【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このようなシーリングは、調整ネジが十分に高い圧力で工具に圧着されるときしか効果的ではない。圧力バイアスが不十分であれば、調整ネジと工具との間の連結部にクーラントが工具ホルダから漏出する漏洩点が生じ、クーラントが工具の軸の通路の中に一切案内されない、または十分に案内されないことになる。
【0006】
クーラント用の内部通路を有する当該工具ホルダは、いわゆる最小量潤滑MMS(または英語で、Minimum Quantity Lubrification)に使用される。ここではクーラントは工具ホルダと工具の軸内に割り当てられた孔を通して直接作業場所まで案内されて、作業場所で、それぞれ効果的な冷却または潤滑を行う。
【0007】
本出願を通して「クーラント」のみに言及するが、これは一般的には、液体、気体もしくは混合形態、とくにエアロゾル形態のあらゆる種類のクーラントまたは潤滑剤と理解される。
【0008】
最小量潤滑MQLが正確に機能するために重要なことは、漏れがあった場合に工具に十分なクーラントの供給が確保されないため、工具の軸と調整ネジとの間のシーリングの質を確保することである。
【0009】
工具は通常、工具ホルダの収容穴の中に圧力嵌め、例えば熱収縮によって固定されるため、工具の軸の所定の軸方向位置は焼き嵌め中にすでに、またはその後調整ネジを設定することによって、正確に決定しなければならない。すなわち、指定の公称寸法への調整を行わなければならない。
【0010】
しかし、調整ネジのシーリング面と工具の軸との間に必要な圧力バイアスがきわめて重要であり、部分的には工具取付中の作業者の腕にかかっている。
【0011】
そのため、実際にはたびたびシールの不十分な工具または長手軸方向の調整が不正確な工具になる。
【0012】
上記に照らし、本発明の目的は最小量潤滑に適し、収容穴の内側端部にある工具ホルダと工具の軸との間の移行部でいかなる場合も安全なシーリングを確保することができる工具ホルダを開示することである。ここで、前記受け部はできれば、耐故障性にして、所定の圧力バイアスを満たすことに左右されない、調整ネジによって安全なシーリングを実現するようにするとよい。
【0013】
さらに、工具ホルダの付近で最小量潤滑の漏れを判断する可能性が提供されると好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によると、前記目的は、収容穴の内側端部のシーリングが少なくとも部分的に弾性変形可能なシーリング要素を具備する、冒頭に述べた工具ホルダを用いて達成される。
【0015】
本発明の目的は、このように完全に解決される。
【0016】
弾性変形可能なシーリング要素のおかげで、弾性変形可能なシーリング要素が工具の軸に当接するため、小さな圧力バイアスですでに工具の軸に対する安全なシーリングが確保される。
【0017】
このように、本システムは先行技術の工具ホルダを用いた場合よりも、圧力バイアスの変動に対してより耐性があることが明らかである。小さな圧力バイアスでも安全なシーリングを確保するには十分である。
【0018】
例えば、参照により本書に全部が組み込まれる特許文献2で知られているように、例えば、工具の軸を収容穴内に焼き嵌めする場合、工具が重力によって熱膨張した収容穴に入り込むことから生じる圧力バイアスにより、十分に安全なシーリングが確保される。
【0019】
本発明の好適な展開において、シーリングは、収容穴の端部の所定の取付位置に保持され、中央クーラント通路を具備するプラグとして構成される。
【0020】
このように、工具の軸を収容穴に挿入する前に、プラグを所望の軸方向の取付位置に取付調整することができるので、工具の軸を熱収縮によるなどして締め付けた後には、工具の軸の所望の軸方向の位置および確実な収容が確保される。
【0021】
本発明の別の展開によると、プラグは工具ホルダの雌ネジ内に調整可能に固定された雄ネジによって調整可能に保持されている。
【0022】
これにより、工具の軸の所定の軸方向の取付位置の調整が容易になる。
【0023】
本発明の別の展開において、プラグは工具の軸に面するその端部に、外側に張り出しているシーリング要素を具備する。
【0024】
これにより、工具の軸との封止のための所望の弾性が、非常に低い圧力バイアスですでに確保される。
【0025】
本発明の好適な展開において、少なくとも部分的に変形可能なシーリング要素は弾性プラスチック材料からなる。
【0026】
それにより、とくに高い弾性および工具の軸に対するとくに効果的なシーリングが、非常に低い圧力バイアスですでに得られる。
【0027】
弾性プラスチック材料はとくに工具の軸の熱収縮中に生じうる熱負荷に耐えられるように十分な熱安定性がなければならないことは、理解されるであろう。また、「弾性プラスチック材料」という用語は少なくとも部分的に可逆弾性挙動を有するプラスチック材料を含み、これにはゴムおよびゴム状材料も同様に含まれることも理解されるであろう。
【0028】
できれば弾性変形可能なシーリング要素はフッ素ゴムから作られてもよい。
【0029】
