(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6590943
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】風力発電装置のロータブレードの調整のための調整装置
(51)【国際特許分類】
F03D 7/04 20060101AFI20191007BHJP
【FI】
F03D7/04 H
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-552803(P2017-552803)
(86)(22)【出願日】2016年4月7日
(65)【公表番号】特表2018-510997(P2018-510997A)
(43)【公表日】2018年4月19日
(86)【国際出願番号】EP2016057619
(87)【国際公開番号】WO2016162421
(87)【国際公開日】20161013
【審査請求日】2017年11月22日
(31)【優先権主張番号】102015206488.3
(32)【優先日】2015年4月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512197272
【氏名又は名称】ヴォッベン プロパティーズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WOBBEN PROPERTIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】エデン、ゲオルク
【審査官】
冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2006/105901(WO,A1)
【文献】
特公昭16−001795(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電装置のロータブレードの迎角の調整のための調整装置であって、
該調整装置は、
・励磁巻線(324、334)と電機子巻線(322、332)を夫々備える電気的に直列に相互接続された少なくとも2つの直流モータ(320、330)を有し、
該少なくとも2つの直流モータ(320、330)は、
・少なくとも前記巻線の部分が電気的に直列に互いに相互接続されており、
該少なくとも2つの直流モータ(320、330)は夫々1つの第2励磁巻線(326、336)を有し、これらの第2励磁巻線(326、336)は互いに電気的に直列に相互接続されており、
該少なくとも2つの直流モータ(320、330)の第2励磁巻線(326、336)は該少なくとも2つの直流モータ(320、330)の電機子巻線(322、332)と電気的に直列に相互接続されている、
調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の調整装置において、
少なくとも2つの直流モータ(320、330)は機械的に連結されている、
調整装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の調整装置において、
少なくとも2つの直流モータ(320、330)の電機子巻線(322、332)は電気的に直列に相互接続されている、
調整装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の調整装置において、
少なくとも2つの直流モータ(320、330)の励磁巻線(324、334)は電気的に直列に相互接続されている、
調整装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の調整装置において、
少なくとも2つの直流モータ(320、330)の電機子巻線(322、332)と少なくとも2つの直流モータ(320、330)の励磁巻線(324、334)は一緒に電気的に直列に相互接続されている、
調整装置。
【請求項6】
請求項1に記載の調整装置において、
互いに電気的に直列に相互接続されている励磁巻線(324、334)は、他の巻線(326、336、322、332)と電気的に並列に、即ち、電機子巻線(322、332)と電気的に直列に相互接続されている第2励磁巻線(326、336)と電気的に並列に相互接続可能に構成されている、
調整装置。
【請求項7】
