(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者等は、本発明の(a)成分を含有する液体洗浄剤組成物が、タンパク質と脂質の複合汚れに対する洗浄力に優れるものの、高温時の保存安定性が低下すること、及び温度により液体洗浄剤組成物が容器に充填された際の吐出量が大きく変化してしまう課題があることを見出した。
そこで本発明者等は、(a)成分を含有する液体洗浄剤組成物中に、本発明の(b)成分である特定のスルホン酸又はカルボン酸化合物と(c)増粘剤とを含有させることで、単に増粘させるだけでなく、低温(5℃)と高温(40℃)との粘度差を少なくすることができ、これにより前記温度間における前記吐出量の変動を少なくし、使用時の利便性を高めることができると共に、高温(50℃)での保存安定性も向上させることができることを見出した。
【0010】
本発明の(a)成分は、下記一般式(a1)で表される陰イオン性界面活性剤である。
R
1−O−(PO)
m1−SO
3−M
1 (a1)
〔式中、R
1は、炭素数10のアルキル基又はアルケニル基を示し、POはプロピレンオキシ基を示し、m1はPOの平均付加モル数を示し、0以上1.5以下の数である。M
1は水素原子又は陽イオンを示す。〕
【0011】
上記一般式(a1)において、R
1は、洗浄力の観点から、炭素数10のアルキル基又はアルケニル基であり、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。R
1は、好ましくは直鎖の炭素数10のアルキル基である。
m1はPOの平均付加モル数を示し、0以上であり、洗浄力及び抑泡性の観点から、1.5以下、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.7以下、更に好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.3以下、より更に好ましくは0.1以下である。また、m1が0であることも好ましい。
M
1は、水素原子又は陽イオンであり、塩を形成する陽イオンとして、例えば、アルカリ金属イオン、アルカノールアンモニウムイオン、アンモニウムイオン等が挙げられる。アルカリ金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンが挙げられ、アルカノールアンモニウムイオンとしては、モノエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン等が挙げられる。これらの中では、ナトリウムイオン又はカリウムイオンが好ましく、ナトリウムイオンがより好ましい。
【0012】
(a)成分は異なる2種以上を用いてもよい。
【0013】
尚、前記一般式(a1)で表される化合物は、R
1O−(PO)
m1Hで表される原料アルコールを硫酸化することで得られるが、本発明を損なわない限り、R
1O−(PO)
m1Hに、エチレンオキシドをわずかに付加した原料アルコールを用いてもよい。
【0014】
本発明の(b)成分は、芳香族スルホン酸、芳香族カルボン酸及びそれらの塩から選ばれる1種以上である。
【0015】
(b)成分としては、吐出安定性及び高温安定性の観点から、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、スルホ安息香酸、安息香酸、スルホフタル酸、ナフタレンスルホン酸、及びこれら塩から選ばれる1種以上が好ましく、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、安息香酸、及びこれらの塩から選ばれる1種以上がより好ましい。塩は、好ましくはナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、並びにモノエタノールアミン塩等のアルカノールアンモニウム塩から選ばれる1種以上であり、より好ましくはカリウム塩及びナトリウム塩から選ばれる1種以上である。
【0016】
(b)成分は、下記一般式(b1)で表される芳香族スルホン酸又はその塩であることが好ましい。
【化1】
【0017】
[式中、X
1及びX
2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基若しくは炭素数2以上3以下のアルケニル基を示す。M
2は水素原子又は陽イオンを示す。]
【0018】
上記一般式(c1)において、X
1及びX
2は、吐出安定性及び高温安定性の観点から、好ましくはX
1がメチル基又はイソプロピル基、X
2がメチル基又は水素原子であり、より好ましくはX
1がメチル基、X
2がメチル基又は水素原子である。M
2は、高温安定性の観点から、好ましくは水素原子、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン等のアルカノールアンモニウムイオンである。
【0019】
本発明の(c)成分は、増粘剤[以下、(c)成分という]である。
【0020】
