(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂材料が、エポキシ化合物、臭素化エポキシ化合物、エポキシ基を導入したエラストマーからなる群より選択される少なくとも一種を含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物である請求項1に記載の外部接続用コネクタ接続口。
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂材料が、臭素化エポキシ化合物、臭素化ポリカーボネート化合物、及び、臭素化ポリスチレン化合物からなる群から選択される、異なる少なくとも2つ以上の臭素系難燃剤を含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物である請求項1に記載の外部接続用コネクタ接続口。
前記コネクタ接続口が、電子部品と外部接続用コネクタを収納した電子機器の筐体の側面に設けられ、外部コネクタが挿入接続されるための外部接続用コネクタ接続口である請求項1〜4のいずれかに記載の外部接続用コネクタ接続口。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の外部接続用コネクタ接続口は、電子機器における外部コネクタを挿入接続するためのコネクタ接続口であって、
前記コネクタ接続口は、ポリブチレンテレフタレート樹脂材料を射出成形した成形体からなり、その外周面又は内周面にはボス部が突設しており、
ボス部、並びに、ボス部を突設する外周面又は内周面の下方には、ポリブチレンテレフタレート樹脂材料中に空隙が存在しており、ボス部における前記外周面又は内周面から高さ0〜0.5mmの範囲に存在する空隙の断面面積の合計をS1とし、ボス部を突設する前記外周面又は内周面から深さ0〜0.5mmの範囲に存在する空隙の断面面積の合計をS2とし、S1とS2の合計面積を100%としたとき、S1の面積率が5〜45%、S2の面積率が55〜95%であることを特徴とする。
【0014】
本発明の電子機器の外部接続用コネクタ接続口は、例えば、車両用電子機器、特にはエンジンコントロールユニット(ECU)などに設けられるものであり、電子部品や回路基板を搭載収納した電子制御機器の筐体の前端に設けられ、外部コネクタに
嵌合接続するための外部接続用コネクタ接続口である。
【0015】
図1は、電子機器の一例としてのエンジンコントロールユニットの斜視図である。
エンジンコントロールユニット1は、筺体ケース2、外部接続用コネクタ部3を備える。外部接続用コネクタ部
3は、ポリブチレンテレフタレート樹脂材料を射出成形により成形した成形体からなる。筺体ケース2は、ポリブチレンテレフタレート樹脂等の樹脂材料の成形物であっても、アルミニウムなどの金属で出来ていてもよい。筺体ケース2下部のベース2’は、通常アルミニウムなどの金属製であるが、ポリブチレンテレフタレート樹脂等の樹脂材料の成形物で出来ている。
【0016】
筺体ケース2とその筐体ベース2’は、それらの隅でねじ止め或いは熱かしめにより固定される。
エンジンコントロールユニット1内には、各種の多数の電子部品が収納されており、電子部品が実装された回路基板等が筐体ベース2’に固定される。
エンジンコントロールユニット1の側面には、外部接続用コネクタ部3を有しており、外部コネクタプラグ(非図示)を挿入して接続することのできる外部接続用コネクタ接続口4が複数設けられており、その内部には外部コネクタプラグが挿入されたときに外部コネクタプラグ側の端子と接続されるコネクタピン5を有する。
【0017】
外部接続用コネクタ部Aは、ポリブチレンテレフタレート樹脂材料から、
図1のAに示すような一体物として、射出成形して製造される。そして、複数設けられる外部接続用コネクタ接続口4は、
図1に示すように、通常は矩形状の形状を有しているが、その外周面上または内周面上にはボス部6が設けられる。ボス部6は、外部コネクタプラグ(非図示)のコネクタ接続口4への接続を、車両走行時やエンジンによる振動に影響されずに十分確保するためのフック留めのために使用される。そのためボス部6には安定した強いボス強度を有することが極めて重要である。
ボス部6の形状は、通常円柱状であり、一部を切り欠いた円柱状でも、また四角柱状等であってもよい。ボス部6の大きさは、その直径又は径が通常2〜4mm程度、高さが2〜4mm程度である。ボス部6の天頂部はフック留め等のために笠が乗ったような形状であることも好ましい。
【0018】
外部接続用コネクタ部
3は、
図1に示すような複雑な形状を有しており、これをポリブチレンテレフタレート樹脂材料の射出成形により十分なボス強度を確保するには、成形時の樹脂の流動性を十分に向上させる等の従来の方法では困難である。ポリブチレンテレフタレート樹脂材料をこのような形状に射出成形する際、ボス状突起内へのポリブチレンテレフタレート樹脂材料の充填が難しくなった場合、ボス部内は樹脂が十分に充填する前に固化して空隙を形成しやすくなり、ボス強度が悪化することが判明した。
【0019】
図3は、実施例及び比較例に用いたボス部付き試験片のボス部及びボス部下方の断面における空隙の分布を観察した模式図である。
図3(a)はボス強度が高い実施例における空隙の分布を示し、図中の○が空隙(ボイド)である。
図3中、B−B線はボス部が突出した平面であり、B−B線より上方がボス部であり、B−B線の下方が基底部である。ボイドの分布は、上方のボス部内は少なく、それに比べるとその下方域(基底部)では多いことが分かる。一方、
