【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、材料の低温接合および/または低圧力接合のためにできる限り効率的な方法を示すことである。
【0010】
本発明の課題は、請求項1に記載の特徴により解決される。本発明の有利な発展形態は、従属請求項に記載されている。明細書、請求の範囲および/または図面に記載された少なくとも2つの特徴を組み合わせることも本発明の枠内である。記載された数値範囲の場合、閾値として上記の限界内である値もまた、公開、かつ任意の組み合わせで請求されるべきである。
【0011】
本発明が基礎とする着想は、本発明による接合工程の間に、基板を取り囲んでいる材料内で溶解またはインターフェース上で消費される、少なくとも一つの極薄い犠牲層を、接合されるべき基板の接触面の少なくとも一方に堆積することである。本発明の更なる観点は、材料、特に少なくとも主に液体、有利には少なくとも主に水である材料を用いて、事前の湿潤プロセスによって金属表面の接合を、犠牲層として、特に基板間の予備接合を形成するために使用することである。上下に重ねられた複数の犠牲層の組み合わせ、とりわけ有利には、固体の犠牲層の堆積およびその上に堆積される液体の犠牲層も考えられる。従って一般に、複数の犠牲層を上下に設けることができる。
【0012】
原則的には、開示された発明が、必要条件を満たす全材料種に適しているにもかかわらず、中でも金属は、本発明による実施形態に適している。従って更なる開示において、本発明による実施形態を、金属表面で例示的に示す。
【0013】
基板は特にシリコンからなり、その際、基板上に一枚の、特に金属の、有利にはCuからなる接合層が、少なくとも接合領域に施与している。接合層が基板全体を覆わない限り、接合領域は、有利には、特に基板のバルク材料に囲まれており、かつ一緒になって特に平坦な接触面を形成する。
【0014】
本発明の更なる、特に独立した観点によれば、相互に接合されるべき接合領域は、一方で予備接合を形成することができ、他方で犠牲層の原子が予備接合後、接合領域の材料のできるだけわずかな熱処理の際に材料中に溶解される犠牲層でコーティングされる。その際材料層は、有利には、犠牲層の材料に関する溶解限度が、いずれの時点においても達成されない材料からなる。本発明によれば、犠牲層の材料は、完全には、接触面の少なくとも一方で、有利には双方の接触面の材料層中に溶解する。濃度は、有利には原子パーセント(at%)で記載されている。本発明によれば、犠牲層の材料の溶解度は、特に接触面の少なくとも一方の金属材料において0〜10at%、有利には0〜1at%、より有利には0〜0.1at%、さらに有利には0〜0.01at%、最も有利には0〜0.001at%、最も好ましくは0〜0.0001at%である。
【0015】
本発明によれば、犠牲層の厚さは、1000nm未満、有利には100nm未満、より有利には10nm未満、最も有利には1nm未満である。基板の厚さに対する犠牲層の厚さの割合、特に基板の接合領域の割合は、1未満、有利には10
−2未満、より有利には10
−4未満、さらに有利には10
−6未満、最も有利には10
−8未満である。
【0016】
犠牲層は、接触面の少なくとも一方に、各任意の堆積法により施与することができる。できるだけ粗粒な、かつ/または少なくとも主に単結晶の犠牲層を形成する堆積法が好ましい。本発明によれば、特に考えられる堆積法は以下の通りである:
‐原子層堆積法、
‐電気化学堆積法、
‐物理的蒸着法(PVD)、
‐化学的蒸着法(CVD)、
‐気相蒸着法(Dampfphasenabscheidung)、例えば表面上の水蒸気からの水の直接堆積のような、凝縮および/または再昇華による、
‐プラズマ蒸着法、
‐湿式化学堆積法、
‐スパッタリングおよび/または
‐分子線エピキタシー法
【0017】
本発明によれば、犠牲層、特にSiを、インシチュで接合層、特にCuと共に基板上に施与すると有利である。これによって、接合層上での酸化物の形成は回避される。
【0018】
本発明によれば、犠牲層は、特に予備接合の形成に適し、かつ接触されるべき基板の少なくとも一方の接触面上の接合領域および/またはバルク領域において可溶性を有する材料からなる。犠牲層は、特に少なくとも部分的に、有利には主に、少なくとも以下の材料もしくは物質の1つからなる:
