(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態に係る患者の位置決め装置10A(10)が適用される放射線治療システムの概要が示されている。
治療室30には、照射制御部29により制御された治療ビームを患者32に向けて照射するビーム照射部34と、照射領域31内に患者32を仰臥させるベッド33と、患者32の表面を計測する表面計測器35と、患者32の表面にポインタ44(
図3)を投影するプロジェクタ36と、患者32を撮影した画像をリアルタイムに表示するモニタ37とから構成されている。
【0012】
患者の位置決め装置10A(10)は、治療ビームの照射領域31に配置された患者32の表面形状を計測した表面像11を保持する第1保持部と、この表面像11に含まれる患者の特徴点41(
図3)を識別する第1識別部12と、表面像11から識別された特徴点41の照射領域の座標系(X−Y−Z)における第1特徴点座標P(P
1,P
2,P
3)を演算する第1演算部13と、患者32に付したマーカ42を表面像11から検出する検出部14と、表面像11から検出されたマーカ42の照射領域の座標系(X−Y−Z)におけるマーカ座標Q(Q
1,Q
2,Q
3)を演算するマーカ座標演算部15と、第1特徴点座標Pをマーカ座標Qに座標変換する変換パラメータWを導出する変換パラメータ導出部16と、患者32を三次元撮像した三次元像21を保持する第2保持部と、三次元像21に含まれる患者の特徴点43を識別する第2識別部22と、照射領域の座標系(X−Y−Z)に位置させる三次元像21(
図3)の位置情報24を保持する第3保持部と、三次元像21から識別された特徴点43の照射領域の座標系(X−Y−Z)における第2特徴点座標R(R
1,R
2,R
3)を位置情報24に基づいて演算する第2演算部23と、変換パラメータWにより第2特徴点座標Rを目標座標S(S
1,S
2,S
3)に変換する変換部25と、目標座標Sにポインタ44を投影するようにプロジェクタ36を制御する制御部26と、を備えることを特徴とする。
【0013】
各実施形態におけるビーム照射部34は、治療室30内に固定されているものを例示しているが、患者32の体位や治療ビームの照射方向に合わせて、患者32の周囲を回転移動又は並進移動するものであっても良い。
また治療ビームは、ガン等の患部組織に照射して細胞を死滅させる放射線であり、そのような放射線として、X線、γ線、電子線、陽子線、中性子線、及び、重粒子線などが採用される。
また、患者の位置決め装置10Aにおいて破線で区画されている、三次元像21の第2保持部と、第2識別部22と、位置情報24の第3保持部と、第2演算部23と、を含む前処理部20を、別装置により構成してもよい。この場合、患者の位置決め装置10Aにおいて、患者32の表面像11を計測するのに先立って、この別装置で予め演算された第2特徴点座標Rを、取得部(図示略)で取得するようにしてもよい。
【0014】
本実施形態が適用される放射線治療システムは、設備の種類や適用する治療ビームにより規模や形態が大きく異なる。しかし、いずれの放射線治療システムであっても、治療ビームの照射に先立ち、治療計画が行われる点で共通する。
治療計画とは、治療ビームの照射を受ける姿勢と同じ姿勢で患者のCT(Computed Tomography)撮影を予め行い、患部を含む患者の三次元像21を取得する。
そして専門スタッフにより、この三次元像21に基づいて、患部に照射する放射線の、放射線量、照射角度、照射範囲、回数などが協議され、照射領域31に配置される患者32の位置情報24が決定される。
【0015】
そして、この治療計画で決定された位置情報24に基づいて、照射領域31に患者32を位置決めする。なお、患者32がベッド33に位置決めされると、その状態は治療ビームの照射が終了するまで、維持されることが要求される。
この位置決め方法並びに状態の維持方法はいくつかあるが、第1実施形態では、患者が自身の判断で行う場合、又は医療従事者の判断により患者の姿勢を動かして行う場合について説明する。
【0016】
図1に例示される放射線治療システムは、中性子捕捉療法に関するもので、中性子と核反応して粒子線(アルファ線)を発生するホウ素等を含む化合物を予め腫瘍細胞にとりこませる。そして、中性子の治療ビームを患部に向けて照射し、核反応により発生したアルファ線により、ホウ素を多く取り込んだ腫瘍細胞のみが破壊される。
【0017】
中性子捕捉療法の利点は、アルファ線は、10ミクロンしか飛ばないため、正常細胞を傷つけることなく腫瘍細胞のみを選択的に死滅させる点にある。
中性子捕捉療法では、治療ビームの一回の照射時間が数分から数十分程度と長い為、患者32は、治療計画で決められた姿勢を、治療ビームの照射期間中ずっと取り続けている必要がある。