図3(b)の比較例では、ボイドの分布は、上方のボス部内に多く、それに比べると下方域(基底部)では少ないことが分かる。
本発明では、ボス部とボス部下方の外周面又は内周面において、ポリブチレンテレフタレート樹脂材料中に存在する空隙を、ボス部における前記外周面又は内周面から高さ0〜0.5mmの範囲に存在する空隙の断面面積の合計をS1とし、ボス部下方の前記外周面または内周面から深さ0〜0.5mmの範囲に存在する空隙の断面面積の合計をS2とし、S1とS2の合計面積を100%としたとき、S1の面積率が5〜45%、S2の面積率が55〜95%とすることにより、極めて高いボス強度を示すボス部とすることができる。
S1の面積率とS2の面積率は、上記の中でも、S1の面積率が5〜43%、S2の面積率が57〜95%であることが好ましく、より好ましくはS1の面積率が5〜40%、S2の面積率が60〜95%である。
【0020】
なお、S1とS2の測定は、ボス部の突起方向の中心線を含む断面において測定され、例えば突起が円柱状であれが円形断面の中心を含む断面であり、半円形であればその面積中心を含む断面であり、その具体的な方法は実施例に記載する通りである。
【0021】
ボス部とボス部下方の空隙の面積率をこのような範囲とするには、以下に説明するようなポリブチレンテレフタレート樹脂材料を用いたり、後記するように、射出成形前の乾燥条件を乾燥温度が100℃以上180℃以下、乾燥時間が1時間以上36時間以下としたり、射出成形前の樹脂組成物中の水分含有量を500ppm以下としたり、射出成形時のシリンダー温度や保圧を調整することによって可能であり、また特に好ましい製造方法である。
【0022】
コネクタ接続口に用いるポリブチレンテレフタレート樹脂材料としては、エポキシ化合物、臭素化エポキシ化合物、エポキシ基を導入したエラストマーからなる群より選択される少なくとも一種を含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であることが好ましく、また、臭素化エポキシ化合物、臭素化ポリカーボネート化合物、及び、臭素化ポリスチレン化合物からなる群から選択される、異なる少なくとも2つ以上の臭素系難燃剤を含有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であることも好ましく、特には、後述するポリブチレンテレフタレート系樹脂組成物が好ましく使用される。
以下、そのようなポリブチレンテレフタレート樹脂材料について説明する。
【0023】
[(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂]
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂材料に用いるポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位がエステル結合した構造を有するポリエステル樹脂であって、ポリブチレンテレフタレート樹脂(ホモポリマー)の他に、テレフタル酸単位及び1,4−ブタンジオール単位以外の、他の共重合成分を含むポリブチレンテレフタレート共重合体や、ホモポリマーと当該共重合体との混合物を含む。
【0024】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸以外のジカルボン酸単位を含んでいてもよいが、他のジカルボン酸の具体例としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−3,3’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ビス(4,4’−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、1,4−シクロへキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸類、および、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類等が挙げられる。
【0025】
ジオール単位としては、1,4−ブタンジオールの外に他のジオール単位を含んでいてもよいが、他のジオール単位の具体例としては、炭素原子数2〜20の脂肪族又は脂環族ジオール類、ビスフェノール誘導体類等が挙げられる。具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシメタン、4,4’−ジシクロヘキシルヒドロキシプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加ジオール等が挙げられる。更に、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオールも挙げられる。なお、少量であれば、分子量400〜6000の長鎖ジオール、すなわち、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等を1種以上共重合してもよい。