‐金属、特に
Cu、Ag、Au、Al、Fe、Ni、Co、Pt、W、Cr、Pb、Ti、Te、Snおよび/またはZn、
‐合金、
‐半導体(相応するドープを有する)、特に
元素半導体、有利には
Si、Ge、Se、Te、Bおよび/またはα‐Sn、
化合物半導体、有利には
GaAs、GaN、InP、In
xGa
1-xN、InSb、InAs、GaSb、AlN、InN、GaP、BeTe、ZnO、CulnGaSe
2、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、Hg(1−x)Cd(x)Te、BeSe、HgS、Al
xGa
1−xAs、GaS、GaSe、GaTe、InS、InSe、InTe、CuInSe
2、CuInS
2、CuInGaS
2、SiCおよび/またはSiGe、
有機半導体、有利には、
フラバントロン、ペリノン、Alq3、ペリノン、テトラセン、キナクリドン、ペンタセン、フタロシアニン、ポリチオフェン、PTCDA、MePTCDI、アクリドンおよび/またはインダンスレン、
‐液体、特に
水、
アルコール、
アルデヒド、
ケトン、
エーテル、
酸、
塩基。
【0019】
本発明による第1の実施形態において、接合領域は、基板の接触面全体に延びる層である。接合領域の表面の粗さは、特に公知の方法により低減される。有利には、化学機械研磨プロセス(CMP)が使用される。その後、全接合領域表面は、本発明による犠牲層で覆われる。犠牲層は、平均粗さ値が1μm未満、有利には500nm未満、より有利には100nm未満、さらに有利には10nm未満、最も有利には1nm未満であるように施与するか、または施与後に処理される。
【0020】
本発明による第2の実施形態において、複数の、全接触面にわたって分配される接合領域が設けられている。接合領域は、特に基板の少なくとも一方の接触面を突出するトポグラフィーを形成する、つまり基板の表面より突出している。接合領域は、好ましくは任意のバルク材料に囲まれている。バルク材料の表面および接合領域表面は、特に共通の平面Eを形成する。導電性領域から構成される、非導電性領域に囲まれた表面は、ハイブリッド表面という名称でも公知である。非導電性領域は、誘電体からなり、かつ導電性領域を絶縁する。考えられる最も単純な実施形態は、誘電体より絶縁された電荷輸送用接触箇所だろう。これらのハイブリッド表面の接合により、基板間の導電性の接続を、接合される接触箇所を介して達成することができる。
【0021】
本発明によれば、犠牲層は、接触面全体にわたって、つまりバルク材料表面でも接合領域表面でも堆積される。局部の接合領域は、特に銅コネクター(英語:Cu pads)、金属接続(英語:metal joints)またはパッケージ用金属フレームである。Cuパッドは、特に異なる層体系中の機能ユニット間の電気接続に役立つ。金属ジョイントは、特にSi貫通電極(英語:through silicon vias、TSVs)であってよい。金属フレームは、例えばMEMSデバイス用マイクロパッケージであってよい。これらの機能ユニットは、わかりやすくするために図示していない。
【0022】
本発明による第三の実施形態において、複数の、全接触面にわたって分配された接合領域は、直接基板内に設けられており、その際、基板をまずエッチング技術により構造化し、その後、相応する接合領域材料で埋め、次に犠牲材料で覆う。
【0023】
本発明による接合工程において、2つの任意の層体系として形成された基板は、相互に接近し、その結果、接触面上に施与された犠牲層は相互に触れ合い、かつ予備接合を形成する。犠牲層表面の粗さは、化学的なかつ/または機械的な方法により大幅に低減することができ、有利には排除することができる。特定の層体系の場合、層体系の配向を相互に配向単位(英語:aligner)において予備接合の前に行うことができる。
【0024】
予備接合の前に犠牲層表面を、本発明によれば液体で、有利には水で湿潤することができる。有利には、施与された液体層は100nmより薄く、より有利には10nmより薄く、さらに有利には1nmより薄く、最も有利には分子層のみである。親水性の表面の場合、基板を周囲雰囲気にさらすことで十分である。その後表面を、雰囲気からの水蒸気によって湿らす。
