(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
分子内に−C(=O)OX基(Xは、水素原子又は炭素数1以上6以下のアルキル基である)を3つ以上有し、3つ以上の−C(=O)OX基のうち、1つ以上6つ以下が−C(=O)OH基であり、重量平均分子量が200以上600以下である架橋剤(D)、をさらに含む、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の金属含有膜形成用組成物。
前記混合工程は、少なくとも、カルボキシ基を有する重量平均分子量46以上195以下の酸である添加剤(C)及び前記化合物(a1)の混合物と、前記化合物(B)と、を混合する工程である請求項9に記載の金属含有膜形成用組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の実施形態について説明する。
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0026】
〔金属含有膜形成用組成物〕
本開示の金属含有膜形成用組成物(以下、「組成物」と称することもある。)は、1級窒素原子及び2級窒素原子の少なくとも1つを含むカチオン性官能基を有する化合物(a1)、並びに、前記化合物(a1)以外の窒素原子を有する化合物(a2)からなる群より選択される少なくとも1種である化合物(A)と、
ゲルマニウム原子、スズ原子、セレン原子、及びジルコニウム原子の少なくとも1つとカルボキシ基とを有する化合物(b1)、並びに、前記化合物(b1)のエステルからなる群より選択される少なくとも1種である化合物(B)と、
を含む。
本開示の金属含有膜形成用組成物によれば、エッチング選択性に優れ、かつ耐熱性に優れた金属含有膜が得られる。
ここで、「エッチング選択性に優れ」とは、他の膜(例えば、従来の有機膜、従来のケイ素含有膜など)とは異なるエッチング特性(例えばエッチングレートが小さい又は大きい)を有することを意味する。
また、本開示の金属含有膜形成用組成物によれば、凹部への充填性にも優れた金属含有膜が得られる。
「凹部への充填性に優れ」とは、例えば微細溝(例えば幅100nm及び深さ200nmを有する凹部)への組成物の充填性(つまり埋め込み性)が良好であることを意味する。したがって、本開示の組成物によれば、凹部中に、ボイドの形成が抑制された金属含有膜が得られやすい。
【0027】
本開示の効果が得られる理由は以下のように推察される。
本開示では、化合物(b1)はカルボキシ基を有し、前記化合物(b1)のエステルは−C(=O)O−基を有している。すなわち、化合物(b1)及び前記化合物(b1)のエステルは、いずれも−C(=O)O−基を有している。
このため、本開示の金属含有膜形成用組成物を用いて金属含有膜を形成すると、化合物(a1)が有する1級窒素原子及び2級窒素原子の少なくとも1つを含むカチオン性官能基と、化合物(B)が有する−C(=O)O−基とが反応し、金属含有膜中において、アミド結合、イミド結合、及びアミドイミド結合の少なくとも1つが形成される。すなわち、金属含有膜中において、化合物(a1)と化合物(B)との間で架橋構造が形成される。
本開示では、金属含有膜中における化合物(B)と化合物(a1)との間で形成されるアミド結合、イミド結合、及びアミドイミド結合の少なくとも1つの結合の形成、つまり架橋構造の形成がエッチング選択性及び耐熱性の向上に寄与していると考えられる。
【0028】
また、本開示の金属含有膜形成用組成物では、かかる組成物中において、化合物(a2)と化合物(B)とで塩が形成され得る。この塩の形成により、化合物(a2)及び化合物(B)の溶解性が向上する。
本開示では、上記溶解性の向上が、エッチング選択性及び耐熱性の向上に寄与していると考えられる。
特に、化合物(A)として、化合物(a1)と化合物(a2)とを共に含む場合、化合物(a2)と化合物(B)との塩の形成により、かかる組成物中における化合物(a1)のゲル化が抑制される。これにより、化合物(A)及び化合物(B)の溶解性がより向上すると考えられる。
【0029】
さらに、本開示では、金属含有膜形成用組成物から得られる金属含有膜が、多層レジストプロセスにおけるレジストパターンや埋め込み絶縁膜(STI膜、PMD膜、IMD膜、ILD膜等)である場合、凹部への充填性にも優れた金属含有膜となりやすい。
すなわち、本開示の金属含有膜形成用組成物を用いて金属含有膜を形成すると、凹部への充填性に優れた金属含有膜が得られる。
特に、本開示の金属含有膜形成用組成物が、化合物(A)として化合物(a2)を含む場合、凹部への充填性により優れた金属含有膜が得られやすい。
【0030】
ここで、埋め込み絶縁膜とは、少なくとも一部が凹部に埋め込まれる(即ち、充填される)ことによって、凹部を有する部材の凹部を含む領域に形成される絶縁膜である。
凹部としては、例えば溝(例えばトレンチ)、孔(例えばビア)挙げられる。
凹部として、より具体的には、部材に対しエッチングによって形成された凹部(例えば素子分離溝、ビア等)、部材上に設けられた複数の導通部(例えばCu等の金属製の電極又は配線)の側面と、部材表面と、によって確定される凹部、などが挙げられる。
埋め込み絶縁膜は、凹部の内部にのみ形成(充填)されていてもよいし、凹部の内部に形成(充填)された上で凹部の外部(凹部の上方、及び、凹部の周囲の平坦部)にまではみ出して形成されていてもよい。
浅溝型素子分離膜(STI膜:Shallow Trench Isolation膜)とは、シリコン基板上のトランジスタの分離のために形成されたシリコン基板に形成された溝に形成される絶縁膜である。
プリメタル絶縁膜(PMD膜:Pre Metal Dielectric膜)とは、半導体基板上に形成されたトランジスタ、抵抗、及びキャパシタ等の素子電極とその上方に形成される金属配線との間に形成される絶縁膜である。
配線層間絶縁膜(IMD膜:Inter Metal Dielectric膜、またはILD膜:Inter layer dielectric膜)とは、金属配線間に形成される絶縁膜である。
【0031】
なお、前述の国際公開2015/137193号に記載の半導体デバイス製造用組成物では、溶媒中で金属化合物と過酸化水素とを反応させて得られる生成物を含むため、かかる組成物から得られる膜中において、アミド結合、イミド結合、及びアミドイミド結合の少なくとも1つの結合が形成されているわけではない。
また、前述の特開2014−134581号公報に記載の金属含有膜形成用組成物では、金属の価数と等しいOH基を形成し得る金属アルコキシド化合物(例えばジルコニウムテトラエトキシド)を含有するため、溶液中での脱水縮合により、重合体が形成されやすい。これにより、凹部へ上記組成物を充填する際、ボイド等が発生し、パターン化のときに問題を生ずるおそれがある。
【0032】
以下、本開示の金属含有膜形成用組成物に含まれる成分について説明する。
【0033】
(化合物(A))
本開示の金属含有膜形成用組成物は、1級窒素原子及び2級窒素原子の少なくとも1つを含むカチオン性官能基を有する化合物(a1)、並びに、前記化合物(a1)以外の窒素原子を有する化合物(a2)からなる群より選択される少なくとも1種である化合物(A)を含む。
本開示の金属含有膜形成用組成物は、凹部への充填性により優れた金属含有膜を得る観点から、化合物(A)として、化合物(a2)を含むことが好ましい。
【0034】
−化合物(a1)−
化合物(a1)は、1級窒素原子及び2級窒素原子の少なくとも1つを含むカチオン性官能基を有する化合物である。カチオン性官能基としては、正電荷を帯びることができ、かつ1級窒素原子及び2級窒素原子の少なくとも1つを含む官能基であれば特に限定されない。
【0035】
さらに、化合物(a1)は、1級窒素原子及び2級窒素原子のほかに、3級窒素原子を含んでいてもよい。
【0036】
本明細書において、「1級窒素原子」とは、水素原子2つ及び水素原子以外の原子1つのみに結合している窒素原子(例えば、1級アミノ基(−NH
2基)に含まれる窒素原子)、又は、水素原子3つ及び水素原子以外の原子1つのみに結合している窒素原子(カチオン)を指す。
また、「2級窒素原子」とは、水素原子1つ及び水素原子以外の原子2つのみに結合している窒素原子(即ち、下記式(a)で表される官能基に含まれる窒素原子)、又は、水素原子2つ及び水素原子以外の原子2つのみに結合している窒素原子(カチオン)を指す。
また、「3級窒素原子」とは、水素原子以外の原子3つのみに結合している窒素原子(即ち、下記式(b)で表される官能基である窒素原子)、又は、水素原子1つ及び水素原子以外の原子3つのみに結合している窒素原子(カチオン)を指す。
【0038】
式(a)及び式(b)において、*は、水素原子以外の原子との結合位置を示す。
ここで、前記式(a)で表される官能基は、2級アミノ基(−NHR
a基;ここで、R
aはアルキル基を表す)の一部を構成する官能基であってもよいし、ポリマーの骨格中に含まれる2価の連結基であってもよい。
また、前記式(b)で表される官能基(即ち、3級窒素原子)は、3級アミノ基(−NR
bR
c基;ここで、R
b及びR
cは、それぞれ独立に、アルキル基を表す)の一部を構成する官能基であってもよいし、ポリマーの骨格中に含まれる3価の連結基であってもよい。
【0039】
化合物(a1)の重量平均分子量は、130以上40万以下であることが好ましい。
【0040】
なお、本明細書において、重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)法によって測定された、ポリエチレングリコール換算の重量平均分子量を指す。
具体的には、重量平均分子量は、展開溶媒として硝酸ナトリウム濃度0.1mol/Lの水溶液を用い、分析装置Shodex GPC−101及び2種類の分析カラム(東ソー製 TSKgel G6000PWXL-CP及びTSKgel G3000PWXL-CP)とリファレンスカラム(東ソー製TSKgel SCX)を用いて流速1.0ml/minで屈折率を検出し、ポリエチレングリコールを標準品として解析ソフト(SIC製 480IIデーターステーション)にて算出される。
【0041】
また、化合物(a1)は、必要に応じて、アニオン性官能基やノニオン性官能基をさらに有していてもよい。
前記ノニオン性官能基は、水素結合受容基であっても、水素結合供与基であってもよい。前記ノニオン性官能基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボニル基、エーテル基(−O−)、等を挙げることができる。
前記アニオン性官能基は、負電荷を帯びることができる官能基であれば特に制限はない。前記アニオン性官能基としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、硫酸基等を挙げることができる。
【0042】
化合物(a1)としては、化合物(B)との架橋構造の形成のし易さの観点から、重量平均分子量1万以上20万以下の脂肪族アミン(A−1)、シロキサン結合(Si−O結合)とアミノ基とを有する重量平均分子量130以上50000以下の化合物(A−2)、及び重量平均分子量90以上600以下の環構造を有するアミン(A−3)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
これにより、化合物(B)が有する−C(=O)O−基と、化合物(a1)が有する1級窒素原子及び2級窒素原子の少なくとも1つを含むカチオン性官能基とで、アミド結合、イミド結合、及びアミドイミド結合の少なくとも1つが形成されやすくなる。すなわち、金属含有膜中において架橋構造が形成されやすくなる。
【0043】
(脂肪族アミン(A−1))
本開示における脂肪族アミン(A−1)は、重量平均分子量1万以上20万以下の脂肪族アミンである。
脂肪族アミン(A−1)としては、エチレンイミン、プロピレンイミン、ブチレンイミン、ペンチレンイミン、ヘキシレンイミン、ヘプチレンイミン、オクチレンイミン、トリメチレンイミン、テトラメチレンイミン、ペンタメチレンイミン、ヘキサメチレンイミン、オクタメチレンイミンなどのアルキレンイミンの重合体であるポリアルキレンイミン;ポリアリルアミン;ポリアクリルアミドが挙げられる。
【0044】
ポリエチレンイミン(PEI)は、特公昭43−8828号公報、特公昭49−33120号公報、特開2001−2123958号公報、国際公開第2010/137711号パンフレット等に記載の公知の方法によって、製造することができる。ポリエチレンイミン以外のポリアルキレンイミンについても、ポリエチレンイミンと同様の方法により製造できる。
【0045】