【0026】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールとを重縮合させたポリブチレンテレフタレート単独重合体が好ましいが、また、カルボン酸単位として、前記のテレフタル酸以外のジカルボン酸1種以上および/又はジオール単位として、前記1,4−ブタンジオール以外のジオール1種以上を含むポリブチレンテレフタレート共重合体であってもよい。ポリブチレンテレフタレート樹脂は、機械的性質、耐熱性の観点から、ジカルボン酸単位中のテレフタル酸の割合が、好ましくは70モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である。同様に、ジオール単位中の1,4−ブタンジオールの割合が、好ましくは70モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上である。
【0027】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂として共重合体を用いる場合は、イソフタル酸、ダイマー酸、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)等のポリアルキレングリコール等が共重合されたものが好ましく、中でも、ポリテトラメチレングリコールを共重合したポリエステルエーテル樹脂を用いることが好ましい。共重合中のテトラメチレングリコール成分の割合は3〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%がより好ましく、10〜25質量%がさらに好ましい。
【0028】
ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、0.5〜2dl/gであるのが好ましい。成形性及び機械的特性の点からして、0.6〜1.5dl/gの範囲の固有粘度を有するものがより好ましい。固有粘度が0.5dl/gより低いものを用いると、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂材料が機械強度の低いものとなりやすい。また2dl/gより高いものでは、ポリブチレンテレフタレート樹脂材料の流動性が悪くなり成形性が悪化する場合がある。
なお、ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、テトラクロロエタンとフェノールとの1:1(質量比)の混合溶媒中、30℃で測定する値である。
【0029】
[(B)臭素系難燃剤]
本発明に使用するポリブチレンテレフタレート樹脂材料は、好ましくは(B)臭素系難燃剤を含有する。そして、本発明では、(B)臭素系難燃剤として、好ましくは、臭素化エポキシ化合物、臭素化ポリカーボネート化合物、及び、臭素化ポリスチレン化合物からなる群から選択される、異なる少なくとも2つ以上の臭素系難燃剤を使用する。ここで、「異なる少なくとも2つ以上の臭素系難燃剤」とは、(i)上記3種の臭素系難燃剤の中で、異なる種類の臭素系難燃剤を2種又は3種以上使用する、(ii)上記した3種の中で1種を選択し、その中で互いに分子量が異なるものを2又は3以上使用する、或いは(iii)上記(i)及び(ii)を組み合わせて使用することを意味する。
【0030】
臭素化エポキシ化合物としては、具体的には、例えばテトラブロモビスフェノールAエポキシ化合物に代表されるビスフェノールA型臭素化エポキシ化合物が好ましく挙げられる。
【0031】
臭素化エポキシ化合物は、トリブロモフェノールで末端封止されていることが好ましく、特には臭素化エポキシ化合物の分子量が低い場合(以下、詳述する重量平均分子量が1000〜8000の臭素系難燃剤(B1)のエポキシ化合物)に特に有効である。
また、臭素化エポキシ化合物は、そのエポキシ当量が3000〜40000g/eqであることが好ましく、中でも4,000〜35,000g/eqが好ましく、特に10,000〜30,000g/eqであることが好ましい。
なお、臭素化エポキシ化合物の質量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法により測定される値(ポリスチレン換算)である。測定時の溶媒は、臭素化エポキシ化合物、臭素化ポリカーボネート化合物、臭素化ポリスチレン化合物はTHF(テトラヒドロフラン)を、臭素化アクリル化合物はODCB(オルトジクロロベンゼン)を用いる。測定時のカラム温度は、臭素化エポキシ化合物、臭素化ポリカーボネート化合物、臭素化ポリスチレン化合物は40℃、臭素化アクリル化合物は135℃に設定する。
【0032】
臭素化ポリカーボネート化合物としては、具体的には例えば、臭素化ビスフェノールA、特にテトラブロモビスフェノールAから得られる、臭素化ポリカーボネートであることが好ましい。その末端構造は、フェニル基、4−t−ブチルフェニル基や2,4,6−トリブロモフェニル基等が挙げられ、特に、末端基構造に2,4,6−トリブロモフェニル基を有するものが好ましい。
【0033】
臭素化ポリカーボネート化合物における、カーボネート繰り返し単位数の平均は適宜選択して決定すればよいが、通常2〜30、中でも3〜15、特に3〜10であることが好ましい。カーボネート繰り返し単位数の平均が小さいと、溶融時にポリブチレンテレフタレート樹脂の分子量低下を引き起こす場合がある。逆に大きすぎても溶融粘度が高くなり、成形体内の分散不良を引き起こし、成形体外観、特に光沢性が低下する場合がある。
【0034】
臭素化ポリスチレンとしては、ポリスチレンを臭素化するか、または、臭素化スチレンモノマーを重合することによって製造するかのいずれであってもよいが、臭素化スチレンを重合したものは遊離の臭素(原子)の量が少ないので好ましい。