(c)成分としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、グアーガム及びローカストビーンガム等の非イオン性多糖類;キサンタンガム、カラギーナン及びジェランガム等のアニオン性多糖類等の天然高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸系高分子等の合成系高分子から選ばれる1種以上が挙げられ、(a)成分の配合性に優れる観点、低温安定性の観点から、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸系高分子等の合成系高分子から選ばれる1種以上が好ましく、ポリアクリル酸系高分子から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0021】
増粘剤の粘度は、水酸化ナトリウムでpH7.0に調整した増粘剤1質量%水溶液において、20℃にてブルックフィールド型粘度計(測定粘度に応じて、ローターNo.3又はローターNo.4、回転数30r/m)で測定した粘度が、好ましくは1000mPa・s以上、より好ましくは3000mPa・s以上、更に好ましくは5000mPa・s以上、より更に好ましくは10000mPa・s以上、そして、好ましくは200,000mPa・s以下、より好ましくは100,000mPa・s以下、更に好ましくは70,000mPa・s以下、より更に好ましくは50,000mPa・s以下の高分子化合物である。
【0022】
ポリアクリル酸系高分子は、(メタ)アクリル酸[メタクリル酸及び/又はアクリル酸の意味である。]由来のモノマー構成単位を主とする高分子重合体である。
【0023】
ポリアクリル酸系高分子としては、架橋(メタ)アクリル酸系重合体[以下(c1)という]、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体[以下(c2)という]、から選ばれる1種以上を用いることが好ましく、吐出安定性及び高温安定性の観点から、(c1)がより好ましい。なお、(c1)は、カルボキシビニルポリマーの1種である。
【0024】
(c1)は、カルボキシル基を持つ酸性高分子化合物が好ましく、主たる構成モノマーがアクリル酸であるポリマーであり、架橋剤としてモル比でアクリル酸100に対して0.1未満の(メタ)アクリル酸エステル(ポリオールにより2置換以上でエステル化されているもの)を含むものが好ましく、通常、化粧料や医薬外用剤で使用されるものを限定なく使用することができる。ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン、その他各種糖類などを挙げることができる。中でも(c1)は、アクリル酸単独重合体を架橋したものが好ましい。
【0025】
(c)成分は、例えば、ノベオン社(NoveonInc.)製のカーボポール980、カーボポール981、住友精化株式会社製のアクペックHV701EDR、HV501、HV501E、HV505E、DSP五協フード&ケミカル社製のケルデント等の市販品を用いることができる。これらは、2種以上を併用することもできる。
【0026】
(c2)の構成単位である(メタ)アクリル酸エステル〔アクリル酸エステル及び又はメタクリル酸エステルの意味である〕のエステルを構成する炭化水素基は、好ましくはアルキル基であり、その炭素数は、好ましくは8以上、より好ましくは10以上、そして、好ましくは30以下、より好ましくは22以下である。また、(c2)の共重合体は、炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイド(以下、AOという)に由来する構成単位を含んでいてもよい。
また、(c2)の共重合体中の(メタ)アクリル酸エステルからのモノマー構成単位の比率は、モル比で(メタ)アクリル酸100に対して(メタ)アクリル酸エステルを、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.5以上、そして、好ましくは10以下、より好ましくは5以下である。
なお、(c2)は、(メタ)アクリル酸重合体を後からエステル化したものを含むものとする。
【0027】
(c2)は、例えば、ノベオン社(NoveonInc.)製のカーボポールETD2020、住友精化株式会社製アクペックHV501ER等の市販品を用いることができる。これらは、2種以上を併用することもできる。
【0028】
(c1)及び(c2)の重量平均分子量は、吐出安定性及び高温安定性の観点から、好ましくは50万以上、そして、溶解性の観点から、好ましくは1000万以下である。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミテーションクロマトグラフィーでポリスチレンを標準物質として求めることができる
【0029】
本発明の食器用液体洗浄剤組成物は、低温安定性の観点から、下記一般式(d1)で表される化合物(以下(d)成分という)を含有又は配合することが好適である。
【0031】
[式中、R
2、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上3以下のアルキル基又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基を示し、少なくとも1つは炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基である。]
