特許第6591110号(P6591110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6591110
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】屋根および構造物
(51)【国際特許分類】
   E04B 7/08 20060101AFI20191007BHJP
【FI】
   E04B7/08
【請求項の数】13
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-79055(P2019-79055)
(22)【出願日】2019年4月18日
【審査請求日】2019年4月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 崇
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−262878(JP,A)
【文献】 実公平07−038488(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/18 − 1/343
E04B 7/00 − 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラス構造によって形成される屋根であって、
平面視において環状に形成された外周材と、
前記平面視において第1方向に延び、前記外周材に架け渡された第1材と、
前記平面視において前記第1方向に交差する第2方向に延び、前記第1材に交差しながら前記外周材に架け渡された第2材と、
前記平面視において前記第1方向および前記第2方向に交差する方向に延び、前記第1材および前記第2材に交差しながら前記外周材に架け渡された補強材と、を備え
前記補強材の軸剛性は、前記第1材の軸剛性および前記第2材の軸剛性よりも高い屋根。
【請求項2】
前記補強材は、前記平面視において、前記外周材に内接する多角形状に形成されている請求項1に記載の屋根。
【請求項3】
前記補強材は、前記平面視において、前記第1方向に凸となる2つの第1角部と、前記第2方向に凸となる2つの第2角部と、を備える矩形状を形成している請求項に記載の屋根。
【請求項4】
前記第2角部では、その第2角部を形成する2つの辺部が前記第1方向に離間している請求項に記載の屋根。
【請求項5】
前記外周材は、前記平面視において複数の辺部および複数の角部を有する多角形状に形成され、
前記補強材は、1つの前記角部を挟んで互いに隣り合う2つの前記辺部間に架け渡されている請求項1からのいずれか1項に記載の屋根。
【請求項6】
前記外周材は、前記平面視において矩形状に形成され、
前記複数の辺部は、前記第1方向に延びる2つの第1辺部と、前記第2方向に延びる2つの第2辺部と、を備え、
前記補強材は、1つの前記角部を挟んで互いに隣り合う前記第1辺部および前記第2辺部間に架け渡されている請求項に記載の屋根。
【請求項7】
1つの前記角部を挟んで互いに隣り合う2つの前記辺部の全ての組について、前記補強材が設けられている請求項またはに記載の屋根。
【請求項8】
前記第1材、前記第2材および前記補強材は、上方に凸となる円弧状に形成されている請求項1からのいずれか1項に記載の屋根。
【請求項9】
前記補強材は、前記平面視において直線状に延びている請求項1からのいずれか1項に記載の屋根。
【請求項10】
前記補強材は、上側に向けて凸となる円弧状に形成されるとともに前記外周材において異なる2点間に連続して架け渡された剛体を備えている請求項1からのいずれか1項に記載の屋根。
【請求項11】
前記外周材、前記第1材、前記第2材および前記補強材を備える複数の上弦材と、
前記外周材、前記第1材、前記第2材および前記補強材を備える複数の下弦と、
前記複数の上弦材と前記複数の下弦材とを連結する斜材と、を備えている請求項1から10のいずれか1項に記載の屋根。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の屋根と、
前記屋根を支持する下部構造と、を備える構造物。
【請求項13】
前記屋根と前記下部構造との間に配置されるローラー支承を更に備える請求項12に記載の構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根および構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1、2に記載に記載されたような、トラスによって形成された屋根が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−170308号公報
