に供給する一方で、残りの排ガス(すなわち、排ガス浄化部による浄化後の排ガス)を循環通路に流して循環させて排ガス浄化部よりも上流側へ戻すことができる。
そのため、排ガス浄化部よりも上流側における排ガス中の有害な各成分の濃度は、燃焼施設から排出される排ガス中の有害な各成分の濃度と比較して低くなる。したがって、排ガス浄化部で排ガスを浄化し易くなる。ゆえに、排ガス浄化性能が向上する。
また、燃焼施設から排出される排ガスは、その排ガス中の任意の成分の濃度が急激に高くなった場合であっても、循環通路により循環される排ガス(すなわち、排ガス浄化部による浄化後の排ガス)により希釈されるので、排ガス中の任意の成分の濃度が低下する。したがって、排ガス浄化部で排ガスを浄化し易くなる。ゆえに、排ガス浄化性能が向上する。
【0016】
上記の態様においては、前記排ガス供給システムを構成する各部の制御を行うシステム制御部を有し、前記システム制御部は、前記排ガス浄化部による浄化後の前記排ガス中の各成分のうちの少なくとも1つの成分の濃度が所定の基準値を超えた場合に、前記流量制御部により前記栽培施設への前記排ガスの供給を停止させるとともに、前記排ガスを前記循環通路へ流して循環させること、が好ましい。
【0017】
この態様によれば、排ガスを循環通路へ流して循環させることにより、排ガスは排ガス浄化部により繰り返し浄化される。そのため、栽培施設への排ガスの供給を停止する間に、排ガス中の各成分の濃度が所定の基準値以下になるまで排ガスを浄化できる。そして、排ガス中の各成分の濃度が所定の基準値以下になった時点で、栽培施設への排ガスの供給を再開させることにより、速やかに栽培施設への二酸化炭素の供給を再開することができる。
【0018】
上記の態様においては、前記排ガス通路にて前記排ガスを誘引する排ガス誘引部を有し、前記流量制御部は、前記排ガス通路にて前記排ガス誘引部よりも前記排ガスの流れ方向の下流側の位置に設けられていること、が好ましい。
【0019】
この態様によれば、栽培施設への排ガスの供給量は、排ガス誘引部よりも下流側に設けられた流量制御部により制御される。そのため、排ガス誘引部で調整できる下限流量以下の排ガスの流量の制御にも対応できる。
【0020】
上記の態様においては、前記栽培施設への前記排ガスの供給を所定時間以上停止しているときに、前記排ガスを前記循環通路へ流して循環させながら加熱していること、が好ましい。
【0021】
この態様によれば、排ガス浄化部および循環通路の配管において排ガスに含まれる水分の凝縮が起こり難くなるので、排ガス浄化部および循環通路の配管における腐食が生じ難くなる。また、短時間で栽培施設への排ガスの供給を再開できる。
【0022】
上記課題を解決するためになされた本開示の他の態様は、燃焼施設にて燃料を燃焼させて発生した二酸化炭素を含む排ガスを植物の栽培施設に供給する排ガス供給方法において、排ガス通路により前記排ガスを前記栽培施設へ流し、排ガス浄化部により前記排ガス通路を流れる前記排ガスを浄化し、流量制御部により前記栽培施設へ供給する前記排ガスの流量を制御するものであって、前記流量制御部を、前記排ガス通路にて前記排ガス浄化部よりも前記排ガスの流れ方向の下流側の位置に設
け、循環通路により、前記排ガス通路における前記排ガス浄化部と前記流量制御部との間の位置と、前記排ガス通路における前記排ガス浄化部よりも前記排ガスの流れ方向の上流側の位置との間を接続し、前記排ガス通路は、前記燃焼施設と排気口とに接続する第1排ガス通路から分岐した第2排ガス通路であること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本開示の排ガス供給システムおよび排ガス供給方法によれば、排ガス浄化性能が安定して発揮される。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<排ガス供給システムの構成について>
