特許第6591211号(P6591211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 野村マイクロ・サイエンス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6591211-超純水製造システム及び超純水製造方法 図000002
  • 特許6591211-超純水製造システム及び超純水製造方法 図000003
  • 特許6591211-超純水製造システム及び超純水製造方法 図000004
  • 特許6591211-超純水製造システム及び超純水製造方法 図000005
  • 特許6591211-超純水製造システム及び超純水製造方法 図000006
  • 特許6591211-超純水製造システム及び超純水製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591211
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】超純水製造システム及び超純水製造方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/32 20060101AFI20191007BHJP
   G01N 31/00 20060101ALI20191007BHJP
   C02F 1/42 20060101ALI20191007BHJP
   B01J 47/04 20060101ALI20191007BHJP
   B01J 41/07 20170101ALI20191007BHJP
   B01J 41/12 20170101ALI20191007BHJP
   B01J 39/05 20170101ALI20191007BHJP
   B01J 39/18 20170101ALI20191007BHJP
【FI】
   C02F1/32
   G01N31/00 M
   C02F1/42 A
   B01J47/04
   B01J41/07
   B01J41/12
   B01J39/05
   B01J39/18
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-118590(P2015-118590)
(22)【出願日】2015年6月11日
(65)【公開番号】特開2017-970(P2017-970A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2018年5月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 幸男
(72)【発明者】
【氏名】天谷 徹
【審査官】 菊地 寛
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/122884(WO,A1)
【文献】 特開昭63−032363(JP,A)
【文献】 特開昭57−150386(JP,A)
【文献】 特開昭57−152886(JP,A)
【文献】 特開平10−123118(JP,A)
【文献】 特開2012−061443(JP,A)
【文献】 特開2009−112941(JP,A)
【文献】 特許第4219664(JP,B2)
【文献】 特開平08−089938(JP,A)
【文献】 特開2002−263643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/20− 1/26
C02F 1/30− 1/38
B01J 39/00−49/02
C02F 1/42
G01N 31/00−31/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を、前処理システム及び一次純水システムによって処理して得られる一次純水を貯留する一次純水タンクの下流側に設置された超純水製造システムであって、
紫外線酸化装置と、混床式イオン交換樹脂装置と、
前記紫外線酸化装置及び前記混床式イオン交換樹脂装置が介装されて、前記一次純水を通流させ、かつ、製造された超純水をユースポイントに送る処理配管と、
前記ユースポイントで使用されなかった超純水を前記一次純水タンクに還流させる還流配管と
を備える超純水製造システムにおいて、
前記超純水製造システムの前記処理配管の任意の個所に、カタラーゼ担持樹脂を容器内に充填したカタラーゼ担持樹脂装置と溶存酸素計を備えて、超純水中の過酸化水素濃度を検出する過酸化水素測定装置が接続されたことを特徴とする超純水製造システム。
【請求項2】
前記カタラーゼ担持樹脂は、カタラーゼが陰イオン交換樹脂に担持されてなることを特徴とする請求項1記載の超純水製造システム。
【請求項3】
前記カタラーゼ担持樹脂における、単位樹脂量あたりのカタラーゼ活性(力価)は、10000〜500000u/mLであることを特徴とする請求項1又は2記載の超純水製造システム。
【請求項4】
前記溶存酸素計の溶存酸素濃度の測定下限値は10μg/L以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の超純水製造システム。
【請求項5】
前記溶存酸素計は、隔膜式の溶存酸素計であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の超純水製造システム。
【請求項6】
前記陰イオン交換樹脂は、3級アミノ基をイオン交換基として有することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項記載の超純水製造システム。
【請求項7】
前記陰イオン交換樹脂はマクロポーラス型であることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項記載の超純水製造システム。
