(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0010】
〔メタリック樹脂組成物〕
本実施形態のメタリック樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、樹脂付着アルミニウム顔料とを含有し、
前記樹脂付着アルミニウム顔料は、
ラジカル重合性二重結合を有するカルボン酸、ラジカル重合性二重結合を有するリン酸モノエステル若しくはジエステル、ラジカル重合性二重結合を有するホスホン酸モノエステル若しくはジエステル、及びラジカル重合性二重結合を有するカップリング剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物に由来する単位(A)と、
ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体に由来する単位(B)と、
を含む重合体から構成される樹脂がアルミニウム顔料に付着したものである。
【0011】
〔熱可塑性樹脂〕
本実施形態に用いる熱可塑性樹脂としては、熱可塑性を有する重合体を含むものであれば、特に限定されない。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン−アクリレート樹脂(ASA樹脂)、アクリロニトリル−エチレン−プロピレン−ジエン−スチレン樹脂(AES樹脂)等のゴム強化樹脂;ポリスチレン(PS樹脂)、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン−無水マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体等のスチレン系(共)重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂;環状ポリオレフィン樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル重合体、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等の(メタ)アクリル酸エステルを1種以上用いた(共)重合体等の(メタ)アクリル系樹脂;ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンサルファイド;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂;液晶ポリマー;ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のイミド系樹脂;ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等のケトン系樹脂;ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のスルホン系樹脂;ウレタン系樹脂;ポリ酢酸ビニル;ポリエチレンオキシド;ポリビニルアルコール;ポリビニルエーテル;ポリビニルブチラール;フェノキシ樹脂;感光性樹脂;生分解性プラスチック等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0012】
〔樹脂付着アルミニウム顔料〕
次に、本実施形態に用いる樹脂付着アルミニウム顔料について説明する。本実施形態の樹脂付着アルミニウム顔料は、ラジカル重合性二重結合を有するカルボン酸、ラジカル重合性二重結合を有するリン酸モノエステル若しくはジエステル、ラジカル重合性二重結合を有するホスホン酸モノ若しくはジエステル、及びラジカル重合性二重結合を有するカップリング剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物に由来する単位(A)と、ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体に由来する単位(B)と、を含む重合体から構成される樹脂がアルミニウム顔料に付着したものである。
【0013】
(アルミニウム顔料)
本実施形態に用いるアルミニウム顔料としては、特に限定されないが、表面光沢性、白度、光輝性等のメタリック用顔料に要求される性質を発揮しうる形状、平均粒径、平均厚み、平均アスペクト比、及び表面性状を有するものが好ましい。このようなアルミニウム顔料の形状としては、鱗片状のものが好ましい。また、アルミニウム顔料の平均粒径(d50)は、2〜40μmの範囲であることが好ましく、3〜30μmの範囲であることがより好ましい。さらに、アルミニウム顔料の平均厚み(t)は0.01〜10μmの範囲であることが好ましく、0.05〜2μmの範囲であることがより好ましい。またさらに、アルミニウム顔料の平均アスペクト比は1〜2500の範囲であることが好ましく、10〜300の範囲であることがより好ましい。ここで、「平均アスペクト比」とは、アルミニウム顔料の平均粒径(d50)を平均厚み(t)で割った値をいう。また、アルミニウム顔料の表面性状としては、平滑が好ましい。
【0014】
なお、上記平均粒径(d50)は、レーザーミクロンサイザーLMS−24により測定できる。測定溶剤としては、ミネラルスピリットを使用できる。測定は機器取扱説明書に従い実施するが、留意事項として、試料となるアルミニウム顔料は、前処理として2分間の超音波分散を行った後、分散槽の中に投入し適正濃度になったのを確認後、測定を開始する。測定終了後、d50は自動表示される。