請求項1又は4に記載の調整装置において、
少なくとも2つの直流モータの第2励磁巻線(326、336)は少なくとも2つの直流モータ(320、330)の励磁巻線(324、334)に電気的に直列に相互接続されている、
調整装置。
【請求項8】
請求項1又は7に記載の調整装置において
第2励磁巻線は、当該第2励磁巻線がスイッチによって接続及び/又は分離されるよう切換え可能であるように、夫々接続切換え可能な巻線として構成されている、
調整装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載の調整装置において、
該調整装置は、少なくとも2つの直流モータ(320、330)の電機子電圧及び励磁電圧を制御するよう構成された電圧源(310)を有する、
調整装置。
【請求項10】
少なくとも1つの調整可能なロータブレードを有する風力発電装置であって、
該風力発電装置は、少なくとも1つのロータブレードの迎角を調整するために請求項1〜9の何れかに記載の調整装置を少なくとも1つ有する、
風力発電装置。
【請求項11】
風力発電装置のロータブレードの迎角の調整のための調整装置の運転方法であって、
少なくとも2つの直流モータが使用されかつ調整のために制御され、請求項1〜9の何れかに記載の調整装置及び/又は請求項10に記載の風力発電装置が使用される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置のロータブレードの迎角(ピッチ角)の調整装置及び調整方法に関する。更に、本発明は、そのような調整装置を有する風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風から電流(電気)を生成し、これを電気供給ネットに供給する風力発電装置は一般的に知られている。そのような風力発電装置の一例は
図1に模式的に示されている。
【0003】
通常、現代の風力発電装置はロータブレード調整装置即ちロータブレードの迎角(ピッチ角)の調整のための装置を有する。そのような調整装置は、ピッチ調整装置又は簡略化してピッチ装置とも称され得るが、迎角の調整によって、風力発電装置の放出出力(生成電力)を制御することも、風速が大きい場合に風力発電装置の負荷を制限することもできる。調整のために、この調整装置は、ピッチモータとも称される1又は複数のモータを有する。迎角の調整のための調整プロセスはピッチングとも称される。
【0004】
風力発電装置の出力の一層の増大に対する要求により、とりわけ、ロータブレードは大型化されている。そのため、ロータブレード調整装置に対する要求も大きくなっている。とりわけロータブレード調整装置のモータ出力は、ロータブレードのサイズと共に大きくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP 1 337 755 A1
【特許文献2】DE 10 2004 005 169 B3
【特許文献3】DE 10 2007 053 613 A1
【特許文献4】DE 297 22 109 U1
【特許文献5】DE 692 25 995 T2
【特許文献6】DE 893 962 B
【特許文献7】DE 1937 306 A
【特許文献8】FR 972 025 A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
文献EP 1 337 755から、風力発電装置のロータブレードの迎角の調整のための複数のモータを有する調整装置が知られている。この目的のため、この文献は、とりわけ、複数のモータの電気的な相互接続を記載している。この方策の欠点は、とりわけ、複数のモータ間に不等な負荷が発生し得、これにより、モータの許容されない発熱や、更には不所望な磁界弱化(減衰:Feldschwaechung)が起こり得るという状況である。
【0007】
本願の優先権の基礎をなすドイツ特許出願について、ドイツ特許商標庁は以下の文献をサーチした:DE 10 2004 005 169 B3、DE 10 2007 053 613 A1、DE 297 22 109 U1、DE 692 25 995 T2、DE 893 962 B、DE 1937 306 A、FR 972 025 A及びEP 1 337 755 A1。
【0008】
