(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591282
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】レーザ超音波検査方法、接合方法、レーザ超音波検査装置、および接合装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/24 20060101AFI20191007BHJP
G01N 29/04 20060101ALI20191007BHJP
B23K 31/00 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
G01N29/24
G01N29/04
B23K31/00 L
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-248655(P2015-248655)
(22)【出願日】2015年12月21日
(65)【公開番号】特開2017-116285(P2017-116285A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星 岳志
(72)【発明者】
【氏名】山本 摂
(72)【発明者】
【氏名】渡部 和美
(72)【発明者】
【氏名】千星 淳
(72)【発明者】
【氏名】浅井 知
(72)【発明者】
【氏名】小川 剛史
(72)【発明者】
【氏名】藤田 善宏
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌弘
【審査官】
佐藤 仁美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−042298(JP,A)
【文献】
特許第5651533(JP,B2)
【文献】
特開2015−081858(JP,A)
【文献】
特開2012−006078(JP,A)
【文献】
特開2009−098031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と、前記第1部材とは異種の材料からなる第2部材との溶接部に送信レーザ光を照射して超音波を励起させる超音波励起工程と、
前記第1部材に照射した受信レーザ光を受光して前記超音波の第1受信信号を得る第1受信工程と、
前記第2部材に照射した受信レーザ光を受光して前記超音波の第2受信信号を得る第2受信工程と、
前記第1受信信号と、前記第2受信信号とから、前記溶接部の内部の欠陥を検出する信号解析工程と
を具備し、
前記第2受信工程は、前記第1受信工程の後で行う、
ことを特徴とするレーザ超音波検査方法。
【請求項2】
第1部材と、前記第1部材とは異種の材料からなる第2部材との溶接部に送信レーザ光を照射して超音波を励起させる超音波励起工程と、
前記第1部材に照射した受信レーザ光を受光して前記超音波の第1受信信号を得る第1受信工程と、
前記第2部材に照射した受信レーザ光を受光して前記超音波の第2受信信号を得る第2受信工程と、
前記第1受信信号と、前記第2受信信号とから、前記溶接部の内部の欠陥を検出する信号解析工程と
を具備し、
前記第1受信工程と前記第2受信工程を同時に行う、
ことを特徴とするレーザ超音波検査方法。
【請求項3】
第1部材と、前記第1部材とは異種の材料からなる第2部材との溶接部に送信レーザ光を照射して超音波を励起させる超音波励起工程と、
前記第1部材に照射した受信レーザ光を受光して前記超音波の第1受信信号を得る第1受信工程と、
前記第2部材に照射した受信レーザ光を受光して前記超音波の第2受信信号を得る第2受信工程と、
前記第1受信信号と、前記第2受信信号とから、前記溶接部の内部の欠陥を検出する信号解析工程と
を具備し、
前記信号解析工程では、前記第1受信信号及び前記第2受信信号の、信号強度及び信号雑音比のデータを比較して、前記溶接部の内部の欠陥のサイズ及び/又は前記溶接部の内部の欠陥の位置を求める、
ことを特徴とするレーザ超音波検査方法。
【請求項4】
第1部材と、前記第1部材とは異種の材料からなる第2部材とを溶接部において溶接する工程と、
前記溶接部に送信レーザ光を照射して超音波を励起させる超音波励起工程と、
前記第1部材に照射した受信レーザ光を受光して前記超音波の第1受信信号を得る第1受信工程と、
