(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6590968
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】アンモニアガスセンサ用酸化物半導体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/12 20060101AFI20191007BHJP
【FI】
G01N27/12 C
G01N27/12 M
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-44276(P2018-44276)
(22)【出願日】2018年3月12日
(65)【公開番号】特開2018-155749(P2018-155749A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年3月26日
(31)【優先権主張番号】特願2017-51281(P2017-51281)
(32)【優先日】2017年3月16日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】大神 剛章
【審査官】
倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−171207(JP,A)
【文献】
特開2007−139669(JP,A)
【文献】
特開2014−092524(JP,A)
【文献】
特開2017−049231(JP,A)
【文献】
特開2016−041429(JP,A)
【文献】
HIEU,N.V., et al.,A comparative study on the NH3 gas-sensing properties of ZnO, SnO2, and WO3 nanowires,International Journal of Nanotechnology,2011年,Vol.8, Issue 3-5,p.174-187
【文献】
CHAUHAN, I. et al.,ZnO nanowire-immobilized paper matrices for visible light-induced antibacterial activity against Escherichia coli,Environ. Sci.: Nano,2015年,Vol.2,p.273-279
【文献】
FU, J. et al.,Hydrothermal growth of Ag-doped ZnO nanoparticles on electrospun cellulose nanofibrous mats for catechol detection,Electroanalysis,2015年,Vol.27,p.1490-1497
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/12
G01N 27/04
B82Y 30/00
B82Y 40/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が0.1nm〜30nmである複数の酸化物半導体ナノ粒子が、鎖状に集結してなるアンモニアガスセンサ用酸化物半導体の製造方法であって、次の工程(I)〜(II):
(I)少なくとも1種の金属元素を含む酸化物半導体原料化合物、及びセルロースナノファイバーを含有するスラリーを調製する工程、
(II)得られたスラリーを、温度が100℃以上、圧力が0.3MPa〜0.9MPaの水熱反応に付した後、得られた反応物を焼成する工程
を備える、アンモニアガスセンサ用酸化物半導体の製造方法。
【請求項2】
工程(II)の焼成が、酸素雰囲気下で行われる、請求項1に記載のアンモニアガスセンサ用酸化物半導体の製造方法。
【請求項3】
工程(II)の焼成を、焼成温度が300℃〜1000℃、及び焼成時間が10分間〜10時間の条件で行う、請求項1又は2に記載のアンモニアガスセンサ用酸化物半導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアガスセンサ用酸化物半導体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関からの排ガスに含まれる窒素酸化物の浄化方法の一つである尿素SCR方式は、選択還元触媒(SCR)に尿素を添加してアンモニアを発生させ、アンモニアにより窒素酸化物を還元する方法である。かかる尿素SCR方式では、通常アンモニア濃度等が適切かどうかを測定するために、アンモニアガスセンサが使用されている。