【0015】
また、上記平均厚み(t)は以下のようにして測定した。まず、アルミニウム顔料1gに、5%ステアリン酸のミネラルスピリット溶液を1〜2ml加えて予備分散した後、石油ベンジン50mlを加えて混合し、40〜45℃で2時間加温後、フィルターで吸引濾過し、パウダー化したもので、水面拡散面積(WCA)を測定する。この測定値から、下記の式に従って平均厚み:tを算出する。
t(μm)=0.4/WCA(m
2/g)
【0016】
さらに、上記平均アスペクト比は、下記式により求められる。
平均アスペクト比=平均粒径(d50)(μm)/平均厚みt(μm)
【0017】
アルミニウム顔料として、より好ましくはメタリック用顔料として使用しうるアルミニウムフレークである。また、平均粒径(d50)が3〜30μm、平均厚み(t)が5〜50nmのいわゆるアルミニウム蒸着箔も使用可能である。
【0018】
アルミニウム顔料としては、ペースト状態で市販されているものを用いてもよいし、予め有機溶剤等で表面に付着している脂肪酸等を除去したものを用いてもよい。
【0019】
(樹脂)
上記樹脂はラジカル重合性二重結合を有するカルボン酸、ラジカル重合性二重結合を有するリン酸モノエステル若しくはジエステル、ラジカル重合性二重結合を有するホスホン酸モノ若しくはジエステル、及びラジカル重合性二重結合を有するカップリング剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物(以下、「単位(A)を構成する化合物」ともいう。)と、ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体(以下、「単位(B)を構成する単量体」ともいう。)とを、重合開始剤を用いて重合した重合体から構成されるものである。
【0020】
(単位(A)を構成する化合物)
本実施形態で用いられるラジカル重合性二重結合を有するカルボン酸としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられる。これらカルボン酸は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。上記カルボン酸の使用量は、アルミニウム顔料の種類と特性、特にその表面積によって異なるが、一般にはアルミニウム顔料に対して0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5.0質量部がより好ましい。使用量が上記範囲内であることにより、アルミニウム顔料に樹脂が付着しやすい傾向にある。
【0021】
本実施形態で用いられるラジカル重合性二重結合を有するリン酸モノエステル若しくはジエステルとしては、特に限定されないが、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジ−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、トリ−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジ−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、トリ−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジブチル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、2−メタクリロイルオキシプロピルホスフェート等が挙げられる。これら化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0022】
また、本実施形態で用いられるラジカル重合性二重結合を有するホスホン酸モノ若しくはジエステルとしては、特に限定されないが、例えば、ビス(2−クロロエチル)ビニルホスホネート、ジアリルジブチルホスホノサクシネート等が挙げられる。これら化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0023】
ラジカル重合性二重結合を有するリン酸モノエステル若しくはジエステル又はホスホン酸モノエステル若しくはジエステルのうち、リン酸モノエステルが好ましい。リン酸モノエステルは2個のOH基を有するリン酸基を有する。そのため、リン酸モノエステルを構成単位として含む樹脂は、より強固にアルミニウム粒子表面に固定されると推定される。より好ましいリン酸モノエステルとしては、特に限定されないが、例えば、メタクリロイルオキシ基及びアクロイルオキシ基を有したモノエステルが挙げられ、具体的には、2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、2−アクロイルオキシエチルホスフェートが挙げられる。
【0024】
ラジカル重合性二重結合を有するリン酸モノエステル若しくはジエステル又はホスホン酸モノエステル若しくはジエステルの使用量は、アルミニウム顔料の種類と特性、特にその表面積によって異なるが、一般にはアルミニウム顔料100質量部に対して0.01〜30質量部が好ましく、より好ましくは0.1〜20質量部である。
【0025】