【0025】
本発明によれば、液体は、特に凝縮によって施与することができる。有利な実施形態において、コーティングされるべき基板は、有利には冷却状態で、加熱された空間において、蒸気飽和雰囲気で導入される。基板の低温により、液体はその表面で急激に凝縮する。
【0026】
本発明の一つの択一的な実施形態において、犠牲層の材料を、特に液体として、回転コーティングプロセス(Schleuderbelackungsprozess)によって施与する。
【0027】
本発明のさらに択一的な実施形態において、犠牲層の材料を、特に液体として、基板の少なくとも一方の接触面への吹き付けコーティング装置(Spruehbelackungsanlage)により吹き付ける。
【0028】
特別な実施態様において、水は、基板がある反応チャンバ内へ蒸気圧飽和器(英語:Bubbler)により導入される。このために、例えばアルゴン、ヘリウム、窒素のような不活性ガスは、水浴により導入される。不活性ガスは水を蒸発の際にサポートし、かつ水蒸気との反応チャンバを飽和させる。水は基板の表面上に凝縮し、かつ極めて薄い水膜を形成する。基板の冷却により、水の凝縮をサポートすることができる。
【0029】
別の特別な実施形態において、水は単純な蒸発器で蒸発し、かつ基板の表面に送られる。バブラーとは対照的に、ここでは必ずしも不活性ガスで作業するのではなく、水の運動エネルギーを増加させ、ひいては蒸発を促進するために、水の温度を沸点にできるだけ近づける。反応チャンバの排気により、沸点はそれに応じて下がり、かつそれにより過程を最適化することができる。
【0030】
本発明による犠牲層を正確に堆積することのできる、特別な反応チャンバを構築することができるという考察から、それに応じて本発明による装置も、反応チャンバとし特許文献の更なる過程において記載されている。
【0031】
有利には、予備接合は接触面の接触点において開始され、全面にわたる接合波により伝播する。その際、双方の犠牲層表面の接触は、特に双方の基板の一方を曲げて形をゆがめるコンタクトピン(Pin)により形成することができ、そのことによりこの基板の接触面は、凹に変形し、かつ第2の、特に取り付け面上に平坦に載っている基板の犠牲層表面と接触する。
【0032】
予備接合の形成後、双方の結合した基板を熱処理する。熱処理はできるだけ低温で、理想的な場合には室温で行う。その際温度は500℃未満、有利には400℃未満、より有利には300℃未満、さらに有利には200℃未満、最も有利には100℃未満、最も好ましくは50℃未満である。
【0033】
本発明による極めて薄い犠牲層の構成により、犠牲層の原子の迅速な拡散は、特にもっぱら接合領域において可能である。本発明による拡散は、熱処理により加速され、かつ/または助長される。本発明によれば、有利には、犠牲層の原子は、完全に接合領域の材料中および/またはバルク材料中に溶解する。本発明によれば、接合領域の原子が、犠牲層の極めてわずかな厚さに基づいて前述の構成と技術的に同一と見られる犠牲層中に溶解する過程もまた考えられる。
【0034】
有利には、本発明による接合領域への犠牲層の原子の拡散過程の間、基板に圧力が加えられる。表面上への圧力は、特に0.01〜10MPa、有利には0.1〜8MPa、より有利には1〜5MPa、最も有利には1.5〜3MPaである。これらの値は、200mm基板に対して、約1〜320kNで力が加えられたことに相当する。
【0035】
犠牲層の表面は、本発明による予備接合過程前に、不純物および/または少なくとも主に、有利には完全に酸化物を含むべきではない。特に、犠牲層が施与される材料から酸化物を、犠牲層が施与される前に除去する必要があるかもしれない。従って、本発明による予備接合過程前に、有利には犠牲層表面の洗浄が行われる。酸化物の除去は、当業者に公知の物理的なおよび/または化学的な方法により行うことができる。これには、排出物の相応する排出輸送を伴うガスおよび/または液体による化学的還元、スパッタリングおよび/またはプラズマおよび/またはCMPおよび/または以下の方法のうち一つまたは複数による酸化物の機械的除去が挙げられる:
‐化学的酸化物除去、特に
ガス状還元剤、
液状還元剤、
‐物理的酸化物除去、特に
プラズマ、
イオンアシスト化学エッチング、
高速イオン衝撃(FAB,スパッタリング)、