脂肪族アミン(A−1)は、上述したポリアルキレンイミンの誘導体(ポリアルキレンイミン誘導体;特に好ましくはポリエチレンイミン誘導体)であることもまた好ましい。ポリアルキレンイミン誘導体としては、上記ポリアルキレンイミンを用いて製造可能な化合物であれば特に制限はない。具体的には、ポリアルキレンイミンにアルキル基(好ましくは炭素数1〜10のアルキル基)やアリール基を導入したポリアルキレンイミン誘導体、ポリアルキレンイミンに水酸基等の架橋性基を導入して得られるポリアルキレンイミン誘導体等を挙げることができる。
これらのポリアルキレンイミン誘導体は、上記ポリアルキレンイミンを用いて通常行われる方法により製造することができる。具体的には例えば、特開平6―016809号公報等に記載の方法に準拠して製造することができる。
【0046】
また、ポリアルキレンイミン誘導体としては、ポリアルキレンイミンに対してカチオン性官能基含有モノマーを反応させることにより、ポリアルキレンイミンの分岐度を向上させて得られた高分岐型のポリアルキレンイミンも好ましい。
高分岐型のポリアルキレンイミンを得る方法としては、例えば、骨格中に複数の2級窒素原子を有するポリアルキレンイミンに対してカチオン性官能基含有モノマーを反応させ、前記複数の2級窒素原子のうちの少なくとも1部をカチオン性官能基含有モノマーによって置換する方法や、末端に複数の1級窒素原子を有するポリアルキレンイミンに対してカチオン性官能基含有モノマーを反応させ、前記複数の1級窒素原子のうちの少なくとも1部をカチオン性官能基含有モノマーによって置換する方法、が挙げられる。
分岐度を向上するために導入されるカチオン性官能基としては、アミノエチル基、アミノプロピル基、ジアミノプロピル基、アミノブチル基、ジアミノブチル基、トリアミノブチル基等を挙げることができるが、カチオン性官能基当量を小さくしカチオン性官能基密度を大きくする観点から、アミノエチル基が好ましい。
【0047】
また、前記ポリエチレンイミン及びその誘導体は、市販のものであってもよい。例えば、(株)日本触媒、BASF社、MP−Biomedicals社等から市販されているポリエチレンイミン及びその誘導体から、適宜選択して用いることもできる。
【0048】
なお、脂肪族アミン(A−1)はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
(シロキサン結合(Si−O結合)とアミノ基とを有する化合物(A−2))
本開示におけるシロキサン結合(Si−O結合)とアミノ基とを有する化合物(A−2)は、重量平均分子量130以上50000以下の化合物である。
【0050】
シロキサン結合(Si−O結合)とアミノ基とを有する化合物(A−2)(以下、化合物(A−2)と称することもある。)の重量平均分子量は130以上50000以下であることが好ましく、130以上5000以下であることがより好ましく、130以上2000以下であることが更に好ましい。
【0051】
化合物(A−2)としては、例えば、シロキサンジアミン、アミノ基を有するシランカップリング剤、シロキサン重合体などが挙げられる。
【0052】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジプロポキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジイソプロポキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノイソブチルジメチルメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−11−アミノウンデシルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェニルトリイソプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェニルトリイソプロポキシシラン、メチルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ベンジルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ベンジルアミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノエチル)フェネチルトリイソプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリプロポキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリイソプロポキシシラン、N−[2−[3−(トリメトキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、N−[2−[3−(トリエトキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、N−[2−[3−(トリプロポキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、N−[2−[3−(トリイソプロポキシシリル)プロピルアミノ]エチル]エチレンジアミン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、N,N’−ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、トリメトキシ[2−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル]シラン、およびこれらの加水分解物が挙げられる。
【0053】
前述のアミノ基を有するシランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、アミノ基を有するシランカップリング剤と、アミノ基を有しないシランカップリング剤とを組み合わせて用いてもよい。例えば、金属との密着性改善のためメルカプト基を有するシランカップリング剤を用いてもよい。
【0054】
また、これらのシランカップリング剤から、シロキサン結合(Si−O−Si)を介して形成される重合体(シロキサン重合体)を用いてもよい。例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシランの加水分解物からは、線形シロキサン構造を有する重合体、分岐状シロキサン構造を有する重合体、環状シロキサン構造を有する重合体、かご状シロキサン構造を有する重合体等が得られる。かご状シロキサン構造は、例えば、下記式(A−21)で表される。
【0056】
本開示の金属含有膜形成用組成物について、プラズマエッチングの選択性が求められる場合(例えばギャップフィル材料(埋め込み平坦化膜)、埋め込み絶縁膜(STI膜、PMD膜、IMD膜、ILD膜等)用途)、一般式(I)で表される金属アルコキシドを含有させてもよい。
R1
nM(OR2)
m−n・・・(I)(式中、R1は非加水分解性基、R2は炭素数1〜6のアルキル基であり、Mは、Sn、Ti、Al、Zr、Sr、Ba、Zn、B、Ga、Y、Ge、Pb、P、Sb、V、Ta、W、La、Nd、Hf及びInの金属原子群から選ばれる少なくとも1種の金属原子を示し、mは金属原子Mの価数で、3又は4であり、nは、mが4の場合は0〜2の整数、mが3の場合は0又は1であり、R1が複数ある場合、各R1は互いに同一であっても異なっていてもよく、OR2が複数ある場合、各OR2は互いに同一であっても異なっていてもよい。)好ましくはnが1以上である。
【0057】
本開示の金属含有膜形成用組成物から製造された膜に絶縁性が求められる場合(例えば埋め込み絶縁膜(STI膜、PMD膜、IMD膜、ILD膜等)用途)において、絶縁性又は機械強度改善の為、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、ビストリエトキシシリルエタン、ビストリエトキシシリルメタンを混合させてもよい。更に、絶縁膜の疎水性改善の為にメチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等を混合させてもよい。
【0058】
シロキサンジアミンとしては、例えば、下記式(A−22)で表される化合物が挙げられる。なお、式(A−22)中、iは0〜4の整数、jは0又は1である。
【0060】
また、シロキサンジアミンとしては、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(式(A−22)において、i=0、j=1)、1,3−ビス(2−アミノエチルアミノ)プロピルテトラメチルジシロキサン(式(A−22)において、i=1、j=1)が挙げられる。
【0061】
なお、シロキサン結合(Si−O結合)とアミノ基とを有する化合物はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
(環構造を有するアミン(A−3))
本開示における環構造を有するアミン(A−3)(以下、化合物(A−3)とも称する)は、重量平均分子量90以上600以下の環構造を有するアミンである。化合物(A−3)の重量平均分子量は90以上300以下であることが好ましい。
化合物(A−3)としては、例えば、環構造を有する第1級アミンまたは第2級アミンが挙げられる。上記化合物(A−3)は、脂環式アミン、芳香族アミン、複素環(ヘテロ環)アミンであることが好ましい。化合物(A−3)は、分子内に複数の環構造を有していてもよく、複数の環構造は、同じであっても異なっていてもよい。
化合物(A−3)としては、熱的に、より安定な化合物が得られ易いため、芳香族アミンがより好ましい。
上記芳香族アミンとしては、例えば、総炭素数6〜15の芳香族アミン、総炭素数6〜15の芳香脂肪族アミンなどが挙げられる。
【0063】
化合物(A−3)としては、アミド構造などの熱架橋構造の数を多くし易く、耐熱性をより高めることができる点から、1級アミノ基を2つ有するジアミン化合物、1級アミノ基を3つ有するトリアミン化合物が好ましい。
また、化合物(A−3)としては、例えば後述の架橋剤(D)を用いた場合には、イミド構造、イミドアミド構造、アミド構造などの熱架橋構造の数を多くし易く、耐熱性をより高めることができる点から、1級アミノ基を2つ有するジアミン化合物、1級アミノ基を3つ有するトリアミン化合物が好ましい。
【0064】
脂環式アミンとしては、例えば、シクロヘキシルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミンなどが挙げられる。
芳香族アミンとしては、例えば、ジアミノジフェニルエーテル、キシレンジアミン(好ましくはパラキシレンジアミン)、ジアミノベンゼン、ジアミノトルエン、メチレンジアニリン、ジメチルジアミノビフェニル、ビス(トリフルオロメチル)ジアミノビフェニル、ジアミノベンゾフェノン、ジアミノベンズアニリド、ビス(アミノフェニル)フルオレン、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(アミノフェノキシ)ビフェニル、ジカルボキシジアミノジフェニルメタン、ジアミノレゾルシン、ジヒドロキシベンジジン、ジアミノベンジジン、1,3,5−トリアミノフェノキシベンゼン、2,2’−ジメチルベンジジン、トリス(4−アミノフェニル)アミン、2,7−ジアミノフルオレン、1,9−ジアミノフルオレン、ジベンジルアミンなどが挙げられる。
【0065】
複素環アミンとしては、例えば、窒素原子を含有する複素環構造を有する複素環アミン;硫黄原子を含有する複素環構造を有する複素環アミン;複素環構造と芳香族複素環以外の芳香環構造との両方を有するアミン化合物;等が挙げられる。
窒素原子を含有する複素環構造を有する複素環アミンとしては、例えば、メラミン、アンメリン、メラム、メレム等が挙げられる。また、硫黄原子を含有する複素環構造を有する複素環アミンとしては、例えば、5−チアゾールアミン、2−アミノベンゾチアゾール等が挙げられる。
複素環構造と芳香族複素環以外の芳香環構造との両方を有するアミン化合物としては、例えば、N2,N4,N6−トリス(4−アミノフェニル)―1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン、2,4−ジアミノ−6−フェニル−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0066】
なお、環構造を有するアミン(A−3)はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
前述のように、化合物(a1)は、1級窒素原子及び2級窒素原子の少なくとも1つを含むカチオン性官能基を有する。