本実施形態で用いられるラジカル重合性二重結合を有するカップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。
【0026】
上記シランカップリング剤の例としては、特に限定されないが、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。
【0027】
上記チタネート系カップリング剤の例としては、特に限定されないが、例えば、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート等が挙げられる。
【0028】
上記アルミニウム系カップリング剤の例としては、特に限定されないが、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、ジルコアルミネート等が挙げられる。
【0029】
上記ラジカル重合性二重結合を有するカップリング剤の使用量は、アルミニウム顔料の種類と特性、特に表面積によって異なるが、一般にはアルミニウム顔料100質量部に対して0.01〜20質量部が好ましく、より好ましくは、0.1〜10質量部である。使用量が上記範囲であることにより、アルミニウム顔料に対して樹脂の付着性が向上する傾向にある。
【0030】
一般に、アルミニウム顔料に樹脂を付着させる際には、アルミニウム顔料と水との反応を防ぐために、不活性溶媒中で処理することが好ましい。
【0031】
(単位(B)を構成する単量体)
本実施形態で用いるラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体としては、単位(A)以外の化合物であれば特に限定されないが、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレートネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジ−ペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げることができる。なお、これらの化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0032】
本実施形態におけるラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体の使用量は、アルミニウム顔料の100質量部に対して0.1〜50質量部が好ましく、より好ましくは0.5質量部〜40質量部である。0.1質量部以上であることにより、本実施形態のメタリック樹脂組成物を用いた成形品の衝撃強度保持性がより向上する傾向にある。また50質量部以下であることにより、光輝性等のアルミニウム顔料としての特性がより向上する傾向にある。
【0033】
(その他の単量体)
また、必要に応じて1分子中にラジカル重合性二重結合を1個有する単量体を使用してもよい。1分子中に重合性二重結合を1個有する単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、アクリル酸メチル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルを挙げることができる。上記化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0034】
〔樹脂付着アルミニウム顔料の製造方法〕
本実施形態の樹脂付着アルミニウム顔料は、先ず未処理のアルミニウム顔料を有機溶剤中に分散後、加温し、攪拌しながら単位(A)を構成する化合物を添加し、アルミニウム顔料の表面を処理する。次に単位(B)を構成する単量体と重合開始剤とを一括添加するか、又は、連続的に追加添加し、単位(B)を構成する単量体を重合させて、アルミニウム顔料表面に付着層を形成させることで得られうる。以下、より詳細に説明する。
【0035】
先ず未処理のアルミニウム顔料を有機溶剤に分散後、加温し、攪拌しながら単位(A)を構成する化合物を添加して行う処理は、特に限定されないが有機溶剤中のアルミニウム顔料の重量濃度は1〜30%で行うことが好ましい。重量濃度が1%以上であることにより、後工程において取り扱いの溶剤量を取り除く操作がより容易となる傾向にある。また、重量濃度が30%以下であることにより、アルミニウム顔料の分散がより均一となりやすい傾向にある。なお、この処理は40℃〜150℃の温度で、5分〜10時間程度おこなうことが好ましい。処理温度が40℃以上であることにより、次工程の単位(B)を構成する単量体の重合温度まで昇温するのに要する時間が短くなる傾向にある。また、処理温度が150℃以下であることにより、有機溶剤の蒸気の発火等のおそれがより少ない傾向にある。また、処理時間が5分以上であることにより、単位(A)を構成する化合物が拡散しやすい傾向にある。また、処理時間が10時間以下であることにより、より短時間で操作を終えることができる傾向にある。
【0036】
次に、単位(B)を構成する単量体と重合開始剤とを一括添加するか、又は徐々に連続的に追加しながら添加し、単位(B)を構成する単量体を重合させてアルミニウム顔料表面に付着層を形成させる。重合温度は特に限定されないが60℃〜150℃が好ましく、窒素、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下が好ましい。上記条件とすることにより、重合効率がより高くなる傾向にある。
【0037】
