【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る屋根は、トラス構造によって形成される屋根であって、平面視において環状に形成された外周材と、前記平面視において第1方向に延び、前記外周材に架け渡された第1材と、前記平面視において前記第1方向に交差する第2方向に延び、前記第1材に交差しながら前記外周材に架け渡された第2材と、前記平面視において前記第1方向および前記第2方向に交差する方向に延び、前記第1材および前記第2材に交差しながら前記外周材に架け渡された補強材と、を備え
、前記補強材の軸剛性は、前記第1材の軸剛性および前記第2材の軸剛性よりも高い。
【0007】
例えば、意匠要件(屋根下の室内空間の有効高さ等)や法規条件(水勾配など)を満たすことを目的として屋根にライズが設けられていると、第1材および第2材それぞれに、ライズに対応するスラスト力が生じる。このスラスト力を、屋根を支持する下部構造が負担する場合、第1材および第2材それぞれを下部構造に例えばピン接合し、第1材および第2材それぞれのアーチ効果を利用して下部構造にスラスト力を負担させる。
例えば、外周材における第1方向の距離や第2方向の距離が大きい場合(いわゆる大スパン構造の場合)、前述したスラスト力が大きくなる。この場合、そのスラスト力を下部構造に負担させると、下部構造の強度を高める必要が生じる。その結果、例えば、下部構造における柱の柱せいが大きくなり、屋根下の室内空間が狭くなる(意匠計画上、柱サイズが制限される場合、その制限を守れない)等の問題が生じる。
そのため、第1材および第2材に生じるスラスト力の下部構造への負担を軽減する構造が望まれている。例えば、屋根と柱との間の支持部分を一部ローラー構造とすることにより、下部構造に伝達されるスラスト力を軽減することも行われる。
この屋根では、補強材が、平面視において第1方向および第2方向に交差する方向に延び、かつ、第1材および第2材に交差しながら外周材に架け渡されている。したがって、第1材および第2材に生じるスラスト力を補強材に伝達し、これらのスラスト力の少なくとも一部を補強材に負担させることができる。言い換えると、曲げモーメントを軸力に変換し、この軸力を、屋根内(自己)で釣り合わせることができる。これにより、例えば、下部構造が負担する第1材および第2材それぞれのスラスト力及び水平変位を抑え、下部構造の設計の自由度を高めること等ができる。さらに例えば、補強材によるアーチ効果を期待することが可能になり、外周材、第1材、第2材に適用する部材についての過度な強度を不要として屋根の低コスト化を実現すること等ができる。
【0009】
補強材の軸剛性が、第1材の軸剛性および第2材の軸剛性よりも高いことにより、補強材に軸力が作用したときに、補強材が変形するのをより効果的に抑制することができる。これにより、補強材が負担することができるスラスト力の大きさを効果的に高めることができ、屋根の水平変位をより効果的に抑えることができる。
【0010】
前記補強材は、前記平面視において、前記外周材に内接する多角形状に形成されていてもよい。
【0011】
補強材が、平面視において、外周材に内接する多角形状に形成されている。したがって、補強材全体で負担することができるスラスト力の大きさを効果的に高めることができる。
【0012】
前記補強材は、前記平面視において、前記第1方向に凸となる2つの第1角部と、前記第2方向に凸となる2つの第2角部と、を備える矩形状を形成していてもよい。
【0013】
補強材が、平面視において前述の矩形状を形成している。したがって、補強材全体で負担することができるスラスト力の大きさを一層効果的に高めることができる。
【0014】
前記第2角部では、その第2角部を形成する2つの辺部が前記第1方向に離間していてもよい。
【0015】
第2角部において、その第2角部を形成する2つの辺部が第1方向に離間している。したがって、補強材のデザインの自由度を高めることができる。
【0016】
前記外周材は、前記平面視において複数の辺部および複数の角部を有する多角形状に形成され、前記補強材は、1つの前記角部を挟んで互いに隣り合う2つの前記辺部間に架け渡されていてもよい。
