特許第6591063号(P6591063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6591063レーザ車両投光器の稼働状態を監視するための監視装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591063
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】レーザ車両投光器の稼働状態を監視するための監視装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 37/02 20060101AFI20191007BHJP
   B60Q 1/04 20060101ALI20191007BHJP
   B60Q 11/00 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   H05B37/02 J
   B60Q1/04 E
   B60Q11/00 610B
   B60Q11/00 615A
   B60Q11/00 620A
【請求項の数】13
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-520462(P2018-520462)
(86)(22)【出願日】2016年9月13日
(65)【公表番号】特表2018-533182(P2018-533182A)
(43)【公表日】2018年11月8日
(86)【国際出願番号】AT2016060055
(87)【国際公開番号】WO2017066815
(87)【国際公開日】20170427
【審査請求日】2018年6月14日
(31)【優先権主張番号】A50907/2015
(32)【優先日】2015年10月23日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】593045569
【氏名又は名称】ツェットカーヴェー グループ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(72)【発明者】
【氏名】ヘーベンシュトライト、ゲオルク
【審査官】 田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−527518(JP,A)
【文献】 特開平5−83105(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102014202294(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 37/02
B60Q 1/04
B60Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ車両投光器(4)の稼働状態を監視するための監視装置であって、
前記レーザ車両投光器(4)は、少なくともレーザ光源(5)と、前記レーザ光源(5)により照射可能でありそれにより可視光を放射させるために励起可能な光変換要素(6)とを含み、前記監視装置は、少なくとも感光性装置(3)と比較装置(1)とを有する構成であり、
前記感光性装置(3)は、少なくとも1つのLED(D1)を含み、前記LED(D1)は、前記レーザ光源(5)から受け取った光を電気信号(U)へ変換するために設けられており、前記電気信号(U)は、前記比較装置(1)に提供され、前記比較装置(1)は、前記電気信号(U)を予め設定可能な値と比較し、当該比較の結果に依存してエラー信号(U)を出力するように構成されており、
前記感光性装置(3)は、少なくとも2つのLEDを有し、これらのLEDのうち1つは、レーザ光を測定するために設けられており、これらのLEDのうち他の1つは、前記光変換要素(6)により変換された残りの光を測定するために設けられており、これらの少なくとも2つのLEDは、互いに逆並列で接続されていること
を特徴とする監視装置。
【請求項2】
前記比較装置(1)は、比較器(10)を含み、前記比較器(10)は、前記電気信号(U)を所定の閾値(Uref)と比較し、前記閾値(Uref)を超過した場合に前記エラー信号(U)を出力するように構成されていること