また、臭素化ポリスチレンは、他のビニルモノマーが共重合された共重合体であってもよい。この場合のビニルモノマーとしてはスチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、アクリル酸メチル、ブタジエンおよび酢酸ビニル等が挙げられる。
【0035】
臭素化ポリスチレンの具体例としては、例えば、ポリ(4−ブロモスチレン)、ポリ(2−ブロモスチレン)、ポリ(3−ブロモスチレン)、ポリ(2,4−ジブロモスチレン)、ポリ(2,6−ジブロモスチレン)、ポリ(2,5−ジブロモスチレン)、ポリ(3,5−ジブロモスチレン)、ポリ(2,4,6−トリブロモスチレン)、ポリ(2,4,5−トリブロモスチレン)、ポリ(2,3,5−トリブロモスチレン)、ポリ(4−ブロモ−α−メチルスチレン)、ポリ(2,4−ジブロモ−α−メチルスチレン)、ポリ(2,5−ジブロモ−α−メチルスチレン)、ポリ(2,4,6−トリブロモ−α−メチルスチレン)およびポリ(2,4,5−トリブロモ−α−メチルスチレン)等が挙げられ、ポリ(2,4,6−トリブロモスチレン)、ポリ(2,4,5−トリブロモスチレン)および平均2〜3個の臭素基をベンゼン環中に含有するポリジブロモスチレン、ポリトリブロモスチレンが特に好ましく用いられる。
【0036】
また、(B)臭素系難燃剤は、臭素系エポキシ化合物又は臭素系ポリカーボネート化合物から選択され、重量平均分子量(Mw)が1000〜8000である臭素系難燃剤(B1)、及び、臭素系エポキシ化合物又は臭素系ポリスチレン化合物から選択され、重量平均分子量(Mw)が8000超〜70000である臭素系難燃剤(B2)を組み合わせたものが好ましい。
臭素系難燃剤(B1)と臭素系難燃剤(B2)の質量比(B1/B2)は、90/10〜30/70であることが好ましく、より好ましくは90/10〜40/60で、さらに好ましくは90/10〜50/50
である。このような質量比とすることで、得られる樹脂組成物の結晶化温度をより低下させ、また耐加水分解性もより向上させることが可能となる。
【0037】
(B)2つ以上の臭素系難燃剤としては、少なくとも一方が臭素化エポキシ化合物であることが好ましく、更には臭素系難燃剤(B1)、(B2)共に臭素化エポキシ化合物であるのが好ましい。
【0038】
(B)臭素系難燃剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、合計で30〜60質量部であり、好ましくは35質量部以上、より好ましくは40質量部以上であり、好ましくは55質量部以下、より好ましくは50質量部以下である。(B)臭素系難燃剤の含有量が30質量部より少ないと結晶化温度が高くなりボス強度が不足したり、樹脂組成物の難燃性が不十分となり、60質量部を超えると機械的特性、離型性の低下や難燃剤のブリードアウトの問題が生ずる。
【0039】
[(C)アンチモン化合物]
ポリブチレンテレフタレート樹脂材料は、さらに、難燃助剤であるアンチモン化合物(C)を含有することが好ましい。アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン(Sb
2O
3)、五酸化アンチモン(Sb
2O
5)、アンチモン酸ナトリウム等が挙げられる。特に、耐衝撃性の点から三酸化アンチモンが好ましい。
【0040】
(C)アンチモン化合物の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、5〜15質量部であり、好ましくは7質量部以上、より好ましくは8質量部以上であり、また、好ましくは13質量部以下、より好ましくは12質量部以下である。上記下限値を下回ると難燃性が低下しやすく、上記上限値を上回ると機械的物性が低下したりしやすい。
【0041】
[エラストマー]
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂材料は、エラストマーを含有することが好ましい。エラストマーとしては、ポリブチレンテレフタレート樹脂に配合してその耐衝撃性を改良するのに用いられている熱可塑性エラストマーを用いればよく、例えばゴム性重合体やゴム性重合体にこれと反応する化合物を共重合させたものを用いる。エラストマーのガラス転移温度は0℃以下、特に−20℃以下であるのが好ましい。
【0042】
エラストマーの具体例としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ジエン系共重合体(スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル−ブタジエンゴム等)、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンとの共重合体(エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体等)、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体(エチレン−メタクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体等)、エチレンと脂肪族ビニル化合物との共重合体、エチレンとプロピレンと非共役ジエンとのターポリマー、アクリルゴム(ポリブチルアクリレート、ポリ(2−エチルヘキシルアクリレート)、ブチルアクリレート−2−エチルヘキシルアクリレート共重合体等)、シリコーン系ゴム(ポリオルガノシロキサンゴム、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレートゴムとからなるIPN型複合ゴム)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0043】