【0017】
補強材が、1つの角部を挟んで互いに隣り合う2つの辺部間に架け渡されている。したがって、補強材全体で負担することができるスラスト力の大きさを効果的に高めることができる。
【0018】
前記外周材は、前記平面視において矩形状に形成され、前記複数の辺部は、前記第1方向に延びる2つの第1辺部と、前記第2方向に延びる2つの第2辺部と、を備え、前記補強材は、1つの前記角部を挟んで互いに隣り合う前記第1辺部および前記第2辺部間に架け渡されていてもよい。
【0019】
補強材が、1つの角部を挟んで互いに隣り合う第1辺部および第2辺部間に架け渡されている。したがって、補強材全体で負担することができるスラスト力の大きさを一層効果的に高めることができる。
【0020】
1つの前記角部を挟んで互いに隣り合う2つの前記辺部の全ての組について、前記補強材が設けられていてもよい。
【0021】
1つの角部を挟んで互いに隣り合う2つの辺部の全ての組について、前記補強材が設けられている。したがって、補強材全体で負担することができるスラスト力の大きさを一層効果的に高めることができる。
【0022】
前記第1材、前記第2材および前記補強材は、上方に凸となる円弧状に形成されていてもよい。
【0023】
第1材、第2材および補強材が、上方に凸となる円弧状に形成され、屋根にライズが設けられている。したがって、第1材および第2材に前述したスラスト力が発生する。よって、補強材による作用効果を顕著に奏功させることができる。
【0024】
前記補強材は、前記平面視において直線状に延びていることが好ましい。
【0025】
補強材が、平面視において直線状に延びている場合、三次元の曲げではなく二次元の単純曲げで補強材の加工が可能なため、加工が簡単で製作コストを大幅に下げることが可能である。
【0026】
前記補強材は、上側に向けて凸となる円弧状に形成されるとともに前記外周材において異なる2点間に連続して架け渡された剛体を備えていてもよい。なお、剛体が外周材において異なる2点間に連続して架け渡されていることは、1本の連続する剛体が外周材において異なる2点間に架け渡されていることを意味する。1本の連続する剛体には、複数本の剛体が溶接を介して一体化された構成も含まれる。例えば、1本の連続する剛体として、1本が連続して押出成形された形鋼を採用することも可能であり、別個に押出成形された複数本の形鋼を、溶接を介して一体に接合した形鋼を採用することも可能である。
【0027】
補強材が連続して架け渡された剛体であることにより、補強材の曲げ加工の工程を少なくすることが可能となり、製作コストを削減できる。
【0028】
前記外周材、前記第1材、前記第2材および前記補強材を備える複数の上弦材と、前記外周材、前記第1材、前記第2材および前記補強材を備える複数の下弦
材と、前記複数の上弦材と前記複数の下弦材とを連結する斜材と、を備えていてもよい。
【0029】
複数の上弦材および複数の下弦
材がそれぞれ、外周材、第1材、第2材および補強材をそれぞれ備えている。したがって、上弦材の補強材が圧縮力を負担し、下弦材の補強材が引張力を負担することで、第1材および第2材に生じるスラスト力を補強材に負担させることができる。
斜材が、複数の上弦材と複数の下弦材とを連結している。したがって、複数の上弦材と複数の下弦材との間の距離であるデプスを大きくすることで、例えば、曲げモーメントを軸力に変換して受け止め易くすること等ができる。
【0030】
本発明に係る構造物は、前記屋根と、前記屋根を支持する下部構造と、を備える。
【0031】
屋根が、前述した構成を採用しているので、例えば、下部構造の設計の自由度を高めるとともに、低コスト化を実現すること等ができる。
【0032】
前記屋根と前記下部構造との間に配置されるローラー支承を更に備えてもよい。
【0033】
ローラー支承が、屋根と下部構造との間に配置される。したがって、基本的に下部構造が屋根のスラスト力を負担することがない。そのため前述したような、下部構造が負担する第1材および第2材それぞれのスラスト力を抑えることができるという作用効果が顕著に奏功される。