さらに、最近では、呼気中のアンモニア濃度を測定してピロリ菌感染診断や肝性脳症診断を行うために、ppbオーダーのアンモニアガスの検出が可能である高性能なアンモニアガスセンサが開発されている。
【0003】
一方、SnO
2やZnO等のn型半導体の性質を有する酸化物半導体は、かかる酸化物半導体に吸着している酸素が還元性物質で消費された際に電気抵抗変化が生じる特性を有することから、これを利用したガスセンサも広く知られている。
【0004】
こうしたなか、ガスセンサの検出感度を向上させるべく、比表面積が大きく結晶子径の小さな、ガスセンサ用の酸化物半導体の開発が試みられている。例えば、特許文献1では、SnCl
4水溶液をアンモニア水で加水分解して得られた生成物を塩化アンモニウムの水溶液に含浸した後、600℃で焼成することにより、比表面積が60m
2/g弱であり、結晶子径が7nm以下である金属酸化物半導体(SnO
2)を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−178882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のように微小な酸化物半導体であると、200℃〜1000℃の温度を有する排ガスの中で使い続けるにつれ、酸化物半導体粒子間のシンタリングが生じて、検出感度が低下してしまうおそれがある。そのため、依然として、過酷な使用環境下においてもガスセンサの高い検出感度を保持し得る酸化物半導体の実現が強く望まれる状況にある。
【0007】
したがって、本発明の課題は、高温域での検出感度の低下を充分に抑制し得るアンモニアガスセンサ用酸化物半導体、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者らは、種々検討したところ、特定の酸化物半導体ナノ粒子が集結してなる特異な形状を呈することにより、高温域においてもシンタリングが生じにくく、高い検出感度を維持することのできるアンモニアガスセンサ用酸化物半導体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、平均粒子径が0.1nm〜30nmである複数の酸化物半導体ナノ粒子が、鎖状に集結してなるアンモニアガスセンサ用酸化物半導体を提供するものである。
【0010】
さらに、本発明は、次の工程(I)〜(II):
(I)少なくとも1種の金属元素を含む酸化物半導体原料化合物、及びセルロースナノファイバーを含有するスラリーを調製する工程、
(II)得られたスラリーを、温度が100℃以上であり、かつ圧力が0.3MPa〜0.9MPaである水熱反応に付した後、得られた反応物を焼成する工程
を備える、上記アンモニアガスセンサ用酸化物半導体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のアンモニアガスセンサ用酸化物半導体によれば、非常に小さな複数の酸化物半導体ナノ粒子が鎖状に集結してなる特異な形状を呈していることから、これら酸化物半導体ナノ粒子が凝集しにくく適度に分散した構造となっているため、高温域における酸化物半導体のシンタリングを有効に抑制して検出感度の低下を効果的に抑制し、長期に渡って高い検出感度を発現するアンモニアガスセンサ用酸化物半導体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施例1で得られたSnO
2ナノ粒子の集合体を示すTEM写真である。
【
図2】比較例1で得られたSnO