【0032】
上記一般式(d1)において、R
2、R
3及びR
4は、低温安定性の観点から、好ましくはR
2が炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基、R
3及びR
4が水素原子又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基であり、より好ましくはR
2が炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基、R
3が水素原子又は炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基、R
4が水素原子であり、更に好ましくはR
2が炭素数1以上3以下のヒドロキシアルキル基、R
3及びR
4が水素原子であり、より更に好ましくはR
2がヒドロキシエチル基、R
3及びR
4が、水素原子である。
【0033】
具体的な(d)成分としては、低温安定性の観点から、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンから選ばれる1種以上がより好ましく、モノエタノールアミンが更に好ましい。
尚、(d)成分は、前述の一般式(a1)中のM
1、一般式(b1)中のM
2、あるいは後述する一般式(g1)中のM
3として含有又は配合してもよく、前述の(a)成分と(b)成分と(c)成分とを含有した液体洗浄剤組成物に、(d)成分を添加して含有又は配合してもよい。その場合、(d)成分はpH調整剤として用いることもできる。
【0034】
<水>
本発明の食器用洗浄剤組成物は、水を含有する液体洗浄剤組成物である。上記成分を水に溶解、分散、乳化させた形態のいずれであってもよい。水は金属成分を除去したイオン交換水や蒸留水、あるいは次亜塩素酸を0.5ppm以上、10ppm以下程度溶解させた次亜塩素酸滅菌水などを使用することができる。水は組成物の残部であり、全体を100質量%とする量で含有される。
【0035】
<食器用液体洗浄剤組成物の組成等>
本発明の食器用液体洗浄剤組成物は、(a)成分を、洗浄力の観点から、1.5質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上、そして、抑泡性の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは12質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下、より更に好ましくは8質量%以下、より更に好ましくは6質量%以下含有する。なお、(a)成分の含有量(質量%)は、ナトリウム塩換算、すなわち、一般式(a1)中のM
1がナトリウムイオンである化合物換算の量に基づいて算出される。
【0036】
本発明の食器用液体洗浄剤組成物は、(b)成分を、吐出安定性及び高温安定性の観点から、好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、より更に好ましくは1質量%以上、より更に好ましくは1.5質量%以上、そして、低温安定性の観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは8質量%以下、より更に好ましくは6質量%以下、より更に好ましくは5質量%含有する。なお、(b)成分の含有量(質量%)は、酸換算の量に基づいて算出される。
【0037】
本発明の食器用液体洗浄剤組成物は、(b)成分と(a)成分の質量比(b)/(a)が、吐出安定性及び高温安定性の観点から、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上、そして、同様の観点から、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは3以下、より更に好ましくは2以下、より更に好ましくは1以下である。
【0038】
本発明の食器用液体洗浄剤組成物は、(c)成分を、吐出安定性及び高温安定性の観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、そして、同様の観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下含有する。
【0039】
本発明の食器用液体洗浄剤組成物は、(b)成分と(c)成分の質量比(b)/(c)が、吐出安定性及び高温安定性の観点から、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上、そして、同様の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは10以下、より更に好ましくは5以下、より更に好ましくは4以下である。
【0040】
本発明の食器用液体洗浄剤組成物は、(d)成分を、低温安定性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上、そして、低温安定性の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下含有又は配合する。
