特許第6591303号(P6591303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591303
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/66 20060101AFI20191007BHJP
   B29C 45/78 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   B29C45/66
   B29C45/78
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-16663(P2016-16663)
(22)【出願日】2016年1月29日
(65)【公開番号】特開2017-132228(P2017-132228A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2018年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】森田 洋
(72)【発明者】
【氏名】森谷 知寛
【審査官】 ▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−347078(JP,A)
【文献】 特開2008−114513(JP,A)
【文献】 特開2006−212980(JP,A)
【文献】 特開2016−185692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C33/00−33/76,39/00−39/44
B29C41/38−41/44,43/00−43/58
B29C45/00−45/84,49/48−49/56,49/70
B29C51/30−51/40,51/44
B22D15/00−17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型締力に応じて伸びる複数本のタイバーと、
前記タイバーを加熱する加熱器と、
前記加熱器によって加熱される前記タイバーの加熱部からの熱の移動を制限する熱移動制限器と、
前記加熱器を制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、記タイバーの前記加熱部の温度を、前記加熱器による非加熱時の前記加熱部の定常温度よりも高い設定温度に制御し、前記加熱部の温度を前記設定温度に制御した状態の複数本の前記タイバーの軸力のバランスに基づいて、前記バランスが許容範囲内に収まるように前記加熱部の温度を制御し、
前記熱移動制限器は、前記加熱器を挟んで、前記タイバーの軸方向両側に配置される、射出成形機。
【請求項2】
前記バランスの調整に用いられる前記加熱部の温度の調整範囲は、前記加熱部の前記定常温度よりも高い温度範囲である、請求項1に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、金型装置の型閉、型締、型開を行う型締装置を有する。型締装置は、型締力に応じて伸びる複数本のタイバーを有する(例えば、特許文献1参照)。型締力は複数本のタイバーに分散してかかり、各タイバーが伸びる。タイバーの伸びに抵抗する力を軸力と呼ぶ。
【0003】
複数本のタイバーの有効長に差がある場合、有効長の短いタイバーと、有効長の長いタイバーとでは軸力に差が生じる。ここで、タイバーの有効長とは、タイバーによって連結される部材同士の間隔をいい、例えば型締力が作用していない状態で計測される。
【0004】
タイバーの有効長はタイバーの温度により変化する。タイバーの温度が高いほど、タイバーの有効長が長くなる。タイバーの温度を調節することで、タイバーの有効長を調整することができ、軸力のバランスを調整することができる。
【0005】
特許文献1に記載の射出成形機は、タイバーの有効長の調整に、タイバーを加熱するバンドヒータと、タイバーを冷却するウォータジャケットとの両方が用いられていた。バンドヒータによる加熱量と、ウォータジャケットによる冷却量とが、タイバーの温度を操作する操作量として用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−114513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、タイバーの温度を操作する操作量の種類が切り替わることがあり、操作量が温度に与える影響のメカニズムが切り替わることがあった。その結果、タイバーの温度制御が不連続になり、タイバーの温度制御の精度が低くなることがあった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、タイバーの温度制御の不連続性を抑制でき、タイバーの温度制御の精度を向上できる、射出成形機の提供を主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一態様によれば、
型締力に応じて伸びる複数本のタイバーと、
前記タイバーを加熱する加熱器と、
前記加熱器によって加熱される前記タイバーの加熱部からの熱の移動を制限する熱移動制限器と、