本発明に用いるエラストマーとしては、オレフィンとエポキシ基又はグリシジル基を有する不飽和単量体との共重合体、オレフィン重合体に対してエポキシ基又はグリシジル基を有する不飽和単量体を共重合したものが、耐加水分解性の点で好ましい。このような共重合体はグラフト共重合体、ランダム共重合体、あるいはブロック共重合体であってもよい。
【0044】
また、例えばオレフィン重合体の末端、あるいはオレフィンと他の不飽和単量体等との共重合体及びこれらの複合物中に存在する不飽和結合を、過酸化水素あるいは有機過酸等、例えば過安息香酸、過ギ酸及び過酢酸等により酸化することでエポキシ基を導入したものであってもよい。すなわち、オレフィン系重合体にエポキシ基又はグリシジル基を導入したものであればいずれを用いてもよい。
【0045】
エラストマーの好ましい含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、5〜30質量部である。エラストマーの含有量が5質量部未満では、耐衝撃性および耐加水分解性の改良効果が小さくなる傾向にあり、30質量部を超えると耐熱老化性や剛性、さらには流動性、難燃性が低下する場合がある。エラストマーの含有量は7質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましく、16質量部以上が特に好ましく、28質量部以下がより好ましく、26質量部以下がさらに好ましく、22質量部以下が特に好ましい。
【0046】
[離型剤]
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂材料は、さらに離型剤を含有することが好ましい。離型剤としては、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、数平均分子量200〜15000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイルの群から選ばれる少なくとも1種の化合物等が挙げられる。
【0047】
離型剤の好ましい含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、0.1〜3質量部であり、より好ましくは0.6質量部以上であり、さらに好ましくは1.0質量部以上であり、より好ましくは2.0質量部以下であり、さらに好ましくは1.5質量部以下である。離型剤の含有量が上記下限値以上であると離型性改善の効果を十分に得ることができ、上記上限値以下であると離型剤の過剰配合による耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などの問題を防止することができる。
【0048】
[エポキシ化合物]
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂材料は、エポキシ化合物を含有することが好ましい。エポキシ化合物は、ポリブチレンテレフタレート樹脂が水蒸気等により加水分解を受け、分子量低下を起こすと同時に機械的強度等が低下することを抑制するためのもので、これを含有することにより、エラストマーの配合効果がより促進され、耐加水分解性と耐ヒートショック性を、一層向上させることができるので好ましい。
【0049】
エポキシ化合物としては、一分子中に一個以上のエポキシ基を有するものであればよく、通常はアルコール、フェノール類又はカルボン酸等とエピクロロヒドリンとの反応物であるグリシジル化合物や、オレフィン性二重結合をエポキシ化した化合物を用いればよい。ただし、エポキシ化合物としては、前述した臭素化エポキシ化合物およびエポキシ基を導入したエラストマーは除外される。
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、レゾルシン型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、グリシジルエーテル類、グリシジルエステル類、エポキシ化ブタジエン重合体等が挙げられる。
【0050】
エポキシ化合物の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、0.1〜2.0質量部であることが好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がさらに好ましく、0.4質量部以上が特に好ましい。また、1.5質量部以下がより好ましく、1.4質量部以下がさらに好ましく、特に1.3質量部以下が好ましい。エポキシ化合物の含有量が0.1質量部未満では、耐加水分解性が低下しやすく、2.0質量部より多いと架橋化が進行し成形時の流動性が悪くなりやすい。
【0051】
[無機充填材]
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂材料は、無機充填材を含有することが好ましく、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、30〜100質量部の範囲で含有することが好ましい。無機充填材の含有量は、40質量部以上がより好ましく、50質量部以上がさらに好ましく、また90質量部以下がより好ましく、80質量部以下がさらに好ましい。