【特許文献2】特開平9−111943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の屋根では、屋根のライズを設けつつ、屋根を支持する下部構造に対する負担を軽減することに改善の余地がある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、屋根のライズを設けつつ下部構造に対する負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る屋根は、トラス構造によって形成される屋根であって、平面視において環状に形成された外周材と、前記平面視において第1方向に延び、前記外周材に架け渡された第1材と、前記平面視において前記第1方向に交差する第2方向に延び、前記第1材に交差しながら前記外周材に架け渡された第2材と、前記平面視において前記第1方向および前記第2方向に交差する方向に延び、前記第1材および前記第2材に交差しながら前記外周材に架け渡された補強材と、を備え、前記補強材の軸剛性は、前記第1材の軸剛性および前記第2材の軸剛性よりも高い
【0007】
例えば、意匠要件(屋根下の室内空間の有効高さ等)や法規条件(水勾配など)を満たすことを目的として屋根にライズが設けられていると、第1材および第2材それぞれに、ライズに対応するスラスト力が生じる。このスラスト力を、屋根を支持する下部構造が負担する場合、第1材および第2材それぞれを下部構造に例えばピン接合し、第1材および第2材それぞれのアーチ効果を利用して下部構造にスラスト力を負担させる。
例えば、外周材における第1方向の距離や第2方向の距離が大きい場合(いわゆる大スパン構造の場合)、前述したスラスト力が大きくなる。この場合、そのスラスト力を下部構造に負担させると、下部構造の強度を高める必要が生じる。その結果、例えば、下部構造における柱の柱せいが大きくなり、屋根下の室内空間が狭くなる(意匠計画上、柱サイズが制限される場合、その制限を守れない)等の問題が生じる。
そのため、第1材および第2材に生じるスラスト力の下部構造への負担を軽減する構造が望まれている。例えば、屋根と柱との間の支持部分を一部ローラー構造とすることにより、下部構造に伝達されるスラスト力を軽減することも行われる。
この屋根では、補強材が、平面視において第1方向および第2方向に交差する方向に延び、かつ、第1材および第2材に交差しながら外周材に架け渡されている。したがって、第1材および第2材に生じるスラスト力を補強材に伝達し、これらのスラスト力の少なくとも一部を補強材に負担させることができる。言い換えると、曲げモーメントを軸力に変換し、この軸力を、屋根内(自己)で釣り合わせることができる。これにより、例えば、下部構造が負担する第1材および第2材それぞれのスラスト力及び水平変位を抑え、下部構造の設計の自由度を高めること等ができる。さらに例えば、補強材によるアーチ効果を期待することが可能になり、外周材、第1材、第2材に適用する部材についての過度な強度を不要として屋根の低コスト化を実現すること等ができる。
【0009】
補強材の軸剛性が、第1材の軸剛性および第2材の軸剛性よりも高いことにより、補強材に軸力が作用したときに、補強材が変形するのをより効果的に抑制することができる。これにより、補強材が負担することができるスラスト力の大きさを効果的に高めることができ、屋根の水平変位をより効果的に抑えることができる。
【0010】
前記補強材は、前記平面視において、前記外周材に内接する多角形状に形成されていてもよい。
【0011】
補強材が、平面視において、外周材に内接する多角形状に形成されている。したがって、補強材全体で負担することができるスラスト力の大きさを効果的に高めることができる。
【0012】
前記補強材は、前記平面視において、前記第1方向に凸となる2つの第1角部と、前記第2方向に凸となる2つの第2角部と、を備える矩形状を形成していてもよい。
【0013】
補強材が、平面視において前述の矩形状を形成している。したがって、補強材全体で負担することができるスラスト力の大きさを一層効果的に高めることができる。
【0014】
前記第2角部では、その第2角部を形成する2つの辺部が前記第1方向に離間していてもよい。
【0015】