前記加熱器を制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、記タイバーの前記加熱部の温度を、前記加熱器による非加熱時の前記加熱部の定常温度よりも高い設定温度に制御し、前記加熱部の温度を前記設定温度に制御した状態の複数本の前記タイバーの軸力のバランスに基づいて、前記バランスが許容範囲内に収まるように前記加熱部の温度を制御し、
前記熱移動制限器は、前記加熱器を挟んで、前記タイバーの軸方向両側に配置される、射出成形機が提供される。

【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、タイバーの温度制御の不連続性を抑制でき、タイバーの温度制御の精度を向上できる、射出成形機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態による射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2】一実施形態による射出成形機の型締時の状態を示す図である。
図3】一実施形態による射出成形機のタイバーの位置関係を示す図であって、可動プラテン側から固定プラテンを見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。
【0013】
図1は、一実施形態による射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。図2は、一実施形態による射出成形機の型締時の状態を示す図である。射出成形機は、フレームFr、型締装置10、操作装置70、表示装置80およびコントローラ90などを有する。
【0014】
コントローラ90は、CPU(Central Processing Unit)91と、メモリなどの記憶媒体92とを有する。コントローラ90は、記憶媒体92に記憶されたプログラムをCPU91に実行させることにより、型締装置10、操作装置70および表示装置80などを制御する。
【0015】
コントローラ90は、操作装置70および表示装置80に接続される。操作装置70および表示装置80は、例えばタッチパネルで構成され、一体化されてよい。操作装置70は、ユーザによる入力操作を受け付け、入力操作に応じた信号をコントローラ90に出力する。表示装置80は、コントローラ90による制御下で、操作装置70における入力操作に応じた操作画面を表示する。操作画面は、射出成形機の設定などに用いられる。操作画面は、複数用意され、切り替えて表示されたり、重ねて表示されたりする。ユーザは、表示装置80で表示される操作画面を見ながら、操作装置70を操作することにより射出成形機の設定などを行う。
【0016】
尚、本実施形態の操作装置70および表示装置80は、一体化されているが、独立に設けられてもよい。また、操作装置70は、複数設けられてもよい。
【0017】
型締装置10は、金型装置30の型閉、型締、型開を行う。型締装置10は、固定プラテン12、可動プラテン13、リヤプラテン15、タイバー16、トグル機構20、および型締モータ21を有する。以下、型閉時の可動プラテン13の移動方向(図1図2中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン13の移動方向(図1図2中左方向)を後方として説明する。
【0018】
固定プラテン12は、フレームFrに対し固定される。固定プラテン12における可動プラテン13との対向面に固定金型32が取り付けられる。
【0019】
可動プラテン13は、フレームFr上に敷設されるガイド(例えばガイドレール)17に沿って移動自在とされ、固定プラテン12に対し進退自在とされる。可動プラテン13における固定プラテン12との対向面に可動金型33が取り付けられる。
【0020】
固定プラテン12に対し可動プラテン13を進退させることにより、型閉、型締、型開が行われる。固定金型32と可動金型33とで金型装置30が構成される。
【0021】
リヤプラテン15は、固定プラテン12と間隔をおいて連結され、フレームFr上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、リヤプラテン15は、フレームFr上に敷設されるガイドに沿って移動自在とされてもよい。リヤプラテン15のガイドは、可動プラテン13のガイド17と共通のものでもよい。
【0022】
尚、本実施形態では、固定プラテン12がフレームFrに対し固定され、リヤプラテン15がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされるが、リヤプラテン15がフレームFrに対し固定され、固定プラテン12がフレームFrに対し型開閉方向に移動自在とされてもよい。
【0023】
タイバー16は、固定プラテン12とリヤプラテン15とを間隔をおいて連結する。タイバー16は、複数本用いられる。各タイバー16は、型開閉方向に平行とされ、型締力に応じて伸びる。各タイバー16は、金属などで形成されている。
【0024】