前記第2部材に照射した受信レーザ光を受光して前記超音波の第2受信信号を得る第2受信工程と、
前記第1受信信号と、前記第2受信信号とから、前記溶接部の内部の欠陥を検出する信号解析工程と
を具備し、
前記第2受信工程は、前記第1受信工程の後で行う、
ことを特徴とする接合方法。
【請求項5】
第1部材と、前記第1部材とは異種の材料からなる第2部材とを溶接部において溶接する工程と、
前記溶接部に送信レーザ光を照射して超音波を励起させる超音波励起工程と、
前記第1部材に照射した受信レーザ光を受光して前記超音波の第1受信信号を得る第1受信工程と、
前記第2部材に照射した受信レーザ光を受光して前記超音波の第2受信信号を得る第2受信工程と、
前記第1受信信号と、前記第2受信信号とから、前記溶接部の内部の欠陥を検出する信号解析工程と
を具備し、
前記第1受信工程と前記第2受信工程を同時に行う、
ことを特徴とする接合方法。
【請求項6】
第1部材と、前記第1部材とは異種の材料からなる第2部材とを溶接部において溶接する工程と、
前記溶接部に送信レーザ光を照射して超音波を励起させる超音波励起工程と、
前記第1部材に照射した受信レーザ光を受光して前記超音波の第1受信信号を得る第1受信工程と、
前記第2部材に照射した受信レーザ光を受光して前記超音波の第2受信信号を得る第2受信工程と、
前記第1受信信号と、前記第2受信信号とから、前記溶接部の内部の欠陥を検出する信号解析工程と
を具備し、
前記信号解析工程では、前記第1受信信号及び前記第2受信信号の、信号強度及び信号雑音比のデータを比較して、前記溶接部の内部の欠陥のサイズ及び/又は前記溶接部の内部の欠陥の位置を求める、
ことを特徴とする接合方法。
【請求項7】
第1部材と、前記第1部材とは異種の材料からなる第2部材との溶接部に送信レーザ光を照射して超音波を励起させる送信レーザ機構と、
前記第1部材及び前記第2部材に照射した受信レーザ光を受光する受信レーザ機構と、
前記受信レーザ機構によって受光された受信レーザ光を干渉計測し前記超音波の受信信号を得る受信干渉計と、
前記受信干渉計により得られた、前記第1部材からの第1受信信号と、前記第2部材からの第2受信信号の信号強度及び信号雑音比のデータを比較して、前記溶接部の内部の欠陥のサイズ及び/又は前記溶接部の内部の欠陥の位置を求める信号解析機構と、
を具備したことを特徴とするレーザ超音波検査装置。
【請求項8】
第1部材と、前記第1部材とは異種の材料からなる第2部材との溶接部に送信レーザ光を照射して超音波を励起させる送信レーザ機構と、
前記第1部材及び前記第2部材に照射した受信レーザ光を受光する受信レーザ機構と、
前記受信レーザ機構によって受光された受信レーザ光を干渉計測し前記超音波の受信信号を得る受信干渉計と、
前記受信干渉計により得られた、前記第1部材からの第1受信信号と、前記第2部材からの第2受信信号とから前記溶接部の内部の欠陥を検出する信号解析機構と、
を具備し、
前記受信レーザ機構は、前記第1部材に照射した前記受信レーザ光を受光する第1の位置と、前記第2部材に照射した前記受信レーザ光を受光する第2の位置の間で移動可能に構成されることを特徴とするレーザ超音波検査装置。
【請求項9】
第1部材と、前記第1部材とは異種の材料からなる第2部材との溶接部に送信レーザ光を照射して超音波を励起させる送信レーザ機構と、
前記第1部材及び前記第2部材に照射した受信レーザ光を受光する受信レーザ機構と、
前記受信レーザ機構によって受光された前記受信レーザ光を干渉計測し前記超音波の受信信号を得る受信干渉計と、
前記受信干渉計により得られた、前記第1部材からの第1受信信号と、前記第2部材からの第2受信信号とから前記溶接部の内部の欠陥を検出する信号解析機構と、
を具備し、
前記受信レーザ機構は、前記第1部材に照射した前記受信レーザ光を受光するための第1受信用光学機構と、前記第2部材に照射した前記受信レーザ光を受光するための第2受信用光学機構を備えることを特徴とするレーザ超音波検査装置。
【請求項10】
第1部材と、前記第1部材とは異種の材料からなる第2部材とを溶接部にて溶接する溶接装置と、
前記溶接部に送信レーザ光を照射して超音波を励起させる送信レーザ機構と、
前記第1部材及び前記第2部材に照射した受信レーザ光を受光する受信レーザ機構と、