第2角部において、その第2角部を形成する2つの辺部が第1方向に離間している。したがって、補強材のデザインの自由度を高めることができる。
【0016】
前記外周材は、前記平面視において複数の辺部および複数の角部を有する多角形状に形成され、前記補強材は、1つの前記角部を挟んで互いに隣り合う2つの前記辺部間に架け渡されていてもよい。
【0017】
補強材が、1つの角部を挟んで互いに隣り合う2つの辺部間に架け渡されている。したがって、補強材全体で負担することができるスラスト力の大きさを効果的に高めることができる。
【0018】
前記外周材は、前記平面視において矩形状に形成され、前記複数の辺部は、前記第1方向に延びる2つの第1辺部と、前記第2方向に延びる2つの第2辺部と、を備え、前記補強材は、1つの前記角部を挟んで互いに隣り合う前記第1辺部および前記第2辺部間に架け渡されていてもよい。
【0019】
補強材が、1つの角部を挟んで互いに隣り合う第1辺部および第2辺部間に架け渡されている。したがって、補強材全体で負担することができるスラスト力の大きさを一層効果的に高めることができる。
【0020】
1つの前記角部を挟んで互いに隣り合う2つの前記辺部の全ての組について、前記補強材が設けられていてもよい。
【0021】
1つの角部を挟んで互いに隣り合う2つの辺部の全ての組について、前記補強材が設けられている。したがって、補強材全体で負担することができるスラスト力の大きさを一層効果的に高めることができる。
【0022】
前記第1材、前記第2材および前記補強材は、上方に凸となる円弧状に形成されていてもよい。
【0023】
第1材、第2材および補強材が、上方に凸となる円弧状に形成され、屋根にライズが設けられている。したがって、第1材および第2材に前述したスラスト力が発生する。よって、補強材による作用効果を顕著に奏功させることができる。
【0024】
前記補強材は、前記平面視において直線状に延びていることが好ましい。
【0025】
補強材が、平面視において直線状に延びている場合、三次元の曲げではなく二次元の単純曲げで補強材の加工が可能なため、加工が簡単で製作コストを大幅に下げることが可能である。
【0026】
前記補強材は、上側に向けて凸となる円弧状に形成されるとともに前記外周材において異なる2点間に連続して架け渡された剛体を備えていてもよい。なお、剛体が外周材において異なる2点間に連続して架け渡されていることは、1本の連続する剛体が外周材において異なる2点間に架け渡されていることを意味する。1本の連続する剛体には、複数本の剛体が溶接を介して一体化された構成も含まれる。例えば、1本の連続する剛体として、1本が連続して押出成形された形鋼を採用することも可能であり、別個に押出成形された複数本の形鋼を、溶接を介して一体に接合した形鋼を採用することも可能である。
【0027】
補強材が連続して架け渡された剛体であることにより、補強材の曲げ加工の工程を少なくすることが可能となり、製作コストを削減できる。
【0028】
前記外周材、前記第1材、前記第2材および前記補強材を備える複数の上弦材と、前記外周材、前記第1材、前記第2材および前記補強材を備える複数の下弦と、前記複数の上弦材と前記複数の下弦材とを連結する斜材と、を備えていてもよい。
【0029】
複数の上弦材および複数の下弦がそれぞれ、外周材、第1材、第2材および補強材をそれぞれ備えている。したがって、上弦材の補強材が圧縮力を負担し、下弦材の補強材が引張力を負担することで、第1材および第2材に生じるスラスト力を補強材に負担させることができる。
斜材が、複数の上弦材と複数の下弦材とを連結している。したがって、複数の上弦材と複数の下弦材との間の距離であるデプスを大きくすることで、例えば、曲げモーメントを軸力に変換して受け止め易くすること等ができる。
【0030】
本発明に係る構造物は、前記屋根と、前記屋根を支持する下部構造と、を備える。
【0031】
屋根が、前述した構成を採用しているので、例えば、下部構造の設計の自由度を高めるとともに、低コスト化を実現すること等ができる。
【0032】
前記屋根と前記下部構造との間に配置されるローラー支承を更に備えてもよい。
【0033】
ローラー支承が、屋根と下部構造との間に配置される。したがって、基本的に下部構造が屋根のスラスト力を負担することがない。そのため前述したような、下部構造が負担する第1材および第2材それぞれのスラスト力を抑えることができるという作用効果が顕著に奏功される。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、屋根のライズを設けつつ下部構造に対する負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の一実施形態に係る構造物を構成する屋根の斜視図である。