トグル機構20は、可動プラテン13とリヤプラテン15との間に配設される。トグル機構20は、クロスヘッド20a、複数のリンク20b、20cなどで構成される。一方のリンク20bは可動プラテン13に揺動自在に取り付けられ、他方のリンク20cはリヤプラテン15に揺動自在に取り付けられる。これらのリンク20b、20cは、ピンなどで屈伸自在に連結される。クロスヘッド20aを進退させることにより、複数のリンク20b、20cが屈伸され、リヤプラテン15に対し可動プラテン13が進退される。
【0025】
型締モータ21は、リヤプラテン15に取り付けられ、クロスヘッド20aを進退させることにより、可動プラテン13を進退させる。型締モータ21とクロスヘッド20aとの間には、型締モータ21の回転運動を直線運動に変換してクロスヘッド20aに伝達する運動変換機構が設けられる。運動変換機構は例えばボールねじ機構で構成される。
【0026】
型締装置10の動作は、コントローラ90によって制御される。コントローラ90は、型閉工程、型締工程、型開工程などを制御する。
【0027】
型閉工程では、型締モータ21を駆動して可動プラテン13を前進させることにより、可動金型33を固定金型32に接触させる。
【0028】
型締工程では、型締モータ21をさらに駆動させることで型締力を生じさせる。型締時に可動金型33と固定金型32との間にキャビティ空間が形成され、キャビティ空間に液状の成形材料が充填される。キャビティ空間内の成形材料は、固化され、成形品となる。
【0029】
型開工程では、型締モータ21を駆動して可動プラテン13を後退させることにより、可動金型33を固定金型32から離間させる。
【0030】
尚、本実施形態の型締装置10は、可動プラテン13を移動させる駆動源として、型締モータ21を有するが、型締モータ21の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置10は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0031】
図3は、一実施形態による射出成形機のタイバーの位置関係を示す図であって、可動プラテン側から固定プラテンを見た図である。射出成形機は、タイバー16を4本有する。4本のタイバー16は、型開閉方向視において、水平線L1を中心に上下対称に配設され、且つ、鉛直線L2を中心に左右対称に配設される。水平線L1よりも上側を天側、水平線L1よりも下側を地側と呼ぶ。また、鉛直線L2よりも操作装置70側を操作側、鉛直線L2よりも操作装置70とは反対側を反操作側と呼ぶ。
【0032】
型締力は4本のタイバー16に分散してかかり、各タイバー16が伸びる。各タイバー16の伸びに抵抗する力を軸力と呼ぶ。4本のタイバー16の有効長に差がある場合、有効長の短いタイバー16と、有効長の長いタイバー16とでは軸力に差が生じる。ここで、タイバー16の有効長とは、タイバー16によって連結される固定プラテン12とリヤプラテン15との間隔をいい、例えば型締力が作用していない状態で計測される。
【0033】
タイバー16の有効長を調整することで、軸力のバランスを調整することができる。軸力のバランスは、例えば型締時に固定金型32と可動金型33との面圧が目標の分布になるように設定される。目標の分布は、均一分布、不均一分布のいずれでもよく、状況に応じて設定される。成形不良を低減することができる。
【0034】
タイバー16の有効長はタイバー16の温度により変化する。タイバー16の温度が高いほど、タイバー16の有効長が長くなる。タイバー16の温度を調節することで、タイバー16の有効長を調整することができ、軸力のバランスを調整することができる。
【0035】
そこで、各タイバー16には、図1および図2に示すように、加熱器25、熱移動制限器26、温度検出器27、軸力検出器28などが取り付けられる。加熱器25、熱移動制限器26、温度検出器27、軸力検出器28などは、型締装置10に備えられる。
【0036】
加熱器25は、タイバー16の有効長を調整するため、タイバー16を加熱する。加熱器25が加熱する範囲を、タイバー16の加熱部と呼ぶ。加熱器25は、例えばヒータなどの電熱器で構成される。尚、加熱器25は、電熱器に限定されず、例えば温水ジャケットなどで構成されてもよい。
【0037】
熱移動制限器26は、タイバー16の加熱部からの熱の移動を制限する。型締装置10全体の温度が安定化するまでの時間を短縮でき、軸力のバランスが安定化するまでの時間を短縮できる。また、タイバー16の加熱部の範囲を管理できるので、タイバー16の温度変化による有効長の変化量を精度良く管理でき、軸力を精度良く調整できる。
【0038】
熱移動制限器26は、加熱器25を挟んでタイバー16の軸方向両側に配設されてよい。型締装置10全体の温度が安定化するまでの時間をより短縮でき、軸力のバランスが安定化するまでの時間をより短縮できる。また、タイバー16の温度変化による有効長の変化量をより精度良く管理でき、軸力をより精度良く調整できる。
【0039】
熱移動制限器26は、例えば水冷ジャケットで構成される。尚、熱移動制限器26は、水冷ジャケットに限定されず、例えば冷却フィンなどで構成されてもよい。冷却フィンの冷却方式は、冷却ファンを使用する強制空冷方式、自然空冷方式のいずれでもよい。
【0040】
熱移動制限器26は、タイバー16の有効長を調整する目的ではなく、タイバー16の加熱部の範囲を管理する目的で用いられる。タイバー16の有効長は、熱移動制限器26ではなく、加熱器25によって調整する。従って、熱移動制限器26は、タイバー16に取付けられていなくてもよい。