まず、本実施形態の排ガス供給システム1の構成について説明する。なお、以下の説明において、「上流」とは排ガスの流れ方向についての上流であり、「下流」とは排ガスの流れ方向についての下流である。
【0026】
排ガス供給システム1は、バイオマス燃料(木くずなど)を燃焼させて発生したCO
2を含む排ガスを植物の栽培施設71に供給して、栽培施設71における植物の育成に利用するシステムである。
【0027】
図1に示すように、排ガス供給システム1は、第1排ガス通路11と、第2排ガス通路12と、バイオマス燃焼施設21と、誘引通風機22と、排ガス浄化設備31と、システム制御部32などを有する。
【0028】
第1排ガス通路11は、バイオマス燃焼施設21と排気口に接続しており、バイオマス燃焼施設21から排出される排ガスを排気口へ流すための通路である。第2排ガス通路12は、第1排ガス通路11と栽培施設71に接続しており、第1排ガス通路11から排ガスを栽培施設71へ流すための通路である。本実施形態では、第2排ガス通路12は、第1排ガス通路11における誘引通風機22(バイオマス燃焼施設側の誘引通風機)よりも下流側の位置にて、第1排ガス通路11から分岐している。
【0029】
そして、第1排ガス通路11においては、バイオマス燃焼施設21と誘引通風機22が設けられている。
【0030】
バイオマス燃焼施設21は、バイオマス燃料を燃焼させる施設(燃焼炉)である。なお、バイオマス燃焼施設21の代わりに、廃棄物や石炭などの燃料(燃焼することによりCO
2を含む排ガスを発生させる燃料)を燃焼させる施設(燃焼炉)であってもよい。また、誘引通風機22は、第1排ガス通路11にて排ガスを流すために、排ガスを誘引(吸引)する機器である。
【0031】
また、第2排ガス通路12においては、排ガス浄化設備31が設けられている。
【0032】
排ガス浄化設備31は、排ガスに含まれる煤塵や植物に有害な成分などを除去することにより排ガスを浄化する設備である。排ガス浄化設備31は、第2排ガス通路12にて排ガスの流れる方向(
図1の右方向)に沿って順に、バグフィルタ41と、排ガス再加熱器42と、酸化触媒43と、脱硝触媒44と、誘引通風機45(排ガス浄化設備側の誘引通風機)と、第1流量制御ダンパー46と、ガス冷却設備47を備えている。なお、バグフィルタ41と酸化触媒43と脱硝触媒44は、各々、第2排ガス通路12を流れる排ガスを浄化する排ガス浄化部である。
【0033】
バグフィルタ41は、排ガスに含まれる煤塵や酸性ガスを除去する機器である。なお、排ガス浄化設備31は、バグフィルタ41の代わりに、HEPAフィルタ(へパフィルタ)を備えてもよい。
【0034】
排ガス再加熱器42は、排ガスを再加熱する機器である。
【0035】
酸化触媒43は、CO
2の酸化を行うことにより排ガスに含まれる一酸化炭素(以下、適宜「CO」という。)の除去やエチレン(C
2H
4)の除去を行う機器である。なお、酸化触媒43の代わりに、排ガスに含まれるCOやC
2H
4を除去する吸着材を使用した機器を用いてもよい。
【0036】
脱硝触媒44は、排ガスに含まれるNOxをN
2へ還元させることにより、排ガスに含まれるNOxを除去する機器である。
【0037】
なお、酸化触媒43と脱硝触媒44は、バグフィルタ41で酸性ガスを除去した後の排ガスについて処理することが望ましいので、バグフィルタ41よりも下流側の位置に設けられていることが望ましい。また、
図1に示す例では酸化触媒43は脱硝触媒44よりも上流側に設けられるが、これに限定されず、酸化触媒43は脱硝触媒44よりも下流側に設けられていてもよい。
【0038】
誘引通風機45は、第2排ガス通路12に排ガスを流すために、排ガスを誘引する機器である。
【0039】
第1流量制御ダンパー46は、その開度を調整して第2排ガス通路12の開口面積を調整することにより、第2排ガス通路12から栽培施設71へ供給する排ガスの流量を制御する流量制御部である。
【0040】
ガス冷却設備47は、例えば冷凍機(不図示)により生成した冷水や冷風を用いて、排ガスを冷却する設備である。