【0041】
本発明の食器用液体洗浄剤組成物の20℃におけるpHは、吐出安定性及び高温安定性の観点から、好ましくは5以上、より好ましくは6以上、そして、好ましくは11以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは9以下、さらに好ましくは8以下である。
【0042】
本発明の食器用液体洗浄剤組成物は、抑泡性の観点から、(e)成分として、ポリプロピレングリコール(以下(e)成分という)を含有することが好適である。
【0043】
(e)成分は、エクセノール(AGC製)、プレミノール(AGC製)等の市販のものを用いることができる。(e)成分の重量平均分子量は、抑泡性の観点から、好ましくは1500以上、より好ましくは2000以上、そして、溶解性の観点から、好ましくは6000以下、より好ましくは5000以下である。
なお(e)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーでポリスチレンを標準物質として求めることができる。
【0044】
本発明の食器用液体洗浄剤組成物は、(e)成分を、抑泡性の観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、そして、低温安定性の観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下含有する。
【0045】
本発明の食器用液体洗浄剤組成物は、保存安定性及び洗浄性の観点から(f)成分として非イオン性界面活性剤を含有することが好適である。
【0046】
非イオン性界面活性剤としては、(1)ポリオキシアルキレンモノアルキル又はアルケニルエーテル、(2)アルキルポリグリコシド(グリコシド型非イオン性界面活性剤)、(3)脂肪族アルカノールアミド、(4)ソルビタン系非イオン性界面活性剤、(5)アルキルモノグリセリルエーテル、(6)脂肪酸モノグリセライド、及び(7)蔗糖脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種以上が好ましく、2種以上を用いても良い。
【0047】
本発明の食器用液体洗浄剤組成物は、(f)成分を、保存安定性及び洗浄性の観点から、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、より更に好ましくは0.3質量%以上、そして、洗浄力及び抑泡性の観点から、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、より更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.7質量%以下含有する。
【0048】
本発明の洗浄剤組成物は、(g)成分として、下記一般式(g1)で表される陰イオン性界面活性剤を、洗浄力及び抑泡性の観点から、含有しないか、又は、含有しても、その含有量が限定されることが好ましい。
R
5−O−(PO)
m2−SO
3−M
3 (g1)
〔式中、R
5は、炭素数12以上14以下のアルキル基又はアルケニル基を示し、POはプロピレンオキシ基を示し、m2はPOの平均付加モル数を示し、0以上1.5以下の数である。M
3は水素原子又は陽イオンを示す。〕
【0049】
上記一般式(g2)において、R
5は、洗浄力及び抑泡性の観点から、炭素数12以上14以下のアルキル基又はアルケニル基であり、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。R
5は、好ましくは直鎖のアルキル基である。
【0050】
m2はPOの平均付加モル数を示し、0以上であり、洗浄力及び抑泡性の観点から、1.5以下、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.7以下、更に好ましくは0.5以下、より更に好ましくは0.3以下、より更に好ましくは0.1以下である。また、m2が0であることも好ましい。
【0051】
M
3は、水素原子又は陽イオンであり、塩を形成する陽イオンとして、例えば、アルカリ金属イオン、アルカノールアンモニウムイオン、アンモニウムイオン等が挙げられる。アルカリ金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンが挙げられ、アルカノールアンモニウムイオンとしては、モノエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン等が挙げられる。これらの中では、ナトリウムイオン又はカリウムイオンが好ましく、ナトリウムイオンがより好ましい。
【0052】
本発明の食器用液体洗浄剤組成物は、(g)成分を、洗浄力及び抑泡性の観点から、0質量%以上、そして、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.5質量%以下含有し、また、0質量%含有、即ち含有しないことがより更に好ましい。
なお、(g)成分の含有量(質量%)は、ナトリウム塩換算、すなわち、一般式(g2)中のM