図2図1に示す屋根の要部の拡大斜視図である。
図3図1に示す屋根を構成する補強材の側面である。
図4図1に示す補強材の要部の拡大斜視図である。
図5】本発明の第1変形例に係る構造物を構成する屋根の平面図である。
図6】本発明の第2変形例に係る構造物を構成する屋根の平面図である。
図7】本発明の第3変形例に係る構造物を構成する屋根の平面図である。
図8】本発明の第4変形例に係る構造物を構成する屋根の平面図である。
図9】本発明の第5変形例に係る構造物を構成する屋根の平面図である。
図10】本発明の第6変形例に係る構造物を構成する屋根の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図1から図4を参照し、本発明の一実施形態に係る構造物10(建物)を説明する。
図1から図4に示すように、構造物10は、屋根11と、屋根11を支持する下部構造12と、屋根11と下部構造12との間に配置されるローラー支承13と、を備えている。
屋根11は、鉛直方向Zから見た平面視において矩形状に形成されている。以下では、前記矩形状の長手方向を桁行方向X(第1方向)といい、短手方向を張間方向Y(第2方向)という。
【0037】
屋根11は、トラス構造により形成されている。本実施形態では、屋根11は、立体トラス構造により形成されている。図示の例では、屋根11は、複数の上弦材21と、複数の下弦材31と、複数の斜材41と、を有するダブルレイヤー構造(マルチレイヤー構造)である。以下では、複数の上弦材21の集合体を上弦体20といい、複数の下弦材31の集合体を下弦体30という。
【0038】
上弦体20および下弦体30は、それぞれ面状に形成されている。言い換えると、複数の上弦材21および複数の下弦材31(複数の弦材)は、それぞれ同一面上に配置されている。複数の上弦材21および複数の下弦材31は、それぞれ上側に向けて凸となる同一の球面上に配置されている。言い換えると、屋根11には、ライズが設けられている。ライズは、例えば、意匠や法規条件により内部の有効高さや水勾配などを満足するために設けられている。
【0039】
上弦体20は、複数の上弦材21として、外周材51と、第1材52と、第2材53と、補強材54と、を備えている。外周材51は、直線状に形成されている。第1材52、第2材53および補強材54は、上方に凸となる円弧状に形成されている。
外周材51は、平面視において環状に形成されている。外周材51は、平面視において複数の辺部55および複数の角部56を有する多角形状に形成されている。図示の例では、外周材51は、平面視において矩形状に形成されている。複数の辺部55は、桁行方向Xに延びる2つの第1辺部55aと、張間方向Yに延びる2つの第2辺部55bと、を備えている。
【0040】
第1材52は、平面視において桁行方向Xに延びている。第1材52は、平面視において第1辺部55aと平行である。第1材52は、外周材51に架け渡されている。第1材52は、張間方向Yに間隔をあけて複数配置されている。
第2材53は、平面視において張間方向Yに延びている。第2材53は、平面視において第2辺部55bと平行である。第2材53は、第1材52に交差しながら外周材51に架け渡されている。第2材53は、桁行方向Xに間隔をあけて複数配置されている。
【0041】
図1に示すように、補強材54は、平面視において桁行方向Xおよび張間方向Yに交差する方向に延びている。補強材54は、第1材52および第2材53に交差しながら外周材51に架け渡されている。補強材54は、第1材52および第1辺部55aを桁行方向Xに分断している。補強材54は、第2材53および第2辺部55bを張間方向Yに分断している。補強材54は、外周材51において、1つの角部56を挟んで互いに隣り合う2つの辺部55間(第1辺部55aおよび第2辺部55b間)に架け渡されている。
【0042】