【請求項8】
さらに、前記過酸化水素測定装置の測定結果に基づいて、前記紫外線酸化装置の照射する紫外線照射量を制御する紫外線照射量制御装置を備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の超純水製造システム。
【請求項9】
原水を、前処理システム及び一次純水システムによって処理して得られる一次純水を、紫外線酸化装置と混床式イオン交換樹脂装置とで処理して超純水を製造する超純水製造方法において、
前記紫外線酸化装置及び混床式イオン交換樹脂装置の少なくとも一方で処理された一次純水の一部を採水し、
前記採水された一次純水をカタラーゼ担持樹脂を容器内に充填したカタラーゼ担持樹脂装置に接触させて前記一次純水中に発生する溶存酸素濃度を測定し、
前記測定された溶存酸素濃度を基に、前記採水された一次純水中の過酸化水素濃度を検出し、
検出された過酸化水素濃度に基いて前記紫外線酸化装置の紫外線照射量を制御することを特徴とする超純水製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超純水製造システム及び超純水製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工程等に使用される超純水は、超純水製造システムによって製造されている。一般に、超純水製造システムでは次のようにして超純水が製造される。原水を前処理システムと一次純水システムによって処理し、これにより得られる一次純水を、一次純水タンクに貯溜する。貯留された一次純水は、二次純水システムに供給され、ここで処理されることでさらに高純度化され、超純水が製造される。こうして製造された超純水は、ユースポイント(POU)に供給される。
【0003】
通常、超純水製造システムに備えられる一次純水システム及び二次純水システムには、それぞれ、全有機炭素(TOC)成分及びイオン性の不純物を低減することを目的として、水中の有機物を酸化分解する紫外線酸化装置と、水中のイオン成分を除去する混床式イオン交換樹脂装置が設置される。混床式イオン交換樹脂装置には、陰イオン交換樹脂及び陽イオン交換樹脂が混合された混床式イオン交換樹脂が備えられている。
【0004】
また、ユ−スポイントで使用された使用済みの超純水を回収した回収水を、再度、超純水製造のための原水として使用することも行われている。回収水は活性炭吸着装置等を備えた回収システムにより処理されて、過酸化水素、フッ化水素等の、ユースポイントで超純水に混入された薬品が除去あるいは分解された後、前処理システムや一次純水システムに返送される。
【0005】
ここで、超純水中に過酸化水素が含まれると、過酸化水素の分解により酸素が生成し、超純水中の溶存酸素(DO)濃度が上昇する。超純水中にDOが存在すると、これを半導体製造工程のウェハ洗浄水として用いた場合、シリコンウェハ表面に酸化膜を生じさせるなどの弊害を起こすおそれがある。そのため、超純水中の過酸化水素濃度を低減することが求められる。例えば、回収水中に酸化剤として混入した過酸化水素が、回収システムで除去されずに残留したり、紫外線酸化装置における過剰の紫外線照射により発生したりして、過酸化水素が一次純水に混入することがある。
【0006】
このため、過剰の紫外線照射による過酸化水素の発生を抑えることが行われている(例えば、特許文献1参照。)。また、超純水中の過酸化水素濃度をヨウ素電極滴定法によって測定し、過酸化水素を含む超純水を下流側へ通水させないようにした超純水製造システムが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0007】
また、紫外線酸化装置の被処理水中の過酸化水素濃度を、白金族金属が担持された触媒金属担持体と溶存酸素計からなる過酸化水素濃度測定装置によって測定し、測定値に応じて紫外線酸化装置における紫外線照射量を制御して、過酸化水素の発生を抑制する超純水製造システムが知られている(例えば、特許文献3参照。)。この過酸化水素濃度測定装置は、サンプル水中の過酸化水素を触媒金属担持体によって分解し、これにより生じる酸素の濃度を溶存酸素計によって測定して、サンプル水中の過酸化水素濃度の測定を行うものである。
【0008】
一方、超純水中の過酸化水素濃度を低減するために、過酸化水素除去装置として、架橋カタラーゼ固定化繊維を使用した超純水製造システムが提案されている(例えば、特許文献4参照。)。また、シリカ、チタニア等の粒状物や、セルロース、キトサン、ポリスチレン系の多孔性粒子に固定化したカタラーゼを用いて水系液体中の過酸化水素を分解処理する場合、数週間から数カ月、場合によっては1年以上使用可能であることが示唆されている(例えば、特許文献5参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−112941号
【特許文献2】特許4219664号明細書
【特許文献3】特開2012−61443号
【特許文献4】特開2013−237944号
【特許文献5】特開平8−89938号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ヨウ素電極滴定法では、サンプル水中の過酸化水素にヨウ化カリウムを加え、これらが反応して生じるヨウ素の滴定を行う逆滴定であること、過酸化水素を含まない水を用いたブランク測定が必要であること、バッチでの測定であるために測定セルからの既測定水の廃水、測定セルの洗浄の工程が必要であること、さらに、ヨウ化カリウムと過酸化水素の反応には、3分以上程度要することなどのため、過酸化水素濃度の測定に30分程度かかる。
【0011】
そのため、ヨウ素電極滴定法による過酸化水素濃度測定装置を用いて紫外線酸化装置の紫外線照射量の調整や、過酸化水素を含む超純水の下流側への通水停止、過酸化水素の低減された超純水の下流側への通水再開を繰り返し行って水質の管理された超純水の製造を行う場合、過酸化水素濃度の急激な変動に対応できないという課題があった。
