(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6590970
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】クレーン装置移動機構及び鉄道クレーン
(51)【国際特許分類】
B66C 23/36 20060101AFI20191007BHJP
【FI】
B66C23/36 D
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-50784(P2018-50784)
(22)【出願日】2018年3月19日
(65)【公開番号】特開2019-163106(P2019-163106A)
(43)【公開日】2019年9月26日
【審査請求日】2018年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】591117631
【氏名又は名称】株式会社NICHIJO
(73)【特許権者】
【識別番号】000180380
【氏名又は名称】四国旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 泰俊
(72)【発明者】
【氏名】中田 裕基
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 哲雄
【審査官】
須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭48−013012(JP,B1)
【文献】
実開平07−004482(JP,U)
【文献】
米国特許第06860698(US,B1)
【文献】
特開2014−189378(JP,A)
【文献】
特開平07−228484(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道クレーンの車体上に移動可能に配置された架台、前記架台上に設置されたクレーン装置、及び前記架台及び前記車体に連結された駆動手段を有し、
前記駆動手段は、前記クレーン装置の起伏時に前記クレーン装置が線路内架線範囲に干渉しない位置まで前記クレーン装置を前記鉄道クレーンの長手方向と直交する枕木方向に移動させることを特徴とするクレーン装置移動機構。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記鉄道クレーンの長手方向と直交する枕木方向に配置された油圧シリンダである、ことを特徴とする請求項1に記載のクレーン装置移動機構。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記架台に固定され又は形成された、前記鉄道クレーンの長手方向と直交する枕木方向に延在するラックと、当該ラックに噛み合うピニオンと、当該ピニオンに接続したモータである、ことを特徴とする請求項1に記載のクレーン装置移動機構。
【請求項4】
前記鉄道クレーンの長手方向における前記架台の両端部には、前記車体の全幅にわたって枕木方向に延在し前記架台をガイドするガイド手段が設置されている、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のクレーン装置移動機構。
【請求項5】
前記クレーン装置の枕木方向への移動量、前記クレーン装置の水平軸周りの回転量及びジブの長さの少なくとも1つに応じて、前記クレーン装置の垂直軸周りの旋回量を制限する制限装置を備える、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のクレーン装置移動機構。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のクレーン装置移動機構を備えることを特徴とする鉄道クレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン装置移動機構及び鉄道クレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
移動式クレーンには、トラッククレーン、ホイールクレーン、クローラクレーン、鉄道クレーン、浮きクレーンなどが含まれる。鉄道クレーンは、レール上を走行する車輪を有する車体にクレーン装置を備えたものであり、鉄道工事や鉄道の保線などに用いられ、鉄道の保線などに必要な材料や器具をフックで吊ることができる。
【0003】
特許文献1は、車両フレームの上で水平軸を中心に上方及び下方へ旋回可能に支承されそして垂直軸線を中心に回転可能である起伏ジブを有する例えば線路走行型自走クレーン等のクレーンにおいて、架橋工事等の場合に小さいスペースで長く重い荷物を搬送することを可能にするクレーンを開示している。
【0004】
しかしながら、起伏ジブを上方へ旋回させる水平軸は枕木方向に固定されているため、起伏ジブの上方への旋回時に起伏ジブがクレーンの上方にある架線に接触する恐れがあり、架線の破断、作業員の感電、列車の運休などの重大な事態が生じうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、クレーン装置の起伏操作時に、クレーン装置が架線に引っ掛かることを防止するクレーン装置移動機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、鉄道クレーンの車体上に移動可能に配置された架台、前記架台上に設置されたクレーン装置、及び前記架台及び前記車体に連結された駆動手段を有し、前記駆動手段は、前記クレーン装置の起伏時に前記クレーン装置が線路内架線範囲に干渉しない位置まで前記クレーン装置を
前記鉄道クレーンの長手方向と直交する枕木方向に移動させることを特徴とするクレーン装置移動機構により解決される。
【発明の効果】
【0007】
クレーンの起伏操作時に、簡単且つ確実にクレーンが架線に引っ掛かることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る鉄道クレーンを示す平面図及び側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る鉄道クレーンを示す正面図及び背面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るクレーン装置移動機構を示す概略平面図である。
【
図4】線路内架線範囲と鉄道クレーンの位置を示す概略図である。
【
図5】クレーン装置が載置された架台の拡大図である。
【
図6】架台と連結したスライド用油圧シリンダを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
先ず、本発明の実施形態に係るクレーン装置移動機構を適用する鉄道クレーンについて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る鉄道クレーンを示す平面図及び側面図であり、