これに対し、X線やγ線を用いる放射線療法や、加速した重荷電粒子線を用いる重粒子線療法等においては、治療ビームを一回照射する際の患者の拘束時間が、中性子捕捉療法よりは短いといえる。
【0018】
患者32の表面像11を計測する表面計測器35としては、複数の光学カメラ35a,35b(
図2)で患者32の表面形状をステレオ撮影するものや、又はレーザスキャナ(図示略)で患者32の表面形状をレーザ走査するものが挙げられる。
なお、照射領域31の死角を減らすために、表面計測器35は3台以上配置することが望ましい。
【0019】
ここで光学カメラとは、患者32の表面を反射する可視光を、平面配置した複数の受光センサで検出し、二次元画像を得るものである。異なる位置に配置される複数の光学カメラが撮影した二次元画像の各々から、三角測量の原理に基づいて、患者の表面形状を表わす座標値の群を得ることができる。
【0020】
またレーザスキャナとは、患者32の表面と受光センサとの間をレーザパルスが往復する時間や波長の位相差を計測することで距離を計測し、レーザパルスが発射した方向を同時に計測することで、患者の表面形状を表わす座標値の群を得ることができる。
このように、表面計測器35で計測された患者32の表面像11は、患者の位置決め装置10に保持される。
【0021】
較正部27は、表面計測器35の座標系により表された表面像11の座標値を、照射領域31の座標系(X−Y−Z)の座標値に置換するものである。
図2に基づいて、光学カメラ35(35a,35b)の較正について説明する。
照射領域31に配置された較正体38を複数の光学カメラ35(35a,35b)でステレオ撮影した表面像11a,11bの座標値は、光学カメラの固有の二次元座標系(x−y)で表されている。
【0022】
これら表面像11a,11bの二次元座標系(x−y)から照射領域の座標系(X−Y−Z)における座標値が既知である較正体の計測点45を識別する。
そして、この二次元座標系(x−y)から識別された計測点45が、座標系(X−Y−Z)の既知の座標値に置換されるように、較正定数Bが設定される。
この較正定数Bは、後述する第1演算部13及びマーカ座標演算部15において、表面計測器35の座標系から照射領域の座標系(X−Y−Z)に置換される座標値の演算に用いられる。
【0023】
なお表面計測器35の較正は、上述した座標系の置換に関わる外部定数以外に、焦点距離やレンズ歪み補正係数等の内部定数の較正も含む。
また表面計測器35の較正は、システム構築時、システム修理や交換時に表面計測器35の位置関係が変わった場合に実施すれば良く、患者32が変わるたびに実施する必要はない。
【0024】
光学カメラの内部定数は、照射領域の座標系(X−Y−Z)における最低6点以上の既知の座標値(X,Y,Z)を用いる。例えば、光学カメラの三次元座標を(X
0,Y
0,Z
0)とした時、光学カメラにより較正体38の計測点45を撮影した二次元座標は(x,y)となり、三次元座標に表わすと(x
0',y
0',‐f)と表すことができる。
ただし(x',y’)は、(x,y)を、撮像した写真縮尺などにより変換した値となる。このように表した座標が一直線上に並ぶことを利用した共線条件式(
図2)を、最小二乗法などの収束演算により、内部定数を求めることができる。
なお、式中のa
11〜a
33は光学カメラの各軸回りの回転角度を表す回転行列(カメラの姿勢)を表わしている。
【0025】
求めた光学カメラの内部定数を用い、各カメラの相対位置及び姿勢を求める。ここで、必要となる全てのカメラに撮影可能な位置に較正体38を固定配置する。全てのカメラで撮影して得た計測点45の二次元座標を用い、共線条件式(
図2)を用いて、各カメラの位置・姿勢を収束演算する。
なお、カメラが2台の場合、較正体38上の既知の計測点45は、少なくとも3点は必要になり、収束演算の収束状況により適宜キャリブレーション計測点を増やす。
【0026】
表面計測器35としてレーザスキャナ(図示略)の較正方法も、上述した光学カメラ35の場合と同様に、照射領域の座標系(X−Y−Z)における座標値が既知である計測点45を有する較正体38を用いて行われる。
なお較正体38を実測することにより、表面計測器35の座標系を照射領域の座標系(X−Y−Z)に置換する較正方法について説明したが、このように較正体38を実測する以外に設計仕様データから座標系を置換する較正を行うこともできる。
【0027】
図3に示すように、治療部位が頭部である場合、患者の特徴点41として右外眼角、左外眼角、鼻尖部を頭部の表面像11から識別することができる。その他に鼻根部、外耳なども特徴点41として設定することができる。
第1識別部12(
図1)は、表面像11に含まれるこれら特徴点41を自動的に識別する場合がある。またその他に、医療従事者が操作設定部17で、モニタ(図示略)に映し出された表面像11に含まれる特徴点41の位置をカーソル操作等で指定して、手動設定する場合もある。
