特許第6590938号(P6590938)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6590938
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】風力発電装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 7/04 20060101AFI20191007BHJP
   F03D 80/20 20160101ALI20191007BHJP
   F03D 1/02 20060101ALI20191007BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20191007BHJP
   F03D 9/11 20160101ALI20191007BHJP
   F03D 80/40 20160101ALI20191007BHJP
   H02P 9/00 20060101ALI20191007BHJP
   H02P 101/15 20150101ALN20191007BHJP
【FI】
   F03D7/04 K
   F03D80/20
   F03D1/02
   F03D1/06 A
   F03D9/11
   F03D80/40
   H02P9/00 F
   H02P101:15
【請求項の数】14
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-546062(P2017-546062)
(86)(22)【出願日】2016年2月23日
(65)【公表番号】特表2018-510287(P2018-510287A)
(43)【公表日】2018年4月12日
(86)【国際出願番号】EP2016053728
(87)【国際公開番号】WO2016139082
(87)【国際公開日】20160909
【審査請求日】2017年10月20日
(31)【優先権主張番号】102015203629.4
(32)【優先日】2015年3月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512197272
【氏名又は名称】ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WOBBEN PROPERTIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】ベークマン、アルフレート
(72)【発明者】
【氏名】クルーゼ、マルセル
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0042094(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0154262(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第01909371(EP,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0253079(US,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02056210(EP,A2)
【文献】 特開2012−229692(JP,A)
【文献】 特開2013−011200(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/099128(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0002791(US,A1)
【文献】 特表2013−525668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 7/02
F03D 80/40
H02P 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ほぼ水平の回転軸を有する空気力学的ロータ(106)、発電機及び運転装置を含む風力発電装置(100)の運転方法であって、
・風力発電装置(100)は電気供給ネット(120)に電気エネルギを供給するために設けられており、及び、
・風力発電装置(100)は発電機の始動のためのスタート状態において準備完了状態に維持されるが、風力発電装置(100)は完全には運転状態にされることができ
スタート状態において風力発電装置を準備完了状態に維持することは風力発電装置(100)を風に整列させることであり、及び、風力発電装置(100)は風に整列するためにそのアジマス角が調整される、
方法において、
発電機は始動されることができない状態であり、
・発電機は、十分な風が存在しないという理由で始動されることができず、
・風力発電装置(100)は、風に整列するために、そのアジマス配向が風に対する適切な配向から許容角より大きく逸れる及び/又は予め設定される待機時間より長く逸れるとすぐに、そのアジマス角が調整され、
許容角の大きさ及び/又は待機時間の長さは、
(i)発電機が運転状態にあるか否か、及び
(ii)風速の大きさの程度
に依存し、
風速が小さい程、許容角の大きさ及び/又は待機時間の長さはより大きい、
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
発電機は
電気供給ネット(120)への給電が可能ではない又は許可されない、及び/又は、
・ローカルルールが、発電機の始動を一時的に禁止している、
という理由で始動されることができない、
方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、
風力発電装置(100)は、少なくとも1つのエネルギ蓄積装置からのエネルギによって、発電機を始動するためのスタート状態に維持される、
方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の方法において、
スタート状態において風力発電装置を準備完了状態に維持することは
風力発電装置(100)を、氷着の回避又は氷の融解のために、加熱すること
含む、
方法。
【請求項5】
請求項1〜の何れかに記載の方法において、
無風の場合又は風向の測定が不良である場合、風に対する風力発電装置の整列、即ちアジマス位置の調整は、観測マスト又は気象ステーションから伝達された風向に基づいて実行される、
方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の方法において、
・発電機が運転状態にある場合、第1許容角及び/又は第1待機時間が選択される、
・発電機が運転状態にない場合、第2許容角及び/又は第2待機時間が選択される
法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、