【0012】
また、ヨウ素電極滴定法では、還元剤(チオ硫酸ナトリウム)が使用されるが、この還元剤は比較的反応性が高いため長期の保存が難しく、定期的な交換が必要であるため、メンテナンスの頻度が高くなるという課題があった。
【0013】
また、ヨウ素電極摘定法は、酸化還元反応を利用した滴定であるため、サンプル水中に酸化性物質や還元性物質が存在する場合、これらとヨウ素が反応してしまい、過酸化水素濃度の測定精度を下げてしまう。ここで、紫外線酸化装置の処理水中には、TOC成分が分解されることで発生する有機酸と炭酸が含まれており、これらの有機酸の中には、シュウ酸などの還元性物質が含まれることがある。そのため、ヨウ素電極滴定法による過酸化水素濃度測定装置を用いて紫外線酸化装置の処理水中の過酸化水素濃度を測定しようとする場合、この還元性物質の存在によって過酸化水素濃度の測定精度が下がるという問題があった。
【0014】
また、一般的に、陰イオン交換樹脂の官能基が脱離することで、トリメチルアミンが溶出することが知られている。そのため、紫外線酸化装置の上流側に、陰イオン交換樹脂を用いた装置が備えられる超純水製造システムにおいては、紫外線酸化装置の処理水中にトリメチルアミンが残留することがある。このような超純水製造システムにおいて、紫外線酸化装置の処理水中の過酸化水素濃度の測定を、ヨウ素電極滴定法による過酸化水素濃度測定装置を用いて行う場合、このトリメチルアミンがヨウ素と反応して、過酸化水素濃度の測定精度を下げるという問題があった。
【0015】
また、白金族金属が担持された触媒金属担持体と溶存酸素計からなる過酸化水素濃度測定装置では、紫外線酸化装置の処理水中の過酸化水素濃度を正確に測定することができない。これは、次のような理由による。紫外線酸化装置の処理水中には、過酸化水素とともに、紫外線の照射により水中に発生した微量の水素が含有されることがある。したがって、紫外線酸化装置の処理水を触媒金属担持体に接触させると、触媒金属担持体の作用により、過酸化水素が分解して酸素になるだけでなく、発生した酸素が水素と反応して水になるため、サンプル水中の過酸化水素の量と、触媒金属担持体において発生する酸素の量とが対応しないためである。
【0016】
以上のように、超純水中の過酸化水素濃度を長期間安定して、かつ応答性よく監視することが困難であり、高度に水質管理のなされた超純水の製造が難しいという課題があった。
【0017】
一方、カタラーゼは上記したように、粒状物などに固定化されて水中の過酸化水素の除去に使用されていたものの、酵素の性質上、温度や水質による代謝や活性の変動の可能性が高く、極めて高度の精密性や安定性が求められる超純水の水質の管理に適用した場合の定量性や安定性の確保に対する懸念があった。
【0018】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであって、定量性、安定性に優れ、測定性能が長期間維持された過酸化水素測定装置を備え、溶存酸素濃度の著しく低減された超純水を、長期間安定して得ることのできる超純水製造システム及び超純水製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の超純水製造システムは、原水を、前処理システム及び一次純水システムによって処理して得られる一次純水を貯留する一次純水タンクの下流側に設置された超純水製造システムであって、紫外線酸化装置と、混床式イオン交換樹脂装置と、前記紫外線酸化装置及び前記混床式イオン交換樹脂装置が介装されて、前記一次純水を通流させ、かつ、製造された超純水をユースポイントに送る処理配管と、前記ユースポイントで使用されなかった超純水を前記一次純水タンクに還流させる還流配管とを備える超純水製造システムにおいて、
前記超純水製造システムの前記処理配管の任意の個所に、カタラーゼ担持樹脂と溶存酸素計を備えて、超純水中の過酸化水素濃度を検出する過酸化水素測定装置が接続されたことを特徴とする。
【0020】
本発明の超純水製造システムにおいて、カタラーゼ担持樹脂は、カタラーゼが陰イオン交換樹脂に担持されてなることが好ましい。また、カタラーゼ担持樹脂における、単位樹脂量あたりのカタラーゼ活性(力価)は、10000〜500000u/mLであることが好ましい。
【0021】
本発明の超純水製造システムにおいて、溶存酸素計の溶存酸素濃度の測定下限値は10μg/L以下であることが好ましい。また、溶存酸素計は、隔膜式の溶存酸素計であることが好ましい。
【0022】
本発明の超純水製造システムにおいて、陰イオン交換樹脂は、3級アミノ基をイオン交換基として有することが好ましい。また、陰イオン交換樹脂は、マクロポーラス型であることが好ましい。
【0023】
本発明の超純水製造システムは、さらに、前記過酸化水素測定装置の測定結果に基づいて、前記紫外線酸化装置の照射する紫外線照射量を制御する紫外線照射量制御装置を備えることが好ましい。
【0024】
本発明の超純水製造方法は、原水を、前処理システム及び一次純水システムによって処理して得られる一次純水を、紫外線酸化装置と混床式イオン交換樹脂装置とで処理して超純水を製造する超純水製造方法において、
前記紫外線酸化装置及び混床式イオン交換樹脂装置の少なくとも一方で処理された一次純水の一部を採水し、前記採水された一次純水をカタラーゼ担持樹脂に接触させて前記一次純水中に発生する溶存酸素濃度を測定し、前記測定された溶存酸素濃度を基に、前記採水された一次純水中の過酸化水素濃度を検出し、検出された過酸化水素濃度に基いて前記紫外線酸化装置の紫外線照射量を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の超純水製造システム又は超純水製造方法によれば、定量性、安定性に優れ、測定性能が長期間維持された過酸化水素測定装置を備え、溶存酸素濃度の著しく低減された超純水を、長期間安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1の実施形態に係る超純水製造システムを概略的に表わすブロック図である。
