(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記付加要素が、抵抗器、非線形抵抗器、キャパシタ、およびキャパシタと抵抗器との直列接続要素からなる群より選択された1種または2種以上である請求項7記載の直流遮断装置。
前記第3の制御部が、前記第1の制御部による前記第1の開閉器の電極開制御の開始および前記第2の制御部による前記第2の開閉器の電極開制御の開始より後で、かつ、前記第2の開閉器の電極間距離が所定の距離になったと想定される開極時以降に、前記放電制御を行う請求項9記載の直流遮断装置。
前記第3の制御部が、前記機能素子を放電する制御を行った後で、かつ、前記第2の開閉器を流れる電流がゼロに至ったと想定される転流時以降に、前記オフ移行制御を行う請求項9記載の直流遮断装置。
前記第4の制御部が、前記第3の制御部による前記オフ移行制御がなされた後で、かつ、前記第1の開閉器の電極間距離が所定の距離になったと想定される開極時以降に、前記第2の半導体スイッチをオフに移行する前記制御を行う請求項9記載の直流遮断装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
以上を踏まえ、以下では実施形態の直流遮断装置を図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態1の直流遮断装置の構成を示している。
図1に示すように、この直流遮断装置は、通電路10、転流要素21、半導体スイッチ22、リアクトル23、非線形抵抗器24、電流検出部31、制御部40を有する。転流要素21は、充放電機能素子21aと半導体スイッチ21bとが直列に接続され構成されている。
【0012】
通電路10は、所定の大きな耐圧性(後述)を有する開閉器11と、それより耐圧性が低い開閉器12とが直列に接続され構成されている。開閉器11、12は、両者とも非半導体デバイスであり、開閉器11と開閉器12と比較すると開閉器12の方が電極開制御に対する応答が速い。ただし、開閉器12とはいえども非半導体デバイスであるため、半導体デバイスほどには高速に応答できない。以下の説明で開閉器11と開閉器12とを合わせて開閉器群と称する場合がある。
【0013】
この直流遮断装置の概略の動作は以下である。通常時は、開閉器11、12を閉じて通電路10に電流を流す。事故等で電流遮断を要するときは、速やかに開閉器11、12の電極開制御を開始するが、先に電極開の状態に至る開閉器12に対応して、その流れていた電流を転流要素21を機能させて素早く転流要素21を通る経路に転流する。
【0014】
この転流直後は開閉器11の電極開制御は完了しておらず開閉器11に電流が流れている。そこで、その後速やかに転流要素21にある半導体スイッチ21bをオフに移行すると、開閉器11に引き続き流れていた電流が、電流が流れるように制御されている半導体スイッチ22を通る経路に転流する。そして、さらにその後半導体スイッチ22をオフに移行することによりその電流を限流させて遮断を完了する。
【0015】
図1において、通常時の直流電流は、一般的には、図示左から右の場合、図示右から左の場合、両者が考えられるが、その両者の場合にこの直流遮断器は対応している。以下では、説明便宜のため、通常時の直流電流は図示左から右へ流れているものとして説明する。まず、
図1中に示した各構成物について説明する。
【0016】
開閉器11は、電流の通、不通を切り替えることができる、すでに述べたように非半導体デバイス(機械式のデバイス)である。開閉器12も非半導体デバイスで、電流の通、不通を切り替えることができる。開閉器11と開閉器12とは、耐圧性と電極開制御に対する応答速度とにおいて互いに利点を補完し合う関係になっており、このように特性の異なる開閉器を直列に接続して役割を分担している。開閉器11と開閉器12とは、ともにその有する電極の開閉が制御部40により制御される。
【0017】
転流要素21は、開閉器11と開閉器12との接続ノードに一端が接続された、開閉器12に流れていた電流を素早く転流要素21(およびリアクトル23)を通る経路に転流するための要素である。転流要素21は、充放電機能素子21a(例えばキャパシタ)と半導体スイッチ21bとが直列に接続され構成されている。
【0018】