発電機が運転状態になくかつ風向が観測マスト又は気象観測ステーションから得られる場合、第3許容角及び/又は第3待機時間が選択される、
方法。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の方法において、
天気予報に基づき、発電機を含む風力発電装置(100)の運転のために十分な風が準備期間内において期待できる場合、ロータブレード(108)の加熱装置が始動される、
方法。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載の方法において、
発電機が運転状態にない場合にも、氷着の阻止及び/又は除去のための制御装置が運転される、
方法。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに記載の方法において、
・風力発電装置(100)が始動可能であることを期待することが可能な始動時点が計算又は予測され、及び、
・該始動時点前の予め設定される事前運転時間に風力発電装置(100)が発電機の始動のためのスタート状態にもたらされ、その状態で発電機が始動されるまで準備完了状態に維持される、
方法。
【請求項11】
請求項1〜10の何れかに記載の方法を実行するよう構成された風力発電装置(100)。
【請求項12】
請求項11に記載の風力発電装置(100)において、
風力発電装置(100)又はこれに接続された電気的な装置ネットワークがエネルギを蓄積するためのかつ電気エネルギを供給するための少なくとも1つのエネルギ蓄積装置を有し、
エネルギ蓄積装置は、風力発電装置(100)のロータブレード(108)を加熱するために十分なエネルギを蓄積できるように、即ち完全に氷着されたロータブレード(108)の氷を融解できるほど多くのエネルギを蓄積できるように及び/又はロータブレード(108)を予め設定される加熱時間の間に最大の加熱出力で加熱できるほど多くのエネルギを蓄積できるように、容量が設定され、該加熱時間は少なくとも1時間又は少なくとも3時間である、
風力発電装置。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の風力発電装置(100)を少なくとも2つ含むウインドパーク(112)。
【請求項14】
請求項13に記載のウインドパーク(112)であって、
ウインドパーク(112)内に全体として風力発電装置(100)のロータブレード(108)を加熱するために十分なエネルギを蓄積できるように、即ちウインドパーク(112)内のすべての風力発電装置(100)の完全に氷着されたロータブレード(108)の氷を融解できるほど多くのエネルギを蓄積できるように及び/又はウインドパーク(112)のすべての風力発電装置(100)のロータブレード(108)を予め設定される加熱時間の間に最大の加熱出力で加熱できるほど多くのエネルギを蓄積できるように、容量が設定された少なくとも1つのエネルギ蓄積装置が備えられ、該加熱時間は少なくとも1時間又は少なくとも3時間である、
ウインドパーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置の運転方法に関する。更に、本発明は、風力発電装置及び複数の風力発電装置を有するウインドパークに関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置、本発明に応じたとりわけ水平軸風力発電装置は既知である。これらは、風からエネルギを取り出し、このエネルギを電気エネルギに変換する。このことは、簡単化して、電気エネルギの生成ないし電力の生成と称することができる。
【0003】
そのような風力発電装置は、運転状態にある間、通常、電気供給ネットに供給される電力を生成する。しかしながら、生成された電力の一部は、運転装置に供給するために使用される。制御システム即ち制御コンピュータ等の給電に加えて、時として少々より多くの電力を必要とする運転装置も存在する。運転装置には、アジマス調整装置、即ち、風力発電装置がその配向を風に追従させることを可能にする調整装置が含まれる。アジマス調整装置は、通常、風力発電装置のナセル(ゴンドラ)の(配向)調整のための複数のアジマスモータを含む。そのような運転装置には、ロータブレードがその迎角を調整することを可能にするロータブレード調整装置も含まれる。なお、ロータブレードの迎角の調整はピッチングないしピッチ角調整とも称される。更に、加熱装置、とりわけ氷着の阻止又は存在する氷の融解除去のためのロータブレード加熱装置も存在し得る。
【0004】
風力発電装置が、とりわけ風が弱すぎるために、停止すると、これらの装置(の運転)はすべて最早不要になる。この場合、風力発電装置は、いずれにせよ、これらの装置に対し、自ら生成する電力を供給することは最早できないが、運転状態にあれば風力発電装置が電気を供給するネットからの電力の供給は極めて費用がかさむ。ネットから電気(電流)を取り出すための費用は、しばしば、風力発電装置の運用者が同じ量の供給電気に対して受け取る報酬(利益)より数倍より大きい。
【0005】
従って、風力発電装置が再び運転されることが望まれる場合、例えば風が再び増大する場合、必要な運転装置を相応に運転するために、しばしば、まず、高価な電力をネットから購入しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】US 2007 0108769 A1
【特許文献2】DE 10 2012 204 239 A1
【特許文献3】US 2008/0084070 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ウインドパークについては既に解決策が提案されており、これによると、複数の風力発電装置は、風が弱くなって停止される際、後に再び風が強くなったときにこれらの風力発電装置の少なくとも1つが或る程度好都合に風(の方向)に整列されているように、それぞれ異なるアジマス方向に調整(位置合せないし配向)される。これについては、US 2007 0108769 A1に記載されている。この文献には、更に、ウインドパークの1つの風力発電装置に対してのみ、とりわけ可及的に小さいものに対してのみ、ネットからの電力を始動のために使用することが提案されている。この場合、この風力発電装置が運転状態にあれば、該風力発電装置によって生成される電力は、ウインドパークの更なる(他の)風力発電装置の運転装置の運転のために使用でき、その結果、これらの風力発電装置を始動できる。
【0008】
しかしながら、この場合不都合なことに、これらの残りの風力発電装置は、差し当たり、この1つの風力発電装置が始動されるまで、待機しなければならない。そのため、このウインドパークによる電力の生成は遅延し、かくして、風から取り出すことができたはずの電力を獲得し損なっている。
【0009】