前記受信レーザ機構によって受光された前記受信レーザ光を干渉計測し前記超音波の受信信号を得る受信干渉計と、
前記受信干渉計により得られた、前記第1部材からの第1受信信号と、前記第2部材からの第2受信信号の信号強度及び信号雑音比のデータを比較して、前記溶接部の内部の欠陥のサイズ及び/又は前記溶接部の内部の欠陥の位置を求める信号解析機構と、
を具備したことを特徴とする接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ超音波検査方法、接合方法、レーザ超音波検査装置、および接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、大型の金属構造物を、多層溶接により接合して製造する場合、溶接部に発生する欠陥を施工中に検出し、その場で補修することにより、施工後に欠陥を発見した場合に生じる後戻りを未然に防ぐことが可能となる。
【0003】
金属構造物を溶接により接合する際に、溶接部に発生する欠陥を施工中にモニタリングする方法として、高温の対象を非接触で検査することが可能なレーザ超音波法を適用することが考えられる。この方法では、対象に超音波を励起させるためのレーザ(送信レーザ)と、発生した超音波を計測するレーザ(受信レーザ)および干渉計を用いることで欠陥を検出する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5651533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高温環境下で使用される金属構造物の耐熱性を高めるために、溶接する母材、溶接金属にNi基合金を使用する場合がある。しかし、Ni基合金は組織中に柱状晶が生成する等、内部組織が不均一になりやすく、また結晶粒が存在すると、レーザの照射により励起された超音波が結晶粒の粒界において散乱され、最終的に得られる信号の強度が低下する。そのため、レーザ超音波法による欠陥の検出あるいは欠陥サイズの評価が困難になるという課題がある。
【0006】
また、金属構造物を溶接する母材として同一の組成の材料を用いる場合(共材溶接)と、例えば低合金鋼とNi基合金のように異なる材料を用いる場合(異材溶接)が考えられる。異材溶接を行う場合、超音波の伝搬特性がそれぞれの母材で異なる可能性がある。このため、送信レーザによって発生させた超音波を受信レーザで受信する際に、どちらの母材側で受信するかによって計測結果が異なり、欠陥検出性およびサイジング精度が低下する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記従来の事情に対処してなされたもので、異材溶接を行う際に、欠陥を確実に精度良く検出することのできるレーザ超音波検査方法、接合方法、レーザ超音波検査装置、および接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態に係るレーザ超音波検査方法の一態様は、第1部材と、前記第1部材とは異種の材料からなる第2部材との溶接部に送信レーザ光を照射して超音波を励起させる超音波励起工程と、前記第1部材に照射した受信レーザ光を受光して前記超音波の第1受信信号を得る第1受信工程と、前記第2部材に照射した受信レーザ光を受光して前記超音波の第2受信信号を得る第2受信工程と、前記第1受信信号と、前記第2受信信号とから、前記溶接部の内部の欠陥を検出する信号解析工程とを具備
し、前記第2受信工程は、前記第1受信工程の後で行う、ことを特徴とする。
本発明の実施形態に係るレーザ超音波検査方法の一態様は、第1部材と、前記第1部材とは異種の材料からなる第2部材との溶接部に送信レーザ光を照射して超音波を励起させる超音波励起工程と、前記第1部材に照射した受信レーザ光を受光して前記超音波の第1受信信号を得る第1受信工程と、前記第2部材に照射した受信レーザ光を受光して前記超音波の第2受信信号を得る第2受信工程と、前記第1受信信号と、前記第2受信信号とから、前記溶接部の内部の欠陥を検出する信号解析工程とを具備し、前記第1受信工程と前記第2受信工程を同時に行う、ことを特徴とする。