本発明において、無機充填材とは、樹脂成分に含有させて強度及び剛性を向上させるものをいい、繊維状、板状、粒状、無定形等いずれの形態
のものであってもよい。
【0052】
無機充填材の形態が繊維状である場合、無機質、有機質のいずれであってもよい。例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、ホウ素繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素チタン酸カリウム繊維、金属繊維、ワラストナイト等の無機繊維、フッ素樹脂繊維、アラミド繊維等の有機繊維が含まれる。無機充填材が繊維状の場合、好ましいのは無機質の繊維であり、その中でも特に好ましいのはガラス繊維である。無機充填材は1種でも2種類の混合物であってもよい。
【0053】
上記した繊維状無機充填材以外に、板状、粒状又は無定形の他の無機充填材を含有することもできる。板状無機充填材は、異方性及びソリを低減させる機能を発揮するものであり、ガラスフレーク、タルク、マイカ、雲母、カオリン、金属箔等が挙げられる。板状無機充填材の中で好ましいのは、ガラスフレークである。
【0054】
粒状又は無定形の他の無機充填材としては、セラミックビーズ、アスベスト、クレー、ゼオライト、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。
【0055】
[カーボンブラック]
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂材料は、カーボンブラックを含有することが好ましい。
カーボンブラックは、その種類、原料種、製造方法に制限はなく、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のいずれをも使用することができる。その数平均粒径には特に制限はないが、5〜60nm程度であることが好ましい。
【0056】
カーボンブラックの含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、好ましくは0.1〜4.0質量部、より好ましくは0.2〜3.0質量部である。0.1質量部未満では、所望の色が得られなかったり、耐候性改良効果が十分でない場合があり、4.0質量部を超えると、機械的物性が低下する場合がある。
【0057】
[安定剤]
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂材料は、さらに安定剤を含有することが、熱安定性改良や、機械的強度、及び色相の悪化を防止する効果を有するという点で好ましい。安定剤としては、リン系安定剤およびフェノール系安定剤が好ましい。
リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル等が挙げられ、中でもホスファイト、ホスホナイトが好ましい。
【0058】
安定剤の含有量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1.5質量部以下、好ましくは1質量部以下である。0.001質量部未満では安定剤としての効果が不十分であり、成形時の分子量の低下や色相悪化が起こりやすく、また1.5質量部を超えると、過剰量となりシルバーの発生や、色相悪化が更に起こりやすくなる傾向がある。
【0059】
[その他成分]
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂材料は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に種々の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、滴下防止剤、紫外線吸収剤、染顔料、蛍光増白剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0060】
また、本発明におけるポリブチレンテレフタレート樹脂材料には、上記した樹脂以外の熱可塑性樹脂を、本発明の効果を損わない範囲で含有することができる。
その他の熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリフェニレンサルファイドエチレン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0061】
[結晶化温度]
本発明に用いるポリブチレンテレフタレート樹脂材料は、好ましくは(B)臭素化エポキシ化合物、臭素化ポリカーボネート化合物、及び、臭素化ポリスチレン化合物からなる群から選択される、異なる少なくとも2つ以上の臭素系難燃剤を含有することにより、結晶化温度(Tc)が低く、好ましくは193℃以下、より好ましくは192℃以下、さらに好ましくは191℃以下、中でも190℃以下、特に好ましくは189℃以下の結晶化温度を有する。また、Tcの下限は好ましくは170℃、より好ましくは175℃、さらに好ましくは180℃である。
このような結晶化温度にすることで、ボス部内の樹脂が固化する前に十分な樹脂の充填がしやすくなり、ボス部の空隙S1と、ボス部の基底部S2の面積率が前記した範囲にすることができる。
【0062】