それゆえ、本発明の課題は、上述の問題の少なくとも1つに取り組むことである。とりわけ、従来技術の改善、及び、少なくとも2つの直流モータの均等な負荷を可能にする調整装置の提案が望まれる。少なくとも、既知の方策に対して、代替的な方策の提案が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に応じ、請求項1に記載の調整装置が提案される。
即ち、本発明の一視点により、風力発電装置のロータブレードの迎角の調整のための調整装置が提供される。該調整装置は、
・
励磁巻線と電機子巻線を夫々備える電気的に直列に相互接続された少なくとも2つの直流モータを有し、
該少なくとも2つの直流モータは、
・少なくとも前記巻線の部分が電気的に直列に互いに相互接続されており、
該少なくとも2つの直流モータは夫々1つの第2励磁巻線を有し、これらの第2励磁巻線は互いに電気的に直列に相互接続されており、
該少なくとも2つの直流モータの第2励磁巻線は該少なくとも2つの直流モータの電機子巻線と電気的に直列に相互接続されている(形態1・基本構成)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
風力発電装置のロータブレードの迎角(ピッチ角)の調整のための調整装置が提案される。調整装置は少なくとも2つの直流モータを有し、少なくとも2つの直流モータは少なくとも部分的に(abschnittsweise)電気的に直列に(in Serie)互いに相互接続されている。
【0011】
直流モータは、直流によって駆動されかつ非可動部分即ちステータと可動部分即ちロータを有する回転型電気機械である。伝統的な直流モータは、ロータが直流機の内側部分を構成しかつ少なくとも1つの巻線即ち電機子巻線を有し、かつ、ステータが永久励磁される即ち永久磁石で励磁されるか又は少なくとも1つの巻線即ち励磁巻線を備えるよう、構成されている。
【0012】
提案に係る調整装置の少なくとも2つの直流モータは励磁及び界磁巻線ないし電機子巻線を有し、これらは完全に又は少なくとも部分的に(abschnittsweise)電気的に直列に相互接続されることができる。直列的電気的相互接続(Verschaltung)は直列接続(Reihenschaltung)と称することも可能である。少なくとも2つの直流モータの少なくとも部分的な相互接続のために、例えば、少なくとも2つの直流モータの励磁巻線及び/又は電機子巻線は電気的に直列に相互接続されることができる。巻線の夫々一部のみが直列に相互接続されることも考慮に値する(可能である)。少なくとも2つの直流モータの完全な相互接続のために、とりわけ、すべての電機子及び励磁巻線が互いに電気的に直列に相互接続される。更に、少なくとも2つの直流モータの電機子巻線及び/又は励磁巻線が複数の部分に、とりわけ複数の巻線部分に分割される(区分けされる:aufgeteilt)ことも考慮に値し得る。この場合、これらの巻線部分は、正確には電機子及び励磁巻線のように、とりわけ2端子回路網(Zweipol)として、電圧源によって駆動(制御)され、とりわけ電流(電気)が供給される。
【0013】
直列的電気的相互接続によって、同じ電流が強制的にそのような直列接続の巻線(複数)を流れさせられるが、これはキルヒホッフの節点(ノード)法則に基礎付けられている。従って、少なくとも、少なくとも2つの直流モータの電気的に直列に相互接続された巻線(複数)ないし巻線部分(複数)について、同じ電流がこれらを流れることが達成される。かくして、少なくとも2つの直流モータは、例えば少なくとも2つの直流モータの一方が例えば当該直流モータの発熱によって変化された内部抵抗を有するか否かに依存することなく、1つの直流モータの比例的な電流−トルク関係に基づき、同じ機械的トルク(モーメント)、とりわけ同じ駆動力を有する。並列接続の場合、少なくとも2つの直流モータの内部抵抗が不等であれば、不都合なことに、少なくとも2つの直流モータの内部の電流は互いに異なり、そのため、機械的トルクも互いに異なることになるであろう。このようなことは、今や(本発明により)、回避される。
【0014】
有利には、少なくとも2つの直流モータは機械的に連結(gekoppelt)されている。
【0015】