ドイツ特許商標庁は、本出願の優先権主張の基礎出願において以下の関連技術を調査した:DE 10 2012 204 239 A1、US 2008/0084070 A1、記事“Offshore-Windpark Riffgat startet ohne Kabel”, manager magazine 及び記事“Die Schildbuerger lassen gruessen. Dieselmotorentreiben Windraeder an”, n-tv.de。
【0010】
それゆえ、本発明の課題は、上述の問題の少なくとも1つに取り組むことである。とりわけ、風から取り出し可能な電力を可及的に多くすること及び風から獲得し損なう電力ないしエネルギを可及的に少なくすることに適合された方策の提案が望まれる。少なくとも、既知の方策に対して、代替的な方策の提案が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に応じ、請求項1に記載の方法が提案される。即ち、本発明の1視点により、ほぼ水平の回転軸を有する空気力学的ロータ、発電機及び運転装置を含む風力発電装置の運転方法が提供される。該方法においては、
・風力発電装置は電気供給ネットに電気エネルギを供給するために設けられており、及び、
・風力発電装置は発電機の始動のためのスタート状態において準備完了状態に維持されるが、風力発電装置は完全には運転状態にされることができ
スタート状態において風力発電装置を準備完了状態に維持することは風力発電装置を風に整列させることであり、及び、風力発電装置は風に整列するためにそのアジマス角が調整され、
発電機は始動されることができない状態であり、
・発電機は、十分な風が存在しないという理由で始動されることができず、
・風力発電装置は、風に整列するために、そのアジマス配向が風に対する適切な配向から許容角より大きく逸れる及び/又は予め設定される待機時間より長く逸れるとすぐに、そのアジマス角が調整され、
許容角の大きさ及び/又は待機時間の長さは、
(i)発電機が運転状態にあるか否か、及び
(ii)風速の大きさの程度
に依存し、
風速が小さい程、許容角の大きさ及び/又は待機時間の長さはより大きい、
ことを特徴とする(基本構成)。
この方法は、ほぼ水平な回転軸を有する空気力学的ロータと、発電機と、運転装置を含む風力発電装置の運転のために提供される。風力発電装置は、電気エネルギを電気供給ネットに供給するために設けられ、及び、発電機を始動するためのスタート(始動)状態において準備完了(運転(作動)可能)状態に維持されるが、発電機は始動されることができない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発電機が始動できない理由は、例えば、風(の強さ)が十分ではないことであり得る。他の又は付加的な可能性の1つは、電気供給ネットに給電できないこと又は給電が許されないことである。とりわけ少なくとも一時的に接続が存在しない場合には、電気供給ネットへ給電できない。ネットに障害がある場合、とりわけネットが電気工学的意味で麻痺(ないし崩壊)している場合にも、給電はできない。これらのような場合、ネットにおける障害の大きさに応じてネットに給電すること自体は可能ではあるものの、諸規則(規制)のために、とりわけネット運用者の諸規則のために、ネットへの給電が許されないことも考慮される。例えば、ネット周波数が定格周波数から例えば2%だけ外れた場合、風力発電装置はネットに給電することが許されないということがあり得る。
【0013】
更に、とりわけ不快なシャドー投影(シャドーフリッカ)や不快な騒音発生を回避するために、ローカルルール(特定の地域の(法的)規制ないし規則)が発電機の始動を一時的に禁止することも考慮される。これは、ネット運用者側からの禁止ではなく−勿論これも追加されることはあり得る−環境保護技術上の理由からの禁止であろう。とりわけシャドー投影は、太陽が相応に更に移動した場合及び/又は雲が影を作り出さないかないし散光(薄い光)のみを通す場合には、短時間後には既になくなっていること、即ち運転禁止の理由が存在しないこともあり得る。
【0014】
騒音発生に基づく運転禁止は、(一日の)時間帯、又は風向に依存し得る。
【0015】
何れにせよ、発電機の始動に反対する理由は種々存在するが、これらは直ぐになくなっていることもある。場合によっては、これらの状況がなくなる時点は正確に予測可能である。
【0016】
何れにせよ、発電機がその時点において始動できないかないし始動が許されないにも拘らず、発電機をスタート(始動)状態において(始動)準備完了状態に維持することが提案される。この提案は、とりわけ、発電機が始動可能であることはしばしば予測可能であるという(本発明による)認識に基づいている。よくある一例は、天気予報の評価であろうし、ないしは、とりわけ、それぞれの風力発電装置の近くにある気象観測ステーションの評価であろう。そして、この評価に基づき、例えば、風力発電装置を運転するために十分な強さの風が再び発生する時点を予測することができる。
【0017】
この提案は、更に、風力発電装置が発電機の始動の準備をしている間に多くのエネルギが喪失し得るという(本発明による)認識にも基づいている。このエネルギ喪失は大変大きいこと、即ち風力発電装置を即時に始動の準備完了状態に持続的に(常時的に)維持することを回避することが正当化される程に大きいことがあり得ることが(本発明により)認識された。従って、風力発電装置を始動準備完了状態に維持するために、エネルギが消費される。このエネルギには、例えば、風力発電装置を風(の方向)に整列させるためのエネルギ、又は、氷着の回避又は(着氷の)融解のために、風力発電装置、とりわけそのロータブレードを加熱するためのエネルギさえも該当する。
【0018】
有利には、風力発電装置は、発電機を始動するためのスタート(始動)状態に維持されるために、少なくとも1つのエネルギ蓄積装置からのエネルギを使用する。そのようなエネルギ蓄積装置は、風力発電装置の運転時、当該風力発電装置によってエネルギ充填されることができるため、電気供給ネットからの高価な電気の取り込みは回避することができる。従って、風力発電装置は、周囲条件(十分な風の存在、給電網の存在、外気温の高低等の、風力発電装置の始動ないし運転のために満たされるべき技術的条件:Randbedingungen)が許すや、即時に始動され、即時にエネルギを生成することができる。その限りにおいて、これは、始動のための条件が既に整っている場合に初めて風力発電装置が始動の準備完了状態になる運転モードに対する付加的エネルギである。
【0019】
有利には、スタート(始動)状態において風力発電装置を準備完了状態に維持することは、以下の措置の少なくとも1つを含む:風力発電装置を、とりわけ氷着の回避又は氷の融解のためにロータのロータブレードを加熱すること、及び、風力発電装置を風(の方向)に整列させること。
【0020】