本実施形態では、1つの角部56を挟んで互いに隣り合う2つの辺部55の全ての組について、補強材54が設けられている。その結果、補強材54(テンションリング)は、平面視において、外周材51に内接する多角形状に形成されている。補強材54は、平面視において、桁行方向Xに凸となる2つの第1角部57と、張間方向Yに凸となる2つの第2角部58と、を備えている。第2角部58では、その第2角部58を形成する2つの辺部59が桁行方向Xに離間している。このように、第2角部58では、辺部59同士が実際に交わっていなくてもよく、実質的に第2角部58を形成していればよい。構造物10(建物)の規模や屋根11の部材構成や辺部59間の部材の構成によって、辺部59同士の間隔を調整することが可能である。
【0043】
図2に示すように、補強材54は、主剛体60(剛体)と、副剛体61(剛体)と、を備えている。主剛体60および副剛体61は、上側に向けて凸となる円弧状に形成されている。
主剛体60は、外周材51において異なる2点間に連続して架け渡されている。主剛体60は、各辺部59に複数(図示の例では3つ)、間隔をあけて設けられている。なお、主剛体60が外周材51において異なる2点間に連続して架け渡されていることは、1本の連続する主剛体60が外周材51において異なる2点間に架け渡されていることを意味する。1本の連続する主剛体60には、複数本の剛体が溶接を介して一体化された構成も含まれる。例えば、1本の連続する主剛体60として、1本が連続して押出成形された形鋼を採用することも可能であり、別個に押出成形された複数本の形鋼を、溶接を介して一体に接合した形鋼を採用することも可能である。
【0044】
副剛体61は、隣り合う主剛体60同士を連結する。副剛体61は、第1剛体62と、第2剛体63と、を備えている。第1剛体62は、桁行方向Xに延びている。第1剛体62は、補強材54が分断する第1材52間および第1辺部55a間それぞれに架け渡されている。第2剛体63は、張間方向Yに延びている。第2剛体63は、補強材54が分断する第2材53間および第2辺部55b間それぞれに架け渡されている。
【0045】
図4に示すように、外周材51、第1材52および第2材53はそれぞれ、複数のトラス部材と、隣り合うトラス部材を連結するジョイント部材と、を備えている。トラス部材は、例えば鋼管(例えばφ88.9〜φ267)によって形成されている。ジョイント部材は、例えば球状に形成されている。外周材51や第1材52、第2材53は、それぞれジョイント部材において交差する。
【0046】
補強材54は、例えば形鋼(例えばH形鋼、H350広幅)により形成されている。補強材54は、例えば、複数の形鋼が溶接されることで形成される。補強材54の軸剛性は、外周材51、第1材52および第2材53の軸剛性よりも高い。補強材54の圧縮強度(形鋼の圧縮強度)は、外周材51、第1材52および第2材53の圧縮強度(鋼管の圧縮強度)よりも高い。補強材54の引張強度(形鋼の引張強度)は、外周材51、第1材52および第2材53の引張強度(鋼管の引張強度)よりも高い。
なお、外周材51や第1材52、第2材53は、補強材54に対して、例えば、溶接や高力ボルトなどにより剛接合されている。なお接合の形態は、剛接合に限られず、半剛接合やピン接合であってもよい。
【0047】
図1から図4に示すように、下弦体30は、上弦体20と同様に、複数の上弦材21として、外周材51と、第1材52と、第2材53と、補強材54と、を備えている。
図1および図2に示すように、下弦体30の第1材52は、上弦体20の第1材52よりも1つ多く、上弦体20の第1材52に対して半スパン、張間方向Yにずらされている。下弦体30の第2材53は、上弦体20の第2材53よりも1つ多く、上弦体20の第2材53に対して半スパン、桁行方向Xにずらされている。
【0048】
下弦体30の外周材51は、上弦体20の外周材51よりも桁行方向Xおよび張間方向Yに大きい。下弦体30の外周材51は、上弦体20の外周材51よりも桁行方向Xに第2材53の1スパン分大きい。下弦体30の外周材51は、上弦体20の外周材51よりも張間方向Yに第1材52の1スパン分大きい。
下弦体30の主剛体60は、上弦体20の主剛体60と上下方向に重なっている。下弦材31の主剛体60は、上弦体20の主剛体60の真下に配置されている。
【0049】
図2から図4に示すように、斜材41は、第1斜材42と、第2斜材43と、を備えている。
第1斜材42は、下弦体30の外周材51、第1材52および第2材53と、上弦体20の外周材51、第1材52および第2材53と、をそれぞれ連結する。斜材41の少なくとも1つ端部は、下弦体30の外周材51、第1材52および第2材53と、上弦体20の外周材51、第1材52および第2材53と、のいずれかのジョイント部に連結されている。下弦体30の外周材51、第1材52および第2材53と、上弦体20の外周材51、第1材52および第2材53と、第1斜材42と、は立体トラスを構成している。
