【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の根元にあるこれらの課題は,請求項1による電解システム並びに請求項12による還元方法により解決される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項の対象である。
【0020】
二酸化炭素有効利用のための本発明による電解システムは、陽極室内の陽極、陰極室内の陰極及び少なくとも1つの膜を備えた電解セルを有し、陰極室は、二酸化炭素用の第1の供給口を有し、供給された二酸化炭素を陰極と接触させるように構成されている。この場合、膜とは、機械的に分離する層、例えばダイアフラム、を意味し、陽極室に生じる電解生成物及び陰極室内に生じる電解生成物を互いに分離する。これはセパレータ膜又は分離層と称することもできる。電解生成物はガス状物質でもあり得るので、有利には10ミリバール以上の高いバブルポイントを有する膜が使用される。いわゆるバブルポイントとは、使用される膜を定義するパラメータであって、ガス流がそれを通して入る膜の2つの側面間の圧力差ΔPを示す。
【0021】
二酸化炭素は、化学的に結合した形で、例えば電解質における炭酸塩又は炭酸水素塩として、二酸化炭素用の第1の供給口を介して陰極室に導入されるが、また、電解質から分離した炭酸ガス又は電解質に物理的に溶解した二酸化炭素も、第1の供給口を介して陰極室に導入される。特に問題となるのは、電解質及び反応物の導入である。二酸化炭素がガス状で又は溶解して陰極室に入る場合でも、その一部は、上述の平衡反応に従って、特に塩基性のpH値では、電解質中に含まれる物質と化学的に結合する。
【0022】
電解システムは、更に、プロトン供与体ユニットを有し、陰極室は、プロトン用の第2の供給口を介してプロトン供与体ユニットと接続される。プロトン用の第2の供給口は、プロトンが陰極室において陰極表面と接触させられるように構成されている。この場合、プロトン供与体ユニットは、遊離したプロトン、即ち、水素カチオン、が実際に供給されることにより定義づけられる。水素(H
2)又は他の水素化合物は、本発明によるプロトン供与体ユニットの意味でのプロトンではない。
【0023】
プロトン供与体ユニットにより、電解システム内に局所的なpH値の低下が生じ、これにより、陰極の反応界面における物理的に溶解した二酸化炭素の形成が促進され、物質変換が著しく高められる。
【0024】
典型的には、電解システムには、プロトン貯留槽及びプロトン透過性膜を有するプロトン供与体ユニットが設けられる。この場合、プロトン透過性膜は、陰極室へのプロトンの第2の供給口として機能する。プロトン貯留槽がプロトンの連続的な補給の利点を供するのに対し、プロトン透過性膜は、陰極室への純粋なイオン供給又はプロトン供給を保証し、同時に、ほかの分子、液体又はガスを抑留するのに役立つ。プロトン透過性膜は、好適には、スルホン化ポリテトラフルオロエチレンを含有する。或いは、カチオン交換膜をプロトン透過性膜として使用することもできる。
【0025】
本発明の一実施形態では、電解システムは、プロトン貯留槽として、特にブレンステッド酸を含む酸貯留槽を有する。ブレンステッド酸は、例えば硫酸、燐酸、硝酸、塩酸又は種々の有機酸、例えば酢酸若しくは蟻酸、である。ブレンステッドによる酸の定義は、酸を、いわゆるプロトンドナーとして、即ちプロトン、即ち正に荷電された水素イオン、を放出できる粒子として、規定する。pKa値の定義、即ち式1、によれば、pKa値が炭酸塩、炭酸水素塩又は炭酸の水溶液のpKa値よりも相応して小さいブレンステッド酸を使用するのが有利である。小さいとは、この場合、酸がより強いことを意味する。
【0026】
酸貯留槽の一つの利点は、これにより付加的な外部エネルギー入力を必要としない比較的連続的なプロトン源が作られることにある。
【0027】
本発明の別の実施形態では、電解システムは、スルホン化ポリテトラフルオロエチレンを含有する第2のプロトン透過性膜を有する。有利には、プロトン透過性膜としてはナフィオン(Nafion)(商品名)製の膜が使用される。この膜は、例えば多層に又は多孔状に、形成される。第1の膜としては、即ちセパレータ膜としては、他のプロトン供与体ユニットと同様に、プロトン透過性膜を使用することができる。
【0028】