上記重合の際に使用される有機溶剤は、特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類が挙げられる。
【0038】
本実施形態で用いられる重合開始剤は、一般にラジカル発生剤として知られるものであれば特に制限されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキサイド類;2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、単位(B)を構成する単量体100質量部に対して、0.1質量部〜50質量部程度である。
【0039】
本実施形態のメタリック樹脂組成物に含有される上記樹脂付着アルミニウム顔料の含有量は、熱可塑性樹脂を100質量部とした場合、0.05〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部であり、さらに好ましくは0.5〜5質量部である。含有量が0.05質量部以上であることにより、光輝性がより優れる傾向にある。一方、含有量が20質量部以下であることにより、成形物としての強度がより向上する傾向にある。
【0040】
〔その他の添加剤〕
本実施形態のメタリック樹脂組成物は、目的に応じて、添加剤を含有してもよい。このような添加剤としては、特に限定されないが、例えば、マイカ、着色顔料、蓄光顔料、着色染料、蛍光染料等の着色剤、充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、フォトクロミック剤、防汚剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、蛍光増白剤、光拡散剤、結晶核剤、流動改質剤、衝撃改質剤、顔料分散剤等が挙げられる。
【0041】
〔メタリック樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態のメタリック樹脂組成物は、樹脂付着アルミニウム顔料と熱可塑性樹脂とを、バンバリーミキサーや一軸、二軸のベント付押出機、ニーダー、ロール、フィーダールーダー等によって溶融混練し、均一な組成物として用いられる。なお、混練温度は、熱可塑性樹脂の種類により適宜選択すればよい。
【0042】
〔成形品〕
本実施形態の成形品は、上記メタリック樹脂組成物を含む。このような成形品は、光輝性を有する成形品、積層品、例えば、ノートパソコンや携帯電話などの電子機器の筐体に好適に用いることができる。
【0043】
〔成形品の製造方法〕
本実施形態の成形品の製造方法は、メタリック樹脂組成物を用いて、ヒートアンドクール製法により成形品を製造する工程を有する。
【0044】
〔ヒートアンドクール製法〕
ヒートアンドクール製法とは、予め金型表面を常温以上に加熱した金型内へ、溶融した樹脂組成物を射出した後、金型を冷却して成形品を取り出す製法をいう。例えば、金型加熱温度は、樹脂組成物の荷重たわみ温度以上に設定したり、射出成形時の熱可塑性樹脂の樹脂温度付近に設定したりするのが一般的である。荷重たわみ温度は、JIS K 7191−2(荷重1.82MPa)に準拠した方法で測定される。ヒートアンドクール製法に、樹脂が付着していないアルミニウム顔料を使用すると、金型表面にアルミニウム顔料が付着してしまい、成形品の表面平滑性が損なわれるという欠点がある。これに対して、本実施形態の樹脂付着アルミニウム顔料及びメタリック樹脂組成物は、ヒートアンドクール製法に使用しても、金型表面にアルミニウム顔料が付着することなく、表面平滑性の高い成形品が得られる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されない。なお、製造例、実施例及び比較例中で用いた各種物性の測定方法は以下の通りである。
【0046】
(1)光輝性:
実施例及び比較例で製造したメタリック樹脂組成物のペレットを用いて長さ50mm、幅40mm、厚さ3mmの試験片を成形し、下記評価基準にて目視判定した。
(評価基準)
◎:光輝性が非常に優れていた。
○:光輝性が優れていた。
△:光輝性が低かった。
×:光輝性がほとんどなかった。
【0047】
(2)成形性(ウエルドライン外観):
幅150mm、長さ200mm、厚さ3mmの箱型の成形品用金型の一側面に設けた2か所のゲートから、実施例及び比較例で製造したメタリック樹脂組成物のペレットを射出成形して得た成形品を用い、下記評価基準にて目視判定した。
(評価基準)
○:ウエルドラインが全く見えなかった。
△:ウエルドラインが少し見えた。
×:ウエルドラインが明確に見えた。
【0048】
(3)耐衝撃強度保持率:
実施例及び比較例で製造したメタリック樹脂組成物のペレット(顔料添加後)及び熱可塑性樹脂(顔料添加前)を用いて、Vノッチ試験片(長さ55mmの10mm角棒の中央に、深さ2mmの45度V字溝を入れたもの)をそれぞれ成形した。この試験片を用いてシャルピー衝撃試験(JIS K7111−1)を行った。耐衝撃強度の保持率は、下記式により求めた。耐衝撃強度保持率の値に応じて、下記評価基準にて評価した。
耐衝撃強度保持率(%)=(顔料添加後の衝撃強度/顔料添加前の衝撃強度)×100
(評価基準)
◎:耐衝撃強度保持率90%以上〜100%
○:耐衝撃強度保持率60%以上〜90%未満
△:耐衝撃強度保持率30%以上〜60%未満
×:耐衝撃強度保持率0%以上〜30%未満