風(の方向)に風力発電装置を整列させること、即ち風(の方向)にアジマス位置を合わせることは絶対的に極めて多くのエネルギを必要とせざるを得ないわけではなく、とりわけ風向が常時的には変化しない安定的な気象条件が存在する場合にはそうではない。有利には、この場合、アジマス位置が調整し直される(変更される)までアジマス位置の適正な配向からの実際の配向のずれることが可能な許容角は、通常(正常)運転の場合よりもより大きいものが選択できる。有利には、この角度は、ここでは、少なくとも10°、有利には少なくとも20°とすることができる。従って、この場合、風力発電装置は、風が十分であるか又は他の阻害原因がなくなれば、アジマス位置が完全には適切でない場合であっても、直ちに始動できるであろう。尤も、この場合、このアジマス位置は、極めて迅速に、場合によっては風力発電装置が既に自身で生成可能なエネルギによって早くも、(適切に)調整されることができる。
【0021】
風力発電装置の、とりわけ氷着の回避又は着氷の融解のためのロータブレードの加熱は、しばしば、極めて多くのエネルギを消費し得る。一方では、加熱は原理的に比較的多くのエネルギを必要とし、他方では、現代の風力発電装置は極めて大きなロータブレードを有し、従って、氷着が生じ得る極めて大きな面を有するため、加熱装置の面積も相応に大きくなる。
【0022】
尤も、他方では、風力発電装置が運転の障害の消失後実際に再び運転され、電力を生成するまでの期間は、まず既に存在する着氷を除去しなければならない場合、極めて長くなり得ることが(本発明により)認識された。そのため、この場合、風力発電装置が実際に再び通常に運転されるまでに経過する期間は極めて長くなる。この長い期間においては、相応にまた極めて多くのエネルギを風から生成することはできず、そのため、この場合についても、極めて多くのエネルギは無駄になるであろう。従って、この大きなエネルギ量は、ロータブレードの早期の加熱のための費用と関係付けられるべきである。
【0023】
換言すれば、ロータブレードの加熱のために多くのエネルギが必要になるが、それによってもっと多くのエネルギを獲得することができる。
【0024】
一実施形態に応じ、提案に係る方法においては、風力発電装置は、風(の方向)に整列するために、そのアジマス配向が風に対する適切な配向から許容角より大きく逸れ及び/又は予め設定される待機時間より長く逸れるとすぐに、そのアジマス角が調整され、許容角の大きさ及び/又は待機時間の長さは、発電機が運転状態にあるか否か及び/又は風速の大きさの程度に依存し、とりわけ、風速が小さい程、許容角の大きさ及び/又は待機時間の長さはより大きくなる。
【0025】
従って、風力発電装置に対し、そのアジマス角について風への整列は、即時にかつ直接的には実行されず、逸れ(ずれないし外れ)が大きい場合又は付加的に待機時間が経過した場合に初めて実行される。そのような許容角も待機時間も、とりわけ、発電機が運転状態にあるか否かに依存する。発電機が運転状態にある場合、可及的に小さい許容角が使用され、待機時間は可及的に僅かしか、最善では全く使用されない。この場合、風力発電装置は、原理的に通常運転の状態にあり、従って、可及的に正確に風に追従する。
【0026】
これに対し、発電機が運転状態にない場合、より大きな許容角の使用で十分であり得、更に又は付加的に、追従が実行されるまでの長さの時間を待機することで十分であり得る。風速が特に小さい場合、位置が調整し直されるまでより長い時間を待機し得る。同じことが、より大きく設定され得る許容角にも当てはまる。とりわけ、風力発電装置がその時点で運転状態になることが全くできない程に風速が小さい場合、従って、風速がその方向を辛うじて求めることができる程度の大きさしかない場合、極めて抑制された追従で十分であり得る。
【0027】
風速がより大きい場合、追従の抑制の程度はより小さくなろうが、風力発電装置を運転するために既に十分な風が存在すればなおさらそうなるであろう。従って、この場合、運転に反対する(妨げる)障害が消失すれば、例えば雲によりシャドー投影が消失すれば、風力発電装置は即時にかつ良好なアジマス調整状態で運転されることができる。
【0028】
有利には、無風の場合又は風向の測定が不良である場合、風に対する風力発電装置の整列、即ちアジマス位置の(適正化)調整は、観測マスト(Messmast)又は気象(観測)ステーションから伝達された風向に基づいて実行される。
【0029】
風力発電装置において風速が極めて小さい場合又は更には無風の場合、風向測定は殆ど又は全くできない。それにも拘らず、とりわけ風が突然十分な大きさになる場合に備えて、風力発電装置を即時の運転のために準備完了状態にすることが提案される。そのために、無風の場合であっても、風力発電装置を風(の方向)に整列させることは、好都合であり得る。風に対する整列は、無風の場合は勿論−定義によれば−可能ではないが、その周辺(付近)で測定された風に対する整列は可能であり、往々にして、少なくとも正確に測定を行う観測マスト付近の風は、風向を決定するために依然として十分ではあるが、この風は無風として知覚されるか又は少なくとも風力発電装置においては測定可能でないかないしは存在しない。従って、風が強くなると、尤もそのように測定された風向を有するが、それにも拘らず、風力発電装置は既に正しい方向に又は少なくともほぼ正しい方向に整列されている。
【0030】
有利には、本方法においては、発電機が運転状態にある場合、第1許容角及び/又は第1待機時間が選択され、発電機が運転状態にない場合、第2許容角及び/又は第2待機時間が選択され、任意的に、発電機が運転状態になくかつ風向が観測マスト又は気象観測ステーションから得られる場合、第3許容角及び/又は第3待機時間が選択される。この場合、とりわけ、第3許容角は第2許容角より大きくかつ第2許容角は第1許容角より大きいことが提案される。同様に、特に好ましくは、第3待機時間は第2待機時間より大きくかつ第2待機時間は第1待機時間より大きいことが提案される。アジマス位置の追従は、従って、所与の状況が可能な運転状況に依存する程度が大きい程、より抑制的に実行される。第1の場合、即ち第1許容角及び/又は第1待機時間の場合、風力発電装置は運転状態にある。
【0031】
好ましい一実施形態に応じ、天気予報に基づき、発電機を含む風力発電装置の運転のために十分な風が、とりわけロータブレードの加熱のために必要なエネルギを再び生成できる程に強くかつ持続的な(恒久的な)風が、準備期間(Vorbereitungszeitraum)内において期待できる場合、とりわけロータブレードの、加熱装置を始動することが提案される。この場合、従って、とりわけ風力発電装置が直ぐに運転状態にされることできると期待して、加熱装置、とりわけロータブレードの加熱装置が始動される。換言すれば、この場合、風力発電装置が直ぐに運転されることできること及びそのために使用されるエネルギが直ぐに再び生成されていることを想定して、まず、エネルギが風力発電装置の、とりわけロータブレードの加熱に投入される。
【0032】