を特徴とする、請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記エラー信号(U)は、グラウンドに対して0Vとは異なる電圧レベルを有する電気的な一定信号であること
を特徴とする、請求項1又は2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記エラー信号(U)は、グラウンドに対して0Vと同じ電圧レベルを有する電気的な一定信号であること
を特徴とする、請求項1又は2に記載の監視装置。
【請求項5】
前記感光性装置(3)は、少なくとも1つの青色LEDを有すること
を特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の監視装置。
【請求項6】
レーザ光を測定するためのLEDの分光感度は、レーザ光の波長範囲内で最大であり、前記光変換要素(6)により変換された残りの光を測定するためのLEDは、レーザ光の波長範囲分だけ減らされた可視光の波長範囲内に最大値がある分光感度を有すること
を特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の監視装置。
【請求項7】
レーザ光を測定するためのLEDは、青色LEDであり、前記光変換要素(6)により変換された残りの光を測定するためのLEDは、赤色LEDであること
を特徴とする、請求項6に記載の監視装置。
【請求項8】
測定により出力された複数のLEDの出力信号が、前記比較装置(1)に提供され、前記比較装置(1)により互いに比較され、それらの出力信号を考慮して前記エラー信号(U)が決定されること
を特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の監視装置。
【請求項9】
少なくともレーザ光源(5)と、可視光を放射させるために励起可能な光変換要素(6)とを有し、請求項1〜のいずれか一項に記載の監視装置を少なくとも1つ備えたレーザ車両投光器。
【請求項10】
感光性装置(3)の少なくとも1つのLEDは、前記レーザ光源(5)のスペクトルに対して適合されたLEDであること
を特徴とする、請求項に記載のレーザ車両投光器。
【請求項11】
前記レーザ車両投光器(4)は、比較装置(1)と接続された、前記レーザ光源(5)を点灯制御するための制御ユニットを有し、前記制御ユニットは、エラー信号(U)がある場合に前記レーザ光源(5)を作動停止するように構成されていること
を特徴とする、請求項又は10に記載のレーザ車両投光器。
【請求項12】
請求項10又は11に記載のレーザ車両投光器(4)を少なくとも1つ、又は2つ含む車両。
【請求項13】
前記車両は、比較装置(1)と接続された、レーザ光源(5)を点灯制御するための制御ユニットを有し、前記制御ユニットは、エラー信号(U)がある場合にレーザ光源(5)を作動停止するように構成されていること
を特徴とする、請求項12に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ車両投光器(特にレーザ車両前照灯)の稼働状態を監視するための監視装置に関し、この際、レーザ車両投光器は、少なくともレーザ光源と、該レーザ光源により照射可能でありそれにより可視光を放射させるために励起可能な光変換要素(ライトコンバージョンエレメント)とを含み、この際、監視装置は、少なくとも感光性装置と比較装置とを有する。
【0002】
更に本発明は、少なくともレーザ光源と、可視光を放射させるために励起可能な光変換要素とを有し、本発明による監視装置を少なくとも1つ備えたレーザ車両投光器、並びに、本発明によるレーザ車両投光器を少なくとも1つ、好ましくは2つ含む車両、特に自動車に関する。
【背景技術】
【0003】
レーザ車両投光器の稼働時には、危険状況の発生を回避するために、レーザ車両投光器がその機能性能に関して検査されなくてはならないということが必要とされる。そのような状況は、例えば、可視光へレーザ光を変換するために設けられている光変換要素(ライトコンバージョンエレメント)が損傷され、その結果、光変換が不完全に進行し、レーザ光が未変換の状態で投光器から出射されるときに起こるであろう。そのような異常のある状態を認識するために、従来技術から、フォトダイオード又はフォトトランジスタを有する感光性装置を備えた監視装置が知られるようになり、フォトダイオード又はフォトトランジスタを用いることにより、レーザ投光器により放射された光のスペクトルが少なくとも部分的に検知され、予め設定された目標値との比較により、異常のある稼働状態の存在を推論することが可能である。