典型的には、電解システムの陰極室は、陰極液/二酸化炭素混合物を含有し、陰極液は、炭酸アニオン及び/又は炭酸水素アニオンを含有する。更に、電解システムの陰極室の陰極液は、特にアルカリ金属イオン及び/又はアンモニウムイオン(NH
4+)を含有する。アルカリ金属としては、周期表の第1主族からの化学元素であるリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム及びフランシウムが挙げられる。炭酸塩及び/又は炭酸水素塩を含有する電解質は、化学的に結合された二酸化炭素を含有するという利点を持つ。その代わりに又はそれに加えて、二酸化炭素は、溶解された形態又はガス状で陰極室に導入される。陰極室内の陰極液のpH値は、4〜14の値が有利である。
【0029】
本発明の別の有利な実施形態では、電解システムは、プロトン貯留槽として機能する陽極室を含む。この場合、例えば単一のプロトン透過性膜が同時に陰極室と陽極室との分離機能及び陰極室へのプロトン供給機能を果たす電解システムを使用することができる。或いは、プロトン貯留槽として機能する陽極室は、膜及び多孔形状の陽極を介して陰極室に接続される。別の代替例は、2つの、例えば結合された、プロトン貯留槽を備えた以下の実施形態から生じる。この場合、プロトン貯留槽の結合は、必ずしも必要ではない。何故なら、陽極では同様にプロトンも生じるからであり、これは電解質濃度に掛かっている。二酸化炭素の放出には、濃度が相応して高くなければならない。
【0030】
本発明の有利な実施形態では、電解システムは第1及び第2の膜を有し、第1の膜は陽極と陰極との間にセパレータ膜として配置され、第2の膜は陰極とプロトン貯留槽との間に配置され、少なくとも第2の膜はプロトン透過性である。このような電解システムの配置は、プロトン透過性膜を介したプロトン貯留槽と陰極との接続によりプロトンを直接的に陰極の反応表面に供給することが保証されるので、有利である。このため、陰極は、有利には、多孔性に形成され、プロトン貯留槽に隣接するプロトン透過性膜と、直接、面状に接触する。この構成では、例えば、陽極液、陰極液及びプロトン源、例えば酸又は酸混合物、が互いに別々に選択され、好適に適合させることができる。
【0031】
本発明の別の有利な実施形態では、電解システムの陰極室は、陰極液間隙として形成され、陰極に沿って延び、その幅、即ち陰極面の広がりに垂直なその大きさ、が最大で5mmを超えないようにされる。従って、陰極液間隙とは、陰極と膜との間に薄く面状に広がる中空室のことを指す。膜は、この場合、陰極液と、例えばプロトン貯留槽との又は陽極室若しくは陽極との、間隙を制限する。間隙幅が5mmより大きい場合には、陰極室における上述のpH値の勾配が再び無視できない役割を果たすことになる。
【0032】
有利には、電解システムにおける陰極室は、陰極とプロトン透過性膜とを又は陰極と第1の膜とを分離する陰極液間隙として形成され、これらは互いから最大5mmの間隔で配置される。
【0033】
上述の電解システムを発展させた実施形態では、陰極室に2つの陰極液間隙を設けることもでき、これらは陰極の両側に配置され、それぞれ膜により区画され、陰極及び膜は、それぞれ互いに最大5mmの間隔で配置される。これにより陰極の両側で電解生成物を生産することができる。この実施形態の利点は、固体陰極、即ち例えば陰極シート、を使用することができ、従って、陰極を多孔性にしなくてもよいことである。このような固体陰極は、ナノ構造化した表面を有すると好適である。固体陰極を有する実施形態では、両膜がプロトン透過性とされ、相応してプロトンの通過が保証される。
【0034】
従って、本発明の特に好適な実施形態は、プロトン伝導性の膜と陰極との間又は、プロトン供与体陰極を組み込んだ場合には、セパレータ膜と陰極との間の間隔が小さいことを特徴としている。この間隔は、典型的には、0〜5mm、有利には0.1〜2mm、である。0mmの間隔は、高分子電解質膜(ハーフ)セルに相当するであろう。
【0035】