2ナノ粒子を示すTEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のアンモニアガスセンサ用酸化物半導体は、平均粒子径が0.5nm〜30nmである複数の酸化物半導体ナノ粒子が、鎖状に集結してなる。具体的には、本発明のアンモニアガスセンサ用酸化物半導体は、後述するように、各々の酸化物半導体ナノ粒子が結晶成長中の隣接する酸化物半導体ナノ粒子と接するまで結晶成長を継続し、「ネッキング」とも称されるような「弱い焼結」を介することによって鎖状に集結してなるものである。このように、本発明のアンモニアガスセンサ用酸化物半導体は、隣接する酸化物半導体ナノ粒子間に結晶構造の変化を生じる程ではない「弱い焼結」を経て得られるものであることから、酸化物半導体ナノ粒子が不要に凝集することなく適度に分散しながら、全体として数珠様又は海ブドウ様の特異な形状を呈していると考えられる。
ここで、平均粒子径とは、SEM又はTEMの電子顕微鏡による観察において、数十個の粒子の粒子径(長軸の長さ)の測定値の平均値を意味する。
【0014】
このように、本発明のアンモニアガスセンサ用酸化物半導体は、複数の酸化物半導体ナノ粒子が鎖状に集結してなり、これら酸化物半導体ナノ粒子が過度に凝集することなく適度に分散してなる特異な形状を呈するため、これによって、高温域において酸化物半導体ナノ粒子同士のシンタリングが進行するのを有効に抑制することができる。
【0015】
本発明のアンモニアガスセンサ用酸化物半導体を構成する酸化物半導体ナノ粒子は、本発明の鎖状のアンモニアガスセンサ用酸化物半導体の主鎖を形成する粒子であり、金属原子であるM(MはCo、Mo、W、Ti、Sn、又はZnを示す)を含む酸化物が形成してなるナノサイズの粒子である。かかる金属(M)酸化物半導体ナノ粒子としては、具体的には、Co
3O
4、
MoO
3、WO
2、TiO
2、SnO
2、及びZnOから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、検出感度の観点から、SnO
2、ZnOが好ましく、SnO
2がより好ましい。
【0016】
上記酸化物半導体ナノ粒子は、微結晶粒子からなる微細な粒子である。具体的には、かかる酸化物半導体ナノ粒子の平均粒子径は、30nm以下であって、好ましくは20nm以下であり、下限値は0.1nm以上である。
【0017】
酸化物半導体ナノ粒子の晶癖(結晶の外形)としては、板状、針状、六面体、柱状等が挙げられる。なかでも、高温域における検出感度の低下を抑制する観点から、本発明のアンモニアガスセンサ用酸化物半導体の鎖状の伸長方向に延伸した六面体粒子であるのが好ましい。
【0018】
なお、本発明のアンモニアガスセンサ用酸化物半導体は、粒子径や形状が均一な酸化物半導体ナノ粒子の集合体により形成されてなるものであることが好ましいが、粒子径や形状が異なる酸化物半導体ナノ粒子の集合体により形成されてなるものであってもよく、また化学組成が異なる2種以上の酸化物半導体ナノ粒子の集合体により形成されてなるものであってもよい。
【0019】
本発明のアンモニアガスセンサ用酸化物半導体は、次の工程(I)〜(II):
(I)少なくとも1種の金属元素を含む酸化物半導体原料化合物、及びセルロースナノファイバーを含有するスラリーを調製する工程、
(II)得られたスラリーを、温度が100℃以上であり、かつ圧力が0.3MPa〜0.9MPaである水熱反応に付した後、得られた反応物を焼成する工程
を備える製造方法により、得ることができる。
すなわち、本発明のアンモニアガスセンサ用酸化物半導体の製造方法は、セルロースナノファイバー(以下、「CNF」とも称する。)を用いるものであり、かかるCNFを軸又は基材として、これに酸化物半導体ナノ粒子又は酸化物半導体の前駆体(水和物)ナノ粒子が複数連なって担持されることとなり、これらが直線的に配列してなる形状を呈するようなナノ粒子の集合体を反応物として得ることができる。そして、かかる反応物を焼成することによって、「ネッキング」とも称されるような「弱い焼結」を介しつつこれらナノ粒子が適度に分散しながら鎖状に集結し、本発明のような特異な形状を呈するアンモニアガスセンサ用酸化物半導体が形成されることとなる。
【0020】
工程(I)は、少なくとも1種の金属元素を含む酸化物半導体原料化合物、及びセルロースナノファイバーを含有するスラリーを調製する工程である。
【0021】
かかる工程(I)では、先ず、少なくとも1種の金属元素を含む酸化物半導体原料化合物、水、及びセルロースナノファイバーを混合してスラリーAを得る。