なお、結晶化温度(Tc)とは、示差走査熱量計(DSC)で、ポリブチレンテレフタレート樹脂材料またはそれからなる成形体を、窒素雰囲気下、30℃から300℃まで20℃/分の速度で昇温し、300℃で3分間保持した後、速度20℃/分の条件で降温し、降温の際に観測される発熱ピークのピークトップ温度である。
【0063】
[射出成形]
ポリブチレンテレフタレート樹脂材料は、射出成形により、ボス部を有するコネクタ接続口に成形される。本発明のコネクタ接続口は、電子機器(電気機器を含む)における外部コネクタを挿入接続するためのコネクタ接続口であり、電子機器としては、例えば、リレーケース、バリコンケース、コンデンサーケース、パワーモジュールケース、インテリジェントパワーモジュールケース等の電気電子機器、あるいは、エンジンコントロールユニット(ECU)ケース、エンジンコンピューターユニットケース、ABSユニットケース、エアバッグ制御ユニット等の車両用電気電子機器を好ましく挙げることができる。
【0064】
射出成形前の乾燥の条件は、乾燥温度が100℃以上180℃以下、乾燥時間が1時間以上36時間以下である。より好ましくは乾燥温度の範囲は120℃以上160℃以下であり、乾燥時間の範囲は4時間以上24時間以下である。乾燥工程は真空雰囲気で行うことが好ましいが、その他の雰囲気であってもよい。例えば、乾燥工程を不活性ガス雰囲気下、大気雰囲気下で行ってもよく、乾燥工程における乾燥方法も特に限定されない。従来公知の乾燥機等を使用すればよい。また、真空雰囲気下で乾燥工程を行う場合には、例えば、真空乾燥機を使用すればよい。
乾燥温度を高く、また乾燥時間を長くすると、ポリブチレンテレフタレート樹脂材料の水分含有率が低くなり、ボス部のボイド発生が低減する傾向にある。また、S1が低減することで、S1/S2の値は5/95〜45/55の範囲となる傾向にある。ただし、乾燥温度が過度に高すぎたり、乾燥時間が過度に長すぎたりすると、ポリブチレンテレフタレート樹脂又は当該樹脂の酸化劣化が進行するため、上記範囲とすることが好ましい。
【0065】
射出成形前のポリブチレンテレフタレート樹脂材料の水分含有率は500ppm以下であることが好ましく、300ppm以下であることがより好ましく、200ppm以下であることが更に好ましく、100ppm以下であることが特に好ましい。水分含有率が500ppmを超えると、ボス部にボイドが発生しやすくなり、ボス強度が低下しやすい。また、S1が増加することで、S1/S2の値は45/55超〜の範囲となる傾向にある。また、耐加水分解性も低下しやすい。
【0066】
成形時は、シリンダー温度が280℃未満、冷却時間40秒未満が好ましい。シリンダー温度を低くするとガスの発生が抑えられ、ボス部のボイド発生が低減し、ボス強度が高くなる傾向にある。また、S1が低減することで、S1/S2の値は5/95〜45/55の範囲となる傾向にある。冷却時間を短くすると成形時の発生ガスが少なくなり、同様にボス強度が高くなる傾向にある。特に、シリンダー温度を240℃以上270℃未満の範囲で調整し、冷却時間を5秒以上30秒未満の範囲で調整することが好ましい。
【0067】
射出成形時の保圧値は、射出ピーク圧の5割〜10割であるのが好ましい。成形性及び機械的特性の点からして、射出ピーク圧の6割〜9割の範囲の値を保圧値とすることがより好ましい。保圧値が射出ピーク圧の5割より低いと、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂材料のボス強度が低いものとなりやすく、S1が増加することで、S1/S2の値は45/55超〜の範囲となる傾向にある。また10割より高いものでは、ポリブチレンテレフタレート樹脂材料が過充填となり離型性が悪化する場合がある。
【0068】
本発明の外部接続用コネクタ接続口のボス強度は、好ましくは300N以上であり、より好ましくは310N以上、更に好ましくは320N以上である。
【実施例】
【0069】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
以下の実施例および比較例において、射出成形したポリブチレンテレフタレート樹脂材料に使用した成分は、以下の表1の通りである。
【0070】
【表1】
【0071】
(実施例
7〜16
、参考例1〜6及び比較例1〜7)
上記表1に記載のガラス繊維以外の各成分を、以下の表2以下に示される割合(全て質量部)にて、ブレンドし、これを30mmのベントタイプ二軸押出機(日本製鋼所社製、二軸押出機TEX30α)を使用して、ガラス繊維はサイドフィーダーより供給し、バレル温度270℃にて溶融混練し、ストランドに押し出した後、ストランドカッターによりペレット化し、ポリブチレンテレフタレート樹脂材料のペレットを得た。
【0072】
<結晶化温度(Tc)の測定>
得られたペレットを熱風乾燥機を使用して120℃で5時間乾燥させた後、射出成形機(日本製鋼所社製「J85AD」)を用い、シリンダー温度250℃、金型温度80℃の条件で、ISO試験片を射出成形して得られたISO試験片に対して、PerkinElmer社製「PYRIS Diamond DSC」を用いて、窒素雰囲気下、30℃から300℃まで20℃/分の速度で昇温し、300℃で3分保持した後、速度20℃/分の条件で降温し、DSC測定を行った。降温の際に観測される発熱ピークのピークトップの温度を結晶化温度(Tc)とした。
【0073】
<ボス部付き試験片の成形>
図2は、評価のために成形したボス部付き試験片の形状を示す図である。試験片11の中央にはボス部12が設けられている。