図2】実施例におけるカタラーゼ担持樹脂の製造方法を説明するための装置を概略的に示したブロック図である。
図3】実施例で使用した超純水製造システムを概略的に表わすブロック図である。
図4】実施例の過酸化水素濃度計の定量性試験の結果を示すグラフである。
図5】実施例の過酸化水素濃度計の安定性試験の結果を示すグラフである。
図6】実施例の過酸化水素濃度計のライフの測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0028】
図1は、本発明の超純水製造システムの一実施形態である超純水製造システム10を概略的に示すブロック図である。図1に示す超純水製造システム10は、一次純水システムで製造された一次純水を貯留する一次純水タンク(TK)11の後段に接続されている。
【0029】
超純水製造システム10は、TOC成分を酸化分解する紫外線酸化装置(TOC−UV)2と、紫外線酸化装置2でTOC成分が分解されて生じるイオン成分を除去する混床式イオン交換樹脂装置(MB)3と、混床式イオン交換樹脂装置3の処理水中の微粒子を除去する限外ろ過膜装置(UF)4とを備えている。限外ろ過膜装置4で処理された超純水はユースポイント5に供給される。また、超純水製造システム10は、ユースポイント5で使用されない超純水を一次純水タンク11に循環させる還流配管12を備えている。
【0030】
なお、ここで示した超純水製造システム10は、一次純水を処理して超純水を製造する装置であり、いわゆる二次純水製造装置又はサブシステムと称されるものである。
【0031】
超純水製造システム10は、さらに、紫外線酸化装置2の処理水中の過酸化水素濃度を測定する過酸化水素測定装置6を備えている。過酸化水素測定装置6は紫外線酸化装置2の出水配管に分岐して接続されている。なお、過酸化水素測定装置6の設置箇所はこれに限定されず、超純水製造システム10の任意の箇所に接続することができる。
【0032】
過酸化水素測定装置6は、カタラーゼの担持されたカタラーゼ担持樹脂を容器内に充填したカタラーゼ担持樹脂装置7と、溶存酸素計(DO計)8により構成される。過酸化水素測定装置6は、紫外線酸化装置2の処理水からサンプリングされたサンプル水をカタラーゼ担持樹脂に通水して、サンプル水中に含まれる過酸化水素を酸素と水に分解し、これにより生じた酸素の量を溶存酸素計8で測定する。溶存酸素計8で測定された溶存酸素濃度を基に、過酸化水素の2モルが分解すると1モルの酸素が生成することを利用して、サンプル水中の過酸化水素濃度を測定する。
【0033】
カタラーゼ担持樹脂装置7に用いられるカタラーゼ担持樹脂としては、カタラーゼをイオン交換樹脂に担持させたものを用いることができる。
【0034】
イオン交換樹脂としては、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂があるが、陽イオン交換樹脂の表面は強酸性になっており、カタラーゼが失活するおそれがある。そのため、カタラーゼ担持樹脂装置7に用いられるイオン交換樹脂としては、カタラーゼの活性を維持する点で、陰イオン交換樹脂を用いることが好ましい。イオン交換樹脂としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
カタラーゼ担持樹脂装置7に用いられるイオン交換樹脂のイオン交換容量は、特に制限はないが、0.8meq/mL以上1.8meq/mL以下であることが好ましい。イオン交換容量が0.8meq/mL以上であることで、カタラーゼを安定的に担持することができる。
【0036】
また、カタラーゼ担持樹脂装置7に用いられる陰イオン交換樹脂として、強塩基性陰イオン交換樹脂、弱塩基性陰イオン交換樹脂のいずれを用いてもよいが、カタラーゼの活性を長期間維持する点で、弱塩基性陰イオン交換樹脂を用いることが好ましい。
【0037】
陰イオン交換樹脂としては、イオン交換樹脂骨格がこれを構成する重合体の三次元構造によって構成されるゲル型、イオン交換樹脂骨格が多孔質構造を持つマクロポーラス型及びハイポーラス型のいずれであってもよいが、カタラーゼを安定的に担持する点で、マクロポーラス型又はハイポーラス型を用いることが好ましい。マクロポーラス型及びハイポーラス型のイオン交換樹脂のイオン交換樹脂骨格中には、孔径100〜1000オングストローム程度の細孔が無数に存在する。そのため、このイオン交換樹脂骨格に、カタラーゼが単なる表面吸着や、イオン交換反応によって担持されているのみではなく、これら細孔とカタラーゼとが立体的に絡まることで、カタラーゼがより強固に担持されると考えられる。
【0038】
陰イオン交換樹脂として弱塩基性陰イオン交換樹脂を用いる場合、弱塩基性陰イオン交換樹脂としては、サンプル水の汚染が少なく、カタラーゼを安定的に担持できることから、ポリスチレンをイオン交換樹脂骨格とし、イオン交換基として、1級ないし3級アミノ基を有する弱塩基性イオン交換樹脂が好適に用いられる。なかでも、カタラーゼ活性を維持する点で、3級アミノ基を有する弱塩基性イオン交換樹脂を用いることが特に好ましい。
【0039】
陰イオン交換樹脂としては市販品を用いることができる。例えば、イオン交換基として、1級アミノ基又は2級アミノ基を有する陰イオン交換樹脂としては、VPOC 1065(ランクセス製)、WA21J(三菱化学製)等が使用可能である。また、イオン交換基として3級アミノ基を有する陰イオン交換樹脂としては、モノプラスMP64(ランクセス製)、マラソンWBA(DOW製)、WA30(三菱化学製)、A100FL(Purolite製)などが使用可能である。