かかる酸化物半導体原料化合物としては、具体的には、例えば、コバルト化合物、マンガン化合物、タングステン化合物、チタン化合物、錫化合物又は亜鉛化合物等の金属化合物が挙げられる。なかでも、上記金属元素の硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物等を好適に使用することができる。
【0022】
これら酸化物半導体原料化合物、及びセルロースナノファイバーを混合してスラリーAを調製する際、水を用いる。かかる水の使用量は、各原料の溶解性又は分散性、撹拌の容易性、及び水熱反応の効率等の観点から、酸化物半導体原料化合物の金属元素1モルに対して10モル〜300モルが好ましく、さらに50モル〜200モルが好ましい。
また、スラリーA中におけるセルロースナノファイバーの含有量は、スラリーA中の水100質量部に対し、炭素原子換算量で、好ましくは0.01質量部〜10質量部であり、より好ましくは0.05質量部〜8質量部である。
【0023】
スラリーAに用いられるセルロースナノファイバーとは、全ての植物細胞壁の約5割を占める骨格成分であって、かかる細胞壁を構成する植物繊維をナノサイズまで解繊等することにより得ることができる軽量高強度繊維であり、水への良好な分散性も有している。
【0024】
CNFの平均繊維径は、50nm以下であって、好ましくは20nm以下であり、より好ましくは10nm以下である。下限値については特に制限されないが、通常1nm以上である。
また、CNFの平均長さは、好ましくは100nm〜100μmであり、より好ましくは1μm〜100μmであり、さらに好ましくは5μm〜100μmである。
【0025】
工程(I)では、次に、上記スラリーAにアルカリ溶液を添加してスラリーBとし、中和反応によって、スラリーB中に溶解又は分散している金属成分を金属水酸化物にする。アルカリ溶液を添加するには、スラリーBのpHを7〜14に保持するのに充分な量を滴下するのが好ましい。かかるアルカリ溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等の水溶液を用いることができるが、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム又はそれらの混合溶液を用いることが好ましい。
【0026】
上記スラリーBは、金属水酸化物を良好に生成させる観点から、撹拌して中和反応を進行させるのが好ましい。中和反応におけるスラリーBの温度は、5℃以上が好ましく、より好ましくは10℃〜60℃である。また、スラリーBの撹拌時間は、5分間〜120分間が好ましく、30分間〜60分間がより好ましい。
【0027】
工程(II)は、得られたスラリーBを、温度が100℃以上であり、かつ圧力が0.3MPa〜0.9MPaである水熱反応に付した後、得られた反応物を焼成する工程である。水熱反応に付すことにより、CNFを軸又は基材として、これに酸化物半導体ナノ粒子又は酸化物半導体の前駆体(水和物)ナノ粒子が複数連なって担持され、直線的に配列してなる形状を呈するナノ粒子の集合体を反応物として得ることができ、かかる反応物を焼成することにより、本発明のような特異な形状を呈するアンモニアガスセンサ用酸化物半導体を得ることができる。
かかる水熱反応の温度は、100℃以上であればよく、130℃〜180℃が好ましい。水熱反応は耐圧容器中で行うのが好ましく、130℃〜180℃で反応を行う場合、この時の圧力は0.3MPa〜0.9MPaであるのが好ましく、140℃〜160℃で反応を行う場合の圧力は0.3MPa〜0.6MPaであるのが好ましい。水熱反応時間は、0.5時間〜24時間が好ましく、さらに0.5時間〜15時間が好ましい。
【0028】
水熱反応後に得られた反応物は、ろ過後、水で洗浄した後、乾燥することによりこれを単離できる。ろ過手段には、減圧ろ過、加圧ろ過、遠心ろ過等を用いることができるが、操作の簡便性等からフィルタープレス等の加圧ろ過が好ましい。また、ろ過して得られた反応物を水で洗浄する際、反応物1質量部に対し、水を5質量部〜100質量部用いるのが好ましい。
乾燥手段は、凍結乾燥、真空乾燥が用いられ、凍結乾燥が好ましい。
【0029】
次に、得られた反応物を焼成して、複数の酸化物半導体ナノ粒子が鎖状に集結してなるアンモニアガスセンサ用酸化物半導体を得る。