【0041】
また、第2排ガス通路12において、脱硝触媒44よりも下流側の位置に、各ガス分析計48が設けられている。
図1に示す例においては、一例として、各ガス分析計48は、脱硝触媒44と誘引通風機45の間の位置に設けられている。この各ガス分析計48は、バグフィルタ41と酸化触媒43と脱硝触媒44による浄化後の排ガス中の各成分の濃度(割合)を測定する機器(ガス成分測定部)である。
【0042】
さらに、第2排ガス通路12において、ガス冷却設備47と栽培施設71との間の位置に、CO
2計49とガス流量計51が設けられている。CO
2計49は、排ガス中のCO
2の濃度を計測する機器である。ガス流量計51は、排ガスの流量を計測する機器である。なお、CO
2計49とガス流量計51は、ガス冷却設備47よりも上流側の位置に設けられていてもよい。
【0043】
また、本実施形態では、排ガス浄化設備31は、循環通路61と、第2流量制御ダンパー62を備えているが、その詳細については後述する。
【0044】
システム制御部32は、排ガス供給システム1を構成する各部の制御を行う制御装置である。システム制御部32は、栽培施設71内のCO
2の濃度が一定になるように栽培施設71へ供給する排ガスの流量を制御するために、栽培施設71から施設内のCO
2の濃度やCO
2の必要量などの信号を受け取り、第1流量制御ダンパー46を制御する。また、システム制御部32は、栽培施設71内のCO
2の濃度が一定になるように栽培施設71へ供給する排ガスの流量を制御するために、排ガス浄化設備31の出口部分に設けられたCO
2計49によるCO
2の濃度の検出結果およびガス流量計51による排ガスの流量の検出結果から換算した値が所定値となるように、第1流量制御ダンパー46を制御する。
【0045】
また、システム制御部32は、後述する第2流量制御ダンパー62も制御する。また、システム制御部32は、浄化後の排ガス中の各成分の濃度について、各ガス分析計48による検出結果の信号を受け取ることができる。なお、システム制御部32は、例えば中央処理装置(CPU)及びメモリを備え、栽培施設71へ供給する排ガスの流量を制御するために、メモリに記憶された所定の制御プログラムに基づいて誘引通風機45や第1流量制御ダンパー46等を制御する。
【0046】
<排ガス供給システムの作用について>
次に、排ガス供給システム1の作用について説明する。前記のような構成の排ガス供給システム1は、バイオマス燃焼施設21で発生した排ガスを第1排ガス通路11を介して排気口から排出する一方、排ガスの一部を第2排ガス通路12を介して、栽培施設71に供給する。具体的には、排ガス供給システム1は、誘引通風機22と誘引通風機45を駆動させて、かつ、第1流量制御ダンパー46を開くことにより、第1排ガス通路11を流れる排ガスの一部を、第2排ガス通路12に設けられた排ガス浄化設備31を介して、栽培施設71に供給する。
【0047】
<第1流量制御ダンパーの配置について>
本実施形態では、第1流量制御ダンパー46は、第2排ガス通路12にてバグフィルタ41や酸化触媒43や脱硝触媒44よりも下流側の位置に設けられている。
【0048】
これにより、バグフィルタ41と酸化触媒43と脱硝触媒44を、第1流量制御ダンパー46を介さないで、第2排ガス通路12と第1排ガス通路11を介してバイオマス燃焼施設21に接続させることができる。そのため、第1流量制御ダンパー46の開度(すなわち、第1流量制御ダンパー46による栽培施設71への排ガスの供給量)に関わらず、バイオマス燃焼施設21から第1排ガス通路11と第2排ガス通路12を介して一定量の排ガスをバグフィルタ41と酸化触媒43と脱硝触媒44に流すことができる。したがって、第1流量制御ダンパー46により栽培施設71への排ガスの供給量を大幅に変動させた場合であっても、バグフィルタ41と酸化触媒43と脱硝触媒44の内部で排ガスの偏流が生じ難くなる。ゆえに、バグフィルタ41と酸化触媒43と脱硝触媒44の機能への影響が生じ難くなるので、排ガス浄化設備31の排ガス浄化性能が安定して発揮される。