フォトダイオード及び/又はフォトトランジスタによるレーザ光の十分に高感度の検知を保証するために、従来技術では、フォトダイオード及び/又はフォトトランジスタに対して前置され、実質的にレーザ光ないしレーザ光源の波長領域内だけで光透過性である光学フィルタが典型的に使用される。それによりレーザ光を認識するためのフォトダイオード及び/又はフォトトランジスタの感度を十分に高めることが可能であり、従って前述の異常状態の認識が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】DE 10 2014 202294 A1
【特許文献2】WO 2008/152922 A1
【特許文献3】WO 2014/072226 A1
【特許文献4】EP 2 120 511 A1
【特許文献5】WO 2016/088790 A1
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】”LED circuit - Wikipedia”, 2015-10-16, XP055326461, WikiPedia(URL:https://en.wikipedia.org/w/index.php?title=LED_circuit&oldid=686073302)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前置される光学フィルタを用いてフォトダイオード及び/又はフォトトランジスタを使用することは、追加的なプロセスステップ及び/又はハウジング及び/又は更なる構成部材が必要とされることにより、多大な費用と装置上の複雑さを伴っている。更にフィルタとフォトダイオード及び/又はフォトトランジスタの適合の際に誤りが起こる可能性もある。
【0007】
従って本発明の課題は、上記の欠点を解消し、低コストで実現可能であり同時に信頼のある機能性を保証する監視装置を創作することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、冒頭に記載した形式の監視装置において、本発明により、感光性装置が少なくとも1つのLED(発光ダイオード)を含み、該LEDは、レーザ光源から受け取った光を電気信号へ変換するために設けられており、前記電気信号は、比較装置に提供され、この際、比較装置は、前記電気信号を予め設定可能な値と比較し、当該比較の結果に依存してエラー信号を出力するように構成されているという監視装置により解決される。
即ち本発明の第1の視点により、レーザ車両投光器の稼働状態を監視するための監視装置であって、前記レーザ車両投光器は、少なくともレーザ光源と、前記レーザ光源により照射可能でありそれにより可視光を放射させるために励起可能な光変換要素とを含み、前記監視装置は、少なくとも感光性装置と比較装置とを有する構成であり、前記感光性装置は、少なくとも1つのLEDを含み、前記LEDは、前記レーザ光源から受け取った光を電気信号へ変換するために設けられており、前記電気信号は、前記比較装置に提供され、前記比較装置は、前記電気信号を予め設定可能な値と比較し、当該比較の結果に依存してエラー信号を出力するように構成されており、前記感光性装置は、少なくとも2つのLEDを有し、これらのLEDのうち1つは、レーザ光を測定するために設けられており、これらのLEDのうち他の1つは、前記光変換要素により変換された残りの光を測定するために設けられていることを特徴とする監視装置が提供される。
より詳しくは、前記第1の視点において、レーザ車両投光器の稼働状態を監視するための監視装置であって、前記レーザ車両投光器は、少なくともレーザ光源と、前記レーザ光源により照射可能でありそれにより可視光を放射させるために励起可能な光変換要素とを含み、前記監視装置は、少なくとも感光性装置と比較装置とを有する構成であり、前記感光性装置は、少なくとも1つのLEDを含み、前記LEDは、前記レーザ光源から受け取った光を電気信号へ変換するために設けられており、前記電気信号は、前記比較装置に提供され、前記比較装置は、前記電気信号を予め設定可能な値と比較し、当該比較の結果に依存してエラー信号を出力するように構成されており、前記感光性装置は、少なくとも2つのLEDを有し、これらのLEDのうち1つは、レーザ光を測定するために設けられており、これらのLEDのうち他の1つは、前記光変換要素により変換された残りの光を測定するために設けられており、これらの少なくとも2つのLEDは、互いに逆並列で接続されていることを特徴とする。