かかる焼成は、酸素雰囲気下で行うのが好ましい。反応物を酸素雰囲気下で焼成する際、酸化物半導体ナノ粒子同士の強固な焼結を予防し、良好にネッキングしながらこれらの粒子を連接させる観点から、焼成温度は、好ましくは300℃〜1000℃であり、より好ましくは300℃〜800℃である。また焼成時間は、好ましくは10分間〜10時間であり、より好ましくは10分間〜5時間である。
【実施例】
【0030】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0031】
[実施例1:SnO
2ナノ粒子の集合体]
SnCl
2・2H
2O4.60g、CNF19.29g(スギノマシン社製TMa−10002、含水量98質量%)、及び水55mLを60分間混合してスラリーA1を作製した。得られたスラリーA1に、10質量%濃度のNaOH水溶液12mLを添加し、5分間混合してスラリーB1を作製した。スラリーB1をオートクレーブに投入し、140℃で1時間水熱反応を行った。得られた水熱反応生成物を放冷した後、ろ過、水洗浄した後、凍結乾燥して、CNFにSnO
2ナノ粒子が複数連なって直線的に担持された複合体を得た。得られた複合体を、酸素雰囲気下700℃×10分間焼成して、複数のSnO
2ナノ粒子がネッキングして連接し、鎖状に集結してなるSnO
2ナノ粒子の集合体を得た。
得られたSnO
2ナノ粒子の集合体のBET比表面積は、200m
2/gであり、SnO
2ナノ粒子の平均粒子径は10nmであった。
SnO
2ナノ粒子の集合体のTEM観察像を
図1に示す。なお、使用したTEMは、日本電子株式会社製JEM−ARM200Fであった。
【0032】
[比較例1:SnO
2ナノ粒子]
セルロースナノファイバーを添加しなかった以外、実施例1と同様にしてSnO
2ナノ粒子を得た。なお、SnO
2ナノ粒子のBET比表面積は、190m
2/gであり、平均粒子径は、10nmであった。
実施例1と同様のTEMを使用することにより得られたSnO
2ナノ粒子のTEM観察像を
図2に示す。
【0033】
≪検出感度の耐久性評価≫
実施例1及び比較例1で得られたSnO
2ナノ粒子の集合体又はSnO
2ナノ粒子を、それぞれリパルプして10質量%のスラリーとした後、指状構造のAu電極(電極の幅は5mm、回路間の幅は5mm)に塗工し、室温で12時間乾燥させ、アンモニアガスセンサ素子を得た。得られたアンモニアガスセンサ素子を用いて、400℃環境下での電気抵抗を測定することにより検出感度及びその耐久性を評価した。
具体的には、400℃の恒温槽内において、2.5Lの密閉容器の中に静置したアンモニアガスセンサ素子に、マルチメーターを接続して電気抵抗を測定できるようにした後、密閉容器を酸素濃度20体積%、窒素濃度80体積%の混合ガスで充填し、その後、注射針を用いて密閉容器内のアンモニアガス濃度が20ppmとなるようにアンモニアガスを導入した。
アンモニアガスセンサ素子の感度は、下記式(1)により算出した。また、1時間を1サイクルとしたサイクル毎に同量のアンモニアの導入を繰り返し行い、下記式(2)により100サイクル後の検出感度から耐久性を評価した。結果を表1に示す。
なお、1サイクル毎に上記密閉容器内の混合ガスは、新規のものに入れ替えた。
【0034】
アンモニアガスセンサ素子の感度(%)=
[(アンモニアガス導入前の電気抵抗)−(アンモニアガス導入後の電気抵抗)]/
(アンモニアガス導入前の電気抵抗)×100・・・(1)
アンモニアガスセンサ素子の耐久性(%)=
(100サイクル時の検出感度)/(1サイクル時の検出感度)×100・・・(2)
【0035】
【表1】
【0036】
表1から明らかなように、実施例1で得られたSnO
2ナノ粒子の集合体を使用したアンモニアガスセンサ素子は、比較例1で得られたSnO
2ナノ粒子を使用したアンモニアガスセンサ素子と比べ、感度が高く、かつ耐久性に優れている。
これは、比較例1で用いたSnO
2ナノ粒子は、SnO
2ナノ粒子の平均粒子径が実施例1と同じでありながらも、BET比表面積が小さいように、凝集構造を形成しているため、高温環境下ではシンタリングが生じやすいのに対し、実施例1で用いたSnO
2ナノ粒子の集合体は、より大きなBET比表面積であるとおり、SnO
2ナノ粒子がセルロースナノファイバーに直線的に連続して担持してなる、凝集し難い分散した構造であるため、高温環境下でもシンタリングが生じ難いことによる。