【0049】
なお、「第1流量制御ダンパー46により栽培施設71への排ガスの供給量を大幅に変動させた場合」とは、例えば、栽培施設71への必要なCO
2の供給量が低下したため、第1流量制御ダンパー46の開度を小さくして栽培施設71への排ガスの供給量を大幅に減少させた場合が考えられる。
【0050】
また、本実施形態では、第1流量制御ダンパー46は、第2排ガス通路12にて誘引通風機45よりも下流側の位置に設けられている。このようにして、栽培施設71への排ガスの供給量は、誘引通風機45に対して下流側に設けられた第1流量制御ダンパー46により制御される。そのため、第1流量制御ダンパー46の開度を微小開度域で制御することにより、誘引通風機45で調整できる下限流量以下の排ガスの流量の制御にも対応できる。
【0051】
<循環通路について>
本実施形態では、排ガス浄化設備31は、循環通路61と、第2流量制御ダンパー62を備えている。循環通路61は、第2排ガス通路12における脱硝触媒44(詳しくは、誘引通風機45)と第1流量制御ダンパー46との間の第2位置82(下流側位置)と、第2排ガス通路12におけるバグフィルタ41よりも上流側の第1位置81(上流側位置)との間を接続している。そして、この循環通路61に、排ガスの流量を制御する第2流量制御ダンパー62が設けられている。
【0052】
このようにして、本実施形態では、排ガスを、第2排ガス通路12における第1流量制御ダンパー46よりも上流側の第2位置82から循環通路61へ流して、バグフィルタ41よりも上流側の第1位置81へ循環させることができる。これにより、栽培施設71にて必要なCO
2の供給量に応じた量の排ガスを第1流量制御ダンパー46により栽培施設71に供給する一方で、残りの排ガス(バグフィルタ41と酸化触媒43と脱硝触媒44による浄化後の排ガス)を循環通路61に流して循環させてバグフィルタ41よりも上流側へ戻すことができる。すなわち、バグフィルタ41と酸化触媒43と脱硝触媒44による浄化後の排ガスのうち栽培施設71へ供給されない余剰の排ガスは、循環通路61に流れて排ガス浄化設備31内で循環する。
【0053】
そのため、バグフィルタ41よりも上流側にある排ガス浄化設備31の入口における排ガス中の有害な各成分の濃度は、バイオマス燃焼施設21から排出される排ガス中の有害な各成分の濃度と比較して低くなる。したがって、排ガス浄化設備31で排ガスを浄化し易くなる。ゆえに、排ガス浄化設備31の排ガス浄化性能が向上する。
【0054】
また、バイオマス燃焼施設21から排出される排ガスは、その排ガス中の任意の成分の濃度が急激に高くなった場合であっても、循環通路61により循環される浄化後の排ガスにより希釈されるので、排ガス中の任意の成分の濃度が低下する。したがって、排ガス浄化設備31で排ガスを浄化し易くなる。ゆえに、排ガス浄化設備31の排ガス浄化性能が向上する。
【0055】
また、例えばバグフィルタ41や酸化触媒43や脱硝触媒44などの各機器への負荷が低減するので、各機器を維持するための費用(ランニングコスト)が低減される。また、バグフィルタ41における酸性ガス除去用薬剤の使用量や、酸化触媒43と脱硝触媒44における触媒の使用量を、従来よりも減らすことが可能となる。
【0056】
また、循環通路61は第1流量制御ダンパー46よりも上流側の第2位置82で第2排ガス通路12に接続しているので、第1流量制御ダンパー46の開度に関わらず循環通路61に常に排ガスを流すことができる。そのため、循環通路61の配管中で排ガス中の水分の凝縮が起こり難くなり、排ガス中の水分が凝縮した水が発生し難くなるので、循環通路61の配管の腐食を防止できる。
【0057】
<浄化後の排ガス中の各成分の濃度に対する制御について>