ここで、化合物(a1)が1級窒素原子を含む場合には、化合物(a1)中の全窒素原子中に占める1級窒素原子の割合が20モル%以上であることが好ましく、25モル%以上であることがより好ましく、30モル%以上であることが更に好ましい。また、化合物(a1)は、1級窒素原子を含み、かつ1級窒素原子以外の窒素原子(例えば、2級窒素原子、3級窒素原子)を含まないカチオン性官能基を有していてもよい。
【0068】
また、化合物(a1)が2級窒素原子を含む場合には、化合物(a1)中の全窒素原子中に占める2級窒素原子の割合が5モル%以上50モル%以下であることが好ましく、10モル%以上45モル%以下であることがより好ましい。
【0069】
また、化合物(a1)は、1級窒素原子及び2級窒素原子のほかに、3級窒素原子を含んでいてよく、化合物(a1)が3級窒素原子を含む場合には、化合物(a1)中の全窒素原子中に占める3級窒素原子の割合が20モル%以上50モル%以下であることが好ましく、25モル%以上45モル%以下であることが好ましい。
【0070】
本開示において、金属含有膜形成用組成物中における化合物(a1)の含有量は、特に制限されないが、例えば、組成物全体に対して0.001質量%以上20質量%以下とすることができ、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.04質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0071】
なお、化合物(a1)は、前述の脂肪族アミン(A−1)、シロキサン結合(Si−O結合)とアミノ基とを有する化合物(A−2)、及び環構造を有するアミン(A−3)からなる群より選択される少なくとも2種以上の混合物であってもよい。
【0072】
−化合物(a2)−
化合物(a2)は、化合物(a1)以外の窒素原子を有する化合物である。
化合物(a2)としては、化合物(B)との塩の形成のし易さの観点から、重量平均分子量が17以上120以下である塩基(A−4)であることが好ましい。
なお、化合物(a2)の重量平均分子量の測定方法は、化合物(a1)と同様である。
【0073】
本開示の金属含有膜形成用組成物が、例えば化合物(A)として、塩基(A−4)と化合物(a1)とを共に含む場合、化合物(B)におけるカルボキシ基と塩基(A−4)におけるアミノ基とがイオン結合を形成することで、化合物(a1)と化合物(B)との会合による凝集が抑制されると推測される。より詳細には、化合物(B)におけるカルボキシ基に由来するカルボキシラートイオンと塩基(A−4)におけるアミノ基に由来するアンモニウムイオンとの相互作用が、化合物(a1)におけるアミノ基に由来するアンモニウムイオンと化合物(B)におけるカルボキシ基に由来するカルボキシラートイオンとの相互作用よりも強いため、凝集が抑制されると推測される。なお、本開示は上記推測によって何ら限定されない。
【0074】
塩基(A−4)としては、窒素原子を有し、かつ重量平均分子量17以上120以下の化合物であれば特に限定されず、モノアミン化合物、ジアミン化合物などが挙げられる。 具体的に塩基(A−4)としては、アンモニア、アンモニウム塩、エチルアミン、エタノールアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、N−アセチルエチレンジアミン、N−(2−アミノエチル)エタノールアミン、N−(2−アミノエチル)グリシンなどが挙げられる。
【0075】
本開示の金属含有膜形成用組成物が、化合物(A)として塩基(A−4)を含む場合、金属含有膜形成用組成物中における塩基(A−4)の含有量は、特に制限されないが、例えば、化合物(B)中のカルボキシ基の数に対する塩基(A−4)中の窒素原子の数の比率(N/COOH)が、0.5以上5以下であることが好ましく、0.7以上3以下であることがより好ましく、0.9以上3以下であることが更に好ましい。
【0076】
金属含有膜形成用組成物中における化合物(A)の含有量は、組成物全体に対して0.001質量%以上20質量%以下とすることができ、0.01質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.04質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
なお、化合物(A)は、前述の脂肪族アミン(A−1)、シロキサン結合(Si−O結合)とアミノ基とを有する化合物、環構造を有するアミン(A−3)、及び塩基(A−4)からなる群より選択される少なくとも2種以上の混合物であってもよい。
【0077】
(化合物(B))
本開示の金属含有膜形成用組成物は、ゲルマニウム原子、スズ原子、セレン原子、及びジルコニウム原子の少なくとも1つとカルボキシ基とを有する化合物(b1)、並びに、前記化合物(b1)のエステルからなる群より選択される少なくとも1種である化合物(B)を含む。
化合物(B)は、ゲルマニウム原子、スズ原子、セレン原子、及びジルコニウム原子からなる群より選択される同種の金属原子を2つ以上含んでいてもよい。
前記化合物(b1)のエステルとは、カルボン酸である化合物(b1)と、アルコールとの脱水縮合反応で得られるエステル化合物をいう。アルコールとしては、特に制限はないが、例えば炭素数1〜10のアルコール(直鎖状、分枝状、環状のいずれも可)が挙げられる。なお、前記アルコールのアルキル基は置換基を有していてもよい。
なお、化合物(b1)及び前記化合物(b1)のエステルはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
化合物(B)の重量平均分子量は、化合物(a1)との架橋構造の形成のし易さの観点、化合物(a2)との塩の形成のし易さの観点、及び凹部(微細溝)への充填性の良さの観点から、120以上50000以下であることが好ましく、150以上10000以下であることがより好ましく、150以上1000以下であることがさらに好ましく、150以上600以下であることが特に好ましい。
より詳細には、化合物(B)が重合体以外の化合物である場合、化合物(B)の重量平均分子量は、120以上10000以下であることが好ましく、150以上1000以下であることがより好ましく、150以上600以下であることがさらに好ましい。
化合物(B)が重合体である場合、化合物(B)の重量平均分子量は、200以上50000以下であることが好ましく、300以上10000以下であることがより好ましく、500以上2000以下であることがさらに好ましい。
【0079】
化合物(b1)は、下記式(1)もしくは下記式(2)で表される化合物、又は、下記式(3)で表される構成単位及び下記式(4)で表される構成単位の少なくとも一方を有する重合体であることが好ましい。
【0080】
(式(1)で表される化合物)
化合物(b1)としては、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
【0082】
式(1)において、M
1はゲルマニウム原子、スズ原子、セレン原子、又はジルコニウム原子を表す。
式(1)において、X
1は、−S−、−S−S−、−O−、−NH−、又は−NR
13−を表し、R
13は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。
式(1)において、R
11は、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表す。
式(1)において、R
12は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜5のアルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。
式(1)において、p1は0又は1を表し、q1は0又は1を表す。
式(1)において、n1は1以上の整数を表し、r1は0以上の整数を表し、sは0以上の整数を表す。ただし、n1+r1+2sはM
1の価数である。
式(1)において、R
13で表される「炭素数1〜10のアルキル基」とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等(直鎖状、分枝状、環状のいずれも可)が具体例として挙げられる。
式(1)において、R
11で表される「炭素数1〜10のアルキレン基」とは、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デカレン基等(直鎖状、分枝状、環状のいずれも可)が具体例として挙げられる。
式(1)において、R
12で表される「炭素数1〜5のアルキル基」とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等(直鎖状、分枝状、環状のいずれも可)が具体例として挙げられる。また、R
12で表される「炭素数1〜5のアルコキシ基」とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基等(直鎖状、分枝状、環状のいずれも可)が具体例として挙げられる。
式(1)において、R
11で表される「置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基」における置換基としては、例えば、アミノ基、カルボキシアミノ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、及びカルバモイル基から選択される1以上の置換基が挙げられる。なお、置換基が2以上ある場合には、それぞれの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0083】
式(1)において、M
1はゲルマニウム原子、スズ原子、セレン原子、又はジルコニウム原子を表す。M
1としては、ゲルマニウム原子、スズ原子、セレン原子が好ましく、ゲルマニウム原子がより好ましい。
式(1)において、X
1は、−S−、−S−S−、−O−、−NH−、又は−NR
13−を表し、R
13は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。X
1としては、−O−、−NH−、又は−NR
13−が好ましい。R
13としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
式(1)において、R
11は、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表す。R
11としては、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましい。R
11で表される「置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基」における置換基としては、アミノ基、カルボキシアミノ基が好ましい。
式(1)において、R
12は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜5のアルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。R
12としては、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
式(1)において、p1は0又は1を表し、q1は0又は1を表す。化合物(B)の溶液中での安定性(加水分解等による重合のし難さ)の観点から、p1としては0が好ましい。q1としては1が好ましい。
【0084】
また、式(1)において、M
1がゲルマニウム原子、スズ原子、又はジルコニウム原子である場合は、n1+r1+2sが4であることが好ましい。M
1がセレン原子である場合は、n1+r1+2sが2であることが好ましい。
【0085】
下記式(1)で表される化合物(化合物(b1))の具体的な態様としては、下記1)〜6)の態様が挙げられる。
1)式(1)において、M
1がゲルマニウム原子、スズ原子、及びセレン原子の少なくとも1つである態様。
2)式(1)において、M
1がゲルマニウム原子、スズ原子、及びセレン原子の少なくとも1つであり、p1が0、q1が1である態様。
3)式(1)において、M
1がゲルマニウム原子、スズ原子、及びセレン原子の少なくとも1つであり、n1が2以上である態様(ただし、p1が0、q1が1)。
4)式(1)において、M
1がゲルマニウム原子、スズ原子、及びセレン原子の少なくとも1つであり、n1が2以上であり(ただし、p1が0、q1が1)、分子内に硫黄原子を含まない態様。
5)式(1)において、M
1がゲルマニウム原子であり、n1が2以上であり(ただし、p1が0、q1が1)、分子内に硫黄原子を含まない態様。
6)上記1)〜5)の態様において、M
1にヒドロキシ基が直接結合していない態様。
【0086】