図2の(a)図は、(b)図で11と付した側からボス部12側を下にして試験片11を見た図であり、(c)図は(b)図のボス部12を通る中心線A−AでのA−A断面図である。ボス部12は、その高さは2mmであり、図示するようにR=2mmの円を一部切り欠いた切り欠き円柱状に形成されている。また、試験片11の下部には直線状に高さ2mmのリブ13が設けてある。
【0074】
上記で得られたポリブチレンテレフタレート樹脂材料のペレットを熱風乾燥機を使用して120℃で表2以下に記載の時間(0〜5時間)乾燥させ、水分含有率の異なるペレットを得た後、射出成形機(日精樹脂工業社製「NEX80」)にて、シリンダー温度260℃、金型温度80℃、冷却時間20秒、充填時間1.5秒、射出ピーク圧の0割もしくは8割の値を保圧値とする条件で、
図2(b)の13側に設けたフィルムゲートから樹脂を注入して、
図2に示すボス部付き試験片を成形した。
【0075】
<水分含有率>
上記乾燥後のペレットの水分含有率(単位:質量ppm)を、カールフィッシャー法の電量方式の水分測定装置(三菱ケミカルアナリテック社製「CA−200」)を用いて測定した。加熱温度は200℃に設定し、キャリアガスには窒素ガスを用いた。
【0076】
<ボス部及びボス部下方の空隙部の面積の測定>
得られた試験片のボス部及びボス部下方の断面(
図2のA−A断面)を、以下のヤマト科学社製X線CT装置を用いて観察した。
装置名:ヤマト科学製 TDM1000H−II(2K)
電圧:80kV 電流:20μA
拡大軸(倍率):40〜110mm
解析ソフト:ラトックシステムエンジニアリング社製、
3次元解析ソフト TRI/3D−BON64
【0077】
上記で得られた試験片のボス部及びボス部下方の、
図2のA−A断面の画像に対して、樹脂部分及び空隙部分を2値化処理し、区別した。画像処理は、株式会社日本ローパー製「Image Pro Plus」を用いた。
図3中に破線で示す範囲として示したように、ボス部の基体部表面(
図3のB−B面)から高さ0〜0.5mmの範囲に存在する空隙の断面面積の合計S1を求め、ボス部下方の基体部表面(
図3のB−B面)から深さ0〜0.5mmの範囲に存在する空隙の断面面積の合計S2を求め、S1とS2の合計面積100%に対するS1の面積率(単位:%)及びS2の面積率(単位:%)を算出した。
【0078】
<ボス部強度の測定>
ボス部強度の測定は、
図2に示すように、試験片11を、リブ13とボス部12の間で、台座の固定具(図示せず)にて挟持固定した上で、(b)図中に破線で示した金属製の引張用治具14を用い、その穴部15にボス部12を入れ、引張用治具14を矢印方向に20mm/minの試験速度で引き上げ、ボス部12が破断する際の強度(単位:N)を求め、ボス部強度とした。
【0079】
<処理100時間後のボス強度保持率:耐加水分解性の評価>
上記で得られたポリブチレンテレフタレート樹脂材料のペレットを、熱風乾燥機を使用して120℃で1〜5時間乾燥させ、水分含有率の異なるペレットを得た後、射出成形機(日精樹脂工業社製「NEX80」)にて、シリンダー温度260℃、金型温度80℃、冷却時間20秒、充填時間1.5秒、射出ピーク圧の8割の値を保圧値とする条件で、下側に設けたフィルムゲートから樹脂を注入して、
図2に示すボス部付き試験片を成形した。試験片を、プレッシャークッカー(PCT)試験機(平山製作所社製)を用いて、温度121℃、相対湿度100%、圧力2atmの条件で、100時間処理し、同様に強度を測定し、処理前に対する処理後の強度保持率(単位:%)を算出した。
【0080】
<離型性の評価>
得られたペレットを用い、ファナック製「α100iA型」射出成形機を使用して、シリンダー温度250℃、金型温調機設定温度80℃にて、
図4に示すような中央部に仕切りを有する箱形成形品(タテ30mm、ヨコ54mm、奥行き34mm、肉厚1.5mm)を、
図4の箱形成形品の矢印で示す左側壁の最前面中央付近に設けたサイドゲート(ゲート厚み1.5mm×ゲート幅3mm)より、樹脂を注入して成形した。
【0081】
図5は、
図4に示した箱形成形品及びエジェクターピンを上方から見た上面図であり、
図6は、箱形成形品の底部にエジェクターピンが当たる位置を示す説明図である。成形品の抜き出しは、
図5に示す圧力センサ付きエジェクターピン大小合計4本を、
図6に示すような箱形成形品の底板にそれぞれを当接させ突き出すことにより行った。
【0082】
冷却時間を10秒に設定して成形を行い、金型から箱形成形品を、エジェクターピンにて突き出して抜き出した。
得られた箱形成形品の底板の変形と突き出し時に発生した音により、以下の三段階の基準で判定を行った。
「◎:底板の変形無し、かつ、突き出し時の音発生無し」
「○:底板の変形有り、かつ、突き出し時に異音発生有り」
「×:底板の突き破り有り」
【0083】
<離型抵抗値の測定>
得られたペレットを熱風乾燥機を使用して120℃で表2以下に記載の時間(0〜5時間)乾燥させた後、住友重機械工業社製射出成形機(型締め力50T)を用い、シリンダー温度260℃、金型温度80℃、充填時間1秒、保圧を射出ピーク圧の0割または8割の値、冷却時間10秒の条件にて、厚み1.5mm、外寸30×50×15mm深さの箱型成形品を成形し、エジェクターピンの突き出しで離型させた時の最大抵抗値を離型抵抗値(単位:MPa)として評価した。
評価結果を、以下の表2以下に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】