更に本発明の第2の視点により、少なくともレーザ光源と、可視光を放射させるために励起可能な光変換要素とを有し、前記監視装置を少なくとも1つ備えたレーザ車両投光器が提供される。
更に本発明の第3の視点により、前記レーザ車両投光器を少なくとも1つ、又は2つ含む車両が提供される。
尚、本願の特許請求の範囲に付記されている図面参照符号は、専ら本発明の理解の容易化のためのものであり、図示の形態への限定を意図するものではないことを付言する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、以下の形態が可能である。
(形態1)レーザ車両投光器の稼働状態を監視するための監視装置であって、前記レーザ車両投光器は、少なくともレーザ光源と、前記レーザ光源により照射可能でありそれにより可視光を放射させるために励起可能な光変換要素とを含み、前記監視装置は、少なくとも感光性装置と比較装置とを有する構成であり、前記感光性装置は、少なくとも1つのLEDを含み、前記LEDは、前記レーザ光源から受け取った光を電気信号へ変換するために設けられており、前記電気信号は、前記比較装置に提供され、前記比較装置は、前記電気信号を予め設定可能な値と比較し、当該比較の結果に依存してエラー信号を出力するように構成されていること。
(形態2)前記監視装置において、前記比較装置は、比較器を含み、前記比較器は、前記電気信号を所定の閾値と比較し、前記閾値を超過した場合に前記エラー信号を出力するように構成されていることが好ましい。
(形態3)前記監視装置において、前記エラー信号は、グラウンドに対して0Vとは異なる電圧レベルを有する電気的な一定信号であることが好ましい。
(形態4)前記監視装置において、前記エラー信号は、グラウンドに対して0Vと同じ電圧レベルを有する電気的な一定信号であることが好ましい。
(形態5)前記監視装置において、前記感光性装置は、少なくとも1つの青色LEDを有することが好ましい。
(形態6)前記監視装置において、前記感光性装置は、少なくとも2つのLEDを有し、これらのLEDのうち1つは、レーザ光を測定するために設けられており、これらのLEDのうち他の1つは、前記光変換要素により変換された残りの光を測定するために設けられていることが好ましい。
(形態7)前記監視装置において、レーザ光を測定するためのLEDの分光感度は、レーザ光の波長範囲内で最大であり、前記光変換要素により変換された残りの光を測定するためのLEDは、レーザ光の波長範囲分だけ減らされた可視光の波長範囲内に最大値がある分光感度を有することが好ましい。
(形態8)前記監視装置において、レーザ光を測定するためのLEDは、青色LEDであり、前記光変換要素により変換された残りの光を測定するためのLEDは、赤色LEDであることが好ましい。
(形態9)前記監視装置において、少なくとも2つのLEDは、互いに逆並列で接続されていることが好ましい。
(形態10)前記監視装置において、測定により出力された複数のLEDの出力信号が、前記比較装置に提供され、前記比較装置により互いに比較され、それらの出力信号を考慮して前記エラー信号が決定されることが好ましい。
(形態11)少なくともレーザ光源と、可視光を放射させるために励起可能な光変換要素とを有し、前記監視装置を少なくとも1つ備えたレーザ車両投光器。
(形態12)前記レーザ車両投光器において、感光性装置の少なくとも1つのLEDは、前記レーザ光源のスペクトルに対して適合されたLEDであることが好ましい。
(形態13)前記レーザ車両投光器において、前記レーザ車両投光器は、比較装置と接続された、前記レーザ光源を点灯制御するための制御ユニットを有し、前記制御ユニットは、エラー信号がある場合に前記レーザ光源を作動停止するように構成されていることが好ましい。
(形態14)前記レーザ車両投光器を少なくとも1つ、好ましくは2つ含む車両、特に自動車。
(形態15)前記車両において、前記車両は、比較装置と接続された、レーザ光源を点灯制御するための制御ユニットを有し、前記制御ユニットは、エラー信号がある場合にレーザ光源を作動停止するように構成されていることが好ましい。

【0010】