化合物(b1)として、式(1)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、これに限定されない。
【0089】
(式(2)で表される化合物)
化合物(b1)としては、下記式(2)で表される化合物が好ましい。
【0091】
式(2)において、M
2は、ゲルマニウム原子、スズ原子、セレン原子、又はジルコニウム原子を表す。
式(2)において、X
2は、−S−、−S−S−、−O−、−NH−、又は−NR
24−を表し、R
24は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。
式(2)において、R
21は、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表す。
式(2)において、R
22は、単結合、−O−、又は−NR
25−を表し、R
25は置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。
式(2)において、R
23は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜5のアルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。
式(2)において、p2は0又は1を表し、q2は0又は1を表す。
式(2)において、r2は0以上の整数を表し、tは0以上の整数を表す。ただし、r2+2t+2は、M
2の価数である。
式(2)において、R
24で表される「炭素数1〜10のアルキル基」及びR
25で表される「置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基」における「炭素数1〜10のアルキル基」は、式(1)において、R
13で表される「炭素数1〜10のアルキル基」と同義である。
式(2)において、R
21で表される「炭素数1〜10のアルキレン基」は、式(1)において、R
11で表される「炭素数1〜10のアルキレン基」と同義である。
式(2)において、R
23で表される「炭素数1〜5のアルキル基」は、式(1)において、R
12で表される「炭素数1〜5のアルキル基」と同義である。
式(2)において、R
23で表される「炭素数1〜5のアルコキシ基」は、式(1)において、R
12で表される「炭素数1〜5のアルコキシ基」と同義である。
式(2)において、R
21で表される「置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基」における置換基としては、例えば、アミノ基、カルボキシアミノ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、カルバモイル基から選択される1以上の置換基が挙げられる。なお、置換基が2以上ある場合には、それぞれの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
式(2)において、R
25で表される「置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基」における置換基としては、下記式(c)で表される基が挙げられる。式(c)で表される基中の*は結合位置を表す。なお、後述する式(2)で表される化合物の好ましい具体例の化合物(B−23)は、下記式(c)で表される基を有する化合物である。
【0093】
式(2)において、M
2は、ゲルマニウム原子、スズ原子、セレン原子、又はジルコニウム原子を表す。M
2としては、ゲルマニウム原子、スズ原子、セレン原子が好ましく、ゲルマニウム原子がより好ましい。
式(2)において、X
2は、−S−、−S−S−、−O−、−NH−、又は−NR
24−を表し、R
24は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。X
2としては、−O−、−NH−、又は−NR
24−が好ましい。R
24としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
式(2)において、R
21は、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表す。R
21としては、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましい。R
21で表される「置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基」における置換基としては、アミノ基、カルボキシアミノ基が好ましい。
式(2)において、R
22は、単結合、−O−、又は−NR
25−を表し、R
25は置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。R
22としては、−O−が好ましい。
式(2)において、R
23は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜5のアルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。R
23としては、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
式(2)において、p2は0又は1を表し、q2は0又は1を表す。p2としては0が好ましい。q2としては1が好ましい。
【0094】
また、式(2)において、M
2がゲルマニウム原子、スズ原子、又はジルコニウム原子である場合は、r2+2t+2が4であることが好ましく、前記M
2がセレン原子である場合は、r2+2t+2が2であることが好ましい。
【0095】
下記式(2)で表される化合物(化合物(b1))の具体的な態様としては、下記1)〜5)の態様が挙げられる。
1)式(2)において、M
2がゲルマニウム原子、スズ原子、及びセレン原子の少なくとも1つである態様。
2)式(2)において、M
2がゲルマニウム原子、スズ原子、及びセレン原子の少なくとも1つであり、p2が0、q2が1である態様。
3)式(2)において、M
2がゲルマニウム原子、スズ原子、及びセレン原子の少なくとも1つであり、p2が0、q2が1であり、分子内に硫黄原子を含まない態様。
4)式(2)において、M
2がゲルマニウム原子であり、p2が0、q2が1であり、分子内に硫黄原子を含まない態様。
5)上記1)〜4)の態様において、M
2にヒドロキシ基が直接結合していない態様。
【0096】
化合物(b1)として、式(2)で表される化合物の好ましい具体例を示すが、これに限定されない。中でも、エッチング選択性及び耐熱性がより向上した金属含有膜を得る観点から、式(B−21)で表される化合物が好ましい。
【0098】
(式(3)で表される構成単位を有する重合体)
化合物(b1)としては、下記式(3)で表される構成単位を有する重合体が好ましい。
下記式(3)で表される構成単位を有する重合体は、例えば、式(1)で表される化合物から得ることができる。具体的に式(1)で表される化合物から、例えばM−O−M結合(M:ゲルマニウム原子、スズ原子、及びジルコニウム原子からなる群より選択される1種)を介した、線形重合体、かご状構造体、樹状構造体等の重合体を得ることができる。得られる重合体の形状は特に制限されず、線形重合体であっても、かご状構造体であっても、樹状構造体式であってもよい。
また、式(3)で表される構成単位を有する重合体は、複数の金属化合物同士の重合体であってもよい。すなわち、式(3)で表される構成単位を有する重合体は、ゲルマニウム原子、スズ原子、及びジルコニウム原子からなる群より選択される異種の金属原子を有する重合体であってもよい。
【0100】
式(3)において、M
3はゲルマニウム原子、スズ原子、又はジルコニウム原子を表す。
式(3)において、X
3は、−S−、−S−S−、−O−、−NH−、又は−NR
33−を表し、R
33は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。
式(3)において、R
31は、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表す。
式(3)において、R
32は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ヒドロキシ基、炭素数1〜5のアルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。
式(3)において、p3は0又は1を表し、q3は0又は1を表す。
式(3)において、r3は0又は1を表し、r3が0の場合は結合手を表す。
式(3)において、n3は2以上の整数を表す。
式(3)において、R
33で表される「炭素数1〜10のアルキル基」は、式(1)において、R
13で表される「炭素数1〜10のアルキル基」と同義である。
式(3)において、R
31で表される「炭素数1〜10のアルキレン基」は、式(1)において、R
11で表される「炭素数1〜10のアルキレン基」と同義である。
式(3)において、R
32で表される「炭素数1〜5のアルキル基」は、式(1)において、R
12で表される「炭素数1〜5のアルキル基」と同義である。
式(3)において、R
32で表される「炭素数1〜5のアルコキシ基」は、式(1)において、R
12で表される「炭素数1〜5のアルコキシ基」と同義である。
式(3)において、R
31で表される「置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基」における置換基としては、例えば、アミノ基、カルボキシアミノ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、カルバモイル基から選択される1以上の置換基が挙げられる。なお、置換基が2以上ある場合には、それぞれの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0101】
式(3)において、M
1としては、ゲルマニウム原子又はスズ原子が好ましく、ゲルマニウム原子がより好ましい。
式(3)において、X
3としては、−O−、−NH−、又は−NR
33−が好ましい。
式(3)において、R
33としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
式(3)において、R
31としては、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、R
31で表される「置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基」における置換基としては、アミノ基、カルボキシアミノ基が好ましい。
式(3)において、R
32としては、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
式(3)において、p3としては0が好ましい。q3としては1が好ましい。
式(3)において、r3は1が好ましい。
式(3)において、n3としては2以上250以下が好ましい。
【0102】
化合物(b1)として、式(3)で表される構成単位を有する重合体の好ましい具体例は、例えば、下記式(3A)〜(3B)で表される構成単位を有する重合体が挙げられるが、これに限定されない。
式(3A)中、nは2以上130以下であることが好ましい。
式(3B)中、nは2以上130以下であることが好ましい。
【0104】
(式(4)で表される構成単位を有する重合体)
化合物(b1)としては、下記式(4)で表される構成単位を有する重合体が好ましい。
下記式(4)で表される構成単位を有する重合体は、例えば、式(2)で表される化合物から得ることができる。具体的に式(2)で表される化合物から、例えばM−O−M結合(M:ゲルマニウム原子、スズ原子、及びジルコニウム原子からなる群より選択される1種)を介した、線形重合体等の重合体を得ることができる。得られる重合体の形状は特に制限されない。
また、式(4)で表される構成単位を有する重合体は、複数の金属化合物同士の重合体であってもよい。すなわち、式(4)で表される構成単位を有する重合体は、ゲルマニウム原子、スズ原子、及びジルコニウム原子からなる群より選択される異種の金属原子を有する重合体であってもよい。
【0106】
式(4)において、M
4は、ゲルマニウム原子、スズ原子、又はジルコニウム原子を表す。
式(4)において、X
4は、−S−、−S−S−、−O−、−NH−、又は−NR
43−を表し、R
43は、炭素数1〜10のアルキル基を表す。
式(4)において、R
41は、置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表す。
式(4)において、R