本発明の実施形態に係るレーザ超音波検査方法の一態様は、第1部材と、前記第1部材とは異種の材料からなる第2部材との溶接部に送信レーザ光を照射して超音波を励起させる超音波励起工程と、前記第1部材に照射した受信レーザ光を受光して前記超音波の第1受信信号を得る第1受信工程と、前記第2部材に照射した受信レーザ光を受光して前記超音波の第2受信信号を得る第2受信工程と、前記第1受信信号と、前記第2受信信号とから、前記溶接部の内部の欠陥を検出する信号解析工程とを具備し、前記信号解析工程では、前記第1受信信号及び前記第2受信信号の、信号強度及び信号雑音比のデータを比較して、前記溶接部の内部の欠陥のサイズ及び/又は前記溶接部の内部の欠陥の位置を求める、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の実施形態に係る接合方法の一態様は、第1部材と、前記第1部材とは異種の材料からなる第2部材とを溶接部において溶接する工程と、前記溶接部に送信レーザ光を照射して超音波を励起させる超音波励起工程と、前記第1部材に照射した受信レーザ光を受光して前記超音波の第1受信信号を得る第1受信工程と、前記第2部材に照射した受信レーザ光を受光して前記超音波の第2受信信号を得る第2受信工程と、前記第1受信信号と、前記第2受信信号とから、前記溶接部の内部の欠陥を検出する信号解析工程とを具備
し、前記第2受信工程は、前記第1受信工程の後で行う、ことを特徴とする。
本発明の実施形態に係る接合方法の一態様は、第1部材と、前記第1部材とは異種の材料からなる第2部材とを溶接部において溶接する工程と、前記溶接部に送信レーザ光を照射して超音波を励起させる超音波励起工程と、前記第1部材に照射した受信レーザ光を受光して前記超音波の第1受信信号を得る第1受信工程と、前記第2部材に照射した受信レーザ光を受光して前記超音波の第2受信信号を得る第2受信工程と、前記第1受信信号と、前記第2受信信号とから、前記溶接部の内部の欠陥を検出する信号解析工程とを具備
し、前記第1受信工程と前記第2受信工程を同時に行う、ことを特徴とする。
本発明の実施形態に係る接合方法の一態様は、第1部材と、前記第1部材とは異種の材料からなる第2部材とを溶接部において溶接する工程と、前記溶接部に送信レーザ光を照射して超音波を励起させる超音波励起工程と、前記第1部材に照射した受信レーザ光を受光して前記超音波の第1受信信号を得る第1受信工程と、前記第2部材に照射した受信レーザ光を受光して前記超音波の第2受信信号を得る第2受信工程と、前記第1受信信号と、前記第2受信信号とから、前記溶接部の内部の欠陥を検出する信号解析工程とを具備
し、
前記信号解析工程では、前記第1受信信号及び前記第2受信信号の、信号強度及び信号雑音比のデータを比較して、前記溶接部の内部の欠陥のサイズ及び/又は前記溶接部の内部の欠陥の位置を求める、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の実施形態に係るレーザ超音波検査装置の一態様は、第1部材と、前記第1部材とは異種の材料からなる第2部材との溶接部に送信レーザ光を照射して超音波を励起させる送信レーザ機構と、前記第1部材及び前記第2部材に照射した受信レーザ光を受光する受信レーザ機構と、前記受信レーザ機構によって受光された受信レーザ光を干渉計測し前記超音波の受信信号を得る受信干渉計と、前記受信干渉計により得られた、前記第1部材からの第1受信信号と、前記第2部材からの第2受信信号
の信号強度及び信号雑音比のデータを比較して、前記溶接部の内部の欠陥のサイズ及び/又は前記溶接部の内部の欠陥の位置を求める信号解析機構と信号解析機構とを具備したことを特徴とする。
本発明の実施形態に係るレーザ超音波検査装置の一態様は、第1部材と、前記第1部材とは異種の材料からなる第2部材との溶接部に送信レーザ光を照射して超音波を励起させる送信レーザ機構と、前記第1部材及び前記第2部材に照射した受信レーザ光を受光する受信レーザ機構と、前記受信レーザ機構によって受光された受信レーザ光を干渉計測し前記超音波の受信信号を得る受信干渉計と、前記受信干渉計により得られた、前記第1部材からの第1受信信号と、前記第2部材からの第2受信信号の信号強度及び信号雑音比のデータを比較して、前記溶接部の内部の欠陥のサイズ及び/又は前記溶接部の内部の欠陥の位置を求める信号解析機構と信号解析機構とを具備し、前記受信レーザ機構は、前記第1部材に照射した前記受信レーザ光を受光する第1の位置と、前記第2部材に照射した前記受信レーザ光を受光する第2の位置の間で移動可能に構成されることを特徴とする。