本発明において、予め設定された値は、規定可能な閾値とすることができる。この閾値は、電気信号の種類に依存して有意義に固定(設定)可能である。例えば、レーザ車両投光器の正しい稼働状態においてLEDの信号(光を受けてLEDが出力する電圧)は、0Vと0.3Vの間の値をとることができ、異常時には、0.5V以上の値に上昇する。そのような場合、閾値は0.5Vとすることができるであろう。レーザ光源から放射された光(以下ではレーザ光とも称する)を認識するためのLEDの使用は、LEDが、フォトダイオード又はフォトトランジスタと異なり、遥かに狭帯域の周波数スペクトルを有し、それによりそれぞれのレーザ光を認識するために既に十分に高い感度を有するという優れた利点を有する。それにより追加的な光学フィルタの使用を無くすことができる。それにより本発明による監視装置は、丈夫(ロバスト)で低コストである。
【0011】
レーザ光源から放射された光は、好ましくは、420nmと520nmの間の波長範囲内の青色光である。しかし基本的にレーザ光は、可視光を放射させるための光変換要素の励起に適した任意の波長をもつとしてよい。例えばレーザ光は、230nm(ナノメートル)と760nmの間の波長範囲内、又は同様に前記の波長範囲の上側又は下側の可視範囲外に位置することが可能であろう。光変換要素は、典型的には、所謂蛍光体変換器(Phosphor-Konverter:例えば、リン化合物、又はセリウム添加のYAG結晶(イットリウム・アルミニウム・ガーネット結晶)など)としてよい。
【0012】
特に、比較装置は、比較器(コンパレータ)を含み、該比較器は、電気信号を所定の閾値と比較し、閾値を超過した場合にエラー信号を出力するように構成されていることを提案することができる。
【0013】
更に、エラー信号は、グラウンドに対して0Vとは異なる電圧レベルを有する電気的な一定(ないし一様)信号(Gleichsignal)であることを提案することができる。それにより監視装置の電圧供給の欠如は、必然的にエラー信号の出力という結果にはならないだろう。「グラウンド」との概念は、信号電圧及び稼働電圧が関連付けられるゼロ電位ないし基準電位として理解される。車両においてグラウンド電位は、典型的には、車両バッテリのマイナス極に対応し、該マイナス極は、通常、車両車体と電気的に接続されている。
【0014】
それに対して代替的に、エラー信号は、グラウンドに対して0Vと同じ電圧レベルを有する電気的な一定(一様)信号であることを提案することもできる。それにより監視装置のエネルギー供給が欠如したとしてもエラー信号が出力可能であることを保証することができる。
【0015】
特に、感光性装置は、少なくとも1つの青色LEDを有することを提案することができる。青色LEDとは、青色光(例えば450nmと500nmの間の波長範囲内)を放射するように構成されている発光ダイオードとして理解される。青色LEDは、青色光の測定に適しており、それにより青色光を放射するレーザ光源を使用する際には、特に有利であると分かっている。
【0016】
特に、感光性装置は、少なくとも2つのLEDを有することを提案することができ、この際、これらのLEDのうち1つは、レーザ光を測定するために設けられており、これらのLEDのうち他の1つは、光変換要素により変換された残りの光を測定するために設けられている。異なる2つの発光ダイオードの使用は、レーザ車両投光器から放射される光の特に正確な測定を可能とする。好ましくは、比較装置には、全てのLEDの信号が提供され、1つ又は複数の閾値と比較され、この際、当該比較の結果に依存して異常の存在を結論づけることが可能である。
【0017】
「変換された残りの光」との表現は、レーザ光の波スペクトル分だけ減らされた(即ちレーザ光の波スペクトル分を除いた)光変換要素から放射される光スペクトルとして理解される。
【0018】
レーザ光を測定するためのLEDの分光感度(スペクトル感度)が、レーザ光の波長範囲内で最大であり、光変換要素により変換された残りの光を測定するためのLEDは、レーザ光の波長範囲分だけ減らされた(即ちレーザ光の波長範囲分を除いた)可視光の波長範囲内に最大値がある分光感度を有すると、特に有利である。
【0019】