【0028】
表面像11から識別される特徴点41は、表面計測器35の座標系で表されている。
そこで第1演算部13は、この表面計測器35の座標系で表された特徴点41の座標値を入力し、較正定数Bに基づいて、照射領域の座標系(X−Y−Z)の第1特徴点座標P(P
1,P
2,P
3)に置換する演算をし、出力する。
【0029】
図3に示すように、マーカ42は、患者32の表面に付するものである。
このマーカ42は、後述するように、ベッド33上の患者32の姿勢(表面像11の配置)が、治療計画で決定した姿勢(三次元像21の配置)に一致するように、ポインタ44をその上面に投影させるターゲットとしての役割を果たす。
【0030】
表面計測器35が光学カメラである場合、マーカ42として、色付きの球状物体や色付きの矩形・円形形状シール等を適用する。これにより、患者32の体位が変化しても光学カメラの写り方に及ぼす影響が少ない効果が得られる。
一方、表面計測器35がレーザスキャナの場合には、レーザ光等の波長を反射しやすい反射材から成る球状物体や矩形・円形シール等を、マーカ42として適用する。
【0031】
マーカ検出部14(
図1)は、表面像11に付されたマーカ42を自動的に識別する場合がある。またその他に、医療従事者が操作設定部17で、モニタ(図示略)に映し出された表面像11に含まれるマーカ42の位置をカーソル操作等で指定して、手動設定する場合もある。
【0032】
表面像11から識別されるマーカ42は、表面計測器35の座標系で表されている。
そこでマーカ座標演算部15は、この表面計測器35の座標系で表されたマーカ42の座標値を入力し、較正定数Bに基づいて、照射領域の座標系(X−Y−Z)のマーカ座標Q(Q
1,Q
2,Q
3)に置換する演算をし、出力する。
【0033】
このようにして演算された第1特徴点座標P(P
1,P
2,P
3)及びマーカ座標Q(Q
1,Q
2,Q
3)の相対位置関係(
図3参照)は、照射領域の座標系(X−Y−Z)における表面像11の配置とは無関係に一定である。
そこで、変換パラメータ導出部16に、第1特徴点座標P及びマーカ座標Qを入力し、第1特徴点座標Pをマーカ座標Qに座標変換する変換パラメータWを導出する。
この変換パラメータWを用いることで、照射領域の座標系(X−Y−Z)の任意位置にある第1特徴点座標Pから、対応するマーカ座標Qを求めることができる。
このように導出された変換パラメータWは、マーカ42が同じ位置に付され同じシステムで同じ患者32に適用する場合に限り、次回以降の治療ビーム照射の際も使い回すことができる。
【0034】
三次元像21は、上述したように、治療計画の段階で、X線CT装置やMRI装置等の医用画像機器(モダリティ)により、治療ビームの照射を受ける姿勢と同じ姿勢で、患者32を三次元撮像したものである。同様に、位置情報24も、治療計画の段階で、照射領域の座標系(X−Y−Z)に、三次元像21をどのように位置させるかを規定する情報として、予め決定されている。
そして、この三次元像21及び位置情報24は、患者32がベッド33に固定されるのに先立って、患者の位置決め装置10に保持されている。
【0035】
図3に示すように、三次元像21の特徴点43は、表面計測器35で計測した表面像11の特徴点41に対応するものが識別される。
第2識別部22(
図1)は、三次元像21に含まれるこれら特徴点43を自動的に識別する場合がある。またその他に、医療従事者が操作設定部17で、モニタ(図示略)に映し出された三次元像21に含まれる特徴点43の位置をカーソル操作等で指定して、手動設定する場合もある。
【0036】
三次元像21から識別される特徴点43は、これを撮像した医用画像機器の座標系で表されている。
そこで第2演算部23は、この医用画像機器の座標系で表された特徴点43の座標値を入力し、位置情報24に基づいて、照射領域の座標系(X−Y−Z)の第2特徴点座標R(R
1,R
2,R
3)に置換する演算をし、出力する。
【0037】
この三次元像21からは、表面像11から検出されたマーカ42に対応する位置(目標座標S)を、直接的に導くことはできない。しかし、第2特徴点座標R及び目標座標Sの相対位置関係は、三次元像21の配置を規定した位置情報24とは無関係に、照射領域の座標系(X−Y−Z)において一定である。
そこで、目標座標変換部25に、第2特徴点座標R及び変換パラメータWを入力し、第2特徴点座標Rを目標座標Sに座標変換する。
【0038】
プロジェクタ36は、治療ビームの照射領域31に向かってポインタの光線44aを投影するものである。そしてこの光線44aが患者の表面に入射した点に、ポインタ44が投影される。すなわち、患者32の体表面が、プロジェクタ36が投影するポインタ44のスクリーンとなる。