充放電機能素子21aには、制御部40によってあらかじめ充電がされており、この状態で半導体スイッチ21bをオンに移行すると、充放電機能素子21aの両電極間の電圧をゼロに向かわせるように充電電荷が放電され、これにより開閉器12に流れていた電流が素早く転流要素21を通過する電流として転流する。転流要素21の充電および放電の制御は制御部40によりなされる。
【0019】
半導体スイッチ22は、転流要素21の他端と、開閉器12に接続される側の端部とは反対の側の開閉器11の端部と間に接続して設けられている。半導体スイッチ22は、電流の通、不通を切り替える半導体のスイッチであり、切り替えの制御(オンオフ制御)は制御部40による。
【0020】
半導体スイッチ22の具体例として、図示するように、ここでは、IGBT(insulated gate bipolar transistor)とダイオードとの逆並列接続(順方向が互いに逆になる並列接続)要素を2つ逆方向に直列に向い合せに接続して単位要素を構成し、この単位要素を多数直列に接続して全体として2つの主電極端子を有するようにした構成物を用いている。IGBTそれぞれのゲートに制御部40からの制御信号に起因する電圧が印加されると各単位要素は、いずれの方向にも電流が流れる状態(つまりオン状態)になる。
【0021】
半導体スイッチ22の具体的構成物については、図示以外にも種々採用することが可能である。例えば、逆並列接続のサイリスタを単位要素として、これを多数直列に接続して全体として2つの主電極端子を有するようにした構成物も採用できる。半導体スイッチは一般にオン状態において等価的に抵抗(オン抵抗)があり、通電により電圧降下が生じる。この電圧降下は、上記の単位要素の直列数に依存して大きくなり、つまり半導体スイッチ22全体のオン抵抗もこの直列数に依存して大きくなる。
【0022】
単位要素の直列数については、その必要な数は、この半導体スイッチ22が電流遮断のためオフ状態に至ったとき以降においてこの遮断装置に印加され得る高電圧に耐えられることを条件に決め得る。このためには、一般にある程度大きな(例えば数百)の直列数が必要になる。
【0023】
半導体スイッチ22を切り替える制御部40による制御は、通常時は半導体スイッチ22をオフ、遮断動作時には一度オンに切り替えてその後速やかにオフに戻すことが標準的な移行である。ただし、これに限らず、通常時に半導体スイッチ22をオンとするように制御しても実際にはそのオン抵抗のため電流は流れず、通電路10の側に全電流が流れることになるのでこのように通常時に半導体スイッチ22をオンとする制御も採り得る選択である。
【0024】
リアクトル23は、転流要素21の他端と、開閉器11に接続される側の端部とは反対の側の開閉器12の端部との間に接続して設けられている。リアクトル23は、転流要素21の放電が開始されてから開閉器12の電流をゼロに至らせるまでの時間を調整するため挿入されている。開閉器12の電流をゼロに至らせるタイミングは、その電極開制御が完了、確立した後が好ましいので、リアクトル23を図示するように設けそのリアクタンスを加減することで放電電流を抑制し上記の調整が可能になる。調整の必要性が低い場合には、リアクトル23を設けず単なる導線に代えることもできる。
【0025】
非線形抵抗器24は、半導体スイッチ22と並列に接続して設けられている。非線形抵抗器24は、この直流遮断器の遮断動作の最終段階で機能するものであり、具体的には通電路10が電流不通になり、半導体スイッチ22も電流不通になった状態において電流が一時的に流れる。一時的に流れる最初の段階では、その直前に半導体スイッチ22に流れていた電流と同じ値の電流が流れる。電流が流れると抵抗の非線形性により抵抗値が増大し、増大した抵抗値により実質的に電流ゼロに至って電流遮断が完了する。
【0026】
電流検出部31は、この直流遮断器に流れる電流を検出し、これを制御部40に伝える。このため、電流検出部31は、開閉器11、21と半導体スイッチ22と非線形抵抗器24との並列接続の外側に直列に設けられている。電流検出の具体例として、例えば、ごく小さい抵抗値を有する抵抗器を挿入しその両端電圧を検出する構成や、電流によって生じる磁束を検出する構成(直流CT)などが挙げられる。
【0027】