従って、少なくとも2つの直流モータは、直接的に又は間接的に、とりわけ互いに、連結されることができる。少なくとも2つの直流モータの直接的機械的連結の場合、ロータ(複数)は共通のシャフト(回転軸)に配設されること又はこの共通のシャフトを形成することができる。このために、例えば、少なくとも2つの直流モータの電機子(ロータ)巻線は同じシャフトに配され、運転時、これを駆動する。
【0016】
少なくとも2つの直流モータの間接的機械的連結の場合、これら(のモータ)は別々のロータを有する。従って、少なくとも2つの直流モータの電機子巻線は、それらが作用する異なるシャフトに配されている。ロータ間の機械的連結は、例えばリングギア(Zahnkranz)のような共通の連結要素を介して行うことができる。例えば、そのようなリングギアはロータブレード翼根に配設されることができ、そのため、これらの2つのロータはこのリングギアを介して機械的に連結されており、翼根に対し同時に共通に作用してロータブレードの迎角を調整することができる。
【0017】
少なくとも2つの直流モータの機械的連結によって、駆動力(複数)は機械的に一様に(均等に)少なくとも2つの直流モータに配分され(割り当てられ)、このために、直列接続によって、電気的に同じトルクの生成も達成される。
【0018】
夫々2つのモータが対をなして1つのリングギアに作用すること、とりわけ夫々2つの電気的に互いに列をなして(直列に)接続されたモータが1つのモータペアを形成しかつ空間的にも互いに隣接して配設されることが、一実施形態により提案される。有利には、2つ、3つ又は4つ以上のそのようなモータペアが1つのリングギアに配される。かくして、各モータペアは、直列接続の上記の利点を利用することができる。
【0019】
有利には、複数のモータはモータ収容部に収容され、そこからリングギアに作用する(噛合する)。この場合、モータ収容部は、ピッチモータ(複数)の位置が、とりわけ対をなして、変化可能であるように構成される。有利には、そのために、ピッチモータよりも多数の収容部が設けられる。これにより、その都度1つのピッチモータ又はモータペアが1つの収容部又は2つの収容部から取り出され、所望の位置の従前は空であった収容部に配されることにより、リングギアの噛合がより少ない他の部分に作用することができる。
【0020】
有利には、少なくとも2つの直流モータの電機子巻線は電気的に直列に相互接続されている。
【0021】
そのため、電機子巻線によるトルクの生成は、両者の、又は複数の、モータについて同じ程度で保証することができる。なぜなら、両者の電機子巻線には同じ電流が流れるからである。この場合、電気的に直列に相互接続される電機子巻線(複数)の電気的相互接続は、少なくとも2つの直流モータの励磁巻線に対し部分的に(teilweise)又は完全に電気的に直列に及び/又は電気的に並列に構成可能である。例えば、電機子巻線(複数)は互いに電気的に直列に相互接続され、他方、励磁巻線(複数)は互いに対し電気的に分離されかつ電機子巻線から電気的に分離されて相互接続されることができる。かくして、電気的に直列に相互接続された電機子巻線は励磁巻線から分離されて給電されることができる。従って、複数の異なる特性曲線群従ってトルク推移(複数)を、例えば停止時の大きなトルクを、制御によって達成することができる。同時に、複数のモータ間でトルクが相違することを回避することができる。
【0022】
少なくとも2つの直流モータの電機子巻線の電気的に直列な相互接続によって、少なくとも2つの直流モータの電機子巻線には同じ電流が流れる。かくして、少なくとも2つの直流モータは電機子側において同じ負荷を受ける。
【0023】
少なくとも2つの直流モータの励磁巻線を電気的に直列に相互接続することが、更なる一形態により提案される。
【0024】
励磁巻線(複数)は、少なくとも2つの直流モータの電機子巻線(複数)に対し部分的に(teilweise)又は完全に電気的に直列に及び/又は電気的に並列に構成可能である。例えば、電気的に直列に相互接続された励磁巻線は低い抵抗をもって構成され、かつ、少なくとも2つの直流モータの電機子巻線と電気的に直列に相互接続されることができる。これによって、そのように相互接続された直流モータは、直巻機的挙動(Reihenschlussverhalten)即ち回転数に強く依存する(回転数強依存性)トルク挙動(特性)を有する。ステータの鉄心を積層構造的に構成すること及び従って少なくとも2つの直流モータをユニバーサルモータとして、とりわけ交流電圧も利用可能な単相直巻モータとして構成することも考慮に値し得る。