42は、単結合、−O−、又は−NR
44−を表し、R
44は置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基を表す。
式(4)において、p4は0又は1を表し、q4は0又は1を表す。
式(4)において、n4は2以上の整数を表す。
式(4)において、R
43で表される「炭素数1〜10のアルキル基」及びR
44で表される「置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基」における「炭素数1〜10のアルキル基」は、式(1)において、R
13で表される「炭素数1〜10のアルキル基」と同義である。
式(4)において、R
41で表される「炭素数1〜10のアルキレン基」は、式(1)において、R
11で表される「炭素数1〜10のアルキレン基」と同義である。
式(4)において、R
41で表される「置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基」における置換基としては、例えば、アミノ基、カルボキシアミノ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、カルバモイル基から選択される1以上の置換基が挙げられる。なお、置換基が2以上ある場合には、それぞれの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
式(4)において、R
44で表される「置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基」における置換基としては、前述の式(c)で表される基が挙げられる。式(c)で表される基中の*は結合位置を表す。
【0107】
式(4)において、M
4としては、ゲルマニウム原子又はスズ原子が好ましく、ゲルマニウム原子がより好ましい。
式(4)において、X
4としては、−O−、−NH−、又は−NR
43−が好ましい。
式(4)において、R
43としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
式(4)において、R
41としては、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、R
41で表される「置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキレン基」における置換基としては、アミノ基、カルボキシアミノ基が好ましい。
式(4)において、R
42としては、−O−が好ましい。
式(4)において、p4としては0が好ましい。q4としては1が好ましい。
式(4)において、n4としては2以上130以下が好ましい。
【0108】
化合物(b1)として、式(4)で表される構成単位を有する重合体の好ましい具体例は、例えば、下記式(4A)〜(4B)で表される構成単位を有する重合体が挙げられるが、これに限定されない。
下記式(4A)で表される構成単位を有する重合体は、化合物(B−21)で表される化合物の重合体の一例である。式(4A)中、nは2以上130以下であることが好ましい。式(4B)中、nは2以上130以下であることが好ましい。
【0110】
金属含有膜形成用組成物中における化合物(B)の含有量は、組成物全体に対して0.1質量%以上15%以下が好ましく、0.5質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0111】
(添加剤(C))
本開示の金属含有膜形成用組成物は、エッチング選択性及び耐熱性がより向上した金属含有膜を得る観点から、カルボキシ基を有する重量平均分子量46以上195以下の酸である添加剤(C)をさらに含むことが好ましい。
【0112】
添加剤(C)としての酸は、カルボキシ基を有する重量平均分子量46以上195以下の酸である。本開示の金属含有膜形成用組成物は、添加剤(C)を含むことにより、例えば化合物(A)におけるアミノ基と、上記酸(添加剤(C))におけるカルボキシ基とがイオン結合を形成することで、化合物(A)と化合物(B)との会合による凝集が抑制されると推測される。より詳細には、化合物(A)におけるアミノ基に由来するアンモニウムイオンと、上記酸(添加剤(C))におけるカルボキシ基に由来するカルボキシラートイオンとの相互作用(例えば、静電相互作用)が、化合物(A)におけるアミノ基に由来するアンモニウムイオンと化合物(B)におけるカルボキシ基に由来するカルボキシラートイオンとの相互作用よりも強いため、凝集が抑制されると推測される。なお、本開示は上記推測によって何ら限定されない。
【0113】
上記酸(添加剤(C))としては、カルボキシ基を有し、かつ重量平均分子量46以上195以下の化合物であれば特に限定されず、モノカルボン酸化合物、ジカルボン酸化合物、オキシジカルボン酸化合物などが挙げられる。より具体的には、上記酸(添加剤(C))としては、ギ酸、酢酸、マロン酸、シュウ酸、クエン酸、安息香酸、乳酸、グリコール酸、グリセリン酸、酪酸、メトキシ酢酸、エトキシ酢酸、フタル酸、テレフタル酸、ピコリン酸、サリチル酸、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸などが挙げられる。
【0114】
本開示において、金属含有膜形成用組成物中における添加剤(C)の含有量は、特に制限されないが、例えば、化合物(A)中の全窒素原子の数に対する酸(C−1)中のカルボキシ基の数の比率(COOH/N)が、0.01以上10以下であることが好ましく、0.02以上6以下であることがより好ましく、0.02以上1以下が更に好ましい。
【0115】
(架橋剤(D))
本開示の金属含有膜形成用組成物は、エッチング選択性及び耐熱性がより向上した金属含有膜を得る観点から、分子内に−C(=O)OX基(Xは、水素原子又は炭素数1以上6以下のアルキル基である)を3つ以上有し、3つ以上の−C(=O)OX基(以下、「COOX」とも称する。)のうち、1つ以上6つ以下が−C(=O)OH基(以下、「COOH」とも称する。)であり、重量平均分子量が200以上600以下である架橋剤(D)を、さらに含んでもよい。
【0116】
架橋剤(D)は、分子内に−C(=O)OX基(Xは、水素原子又は炭素数1以上6以下のアルキル基である。)を3つ以上有する化合物であるが、好ましくは、分子内に−C(=O)OX基を3つ以上6つ以下有する化合物であり、より好ましくは、分子内に−C(=O)OX基を3つ又は4つ有する化合物である。
【0117】
架橋剤(D)において、−C(=O)OX基中のXとしては、水素原子又は炭素数1以上6以下のアルキル基が挙げられ、中でも、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。なお、−C(=O)OX基中のXは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0118】
架橋剤(D)は、分子内にXが水素原子である−C(=O)OH基を1つ以上6つ以下有する化合物であるが、好ましくは、分子内に−C(=O)OH基を1つ以上4つ以下有する化合物であり、より好ましくは、分子内に−C(=O)OH基を2つ以上4つ以下有する化合物であり、更に好ましくは、分子内に−C(=O)OH基を2つ又は3つ有する化合物である。
【0119】
架橋剤(D)は、重量平均分子量が200以上600以下の化合物である。好ましくは、200以上400以下の化合物である。
【0120】
架橋剤(D)は、分子内に環構造を有することが好ましい。環構造としては、脂環構造、芳香環構造などが挙げられる。また、架橋剤(D)は、分子内に複数の環構造を有していてもよく、複数の環構造は、同じであっても異なっていてもよい。
【0121】
脂環構造としては、例えば、炭素数3以上8以下の脂環構造、好ましくは炭素数4以上6以下の脂環構造が挙げられ、環構造内は飽和であっても不飽和であってもよい。より具体的には、脂環構造としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環などの飽和脂環構造;シクロプロペン環、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環、シクロオクテン環などの不飽和脂環構造が挙げられる。
【0122】
芳香環構造としては、芳香族性を示す環構造であれば特に限定されず、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環などのベンゼン系芳香環、ピリジン環、チオフェン環などの芳香族複素環、インデン環、アズレン環などの非ベンゼン系芳香環などが挙げられる。
【0123】
架橋剤(D)が分子内に有する環構造としては、例えば、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ベンゼン環及びナフタレン環からなる群より選択される少なくとも1つが好ましく、金属含有膜形成用組成物から得られる膜の耐熱性をより高める点から、ベンゼン環及びナフタレン環の少なくとも一方がより好ましい。
【0124】
前述したように、架橋剤(D)は、分子内に複数の環構造を有していてもよく、環構造がベンゼンの場合、ビフェニル構造、ベンゾフェノン構造、ジフェニルエーテル構造などを有してもよい。
【0125】
架橋剤(D)は、分子内にフッ素原子を有することが好ましく、分子内に1つ以上6つ以下のフッ素原子を有することがより好ましく、分子内に3つ以上6つ以下のフッ素原子を有することが更に好ましい。例えば、架橋剤(D)は、分子内にフルオロアルキル基を有していてもよく、具体的には、トリフルオロアルキル基又はヘキサフルオロイソプロピル基を有していてもよい。
【0126】
さらに、架橋剤(D)としては、脂環カルボン酸、ベンゼンカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、ジフタル酸、フッ化芳香環カルボン酸などのカルボン酸化合物;脂環カルボン酸エステル、ベンゼンカルボン酸エステル、ナフタレンカルボン酸エステル、ジフタル酸エステル、フッ化芳香環カルボン酸エステルなどのカルボン酸エステル化合物が挙げられる。なお、カルボン酸エステル化合物は、分子内にカルボキシ基(−C(=O)OH基)を有し、かつ、3つ以上の−C(=O)OX基において、少なくとも1個のXが炭素数1以上6以下のアルキル基(すなわち、エステル結合を有する)である化合物である。
本開示の金属含有膜形成用組成物において、架橋剤(D)がカルボン酸エステル化合物である場合には、組成物中における化合物(A)と架橋剤(D)との会合による凝集が抑制され、凝集体及びピットが少なくなり、かつ平滑性がより高い膜や膜厚の大きな膜を得ること及び膜厚の調整が容易となる。
【0127】
前記カルボン酸化合物としては、−C(=O)OH基を4つ以下含む4価以下のカルボン酸化合物であることが好ましく、−C(=O)OH基を3つ又は4つ含む3価又は4価のカルボン酸化合物であることがより好ましい。
【0128】
前記カルボン酸エステル化合物としては、分子内にカルボキシ基(−C(=O)OH基)を3つ以下含み、かつエステル結合を3つ以下含む化合物であることが好ましく、分子内にカルボキシ基を2つ以下含み、かつエステル結合を2つ以下含む化合物であることがより好ましい。
【0129】
また、前記カルボン酸エステル化合物では、3つ以上の−C(=O)OX基において、Xが炭素数1以上6以下のアルキル基である場合、Xは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが好ましいが、組成物中における化合物(A)と架橋剤(D)との会合による凝集をより抑制する点から、エチル基又はプロピル基であることが好ましい。
【0130】
前記カルボン酸化合物の具体例としては、これらに限定されないが、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,3,4,5,6−シクロヘキサンヘキサカルボン酸等の脂環カルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、ピロメリット酸、ベンゼンペンタカルボン酸、メリト酸等のベンゼンカルボン酸;1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸等のナフタレンカルボン酸;3,3’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルメタン、ビフェニル−3,3’,5,5’−テトラカルボン酸、ビフェニル−3,4’,5−トリカルボン酸、ビフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸、4,4’−オキシジフタル酸、1,3−ビス(フタル酸)テトラメチルジシロキサン等のジフタル酸;4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸、9,9−ビス(トリフルオロメチル)−9H−キサンテン−2,3,6,7−テトラカルボン酸、1,4−ジトリフルオロメチルピロメリット酸等のフッ化芳香環カルボン酸が挙げられる。