従ってこの場合、風力発電装置が実際に運転状態にされることができる前に、加熱装置を運転することが明確に提案される。加熱は、予防措置として(vorsorglich)実行され、従って、風力発電装置によって直接的に生成されるエネルギを消費することはない。その代わりに、このエネルギは、他のエネルギ源から取り込む必要がある。このために、バッテリー蓄積装置又は電気エネルギの他の蓄積装置(貯蔵装置)の使用が考慮される。場合によっては、このために、他の風力発電装置が既に運転のために十分な風を受けている場合、この他の風力発電装置のエネルギを使用することも考慮される。尤も、風が十分でない場合、ウインドパーク内の何れの風力発電装置からも、即ち、ここで考慮される風力発電装置の近くにある何れの風力発電装置からもエネルギが生成されないことはしばしばある。
【0033】
更なる可能性の1つは、このエネルギを電気供給ネットから取り込むこと、場合によっては高い料金を支払うことである。多くの風を見込むことができる場合、この予防的な加熱は、それにも拘わらず結果的に有利であり得る。なぜなら、このため、風力発電装置は直ぐに始動の準備が完了し、この期待されたより強い風が発生すると、直ちにエネルギを生成することができ、そのため、あまりにも長く続く始動プロセスによってエネルギを喪失することがないからである。
【0034】
従って、本発明の本質的な一視点によれば、風力発電装置、とりわけその発電機は、或る時点において始動準備完了状態にされ及び/又は始動準備完了状態に維持されるが、その時点では、発電機はまだ始動されることができない。これは、間もなくの始動を期待して目標を定めて実行することができ、及び/又は持続することができる。
【0035】
発電機を始動準備完了状態にすることは、結局、風力発電装置を全体として始動準備完了状態にすることでもある。結局のところ、発電機の始動準備完了状態化は、風力発電装置を始動準備完了状態にすることも代表する。例えば、風力発電装置のナセルの方向合せ(アライメント:Ausrichten)は、とりわけそれが通常運転の場合よりも少々より抑制的に実行される場合、常時的である(常時的に実行される)ことも可能である。ロータブレードの加熱のような、とりわけエネルギ集約的(多量消費的)準備措置の場合、ロータブレードの加熱が更に1回又は多数回必要になる前に、発電機の始動を期待できる場合にのみ、当該措置を実行することが考えられる。氷着を阻止するために又は既に存在する着氷又は氷層を融解するためにロータブレードを加熱する場合、この現象は冬期全体にわたって(必ず)生じるというものではないことに留意すべきである。寧ろ、そのためには、特別な天候状況が必要である。そのような状況には、例えば、氷着はとりわけ温度が氷点(凝固点)付近及び氷点を僅かに下回る場合に生じることが含まれる。更に、そのような氷着のためには湿った空気が必要とされ、大抵は、そのような氷着を予期するためには風も必要である。
【0036】
それに応じて、ロータブレードの常時的加熱は大きなエネルギ消費を伴っているが、氷着の阻止のための制御装置(システム)は、風力発電装置が運転されない場合でさえも、常時的に運転されることは可能であろう。これは、とりわけ、氷着を阻止するための制御装置が、そもそも氷着を予期することができるか否かを考慮する場合に、妥当する。氷着が生じるためにはしばしば風も必要であることを考慮すれば、風力発電装置の運転のための、即ち発電機のスイッチオンのための適切な周囲条件は、氷着の疑いが存在する場合では、それほど遠く外れていないこともしばしば期待することができる。
【0037】
有利には、従って、発電機が運転状態にない場合にも、氷着の阻止及び/又は除去のための制御装置が運転される方法も提案される。
【0038】
風力発電装置とりわけ発電機が始動可能であることを期待することが可能な始動時点が計算又は予測され、該始動時点前の予め設定される事前(準備)運転時間(Vorlaufzeit)に風力発電装置が発電機の始動のためのスタート(始動)状態(Startzustand)にもたらされ、その状態で発電機が始動されるまで準備完了状態に維持される方法が、有利な一実施形態により提案される。即ち、まず、始動時点が計算又は予測される。これは、例えば、始動時点が再び十分に風が存在する時点である場合、天気予報に基づいて実行することができる。尤も、これは、非運転(状態)が騒音発生禁止(指令)に基づきかつこの騒音発生禁止が所定の時点においてなくなる場合、(或る)時刻であってもよい。また、これは、既知の太陽の位置に基づいて影が最早生じないないし障害になる場所には最早生じない時点であってもよい。そこで計算又は予測されるこの始動時点は、後に、実際に可能な始動時点からずれることもあり得る。場合によっては、そのような計算に反し、風力発電装置の始動は、初めのうちは又は少なくともより長い時間の間、全く行われない。
【0039】
何れにせよ、そのような始動時点は計算されるが、まさに天気予報を基礎とする場合、そのような始動時点の予測が問題になり得るであろう。
【0040】
そして、この予測又は計算される始動時点のために、風力発電装置を予め(始動)準備完了状態にすることが提案される。このために、装置(風力発電装置)特異的に常に同一であり得かつ従って定数を形成し得る事前(準備)運転時間(Vorlaufzeit)が予め設定される。尤も、好ましい一実施形態では、この事前(準備)運転時間は、周囲条件(複数)に依存することもあり得、例えば、この事前(準備)運転時間は、除氷のプロセスを一緒に考慮するために、冬期には夏期よりもより長い時間として選択されることができる。
【0041】
従って、この事前(準備)運転時間によって、風力発電装置を始動時点より早期に準備完了状態にすることが提案される。これは、例えば、除氷を開始すること、風力発電装置のアジマス位置を風に対し整列させること及び/又はロータブレードの迎角を風に対し相応に調整することを意味し得る。そして、それに応じて、風力発電装置は(始動)準備完了状態になっており、実際に始動可能になるまで、この状態に維持される。好適には、これは、計算された始動時点において実行されるであろうが、例えば、より遅くに実行されてもよい。有利には、事前(準備)運転時間は、より長いものとして、とりわけ風力発電装置の始動の準備のために必要であろうよりも少なくとも2倍長いものとして選択される。この場合も、周囲条件が始動を許す場合に風力発電装置が(始動)準備完了状態にあることを保証(確認)することは、風力発電装置を始動準備完了状態に維持するために必要になるはずのエネルギを敢えて節約することよりも遥かに重要であるという認識が考慮されている。
【0042】
本発明に応じ、更に、少なくとも上述の複数の実施形態の1つに応じた方法を実行するよう構成された風力発電装置が提案される。とりわけ、そのような風力発電装置において、該風力発電装置又はこれに接続された電気的な(風力発電)装置ネットワークがエネルギを蓄積(貯蔵)するためのかつ電気エネルギを供給するための少なくとも1つのエネルギ蓄積装置を有し、該エネルギ蓄積装置が、風力発電装置のロータブレードを加熱するために十分なエネルギを蓄積することができるような、とりわけ完全に氷着されたロータブレードの氷を融解できるほど多くのエネルギを蓄積できる及び/又はロータブレードを予め設定される加熱時間(期間)の間に最大の加熱出力(電力)で加熱できるほど多くのエネルギを蓄積できるような、容量(規模)を有し、該加熱時間は有利には少なくとも1時間、とりわけ少なくとも3時間であることが、提案される。