【0049】
〔熱可塑性樹脂〕
a)ポリプロピレン:(株)プライムポリマー製 プライムポリプロJ106G
b)ポリメチルメタクリレート(PMMA):旭化成ケミカルズ(株)製 デルペット60N
c)ポリスチレン:PSジャパン(株)製 PSJ−ポリスチレンGPPS HF77
d)アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS):旭化成ケミカルズ(株)製 スタイラック321
e)ポリアミド:旭化成ケミカルズ(株)製 レオナ1300S
f)ポリアセタール:旭化成ケミカルズ(株)製 テナックC 4520
g)ポリカーボネート:帝人化成(株)製 パンライトL−1225L
h)ポリブチレンテレフタレート(PBT):東レ(株)製 トレコン1401−X06
【0050】
〔樹脂付着アルミニウム顔料〕
(製造例1)
容積1Lの四つ口フラスコに、アルミペースト(旭化成ケミカルズ(株)製GX−40A、金属分74%、平均粒径20μm)67.6g及びミネラルスピリット300gを加え、窒素ガスを導入しながら攪拌し、系内の温度を80℃に昇温した。次いで、アクリル酸0.375gを添加し80℃で30分攪拌を続けた。次にトリメチロールプロパントリメタクリレート3.5gとジートリメチロールプロパンテトラアクリレート1.5gと2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル1.0gをミネラルスピリット40gに溶解させ、その溶液を定量ポンプにより約0.26g/minの速度で3時間かけて添加し、その後系内の温度を80℃に保ちながら合計6時間重合した。この時点でサンプリングしたろ液中のトリメチロールプロパントリメタアクリレートの未反応量をガスクロマトグラフィで分析したところ、添加量の99.5%以上が反応していた。重合終了後、スラリーを濾過し、製造例1の樹脂付着アルミニウム顔料を得た。このペーストの不揮発分(JIS−K−5910による)は、65.0質量%であった。アルミニウム金属分100質量部に対する樹脂被覆量は8.3質量部であった。この結果から、アクリル酸、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルの98%以上がアルミニウム表面上に付着したものと推定される。
【0051】
(製造例2)
製造例1で、トリメチロールプロパントリメタクリレートの使用量を0.35g、ジートリメチロールプロパンテトラアクリレートの使用量を0.15gにしたこと以外は、製造例1と同様の操作により製造例2の樹脂付着アルミニウム顔料を製造した。
【0052】
(製造例3)
内径30cm、長さ35cmのボールミル内に、アトマイズドアルミニウム粉(平均粒径20μm)600g、ミネラルスピリット1.2kg、及び、ステアリン酸6gを充填し、直径4.8mmのスチールボール(比重7.8)18kgを用い、60rpmで5時間摩砕した。粉砕終了後、ミル内のスラリーをミネラルスピリットで洗い出し、400メッシュの振動篩にかけ、通過したスラリーをフィルタープレスで濾過、濃縮し、加熱残分87%のケーキを得た。得られたケーキを縦型ミキサー内に移し、所定量のソルベントナフサを加え、15分混合し、加熱残分75%の製造例3のアルミニウム顔料を得た。
【0053】
〔実施例
4〜6、参考例1〜6、比較例1〜2〕
熱可塑性樹脂と製造例1〜2で製造した樹脂付着アルミニウム顔料とを、表2に示す割合で混合し、ベント付き直径20mmの2軸押出機を用い、樹脂温度は200℃〜300℃、樹脂に応じて適宜調整した条件下で、溶融混合して押出すことで、メタリック樹脂組成物のペレットを得た。このペレットを、射出成形機を用いて成形し、光輝性と成形性、耐衝撃性を評価した。その結果を表1に示す。なお、比較例1においては製造例3で製造したアルミニウム顔料を用い、比較例2においては、アルミペースト(旭化成ケミカルズ(株)製GX−40A、金属分74%)をそのまま用いてメタリック樹脂組成物のペレットを得た。
【0054】
【表1】
【0055】
〔実施例10〕
ヒートアンドクール製法を行った。あらかじめ、熱可塑性樹脂としてアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)100質量部と、製造例1で製造した樹脂付着アルミニウム顔料2質量部とを、ベント付き直径20mmの2軸押出機を用い、樹脂温度220℃で溶融混合して押出すことで、メタリック樹脂組成物のペレットを得た。このペレットを射出成形機と、電気式ヒータと水冷ラインを備え、且つキャビティ表面が平滑な試験片金型(プレート型、キャビティ寸法150mm×200mm×3mm)を用いて成形した。射出成形時には、シリンダーの温度をヘッド付近で230℃、材料投入口付近で220℃に設定すると共に、電気式ヒータにより金型のキャビティ表面温度を220℃に設定した。
【0056】
金型温度が220℃に昇温した後に射出成形を行い、続いて電気式ヒータによる加熱を止め、金型を水冷して常温に冷えてから、金型から成形品を取り出した。得られた成形品の表面は平滑であった。
【0057】
〔比較例3〕
製造例1で製造した樹脂付着アルミニウム顔料の代わりに、樹脂付着していないアルミペースト(旭化成ケミカルズ(株)製GX−40A、金属分74%))を用いた以外は、実施例10と同様にして成形品を得た。この成形品の表面には、細かい凹凸がたくさんあり、平滑性が失われていた。