本発明の実施形態に係るレーザ超音波検査装置の一態様は、第1部材と、前記第1部材とは異種の材料からなる第2部材との溶接部に送信レーザ光を照射して超音波を励起させる送信レーザ機構と、前記第1部材及び前記第2部材に照射した受信レーザ光を受光する受信レーザ機構と、前記受信レーザ機構によって受光された前記受信レーザ光を干渉計測し前記超音波の受信信号を得る受信干渉計と、前記受信干渉計により得られた、前記第1部材からの第1受信信号と、前記第2部材からの第2受信信号の信号強度及び信号雑音比のデータを比較して、前記溶接部の内部の欠陥のサイズ及び/又は前記溶接部の内部の欠陥の位置を求める信号解析機構と信号解析機構とを具備し、前記受信レーザ機構は、前記第1部材に照射した前記受信レーザ光を受光するための第1受信用光学機構と、前記第2部材に照射した前記受信レーザ光を受光するための第2受信用光学機構を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明の実施形態に係る接合装置の一態様は、第1部材と、前記第1部材とは異種の材料からなる第2部材とを溶接部にて溶接する溶接装置と、前記溶接部に送信レーザ光を照射して超音波を励起させる送信レーザ機構と、前記第1部材及び前記第2部材に照射した受信レーザ光を受光する受信レーザ機構と、前記受信レーザ機構によって受光された
前記受信レーザ光を干渉計測し前記超音波の受信信号を得る受信干渉計と、前記受信干渉計により得られた、前記第1部材からの第1受信信号と、前記第2部材からの第2受信信号
の信号強度及び信号雑音比のデータを比較して、前記溶接部の内部の欠陥のサイズ及び/又は前記溶接部の内部の欠陥の位置を求める信号解析機構と
、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、異材溶接を行う際に、欠陥を確実に精度良く検出することのできるレーザ超音波検査方法、接合方法、レーザ超音波検査装置、および接合装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係るレーザ超音波検査装置の概略構成を示す図。
【
図2】第2実施形態に係るレーザ超音波検査装置の概略構成を示す図。
【
図3】第3実施形態に係るレーザ超音波検査装置の概略構成を示す図。
【
図4】実施形態に係る工程を説明するためのフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、第1実施形態に係るレーザ超音波検査装置100の概略構成を示す図である。本実施形態では、異材溶接を行う場合について、Ni基合金製部材(母材)112と、低合金鋼製部材(母材)113とを溶接部111において接合する場合について説明する。本実施形態では、溶接部111に発生する欠陥を、レーザ超音波法によりモニタリングし、補修が必要な欠陥が検出された場合は、溶接を中断して欠陥の補修を行う。これによって、施工後に欠陥を発見した場合に生じる後戻りを未然に防ぐことができる。
【0016】
図1に示すように、Ni基合金製部材112及び低合金鋼製部材113は、略円柱状に形成されている。そして、これらの端部を突き合わせ、溶接部111において多層溶接により接合する開先溶接を行う。溶接は、Ni基合金製部材112及び低合金鋼製部材113と、溶接機(図示せず)とを相対的に回転させながら行う。以下では、Ni基合金製部材112及び低合金鋼製部材113を回転させながら溶接を行う場合について説明する。このように溶接して得られた部材は、例えば、タービンロータ等として用いることができる。タービンロータの場合、直径が例えば50cm〜100cm程度であり、例えば数十分で1回転させつつ多層溶接を行う。
【0017】
図1に示すように、レーザ超音波検査装置100は、検査対象に送信レーザ光102を照射して超音波を励起させるための送信レーザ機構115を具備している。送信レーザ機構115は、送信レーザ光源101と、この送信レーザ光源101と光ファイバ120を介して接続され、送信レーザ光102を検査対象の所定の位置(本実施形態では溶接部111(溶接ビード))に照射するための送信用光学機構103とを有する。
【0018】