【0040】
カタラーゼ担持樹脂に使用されるカタラーゼについて特に制限はなく、カタラーゼ活性(力価)が1000〜1000000u/mL程度であればよく、10000〜500000u/mLのものが好適である。なお、カタラーゼ活性(力価)は、1分間に1μmolの過酸化水素を分解するカタラーゼ活性を1uとして求められる値である。カタラーゼとしては、馬、牛、豚等の、内臓、血液等から得られるもの、細菌から得られるもの等を特に制限なく用いることができる。カタラーゼは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
カタラーゼ担持樹脂装置7に用いられるカタラーゼ担持樹脂は、例えば、上記イオン交換樹脂にカタラーゼを接触させることで製造される。この場合、カタラーゼは、水に溶解させたカタラーゼ水溶液としてイオン交換樹脂に接触させることが好ましい。
【0042】
カタラーゼ担持樹脂の製造に際してカタラーゼ水溶液をイオン交換樹脂と接触させる場合、カタラーゼを安定的に担持させる点で、接触時間は、1〜48時間程度であることが好ましい。接触時のカタラーゼ水溶液の温度は、カタラーゼの活性を維持する点で、カタラーゼ活性の至適温度範囲であることが好ましく、例えば10〜40℃であることが好ましい。このような条件でカタラーゼを担持させたカタラーゼ担持樹脂は、カタラーゼが安定的に担持されており、また、カタラーゼの活性が維持されるため、ライフが長く、長期間、過酸化水素濃度の測定のために使用可能である。
【0043】
イオン交換樹脂にカタラーゼを接触させる方法としては特に限定されず、例えば、容器内にイオン交換樹脂を収容し、これにカタラーゼ水溶液を添加して、イオン交換樹脂をカタラーゼ水溶液に浸漬させる方法を採ることができる。また、イオン交換樹脂を収容した容器にカタラーゼ水溶液を通流させてもよい。イオン交換樹脂を収容した容器にカタラーゼ水溶液を通流させる場合、当該容器に循環配管を設けて、この循環配管を介してカタラーゼ水溶液を容器内に循環させることが好ましい。この方法であると、イオン交換樹脂の上下全体に均一にカタラーゼが担持されるという利点がある。この場合の、カタラーゼ水溶液の流速は、カタラーゼ水溶液とイオン交換樹脂の接触時間を上記した好ましい範囲にするために、空間速度(SV)5〜100h−1であることが好ましい。
【0044】
こうして得られるカタラーゼ担持樹脂は、カタラーゼ担持樹脂の単位体積当たりのカタラーゼ活性(力価)が、10000〜500000u/mLであることが好ましい。
【0045】
溶存酸素計(DO計)8としては、水中の溶存酸素をオンラインで測定可能な溶存酸素計が好適である。このような溶存酸素計として例えば、隔膜式の溶存酸素計が挙げられる。溶存酸素計8の溶存酸素濃度の定量下限値は、10μg/L以下が好ましく、1μg/L以下がより好ましい。溶存酸素計8の測定下限値が10μg/L以下であれば、より精度よく過酸化水素濃度の測定が可能である。
【0046】
また、過酸化水素測定装置6における過酸化水素濃度測定に際しての通水速度は、カタラーゼ担持樹脂に対する空間速度(SV)で1〜100h−1であることが好ましく、5〜30h−1であることがより好ましい。SVが100h−1以下であることで、優れた定量性、分析能を得ることができ、短時間での過酸化水素濃度の測定が可能である。
【0047】
過酸化水素測定装置6に用いるカタラーゼ担持樹脂の量は、過酸化水素測定装置6で測定されるサンプル水の流量等によって適宜決定することができ、例えば、過酸化水素濃度測定に際しての通水速度が上記した好ましい範囲になるようにすればよい。
【0048】
過酸化水素濃度測定に際してのサンプル水の水温は、温度調節をせずに成り行きで構わないが、温度調節をする場合、水温は、15〜25℃であることが好ましく、上記範囲内の所定の温度±2℃の範囲でほぼ一定に保たれることが好ましい。温度調節をする場合、例えば、カタラーゼ担持樹脂装置7の下流側に熱交換器を設け、この熱交換器によって水温の調節を行えばよい。
【0049】
また、過酸化水素測定装置6における過酸化水素濃度測定に際してのサンプル水のpHは、7.0±2であることが好ましい。超純水製造システム10の循環水は、通常、抵抗率18MΩ・cm以上、TOC濃度1μgC/L以下、溶存酸素濃度1μg/L以下の超純水であるため、このような場合、過酸化水素測定装置6に供給されるサンプル水のpHは、上記した好ましい範囲内に維持されている。したがって、サンプル水のpHの調整は行わなくてもよい。
【0050】
超純水製造システム10において、紫外線酸化装置2は、超純水の製造に通常用いられるものであればよく、例えば、185nm付近の波長を照射可能な紫外線ランプを備えたものが被処理水中の有機物を分解するのに適している。紫外線ランプとしては、特に限定されないが、低圧水銀ランプが好ましい。また、紫外線酸化装置2としては、流通型または浸漬型が挙げられ、このうち、流通型が処理効率の点から好ましい。
【0051】
また、紫外線酸化装置2の前段に熱交換器を設けて、被処理水の温度調節を行ってもよい。紫外線酸化装置2の処理水中の溶存酸素濃度が高い場合、カタラーゼ担持樹脂装置7の前段に膜脱気装置を設置して、膜脱気装置により溶存酸素を十分に除去したサンプル水をカタラーゼ担持樹脂装置7に通水してもよい。
【0052】
混床式イオン交換樹脂装置3としては、特に限定されないが、例えば、二次純水製造システムで一般的に使用される、強酸性陽イオン交換樹脂と強塩基性陰イオン交換樹脂とを混合して容器内に充填したもの(混床式イオン交換樹脂塔)を用いることができる。混床式イオン交換樹脂装置3を用いることで、混床層内のいずれの位置においても水のpHの変化がないため、効率のよいイオン交換ができるという利点が得られる。
【0053】