本発明の代替的な実施形態では、電解システムは、プロトン供与体ユニットとその中に組み込まれたプロトン透過性陰極とを含有するプロトン供与体陰極を含有する。この場合、陰極は多孔性に、即ち例えば穿孔シート電極、ふるい電極、格子電極、網電極又は布地電極の形状に、又は、圧縮したナノ〜ミクロン粒子からなり場合によっては付加的な膜層を有するガス拡散電極のように、形成される。この場合、プロトン透過性陰極は、有利には直接的に、プロトン透過性膜に接続され、例えばこれに貼り付けるか又は貼り付けられ、従って、プロトンに対する陰極室への第2の供給口の一部を形成する。この実施形態では、プロトンは、プロトン貯留槽から全陰極面を通って陰極室に、即ち陰極表面と陰極液との間の相界面である陰極室の箇所に、入り、そこで陰極液から二酸化炭素を放出する。その機能及び配置により、この実施形態はプロトン供与体陰極と呼ばれる。
【0036】
一方では、プロトン供与体ユニットのプロトン供与膜は、陰極の直近に配置することができ、他方では、陰極は、プロトン供与膜を備えたプロトン供与体ユニットに組み込むことができる。
【0037】
上述の実施形態のいずれかによる電解システムによる二酸化炭素の有効利用のための本発明による還元方法では、陰極液/二酸化炭素混合物が陰極室にもたらされ、陰極と接触させられ、陰極室では、追加的なプロトンが用意されることにより、陰極液/二酸化炭素混合物の局所的なpH値の低下が生じるようにされる。この追加的なプロトンは、物理的に溶解されているかガス状であり、しかしもはや化学的に結合されていない還元可能な二酸化炭素の生産に役立つが、この二酸化炭素の生産又は放出は、直接的に陰極反応界面で行なわれる。二酸化炭素のこの局所的な濃度上昇により、その変換が著しく高められる。
【0038】
本発明の還元方法の有利な実施形態では、追加的なプロトンが、プロトン透過性膜又はプロトン透過性陰極を介して、陰極液/二酸化炭素混合物から陰極までの液体/固体相界面に提供されることにより、陰極液/二酸化炭素混合物から陰極までの液体/固体相界面における陰極液/二酸化炭素混合物の局所的なpH値の低下が生じる。これにより、電解質中に存在する炭酸水素アニオン又は炭酸アニオンから層界面領域におけるその場での(インサイチュ)二酸化炭素の生産が行なわれる。
【0039】
本発明の還元方法の別の有利な実施形態では、プロトンは、プロトン貯留槽、特に酸貯留槽、から得られ、この貯留槽は、特にブレンステッド酸、例えば硫酸、燐酸、硝酸、塩酸又は酢酸や蟻酸などの有機酸を含有する。
【0040】
還元方法の別の有利な変形例では、陰極液は、炭酸アニオン及び/又は炭酸水素アニオン及び/又は炭酸を含有する。更に、陰極液は、有利にはアルカリ金属イオン及び/又はアンモニウムイオンを含有する。これに代えて又は追加して、陰極液は、硫酸イオン及び/又は硫酸水素イオン、燐酸イオン、燐酸水素イオン及び/又は燐酸二水素イオンを有する。
【0041】
好適には陰極液のpH値は4〜14の間の範囲にある。
【0042】
導電性の多孔性触媒陰極がプロトン供与体ユニットに組み込まれ、プロトンがプロトン導電性膜を介してそして直後に陰極自体を通して陰極室に導かれる実施例では、プロトン伝導性膜は、例えば酸により、逆洗することができる。この場合、酸の強さは、好適には、陰極において所定の電流密度で還元できる限り大量の二酸化炭素が陰極液から駆逐されるように、調整される。これは、これによって生成された生産物又は生産物混合物の二酸化炭素量が極めて低いことが保証されるという特別な利点を有する。
【0043】
陰極自体は、大きな表面を有すると有利である。高分子電解質膜(PEM)構造の場合には、陰極自体は多孔性に形成されるが、これは、同様に反応表面の拡大又は最大化を意味する。好適には、陰極としてRVC電極(Reticulated Vitreous Carbon Electrode)(網状化ガラス質電極)が使用される。これは、電解質自体に対しても透過性でありガス拡散電極とは異なり疎水性成分を持たないという利点を有する。これは、いわば
図4に示すような電解セルを使用する本発明の有利な実施形態の一例となるであろう。別の有利な実施形態では、陰極として銀ガス拡散電極が使用される。この場合重要なことは、これが炭素含有量ゼロでも形成できることである。使用される銀ガス拡散電極は、例えば銀(Ag)、酸化銀(Ag
2O)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE、例えば商品名テフロン(登録商標))を含有する。
【0044】