【0043】
従って、ロータブレードの加熱のために十分なエネルギを用意するために、風力発電装置の接続される電気的装置ネットも有し得るエネルギ蓄積装置を風力発電装置に備えることが提案される。従って、このエネルギを用いて、氷着はロータブレードの加熱によって阻止されることが企図され又はロータブレードは既に存在する氷を融解できるよう過熱されることが企図されている。これに応じて、このエネルギ蓄積装置を相応の容量(規模)に構成することが提案される。尤も、このエネルギ蓄積装置は、風力発電装置自身が運転状態にない間に、風力発電装置の更なる運転装置も運転するために、十分な容量(規模)であると有利である。これには、とりわけ、ロータブレードの迎角を風に対し整列させるための、アジマス調整装置の運転及び/又はロータブレードのピッチ調整装置の運転も含まれる。尤も、ロータブレードの加熱のためのエネルギ量は、その他の使用のためのエネルギより遥かにより大きいであろう。これに応じて、エネルギ蓄積装置の容量(規模)をロータブレードの加熱のために必要なエネルギに基づいて定めることが提案される。
【0044】
有利には、予め設定される加熱時間の間に最大の加熱出力でロータブレードを加熱するために十分なエネルギを蓄積できるよう、容量(規模)が定められる。この加熱時間は、有利には、少なくとも1時間、とりわけ少なくとも3時間に設定される。ロータブレードの既存の加熱装置のための最大の加熱出力は個々の風力発電装置について予め設定された既知の値であるため、予め設定される(加熱)時間に応じて、エネルギ蓄積装置の容量(規模)を一義的に定めることができる。
【0045】
更に、本発明に応じ、上述の実施形態に応じた少なくとも2つの風力発電装置を有するウインドパークが提案される。
【0046】
有利には、このウインドパークは、1又は複数のエネルギ蓄積装置を有する。この1つのエネルギ蓄積装置又はウインドパークに含まれるすべてのエネルギ蓄積装置の総体は、ウインドパーク内のすべての風力発電装置のすべてのロータブレードが相応に予め設定される加熱時間の間に加熱可能であるよう、及び/又は、ウインドパーク内のすべての風力発電装置のすべてのロータブレードを除氷するために、当該1つのエネルギ蓄積装置のエネルギ又はウインドパークのすべてのエネルギ蓄積装置のエネルギの総和で十分であるよう、その容量(規模)が定められる。
【0047】
以下に、本発明の好ましい形態を示す。
(形態1)上掲基本構成参照。
(形態2)上記の方法において、発電機は
電気供給ネットへの給電が可能ではない又は許可されない、及び/又は、
・ローカルルールが、発電機の始動を一時的に禁止している、
という理由で始動されることができないことが好ましい。
(形態3)上記の方法において、風力発電装置は、少なくとも1つのエネルギ蓄積装置からのエネルギによって、発電機を始動するためのスタート状態に維持されることが好ましい。
(形態4)上記の方法において、スタート状態において風力発電装置を準備完了状態に維持することは
・風力発電装置を、氷着の回避又は氷の融解のために、加熱すること
含むことが好ましい
形態)上記の方法において、無風の場合又は風向の測定が不良である場合、風に対する風力発電装置の整列、即ちアジマス位置の調整は、観測マスト又は気象ステーションから伝達された風向に基づいて実行されることが好ましい。
(形態)上記の方法において、
・発電機が運転状態にある場合、第1許容角及び/又は第1待機時間が選択される、
・発電機が運転状態にない場合、第2許容角及び/又は第2待機時間が選択されることが好ましい。
(形態7)上記の方法において、発電機が運転状態になくかつ風向が観測マスト又は気象観測ステーションから得られる場合、第3許容角及び/又は第3待機時間が選択されることが好ましい。
(形態8)上記の方法において、天気予報に基づき、発電機を含む風力発電装置の運転のために十分な風が準備期間内において期待できる場合、ロータブレードの加熱装置が始動されることが好ましい。
(形態9)上記の方法において、発電機が運転状態にない場合にも、氷着の阻止及び/又は除去のための制御装置が運転されることが好ましい。
(形態10)上記の方法において、
・風力発電装置が始動可能であることを期待することが可能な始動時点が計算又は予測され、及び、
・該始動時点前の予め設定される事前運転時間に風力発電装置が発電機の始動のためのスタート状態にもたらされ、その状態で発電機が始動されるまで準備完了状態に維持されることが好ましい。
(形態11)上記の何れかの方法を実行するよう構成された風力発電装置も好ましい。
(形態12)上記の風力発電装置において、風力発電装置又はこれに接続された電気的な装置ネットワークがエネルギを蓄積するためのかつ電気エネルギを供給するための少なくとも1つのエネルギ蓄積装置を有し、
エネルギ蓄積装置は、風力発電装置のロータブレードを加熱するために十分なエネルギを蓄積できるように、即ち完全に氷着されたロータブレードの氷を融解できるほど多くのエネルギを蓄積できるように及び/又はロータブレードを予め設定される加熱時間の間に最大の加熱出力で加熱できるほど多くのエネルギを蓄積できるように、容量が設定され、該加熱時間は少なくとも1時間又は少なくとも3時間であることが好ましい。
(形態13)上記の風力発電装置を少なくとも2つ含むウインドパークも好ましい。
(形態14)上記のウインドパークにおいて、ウインドパーク内に全体として風力発電装置のロータブレードを加熱するために十分なエネルギを蓄積できるように、即ちウインドパーク内のすべての風力発電装置の完全に氷着されたロータブレードの氷を融解できるほど多くのエネルギを蓄積できるように及び/又はウインドパークのすべての風力発電装置のロータブレードを予め設定される加熱時間の間に最大の加熱出力で加熱できるほど多くのエネルギを蓄積できるように、容量が設定された少なくとも1つのエネルギ蓄積装置が備えられ、該加熱時間は少なくとも1時間又は少なくとも3時間であることが好ましい。
以下に、本発明を、例示的に実施例を用いて添付の図面を参照して詳細に説明する。
なお、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものに過ぎず、本発明を図示の態様に限定することは意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】風力発電装置の一例の模式図。
図2】ウインドパークの一例の模式図。
図3】本発明の一実施例に応じた例示としての加熱プロセスを説明するための4つの時間チャート。
【実施例】
【0049】