【0025】
少なくとも2つの直流モータ励磁巻線の電気的に直列な相互接続によって、これらの直流モータの励磁巻線には同じ電流が流れる。かくして、少なくとも2つの直流モータは励磁側において同じ負荷を受ける。
【0026】
更に、本発明においては、少なくとも2つの直流モータの電機子巻線と少なくとも2つの直流モータの励磁巻線を一緒に(gemeinsam)電気的に直列に相互接続することも可能である。この場合、少なくとも2つの電機子巻線と少なくとも2つの励磁巻線からなる(1つの)直列接続が形成されるであろう。
【0027】
少なくとも2つの直流モータの電機子巻線(複数)と励磁巻線(複数)の完全(全部)かつ一緒の相互接続によって、少なくとも2つの直流モータの電機子巻線にも励磁巻線にも同じ電流が流れる。従って、少なくとも2つの直流モータは完全に互いに電気的に連結され、かつ、共通の直巻機的挙動(特性)を有する。とりわけ、そのような相互接続のために、励磁巻線を低抵抗的に構成しかつ直流モータを機械的に連結することが提案される。これによって、少なくとも2つの直流モータが回転数強依存性トルク挙動(特性)を有することが達成される。このことは、ロータブレード調整の場合のように大きな起動トルクが必要とされる場合、とりわけ有利である。
【0028】
好ましい一実施形態によれば、少なくとも2つの直流モータは夫々1つの第2励磁巻線を有し、これらの第2励磁巻線は互いに電気的に直列に相互接続されている。
【0029】
第2励磁巻線は第2の励磁磁界を生成し、第2励磁磁界は例えばそれ以外のないし第1励磁磁界と同じ方向及び同じ向き(Richtungssinn)を有する。
【0030】
例えば、夫々第2の又は夫々第1の励磁巻線を夫々の電機子巻線に対する他励巻線として構成し、かつ、電機子巻線と夫々の励磁巻線を電気的に直列に相互接続することが提案される。これにより、少なくとも2つの直流モータはロータブレードの迎角の調整のためのとりわけ有利な運転挙動を有する。なぜなら、この直列的相互接続はすべてのモータに同じ電流が流れることを保証すること及び他励(式励磁)によって目標を定めて影響を及ぼす(制御する)ことができるからである。第2励磁巻線を、減速装置として、とりわけモータブレーキとして、作用(機能)するよう構成することも考慮に値し得る。
【0031】
格別に好ましい一実施形態によれば、少なくとも2つの直流モータは夫々1つのないし第2の励磁巻線を有し、第2励磁巻線は、少なくとも2つの直流モータの電機子巻線及び/又はそれ(第2励磁巻線)以外の励磁巻線に電気的に互いに直列に相互接続される。
【0032】
代替的に、互いに電気的に直列に相互接続される第1励磁巻線(複数)は、それ以外の巻線(複数)に対し電気的に並列に相互接続されることが可能であり、これは一実施形態により提案される。これにより少なくとも2つの直流モータは直巻機的挙動(特性)(Reihenschlussverhalten)と分巻機的挙動(特性)(Nebenschlussverhalten)を併せ持ち、かくして、マルチプルモータのように、とりわけダブルモータのように、構成され、この場合、各直流モータはとりわけ複巻モータ(Mehrfachmotor)のように構成される。したがって、複巻モータ(compound-wound motor)の利点を利用することができるが、この場合、これらのモータが完全には同じ挙動を有しないという危険はあり得る。
【0033】
更に、第2励磁巻線(複数)が夫々スイッチによって接続及び/又は分離するよう切換え可能であるように、第2励磁巻線を夫々接続(・分離)切換え可能な(zuschaltbar)巻線として構成することが提案される。とりわけロータブレードの緊急時調整の場合、第2励磁巻線は夫々電機子巻線に直列に接続するよう切換えられることができる。第2励磁巻線を直列に接続するよう切換えることによって、直流モータ(複数)はこの場合直巻機的挙動(特性)、即ち、ロータブレードの調整のために格別に大きな起動トルクを生成できる挙動(特性)、を有する。電機子巻線に第2励磁巻線を直列接続することによって、この第2励磁巻線は、1つの方向(向き)にのみ補完的に(補償的に)作用する。この方向は、ロータブレードの緊急時調整のための方向に対応するよう選択される。
【0034】
格別に好ましい一実施形態では、第2励磁巻線は機械的に第1励磁巻線に配され、とりわけ夫々ステータの同じスロット(溝)に配されることができる。