制御部40は、開閉器11、21の電極開、電極閉の制御、転流要素21の充放電の制御、および半導体スイッチ22のオンオフ制御を行う。制御部40の内部には、これらの各制御に対応してそれぞれ下位の制御部が存在するが、それらの下位の制御部間ではそれらの制御に必要な情報が互いに共有されるように伝えられる。また、制御部40は、不図示の事故検出装置から事故に関する情報を得るが、事故発生の旨は、電流検出部31からの検出電流を活用することにより制御部40において判断するようにしてもよい。
【0028】
図2は、
図1に示した直流遮断装置の動作をタイミングチャートで示している。
図2をも参照して、
図1に示した直流遮断装置についてその動作を時系列的に説明する。
【0029】
図2(a)には、全電流(つまり、電流検出部31により検出される電流)の時系列的な変化が示されている。図示の最初の段階(時刻A以前の段階)は、通常時の電流が流れている状態であり、その内訳はすべて開閉器11、12に流れている電流である。当然と言えるが時刻A以前の段階で半導体スイッチ22、そして転流要素21、リアクトル23、非線形抵抗器24には電流は流れていない。
【0030】
時刻Aにおいて直流送電系統に事故が発生すると、
図2(a)に示すように全電流は増加していく。事故発生の旨は不図示の事故検出装置または電流検出部31からの検出電流により制御部40で了知される(時刻B)。これを受けて制御部40は、開閉器11、21の電極開制御を開始する(時刻C)。電極開制御を開始しても、開閉器11、12にはアーク電流が流れ続ける。その状態において制御部40からの制御で転流要素21の放電を開始する(時刻D)。
【0031】
転流要素21の放電は、具体的には、半導体スイッチ21bをオンに移行して開始する。半導体スイッチ21bをオンに移行すると、あらかじめ充放電機能素子21aに充電されていた電荷が、充放電機能素子21aの両電極間の電圧をゼロに向かわせるように放電され、これにより開閉器12に流れていた電流が素早く転流要素21を通る電流として転流する。さらに具体的に説明すると以下である。
【0032】
充放電機能素子21aの図示下側の電極をプラス、図示上側をマイナスの電荷であらかじめ充電しておくと、半導体スイッチ21bがオフになっている間は、充放電機能素子21aの片方の電極が電気的にオープンにされているのと等価でありほぼ放電は起こらない。この状態から半導体スイッチ21bをオンに移行すると、充放電機能素子21aの図示下側電極から、半導体スイッチ21b、リアクトル23、開閉器12を経て充放電機能素子21aの図示上側の電極へと放電が生じる。
【0033】
この放電電流は開閉器12においてはそれまで流れていた電流とは逆向きであり、したがって、開閉器12に流れていた電流が素早く転流要素21を通る電流として転流する。これにより開閉器12の電流遮断は完了する(時刻E:
図2(b)を参照)。
【0034】
なお、転流要素21の放電が開始される時刻D以降は、半導体スイッチ21bのオン抵抗により、開閉器12の両端に電圧が生じ始める(
図2(d)参照)。ここで時刻Dから時刻Eまでの時間はリアクトル23のインダクタンスにより調整可能である点はすでに概略説明している。しかし、時刻D以降であれば開閉器12の両端に電圧が生じ得るので、時刻Dは、開閉器12の電極間距離が所定の距離になったと想定される開極時以降であることが好ましい。
【0035】
上記の時刻E後も、開閉器11の側はその電極開制御に対する応答が遅いことにも起因して電流が流れ続ける(
図2(c)を参照)。その状態において、次に、制御部40からの制御により転流要素21の半導体スイッチ21bをオフに切り替える(時刻F)。すなわち、制御部40は、時刻Dから時刻Eまでの時間を想定して、開閉器12を流れる電流がゼロに至ったと想定される転流時(時刻E)以降に、半導体スイッチ21bのオフ移行制御を行う。
【0036】
制御部40による半導体スイッチ21bのオフ移行制御により、半導体スイッチ21bにつながる開閉器11を通過する電流経路が遮断される。よって、今度はそれまで開閉器11に流れていた電流が、電流が流れる状態にされている半導体スイッチ22の側の電流として転流する(時刻F;
図2(c)を参照)。おおよそ時刻Fから次に説明する時刻Gまでの期間においては、半導体スイッチ22のオン抵抗のため半導体スイッチ22に一定程度の電圧降下が生じており、これがこの直流遮断装置への印加電圧になる(