図2は、本発明の実施形態に係る鉄道クレーンを示す正面図及び背面図である。
図1,2に示す鉄道クレーン100は、前方に、エンジンを備えた機関室101、及び鉄道クレーンの走行を操作するための運転室103を有する。また鉄道クレーン100は、運転室103の後方に、鉄道の保線時などに昇降し、高所作業するための高所作業台105、及び高所作業台の後方に、鉄道の保線時などに必要な材料や器具を吊るすためのクレーン装置107を有する。また鉄道クレーン100は、車体横に張り出して接地させることで車体を安定させる装置であるアウトリガー109を有する。
【0010】
本実施形態では、鉄道クレーン100は一体型に構成されており、走行時には鉄道クレーン100の車体102の下部に設置された車輪113によって線路111上を走行する。鉄道クレーン100が保線すべき場所に到達すると、作業員が伸縮可能なクレーン装置107を操縦して保線に必要な機材などをフック112に吊るし、保線作業を行う。作業員は、クレーン装置本体に設けられた操作部やラジコン装置によってクレーン装置107を操作できる。
【0011】
しかしながら、
図3に示すように、鉄道クレーン100の上方には架線が引かれているため、保線作業時にクレーン装置107を油圧シリンダ117によって水平軸119の周りに回転させて起伏させると、クレーン装置107の上部が架線に接触してしまう。
図3において、架線が配置されている範囲は線路内架線範囲として示されている。
【0012】
そこで本実施形態では、クレーン装置移動機構120によって、ジブ125を有するクレーン装置107自体を枕木方向にスライドさせ、クレーン装置107及びその水平軸119を線路内架線範囲の外側に移動させることができる。ジブ125はクレーン装置107の水平軸119の周りに回転し、上昇又は下降することができる。したがって、クレーン装置107を線路内架線範囲外に移動後に起伏させれば、クレーン装置107の上方に架線は存在しないため、クレーン装置107は架線に接触しない。
【0013】
図4は、クレーン装置移動機構120の概略平面図である。
クレーン装置移動機構120は、鉄道クレーン100の車体102上に移動可能に配置された架台115、架台115上に設置されたクレーン装置107、架台115及び車体102に連結された駆動手段としての油圧シリンダ123を有する。油圧シリンダは、クレーン装置107の起伏時にクレーン装置107が線路内架線範囲(
図3)に干渉しない位置までクレーン装置107を移動させることができる。油圧シリンダは、鉄道クレーン100の長手方向(線路の延在方向)と直交する枕木方向に配置されている。ゆえに
図4に示すように、油圧シリンダ123の作動によって、クレーン装置107は架台115と共に鉄道クレーン100の長手方向と直交する枕木方向にスライド(平行移動)でき、これに伴いクレーン装置107のジブ125及び水平軸119も枕木方向に平行移動できる。
【0014】
また、油圧シリンダ123に代えて、駆動手段として、架台115に固定され又は形成された、鉄道クレーン100の長手方向と直交する枕木方向に延在するラックと、ラックに噛み合うピニオンと、ピニオンに接続したモータとを設け、モータの回転によりピニオンを回転させることで、架台115を枕木方向にスライドさせてもよい。
【0015】
図5(a)は、クレーン装置移動機構120の拡大平面図であり、
図5(b)は、クレーン装置移動機構120の拡大側面図である。
図6は、
図5の矢印方向に見たクレーン装置移動機構120の部分拡大断面図である。
図5,6では、鉄道クレーン100の車体102上にスライド可能に配置された架台115が斜線で示されている。架台115は、平坦な板状の部材であり、車体102の幅方向(枕木方向)の略中央に配置されている。
図6に示すように、クレーン装置107の基部が締結手段131により架台115上に固定されている。
【0016】
図5に示すように、鉄道クレーン100の長手方向における架台115の両端部には、車体102の全幅にわたって枕木方向に延在し架台115をガイドするガイド手段129が設置されている。
図5(b)に示すように、ガイド手段129は締結手段133によって車体102に固定されており、そのガイド手段129の突出部129aが架台115の両端部を覆っている。これによりガイド手段129は、架台115の枕木方向の移動をガイドするとともに、架台115を下方に押さえる機能を有する。よって、架台115上に設置されたクレーン装置107のフック112に重い荷物が吊るされた状態で架台115が左右にスライドしても、架台115が傾いたり車体102から外れたりすることが防止される。
【0017】
図5(a)に示すように、架台115の中央部にはクレーン装置107の旋回装置127が配置されており、旋回装置127によって、ジブ125を有するクレーン装置107は垂直軸121の周りを360°旋回することができる。
【0018】
図6に示すように、架台115のスライド用の油圧シリンダ123が枕木方向に平行に配置され、架台115及び車体102に連結されている。具体的には、油圧シリンダ123のシリンダ123aが車体102に固定され、ロッド123bが架台115に固定されている。よって、油圧シリンダ123の伸縮により、架台115はクレーン装置107と共に車体102に対して図中左右方向に移動でき、クレーン装置107は
図3に示すように線路内架線範囲の外側まで移動できる。なお、油圧シリンダ123のロッド123bが車体102に固定され、シリンダ123aが架台115に固定されてもよい。
【0019】
図3において、クレーン装置107が線路内架線範囲の外側まで移動した後は、クレーン装置107を水平軸119の周りに回転させてもクレーン装置107は架線に接触しない。しかし、一旦、クレーン装置107を線路内架線範囲の下端よりも上方に起伏させた後、クレーン装置107を線路内架線範囲に向かって垂直軸121の周りに旋回させれば、クレーン装置107が架線に接触してしまう。そこで、クレーン装置移動機構120は、クレーン装置107の枕木方向への移動量、クレーン装置107の水平軸119周りの回転量及びジブ125の長さの少なくとも1つに応じて、クレーン装置107の垂直軸121周りの旋回量を制限する制限装置を備えると好ましい。制限装置は、クレーン装置107が線路内架線範囲に干渉する前にクレーン装置107を自動停止させたり、アラーム音の発信やアラームランプの点灯を行ったりする。制限装置によって、作業員がクレーン装置107の誤操作を行った場合でも、クレーン装置107が架線に接触する恐れが排除される。
【符号の説明】
【0020】
100 鉄道クレーン
102 車体
115 架台
123 油圧シリンダ(駆動手段)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開平7−215676号公報