【0131】
前記カルボン酸エステル化合物の具体例としては、前述のカルボン酸化合物の具体例における少なくとも1個のカルボキシ基がエステル基に置換された化合物が挙げられる。カルボン酸エステル化合物としては、例えば、下記一般式(D−1)〜(D−6)で表されるハーフエステル化された化合物が挙げられる。
【0133】
一般式(D−1)〜(D−6)におけるRは、炭素数1以上6以下のアルキル基であり、中でもメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましく、エチル基、プロピル基がより好ましい。
【0134】
ハーフエステル化された化合物は、例えば、前述のカルボン酸化合物の無水物であるカルボン酸無水物を、アルコール溶媒に混合し、カルボン酸無水物を開環させて生成することが可能である。
【0135】
本開示において、金属含有膜形成用組成物中における架橋剤(D)の含有量は、特に制限されないが、例えば、化合物(A)中の全窒素原子の数に対する、化合物(B)中のカルボキシ基の数と架橋剤(D)中のカルボキシ基の数の和の比率(COOH/N)は、0.1以上3.0以下であることが好ましく、0.3以上2.5以下であることがより好ましく、0.4以上2.2以下であることが更に好ましい。COOH/Nが0.1以上3.0以下であることにより、金属含有膜形成用組成物を用いることで、加熱処理後に化合物(A)と架橋剤(D)との間にアミド、イミドなどの架橋構造を有し、耐熱性及び絶縁性により優れた膜を製造することができる。
【0136】
(その他の成分)
本開示の金属含有膜形成用組成物は、ナトリウム及びカリウムの含有量がそれぞれ元素基準で10質量ppb以下であることが好ましい。ナトリウム又はカリウムの含有量がそれぞれ元素基準で10質量ppb以下であれば、トランジスタの動作不良など半導体装置の電気特性に不都合が発生することを抑制できる。
【0137】
本開示の金属含有膜形成用組成物は、水や水以外の溶媒(例えば水溶性溶媒)を含んでいてもよく、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、ブチルアルコールなどのアルコール類、エチレングリコール、ジメトキシエタン、ジオキサン、アセトン、アセトニトリル、シクロペンタノン、テトラヒドロフラン、ノルマルヘキサンなどが挙げられる。
【0138】
本開示の金属含有膜形成用組成物は、化合物(A−2)としてアミノ基を含むシランカップリング剤(例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン)を有する場合は、アルコキシ基の加水分解の為に塩酸、硝酸などの無機酸を含有していてもよい。
【0139】
また、本開示の金属含有膜形成用組成物は、例えば電気特性改善のために、フタル酸、安息香酸など、又はこれらの誘導体を含有してもよい。
また、本開示の金属含有膜形成用組成物は、例えば銅の腐食を抑制するため、ベンゾトリアゾール又はその誘導体を含有していてもよい。
【0140】
本開示の金属含有膜形成用組成物のpHとしては、特に限定されないが、2.0以上12.0以下であることが好ましい。
【0141】
〔金属含有膜形成用組成物の製造方法〕
以下、本開示の一実施形態に係る金属含有膜形成用組成物の製造方法について説明する。本開示の金属含有膜形成用組成物の製造方法は、少なくとも、化合物(A)と、化合物(B)と、を混合する混合工程を含む。
なお、金属含有膜形成用組成物を製造する任意のタイミングにて、化合物(A)及び化合物(B)以外の成分(例えば、添加剤(C)、架橋剤(D)、水溶性溶媒)を化合物(A)と化合物(B)との混合物に添加してもよい。すなわち、化合物(A)及び化合物(B)以外の成分を添加するタイミングは特に限定されない。
【0142】
本開示の金属含有膜形成用組成物が、化合物(A)として、化合物(a1)と化合物(a2)とを共に含む場合、本開示における混合工程は、少なくとも、化合物(a2)及び化合物(B)の混合物と、化合物(a1)と、を混合する工程であることが好ましい。
すなわち、化合物(a2)と化合物(B)とを予め混合しておくことが好ましい。これにより、化合物(a2)及び化合物(B)の混合物と、化合物(a1)と、を混合した際に、組成物の白濁やゲル化(ゲル化すると組成物の透明化に時間がかかる場合があり、好ましくない)を好適に抑制することができる。
【0143】
本開示の金属含有膜形成用組成物が、化合物(A)として、化合物(a1)を含む場合、本開示における混合工程は、少なくとも、カルボキシ基を有する重量平均分子量46以上195以下の酸である添加剤(C)及び化合物(a1)の混合物と、化合物(B)と、を混合する工程であることが好ましい。
すなわち、化合物(a1)と添加剤(C)とを予め混合しておくことが好ましい。これにより、添加剤(C)及び化合物(a1)の混合物と、化合物(B)とを混合した際に、組成物の白濁やゲル化(ゲル化すると組成物の透明化に時間がかかる場合があり、好ましくない)を好適に抑制することができる。
【0144】
本開示の金属含有膜形成用組成物が、化合物(A)として、化合物(a1)と化合物(a2)とを共に含み、さらにカルボキシ基を有する重量平均分子量46以上195以下の酸である添加剤(C)を含む場合、本開示における混合工程は、少なくとも、化合物(a2)及び化合物(B)の混合物と、添加剤(C)及び化合物(a1)の混合物と、を混合する工程であることが好ましい。
すなわち、化合物(a2)及び化合物(B)を予め混合しておくことがよく、また、添加剤(C)及び化合物(a1)を予め混合しておくことがよい。これにより、化合物(a2)及び化合物(B)の混合物と、添加剤(C)及び化合物(a1)の混合物と、を混合した際に、組成物の白濁やゲル化(ゲル化すると組成物の透明化に時間がかかる場合があり、好ましくない)を好適に抑制することができる。
【0145】
<金属含有膜>
本開示の金属含有膜形成用組成物は、金属含有膜の形成に用いられる。
金属含有膜の例としては、多層レジスト層の少なくとも1つの層(例えば上層レジスト膜、下層レジスト膜、中間レジスト膜)、埋め込み絶縁膜(浅溝型素子分離膜(STI膜)、プリメタル絶縁膜(PMD膜)、配線層間絶縁膜(IMD膜、ILD膜等)が挙げられる。
上記以外の金属含有膜の例としては、基板に形成された凹部にギャップフィル材料(埋め込み平坦化膜)が充填された金属含有膜が挙げられる。
【0146】
多層レジスト層の少なくとも1つの層が金属含有膜である場合、金属含有膜(1つの層)の厚さは、例えば、5nm以上900nm以下であり、好ましくは10nm以上200nm以下である。多層レジスト層全体の厚さは、例えば、20nm以上1000nm以下であることが好ましい。
基板に形成された凹部に埋め込み絶縁膜が充填された金属含有膜では、埋め込み絶縁膜(金属含有膜)の厚さは、凹部の深さは10nm以上1000nm以下であり、好ましくは20nm以上300nm以下である。凹部に埋め込み絶縁膜を充填した表面にさらに絶縁膜を、500nm以下、好ましくは200nm以下形成してもよい。
より詳細には、埋め込み絶縁膜が浅溝型素子分離膜(STI膜)である場合、STI膜の厚さは、例えば、凹部の深さは10nm以上1000nm以下であり、好ましくは30nm以上300nm以下である。凹部に埋め込み絶縁膜を充填した表面にさらに絶縁膜を、500nm以下、好ましくは200nm以下形成してもよい。
埋め込み絶縁膜がプリメタル絶縁膜(PMD膜)である場合、PMD膜の厚さは、例えば、凹部の深さは10nm以上500nm以下であり、好ましくは20nm以上300nm以下である。凹部に埋め込み絶縁膜を充填した表面にさらに絶縁膜を、500nm以下、好ましくは200nm以下形成してもよい。
埋め込み絶縁膜が配線層間絶縁膜(IMD膜、ILD膜等)である場合、IMD膜またはILD膜の厚さは、例えば、凹部の深さは30nm以上400nm以下であり、好ましくは50nm以上300nm以下である。凹部に埋め込み絶縁膜を充填した表面にさらに絶縁膜を、500nm以下、好ましくは300nm以下形成してもよい。
なお、埋め込み絶縁膜は、当該埋め込み絶縁膜をシリコン基板の溝に設けて素子分離領域を形成する手法(シャロートレンチアイソレーション)を用いて形成することが好ましい。
また、凹部の幅が狭く、アスペクト比(深さ/幅)の大きな溝に埋め込み絶縁膜を形成する場合には、溝への充填性を高める点から、本開示の金属含有膜形成用組成物を凹部に付与(好ましくは、スピンコート法により付与)して埋め込み絶縁膜を形成することが好ましい。
【0147】
基板に形成された凹部に埋め込み平坦化膜が充填された金属含有膜では、埋め込み平坦化膜の厚さは、例えば、凹部の深さは10nm以上1000nm以下であり、好ましくは20nm以上300nm以下である。凹部に埋め込み絶縁膜を充填した表面にさらに平坦化膜を、500nm以下、好ましくは200nm以下形成してもよい。
なお、この金属含有膜は、銅多層配線をデュアルダマシンプロセスにて形成する際、例えばビアファーストプロセスにおいて、ビアに埋め込み平坦下膜が設けられた金属含有膜として用いることができる。
また、凹部の幅が狭く、アスペクト比(深さ/幅)の大きな溝に埋め込み平坦化膜を形成する場合には、溝への充填性を高める点から、本開示の金属含有膜形成用組成物を凹部に付与(好ましくは、スピンコート法により付与)して埋め込み平坦化膜を形成することが好ましい。
【0148】
中でも、本開示の金属含有膜形成用組成物は、微細パターンを形成可能にするためにエッチング選択性がより向上した多層レジスト層を得る観点及び耐熱性がより向上した多層レジスト層を得る観点から、金属含有膜を含む多層レジスト層の前記金属含有膜の形成に好適に用いられる。
これにより、エッチング選択性及び耐熱性がより向上した多層レジスト層が得られる。さらに、凹部への充填性にも優れた多層レジスト層が得られやすい。
また、本開示の金属含有膜形成用組成物は、多層レジスト層の少なくとも1つの層(例えば上層レジスト膜、下層レジスト膜、中間レジスト膜)の形成に用いることができる。すなわち、本開示の金属含有膜形成用組成物は、多層レジスト層の少なくとも1つの層に含まれる。
本開示の金属含有膜形成用組成物は、多層レジスト層の少なくとも一つの層に形成された凹部に埋め込む材料として用いてもよい。
【0149】
また、本開示の金属含有膜形成用組成物は、エッチング選択性及び耐熱性がより向上した金属含有膜を得る観点から、埋め込み絶縁膜である金属含有膜を備える半導体装置の前記金属含有膜の形成に好適に用いられる。
これにより、エッチング選択性及び耐熱性がより向上した埋め込み絶縁膜(STI膜、PMD膜、IMD膜、ILD膜等)を備える半導体装置が得られる。
特に、本開示の金属含有膜形成用組成物を、多層レジストプロセスにおけるレジストパターンや埋め込み絶縁膜(STI膜、PMD膜、IMD膜、ILD膜等)の形成に用いた場合、エッチング選択性及び耐熱性に加え、凹部への充填性にも優れた金属含有膜が得られやすい。
【0150】
〔金属含有膜の形成方法〕
本開示における金属含有膜の形成方法は、例えば、金属含有膜形成用組成物を基板に付与する付与工程と、金属含有膜形成用組成物が付与された基板を加熱する加熱工程と、を有する。
【0151】
<付与工程>
付与工程は、金属含有膜形成用組成物を基板に付与する工程である。
基板としては、シリコン基板等の半導体基板(又は半導体装置)、回路基板(例えばプリント配線基板)、ガラス基板、石英基板、ステンレス基板、プラスチック基板等が挙げられる。基板の形状も特に制限されず、板状、皿状等のいずれであってもよい。例えば、シリコン基板としては、層間絶縁層(Low−k膜)が形成されたシリコン基板であってもよく、また、シリコン基板には、微細な溝(凹部)、微細な貫通孔などが形成されていてもよい。
【0152】
金属含有膜形成用組成物を付与する方法としては特に制限はなく、通常用いられる方法を用いることができる。
通常用いられる方法としては、例えば、ディッピング法、スプレー法、スピンコート法、バーコード法などが挙げられる。例えば、ナノサイズ(数nm〜数百nm)の膜厚を有する膜を形成する場合、スピンコート法を用いることが好ましい。
【0153】
例えば、スピンコート法による金属含有膜形成用組成物の付与方法としては特に限定はなく、例えば、基板をスピンコーターで回転させながら、基板の表面に金属含有膜形成用組成物を滴下し、次いで基板の回転数を上げて乾燥させる方法を用いることができる。