図2(d)を参照)。
【0037】
時刻Fのあと、開閉器11の電極間距離が所定の距離になったと想定される開極時以降(時刻G)に、半導体スイッチ22をオフ状態にすべく制御部40は半導体スイッチ22を制御する。このときすでに、時刻Fから間もないタイミングで遮断器群11、12を有する通電路10が電流不通であり、かつ、時刻Gで半導体スイッチ22も電流不通に変換されるため、時刻G以降、非線形抵抗器24に電流が一時的に流れる。
【0038】
一時的に流れる最初の段階では、その直前に半導体スイッチ22に流れていた電流と同じ値の電流が流れる。それにより非線形抵抗器24に比較的大きな電圧降下(例えば500kV)が生じる。非線形抵抗器24に電流が流れると抵抗の非線形性により抵抗値が増大し、増大した抵抗値により実質的に電流ゼロに至って電流遮断が完了する(時刻H;時刻Aから例えば数ms)。時刻H以降は、この直流送電系統に応じた直流電圧(例えば300kV)がこの直流遮断装置に印加された状態になる(
図2(d)を参照)。
【0039】
以上のような制御部40による時系列的な制御により、直流遮断装置として一連の遮断制御を行うことが可能になる。この制御手順は、この直流遮断装置において基本的な手順と言えるものであり、これを逸脱しないようにさらに厳密に好ましいタイミングで遮断時の制御を行うことも可能である(後述する)。
【0040】
以上説明したように、この実施形態の直流遮断装置によれば、通電路10に半導体スイッチが使われないことから、通電時の電力損失を大きく減じることができる。開閉器11は、その電極開制御に対する応答として、開閉器12のそれより遅いが、耐圧性が高い。逆に、開閉器12は、その電極開制御に対する応答として、開閉器11のそれより速いが、耐圧性が低い。高耐圧の開閉器11を開閉器12と直列に接続して設けることにより、直流遮断装置として必要な高耐圧性を確保している。
【0041】
また、一方の開閉器12に並列に転流要素21を挿入しているので、転流要素21のはたらきにより、速い応答の開閉器12に応じてその電流を強制的に素早く転流要素21の側に転流することができる。しかる後、転流要素21にある半導体スイッチ21bをオフに移行することにより、今度は開閉器11の電流を素早く遮断すべき電流として半導体スイッチ22の側に転流することができる。したがって、半導体スイッチ22に移った遮断すべき電流においてその値があまり増大しないうちに半導体スイッチ22をオフに移行することが可能であり、遮断装置として大型化を回避できる。
【0042】
次に、
図3は、
図1中に示した開閉器12に含まれ得る要素である真空バルブを模式的に示す断面図である。
図3に示すように、この真空バルブ50は、碍管51、固定側電極52、可動側電極53、固定側通電軸54、可動側通電軸55、ベローズ56を主たる構成要素として有している。
【0043】
図1、
図2の説明においては開閉器12の具体例について言及しなかったが、開閉器12としては、真空開閉器を利用することができる。真空開閉器は、一般に耐圧性が高い開閉器とは言えないが応答性は比較的優れている。そこで、開閉器12として真空開閉器を用いても、通電路10の電流をゼロに減じた後に生じ得る、オン状態の半導体スイッチ21bを含む転流要素21による低印加電圧には開閉器12は耐えることができる上に、開閉器12の転流までに要する時間を短縮できる点が利点になる。
【0044】
真空開閉器は、
図3に示すような真空バルブ50を有しており、これ以外に、可動側通電軸55をその軸方向に所望に移動させるための機構(不図示)などが備えられる。円筒状の碍管51の内部はほぼ真空に保たれ、この真空を外と遮断するため、可動側通電軸55および碍管51に固定してベローズ56が設けられている。真空バルブ50の構成について以下説明する。
【0045】
碍管51の円筒上面に貫通するように固定側通電軸54が設けられ、固定側通電軸54は、碍管51への貫通部で碍管51に固定されている。碍管51の円筒上面を貫通して突起している固定側通電軸54の部分が開閉器としての一方の端子になる。碍管51の内部に位置する固定側通電軸54の端部には、その軸と共通する軸を有するような、扁平な円盤状の固定側電極52が設けられている。固定側通電軸54が位置する側とは反対の側の固定側電極52の面に対向して、固定側電極52と同様な形状を有しかつその軸と共通する軸を有する可動側電極53の面が位置している。