3がナトリウムイオンである化合物換算の量に基づいて算出される。
【0053】
本発明の食器用液体洗浄剤組成物中の水の含有量は、好ましくは65質量%以上、より好ましくは68質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、そして、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは93質量%以下である。
【0054】
本発明の食器用液体洗浄剤組成物は、使用性を向上させる観点から、粘度が、20℃で、好ましくは100mPa・s以上、より好ましくは150mPa・s以上、更に好ましくは200mPa・s以上であり、そして、同様の観点から
、より好ましくは1300mPa・s以下、更に好ましくは1000mPa・s以下、更に好ましくは800mPa・s以下、より更に好ましくは600mPa・s以下、より更に好ましくは500mPa・s以下である。粘度は、実施例測定の方法による。
【0055】
本発明の食器用液体洗浄剤組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、溶剤、ハイドロトロープ剤、分散剤、粘度調整剤、香料、着色剤、酸化防止剤、防腐剤、抑泡剤、漂白剤、漂白活性化剤などの成分(ただし、(a)〜(g)成分に該当しないもの)を配合することができる。
【0056】
本発明の食器用液体洗浄剤組成物は、食器洗浄機用、更に自動食器洗浄機用、及び手洗い用の両方に用いることができ、食器洗浄機用液体洗浄剤組成物、更に自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物として好適である。更に業務用食器洗浄機による洗浄に好適に用いられる。なお、食器には、調理器具、洗浄器具などが含まれる。
また本発明の食器用液体洗浄剤組成物は、吐出安定性に優れるため、容器に充填された洗浄剤組成物を、手洗い用として一定量吐出させる場合や、食器洗浄機の洗浄液貯蔵タンクに一定量吐出させる場合に、使い勝手が良く、好適である。
食器洗浄機、更に業務用食器洗浄機による洗浄の際には、本発明の食器用液体洗浄剤組成物は、水と混合された洗浄液として用いられる。その際、該組成物は、供給装置によって食器洗浄機内部に一定量任意に移送され、適正な洗浄液の濃度が維持される。液体状の本発明の食器用液体洗浄剤組成物は、例えば、業務用食器洗浄機専用のチューブを該組成物が充填されたプラスチック等の容器の中に直接差し込み吸い上げられて供給される。その後、洗浄液は業務用食器洗浄機内部へ供給される。
【0057】
本発明の食器用液体洗浄剤組成物から調製された洗浄液は、経済性の観点から、通常、自動洗浄機に備わる収容タンクにおいて一定の濃度に維持されて調製されることが好ましい。
【0058】
本発明により、本発明の食器用液体洗浄剤組成物を水で320倍(質量比、以下同様)以上、770倍以下に希釈してなる自動洗浄機用洗浄液、及び該洗浄液を用いて自動洗浄機により食器を洗浄する洗浄方法が提供される。この洗浄方法では、本発明の食器用液体洗浄剤組成物を水で320倍以上、770倍以下に希釈して自動洗浄機用洗浄液を調製するステップ、及び該洗浄液を用いて食器洗浄機、更に自動食器洗浄機により食器を洗浄するステップを含んでよい。本発明の食器用液体洗浄剤組成物の使用時における希釈倍率は、好ましくは770倍(質量比、以下同様)以下、より好ましくは700倍以下、更に好ましくは600倍以下、更に好ましくは550倍以下、更に好ましくは530倍以下であり、そして、好ましくは320倍以上、より好ましくは400倍以上、更に好ましくは450倍以上、更に好ましくは470倍以上である。
【0059】
本発明の食器用液体洗浄剤組成物の使用時における洗浄液中の濃度は、経済性、洗浄性の観点から、好ましくは0.13質量%以上、より好ましくは0.14質量%以上、更に好ましくは0.17質量%以上、更に好ましくは0.18質量%以上、更に好ましくは0.19質量%以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは0.31質量%以下、より好ましくは0.25質量%以下、更に好ましくは0.22質量%以下、更に好ましくは0.21質量%以下である。
【0060】
また、洗浄時間は、洗浄性の観点から、好ましくは10秒以上、より好ましくは20秒以上、更に好ましくは30秒以上であり、そして、生産性及び経済性の観点から、好ましくは3分以下、より好ましくは2分以下、更に好ましくは1分以下である。
【0061】
洗浄液の洗浄温度は、生産性及び洗浄性の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上であり、そして、洗浄性の観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下である。
食器は洗浄された後、通常、同じ食器洗浄機、更に自動食器洗浄機にて速やかに、水、温水ないし熱水、例えば、60℃以上、80℃以下の熱水で5分以上、40分以下濯ぎが行われる。
【0062】
食器洗浄機では、通常、洗浄液はポンプで循環させて繰り返し使用される。
【0063】