浄化後の排ガス中の各成分(植物に有害な成分)のうち1つでも濃度が所定の基準値を超えた成分がある場合には、植物の育成に影響を与えるおそれがあるため、栽培施設71への排ガスの供給を停止させることが望ましい。
【0058】
ここで、比較例として、
図1にて破線で示すように第1流量制御ダンパー46が排ガス浄化設備31よりも上流側の位置に設けられており、かつ、循環通路61が設けられていない例を想定する。すると、この比較例において、第1流量制御ダンパー46を全閉状態にして栽培施設71への排ガスの供給を停止させたときに、排ガスは第1流量制御ダンパー46により排ガス浄化設備31に流れることができないので、排ガス浄化設備31における排ガスの浄化作用も停止する。
【0059】
すると、その後、再度、栽培施設71への排ガスの供給を行う場合、例えばバイオマス燃焼施設21の排ガス中の各成分を連続分析し、排ガス浄化設備31の入口側における排ガス中の各成分の濃度が所定の制御値を満たしたら栽培施設71への排ガスの供給を再開するというように、栽培施設71への排ガスの供給を再開するタイミングを決定しなければならない。もしくは、排ガス浄化設備31における栽培施設71への供給部分に遮蔽弁および排気筒を設け、浄化後の排ガス中の各成分の濃度が所定の基準値以下になるまでは浄化後の排ガスを排ガス浄化設備31の排気筒から排出する必要がある。
【0060】
これに対し、本実施形態では、前記のように第1流量制御ダンパー46が第2排ガス通路12にて脱硝触媒44よりも下流側の位置に設けられ、かつ、脱硝触媒44と第1流量制御ダンパー46との間の第2位置82に接続する循環通路61が設けられている。そして、本実施形態では、浄化後の排ガス中の各成分のうち1つ以上の成分の濃度が所定の基準値を超えた場合は、第1流量制御ダンパー46を全閉状態にするとともに、さらに排ガスの全量を排ガス浄化設備31内で循環させる。
【0061】
すなわち、システム制御部32は、バグフィルタ41と酸化触媒43と脱硝触媒44による浄化後の排ガス中の各成分のうちの少なくとも1つの成分の濃度が所定の基準値を超えた場合に、第1流量制御ダンパー46により第2排ガス通路12を遮断させて、栽培施設71への排ガスの供給を停止させる。そして、さらに本実施形態では、システム制御部32は、誘引通風機45を駆動させるとともに、第2流量制御ダンパー62を開弁状態にして循環通路61を開口させて、浄化後の排ガスを全て循環通路61へ流して排ガス浄化設備31内で循環させる。
【0062】
なお、システム制御部32は、各ガス分析計48による測定結果をもとに、浄化後の排ガス中の各成分のうちの少なくとも1つの成分の濃度が所定の基準値を超えたか否かを判断する。
【0063】
このようにして、本実施形態では、第2排ガス通路12にて脱硝触媒44よりも下流側の位置に設けられている第1流量制御ダンパー46により第2排ガス通路12を遮断させて栽培施設71への排ガスの供給を停止する一方で、排ガスを循環通路61へ流して排ガス浄化設備31内で循環させることができる。そして、排ガスを循環通路61へ流して排ガス浄化設備31内で循環させることにより、排ガスはバグフィルタ41と酸化触媒43と脱硝触媒44により繰り返し浄化される。そのため、栽培施設71への排ガスの供給を停止する間に、排ガス中の各成分の濃度が所定の基準値以下になるまで排ガスを浄化できる。そして、排ガス中の各成分の濃度が所定の基準値以下になった時点で、システム制御部32は第1流量制御ダンパー46により第2排ガス通路12を開口させて栽培施設71への浄化ガスの供給を再開させることにより、速やかに栽培施設71へのCO
2の供給を再開することができる。
【0064】
<栽培施設への排ガスの供給を長時間停止する場合について>
前記の比較例では、夜間など栽培施設71への排ガスの供給を長時間停止する場合に、第1流量制御ダンパー46を全閉状態にして栽培施設71への排ガスの供給を停止させると、第1流量制御ダンパー46により排ガスは排ガス浄化設備31に流れることができない。
【0065】