【0035】
電圧源は調整装置を管理(制御)し、提案に係る直列的相互接続によって関連するモータのために夫々同じ電流が生成される。かくして、調整ユニット(装置)のモータ(複数)は、従って調整ユニットそれ自体は、簡単かつ同時に同じ態様で制御されることができる。少なくとも2つの直流モータの制御の格別に好ましい一例は、直列に相互接続された電機子巻線(複数)によって行われる。このために、少なくとも2つの直流モータの第1及び第2励磁巻線(複数)は直列に相互接続され、一定の電圧が与えられる。少なくとも2つの直流モータの電機子巻線(複数)は、同様に直列に相互接続され、(フィードバック)制御可能な可変の電圧によって制御される。そのような制御では格別に有利なことに、両モータのトルクを対称化する電子的(フィードバック)制御は必要でない。
【0036】
更に、上記の実施形態の1つに応じた調整装置を少なくとも備えた風力発電装置が提案される。従って、調整装置の利点は風力発電装置に役立つ。この場合、とりわけ冗長性を達成するために及び/又は必要な出力を分配(分割割り当て)するために、複数のピッチモータを設けることができる。提案に係る相互接続によって、そのような複数のピッチモータは一様な(等しい)、その際単純かつ信頼性のある態様で運転されることができる。
【0037】
風力発電装置のロータブレードの迎角(ピッチ角)の調整のための調整装置の(提案に係る)運転方法においては、少なくとも2つの直流モータが使用されかつ調整のために制御され、上記の実施形態の少なくとも1つに応じた調整装置及び/又は上記の風力発電装置が使用される。有利には、少なくとも2つの直流モータは、とりわけ調整装置の上記の実施形態の少なくとも1つに関連して上述したように制御される。
【0038】
ここに、本発明の好ましい形態を示す。
(形態1)上記基本構成参照。
(形態2)形態1の調整装置において、少なくとも2つの直流モータは機械的に連結されていることが好ましい。
(形態3)形態1又は2の調整装置において、少なくとも2つの直流モータの電機子巻線は電気的に直列に相互接続されていることが好ましい。
(形態4)形態1〜3の何れかの調整装置において、少なくとも2つの直流モータの励磁巻線は電気的に直列に相互接続されていることが好ましい。
(形態5)形態1又は2の調整装置において、少なくとも2つの直流モータの電機子巻線と少なくとも2つの直流モータの励磁巻線は一緒に電気的に直列に相互接続されていることが好ましい。
(形態6)形態1の調整装置において、互いに電気的に直列に相互接続されている励磁巻線は、他の巻線と電気的に並列に、即ち、電機子巻線と電気的に直列に相互接続されている第2励磁巻線と電気的に並列に相互接続可能に構成されていることが好ましい。
(形態7)形態1又は4の調整装置において、少なくとも2つの直流モータの第2励磁巻線は少なくとも2つの直流モータの励磁巻線に電気的に直列に相互接続されていることが好ましい。
(形態8)形態1又は7の調整装置において、第2励磁巻線は、当該第2励磁巻線がスイッチによって接続及び/又は分離されるよう切換え可能であるように、夫々接続切換え可能な巻線として構成されていることが好ましい。
(形態9)形態1〜8の何れかの調整装置において、該調整装置は、少なくとも2つの直流モータの電機子電圧及び励磁電圧を制御するよう構成された電圧源を有することが好ましい。
(形態10)少なくとも1つの調整可能なロータブレードを有する風力発電装置であって、該風力発電装置は、少なくとも1つのロータブレードの迎角を調整するために形態1〜9の何れかの調整装置を少なくとも1つ有することが好ましい。
(形態11)風力発電装置のロータブレードの迎角の調整のための調整装置の運転方法であって、該方法において、少なくとも2つの直流モータが使用されかつ調整のために制御され、形態1〜9の何れかの調整装置及び/又は形態10の風力発電装置が使用されることが好ましい。
本発明は以下において例示的に実施例を用い添付の図面を参照して詳細に説明する。
なお、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は専ら発明の理解を助けるためのものであり、本発明を図示の態様に限定することは意図しない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図2】ピッチモータ(複数)を伴ったロータブレード翼根のリングギア(歯付ホイール:Zahnkranz)の一例の模式図。