本発明は、本発明の食器用液体洗浄剤組成物を容器に充填してなる食器用液体洗浄剤物品を提供する。前記容器としては、容器本体を変形させることにより該容器の吐出口から内容液である食器用液体洗浄剤組成物を所定量吐出させる定量吐出スクイズ容器を用いることが好ましい。
【0064】
以下、
図1を用いて本発明に用いることができる定量吐出スクイズ容器について説明する。
図1に示す定量吐出スクイズ容器10は、容器本体11、口首部12、胴部13、スクイズ操作部14、及び底部15を備える合成樹脂製の中空のボトル形状の容器である。
容器本体11の口首部12には、後述する着脱可能なキャップ部材(図示省略)が装着される。そして、スクイズ容器10には、内容液として、前記液体洗浄剤組成物を充填することができる。
【0065】
スクイズ容器10は、容器本体11の胴部13を把持して傾倒又は倒立させた状態で、スクイズ操作部14をスクイズ方向Xにスクイズ(圧搾)することにより容器本体11を変形させ、例えばキャップ部材に設けられた吐出口から液体洗浄剤組成物を吐出箇所に向けて所定量吐出させることができる。
本実施形態において容器本体11は、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、塩化ビニル等の公知の合成樹脂で製造することができ、例えばブロー成形することにより形成することができる。
【0066】
次に、容器本体11の口首部12に着脱可能なキャップ部材について、
図2,3を用いて説明する。
図2,3におけるキャップ部材20は、容器本体11の口首部12に取り付けて用いられるものであって、スクイズ操作部14のスクイズ変形(圧搾変形)により、吐出口24から前記液体洗浄剤組成物を吐出するための液流路を有する。なお、口首部12と、キャップ部材20とは、公知の各種の螺合手段や嵌合手段を介して着脱可能に装着される。
【0067】
キャップ部材20は、容器本体11の口首部12から吐出口24に至る液流路の少なくとも一部を構成する螺旋状流路25を有するものである。螺旋状流路25はキャップ部材20の吐出口24に向う筒状導出路26に設けられた螺旋羽根21によって形成されている。なお、螺旋羽根21は、中心軸部材22に一体形成されたプラスチック製の成形品である。
本実施形態において螺旋羽根21は、中心軸部材22の下端部に一体として設けられた支持棒23を、筒状導出路26の下端開口の周縁部に接合することにより配置される。なお、螺旋羽根21の周端面は、筒状導出路26の内周面に接触させた状態であることが好ましい。
【0068】
螺旋羽根21によって設けられた螺旋状流路25の底面部25aは、スクイズ容器10の正立状態で、螺旋羽根21の上端部から容器本体11の胴部13に向けて連続して傾斜する下り勾配を形成する。ここで、下り勾配とは、螺旋状流路25の底面部25aが全体として下り勾配になっていればよく、途中に水平な部分があってもよい。
本実施形態では、螺旋羽根21が中心軸部材22を中心に1周する形態を採用しているが、螺旋羽根21は中心軸部材22を中心に1周未満の形態であってもよく、1周以上の形態であってもよい。
本実施形態のキャップ部材20によれば、このように螺旋状流路25の底面部25aがスクイズ容器10の正立状態で下り勾配となっているため、スクイズ容器10をスクイズする前の状態において、内容液の漏出や液だれを効果的に回避できる。
【0069】
本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、容器本体の口首部から吐出口に至る液流路の少なくとも一部に設けられる螺旋状流路を形成するための部材は、前述の螺旋羽根に限定されることなく、その他の種々の部材を用いることができる。
【実施例】
【0070】
表1に示す食器用液体洗浄剤組成物を調製し、以下の項目について評価を行った。結果を表1に示す。表1の食器用液体洗浄剤組成物は、常法により室温(20℃)で調製した。即ち、適量のイオン交換水に(b)成分又は(b’)成分((b)成分の比較成分)を加え酸性の水溶液を作成し、当該水溶液に、(c)成分を添加し、ディスパ−(TKロボミクス:PRIMIX社製)を用いて3500rpmにて5分間、攪拌し、可溶化させ、更に(a)成分及び(e)成分をホモミキサー(TKロボミクス:PRIMIX社製)を用いて9500rpmで3分間撹拌させたのち、(d)成分を加えてpH(20℃)を調整した。
【0071】
<評価方法>
(1)タンパク質/脂質複合汚れの洗浄力
70℃に加熱した半熟卵黄0.1g(乾燥重量)を5cm×2.5cmのスライドガラスに塗り、1日乾燥させてタンパク質/脂質複合汚れが付着したスライドガラスを作製した。前記汚れが付着したスライドガラスは複数を作製した。表1に示す食器用液体洗浄剤組成物を、0.2質量%水溶液となるようにイオン交換水を用いて希釈し、洗浄液とした。この洗浄液と上記汚れが付着したスライドガラス3枚とを用いて、リーナッツ試験機(JIS K3362:2008 9.2)を用いた方法により洗浄試験を行った。洗浄時間は7分間、洗浄温度は40℃とした。洗浄後、下記式により洗浄率を各スライドガラスについて算出し、その平均値を各実施例と各比較例の結果とした。
洗浄率(%)=〔(洗浄前のスライドガラスの質量−洗浄後のスライドガラスの質量)/0.1〕×100
洗浄率(%)は、数値が高い方が洗浄力に優れていることを示す。
この評価において、洗浄率は、各実施例、各比較例ともに70%以上であった。
【0072】
(2)吐出安定性
(2−1)粘度測定
表1に示す食器用液体洗浄剤組成物をB型回転粘度計、No.3ローターを用いて、液温が5℃、20℃及び40℃での各食器用液体洗浄剤組成物の粘度をそれぞれ測定した。なお、回転数30rpmで2分間回転した後の値を測定値とし、表1に示した。粘度は、各温度での測定値の差が少ないほど、吐出安定性に優れていることを示している。
【0073】
(2−2)吐出量
図1に示す容器に対して
図2及び
図3に示すキャップ部材を装着した、定量吐出スクイズ容器を使用して吐出量の評価を行った。
該スクイズ容器に表1に示す食器用液体洗浄剤組成物を400g充填し、容器の吐出部を開口させた状態で容器を鉛直に反転させた際に吐出される量を測定した。この操作を5人の測定者がそれぞれ5回行い、平均値を本評価の吐出量とした。
液温が5℃、20℃及び40℃での各食器用液体洗浄剤組成物について、5人の測定者により、それぞれ5回吐出量を測定した後、各温度における平均値を算出し、その結果を表1に示した。次いで下記計算式に基づいて各食器用液体洗浄剤組成物の吐出量誤差を計算し、その結果を表1に示した。
吐出量誤差=[(40℃吐出量/20℃吐出量)−(5℃吐出量/20℃吐出量)]×100 [%])
吐出量誤差は、数値が小さい方が吐出安定性に優れていることを示し、この評価では、15%以下が好ましく、10%以下がより好ましく、8%以下が更に好ましい。
【0074】
(3)高温安定性
表1に示す食器用液体洗浄剤組成物30gをPS−No.6規格ガラス瓶に入れ、50℃で静置して20日間、各組成物の外観変化に関する経過観察を行った。目視で分離等の組成物の外観に変化が生じるまでの日数を記録し、表1に示した。表中の20日以上とは、保存安定性試験期間中、外観に変化がなく安定であったことを意味する。
【0075】
【表1】
【0076】
表中の成分は以下のものである。
(a)成分
・デシル硫酸ナトリウム:Fluorochem Ltd.製、一般式(a1)中、R
1が炭素数10の直鎖アルキル基、m1が0、M
1がナトリウムイオンである陰イオン性界面活性剤
・C10(PO)0.6AS:特開2009−035714号公報の実施例3において、原料アルコールを炭素数10に変更したことを除いて同様に製造した陰イオン性界面活性剤〔一般式(a1)中、炭素数10の直鎖アルキル基、m1が0.6、M
1がナトリウムである陰イオン性界面活性剤〕。即ち、アルキル鎖が炭素数10の天然アルコール1モルに、プロピレンオキシ基を平均0.6モル付加したのち、三酸化イオウにより硫酸化し、水酸化ナトリウム水溶液で中和して、該陰イオン性界面活性剤を得た。
【0077】
(b)成分
・m-キシレンスルホン酸:伊藤忠ケミカルフロンティア株式会社製
・p-トルエンスルホン酸:明友産業株式会社製
・p-クメンスルホン酸:テイカ株式会社製
・安息香酸:和光純薬工業株式会社製
【0078】
(b’)成分((b)成分の比較成分)
・クエン酸:扶桑化学工業株式会社製
・リンゴ酸:扶桑化学工業株式会社製
・塩酸:和光純薬工業株式会社製、1M水溶液
なお、表中の塩酸の量は、1M水溶液の含有量である。
【0079】
(c)成分
・増粘剤1:住友精化株式会社製、アクペックHV701EDR、架橋ポリアクリル酸、1質量%水溶液粘度37500mPa・s
・増粘剤2:住友精化株式会社製、アクペックHV501E、架橋ポリアクリル酸、1質量%水溶液粘度12500mPa・s
・増粘剤3:五協フード&ケミカル社製、ケルデント、キサンタンガム、1質量%水溶液粘度2800mPa・s
【0080】
なお、表中の(c)成分の含有量は有効分量である。
また、各(c)成分の粘度は、水酸化ナトリウムでpH7.0に調整した各(c)成分の1質量%水溶液を、20℃にてブルックフィールド型粘度計(ローターNo.3、回転数30r/m)で測定した値である。
【0081】
(d)成分
・モノエタノールアミン:株式会社日本触媒製
【0082】
(e)成分
・ポリプロピレングリコール:旭硝子株式会社製、エクセノール3020、重量平均分子量3000
【0083】
(e)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーでポリスチレンを標準物質として算出した値である。
【0084】
(考察)
実施例1と比較例1とを比較すると、(b’)成分である脂肪族有機カルボン酸と増粘剤とを用いた比較例1は、全体に増粘するものの、温度の違いによる粘度差が大きく、吐出安定性が低く、また、高温安定性にも劣ることが分かる。
実施例1〜11と比較例1〜6を比較すると、実施例1〜11は吐出安定性と高温安定性に優れていることが分かる。
これら実施例の中でも、実施例1〜3を比較すると、質量比(b)/(a)が、0.8である実施例2が、吐出安定性と高温安定性により優れていることが分かる。
また、実施例1,4,5を比較すると、質量比(b)/(c)が、4である実施例5が、吐出安定性と高温安定性により優れていることが分かる。