そのため、栽培施設71への排ガスの供給を停止する間に排ガス浄化設備31における配管および各設備の温度が低下するので、再度栽培施設71への排ガスの供給を行う前に排ガス中の水分の凝縮を生じ難くするために、排ガス浄化設備31における配管および各設備を昇温する必要がある。したがって、栽培施設71への排ガスの供給を再開するために時間を要してしまう。
【0066】
さらに、排ガス浄化設備31における配管および各設備の温度が低下することで、バグフィルタ41のろ布に付着している塩化カルシウム(CaCl
2、消石灰が塩化水素(HCl)と反応して生成したもの)が吸湿することや、各触媒が吸湿し活性低下することや、配管および各機器で排ガス中の水分が凝縮した水(ドレン水)が発生し配管および各機器が腐食することなどが発生する可能性がある。
【0067】
これに対し、本実施形態では、排ガス供給システム1は、夜間(例えば、日没から日の出までの時間)など栽培施設71への排ガスの供給を所定時間以上停止しているときにおいて、排ガスを循環通路61へ流して排ガス浄化設備31内で循環させながら加熱している。具体的には、システム制御部32は、第1流量制御ダンパー46を全閉状態にして栽培施設71への排ガスの供給を停止する一方で、誘引通風機45を駆動させるとともに第2流量制御ダンパー62を開弁状態にして、浄化後の排ガスを全て循環通路61へ流して排ガス浄化設備31内で循環させている。そして、さらにシステム制御部32は、排ガス再加熱器42により排ガスを加熱して、排ガスの温度を結露が発生しない程度の温度(低温)に維持させている。
【0068】
これにより、排ガス浄化設備31および循環通路61の配管において排ガスに含まれる水分の凝縮が起こり難くなるので、排ガス浄化設備31および循環通路61の配管が腐食し難くなる。また、夜間が過ぎた後(例えば、日の出後)、すなわち、栽培施設71への排ガスの供給を所定時間以上停止した後において、短時間で栽培施設71への排ガスの供給を再開して栽培施設71へCO
2を供給できる。
【0069】
さらに、バイオマス燃焼施設21からの排ガスに含まれる各成分の濃度のうちCOの濃度が高い場合には、酸化触媒43における発熱反応による発熱により排ガスの温度が上昇する。そのため、COの濃度が高く排ガスの循環量が多い場合には、排ガス再加熱器42での加熱に必要な熱量が低減し、例えば排ガスの昇温に必要な高圧蒸気量が減少する。なお、本実施形態では、前記のように排ガスに含まれる各成分の濃度のうちCOの濃度が基準値以上に高い場合には、バグフィルタ41や酸化触媒43や脱硝触媒44により浄化された後の排ガスを全て循環通路61へ流して排ガス浄化設備31内で循環させるので、排ガスの循環量が多くなる。
【0070】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【0071】
例えば、前記の説明では、第2排ガス通路12は、第1排ガス通路11を介してバイオマス燃焼施設21に接続していたが、これに限定されず、第1排ガス通路11を介さないで直接的にバイオマス燃焼施設21に接続していてもよい。
【0072】
例えば、第1流量制御ダンパー46は、第2排ガス通路12において、バグフィルタ41や酸化触媒43や脱硝触媒44などの排ガス浄化機器よりも下流側であれば、どの位置に設けられていてもよい。例えば、第1流量制御ダンパー46は、ガス冷却設備47またはCO
2計49またはガス流量計51よりも下流側の位置や、誘引通風機45よりも上流側の位置に設けられていてもよい。また、排ガス浄化機器として、バグフィルタ41と酸化触媒43と脱硝触媒44のうちの少なくとも1つが設けられていてもよく、あるいは、バグフィルタ41と酸化触媒43と脱硝触媒44以外の機器が設けられていてもよい。また、循環通路61に第2流量制御ダンパー62が設けられていない変形例も考えられる。また、流量制御部として、第1流量制御ダンパー46や第2流量制御ダンパー62の代わりに、流量制御弁を用いてもよい。