また、レーザ超音波検査装置100は、励起された超音波を受信するための受信レーザ光105を検査対象の所定の位置に照射し、検査対象から反射及び散乱されて戻る受信レーザ光105(戻り光)を受光するための受信レーザ機構114を具備している。受信レーザ機構114は、Ni基合金製部材112及び低合金鋼製部材113のいずれにも、受信レーザ光105を照射可能とされており、これらのいずれからも超音波を検出できるように構成されている。
【0019】
さらに、レーザ超音波検査装置100は、検査対象からの反射及び散乱されて戻る受信レーザ光105から超音波を検出する受信干渉計108と、検出された超音波信号のデータを収録して解析する信号解析装置109と、信号解析装置109の解析結果から検査対象内部の欠陥を画像化する画像化装置110とを具備している。
【0020】
送信レーザ光102及び受信レーザ光105に用いるレーザとしては、検査対象に応じて、例えば、Nd:YAGレーザ、 CO
2レーザ、 エキシマレーザ等を使用することができるが、これら以外のものを用いても良い。
【0021】
また、受信干渉計としては、例えばマイケルソン干渉計、ホモダイン干渉計、ヘテロダイン干渉計、フィゾー干渉計、マッハツェンダー干渉計、ファブリー=ペロー干渉計、フォトリフラクティブ干渉計等を使用することができるが、これら以外のものを用いても良い。
【0022】
上記構成のレーザ超音波検査装置100を用いて溶接部111の検査を行う場合、まず、検査対象の所定の位置(例えば、溶接部111)に送信レーザ光102が照射されるように送信レーザ機構115を調整し、送信レーザ光102を照射して超音波を励起させる。
【0023】
これとともに、検査対象の所定の位置に、受信レーザ光105が照射されるように受信レーザ機構114を調整し、受信レーザ光105を照射する。本実施形態では、受信レーザ光105を、Ni基合金製部材112と、低合金鋼製部材113に照射する。
【0024】
送信レーザ光102の照射により超音波が発生し、受信レーザ光105、受信干渉計108を用いて超音波信号を取得する。送信レーザ光102の照射によって発生する超音波として、表面波、縦波、横波、モード変換波などがある。本実施形態では、施工中の欠陥検出に超音波の縦波を利用する場合について説明するが、表面波、横波、モード変換波を用いても良い。
【0025】
超音波の縦波が伝播する領域に欠陥があった場合、欠陥から反射したエコーを受信レーザ光105により受信する。欠陥から反射したエコーが、受信レーザ光105の照射点に到達すると、受信レーザ光105は、振幅変調や位相変調、反射角度の変化などを受けるので、反射及び散乱して戻る受信レーザ光105には、超音波信号が含まれる。この超音波信号を含む受信レーザ光105(戻り光)を受光し、受信干渉計108によって超音波信号を含む光信号が電気信号に変換される。従来のレーザ超音波法による溶接モニタリングでは、2つの部材の開先溶接を行う場合、片側の部材(母材)のみでエコーを受信していた。しかし、本実施形態では、溶接部111を挟んで両側のNi基合金製部材112及び低合金鋼製部材113においてエコーを受信レーザ光105により受信する。そして、これらの信号を信号解析装置109にて収集し、解析して欠陥を検出し、画像化装置110によって画像化する。信号解析装置109では、例えば、これらの受信信号について重ね合わせ処理を行うことにより、信号雑音比を改善することができる。
【0026】
溶接部111に発生した欠陥の欠陥サイズの評価は、溶接部111内部の欠陥から得られた超音波の信号強度を、標準試験体に付与した人工欠陥から得られる超音波の信号強度と比較することにより行うことができる。この場合、Ni基合金よりも低合金の方が超音波の透過性が高いため、低合金鋼製部材113側でエコー受信する方が高い信号強度を得ることができ、欠陥検出において有利になる。
【0027】
反対に、Ni基合金製部材112側では、超音波の透過性が低くなるが、Ni基合金中の結晶粒の方位の影響により、特定の受信位置での信号雑音比が向上することがある。このため、低合金鋼製部材113側での受信結果における信号強度及び信号雑音比と、Ni基合金製部材112側での受信結果における信号強度及び信号雑音比の情報を組み合わせることにより、従来の片側だけで受信を行っていた場合と比較して、欠陥の検出性、欠陥の検出位置、欠陥サイズの定量性を向上させることが可能になる。