また、混床式イオン交換樹脂装置3としては、非再生型の混床式イオン交換樹脂装置(カートリッジポリッシャー)又は再生型の混床式イオン交換樹脂装置を特に限定なく選択して使用することができる。混床式イオン交換樹脂装置3は1種を単独で用いても良く、2種以上を組合せて使用してもよい。混床式イオン交換樹脂装置3としては、超純水の汚染を抑制する点から、非再生型の混床式イオン交換樹脂塔の1種を単独で使用することが好ましい。
【0054】
限外ろ過膜装置4としては、例えばポリスルホン製の中空糸膜モジュールを用いた装置が好適であり、これにより、水中の残存微粒子等を除去する。
【0055】
また、超純水製造システム10は、混床式イオン交換樹脂装置3における処理水中の溶存酸素濃度を上昇させないために、混床式イオン交換樹脂装置3の前段に、紫外線酸化装置2の処理水中の過酸化水素を捕捉して除去する過酸化水素除去装置を備えていてもよい。これにより、溶存酸素濃度がより低減された高純度の超純水を得ることができる。過酸化水素除去装置としては、例えば、ANP(野村マイクロ・サイエンス株式会社製)、Lewatit K3433(LANXESS製)等の過酸化水素除去樹脂が内部に充填された過酸化水素除去樹脂塔が好適である。過酸化水素除去装置は、過酸化水素以外に、超純水中の過酸化物を除去してもよい。
【0056】
また、超純水製造システム10において、過酸化水素除去装置の後段に膜脱気装置を設けてもよい。膜脱気装置を用いることで、例えば、ユースポイント5に供給される超純水中の溶存酸素濃度をさらに低減することが可能である。これにより超純水中の溶存酸素濃度は、例えば1μg/L以下、全溶存ガス濃度は1μg/L以下に低減することができる。
【0057】
超純水製造システム10を用いた超純水の製造は例えば、次のように行われる。一次純水タンク11に貯留された一次純水を、超純水製造システム10に供給して超純水を製造する。製造された超純水をPOU5に供給し、POU5で使用されなかった超純水は還流配管12を介して一次純水タンクに返送する。
【0058】
一次純水は、原水をいわゆる前処理システム及び一次純水システムで処理して得られるものである。原水としては、市水、井水、工業用水等が用いられる。この原水を前処理システムに通水し、ここで原水から懸濁物質及び有機物の一部が除去され、さらに、精密ろ過装置でろ過が行われて、前処理水が製造される。得られた前処理水を一次純水システムに供給する。
【0059】
また、ユースポイントで回収された使用済みの超純水を処理した回収水を一次純水システムに供給してもよい。この場合、使用済みの超純水は、活性炭装置、逆浸透膜装置などを備える回収処理システムで処理されて、使用済みの超純水から、ユースポイントで使用されたアンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ性薬剤、硫酸、塩酸、フッ酸等の酸性薬剤、イソプロピルアルコール等の有機性薬剤が除去された後、一次純水システムに供給される。
【0060】
一次純水システムは、例えば、脱塩装置、逆浸透膜装置、真空脱気装置、紫外線酸化装置、再生型混床式イオン交換樹脂装置により構成される。一次純水システムでは、前処理水又は回収水から、脱塩装置によって不純物イオンが除去され、逆浸透膜装置によって無機イオン、有機物、微粒子等が除去される。さらに、真空脱気装置により溶存酸素等の溶存ガスが除去され、残存する有機物が紫外線酸化装置で分解除去された後、再生型混床式イオン交換樹脂装置によって微量のイオン成分が除去されて一次純水が製造される。一次純水は、一次純水タンク11に貯留される。なお、一次純水は、原水及び回収水の一方のみを一次純水システムに供給して製造されたものでも良く、両者を混合して製造されたものでもよい。
また、原水又は回収水を、それぞれ別々に一次純水システムで処理して得られた一次純水を混合したものであってもよい。
【0061】
上記で得られた一次純水を一次純水システム10に供給して、超純水を製造している状態で、紫外線酸化装置2の処理水をサンプリングし、過酸化水素測定装置6によって、サンプル水中の過酸化水素濃度を測定する。測定された過酸化水素濃度の値に基いて、POU5に供給される超純水、又は最終的に得られる超純水中の過酸化水素濃度をより低減するように、超純水製造システム10における各水処理装置の処理条件を変更する。
【0062】
処理条件の変更は例えば次のように行う。測定された過酸化水素濃度の値が、所定の要求値を超えるとき、例えば、POU5における溶存酸素濃度の要求値を満たす値を超えるときに、POU5への超純水の供給を停止して、POU5で使用されない超純水が還流配管12を介して一次純水タンクに返送されるようにする。返送された一次純水は、再度、超純水製造システム10で処理されて、上記同様過酸化水素濃度の測定がされた上で、測定値が要求値を満たす場合にPOU5に供給される。
【0063】
この場合、過酸化水素測定装置6によれば、オンラインでの短時間での過酸化水素濃度の測定が可能であるため、過酸化水素濃度の高い超純水のPOU5への供給の停止、過酸化水素濃度の低減された超純水のPOU5への供給再開をそれぞれ迅速に行うことができる。したがって、溶存酸素濃度の著しく低減された超純水を安定的にPOU5に供給することができる。この場合、サンプル水は、紫外線酸化装置2の処理水に限られず、超純水製造システム10の任意の箇所で採水することができる。
【0064】
また、超純水製造システム10に、紫外線酸化装置2の紫外線照射量を制御する紫外線照射量制御手段を設置して、過酸化水素測定装置6によって測定された、紫外線酸化装置2の処理水中の過酸化水素濃度の値に基いて、紫外線酸化装置2における処理条件を変更してもよい。この場合、紫外線照射量制御手段が、過酸化水素測定装置6の測定値に基いて紫外線酸化装置2の紫外線照射量を制御する制御信号を出力し、紫外線酸化装置2に入力する。制御信号としては例えば、測定値が大きくなったときに、紫外線酸化装置2の紫外線照射量を減少させ、測定値が小さくなったときに、紫外線照射量を増加させる制御信号を用いる。これにより、紫外線酸化装置2における紫外線照射量を適正に保ち、紫外線酸化装置2での過酸化水素の発生を抑制することができる。紫外線酸化装置2での過酸化水素の発生が抑制されることで、溶存酸素濃度の著しく低減された超純水を安定的にPOU5に供給することができる。