そのようなプロジェクタ36は、可視光又はレーザ光の出力光源や、ポインタ44の投影サイズ及び焦点を調整する光学レンズ等を備えたものであり、一般的な光学プロジェクタやレーザマーキング等の機器を採用することができる。
【0039】
ポインタ44は、円形、十字等の形状をとる他に、患者患部周辺の体表モデルを投影させることとしても良い。
なおポインタ投影制御部26も、上述した較正部27と同様の較正を実施することにより、照射領域の座標系(X−Y−Z)において指定された座標値に、ポインタの光線44aが正確に投影されるように調整が行われる。
またポインタ投影制御部26の較正は、システム構築時、システム修理や交換時にプロジェクタ36の位置関係が変わった場合に実施すれば良く、患者32が変わるたびに実施する必要はない。
【0040】
ポインタ投影制御部26は、目標座標S(S
1,S
2,S
3)を通過するようにポインタの光線44aを制御するために、マーカ42が目標座標Sに位置していれば、ポインタ44はマーカ42に投影されることになる。
そして、マーカ42が目標座標Sからずれて位置している場合は、ポインタ44はマーカ42以外の患者の表面に投影されることになる。
【0041】
画像出力部28は、患者32のリアルタイムの表面像11をモニタ37に表示させている。治療室30に固定されたベッド33に横臥している患者32は、モニタ37に表示されている表面像11を観察しながら、自身で体を動かして位置合わせすることができる。
なお、医療従事者がベッド33に付いて、横臥している患者32の位置合わせをする場合は、ポインタ44及びマーカ42を直接目視することができるので、モニタ37を観察する必要はない。
【0042】
全てのポインタ44が、対応するマーカ42に一致して投影された状態は、位置合わせが完了していることを表わしている。即ち、照射領域の座標系(X−Y−Z)における患者の姿勢(表面像11の配置)と治療計画で決定した患者の姿勢(三次元像21の配置)とが一致した状態を示している。
よって、この状態で、ビーム照射部34の照射制御部29に指令を送れば、患者32の患部範囲に治療ビームが集中的に照射され、患部細胞を死滅させることができる。
【0043】
(第2実施形態)
図4に示すように、第2実施形態に係る患者の位置決め装置10Bは、照射領域の座標系(X−Y−Z)において、マーカ42の座標Q(Q
1,Q
2,Q
3)を目標座標S(S
1,S
2,S
3)(
図3)に移動させる移動ベクトルTを計算する移動ベクトル計算部51をさらに備えている。なお、
図4において
図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0044】
そしてポインタ投影制御部26は、この移動ベクトルTの方向又は大きさに関する情報(矢印46(46
1,46
2,46
3))を、対応するポインタ44とともに投影させる。
このように矢印46(46
1,46
2,46
3)が表示されることにより、患者を動かす方向を視覚的に認識することができ、患者32の位置合わせを効率的に行える。
【0045】
閾値判定部52は、移動ベクトルTが閾値に対して大きいか小さいかを判定するものである。そして、ポインタ投影制御部26は、この判定結果に関する情報(色情報)を、対応するポインタ44とともに投影する。
このように判定結果に関する情報が投影されることにより、投影されたポインタ44がマーカ42に一致しているか否かを視覚的に認識することができ、患者32の位置合わせを効率的に行える。
【0046】
なおポインタ投影制御部26が、ポインタ44とともに投影するその他の情報として、照射領域の座標系(X−Y−Z)におけるマーカ座標Qや、患者位置決めのずれ量を表わす移動ベクトルTの大きさを数値で示したり、このずれ量に応じた大きさの図形(例えば、矢印、円形、クロス、矩形等を表わしたりすることが考えられる。
【0047】
(第3実施形態)
図5に示すように、第3実施形態に係る患者の位置決め装置10Cは、治療ビームの照射領域31において、患者32を載置するベッド33を、移動ベクトルTに基づき移動させるベッド移動制御部53をさらに備えている。このベッド移動制御部53は、ベッド33を、照射領域の座標系(X−Y−Z)の並進三軸及び回転三軸の合計六軸のうち、少なくとも一軸を動かすことができるものである。
なお、
図5において
図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
【0048】
このように任意構成であるベッド移動制御部53が備わることにより、患者32をベッド33に動かないように固定して、ベッド33を動かすことにより、患者の位置決めを行うことができる。
【0049】
(第4実施形態)
図6に示すように、第4実施形態に係る患者の位置決め装置10Dは、患者32に治療ビームを照射する治療室30とは別個に設けられた、医療従事者が待機する監視室50に、患者32を撮影した画像をリアルタイムに表示するモニタ37を配置している。