【0028】
例えば、低合金鋼製部材113側の受信信号で欠陥を検出し、その欠陥の位置をNi基合金製部材112側の受信結果からも確認する。さらに、欠陥サイズを評価する場合は、低合金鋼製部材113側における欠陥からの受信信号強度の情報と、Ni基合金製部材112側における信号雑音比の情報を合わせて判断すること等が可能である。
【0029】
また、Ni基合金製部材112と低合金鋼製部材113に受信レーザ光105を照射した際に、表面で反射及び散乱して受光される受信レーザ光105やその戻り光の強度が異なる場合は、信号強度を受光される受信レーザ光105の強度により補正することを行っても良い。また、それぞれの部材の底面で反射する超音波の信号強度により、欠陥からの信号強度を補正することも可能である。
【0030】
次に、第2実施形態のレーザ超音波検査装置200について、
図2を参照して説明する。
【0031】
図2に示すように、レーザ超音波検査装置200では、受信レーザ機構114が、受信レーザ光源104と、この受信レーザ光源104と光ファイバ122を介して接続された受信用光学機構106と、受信用光学機構106を移動させる移動機構107とから構成されている。受信用光学機構106は、受信レーザ光105を集光して照射するための光学系及び検査対象から戻る受信レーザ光105を受光して集光する光学系等を具備している。また、移動機構107は、受信用光学機構106の位置を検出するエンコーダ等の位置検出機構を具備しており、図示しない制御装置によって、受信用光学機構106を、所望位置に所望速度で移動できるよう構成されている。
【0032】
そして、受信用光学機構106を、Ni基合金製部材112の上方の所定位置と、低合金鋼製部材113の上方の所定位置に移動させ、受信レーザ光105を照射及び受光することにより、Ni基合金製部材112及び低合金鋼製部材113の双方からの受信信号を得ることができる。なお、他の部分については、
図1に示したレーザ超音波検査装置100と同様に構成されているので、対応する部分には同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0033】
本実施形態では、例えば、移動機構107よって、受信用光学機構106を一定周期で走査し、溶接部111を跨いで、Ni基合金製部材112側及び低合金鋼製部材113側において、超音波を検出する。この場合、受信用光学機構106を走査する際に複数の照射点からの受信信号を得ることができるため、得られた受信信号について重ね合わせ処理を行うことにより、信号雑音比を改善することもできる。
【0034】
受信用光学機構106を一定周期で走査する場合、例えば1周期を10秒程度として走査する。一方、Ni基合金製部材112及び低合金鋼製部材113の回転周期は、例えば数十分/1回転とする。これによって、1回の走査期間中の回転量が僅かになるため、1回の走査によって得られる受信信号は、Ni基合金製部材112及び低合金鋼製部材113の周方向の同一の位置で得られた信号として取り扱うことができる。
【0035】
また、受信用光学機構106を、Ni基合金製部材112側及び低合金鋼製部材113側まで一定周期で走査するのではなく、例えば、通常時は低合金鋼製部材113側において超音波を検出し、欠陥が検出された際にのみ受信用光学機構106を移動させてNi基合金製部材112側で超音波を検出するようにしても良い。
【0036】
本実施形態のレーザ超音波検査装置200では、移動機構107を用いることによって、1つの受信レーザ光源104及び1つの受信用光学機構106によって、Ni基合金製部材112及び低合金鋼製部材113の双方からの受信信号を得ることができる。
【0037】
次に、第3実施形態のレーザ超音波検査装置300について、
図3を参照して説明する。
【0038】
図3に示すように、第3実施形態のレーザ超音波検査装置300では、受信レーザ光105を照射するための受信レーザ機構114は、2つの受信レーザ光源104a,104bと、これらの受信レーザ光源104a,104bに、光ファイバ122を介して接続された2つの受信用光学機構106a,106bとを具備している。また、干渉計についても、光ファイバ121を介して受信用光学機構106aに接続された受信干渉計108aと、光ファイバ121を介して受信用光学機構106bに接続された受信干渉計108bの2つを具備している。なお、受信レーザ光105の光源としては、1つの受信レーザ光源からのレーザ光を分岐させて2つの受信用光学機構106a,106bに入射させても良い。