【0065】
なお、紫外線酸化装置2の紫外線照射量の増減は、紫外線酸化装置2に複数の紫外線ランプを設置し、点灯する紫外線ランプの数を増減させることや、印加電圧を変化させて紫外線ランプを調光することで行うことができる。
【0066】
また、上述したように、超純水製造システム10に過酸化水素除去装置を設ける場合、過酸化水素除去装置内では、過酸化水素除去樹脂が過酸化水素を捕捉することで被処理水中から過酸化水素を除去するため、過酸化水素除去樹脂の寿命は捕捉した過酸化水素の量に依存する。超純水製造システム10に、過酸化水素除去装置と、さらに、紫外線照射量制御手段を設ければ、過酸化水素の発生が低減されるため、過酸化水素除去樹脂の寿命を飛躍的に延ばすことができ、超純水の製造を低コストで効率的に行なうことができるようになる。
【0067】
以上、本実施形態の超純水製造システムによれば、定量性、安定性に優れ、測定性能が長期間維持された過酸化水素測定装置を備えており、溶存酸素濃度の著しく低減された超純水を、長期間安定して得ることができる。
【実施例】
【0068】
次に実施例について説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0069】
(カタラーゼ担持樹脂の製造)
カタラーゼ担持樹脂を次のように製造した。図2は、カタラーゼ担持樹脂の製造方法を説明するための装置を概略的に示したブロック図である。
【0070】
内径φ20mm×高さ1200mmのカラム41に、原体樹脂42として、弱塩基性陰イオン交換樹脂(モノプラスMP64、ランクセス製)を50mL充填し、その後、カタラーゼ水溶液43(野村マイクロ・サイエンス製 HR−200)を約300mL充填した。その後、カタラーゼ水溶液43を、カラム41に設けられた還流配管44を介して、ポンプ45によって下向流、流量50mL/min(SV=60h−1)で、約3日循環させた。
【0071】
また、図3に示す超純水製造システム20を用いて、上記で製造したカタラーゼ担持樹脂を用いた過酸化水素濃度計30の定量性試験、安定性試験及びライフの測定を行った。
【0072】
超純水製造システム20は、一次純水を貯留する一次純水タンク(TK)21、循環水の温度を23±1℃に維持するための熱交換器(HEX)22、紫外線酸化装置(TOC−UV)23、過酸化水素除去装置24、膜脱気装置(MDG)25、非再生型混床式イオン交換樹脂装置(MB)26、限外ろ過膜装置(UF)27を接続して構成した。また、超純水製造システム20には、限外ろ過膜装置27の処理水を一次純水タンク21に循環する還流配管28を設けた。
【0073】
過酸化水素濃度計30は、上記で得られたカタラーゼ担持樹脂の50mLを、内径φ16mm×高さ600mmのカラムに充填し、このカタラーゼ担持樹脂の充填されたカラム(カタラーゼ担持樹脂装置32)に、溶存酸素計33(ハック・ウルトラ・アナリティクス・ジャパン製 Orbisphere510型)を接続して構成した。この過酸化水素濃度計30を、紫外線酸化装置23の出水配管に分岐して接続した分岐管31の経路に配置した。
【0074】
また、過酸化水素濃度計30には、紫外線酸化装置23の処理水を、カタラーゼ担持樹脂装置32をバイパスして溶存酸素計33に供給するバイパス配管34を設けた。分岐管31の、カタラーゼ担持樹脂装置32と溶存酸素計33の間、及びバイパス配管34の流路にはそれぞれバルブV1、V2を介装した。
【0075】
超純水製造システム20において使用した各装置の仕様は次のとおりである。
熱交換器(HEX)22:アルファ・ラバル製 M6−MFG (伝熱面積0.98m
紫外線酸化装置(TOC−UV)23:日本フォトサイエンス製 JPW2を2台並列に接続したもの
過酸化水素除去装置24:内径φ330mm×高さ1300mmの樹脂塔に、LANXESS製 Lewatit(登録商標) K3433の35Lを充填したもの
非再生型混床式イオン交換樹脂装置(MB)26:内径φ400mm×高さ2000mmの樹脂塔に、DOW製 MBGPの200Lを充填したもの
限外ろ過膜装置27:旭化成製 OLT−6036H
カタラーゼ担持樹脂装置32:内径φ16mm×高さ600mmのカラムにカタラーゼ樹脂の50mLを充填したもの
溶存酸素計33:ハック・ウルトラ・アナリティクス・ジャパン製 Orbisphere510型
ヨウ素電極滴定法による過酸化水素濃度計:野村マイクロ・サイエンス製 NOXIA−LII
【0076】
一次純水タンク21から、抵抗率18MΩ・cm以上、TOC濃度1μgC/L以下、溶存酸素濃度1μg/L以下、過酸化水素濃度3μg/L以下の一次純水(pH7.0)を、流量10m/hで熱交換器22に供給して、熱交換器22によって水温を22℃〜24℃に調節した上で、超純水製造システム20で処理し、超純水の製造を行った。
【0077】
(過酸化水素濃度計の定量性試験)
上記で超純水の製造を行いながら、バルブV2を閉じ、バルブV1を開いて、紫外線酸化装置23の処理水をサンプリングし、分岐管31を介して過酸化水素濃度計30に、流量50mL/min(SV=60h−1)で、通水した。溶存酸素計33で測定される溶存酸素濃度、カタラーゼ担持樹脂装置32に供給した超純水中の溶存酸素濃度及び酸素と過酸化水素の分子量を用いた下記式によってサンプル水中の過酸化水素濃度を算出した。カタラーゼ担持樹脂装置32に供給したサンプル水中の溶存酸素濃度の測定は、バルブV1を閉じ、バルブV2を開いて、紫外線酸化装置23の処理水を直接溶存酸素計33に供給することで、予め行った。