【0046】
可動側電極53の、固定側電極52と対向する面の側とは反対の側には、固定側通電軸54、固定側電極52、可動側電極53のそれぞれと軸を共通に可動側通電軸55が設けられている。可動側通電軸55は、碍管51の円筒下面を貫通するように設けられ、その貫通して飛び出している部分が開閉器としての他方の端子になる。なお、すでに説明したようにベローズ56はその一方の側が可動側通電軸55に固定して設けられているとともに、その他方の側が碍管51に固定されている。ベローズ56により、可動側通電軸55が、電流の開閉のためその軸方向に移動されても、常に碍管51内は気密が保たれる。
【0047】
図1に示した直流遮断装置を、例えば直流300kV程度の系統に使用した場合を考えると、開閉器12に対して高耐圧の開閉器11が直列に設けられている等のこの装置の構成上、開閉器12としては、オン状態の半導体スイッチ21bを含む転流要素21による電圧降下分に耐えられればほぼ足りると考えられる。この電圧降下は大きくとも数kVと見積もられ、真空開閉器である開閉器12でもこの程度の電圧には容易に耐えられる。そして、真空開閉器である開閉器12の使用により、開閉器12の転流までに要する時間を短縮することができる。
【0048】
なお、真空開閉器の中でも特に電極52、53として平板電極を有するものは閉状態での電気抵抗が低く、これにより通電時の電力損失を低減できることが利点になる。また、特に電極52、53として縦磁界電極を有する真空開閉器は、その電極開制御後に電極間に流れるアーク電流を縦磁界により拡散制御して遮断性能を向上させまた電極の損傷を抑制することができる。
【0049】
縦磁界電極とは、例えば、
図4に示した模式図を参照して、固定側電極52a、通電側電極53aのそれぞれの側面にスリットを設けて、電流の向きに周方向成分を加えるように構成した電極である。電極52a、53a間の電流が周方向成分を持つと電極52a、53a間のアーク電流に縦磁界が加わり、これにより、荷電粒子が磁界中に閉じ込められて電極52a、53a全体に平等に分散するため、遮断性能が向上しまた電極の損傷を抑制することができる。
【0050】
なお、
図1、
図2の説明において開閉器11の具体例にも言及しなかったが、開閉器11としては、例えば絶縁ガスとしてSF
6が封入されたガス開閉器を利用することができる。ガス開閉器は、一般に耐圧性が高い。そこで、開閉器11としてガス開閉器を用いれば、電流遮断後に生じ得る直流遮断装置への高印加電圧を受け止めて耐えることが可能である。なお、このとき、他方の開閉器12の側はオフ状態の転流要素21(高抵抗ではあるが無限大ではない)が並列に設けられているため、直流遮断装置への高印加電圧は主に開閉器11の側が負担することになる。
【0051】
(実施形態2)
次に、実施形態2の直流遮断装置について
図5(その1)、
図6(その2)を参照して説明する。
図5は、実施形態2(その1)の直流遮断装置の構成を示している。同図において、
図1中に示した構成物と同一のものには同一符号を付しその説明は省略する。
【0052】
この形態は、非線形抵抗器24が、半導体スイッチ22とリアクトル23との直列要素に対して並列に接続して設けられている点で、
図1に示したものと構成が異なる。この非線形抵抗器24は、
図1に示したように半導体スイッチ22のみに対して並列に接続して設けるほかに、このように、半導体スイッチ22とリアクトル23との直列要素に対して並列に接続して設けることもできる。
【0053】
リアクトル23を設けた目的は、転流要素21の放電が開始されてから開閉器12の電流をゼロに至らせるまでの時間を調整することにあり、一方、非線形抵抗器24は、直流遮断の最後の段階で一時的に電流が流れるに過ぎないので、いずれのように非線形抵抗器24を設けても、一時的に電流が流れる機能、ひいては直流遮断動作に対して影響はほぼない。
【0054】
次に、
図6は、実施形態2(その2)の直流遮断装置の構成を示している。同図において、
図1中に示した構成物と同一のものには同一符号を付しその説明は省略する。