【
図3】2つのピッチモータの電気的に直列での接続の一例の模式図。
【実施例】
【0040】
図1は、タワー102とナセル(ゴンドラ)104を有する風力発電装置100の一例を示す。ナセル104には、3つのロータブレード108とスピナ110を有するロータ106が配設されている。ロータ106は、運転時、風によって回転運動し、それによって、ナセル104内の発電機を駆動する。
【0041】
図2は、機械的連結要素としてリングギア210を有する機械的連結200の一例を示す。リングギア210には、2つのピッチモータ220及び230が作用するが、これらのモータはリングギア210を介して(互いに)機械的に連結されている。そのような直流モータはこの場合ピッチモータ220及び230として使用可能であり、その際、少なくとも1つの実施形態に応じた直列的相互接続が使用される。機械的連結要素210は、そのため、外側歯列(外歯)を有するリングギア210として構成されており、ロータブレード翼根に固定的に結合されているため、両ピッチモータ220及び230によるリングギア210の駆動によって、関連するロータブレードは回転されることができる。これらの2つのピッチモータ220及び230は、同じ間隔でリングギア210の周に配されており、ピッチモータ220ないし230のロータシャフトに夫々結合されている相応のピニオンを介して、リングギアの外側歯列(外歯)に噛合する。伝統的な直流モータの場合、直流モータの回転可能に軸受支持される部材即ちロータは電機子とも称され、内部においてシャフトに配されている。直流モータをアウターロータ型として構成すること及び/又はロータブレードを内側歯列(内歯)を有するよう構成すること及び直流モータを内側歯列(内歯)の内側に配設することも考慮に値し得る(可能である)。
【0042】
図3は、第1及び第2直流モータ320及び330の電気的相互接続300の特別に好ましい一例を示す。これらの直流モータ320及び330は夫々
図2に示したような第1及び第2ピッチモータ220及び230として使用可能である。更に、電気的相互接続300は電圧源310を有し、電圧源310は3つの電圧供給出力端312、314及び316を有する。直流モータ320及び330は夫々電機子巻線322及び332、第1励磁巻線324及び334及び第2励磁巻線326及び336を有する。直流モータ320の電機子巻線322及び第2励磁巻線326は、直流モータ330の電機子巻線332及び第2励磁巻線336と同様に電気的に直列に相互接続されている。そのように相互接続された電機子及び励磁巻線322及び326並びに332及び336は、同様に、互いに電気的に直列に相互接続されており、電圧源310の電圧供給出力端312に接続されているため、これらの4つの巻線は一緒に共通の直列接続で相互接続されている。直流モータ320及び330の第1励磁巻線324及び334は、同様に、電気的に直列に相互接続され、電圧源310の電圧供給出力端314に接続されている。直列に相互接続された電機子巻線及び第2励磁巻線(322及び326)並びに(332及び336)は、直列に相互接続された第1励磁巻線324及び334に対し共通に並列をなして相互接続されている。
【0043】
有利には、これらの2つの第2励磁巻線326及び336は夫々スイッチによって接続又は分離(するよう)切換え(zu- oder wegschaltet)可能に構成される。有利には、それに依存して異なる複数の電圧源が使用されるが、これらは電流コントローラ(Stromsteller)とも称され得る。その限りにおいて、
図3に示した実施例では、電圧源310は、第2励磁巻線326及び336を用いた運転のための、とりわけ緊急時調整のための、電流コントローラを構成する。
【0044】