スピンコート法による金属含有膜形成用組成物の付与方法において、基板の回転数、金属含有膜形成用組成物の滴下量及び滴下時間、乾燥時の基板の回転数などの諸条件については特に制限はなく、形成する膜の厚さなどを考慮しながら適宜調整できる。
【0154】
<乾燥工程>
金属含有膜の形成方法において、後述する加熱工程の前に、金属含有膜形成用組成物が付与された基板を、温度80℃以上150℃以下の条件で乾燥する乾燥工程を有していてもよい。なお、前記温度は、基板の金属含有膜形成用組成物が付与された面の温度を指す。
上記温度は、90℃以上140℃以下がより好ましく、100℃以上130℃以下がより好ましい。
【0155】
本工程における乾燥は通常の方法によって行うことができるが、例えばホットプレートを用いて行うことができる。
本工程における乾燥を行う雰囲気には特に制限はなく、例えば、大気雰囲気下で行ってもよいし、不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等)雰囲気下で行なってもよい。
更には、微細溝への充填性(埋め込み性)の観点から、膜中の気泡を除去するために減圧下で行っても良い。
【0156】
乾燥時間については特に制限はないが、300秒以下が好ましく、200秒以下がより好ましく、120秒以下が更に好ましく、80秒以下が特に好ましい。
乾燥時間の下限には特に制限はないが、下限は、例えば10秒(好ましくは20秒、より好ましくは30秒)とすることができる。
【0157】
<洗浄工程>
金属含有膜の形成方法は、後述する加熱工程の前に、基板に付与された余分な金属含有膜形成用組成物を除去するために、金属含有膜形成用組成物が付与された基板を水等で洗浄する洗浄工程を有していてもよい。また、本開示に係る製造方法が、前述の乾燥工程を有する場合、乾燥工程の後に、洗浄工程を行うことが好ましい。
【0158】
<加熱工程>
本開示における金属含有膜の形成方法は、更に、金属含有膜形成用組成物が付与された基板を、例えば温度200℃以上425℃以下の条件で加熱する加熱工程を有する。
なお、前記温度は、基板の金属含有膜形成用組成物が付与された面の温度を指す。
この加熱工程を有することにより、化合物(A)が有する1級窒素原子及び2級窒素原子の少なくとも1つを含むカチオン性官能基と、化合物(B)が有する−C(=O)O−基とが反応して、アミド結合、イミド結合、及びアミドイミド結合の少なくとも1つが形成される。すなわち、金属含有膜中において、化合物(A)と化合物(B)との間で架橋構造が形成される。
前記温度は、250℃以上400℃以下が好ましく、300℃以上400℃以下がより好ましい。
【0159】
また、加熱工程における加熱が行なわれる圧力には特に制限はないが、絶対圧17Pa超大気圧以下が好ましい。
前記絶対圧は、1000Pa以上大気圧以下がより好ましく、5000Pa以上大気圧以下が更に好ましく、10000Pa以上大気圧以下が特に好ましい。
【0160】
加熱工程における加熱は、炉やホットプレートを用いた通常の方法により行うことができる。炉としては、例えば、アペックス社製のSPX−1120や、光洋サーモシステム(株)製のVF−1000LPを用いることができる。
また、本工程における加熱は、大気雰囲気下で行なってもよく、不活性ガス(窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等)雰囲気下で行なってもよい。
【0161】
加熱工程における加熱時間については特に制限はないが、例えば1時間以下であり、30分間以下が好ましく、10分間以下がより好ましく、5分間以下が特に好ましい。加熱の時間の下限には特に制限はないが、例えば0.1分間とすることができる。
【0162】
加熱工程時間を短縮させる目的で、基板の金属含有膜形成用組成物が付与された面に紫外線照射を行ってもよい。紫外線としては波長170nm〜230nmの紫外光、波長222nmエキシマ光、波長172nmエキシマ光などが好ましい。また不活性ガス雰囲気下で紫外線照射を行うことが好ましい。
【0163】
〔半導体装置〕
以下、本開示の半導体装置について説明する。
本開示の半導体装置は、埋め込み絶縁膜である金属含有膜を備える半導体装置であって、前記金属含有膜が、本開示の金属含有膜形成用組成物を含むことが好ましい。
本開示の半導体装置は、エッチング選択性に優れ、かつ耐熱性に優れた埋め込み絶縁膜(STI膜、PMD膜、IMD膜、ILD膜等)である金属含有膜を備える。
また、埋め込み絶縁膜は、更に、凹部への充填性にも優れる傾向がある。
【0164】
〔半導体装置の製造方法〕
本開示に係る半導体装置の製造方法は、埋め込み絶縁膜である金属含有膜を備える半導体装置を製造する方法であって、本開示の金属含有膜形成用組成物を用いて、前記埋め込み絶縁膜を形成する工程を有する。
本開示に係る半導体装置の製造方法によれば、エッチング選択性に優れ、かつ耐熱性に優れた埋め込み絶縁膜(STI膜、PMD膜、IMD膜、ILD膜等)を備える半導体装置が製造される。また、凹部への充填性にも優れた埋め込み絶縁膜が得られやすい。
【0165】
埋め込み絶縁膜を形成する工程は、例えば、埋め込み絶縁膜となる基板上に、金属含有膜形成用組成物を付与する付与工程と、金属含有膜形成用組成物が付与された基板を加熱する加熱工程と、を有する。
なお、埋め込み絶縁膜を形成する工程における各工程(例えば付与工程、乾燥工程、洗浄工程、加熱工程)は、前述の金属含有膜の形成方法の各工程と同様であるため、その説明を省略する。
【0166】
本開示に係る半導体装置の製造方法は、その他の工程を有していてもよい。
その他の工程としては、半導体プロセスにおける公知の工程が挙げられる。
例えば、本開示の半導体装置の製造方法は、その他の工程として、プラズマ工程を有していてもよい。
プラズマ工程におけるプラズマとしては、ヘリウムガス、アルゴンガス、窒素ガス、アンモニアガス、及びフルオロカーボン系ガスからなる群から選択される少なくとも1種のガスから発生したプラズマが挙げられる。
本開示の半導体装置の製造方法が、プラズマ工程を有する場合、埋め込み絶縁膜(STI膜、PMD膜、IMD膜、ILD膜等)は、プラズマに曝されてもプラズマ耐性に優れる傾向がある。
また、本開示の半導体装置の製造方法が、加熱工程を有する場合、埋め込み絶縁膜は、耐熱性に優れたものとなる。
【0167】
また、本開示の半導体装置の製造方法は、その他の工程として、埋め込み絶縁膜(STI膜、PMD膜、IMD膜、ILD膜等)を除去する除去工程を有していてもよい。この態様は、埋め込み絶縁膜の少なくとも1つが犠牲膜である場合に特に好適である。
除去工程における埋め込み絶縁膜の除去方法としては、前述したUVオゾン処理、又は、除去処理としてのプラズマ処理が挙げられる。
なお、埋め込み絶縁膜は、残して絶縁膜として用いてもよい。
【実施例】
【0168】
以下、本開示を実施例により具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下において、「水」としては、超純水(Millipore社製Milli−Q水、抵抗18MΩ・cm(25℃)以下)を使用した。
【0169】
<金属含有膜形成用組成物の調製>
〔実施例1〕
3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン(3APDES)(アルドリッチ社製:371890(品番))を準備した。この3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン(3APDES)に、1−プロパノールを添加後、pH調整及び3APDESの加水分解のために、ギ酸水溶液を添加した。室温で1時間撹拌後、60℃のウォーターバス中で1時間加熱し、3APDES含有溶液(1)を得た。
また、別途カルボキシエチルゲルマニウムセスキオキシド(BCGe)(東京化成社製:B1367(品番))に、アンモニウム塩水溶液を添加してBCGe含有溶液を得た。
次に、3APDES含有溶液(1)に、BCGe含有溶液を添加して、実施例1の金属含有膜形成用組成物(以下、「組成物」とも称する。)を得た。
なお、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン(3APDES)は、化合物(a1)における化合物(A−2)の一例である。
ギ酸水溶液中のギ酸は、添加剤(C)の一例である。
カルボキシエチルゲルマニウムセスキオキシド(BCGe)は、化合物(B)における化合物(b1)の一例であり、具体的には例示化合物(b1−21)である。
アンモニウム塩水溶液中のアンモニアは、化合物(a2)における塩基(A−4)の一例である。
【0170】
〔実施例2〕
実施例1と同様の3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン(3APDES)を準備した。この3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン(3APDES)を水に溶解して50%の3APDES溶液とした後、75℃のウォーターバス中で5分加熱し、一晩静置し3APDES含有溶液(2)を得た。
次に、3APDES含有溶液(2)に、実施例1と同様の方法で得たBCGe含有溶液を添加して、実施例2の金属含有膜形成用組成物を得た。
【0171】
〔実施例3〕
ポリアリルアミン(PAH)(重量平均分子量15000、ポリサイエンス社製:24826(品番))を準備した。このポリアリルアミン(PAH)を水に溶解して2.74%のPAH含有溶液を得た。
PAH含有溶液に、実施例1と同様の方法で得たBCGe含有溶液を添加して、実施例3の金属含有膜形成用組成物を得た。
なお、ポリアリルアミン(PAH)は、化合物(a1)における化合物(A−1)の一例である。
【0172】
〔実施例4〕
分岐ポリエチレンイミンとして、BASF社製ポリエチレンイミン(BPEI;branched polyethyleneimine、Mw=70,000、1級窒素原子/2級窒素原子/3級窒素原子=31/40/29)を準備した。この分岐ポリエチレンイミン(BPEI)を水に溶解して3.6%のBPEI含有溶液を得た。
次に、BPEI含有溶液に、実施例1と同様の方法で得たBCGe含有溶液を添加して、実施例4の金属含有膜形成用組成物を得た。
上記分岐ポリエチレンイミンは、化合物(a1)における化合物(A−1)の一例である。
【0173】
〔実施例5〕
カルボキシエチルゲルマニウムセスキオキシド(BCGe)(東京化成社製:B1367(品番))に、アンモニア水溶液を添加して、BCGeのアンモニウム塩水溶液(18.21%)を得た。このBCGeのアンモニウム塩水溶液(18.21%)を実施例5の金属含有膜形成用組成物とした。
【0174】
〔実施例6〕
パラキシレンジアミン(pXDA)を準備した。このパラキシレンジアミン(pXDA)に、1−プロパノールを添加してpXDA含有溶液を得た。
得られたpXDA含有溶液に、実施例1と同様の方法で得たBCGe含有溶液を添加して実施例6の金属含有膜形成用組成物とした。
なお、パラキシレンジアミン(pXDA)は、化合物(a1)における化合物(A−3)の一例である。
【0175】
〔実施例7〕
カルボキシエチルゲルマニウムセスキオキシド(BCGe)(東京化成社製:B1367(品番))に、エチルアミン(EA)を添加して、BCGe含有のEA溶液を得た。
得られた上記EA溶液に、実施例6と同様の方法で得たpXDA含有溶液を添加して実施例7の金属含有膜形成用組成物とした。
【0176】
〔実施例8〕
カルボキシエチルゲルマニウムセスキオキシド(BCGe)(東京化成社製:B1367(品番))に、アンモニウム塩水溶液と、架橋剤(D)としてトリメリット酸(124BTC)を添加して混合溶液(1)を得た。
得られた混合溶液(1)に、実施例4と同様の方法で得たBPEI含有溶液を添加して実施例8の金属含有膜形成用組成物とした。
【0177】
〔実施例9〕
実施例4と同様のポリエチレンイミン(BPEI)と、実施例6と同様のパラキシレンジアミン(pXDA)と、1−プロパノールとを混合して混合溶液(2)を得た。
得られた混合溶液(2)に、実施例1と同様の方法で得たBCGe含有溶液を添加して実施例9の金属含有膜形成用組成物とした。
【0178】
〔実施例10〕
実施例7と同様の方法により、BCGe含有のEA溶液を得た。
パラキシレンジアミン(pXDA)と、架橋剤(D)としてトリメリット酸(135BTC)と、1−プロパノールとを混合して混合溶液(3)を得た。
上記EA溶液と、上記混合溶液(3)とを混合して実施例10の金属含有膜形成用組成物とした。
【0179】
〔実施例11〕
架橋剤(D)としてトリメシン酸(124BTC)を用いたこと以外は実施例10と同様にして実施例11の金属含有膜形成用組成物を得た。
【0180】