さらにこの監視室50には、患者32と医療従事者とが相互に音声コミュニケーションを図る音声送受信器54が設けられている。
なお、
図6において
図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
これにより、患者32と医療従事者とが協同して患者の位置決めを効率的に実施することができる。
【0050】
さらに第4実施形態に係る患者の位置決め装置10Dは、機能部の図示を省略するが次のような機能を実現する構成要素を備えている。
位置決め過程において、プロジェクタ36から投射されるポインタ44が患者の眼に入る虞がある。そこで、患者の瞼の変化に連動して、目を開いているときはプロジェクタ36の投射をOFF、閉じているときは投影をONとする機能を備える。
その他に、呼吸に同期してマーカ42が変位するような場合は、このプロジェクタ36の投射のON/OFF機能を、呼吸に連動させることもできる。
【0051】
図6のフローチャートに基づいて実施形態に係る患者の位置決め方法及び患者の位置決めプログラムについて説明する(適宜、
図1,
図3参照)。
まず、治療計画の工程において、X線CT装置やMRI装置等の医用画像機器で患者の三次元像21を撮像する(S11)。そして、この三次元像21から、患者体内におけるガン等の患部範囲を特定する(S12)。
そして、この患部範囲に照射する治療ビームの方向・強度等の諸特性を決定する(S13)。さらに、治療ビームの照射領域31における三次元像21の位置情報24を決定する(S14 計画工程 END)。
【0052】
次に照射ビームによる治療工程において、治療計画の工程において撮像した三次元像21及び決定された位置情報24を患者の位置決め装置10において保持する(S15)。
そして、この三次元像21に含まれる患者の特徴点43を識別する(S16)。さらに、この三次元像21から識別された特徴点43の、照射領域の座標系における第2特徴点座標Rを、位置情報24に基づいて演算する(S17)。なお、ステップS15からS17の工程は、ここでは治療工程で実施することとしたが、治療計画の工程で予め実施しておき、演算結果を取得するようにしても良い。
【0053】
次に、患者32は、マーカ42を体表面に貼付したうえで、治療ビームの照射領域31に配置される(S18)。そして、表面計測器35によって患者32の表面形状を示す表面像11が計測される(S19)。さらにこの表面像11に含まれる患者の特徴点41が識別される(S20)。そして、表面像11から識別された特徴点41の、照射領域の座標系(X−Y−Z)における第1特徴点座標Pが、演算される(S21)。
【0054】
次に患者32に付したマーカ42を表面像11から検出する(S22)。そして、検出されたマーカ42の、照射領域の座標系(X−Y−Z)におけるマーカ座標Qを、演算する(S23)。さらに、第1特徴点座標Pをマーカ座標Qに座標変換する変換パラメータWを導出する(S24)。
【0055】
次に、変換パラメータWにより第2特徴点座標Rを目標座標Sに変換する(S25)。そして、にプロジェクタ36を制御して目標座標Sに向けてポインタ44を投影する(S26)。このときに、投影したポインタ44がマーカ42に一致していなければ(S27 No)、患者32の姿勢を調整してポインタ44がマーカ42に一致するようにする(S27 Yes)。
これにより、治療ビームの照射領域31に配置された患者32が正確に位置決めされたことになるので、治療ビームが照射される(S29 END)。
【0056】
以上述べた少なくともひとつの実施形態の患者の位置決め装置によれば、プロジェクタから投影されたポインタが患者に付したマーカに一致するように患者の姿勢を調整ことで、治療ビームの照射領域における患者の位置決めを、正確に短時間で行うことができる。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
また、患者の位置決め装置の構成要素は、コンピュータのプロセッサで実現することも可能であり、患者の位置決めプログラムにより動作させることが可能である。
【0058】
以上説明した患者の位置決め装置は、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスやキーボードなどの入力装置と、通信I/Fとを、備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。
【0059】
また患者の位置決め装置で実行されるプログラムは、ROM等に予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、CD−R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供するようにしてもよい。