【0050】
第2斜材43は、上下の主剛体60同士を接続する。第2斜材43は、上弦体20の主剛体60の真下で、かつ下弦体30の主剛体60の真上に位置している。上弦体20の主剛体60と、下弦体30の主剛体60と、これらの両主剛体60を連結する第2斜材43とは、平面トラスを形成している。
【0051】
図1から図3に示すように、屋根11は、二次部材71を更に備えている。二次部材71は、屋根11の周囲に設けられた外壁を受ける(支える)ための部材である。言い換えると、二次部材71は、屋根11の構造部材ではない。二次部材71は、屋根11の外周に環状に形成されている。二次部材71は、トラス構造である。二次部材71は、例えば、形鋼により形成されている。
図3に示すように、下部構造12は、複数の柱12aを備えている。ローラー支承13は、柱12aと下弦体30の外周材51との間に配置されている。
【0052】
ところで、例えば、意匠要件(屋根11下の室内空間の有効高さ等)や法規条件(水勾配など)を満たすことを目的として屋根11にライズが設けられていると、第1材52および第2材53それぞれに、ライズに対応するスラスト力が生じる。このスラスト力を、屋根11を支持する下部構造12が負担する場合、第1材52および第2材53それぞれを下部構造12に例えばピン接合し、第1材52および第2材53それぞれのアーチ効果を利用して下部構造12にスラスト力を負担させる。
例えば、外周材51における桁行方向Xの距離や張間方向Yの距離が大きい場合(いわゆる大スパン構造の場合)、前述したスラスト力が大きくなる。この場合、そのスラスト力を下部構造12に負担させると、下部構造12の強度を高める必要が生じる。その結果、例えば、下部構造12における柱12aの柱せいが大きくなり、屋根11下の室内空間が狭くなる(意匠計画上、柱12aサイズが制限される場合、その制限を守れない)等の問題が生じる。
そのため、第1材52および第2材53に生じるスラスト力の下部構造12への負担を軽減する構造が望まれている。
【0053】
本実施形態に係る屋根11および構造物10によれば、補強材54が、平面視において桁行方向Xおよび張間方向Yに交差する方向に延び、かつ、第1材52および第2材53に交差しながら外周材51に架け渡されている。したがって、第1材52および第2材53に生じるスラスト力を補強材54に伝達し、これらのスラスト力の少なくとも一部を補強材54に負担させることができる。言い換えると、曲げモーメントを軸力に変換し、この軸力を、屋根11内(自己)で釣り合わせることができる。これにより、例えば、下部構造12が負担する第1材52および第2材53それぞれのスラスト力及び水平変位を抑え、下部構造12の設計の自由度を高めること等ができる。さらに例えば、補強材54によるアーチ効果を期待することが可能になり、外周材51、第1材52、第2材53に適用するトラス部材についての過度な強度を不要として屋根11の低コスト化を実現すること等ができる。
【0054】
補強材54が、平面視において、外周材51に内接する多角形状に形成されている。したがって、補強材54全体で負担することができるスラスト力の大きさを効果的に高めることができる。
補強材54が、平面視において前述の矩形状を形成している。したがって、補強材54全体で負担することができるスラスト力の大きさを一層効果的に高めることができる。
第2角部58において、その第2角部58を形成する2つの辺部55が桁行方向Xに離間している。したがって、補強材54のデザインの自由度を高めることができる。
【0055】
補強材54が、1つの角部56を挟んで互いに隣り合う2つの辺部55間に架け渡されている。したがって、補強材54全体で負担することができるスラスト力の大きさを効果的に高めることができる。
補強材54が、1つの角部56を挟んで互いに隣り合う第1辺部55aおよび第2辺部55b間に架け渡されている。したがって、補強材54全体で負担することができるスラスト力の大きさを一層効果的に高めることができる。
1つの角部56を挟んで互いに隣り合う2つの辺部55の全ての組について、前記補強材54が設けられている。したがって、補強材54全体で負担することができるスラスト力の大きさを一層効果的に高めることができる。
【0056】