本発明の別の設計によると、プラグは全体が弾性プラスチック材料からなる。
【0030】
これにより単純で費用対効果の高い製造が可能である。
【0031】
本発明の別の変形例によると、プラグは雄ネジ付きのネジとして構成される金属製のベース本体を具備し、工具の軸に面する端部に、弾性プラスチック材料製の少なくとも部分的に弾性変形可能なシーリング要素が収容されている。
【0032】
金属とプラスチックの複合部品としてのシーリングのこの設計はシーリングの製造コストをやや増やすことになるが、工具ホルダ軸の軸方向の位置の調整が可能であると同時に、軸方向の変動に対するシーリングの効果の許容量があることによって特別な利点が得られる。
【0033】
本発明の別の展開によると、少なくとも部分的に弾性変形可能なシーリング要素は、好ましくはプラスチック材料のコーティングを施されている金属を具備する。
【0034】
これにより、大きな圧力バイアスに対してより大きいシーリング効果の許容量を確保することができる。
【0035】
本発明の別の展開において、シーリング要素は収容穴の端部に設けられているアンダーカットまで張り出している少なくとも1つのシーリング縁部を具備する。
【0036】
これにより、シーリングの効果が改善される。
【0037】
本発明の別の展開によると、シーリング要素はアンダーカットまで張り出している2つのシーリング縁部を具備する。
【0038】
それにより、シーリングの効果はさらに一層改善される。
【0039】
本発明の好適な展開において、シーリング要素は、収容穴の端部に肩部に対してシールするための第1のシーリング縁部を具備する。
【0040】
本発明の別の展開によると、シーリング要素は工具の軸の端部に対してシールするための第2のシーリング縁部を具備する。
【0041】
好ましくは、2つのシーリング縁部は凹形の環状溝を介して互いに接続されている。
【0042】
シーリングの効果はこれらの手段によってさらに改善される。
【0043】
本発明の好適な展開において、プラグは工具の軸に面するその第1の端部に、ネジ締め具を付けるための第1の工具受け部を具備する。
【0044】
これによりプラグを工具側から収容穴にねじ込むことができる。
【0045】
本発明の別の展開において、プラグは機械側に面するその第2の端部に、ネジ締め具を収容するための第2の工具受け部を具備する。
【0046】
それにより、収容穴内に工具をその工具の軸とともに締め付けた後、例えば、工具の軸方向の位置を調整するために、プラグの調整が可能になる。
【0047】
さらに、本発明の目的は、工具をその工具の軸において保持するための他の工具ホルダによって解決される。前記他の工具ホルダは工具の軸を所定の軸方向の位置で収容するための収容穴と、収容穴の内側端部にシーリングとを具備し、工具ホルダ本体に対してシールされているクーラント縁部によって機械側から工具の軸の孔までクーラントを供給する供給部を具備し、前記工具ホルダ本体は前記収容穴に、漏れを検出するために外側からアクセスすることのできる制御穴をさらに具備する。
【0048】
このように、また本発明の目的が解決される。すなわち、外側からアクセスすることができ、収容穴と連通している制御穴によって、クーラント供給部と工具の軸とのシーリングが完全に緊密であるかどうか、またはクーラントがこの箇所で漏出するおそれがあるかどうかを簡単に検出することができる。
【0049】
好ましくは、制御穴は、ドイツ工業規格DIN 69090−3に従う軸方向の調整ネジを受けるために設けられているアンダーカットの領域にある。
【0050】
調整ネジと工具の軸の軸方向端部との間の封止によるシーリングが緊密な場合、クーラントはアンダーカットに漏出しない。しかし、いくらか漏れがある場合、クーラントはアンダーカットによって形成される空洞から漏出して、そこから制御穴に入る。
【0051】
本発明の適切な展開において、制御穴には、漏れが直接検出でき、できれば警告信号を出力するために利用することのできるセンサが設けられている。
【0052】
すでに上記述べたように、工具ホルダは好ましくは工具を焼き嵌めで収容するように構成される。
【0053】
プラグを工具ホルダのネジ山にねじ込むために、スクリュードライバ工具の受け部をその外側端部に有する挿入用工具を利用することが有利である。プラグを工具ホルダの収容穴の中に取り付けることが容易になる。
【0054】
本発明の好適な展開において、挿入用工具に、プラグの軸方向の取付位置を判断するための制御用側面が設けられている。
【0055】
これは、刻み目、肩部または同様なものであってもよく、それによって工具ホルダのある側面に関連して、例えば工具ホルダの前面によって、工具ホルダ内のプラグの軸方向の取付位置を正確に調整することができる。
【0056】
本発明の追加の展開において、挿入用工具に、プラグの安全なセンタリングを確保するために、プラグ内に係合するように構成されているセンタリングマンドレルが設けられている。
【0057】
前述の特徴およびこれ以降説明する本発明の特徴は記載される組み合わせで使用できるだけでなく、本発明の範囲を逸脱することなく、異なる組み合わせまたは独立して使用することもできることが理解されるであろう。