この際、特に、レーザ光を測定するためのLEDは、青色LEDであり、光変換要素により変換された残りの光を測定するためのLEDは、赤色LEDであることを提案することができる。赤色LEDとは、赤色光(例えば610nmと760nmの間の波長範囲内)を放射するように構成されている発光ダイオードとして理解される。青色LEDと赤色LEDの組み合わせは、特に青色レーザ光ダイオードを有するレーザ車両投光器を監視するために格別有利であると判明し、それは、周波数帯域内で青色ダイオードと赤色ダイオードの分光感度が十分に離間していることにより、レーザ光と、変換された光との間の明確な区別がダイオードから出力される信号を考慮して可能であるためである。
【0020】
更に、少なくとも2つのLEDが互いに逆並列(antiparallel)で接続されていることを提案することができる。それにより静電気放電(ESD)から十分な保護を簡単に提供することができる。更にそれにより発光ダイオードの出力信号に依存して発光ダイオードが互いに遮断することが可能である。例えば、青色ダイオードがより高い電圧をもつ出力信号を有すると有利であり得て、それにより例えば光変換が部分的にだけ行われるという異常のある状態では、両方のダイオードが活性化される場合、青色ダイオードは、赤色ダイオードを遮断し、従って明らかに認識可能な出力信号が比較装置へ提供される。
【0021】
特に、測定により出力された複数のLEDの出力信号が、比較装置に提供され、比較装置により互いに比較され、それらの出力信号を考慮してエラー信号が決定されることを提案することができる。例えば、青色ダイオードの出力信号の高さと、赤色ダイオードの出力信号の高さとの商(ないし比 Quotient)を、所定の閾値との比較のために利用可能なパラメータとして用いることができる。このようにして、例えば、強い全光放射(例えば作動されたハイビームに基づく又はパッシングライト機能の操作に基づく)に起因する青色LEDと赤色LEDの高い出力信号により発生するであろう間違った異常認識を効果的に防止することができる。
【0022】
本発明の更なる一視点は、少なくともレーザ光源と、可視光を放射させるために励起可能な光変換要素とを有し、本発明による監視装置を少なくとも1つ備えたレーザ車両投光器に関し、この際、好ましくは、感光性装置の少なくとも1つのLEDは、レーザ光源のスペクトルに対して適合されたLEDである。
【0023】
レーザ光源のスペクトルに対して適合された発光ダイオードとは、レーザ光源から放射される光を、他の波長範囲と比べて高い分光感度をもって検知することに適した発光ダイオードとして理解される。青色レーザ光源のためには、典型的に青色LEDが設けられ、それに対して赤色レーザ光源のためには、赤色LEDが設けられる、等々である。
【0024】
異常のある状態が存在する場合に自動的なスイッチオフを保証するために、レーザ車両投光器は、比較装置と接続された、レーザ光源を点灯制御(Ansteuern)するための制御ユニットを有することを提案することができ、この際、該制御ユニットは、エラー信号がある場合にレーザ光源を作動停止(非活性化)するように構成されている。レーザ光源が作動停止されることにより、レーザ光源による光放射が防止される。
【0025】
更なる一視点において、本発明は、本発明によるレーザ車両投光器を少なくとも1つ、好ましくは2つ含む車両、特に自動車に関する。この際、レーザ車両投光器は、上述したように、レーザ光源を作動停止するために制御ユニットを有することが可能である。それに対して代替的に、この制御ユニットは、同様に車両に設けられていることも可能であり、レーザ車両投光器(ないしヘッドライト)ないしレーザ光源と接続されることが可能である。
【0026】
以下、図面に具体的に図示された、例示であるが限定ではない実施形態に基づき、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明によるレーザ車両投光器の一部分を模式的に示す図である。
図2】一感光性装置を模式的に示す図である。
図3】本発明による一監視装置の電気配線図の一例を示す図である。
図4】監視装置の電気信号の時間的な経過態様を示す図である。
【実施例】
【0028】
添付の図面では、特記しない限り、同じ符号は、同じ部材ないし特徴を示している。
【0029】
図1は、本発明によるレーザ車両投光器(特にレーザ車両前照灯)4の一部分を模式的に示す図を示している。レーザ車両投光器4は、本実施例において、レーザ光源5と、レーザ光源5により照射可能でありそれにより可視光を放射させるために励起可能な光変換要素(ライトコンバージョンエレメント)6とを含み、この際、光変換要素6とレーザ光源5の間には、レンズ7が配設されており、更にレーザ車両投光器4は、感光性装置3と、リフレクタ8と、電気信号を予め設定可能な値と比較し且つ当該比較の結果に依存してエラー信号を出力するように構成されている比較装置1とを含んでいる。