【0078】
過酸化水素濃度=(溶存酸素計33で測定される溶存酸素濃度−カラムに供給した超純水中の溶存酸素濃度)×2×(34/32)
【0079】
一方、過酸化水素濃度計30に供給されたのと同じ超純水をサンプリングして、サンプル水中の過酸化水素濃度を、上記とは別に、ヨウ素電極滴定法による過酸化水素濃度計(野村マイクロ・サイエンス製 NOXIA−LII)を用いて測定した。
【0080】
超純水に紫外線を照射して過酸化水素を発生させ、この紫外線照射量を変化させることで、測定対象の超純水中の過酸化水素濃度を変化させた。過酸化水素濃度を変化させた場合の、過酸化水素濃度計30により測定された過酸化水素濃度と、ヨウ素電極滴定法による過酸化水素濃度計により測定された過酸化水素濃度の関係を調べた。結果を、過酸化水素濃度計30により測定された過酸化水素濃度を縦軸、ヨウ素電極滴定法による過酸化水素濃度計で測定された過酸化水素濃度を横軸として、図4のグラフに示す。図4に示されるように、過酸化水素濃度計30で測定された過酸化水素濃度の値と、ヨウ素電極滴定法で測定された過酸化水素濃度の値とが、直線的に対応しており、過酸化水素濃度計30が定量性に優れることが分かる。
【0081】
(過酸化水素濃度計の安定性試験)
超純水製造システム20の各水処理装置の処理条件を一定に維持した状態で、分岐管31の接続箇所を、紫外線酸化装置23の出水配管から過酸化水素除去装置24の出水配管に変更して、過酸化水素除去装置24の処理水をサンプリングするようにし、サンプル水中の過酸化水素濃度を、過酸化水素濃度計30を用いて測定した。測定開始から20時間後、分岐管31の接続箇所を、紫外線酸化装置23の出水配管に変更し、紫外線酸化装置23の処理水をサンプリングするようにし、同様に、サンプル水中の過酸化水素濃度を過酸化水素濃度計30を用いて測定した。結果を、測定開始からの経過時間を横軸、過酸化水素濃度計30の測定値を縦軸として図5に示す。
【0082】
本試験では、超純水製造システム20の各水処理装置の処理条件が一定に維持されているため、各水処理装置の処理水の水質を一定に保たれている。したがって、水処理装置の処理水中の過酸化水素濃度も一定に保たれている。図5に示されるように、過酸化水素濃度計30で測定した過酸化水素除去装置24の処理水中の過酸化水素濃度、紫外線酸化装置23の処理水中の過酸化水素濃度のいずれも、ばらつきがなく安定した値が得られている。このことから、過酸化水素濃度計30によって、超純水中の過酸化水素濃度を安定的に測定可能であることが分かる。
【0083】
(ライフの測定)
分岐管31を、紫外線酸化装置23の出水配管に接続し、紫外線酸化装置23の処理水をサンプリングし、サンプル水中の過酸化水素濃度を、過酸化水素濃度計30を用いて測定した。この際、超純水製造システム20の各水処理装置の処理条件を一定に維持して、紫外線酸化装置23の処理水中の過酸化水素濃度が22〜24μg/Lの間で、ほぼ一定の値に保たれるようにした。同時に、過酸化水素濃度計30から排出されるサンプル水中の過酸化水素濃度を、上記同様のヨウ素電極滴定法による過酸化水素濃度計によって測定した。紫外線酸化装置23の処理水中の過酸化水素濃度、及び過酸化水素濃度計30から排出されるサンプル水中の過酸化水素濃度の測定を約1年間行い、過酸化水素濃度の測定時間と、ヨウ素電極滴定法による過酸化水素濃度計によって測定された過酸化水素濃度の関係を調べた。その結果を図6に示す。なお、測定期間中のサンプル水のpHは7.0±2、温度は22℃〜24℃であった。
【0084】
図6に示されるように、超純水中の過酸化水素濃度の測定を1年間続けた後も、過酸化水素濃度計30から排出されるサンプル水中の過酸化水素濃度の変化がないことが分かる。これは、過酸化水素濃度計30に備えられたカタラーゼ担持樹脂の過酸化水素の分解能が1年間低下していないことを示す。このように、カタラーゼ担持樹脂と溶存酸素計を用いて構成した過酸化水素濃度計によれば、1年以上、安定して過酸化水素濃度の測定が可能であることが分かる。
【0085】
上記定量性試験、安定性試験、ライフの測定から、カタラーゼ担持樹脂と溶存酸素計を用いて構成した過酸化水素濃度計によれば、水中の過酸化水素濃度をオンラインで迅速に行うことができるため、これを超純水製造システムに設置することで、過酸化水素濃度の高度に管理された超純水を製造し、ユースポイントへ供給することが可能である。
【0086】
具体的には、図3に示す制御装置36に、溶存酸素計33の測定値を入力し、この入力された測定値に基いて、制御装置36によって、紫外線酸化装置(TOC−UV)23の紫外線照射量を制御することで、過剰照射によって生じる過酸化水素の増加を極力抑制することができる。そのため、過酸化水素除去装置への負担を減らすことができるので、過酸化水素濃度の高度に管理された超純水を長時間連続して製造し、ユースポイントへ供給し続けることが可能である。
【符号の説明】
【0087】
2…紫外線酸化装置(TOC−UV)、3…混床式イオン交換樹脂装置(MB)、4…限外ろ過膜装置(UF)、5…ユースポイント(POU)、6…過酸化水素測定装置、7…カタラーゼ担持樹脂装置、8…溶存酸素計、10,20…超純水製造システム、11,21…一次純水タンク(TK)、12…還流配管、22…熱交換器、23…紫外線酸化装置(TOC−UV)、24…過酸化水素除去装置、25…膜脱気装置(MDG)、26…非再生型混床式イオン交換樹脂装置(MB)、27…限外ろ過膜装置(UF)、28…還流配管、30…過酸化水素濃度計、31…分岐管、32…カタラーゼ担持樹脂装置、33…溶存酸素計、34…バイパス配管、36…制御装置、37…ポンプ、41…カラム、42…原体樹脂、43…カタラーゼ水溶液、44…還流配管、45…ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6