図1は、タワー102とナセル(ゴンドラ)104を有する風力発電装置100の一例を示す。ナセル104には、3つのロータブレード108とスピナ110を有するロータ106が配設されている。ロータ106は、運転時、風によって回転運動し、それによって、ナセル104内の発電機を駆動する。
【0050】
図2は、同一又は異なるように構成可能な例えば3つの風力発電装置100を有するウインドパーク112の一例を示す。従って、3つの風力発電装置100は、1つのウインドパーク112の原理的に任意の数の風力発電装置を代表している。これらの風力発電装置100は、その出力(電力)、即ちとりわけ生成した電気(電流)を電気的パークネット114を介して供給する。その際、個々の風力発電装置100のそれぞれ生成した電気ないし電力は加算される。大抵は、変圧器116が設けられるが、変圧器116は、ウインドパークの電圧を昇圧し、次いで、一般的にPCC(系統連係点)とも称される給電点118において電気供給ネット120への給電を行う。図2は、ウインドパーク112の単純化した模式図に過ぎず、従って、例えば制御装置は図示されていないが、当然、制御装置は設けられている。更に、例えば、パークネット114は異なるように構成することも可能であり、そのようなパークネットでは、例えば、個々の風力発電装置100の出力端にそれぞれ1つの変圧器が設けられている。尤も、これは他の一実施例として例示したに過ぎない。
【0051】
図3は、紙面最下のグラフに、風速のありうる推移(変動)の一例を模式的に示す。これによると、風速Vは、最初の180分間即ち最初の3時間では、この例では単純化して秒速2メートルが与えられている図示のスタート(始動)風速を下回っている。風速の正確な値は、この場合重要ではない。それにも拘らず、図3のグラフは、概ね数値の観点からも現実的な推移を表すことを試みている。それでもやはり、グラフは模式的なものであり、図示されかつ説明される関係も概略的な関係として理解されるべきであり、とりわけ、不正確な記載もあり得る。
【0052】
次に、180分の時点で、風速Vは増大して、スタート(始動)風速VWStartを上回る。ほぼ230分の時点で、即ち1時間後に、風速はほぼ秒速10メートルの値に落ち着く。この例では、秒速12メートルの定格風速が与えられており、このため、風速は、240分後には定格風速を依然として下回った状態に維持されている。従って、この例は、風速が極めて小さい(遅い)即ち風力発電装置が全く運転できないほどに小さい値から、依然として定格風速VWNを下回ってはいるがより大きな値に増大する至極現実的な事例を示している。
【0053】
その上の(紙面下から2番目の)グラフは、風力発電装置の発電機によって生成される電力Pを示す。ここで、添え字Gは、その上の(紙面下から3番目の)グラフの加熱出力(電力)Pとの相違を明確にするために選択されものである。
【0054】
従って、発電機は、最初の3時間は、風が弱すぎるため、電力を生成することができない。そして、3時間後、風速は発電機を始動できるほど十分大きくなるが、それ以前は発電機の始動は可能ではなかった。そして、発電機は始動され、風速Vに応じて相応の電力を生成する。このグラフは、例えば、生成電力をMWの単位で示している。この例では、2MWの定格出力Pの風力発電装置を出発点としているが、これは、現在では、寧ろ、平均的な又は場合によってはより小さい規模(容量)の風力発電装置である。風速Vはその定格風速VWNに達していないため、発電機によって生成される電力Pもその2MWの定格値Pに達していない。
【0055】
風速Vが秒速2メートルのスタート(始動)風速VWStartを上回る瞬間に、即時に発電機も始動でき、電力Pも生成できることが、これらの下側の2つのグラフにおいて既に認識することができる。
【0056】
この電力Pは当初は小さいが、それは、風速もまだ極めて小さいからである。ここで、電力Pの直線的勾配は理想化されたものである。(電力の)推移は異なる様相を呈することもあり得、風速Vが図示のように変化すれば、同様に推移するであろう。
【0057】
紙面下から3番目(上から2番目)のグラフは、同様にMWの単位で表されている加熱出力Pの例示的推移を示しており、発電機電力Pのグラフに対するものと同じスケールが選択されている。加熱出力Pのこのグラフは、30分の時点で加熱出力Pがゼロから0.2MW即ち200kWに上昇することを示している。この200kWは、この例示的実施例の場合の加熱出力の定格値PHNである。このグラフは、風力発電装置が、図示の30分の時点において、氷着が検出されたために、ロータブレードが除氷されるべきことを確認したという想定に基づいている。従って、この場合、制御装置は、ロータブレードの加熱による除氷を実行するが、このために、この想定された例では、200kWの加熱出力が必要とされる。
【0058】
従って、ロータブレードのこの加熱は、風力発電装置が運転されていない場合や、風速が小さいために運転状態にされることができない場合であっても、実行される。従って、発電機は、運転状態にされることができず、加熱出力を利用可能にすることもできない。
【0059】
ここで、図示のグラフは、この加熱出力が1.5時間の間に即ち30分の時点から120分の時点までに必要であることを出発点としている。そして、120分の時点において、除氷が首尾よく終了し、ロータブレードの加熱はスイッチオフされ、その結果、加熱出力Pの値は再びゼロになる。他方、風速は、依然として、発電機を始動できない値をとっている。
【0060】
紙面最上のグラフは、風力発電装置のエネルギ収支を示すことが意図されており、この場合、単純化されて、発電機によって生成される電力Pと加熱装置によって消費される加熱出力Pのみが考慮されている。そして、30分の時点においてスタート値としてエネルギ収支がゼロであることを出発点としている。エネルギの推移は符号Eで表されている。
【0061】
従って、30分の時点で、加熱プロセスが開始され、1.5時間継続する。これに応じて、300kWhが消費される。従って、120分の時点におけるエネルギ収支は、この−300kWhという負の値である。この値は更に1時間、即ち180分の時点まで続くが、それは、この期間、加熱出力Pは消費されず、発電機電力Pも生成されないからである。
【0062】
180分の時点において、風速が丁度スタート(始動)風速VWStartを上回ったため、発電機はいよいよ始動されることができる。ロータブレードは(既に)除氷されており、その他の点でそうでなければ(不都合がなければ)、風力発電装置は本発明に応じて始動準備完了状態にあり、そのため、電力は、存在する風速に応じて即時に生成されることができる。これについては既に上述したとおりである。
【0063】
そして、180分の時点から、エネルギEないしエネルギ収支は増加する。そして、(その時点から)40分を少々過ぎたあたりで、発電機は、ロータブレードの加熱によって消費されたのと同じ大きさのエネルギを生成した。そして、(生成)電力は更に増加し、時間にわたる電力の積算(積分)としてのエネルギは相応に更に少々より大きく増加する。そして、270分の時点では、即ち発電機の始動から1.5時間後には、エネルギはほぼ900kWhである。