かくして、2つの直流モータ320及び330は部分的に電気的に直列に相互接続されかつ複合機(Verbundmaschine)として構成されており、そのように相互接続された2つの直流モータは分巻モータ(Nebenschlussmotor)と直巻モータの性質を併せ持っている、即ち複合的巻線方式にされている(複巻モータとして機能する:kompoundiert)。巻線の構成及び電圧源310によるそれらの制御に応じて、2つの直流モータ320及び330は異なる運転挙動を有する。電気的相互接続300が例えばオーバ(高次)複巻化(ueberkompoundiert)されて構成されていれば、2つの直流モータ320及び330は主として直巻機的挙動を有する、即ち大きな起動トルク(Anzugsmoment)を有する。これに対し、電気的相互接続300が例えばアンダ(低次)複巻化(unterkompoundiert)されて構成されていれば、2つの直流モータ320及び330は主として分巻機的挙動を有する、即ち大きな回転数安定性を有する。
【0045】
図3に示した電気的相互接続において格別に有利なことは、2つの直流モータ320及び330を電圧源310を介して制御する可能性である。これにより、良好な運転挙動を達成することができる。提案に係る直列接続によって、2つのピッチモータ320及び330の同じトルクを生成することができ、そのため、
図2に示した連結(カップリング)も良好に運転することができ、2つのピッチモータ(
図3の320及び330ないし
図2の220及び230)の一方が小さな例えば熱的に引き起こされる不正確性(エラー)によって調整作業の大部分を担うという危険は生じない。更に、有利なことに、ロータブレードのサイズの増大に応じて、調整装置は1つの直流モータ又は更なる複数の直流モータの分だけ拡大されることができる。この場合、すべての直流モータが同じタイプであることが、とりわけ提案される。
【0046】
図4は、
図2のピッチモータ220ないし230として使用可能な直流モータ430の好ましい一例を示す。励磁巻線434及び436並びに電機子巻線432に加えて、ピッチモータ430は電気ブレーキ438及び電気ファン440を有する。界磁ブレーキ(Feldblemse)として構成されている電気ブレーキ438及び電気ファン440は電圧源410によって制御される。この場合、界磁ブレーキ438は、直流モータの電機子を制動する方式で直流モータ430の励磁磁界を弱める(減殺する)ことができるように構成されている。界磁ブレーキ438の制御は電圧供給出力端416及び418を介して行われる。直流モータ430の電気ファン440は電圧源410によって制御され、そのため、直流モータ430は、停止している場合でも、ファン440によって引き続き冷却されることができる。電気ファン440の制御は電圧供給出力端420及び422を介して行われる。
【0047】
以下に本発明の態様を付記する。
[付記1]風力発電装置のロータブレードの迎角の調整のための調整装置。
該調整装置は、少なくとも2つの直流モータを有し、
該少なくとも2つの直流モータは、少なくとも部分的に電気的に直列に互いに相互接続されている。
[付記2]上記の調整装置において、少なくとも2つの直流モータは機械的に連結されている。
[付記3]上記の調整装置において、少なくとも2つの直流モータの電機子巻線は電気的に直列に相互接続されている。
[付記4]上記の調整装置において、少なくとも2つの直流モータの励磁巻線は電気的に直列に相互接続されている。
[付記5]上記の調整装置において、少なくとも2つの直流モータの電機子巻線と少なくとも2つの直流モータの励磁巻線は一緒に電気的に直列に相互接続されている。
[付記6]上記の調整装置において、少なくとも2つの直流モータは夫々1つの第2励磁巻線を有し、これらの第2励磁巻線は互いに電気的に直列に相互接続されている。
[付記7]上記の調整装置において、少なくとも2つの直流モータの第2励磁巻線は少なくとも2つの直流モータの電機子巻線及び/又は励磁巻線に電気的に直列に相互接続されている。
[付記8]上記の調整装置において、第2励磁巻線は夫々接続切換え可能な巻線として構成されている。
[付記9]上記の調整装置において、該調整装置は、少なくとも2つの直流モータの電機子電圧及び励磁電圧を制御するよう構成された電圧源を有する。
[付記10]少なくとも1つの調整可能なロータブレードを有する風力発電装置。該風力発電装置は、少なくとも1つのロータブレードの迎角を調整するために付記1〜9の何れかに記載の調整装置を少なくとも1つ有する。
[付記11]風力発電装置のロータブレードの迎角の調整のための調整装置の運転方法。該方法においては、少なくとも2つの直流モータが使用されかつ調整のために制御され、付記1〜9の何れかに記載の調整装置及び/又は付記10に記載の風力発電装置が使用される。