従って上述の本発明は、炭酸塩及び炭酸水素塩中に化学的に結合されている二酸化炭素成分を、二酸化炭素の電気化学的還元の所望の出発成分である物理的に溶解した二酸化炭素又は炭酸ガスに変換することを可能にする。これにより、100mA/cm
2を遥かに超える電流密度での高い二酸化炭素変換率を可能にし、陰極として別個のガス供給を伴う電極を必要としない方法及びシステムが得られる。従来使用されたガス拡散電極は、本発明による実施形態では、付加的な要素として導入可能であろう。プロトン供与体ユニットのプロトン伝導性膜と陰極液との間の相界面層又は陰極表面と陰極液との間の相界面層は、それ自体が二酸化炭素源として作用する。この相界面層では、局所的なpH値の変化は、移動するプロトンによって生じる。平衡反応式1は、微細に分割された二酸化炭素の気泡が酸性媒体における炭酸塩の分解により生じるように、影響を受ける。実施形態によっては、局所的に酸性のpH値は、プロトン伝導性膜のブレンステッド酸表面によって又は陰極表面に存在する酸性スルホン酸基によって規定される。スルホン酸基は膜のスルホン化ポリテトラフルオロエチレンに由来する。これは例えばナフィオン(商品名)を含有し、これは直接結合されたスルホン酸基を追加的に有するテフロン(商品名)である。水中では、このポリマーは、膨張して一種の「固体」硫酸になる。次いで、カチオン伝導が、スルホン酸基からスルホン酸基へ、一種のホッピング輸送により、行なわれる。プロトンは、ナフィオン(商品名)を通して特に良好に導かれ、トンネル又はホッピングする。2価のカチオンはむしろ固く留まり、もはや輸送されない。それ故、高分子イオン交換器とも呼ばれる。
【0045】
スルホン化ポリテトラフルオロエチレンの構造式の例は以下のとおりである。
【0046】
【化2】
【0047】
ガス状二酸化炭素の形成の原因は、通過するヒドロニウムイオンが、存在する炭酸イオン又は炭酸水素イオンによって、中性化されることに帰せられる。強酸性の電解質、例えば強酸性の陽極液、はこの効果を更に強めることができる。陽極室がプロトン貯留槽として機能する例では、陽極側から膜へのプロトン圧力が高められ、陰極室における濃度勾配を強める。この例の場合には、陽極液は、上述のように、ブレンステッド酸、例えば硫酸、燐酸又は硝酸、を含むことができる。
【0048】
陰極液では、好適には、アルカリ金属イオン若しくはアンモニウムイオン又は炭酸水素塩若しくは炭酸塩が使用される。二酸化炭素還元の過程では、陰極液の出発組成は、特にその炭酸水素塩濃度又は炭酸塩濃度は、二酸化炭素の導入又は溶解により回復することができる。このような過程は、例えば上述のように、ガス拡散電極の追加的な使用により実現可能である。
【0049】
プロトン供与陰極は、電解質中に存在する炭酸水素イオン及び炭酸イオンを二酸化炭素に変換することを可能にする二酸化炭素還元装置において提案されてきた。この方法により、ガス状の二酸化炭素の溶解性の制限は反応中心の直近では回避することができる。中性の二酸化炭素のみが電気化学的に還元可能であり、その化学的平衡種である炭酸塩及び炭酸水素塩は、そうではないので、これは物質変換の向上及び高い電流密度の達成のための極めて有利な根拠となる。それに加えて、これまで、例えば二酸化炭素の飽和の上昇のために行なわれてきた設備の加圧を回避し又は追加的に補助することが可能である。
【0050】
二酸化炭素の電気化学的還元のために提案されてきたプロセス強化方法は、単位電極面積当たりの又は単位電流密度当たりの物質変換を改良する。同時に、二酸化炭素の物理的溶解度にマイナス効果を及ぼす電解質、特に陰極液、における望ましくない高炭酸塩濃度及び高炭酸水素塩濃度が避けられる。技術的に確立されているガス拡散電極の原理は、上述の方法によって置換することができる。しかし、ガス拡散電極は、この新しい原理の付加装置(アドオン)として、例えば電解質循環回路において二酸化炭素を補給するために、更に使用することができる。特に好適なのは、外部の二酸化炭素飽和状態を有する電解セルに応用する方法である。
【0051】
上述の方法の特に好適な応用は、二酸化炭素の苛性カリ洗浄で生じる塩基性の炭酸水素カリウム溶液の処理において、吸着剤をその場で(インサイチュ)電気化学的に再生する処理にある。従来の熱的再生に比較して、この方法は、莫大なエネルギー節約ポテンシャルを供する。
【0052】
本発明の例及び実施形態を、更に添付図面の
図1〜9を参照して、具体的に説明する。