【0064】
ここで留意すべきは、エネルギ収支は、風力発電装置を運転するために風速が十分に大きくなった1.5時間後にはっきりとした正の値をとることである。1.5時間とは、ロータブレードが加熱された時間、即ち30分の時点から120分の時点までの時間でもあるため、この例では、ロータブレードを除氷し、以って、風力発電装置を始動準備完了状態にするために、1.5時間が必要とされた。仮にロータブレードの加熱従って除氷が既に行われていなかったとすれば、風力発電装置は、そのため、180分の時点において、まず、着手しなければならなかったであろう。既述の加熱プロセスは定格出力で即ち加熱装置の定格出力PHNで加熱するものであるため、180分の時点で開始される除氷はより迅速なものではなかったであろう。換言すれば、この場合、風力発電装置は、早くても270分の時点で始動準備完了状態になったであろう。即ち、風力発電装置は、早くても270分の時点で電力を生成することができ、早くてもその時に正のエネルギ収支に寄与することができたであろう。
【0065】
しかしながら、実際には、風力発電装置は、まず、加熱出力(電力)を必要としたであろうし、そのため、まず、それ自身もエネルギを消費したであろう。見易さの観点から、この例は図示されていないが、180分の時点で初めて加熱が開始される場合、エネルギは270分の時点まで−300kWhに低下したままであったであろうことは直ぐに分かるであろう。(本発明の)提案に係る解決策によれば、この例では、エネルギ(収支)の増加幅は1.2MWhに達する。
【0066】
図3のこの模式的に示したプロセスは、風力発電装置自身によって初めに(予め)電気エネルギが充填されたエネルギ蓄積装置から加熱に必要なエネルギを獲得することができる場合、とりわけ効率的である。従って、この場合、加熱プロセスのためにネットから高価なエネルギを購入することは不要であろう。更に、風速が小さく、従って何れにせよ少ない風パワー(風による生成電力)がネットに供給される場合、加熱のためにネットからエネルギをなおも取り込むことは、必ずしも役に立たないであろう。それにも拘らず、これは、エネルギ蓄積装置がない場合又はエネルギ蓄積装置が充填されていない場合は、勿論1つのオプションであろう。
以下に、本発明の好ましい態様を付記する。
(態様1)ほぼ水平の回転軸を有する空気力学的ロータ、発電機及び運転装置を含む風力発電装置の運転方法であって、
・風力発電装置電気供給ネットに電気エネルギを供給するために設けられており、及び、
・風力発電装置は発電機の始動のためのスタート状態において準備完了状態に維持されるが、風力発電装置は完全には運転状態にされることができず、とりわけ発電機は始動されることができない、方法。
(態様2)上記の方法において、発電機は、
・十分な風が存在しない、及び/又は、
・電気供給ネットへの給電が可能ではない又は許可されない、及び/又は、
・ローカルルールが、とりわけ不快なシャドー投影や不快な騒音発生を回避するために、発電機の始動を一時的に禁止している、
という理由で始動されることができない。
(態様3)上記の方法において、風力発電装置は、少なくとも1つのエネルギ蓄積装置からのエネルギによって、発電機を始動するためのスタート状態に維持される。
(態様4)上記の方法において、スタート状態において風力発電装置を準備完了状態に維持することは、以下の措置:
・風力発電装置を、とりわけ氷着の回避又は氷の融解のためにロータのロータブレードを、加熱すること、及び、
・風力発電装置を風に整列させること
の少なくとも1つを含む。
(態様5)上記の方法において、風力発電装置は、風に整列するために、そのアジマス配向が風に対する適切な配向から許容角より大きく逸れる及び/又は予め設定される待機時間より長く逸れるとすぐに、そのアジマス角が調整され、許容角の大きさ及び/又は待機時間の長さは、
・発電機が運転状態にあるか否か、及び/又は
・風速の大きさの程度に依存し、とりわけ、風速が小さい程、許容角の大きさ及び/又は待機時間の長さはより大きい。
(態様6)上記の方法において、無風の場合又は風向の測定が不良である場合、風に対する風力発電装置の整列、即ちアジマス位置の調整は、観測マスト又は気象ステーションから伝達された風向に基づいて実行される。
(態様7)上記の方法において、
・発電機が運転状態にある場合、第1許容角及び/又は第1待機時間が選択される、
・発電機が運転状態にない場合、第2許容角及び/又は第2待機時間が選択される、任意的に、
・発電機が運転状態になくかつ風向が観測マスト又は気象観測ステーションから得られる場合、第3許容角及び/又は第3待機時間が選択される。
(態様8)上記の方法において、天気予報に基づき、発電機を含む風力発電装置の運転のために十分な風が、とりわけロータブレードの加熱のために必要なエネルギを再び生成できる程に強くかつ持続的な風が、準備期間内において期待できる場合、とりわけロータブレードの、加熱装置が始動される。
(態様9)上記の方法において、発電機が運転状態にない場合にも、氷着の阻止及び/又は除去のための制御装置が運転される。
(態様10)上記の方法において、
・風力発電装置、とりわけ発電機が始動可能であることを期待することが可能な始動時点が計算又は予測され、及び、
・該始動時点前の予め設定される事前運転時間に風力発電装置が発電機の始動のためのスタート状態にもたらされ、その状態で発電機が始動されるまで準備完了状態に維持される。
(態様11)上記の何れかの方法を実行するよう構成された風力発電装置。
(態様12)上記の風力発電装置において、風力発電装置又はこれに接続された電気的な装置ネットワークがエネルギを蓄積するためのかつ電気エネルギを供給するための少なくとも1つのエネルギ蓄積装置を有し、
エネルギ蓄積装置は、風力発電装置のロータブレードを加熱するために十分なエネルギを蓄積できるように、とりわけ完全に氷着されたロータブレードの氷を融解できるほど多くのエネルギを蓄積できるように及び/又はロータブレードを予め設定される加熱時間の間に最大の加熱出力で加熱できるほど多くのエネルギを蓄積できるように、容量が設定され、該加熱時間は有利には少なくとも1時間、とりわけ少なくとも3時間である。
(態様13)上記の風力発電装置を少なくとも2つ含むウインドパーク。
(態様14)上記のウインドパークにおいて、ウインドパーク内に全体として風力発電装置のロータブレードを加熱するために十分なエネルギを蓄積できるように、とりわけウインドパーク内のすべての風力発電装置の完全に氷着されたロータブレードの氷を融解できるほど多くのエネルギを蓄積できるように及び/又はウインドパークのすべての風力発電装置のロータブレードを予め設定される加熱時間の間に最大の加熱出力で加熱できるほど多くのエネルギを蓄積できるように、容量が設定された少なくとも1つのエネルギ蓄積装置が備えられ、該加熱時間は有利には少なくとも1時間、とりわけ少なくとも3時間である。

図1
図2
図3