第1材52、第2材53および補強材54が、上方に凸となる円弧状に形成され、屋根11にライズが設けられている。したがって、第1材52および第2材53に前述したスラスト力が発生する。よって、補強材54による作用効果を顕著に奏功させることができる。
補強材54の軸剛性が、第1材52の軸剛性および第2材53の軸剛性よりも高い。よって、補強材54に軸力が作用したときに、補強材54が変形するのをより効果的に抑制することができる。これにより、補強材54が負担することができるスラスト力の大きさを効果的に高めることができ、屋根11の水平変位をより効果的に抑えることができる。
【0057】
補強材54が、平面視において直線状に延びている。したがって、三次元の曲げではなく二次元の単純曲げで補強材54の加工が可能なため、加工が簡単で製作コストを大幅に下げることが可能である。
補強材54が連続して架け渡された主剛体60であることにより、補強材54の曲げ加工の工程を少なくすることが可能となり、製作コストを削減できる。
【0058】
複数の上弦材21および複数の下弦体30がそれぞれ、外周材51、第1材52、第2材53および補強材54をそれぞれ備えている。したがって、上弦材21の補強材54が圧縮力を負担し、下弦材31の補強材54が引張力を負担することで、第1材52および第2材53に生じるスラスト力を補強材54に負担させることができる。
斜材41が、複数の上弦材21と複数の下弦材31とを連結している。したがって、複数の上弦材21と複数の下弦材31との間の距離であるデプスを大きくすることで、例えば、曲げモーメントを軸力に変換して受け止め易くすること等ができる。
【0059】
ローラー支承13が、屋根11と下部構造12との間に配置される。したがって、基本的に下部構造12が屋根11のスラスト力を負担することがない。そのため前述したような、下部構造12が負担する第1材52および第2材53それぞれのスラスト力を抑えることができるという作用効果が顕著に奏功される。
【0060】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0061】
屋根11の上弦体20および下弦体30は、前記実施形態に示す構成に限られない。
例えば、補強材54の各辺部55が、主剛体60を複数備えておらず、1つの主剛体60のみを備えていてもよい。
補強材54の第2角部58では、その第2角部58を形成する2つの辺部59が桁行方向Xに離間しているが、前記2つの辺部59が桁行方向Xに離間していなくてもよい。
【0062】
図5に示す第1変形例に係る屋根11Aのように、外周材51が長方形状でなくて正方形状であってもよい。
図6から図9に示す第2変形例から第5変形例に係る各屋根11B、11C、11D、11Eのように、平面視において外周材51が六角形状や八角形状、真円形状や楕円形状であってもよい。
図10に示す第6変形例に係る屋根11Fのように、平面視において、補強材54が三角形状に形成されていてもよい。
【0063】
屋根11は、トリプルレイヤー構造などであってもよく、シングルレイヤー構造であってもよい。
【0064】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10 構造物
11 屋根
12 下部構造
13 ローラー支承
21 上弦材
31 下弦材
41 斜材
51 外周材
52 第1材
53 第2材
54 補強材
55a 第1辺部
55b 第2辺部
57 第1角部
58 第2角部
60 剛体
X 桁行方向(第1方向)
Y 張間方向(第2方向)
【要約】
【課題】屋根のライズを設けつつ下部構造に対する負担を軽減する。
【解決手段】屋根11は、トラス構造によって形成される屋根11であって、平面視において環状に形成された外周材51と、平面視において第1方向Xに延び、外周材51に架け渡された第1材52と、平面視において第1方向Xに交差する第2方向Yに延び、第1材52に交差しながら外周材51に架け渡された第2材53と、平面視において第1方向Xおよび第2方向Yに交差する方向に延び、第1材52および第2材53に交差しながら外周材51に架け渡された補強材54と、を備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
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図5
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図9
図10