【0055】
この形態は、リアクトル23を設ける位置が、転流要素21にのみシリーズになるように挿入されている点で、
図1に示したものと構成が異なる。すなわち、リアクトル23は、半導体スイッチ22とはシリーズの配置関係にはなっておらず、非線形抵抗器24ともシリーズの配置関係にはなっていない。これは、転流要素21が充放電機能素子21aと半導体スイッチ21bとさらにリアクトル23とが直列に接続された要素に置き換わっているとも言い得る。リアクトル23はこのような配置で設けることもできる。
【0056】
リアクトル23を設けた目的は、転流要素21の放電が開始されてから開閉器12の電流をゼロに至らせるまでの時間を調整することにあり、よって、
図6に示す配置でリアクトル23を設けてもよいことは容易な帰結である。
【0057】
(実施形態3)
次に、実施形態3の直流遮断装置について
図7を参照して説明する。
図7は、実施形態3の直流遮断装置の構成を示している。同図において、
図1中に示した構成物と同一のものには同一符号を付しその説明は省略する。
【0058】
この形態は、通電路10Aとして、開閉器12に並列に接続された、開閉器12に印加され得る最大電圧を軽減させるように機能する付加要素13をさらに有する点で
図1に示したものと構成が異なる。開閉器12に並列に付加要素13を設けると、このような付加要素がない開閉器11との構成上の相違から、開閉器12の側に印加される最大電圧をさらに明確に低下させることができる。
【0059】
ここで、付加要素13は、例えば、抵抗器、非線形抵抗器、キャパシタ、およびキャパシタと抵抗器との直列接続要素の中から、そのひとつまたは2つ以上を並列に接続したものを採用できる。付加要素13が抵抗器あるいは非線形抵抗器(例えば酸化亜鉛素子など)の場合、開閉器11との構成上の相違から、抵抗分圧された電圧が開閉器12に印加される(抵抗小で、印加電圧小)。
【0060】
同様に、付加要素13がキャパシタの場合は、開閉器11との構成上の相違から、容量分圧された電圧が開閉器12に印加される(静電容量大で、印加電圧小)。付加要素13がキャパシタと抵抗器との直列接続要素の場合、開閉器11との構成上の相違から、インピーダンスにより分圧された電圧が開閉器12に印加される(インピーダンス小で、印加電圧小)。
【0061】
(実施形態4)
次に、実施形態4の直流遮断装置について
図8を参照して説明する。
図8は、実施形態4の直流遮断装置の構成を示している。同図において、
図1中に示した構成物と同一のものには同一符号を付しその説明は省略する。
【0062】
この形態は、通電路10Bとして、開閉器11の電極間距離を検出して制御部40に伝える距離検出部14を開閉器11に設け、かつ、開閉器12の電極間距離を検出して制御部40に伝える距離検出部15を開閉器12に設けた点で
図1に示したものと構成が異なる。
【0063】
開閉器12においては、すでに説明したように、転流要素21に対して制御部40が放電制御を行うと、開閉器12に流れる電流が減少し始め、開閉器12には電圧が印加され始める。したがって、この形態によれば、開閉器12の電極間距離を検出した結果に基づき転流要素21に対して制御部40が放電制御を行うことができるので、発生電圧に対して問題ないような電極間距離を得た開閉器12に電圧が印加されることになり好ましい。
【0064】
また、開閉器11においては、すでに説明したように、半導体スイッチ22をオフに移行する制御を行うと、流れる電流の経路は非線形抵抗器24を通る経路のみになり、したがって、この直流遮断装置には非常に大きな電圧が印加される。この形態によれば、開閉器11の電極間距離を検出した結果に基づき半導体スイッチ22をオフに移行する制御を行うことができるので、耐圧性の高い開閉器11の電極間距離はその時点で所定の距離に開いており好ましい。
【0065】
図9は、
図8に示した直流遮断装置の動作をタイミングチャートで示している。
図9は、
図2の図示とほとんど同じであり、同じ点に関してはすでに説明した内容を参照することができる。
図8で説明した点をもう一度