〔比較例1〕
実施例4と同様の分岐ポリエチレンイミン(BPEI)を準備し、実施例4と同様のBPEI含有溶液を得た。
COOH/N(BPEI中の窒素原子の数に対するエチルハーフエステルピロメリット酸(ehePMA)中のカルボキシ基の比率)が0.71になるように、エチルハーフエステルピロメリット酸(ehePMA)をBPEI含有溶液(組成物全体に対して1質量%)に混合し、組成物全体に対するエタノール(EtOH)の濃度が37.44質量%となるようにエタノールを混合し、比較例1の組成物を得た。比較例1の組成物は、有機膜形成用組成物である。
なお、エチルハーフエステルピロメリット酸(ehePMA)は、エタノールにピロメリット酸二無水物を加えて、50℃に加熱したウォーターバスで3時間30分加熱し、ピロメリット酸二無水物粉末を完全に溶解させることにより製造した。プロトンNMRにより、製造されたehePMAにエステル基が形成されていることを確認した。
エチルハーフエステルピロメリット酸(ehePMA)は、架橋剤(D)の一例である。
【0181】
〔比較例2〕
実施例1と同様の方法で得た3APDES含有溶液(1)に、上記エチルハーフエステルピロメリット酸(ehePMA)のエタノール水溶液(6.4質量%)を添加して、比較例2の組成物を得た。比較例2の組成物は、シリコン含有膜形成用組成物である。
【0182】
〔比較例3〕
実施例1の金属含有膜形成用組成物の調製において、3APDES含有溶液(1)に、BCGe含有溶液を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法により、比較例3の組成物を得た。すなわち、比較例3の組成物は、3APDES含有溶液(1)である。
【0183】
各実施例及び各比較例にて得られた組成物の組成及びpHは以下の表1に示すとおりである。
【0184】
【表1】
【0185】
−表1の説明−
表1中、「濃度(質量%)」とは、組成物中における各組成(化合物(A)、化合物(B)、添加剤(C)、架橋剤(D)、水及び水以外の溶媒)の濃度である。
表1中、「1−PrOH」は「1−プロパノール」を表し、「EtOH」は「エタノール」を表す。
表1中の空欄部は、測定していないことを示す。
【0186】
<金属含有膜の形成>
実施例1〜9にて得られた金属含有膜形成用組成物を用いて以下の方法により金属含有膜を形成した。
金属含有膜形成用組成物を塗布する基板としてシリコン基板を準備した。シリコン基板をスピンコーターの上にのせ、各実施例及び各比較例で調製した組成物1.0mLを10秒間一定速度で滴下し、13秒間保持した後、2000rpm(rpmは回転速度)で1秒間、600rpmで30秒間回転させた後、2000rpmで10秒間回転させて乾燥させた。これにより、シリコン基板上に金属含有膜を形成した。
次いで、100℃で1分乾燥後、窒素雰囲気(30kPa)、300℃で10分間、金属含有膜を加熱した。エッチング選択性の評価のため、さらに400℃で10分間、金属含有膜を加熱した(同じサンプルを連続処理)。
なお、実施例1の金属含有膜形成用組成物を用いて得られた金属含有膜(上記400℃で10分間加熱後の金属含有膜)について、FT−IR測定を行ったところ、実施例1の金属含有膜にアミド結合が形成されていることが確認された。
【0187】
また、比較例1にて得られた組成物、及び、比較例2にて得られた組成物を用いて、上記方法と同様にして、比較例1では有機膜を形成し、比較例2ではシリコン含有膜を形成した。
【0188】
<エッチング選択性の評価1>
上記の方法でシリコン基板上に形成した実施例1〜9の金属含有膜をチャンバーに入れ、チャンバー内を5×10
−6Torr(6.7×10
−4Pa)まで真空引きした後、酸素を50sccm(約8.3×10
−7m
3/s)でチャンバーに流し、チャンバー内圧力を0.15Torr(20Pa)に調整した後、100Wの酸素プラズマ(O
2プラズマ)を照射した。
エッチング選択性の評価1は、O
2プラズマ照射による金属含有膜の減少量及びエッチングレートを測定することにより行った。
O
2プラズマ照射による金属含有膜の減少量は、上記400℃で10分間加熱後の金属含有膜の膜厚から、O
2プラズマを所定時間照射した後の金属含有膜の膜厚を差し引くことにより算出した。結果を表2に示す。
また、O
2プラズマ照射によるエッチングレートは、上記金属含有膜の減少量(nm)を求め、その減少量(nm)をO
2プラズマ照射時間(上記評価1では5分間)で割ることにより算出した。結果を表2に示す。
【0189】
また、比較例1の有機膜、比較例2のシリコン含有膜についても、上記方法と同様にして、エッチング選択性の評価1を行った。結果を表2に示す。
【0190】
【表2】
【0191】
−表2の説明−
表2中、「formic」は「ギ酸」を表す。後述する表4〜表6においても同様である。また、「初期の膜厚(nm)」とは、400℃で10分間加熱後の金属含有膜(比較例1では有機膜、比較例2ではシリコン含有膜)の膜厚を意味する。
表2中、「Si含有量(元素比)」とは、仕込み量から算出した組成物中における全元素の原子数を100としたときのSi元素の原子数である。
表2中、「Ge含有量(元素比)」とは、仕込み量から算出した組成物中における全元素の原子数を100としたときのGe元素の原子数である。
【0192】
表2に示すように、化合物(A)及び化合物(B)を含有する実施例1〜9の組成物を用いて得られた金属含有膜は、化合物(A)を含有し化合物(B)を含有しない比較例1の組成物を用いて得られた有機膜よりも膜の減少量(すなわち、O
2プラズマエッチングレート)が小さかった。
また、化合物(A)及び化合物(B)を含有する実施例1〜9の組成物を用いて得られた金属含有膜は、化合物(A)を含有し化合物(B)を含有しない比較例2の組成物を用いて得られたシリコン含有膜よりも膜の減少量(すなわち、O
2プラズマエッチングレート)が小さかった。
したがって、実施例1〜9の組成物を用いて得られた金属含有膜は、有機膜(比較例1)及びケイ素含有膜(比較例2)よりもO
2プラズマエッチングレートが小さいこと、すなわち、エッチング選択性に優れることがわかった。
【0193】
以下の方法により、シリコン基板上にスピンオンカーボン膜(SOC膜)及びSiO
2膜(P−TEOS膜)をそれぞれ得た。
【0194】
〔比較例4〕
シリコン基板上に、レジスト溶液を塗布して乾燥させ、有機膜として厚さ55nmのスピンオンカーボン膜(SOC膜)を形成した。
【0195】
〔比較例5〕
テトラエトキシシラン(TEOS)と酸素との混合ガスを用いて、プラズマCVD法により、シリコン基板上に厚さ95nmのSiO
2膜(P−TEOS膜)を形成した。
【0196】
<エッチング選択性の評価2>
上記の方法でシリコン基板上に形成した実施例2、4、5、7及び11の金属含有膜について、アルバック社製RIE1515Z 並行平板型プラズマ処理装置を用いてプラズマエッチング処理を行った。
各例で得た金属含有膜をチャンバーに入れ、チャンバー内を1Pa以下に減圧後、エッチングガスとしてCl
2ガスを30cc/minで導入し、チャンバー内圧力を7Paにした。
次に、13.56MHz高周波電力を印加しプラズマ放電を行い、30秒間プラズマ処理を行った。
次に、エッチングガスとして、Cl
2ガスに代えて、O
2ガス、CHF
3ガス及びCF
4ガスをそれぞれ用いて上記と同様の方法でプラズマ処理を行った。
なお、プラズマ処理時間は、O
2プラズマを用いた場合は30秒、CHF
3プラズマを用いた場合は60秒、CF
4プラズマを用いた場合は30秒とした。
結果を表3に示す。
なお、表3中、エッチングレートがマイナスのものは、逆に物質が付着して厚さが増したことを意味する。すなわち、エッチングされなかったことを意味する。
【0197】
また、比較例4のSOC膜、比較例5のP−TEOS膜についても、上記方法と同様にして、エッチング選択性の評価2を行った。結果を表3に示す。
【0198】
【表3】
【0199】
表3に示すように、化合物(A)及び化合物(B)を含有する実施例2、4、5、7及び11の組成物から得られた金属含有膜は、SOC膜(比較例4)及びP−TEOS膜(比較例5)とは異なるエッチング選択性を有することがわかった。
例えば、実施例4の組成物から得られた金属含有膜は、SOC膜(比較例4)よりもO
2プラズマ及びCF
4プラズマでエッチングされ難く、Cl
2プラズマ及びCHF
3プラズマでエッチングされ易かった。また、上記金属含有膜(実施例4)は、P−TEOS膜(比較例5)よりもCHF
3プラズマ及びCF
4プラズマでエッチングされ難く、Cl
2プラズマ及びO
2プラズマでエッチングされ易かった。
【0200】
<耐熱性評価>
耐熱性評価は、実施例1、5〜7及び比較例3で得られた組成物を用いて以下の方法で行った。
熱重量測定装置(島津製作所社製:DTG−60(型番))を用いて、試料カップに入れた各組成物100mgを窒素雰囲気で30℃から550℃まで昇温速度30℃/分で加熱し、各温度での質量を測定した。300℃における質量から10%減少したときの温度を表4に示す。
【0201】
【表4】
【0202】
表4に示すように、化合物(A)及び化合物(B)を含有する実施例1、5〜7の組成物から得られる固体は、化合物(A)のみ含有する比較例3の組成物から得られる固体に比べ、高い耐熱性が得られた。
この結果から、化合物(A)及び化合物(B)を含有する実施例1、5〜7の組成物を用いることで、耐熱性に優れた金属含有膜を形成できることが示唆された。
特に、化合物(A)として化合物(a1)及び(a2)を含有する実施例1、6及び7の組成物から得られる固体は、化合物(A)として化合物(a2)のみを含有する実施例5の組成物から得られる固体に比べ、より高い耐熱性が得られた。
【0203】
<トレンチにおける充填性評価(埋め込み性評価)>
実施例1、2、7、10及び11の組成物を用いて、以下の方法により充填性評価を行った。
100nm幅及び200nm深さのトレンチパターンを設けた酸化ケイ素基板に、実施例1、2、7、10及び11の組成物を0.5cc滴下後、酸化ケイ素基板を、1000rpmで5秒、500rpmで30秒回転させた。次いで、滴下された組成物を100℃で1分間乾燥後、250℃で1分間加熱し、更に400℃で10分間加熱処理を行った。
そして、断面SEMでトレンチに組成物が充填されているか観察した。充填された面積がトレンチ内面積の90%以上である場合をA(充填性が良好)とした。
また、実施例7、10及び11の組成物については、50nm幅及び200nm深さのトレンチパターンを設けた酸化ケイ素基板を用いて上記と同様の評価を行った。
結果を表5に示す。なお、表5中、「−」は測定していないことを示す。
【0204】
【表5】
【0205】
表5に示すように、実施例1、2、7、10及び11のいずれの場合もトレンチへの充填性(埋め込み性)は良好であった。
この結果、化合物(A)及び化合物(B)を含有する実施例1、2、7、10及び11の組成物を、例えば半導体装置の埋め込み絶縁膜の形成に用いることで、トレンチへの充填性(埋め込み性)に優れた埋め込み絶縁膜が得られることがわかった。
【0206】
<電気特性評価>
実施例1、4及び7の組成物を用いて、以下の方法により電気特性評価を行った。
低抵抗シリコン基板に実施例1、4及び7の組成物をそれぞれ5mL滴下後、低抵抗シリコン基板を、1000rpmで5秒、500rpmで30秒回転させた。次いで、滴下された組成物を100℃で1分間乾燥後、250℃で1分間加熱し、更に400℃で10分間加熱処理を行った。これにより、低抵抗シリコン基板/膜からなる積層体を得た。
この積層体を用いて、以下の方法により金属含有膜の比誘電率及びリーク電流密度を測定した。結果を表6に示す。
【0207】
(比誘電率の測定)
得られた積層体における膜の比誘電率を測定した。
比誘電率は、水銀プローブ装置(SSM5130)を用い、25℃、相対湿度30%の雰囲気下、周波数100kHzにて常法により測定した。
【0208】
(リーク電流密度の測定)
得られた積層体の膜表面に水銀プローブを当て、電界強度とリーク電流密度との関係を測定し、測定された電界強度1MV/cmにおける値をリーク電流密度とした。
【0209】
【表6】
【0210】
表6に示すように、実施例1、4及び7の組成物から得られた金属含有膜は、いずれも比誘電率が高く、かつリーク電流密度が低かった。
この結果、化合物(A)及び化合物(B)を含有する実施例1、4及び7の組成物を、例えば半導体装置の埋め込み絶縁膜の形成に用いることで、埋め込み絶縁膜の絶縁性を向上できることがわかった。
【0211】
2016年5月19日に出願された日本出願2016−100774の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。