【0039】
受信レーザ光源104a、受信用光学機構106a、受信干渉計108aは、低合金鋼製部材113に受信レーザ光105を照射して低合金鋼製部材113側におけるエコーの受信信号を得る。一方、受信レーザ光源104b、受信用光学機構106b、受信干渉計108bは、Ni基合金製部材112に受信レーザ光105を照射してNi基合金製部材112側におけるエコーの受信信号を得る。
【0040】
なお、送信レーザ光102は、第1実施形態と同様に溶接部111に照射する。受信干渉計108a,108bからの信号は、信号解析装置109にて収集され解析された後、画像化装置110に入力され、探傷画像として示される。なお、他の部分については、前述した第1実施形態と同様であるので、対応する部分に同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0041】
本第3実施形態においても、第1実施形態において説明したように、例えば、低合金鋼製部材113の受信信号で欠陥を検出し、その欠陥の位置をNi基合金製部材112側の受信結果からも確認する等の処理を行う。
【0042】
また、欠陥サイズを定量化する場合は、低合金鋼製部材113側の欠陥からの受信信号強度の情報と、Ni基合金製部材112側で得た信号雑音比の情報を合わせて判断することができる。
【0043】
次に、
図4を参照して、通常のモニタリングは片側の部材から受信信号を取得することにより行い、この片側の部材におけるモニタリングによって欠陥が検出された際に、もう一方の部材にて受信信号取得する場合の工程について説明する。
【0044】
図4に示す通常モニタリング(301)は、異材溶接を行う2種類の部材のうち超音波の透過性が高い部材、例えば、
図1等に示した場合では、低合金鋼製部材113側で行う。そして、モニタリング中に得られる信号強度が、予め規定した閾値を超えた場合、欠陥検出(302)とみなし、一時溶接を停止する(303)。
【0045】
次に、受信レーザ機構114において、Ni基合金製部材112側で超音波を受信するために機械的な変更が必要な場合、例えば、第2実施形態のレーザ超音波検査装置200のような場合は、Ni基合金製部材112側で超音波を受信できる状態に変更する。この時、第2実施形態で示したような移動機構107を用いて受信用光学機構106を移動させても良いし、手動で受信用光学機構106を設置し直しても良い。そして、低合金鋼製部材113側での受信で欠陥が検出された領域について、検証のためにNi基合金製部材112側で検証計測を行う(304)。
【0046】
次に、欠陥の位置およびサイズを評価する欠陥評価を行う(305)。この場合、前述したように、低合金鋼製部材113側で得られた欠陥からの受信信号強度、信号雑音比の情報と、Ni基合金製部材112側で得られた受信信号強度、信号雑音比の情報を合わせて判断することが可能である。
【0047】
上記の欠陥評価の結果から欠陥の補修が必要か否かを判断し(306)、補修が必要な場合は、補修を実施して(307)、その後溶接を再開する(308)。一方、欠陥の補修が必要無い場合は、溶接を再開する(308)。
【0048】
なお、以上の実施形態では、低合金鋼とNi基合金の異材溶接の場合について説明したが、組成の異なる2種の低合金鋼、または組成の異なる2種のNi基合金の溶接の場合にも、同様にして適用可能である。また、溶接施工中の溶接部の欠陥検査を例として説明したが、溶接後の構造物を検査対象としても良い。
【0049】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
100,200,300……レーザ超音波検査装置、101……送信レーザ光源、102……送信レーザ光、103……送信用光学機構、104……受信レーザ光源、105……受信レーザ光、106……受信用光学機構、107……移動機構、108……受信干渉計、109……信号解析装置、110……画像化装置、111……溶接部、112……Ni基合金製部材、113……低合金鋼製部材、114……受信レーザ機構、115……送信レーザ機構。