図9を参照して説明すると、開閉器12が開極したタイミング(=耐圧性を得たタイミング;時刻C1)よりあとのタイミングである時刻Dで転流要素21の放電が開始されており、これは好ましいタイミングである。また、開閉器11が開極したタイミング(=耐圧性を得たタイミング;時刻C2)よりあとのタイミングである時刻Gで半導体スイッチ22をオフ移行しており、これは好ましいタイミングである。
【0066】
(実施形態5)
次に、実施形態5の直流遮断装置について
図10を参照して説明する。
図10は、実施形態5の直流遮断装置の構成を示している。同図において、
図1中に示した構成物と同一のものには同一符号を付しその説明は省略する。
【0067】
この形態は、通電路10Cとして、開閉器11を流れる電流を検出して制御部40に伝える電流検出部16を開閉器11と直列に接続して設け、かつ、開閉器12を流れる電流を検出して制御部40に伝える電流検出部17を開閉器12と直列に接続して設けた点で
図1に示したものと構成が異なる。電流検出部16、17については、具体的に、電流検出部31と同様の構成を採用できる。
【0068】
開閉器12に直列に電流検出部17を設けることによる利点は以下である。制御部40による転流要素21の機能素子21aを放電する制御は、開閉器12を流れる電流をゼロにするように行う。これにより開閉器12に流れる電流の転流を完了する。放電制御から実際に開閉器12に流れる電流をゼロに至らせるまでには多少時間がかかる。したがって、その時間を算入して、次の制御である半導体スイッチ21bのオフ移行制御を行うことが好ましい。この形態によれば、電流検出部17により電流がゼロに至ったことを了知できるので、より良好にこれに対応できる。
【0069】
また、開閉器11に直列に電流検出部16を設けることによる利点は以下である。このように構成すれば、開閉器11を流れる電流がゼロに至ったことが電流検出部11によって検出された時点を、開閉器11の電極間距離がすでに所定の距離になっている時点と擬制できる。開閉器11の電極開の応答性は開閉器12のそれより遅いが、それらの電極開制御の開始は同時であり、開始後に開閉器12が電極開に至ったことを前提に各制御がなされているため、さらにその後に開閉器11を流れる電流がゼロに至ったことが電流検出部16によって検出された時点は、開閉器11の電極間距離がすでに所定の距離になっている確度が十分に高いと考えられるためである。
【0070】
図11は、
図10に示した直流遮断装置の動作をタイミングチャートで示している。
図11は、
図2の図示とほとんど同じであり、同じ点に関してはすでに説明した内容を参照することができる。
図10で説明した点をもう一度
図11を参照して説明すると、開閉器12の遮断が完了したタイミング(=開閉器12の電流がゼロ;時刻E)よりあとのタイミングである時刻Fで転流要素21をオフに制御しており、これは好ましいタイミングである。また、半導体スイッチ22への転流が完了したタイミング(=開閉器11の電流がゼロ=開閉器11の電極間距離がすでに所定の距離になっている時点と擬制;時刻F1)よりあとのタイミングである時刻Gで半導体スイッチ22をオフ移行しており、これは好ましいタイミングである。
【0071】
以上説明のように、各実施形態の直流遮断装置によれば、通電路に半導体スイッチが使われないことから、通電時の電力損失を大きく減じることができる。第1の開閉器は、その電極開制御に対する応答として、第2の開閉器のそれより遅いが、耐圧性が高い。逆に、第2の開閉器は、その電極開制御に対する応答として、第1の開閉器のそれより速いが、耐圧性が低い。高耐圧の開閉器を低耐圧の開閉器と直列に接続して設けることにより、直流遮断装置として必要な高耐圧性を確保している。
【0072】
また、第2の開閉器に並列に転流要素を挿入しているので、転流要素のはたらきにより、速い応答の開閉器に応じてその電流を強制的に素早く転流要素の側に転流することができる。しかる後、転流要素にある第1の半導体スイッチをオフに移行することにより、今度は第1の開閉器の電流を素早く遮断すべき電流として第2の半導体スイッチの側に転流することができる。したがって、第2の半導体スイッチに移った遮断すべき電流においてその値があまり増大しないうちに第2の半導体スイッチをオフに移行することが可能であり、遮断装置として大型化を回避できる。
【0073】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。