【0030】
レーザ光源5と、レンズ7と、光変換要素6とは、本事例では、発光装置2にまとめられており、発光装置2は、独自のハウジングに取り付けられたコンポーネントとして構成可能である。
【0031】
レーザ車両投光器4は、本発明による監視装置を含み、該監視装置は、既述の感光性装置3と比較装置1とを有している。感光性装置3は、リフレクタ8と固定結合され、或いはリフレクタ8の所定の開口部に受容されており、該開口部は、好ましくは、光変換要素6の異常時にはレーザ光源5が主に照らすことになる位置に配設されている。特に、発光装置2の方を向いた感光性装置3の側面は、異常時にレーザ光の望まれない反射を防止して車両投光器からの出射を防止するために、光吸収表面を有することを提案することができる。
【0032】
図2は、感光性装置3を模式的に示す図を示している。感光性装置3は、2つのLED、即ち青色LEDのD1と赤色LEDのD2を含み、これらのLEDは、本実施例では、共通のハウジング3a内に配設されており、それに対して代替的であるが同様に別個のハウジング内に配設されていることもできる。ハウジング3aないしLEDのD1、D2は、プリント基板3bと電気的に接続されており、プリント基板3bは、本実施例において、比較装置1との電気的な接続のために差込接続部(コネクタ接続部)3cを有し、並びにリフレクタ8との機械的な接続のために穿孔部3bを有する。比較装置1ないしその電気的な実装要素は、直接的にプリント基板3d上に配設されることも可能であり、それにより例えば感光性装置3から比較装置1への接続ケーブルのような外部の接続コンポーネントを無くすことができる。その際、差込接続部3cは、車両内の制御ユニットとの直接的な接続のために設けられていることも可能であろう。
【0033】
図3は、本発明による一監視装置の電気配線図の一例を示している。該電気配線図において、比較装置1は、比較器(コンパレータ)10を含み、比較器10は、ダイオードD1とD2の逆並列回路から出される電気信号Uを所定の閾値Urefと比較し、閾値Urefを超過した場合にエラー信号を発生させるように構成されており、該エラー信号は、本実施例では「ハイ(high)」の状態における電圧レベルU図4を参照)と同一視することができる。それに対して代替的に該エラー信号は、同様にグラウンドに対して「ロー(low)」の状態に対応し、例えばグラウンドに対して0Vに対応することも可能であろう。
【0034】
図4は、監視装置の電気信号の時間的な経過態様を示しており、より正確に言うとI、U、Uref、Uによる信号の時間的な経過態様を示している。この際、開始期間「N」には、異常のない状態における前記信号の信号経過が図示されている。それに続く期間「F」では、レーザ車両投光器の誤作動が、例えば閾値Urefの超過に基づいて監視装置により認識され、この際、ダイオード電流Iと出力電圧Uが上昇し、出力信号Uが論理状態「ハイ(high)」(例えば5V)へ切り替えられる。従って異常状態の丈夫(ロバスト)で低コストの認識機能が提供されている。
【0035】
この教示内容に鑑み、当業者は、発明性とは無関係に本発明の不図示の他の実施形態に達することができる。従って本発明は、図示の実施形態に限定されるものではない。また本発明ないし本実施形態の個々の観点に着目してこれらを互いに組み合わせることも可能である。本質的なことは、本発明の基礎を成す思想であり、これらの思想は、当業者により本明細書の認識のもと様々なかたちで実施可能であるが、本発明の基礎を成す思想として保たれるものである。
【符号の説明】
【0036】
1 比較装置
2 発光装置
3 感光性装置
4 レーザ車両投光器
5 レーザ光源
6 光変換要素
7 レンズ
8 リフレクタ

D1 青色LED
D2 赤色LED
3a ハウジング
3b プリント基板
3c 差込接続部
3d 穿孔部

10 比較器(コンパレータ)
ダイオード電流
ダイオード出力電圧
ref 閾値
出力信号(エラー信号の電圧レベル)
N 開始期間(異常のないノーマルな状態)
F 開始期間に続く期間(異常のある状態)
図1
図2
図3
図4