研削、
研磨。
【0036】
化学的酸化物除去とは、化学過程による酸化物の除去を意味する。化学過程とは、物質変換を意味する。この場合、酸化物は還元剤により気相および/または液相中で還元され、かつ還元剤は新しい化合物に応じて酸化する。酸化された還元剤、つまり反応生成物は、相応して排出される。一つの典型的な還元剤は、例えば水素である。
【0037】
物理的酸化物除去とは、物理的プロセスによる酸化物の除去を意味する。物理的プロセスの場合、物質変換ではなく、基板の表面から酸化物が純粋に機械的に除去される。最も頻繁に使用される物理的な還元技術は、プラズマ技術である。その際、相応する界によって基板の表面上に加速され、かつ相応する物理的酸化物除去を行うプラズマが形成される。スパッタリング技術の使用もまた考えられる。その際プラズマとは対照的に、統計的な多粒子系が反応チャンバ内で形成されるのではなく、イオンを予備室内(Vorkammer)で形成し、かつこれらを意図的に基板上に加速する。最後に、研削および研磨を酸化物除去プロセスとして挙げることができる。研削ツールもしくは研磨ツールにより、酸化物は徐々に除去される。研削および研磨は、中でもマイクロメートル範囲内の極めて厚い酸化物層を扱う場合に、前処理工程として適している。これらの方法は、ナノメートル範囲内の酸化物層の正確な除去にはあまり適していない。
【0038】
表面純度の検出は、接触角法を用いて極めて迅速、かつ簡単に行うことができる。非酸化物表面、中でも純銅がむしろ親水特性を有することは公知である。これは、中でも極めて小さな接触角により明らかになる。表面が酸化物に、特に銅が酸化銅に酸化する場合、表面特性はますます疎水性になる。測定される接触角は、相応して大きい。接触角の変化を時間の関数として、ひいては進行する酸化銅の厚さの関数として表現するために、水滴の接触角は規定された時間単位に従って、天然酸化銅の完全な酸化物除去の時点に基づいて測定された。接触角は時間の増加に伴って飽和値に近づく。この関係は、急速に成長する酸化銅による表面の電子構造の変化で説明できるかもしれない。ある程度の酸化銅層の厚さから、酸化銅の更なる増大は、表面の電子構造の変化にもはや決定的に寄与せず、このことは、接触角の対数減衰に反映される(
図4参照)。
【0039】
このように発生する酸化物は、好ましくは犠牲層表面を有する接合領域表面および/またはバルク材料表面のコーティング前に、かつ/または犠牲層表面の接合前に、相互に除去される。その際ここで挙げた接触角法は、酸化物状態の迅速、正確かつコスト効率のよい評価に役立つ。前記評価は、複雑な化学的および/または物理的な分析機器を必要としない。接触角測定器を、表面の完全自動測定および特徴付けをする装置の相応するモジュール群に組み込むことができる。代替的な測定方法は、エリプソメトリーまたはすべての他の公知の光学的および/または電気的方法だろう。
【0040】
本発明による更なる実施形態において、接合領域表面間の接合過程は、犠牲層として水を用いて行われる。本発明による着想は、酸化物の接合領域表面を完全に洗浄し、かつ後続の、直接酸化物除去に続く工程において、接合領域表面の湿潤を水を用いて行うことであり、室温において接合領域表面間の予備接合を可能にする。その際湿潤は、既に述べたPVD、CVD、回転コーティングプロセス、気相堆積法のような手段、または十分に高い湿度を有する雰囲気中で基板表面を晒すことにより行われ、有利には、それどころか水蒸気で飽和する。
【0041】
犠牲層の施与は、反応チャンバ内で行われる。有利には、反応チャンバを排気することができる。特に連続的な反応チャンバの排気は、雰囲気の適切な調節を可能するためにさらに有利である。有利には反応チャンバは、真空クラスターのモジュールの一部、より有利には低真空クラスターの一部、さらに有利には高真空クラスターの一部、最も有利には超高真空クラスターの一部である。反応チャンバ内の圧力は、1バール未満、有利には10
-1ミリバール未満、より有利には10
-3ミリバール未満、さらに有利には10
-5ミリバール未満、最も有利には10
-8ミリバール未満である。
【0042】
本発明のさらなる利点、特徴および詳細は、好ましい実施例の明細書、並びに図面に基づいてもたらされる。これらは、以下のように図中で示される: