(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の基板処理装置の構成を模式的に示す断面図である。
【0010】
図1の基板処理装置は、基板保持回転部1と、流体供給部2と、ノズル移動部3と、制御部4とを備えている。
図1の基板処理装置は、基板(ウェハ)5を洗浄およびリンスするためや、その後に基板5を固化乾燥により乾燥させるために使用される。固化乾燥とは、洗浄液やリンス液で濡れた基板5を乾燥させる乾燥方法であって、洗浄液やリンス液を昇華性物質を含む溶液に置換した後に、昇華性物質を基板5上に析出させ、析出した昇華性物質を昇華や分解などにより除去することで、基板5を乾燥させる乾燥方法である。
【0011】
(1)基板保持回転部1
基板保持回転部1は、保持部11と、回転軸12と、駆動部13と、複数のチャックピン14と、カップ15とを備えている。
【0012】
保持部11は、基板5を複数のチャックピン14により水平に保持する。これらのチャックピン14は、保持部11の端部に互いに周方向に間隔を隔てて配置されている。これらのチャックピン14は、基板5の端面を把持することで基板5を水平に固定する。
【0013】
基板5の例は、シリコン基板などの半導体基板と、半導体基板上の被加工層とを備える被加工基板である。
図1は、基板1の表面(上面)Saや裏面(下面)Sbに平行で互いに垂直なX方向およびY方向と、基板1の表面Saや裏面Sbに垂直なZ方向とを示している。表面Saは、第1面の例である。裏面Sbは、第2面の例である。本明細書では、+Z方向を上方向として取り扱い、−Z方向を下方向として取り扱う。−Z方向は、重力方向と一致していてもよいし、重力方向と一致していなくてもよい。本実施形態の−Z方向は、重力方向とほぼ平行である。
【0014】
保持部11は、回転軸12の上端に回転軸12と同心円状に固定されており、回転軸12を中心に回転可能である。回転軸12は、モータなどの駆動部13に接続されている。駆動部13は、回転軸12を回転させることで、保持部11や基板5を回転させることができる。符号Lは、基板5、保持部11、回転軸12の回転中心を示し、符号Rは、基板5、保持部11、回転軸12の回転方向を示している。
【0015】
カップ15は、保持部11の周囲に保持部11と同心円状に配置されており、おおむね筒状の形状を有する。カップ15の上端は、チャックピン14の上端よりも高い位置にある。カップ15は、基板5上の液体が回転により周囲に飛散することを防止するために設けられている。本実施形態では、保持部11の周囲に複数のカップ15が配置されていてもよい。
【0016】
(2)流体供給部2
(2a)洗浄液
流体供給部2は、洗浄液ノズル21aと、洗浄液タンク22aと、洗浄液供給管23aと、洗浄液バルブ24aとを備えている。これらの構成要素21a〜24aは、洗浄液供給部の例である。
【0017】
洗浄液ノズル21aは、洗浄液を貯留する洗浄液タンク22aに洗浄液供給管23aを介して接続されている。洗浄液の例は、HF(フッ化水素)水溶液、SC1、SC2などの薬液である。洗浄液供給管23aには、洗浄液の流量を調整する洗浄液バルブ24aが設けられている。
【0018】
洗浄液ノズル21aは、洗浄液タンク22aからの洗浄液を基板5の表面Saに吐出する。洗浄液ノズル21aは、基板5から離間した待機位置と、基板5の表面Saの上方の供給位置との間を移動可能である。洗浄液は、洗浄対象の基板5の表面Saに供給され、基板5の表面Saを洗浄するために使用される。洗浄液ノズル21aは、基板5の表面Saの上方に固定されて設置されていてもよい。
【0019】
(2b)リンス液
流体供給部2はさらに、リンス液ノズル21bと、リンス液タンク22bと、リンス液供給管23bと、リンス液バルブ24bとを備えている。これらの構成要素21b〜24bは、リンス液供給部の例である。
【0020】
リンス液ノズル21bは、リンス液を貯留するリンス液タンク22bにリンス液供給管23bを介して接続されている。リンス液の例は、純水である。リンス液供給管23bには、リンス液の流量を調整するリンス液バルブ24bが設けられている。
【0021】
リンス液ノズル21bは、リンス液タンク22bからのリンス液を基板5の表面Saに吐出する。リンス液ノズル21bは、基板5から離間した待機位置と、基板5の表面Saの上方の供給位置との間を移動可能である。リンス液は、洗浄液が残る基板5の表面Saに供給され、基板5の表面Saをリンスするために使用される。リンス液ノズル21bは、基板5の表面Saの上方に固定されて設置されていてもよい。
【0022】
(2c)プリウェット液
流体供給部2はさらに、プリウェット液ノズル21cと、プリウェット液タンク22cと、プリウェット液供給管23cと、プリウェット液バルブ24cとを備えている。これらの構成要素21c〜24cは、第2塗布液供給部の例である。
【0023】
プリウェット液ノズル21cは、プリウェット液を貯留するプリウェット液タンク22cにプリウェット液供給管23cを介して接続されている。プリウェット液の例は、IPA(イソプロピルアルコール)である。プリウェット液供給管23cには、プリウェット液の流量を調整するプリウェット液バルブ24cが設けられている。プリウェット液は、リンス液や昇華性物質溶液と混合可能な液体であれば、IPA以外でもよい。
【0024】
プリウェット液ノズル21cは、プリウェット液タンク22cからのプリウェット液を基板5の表面Saに吐出する。プリウェット液ノズル21cは、基板5から離間した待機位置と、基板5の表面Saの上方の供給位置との間を移動可能である。プリウェット液は、リンス液が残る基板5の表面Saに供給され、リンス液と置換するために使用される。
【0025】
本実施形態の基板処理装置は、基板5を所定の回転数(第3回転数)で回転させつつ基板5にプリウェット液を供給することで、基板5の表面Saに遠心力によりプリウェット液を塗布する。本実施形態のプリウェット液は、基板5の中心部に吐出され、基板5の中心部から外周部へと遠心力により拡がっていく。
【0026】
(2d)昇華性物質溶液
流体供給部2はさらに、昇華性物質溶液ノズル21dと、昇華性物質溶液タンク22dと、昇華性物質溶液供給管23dと、昇華性物質溶液バルブ24dとを備えている。これらの構成要素21d〜24dは、第1塗布液供給部の例である。
【0027】
昇華性物質溶液ノズル21dは、昇華性物質溶液を貯留する昇華性物質溶液タンク22dに昇華性物質溶液供給管23dを介して接続されている。昇華性物質は、常温常圧で固体であって、常温での蒸気圧が1kPa以下の物質である。本実施形態の昇華性物質は、500以下の分子量を有している。昇華性物質溶液の例は、シクロヘキサンジカルボン酸などの溶液である。昇華性物質溶液供給管23dには、昇華性物質溶液の流量を調整する昇華性物質溶液バルブ24dが設けられている。
【0028】
昇華性物質溶液ノズル21dは、昇華性物質溶液タンク22dからの昇華性物質溶液を基板5の表面Saに吐出する。昇華性物質溶液ノズル21dは、基板5から離間した待機位置と、基板5の表面Saの上方の供給位置との間を移動可能である。昇華性物質溶液は、プリウェット液が残る基板5の表面Saに供給され、プリウェット液と置換するために使用される。
【0029】
本実施形態の基板処理装置は、基板5を所定の回転数(第1回転数)で回転させつつ基板5に昇華性物質溶液を供給することで、基板5の表面Saに遠心力により昇華性物質溶液を塗布する。本実施形態の昇華性物質溶液は、基板5の中心部に吐出され、基板5の中心部から外周部へと遠心力により拡がっていく。
【0030】
このように、本実施形態の基板処理装置は、リンス液をプリウェット液に置換し、プリウェット液を昇華性物質溶液に置換する。しかしながら、本実施形態の基板処理装置は、リンス液をダイレクトに昇華性物質溶液に置換してもよい。この場合、流体供給部2は、プリウェット液ノズル21c、プリウェット液タンク22c、プリウェット液供給管23c、およびプリウェット液バルブ24cを備えていなくてもよい。
【0031】
(2e)加熱液
流体供給部2はさらに、加熱液ノズル21eと、加熱液タンク22eと、加熱液供給管23eと、加熱液バルブ24eとを備えている。これらの構成要素21e〜24eは、加熱部の例である。
【0032】
加熱液ノズル21eは、加熱液を貯留する加熱液タンク22eに加熱液供給管23eを介して接続されている。加熱液の例は、所定の温度に加熱された水である。加熱液供給管23eには、加熱液の流量を調整する加熱液バルブ24eが設けられている。本実施形態の加熱液の温度は、プリウェット液の沸点よりも低く設定される。プリウェット液がIPA(沸点:78℃)の場合、加熱液の温度は例えば50℃〜75℃に設定される。また、リンス液をダイレクトに昇華性物質溶液に置換する場合には、本実施形態の加熱液の温度は、リンス液の沸点よりも低く設定される。
【0033】
加熱液ノズル21eは、加熱液タンク22eからの加熱液を基板5の裏面Sbに吐出する。これにより、基板5を裏面Sbから加熱することができる。加熱液ノズル21eは、基板5の裏面Sbの下方に配置されている。加熱液は、基板5の表面Saに昇華性物質溶液が残る状態で基板5の裏面Sbに供給され、昇華性物質溶液を加熱するために使用される。これにより、昇華性物質溶液から溶媒を揮発させて、基板5の表面Saに昇華性物質溶液の溶質(昇華性物質)を含有する塗布膜を形成することができる。
【0034】
本実施形態の基板処理装置は、基板5を所定の回転数(第2回転数)で回転させつつ基板5に加熱液を供給することで、昇華性物質を遠心力が作用する状態で析出させる。これにより、基板5の表面Saに膜厚均一性の高い塗布膜を形成することができる。本実施形態では、加熱液を供給する際の基板5の回転数(第2回転数)は、昇華性物質溶液を供給する際の基板5の回転数(第1回転数)や、プリウェット液を供給する際の基板5の回転数(第3回転数)よりも小さく設定される。これにより、基板5の加熱時の昇華性物質溶液の振り切り量を減らすことができ、塗布膜の膜厚を厚くすることができる。第2回転数は、例えば300rpm以下に設定される。
【0035】
なお、加熱液ノズル21eは、基板5の中心部に加熱液を吐出してもよいし、基板5の外周部に加熱液を吐出してもよい。また、加熱液ノズル21eは、基板5の裏面Sbに対して垂直に加熱液を吐出してもよいし、基板5の裏面Sbに対して斜めに加熱液を吐出してもよい。
【0036】
(3)ノズル移動部3
ノズル移動部3は、アーム部31と、回転軸32と、駆動部33とを備えている。
【0037】
洗浄液ノズル21a、リンス液ノズル21b、プリウェット液ノズル21c、および昇華性物質溶液ノズル21dは、アーム部31の一端に連結されている。回転軸32は、アーム部31の他端に連結されている。回転軸32は、モータなどの駆動部33に接続されている。駆動部33は、回転軸32を回転させることで、アーム部31を回転させることができる。
【0038】
ノズル移動部3は、アーム部31の回転により、洗浄液ノズル21a、リンス液ノズル21b、プリウェット液ノズル21c、および昇華性物質溶液ノズル21dを待機位置と供給位置との間で移動させることができる。ノズル移動部3は、これらのノズル21a〜21dを同時に移動させてもよいし、これらのノズル21a〜21dを個別に移動させてもよい。
【0039】
(4)制御部4
制御部4は、基板処理装置による基板5の処理を制御する。例えば、制御部4は、駆動部13の動作を制御することで、基板5の回転数を制御する。また、制御部4は、洗浄液バルブ24a、リンス液バルブ24b、プリウェット液バルブ24c、昇華性物質溶液バルブ24d、加熱液バルブ24eの開閉や開度を制御することで、洗浄液、リンス液、プリウェット液、昇華性物質溶液、加熱液の流通や流量を制御する。また、制御部4は、駆動部33の動作を制御することで、洗浄液ノズル21a、リンス液ノズル21b、プリウェット液ノズル21c、および昇華性物質溶液ノズル21dの位置を制御する。
【0040】
以上のように、本実施形態では、基板5の表面Saに昇華性物質溶液を供給した後に、基板5を所定の回転数で回転させつつ基板5を裏面Sbから加熱する。よって、本実施形態によれば、昇華性物質を遠心力が作用する状態で析出させることができ、基板5の表面Saに膜厚均一性の高い塗布膜を形成することができる。
【0041】
本実施形態の基板処理は、例えば次のような利点を有する。
【0042】
まず、本実施形態では基板5を回転させつつ基板5を加熱するため、昇華性物質溶液中に遠心力による対流と温度差によるマランゴニ対流とを発生させて、昇華性物質溶液を一様に濃縮することができる。これにより、塗布膜のムラの発生を抑制し、塗布膜の膜厚均一性を向上させることができる。
【0043】
また、もし基板5を表面Saからヒーター等により加熱すると、昇華性物質溶液の液膜の表面に膜が形成され、昇華性物質溶液が十分に加熱されない可能性がある。この場合、塗布膜が生乾きの状態になり、塗布膜が剥がれたり、塗布膜中にクラックが発生する可能性がある。一方、本実施形態では基板5を裏面Sbから加熱するため、塗布膜の生乾きを抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態では、基板5の加熱時の回転数を、プリウェット液や昇華性物質溶液の供給時の回転数と異なる値に設定する。具体的には、基板5の加熱時の回転数を、プリウェット液や昇華性物質溶液の供給時の回転数よりも小さく設定する。これにより、基板5の加熱時の昇華性物質溶液の振り切り量を減らすことができ、塗布膜の膜厚を厚くすることができる。
【0045】
このように、本実施形態によれば、基板5に塗布膜を良好な状態で形成することが可能となる。例えば、本実施形態によれば、膜厚が均一で、膜厚が厚く、十分に乾燥した塗布膜を形成することが可能となる。また、本実施形態によれば、これらの利点により、低粘度の塗布液や低分子物質の昇華性物質を用いても塗布膜を良好な状態で形成することが可能となる。
【0046】
本実施形態の基板処理装置は、基板5の表面Saに塗布膜を形成した後、昇華性物質を昇華させることで基板5から塗布膜を除去する。このようにして、本実施形態の固化乾燥が実施される。例えば、本実施形態の基板処理装置は、加熱液ノズル21eからの加熱液により基板5を裏面Sbから加熱することで、昇華性物質を昇華させる。この場合の加熱液ノズル21e等は、昇華部の例である。なお、昇華性物質は、加熱液ノズル21e等と異なる機器により昇華されてもよい。
【0047】
図2は、第1実施形態の基板処理装置の動作を示すタイムチャートである。
【0048】
グラフ(a)は、基板5の回転数の時間変化を表す。グラフ(b)〜(f)は、洗浄液、リンス液、プリウェット液、昇華性物質溶液、加熱液の供給タイミングを表す。これらのグラフの横軸は、時間を表す。
【0049】
まず、基板5を回転数R1で回転させつつ、基板5の表面Saに洗浄液を供給する(ステップS1)。その結果、洗浄液が基板5の中心部から外周部へと拡がり、基板5が洗浄液により洗浄される。ステップS1において、制御部4は、洗浄液ノズル21aを供給位置に移動し、基板5を回転数R1で回転させつつ洗浄液ノズル21aから基板5に洗浄液を吐出する。その結果、基板5の表面Saに洗浄液が付着する。
【0050】
次に、基板5を回転数R2で回転させつつ、基板5の表面Saにリンス液を供給する(ステップS2)。その結果、リンス液が基板5の中心部から外周部へと拡がり、基板5がリンス液によりリンスされる。ステップS2において、制御部4は、リンス液ノズル21bを供給位置に移動し、基板5を回転数R2で回転させつつリンス液ノズル21bから基板5にリンス液を吐出する。その結果、基板5上の洗浄液がリンス液に置換され、基板5の表面Saにリンス液が付着する。
【0051】
回転数R2は、回転数R1と同じ値でもよいし、回転数R1と異なる値でもよい。回転数R2は、洗浄液とリンス液の置換効率を考慮して任意に設定可能である。本実施形態の回転数R2は、回転数R1よりも大きく設定される。
【0052】
次に、基板5を回転数R3で回転させつつ、基板5の表面Saにプリウェット液を供給する(ステップS3)。その結果、プリウェット液が基板5の中心部から外周部へと拡がり、基板5にプリウェット液が塗布される。ステップS3において、制御部4は、プリウェット液ノズル21cを供給位置に移動し、基板5を回転数R3で回転させつつプリウェット液ノズル21cから基板5にプリウェット液を吐出する。その結果、基板5上のリンス液がプリウェット液に置換され、基板5の表面Saにプリウェット液が付着する。
【0053】
回転数R3は、回転数R2と同じ値でもよいし、回転数R2と異なる値でもよい。回転数R3は、リンス液とプリウェット液の置換効率を考慮して任意に設定可能である。本実施形態の回転数R3は、回転数R1、R2よりも小さく設定される。回転数R3は、第3回転数の例である。
【0054】
次に、基板5を回転数R4で回転させつつ、基板5の表面Saに昇華性物質溶液を供給する(ステップS4)。その結果、昇華性物質溶液が基板5の中心部から外周部へと拡がり、基板5に昇華性物質溶液が塗布される。ステップS4において、制御部4は、昇華性物質溶液ノズル21dを供給位置に移動し、基板5を回転数R4で回転させつつ昇華性物質溶液ノズル21dから基板5に昇華性物質溶液を吐出する。その結果、基板5上のプリウェット液が昇華性物質溶液に置換され、基板5の表面Saに昇華性物質溶液が付着する。
【0055】
回転数R4は、回転数R3と同じ値でもよいし、回転数R3と異なる値でもよい。回転数R4は、プリウェット液と昇華性物質溶液の置換効率を考慮して任意に設定可能である。本実施形態の回転数R4は、回転数R1と等しく、回転数R2よりも小さく、回転数R3よりも大きく設定される。回転数R4は、第1回転数の例である。
【0056】
なお、本実施形態のプリウェット液は、基板5の回転数がR3からR4に変化した後も吐出され続ける。そのため、回転数がR4である期間の一部において、本実施形態のプリウェット液は昇華性物質溶液と共に吐出され続ける。
【0057】
次に、基板5を回転数R5で回転させつつ、基板5の裏面Sbに加熱液を供給する(ステップS5)。その結果、昇華性物質溶液から溶媒が揮発され、基板5の表面Saに昇華性物質を含有する塗布膜が形成される。ステップS5において、制御部4は、基板5を回転数R5で回転させつつ、加熱液ノズル21eから基板5に加熱液を吐出する。その結果、基板5上の昇華性物質溶液が加熱され、基板5上に昇華性物質が析出する。
【0058】
本実施形態の回転数R5は、回転数R3、R4と異なる値に設定される。具体的には、本実施形態の回転数R5は、回転数R1〜R4よりも小さく設定される。回転数R5は、例えば300rpm以下である。これにより、基板5上の昇華性物質溶液が回転により周囲に飛散することを十分に抑制することが可能となる。回転数R5は、第2回転数の例である。
【0059】
なお、本実施形態の加熱液は、昇華性物質溶液が吐出されている間に吐出され始めることが望ましい。すなわち、加熱液の吐出期間は、昇華性物質溶液の吐出期間とオーバーラップさせることが望ましい。これにより、基板5が充分に加熱される前に昇華性物質が析出することを防止することができる。このように、本実施形態の加熱液は、昇華性物質溶液がすべて供給された後に供給され始めてもよいし、昇華性物質溶液の一部が供給された後に供給され始めてもよい。
【0060】
ステップS5での加熱液の温度は、昇華性物質溶液から溶媒を揮発させることが可能であれば、どのような値でもよい。ただし、加熱液の温度は、昇華性物質の融点より低いことが望ましい。理由は、塗布膜の形成中に昇華性物質が融解すると、昇華性物質の表面張力等により基板5の表面Saに形成されたパターンが崩壊するおそれがあるためである。また、加熱液の温度は、昇華性物質溶液の溶媒の沸点より低いことが望ましい。理由は、塗布膜の形成中に溶媒が沸騰して塗布膜の膜厚均一性を悪化させることを抑制するためである。また、加熱液の温度は、室温以上であることが望ましい。
【0061】
ステップS1〜S5をすべて行って塗布膜を形成する第1実験と、ステップS1〜S5を加熱液を用いずに行って塗布膜を形成する第2実験とを実施した。昇華性物質溶液の粘度は、2.4cPに設定した。加熱液の温度は、60℃に設定した。この場合、第2実験の塗布膜を光学顕微鏡で観察したところ、
図8(a)および
図8(b)に示すように、ベナードセルBが形成され、ベナードセルB同士の境界に塗布膜のない領域K1や、核Cの周辺に塗布膜のない領域K2が発生し、塗布膜のムラが発生した。
図8は、第1および第3実施形態の塗布膜の観察結果を模式的に示す平面図である。一方、第1実験の塗布膜を光学顕微鏡で観察したところ、塗布膜が基板5の表面Saの全面に形成され、塗布膜のムラはほとんど発生しなかった。
【0062】
本実施形態の基板処理装置は、ステップS5の後に基板5のベーク処理を実施してもよい。これにより、塗布膜中にわずかに残留している溶媒を除去することができる。ベーク処理は例えば、基板5を回転させずに静止させた状態で常圧加熱により行われる。一方、このような溶媒は、基板5の減圧乾燥により除去してもよい。
【0063】
本実施形態の基板5は例えば、2次元または3次元のNANDフラッシュメモリを備えていてもよいし、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の構造を備えていてもよい。本実施形態の基板処理は、表面Saに凹凸パターンを備える基板5の固化乾燥に適用することが望ましい。本実施形態によれば、アスペクト比の高い凹凸パターンを備える基板5に固化乾燥を適用する場合に、これらの凹凸パターンを厚い塗布膜で覆うことができ、基板5の固化乾燥を適切に行うことが可能となる。これにより、この基板5から製造される半導体装置の歩留まりを向上させることが可能となる。
【0064】
図3は、第1実施形態の基板処理装置の動作を説明するための断面図である。
【0065】
図3は、ステップS4を行う基板処理装置を示している。ステップS4において、制御部4は、昇華性物質溶液ノズル21dを供給位置に移動し、基板5を回転数R4で回転させつつ昇華性物質溶液ノズル21dから基板5に昇華性物質溶液を吐出する。
図3の供給位置は、基板5の回転中心軸L上に位置している。
【0066】
なお、本実施形態の制御部5は、ステップS4と同様に、ステップS1〜S3でも洗浄液ノズル21a、リンス液ノズル21b、プリウェット液ノズル21cを供給位置に移動する。この場合の供給位置は、
図3の位置と同じでもよいし、
図3の位置と異なっていてもよい。
【0067】
図4は、第1実施形態の基板処理方法を示す断面図である。この基板処理方法は、
図1の基板処理装置により実行される。
【0068】
まず、ステップS1〜S3の実行後に、基板5を回転数R4で回転させつつ、基板5の表面Saに昇華性物質溶液6を供給する(
図4(a))。その結果、基板5に昇華性物質溶液6が塗布され、基板5に設けられたパターン5aが昇華性物質溶液6で覆われる。基板5のパターン5aの例は、3次元メモリのメモリ構造である。
【0069】
次に、基板5を回転数R4と異なる回転数R5で回転させつつ、基板5の裏面Sbに加熱液7を供給する(
図4(b))。その結果、昇華性物質溶液6から溶媒が揮発され、基板5の表面Saに昇華性物質を含有する塗布膜8が形成される。本実施形態では、基板5のパターン5aが塗布膜8で完全に覆われる。
【0070】
次に、昇華性物質を昇華させることで、基板5から塗布膜8を除去する(
図4(c))。このようにして、本実施形態の固化乾燥が実施される。符号9は、昇華により生じた生成物を示す。昇華性物質は、加熱液ノズル21eからの加熱液により加熱されることで昇華されてもよいし、その他の方法により昇華されてもよい。
【0071】
図5は、第1実施形態とその比較例の基板処理方法を比較するための断面図である。
【0072】
図5(a)は、比較例の基板処理方法を示す。
図5(a)では、加熱液7を用いずにステップS5を行って塗布膜8を形成している。この場合、回転数R5が高速に設定され、基板5上の過剰な昇華性物質溶液6が遠心力により振り切られる。よって、塗布膜8の膜厚が薄くなってしまう。その結果、塗布膜8が不足する可能性や、基板5のパターン5aが塗布膜8で完全に覆われない可能性がある。
【0073】
図5(b)は、第1実施形態の基板処理方法を示す。
図5(b)では、加熱液7を用いてステップS5を行って塗布膜8を形成している。この場合、回転数R5を低速に設定することで、昇華性物質溶液6の振り切り量を減らすことができる。これにより、塗布膜8の膜厚を十分に厚くすることが可能となり、固化乾燥を適切に実施することが可能となる。さらには、昇華性物質溶液6中の対流Fにより、塗布膜8の膜厚均一性を向上させることが可能となる。
【0074】
以上のように、本実施形態では、基板5を第1回転数R4で回転させつつ基板5の表面Saに昇華性物質溶液を供給する。さらに、本実施形態では、基板5を第2回転数R5で回転させつつ基板5を裏面Sbから加熱することで、昇華性物質溶液から溶媒を揮発させて、基板5の表面Saに昇華性物質を含有する塗布膜を形成する。よって、本実施形態によれば、基板5に塗布膜を良好な状態で形成することが可能となる。
【0075】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態の基板処理装置の構成を模式的に示す断面図である。
図6では、
図1〜
図5に示す構成要素と同一または類似の構成要素には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0076】
図6の基板処理装置は、加熱液ノズル21eとして、第1〜第3加熱液ノズル21e1〜21e3を備え、加熱液供給管23eとして、第1〜第3加熱液供給管23e1〜23e3を備え、加熱液バルブ24eとして、第1〜第3加熱液バルブ24e1〜24e3を備えている。第1〜第3加熱液ノズル21e1〜21e3は、複数のノズルの例である。第1〜第3加熱液ノズル21e1〜21e3のうちの任意の2つは、第1および第2ノズルの例である。
【0077】
第1〜第3加熱液ノズル21e1〜21e3はそれぞれ、加熱液を貯留する加熱液タンク22eに第1〜第3加熱液供給管23e〜23e3を介して接続されている。第1〜第3加熱液供給管23e1〜23e3にはそれぞれ、加熱液の流量を調整する第1〜第3加熱液バルブ24e1〜24e3が設けられている。
【0078】
第1〜第3加熱液ノズル21e1〜21e3はそれぞれ、加熱液タンク22eからの加熱液を基板5の裏面Sbの第1〜第3吐出箇所P1〜P3に吐出する。第1〜第3吐出箇所P1〜P3と回転中心Lとの距離は互いに異なる。具体的には、第1吐出箇所P1は、回転中心Lに近い基板5の中心部に位置する。第3吐出箇所P3は、回転中心Lから遠い基板5の外周部に位置する。第2吐出箇所P2は、第1吐出箇所P1と第3吐出箇所P3との間に位置する。
【0079】
第1加熱液ノズル21e1からの加熱液、第2加熱液ノズル21e2からの加熱液、および第3加熱液ノズル21e3からの加熱液は、同じ温度でもよいし、異なる温度でもよい。本実施形態では、あるノズルと回転中心Lとの距離が遠くなるほど、そのノズルからの加熱液の温度を高く設定する。よって、第2加熱液ノズル21e2からの加熱液の温度は、第1加熱液ノズル21e1からの加熱液の温度よりも高く設定される。また、第3加熱液ノズル21e3からの加熱液の温度は、第2加熱液ノズル21e2からの加熱液の温度よりも高く設定される。
【0080】
なお、本実施形態の基板処理装置は、加熱液ノズル21eとして、第1〜第N加熱液ノズル21e1〜21eNを備えていてもよい(Nは2以上の整数)。Nの値は3以外でもよい。本実施形態によれば、第1〜第N加熱液ノズル21e1〜21eNからの加熱液により基板5を裏面Sbから加熱することで、基板5を効率的に加熱することができる。
【0081】
本実施形態の基板処理装置は、基板5を所定の回転数(第2回転数)で回転させつつ、第1〜第3加熱液ノズル21e1〜21e3からの加熱液を基板5に供給する。これにより、昇華性物質を遠心力が作用する状態で析出させ、基板5の表面Saに膜厚均一性の高い塗布膜を形成することができる。この際、第2加熱液ノズル21e2からの加熱液を、第1加熱液ノズル21e1からの加熱液よりも高温に設定し、第3加熱液ノズル21e3からの加熱液を、第2加熱液ノズル21e2からの加熱液よりも高温に設定することが望ましい。これにより、基板5の外周部の温度が基板5の中心部の温度よりも高くなるように基板5を加熱することができる。第2回転数は、例えば150rpm以下である。
【0082】
外周部の昇華性物質溶液は、中心部の昇華性物質溶液よりも強い遠心力を受けるため、中心部の昇華性物質溶液よりも高速で拡がっていく。そのため、外周部の昇華性物質溶液の厚さは中心部に比べて薄くなりやすく、その結果、外周部の塗布膜の厚さも中心部に比べて薄くなりやすい。そこで、ノズル21e2からの加熱液をノズル21e1からの加熱液よりも高温に設定し、ノズル21e3からの加熱液をノズル21e2からの加熱液よりも高温に設定することが考えられる。これにより、外周部の昇華性物質溶液から溶媒を揮発されやすくし、外周部の塗布膜が薄くなることを抑制することができる。
【0083】
本実施形態の基板処理は例えば、
図2のステップS1〜S5により実行可能である。この際、回転数R1、R2、R3、R4、R5は例えば、1000rpm、800rpm、500rpm、500rpm、100rpmに設定される。プリウェット液がIPAの場合、回転数R5は30〜150rpmに設定することが望ましく、加熱液の温度は30〜70℃に設定することが望ましい。ステップS5の加熱液を停止した後、基板5を高速で回転させて、基板5から加熱液を振り切ってもよい。この際の基板5の回転数は、例えば1000rpmである。なお、これらの回転数R1〜R5は、第1実施形態に適用してもよい。
【0084】
以上のように、本実施形態では、基板5の温度を基板5の回転中心Lからの距離に応じて制御する。よって、本実施形態によれば、塗布膜のムラをより効果的に抑制することが可能となる。
【0085】
(第3実施形態)
図7は、第3実施形態の基板処理装置の構成を模式的に示す断面図である。
図7では、
図1〜
図6に示す構成要素と同一または類似の構成要素には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0086】
図7の基板処理装置は、
図1に示す構成要素に加え、ガスノズル21fと、ガスタンク22fと、ガス供給管23fと、ガスバルブ24fと、MFC(Mass Flow Controller)25fとを備えている。これらの構成要素21f〜25fは、ガス供給部の例である。
【0087】
ガスノズル21fは、ガスを貯留するガスタンク22fにガス供給管23fを介して接続されている。ガスの例は、昇華性物質溶液と反応しない不活性ガスであり、例えば、希ガスや窒素(N
2)ガスである。ガス供給管23fには、ガスの流量を調整するガスバルブ24fおよびMFC25fが設けられている。これらの構成要素21f〜25fの動作は、制御部4により制御される。
【0088】
本実施形態のガスは、基板5の上方の蒸気濃度を制御するために使用される。この蒸気は、基板5上の昇華性物質溶液の溶媒から発生する。本実施形態のガスは、この蒸気濃度を制御することができれば、どのような方法で供給されてもよい。例えば、ガスノズル21fは、FFU(Fan Filter Unit)に置き換えてもよい。この場合、MFC25fは、FFUのファンの出力をモニタすることで代替してもよい。
【0089】
ガスノズル21fは、ガスタンク22fからのガスを基板5の表面Sa側に吐出する。ガスノズル21fは、基板5から離間した待機位置と、基板5の表面Saの上方の供給位置との間を移動可能である。本実施形態の供給位置は、基板5の回転中心軸L上に位置している。本実施形態のガスは、ステップS5にて基板5が回転されつつ加熱されている間に供給される。
【0090】
本実施形態では、ガスノズル21fからのガスにより基板5の表面Sa側の風速を制御する。理由は、基板5の上方の蒸気濃度を低下させて、基板5上の昇華性物質溶液から溶媒を揮発されやすくするためである。
【0091】
点Pは、基板5の表面Saから距離Dだけ離れた高さに位置し、基板5の回転中心軸Lの付近に位置している。本実施形態では、距離Dが20mmの場合の点Pでの風速が1.0m/s未満になるように、ガスノズル21fからガスを供給する。これにより、基板5の上方での昇華性物質溶液の溶媒蒸気濃度を所定濃度よりも低く抑えることができる。
【0092】
例えば、距離Dが20mmの場合の点Pでの風速を1.0m/s未満に設定すると、基板5の表面Sa付近での蒸気濃度を1200ppm未満に抑えることができる。距離Dが20mmの場合の点Pでの風速は、例えば0.3〜1.0m/sに設定される。
【0093】
加熱液を用いてステップS5を行って塗布膜を形成する第1実験と、加熱液を用いずにステップS5を行って塗布膜を形成する第2実験と、ガスノズル21fからのガスを用いてステップS5を行って塗布膜を形成する第3実験とを実施した。昇華性物質溶液の粘度は、2.4cPに設定した。加熱液の温度は、60℃に設定した。この場合、第1〜第3実験の塗布膜を光学顕微鏡で観察したところ、
図8(c)に示すように、第3実験ではベナードセルB同士の境界に塗布膜のない領域K3が第1実験に比べて縮小し、第3実験の塗布膜のムラが第1実験に比べて改善された。例えば、距離Dが20mmの場合の点Pでの風速を0.5m/sに設定すると、基板5の表面Sa付近での蒸気濃度が760ppmとなり、ベナードセルBの寸法を2μm以下に抑えることができた。
【0094】
しかしながら、基板5の表面Sa側の風速を速くし過ぎると、昇華性物質溶液からの溶媒の揮発量が多くなり過ぎる場合がある。この場合、基板5の表面Sa付近での蒸気濃度が逆に高くなり、ベナードセルBの寸法が大きくなる。例えば、距離Dが20mmの場合の点Pでの風速を1.0m/sに設定すると、基板5の表面Sa付近での蒸気濃度が2050ppmとなり、ベナードセルBの寸法が10μm以上に達した。さらには、ガスノズル21fからのガスが基板5上の昇華性物質溶液に直接接触し、別のモードの塗布膜のムラが発生した。すなわち、風乾による塗布膜のムラが発生した。そのため、本実施形態では、基板5の表面Sa側の風速が速くなり過ぎないように、距離Dが20mmの場合の点Pでの風速を1.0m/s未満に設定している。
【0095】
以上のように、本実施形態では、ガスノズル21fからのガスにより基板5の表面Sa側の風速を制御する。よって、本実施形態によれば、塗布膜のムラをより効果的に抑制することが可能となる。
【0096】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置および方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置および方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0097】
1:基板保持回転部、2:流体供給部、3:ノズル移動部、4:制御部、5:基板、
5a:パターン、6:昇華性物質溶液、7:加熱液、8:塗布膜、9:生成物、
11:保持部、12:回転軸、13:駆動部、14:チャックピン、15:カップ、
21a:洗浄液ノズル、21b:リンス液ノズル、21c:プリウェット液ノズル、
21d:昇華性物質溶液ノズル、21e:加熱液ノズル、21f:ガスノズル、
21e1、21e2、21e3:第1、第2、第3加熱液ノズル、
22a:洗浄液タンク、22b:リンス液タンク、22c:プリウェット液タンク、
22d:昇華性物質溶液タンク、22e:加熱液タンク、22f:ガスタンク、
23a:洗浄液供給管、23b:リンス液供給管、23c:プリウェット液供給管、
23d:昇華性物質溶液供給管、23e:加熱液供給管、23f:ガス供給管、
23e1、23e2、23e3:第1、第2、第3加熱液供給管、
24a:洗浄液バルブ、24b:リンス液バルブ、24c:プリウェット液バルブ、
24d:昇華性物質溶液バルブ、24e:加熱液バルブ、24f:ガスバルブ、
24e1、24e2、24e3:第1、第2、第3加熱液バルブ、25f:MFC、
31:アーム部、32:回転軸、33:駆動部