【0041】
温度検出器27は、タイバー16の加熱部の温度を検出する。例えば、温度検出器27は、加熱器25の付近に配設され、複数の熱移動制限器26の間に配設される。
【0042】
温度検出器27は、検出結果をコントローラ90に出力する。コントローラ90は、温度検出器27によって検出される実績温度と設定温度とに基づいて、加熱器25を制御する。例えば実績温度が設定温度になるように、コントローラ90が加熱器25を制御する。その制御は、フィードバック制御、フィードフォワード制御のいずれでもよい。
【0043】
軸力検出器28は、加熱器25によって加熱されるタイバー16の軸力を検出する。軸力検出器28は、例えば歪みゲージ式であって、タイバー16の歪みを検出することによってタイバー16の軸力を検出する。
【0044】
尚、上記実施形態の軸力検出器28は、歪みゲージ式であるが、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよい。
【0045】
軸力検出器28は、検出結果をコントローラ90に出力する。コントローラ90は、軸力検出器28によって、複数本のタイバー16の軸力のバランスを計測する。
【0046】
軸力検出器28は、熱移動制限器26を基準として加熱器25とは反対側に配設される。加熱器25による加熱範囲の外に軸力検出器28が配設される。軸力検出器28の温度上昇を抑制でき、軸力検出器28の測定誤差を低減できる。
【0047】
例えば図1および図2に示すように、軸力検出器28は、加熱器25よりも後側に配設される熱移動制限器26よりもさらに後側に配設される。尚、軸力検出器28は、加熱器25よりも前側に配設される熱移動制限器26よりもさらに前側に配設されてもよい。
【0048】
尚、本実施形態の軸力検出器28は、熱移動制限器26を基準として加熱器25とは反対側の位置に配設されるが、熱移動制限器26と重なる位置に配設されてもよい。この場合も、軸力検出器28の温度上昇を抑制でき、軸力検出器28の測定誤差を低減できる。
【0049】
コントローラ90は、加熱器25によって加熱されるタイバー16の加熱部の温度を調整することで、複数本のタイバー16の軸力のバランスを調整する。バランスの調整に用いられるタイバー16の加熱部の基準温度T0は、加熱器25による非加熱時のタイバー16の加熱部の定常温度TSよりも高い温度に設定される。
【0050】
加熱器25による非加熱時とは、例えば加熱器25が電熱器である場合には電熱器への電極供給を停止した時、加熱器25が温水ジャケットである場合には温水ジャケットへの温水供給を停止した時である。
【0051】
また、定常温度TSとは、加熱器25による非加熱時に、型締装置10全体の温度が安定化したときの、タイバー16の加熱部の温度である。ここで、加熱器25以外の機器(例えば金型装置30の温度を調整する温調器、金型装置30に液状の成形材料を充填する射出装置など)の設定は同じとする。
【0052】
コントローラ90は、例えばタイバー16の加熱部の温度が基準温度T0のときの複数本のタイバー16の軸力のバランスを計測する。バランスが許容範囲内であれば、コントローラ90はタイバー16の加熱部の温度を基準温度T0に保つ。一方、バランスが許容範囲外であれば、その差分に基づきコントローラ90がタイバー16の加熱部の温度を上昇または低下させる。その後、コントローラ90は、複数本のタイバー16の軸力のバランスを再計測する。その後、バランスが許容範囲内に収まるまで、タイバー16の加熱部の温度調整と、軸力のバランスの計測とが繰り返し行われてもよい。
【0053】
本実施形態によれば、上述の如く、バランスの調整に用いられるタイバー16の加熱部の基準温度T0が定常温度TSよりも高い温度に設定される。よって、基準温度T0からの温度上昇と温度低下の両方が加熱器25による加熱量の大小のみで調整でき、温度を操作する操作量の種類が切り替わることがなく、操作量が温度に与える影響のメカニズムが切り替わることがない。よって、タイバー16の温度制御の不連続性を抑制でき、タイバー16の温度制御の精度を向上できる。
【0054】
バランスの調整に用いられるタイバー16の加熱部の温度の調整範囲は、加熱部の定常温度TSよりも高い温度範囲である。加熱器25による加熱量の大小のみでタイバー16の温度を調整するため、温度を操作する操作量の種類が切り替わることがなく、操作量が温度に与える影響のメカニズムが切り替わることがない。よって、タイバー16の温度制御の不連続性をより抑制でき、タイバー16の温度制御の精度をより向上できる。
【0055】
バランスの調整に用いられるタイバー16の加熱部の基準温度T0は、加熱部の周囲の温度よりも所定値高い温度に設定されてよい。ここで、加熱部の周囲の温度は、例えば、加熱部の周辺雰囲気の温度である。加熱部の周辺雰囲気の温度変化に応じて基準温度T0が変わるため、加熱部の周辺雰囲気の温度変化に応じたバランスの調整が可能である。
【0056】
尚、本実施形態のコントローラ90は、加熱器25を制御し、熱移動制限器26を制御しないが、熱移動制限器26も制御してもよい。熱移動制限器26付近においてタイバーの温度が設定温度になるように、コントローラ90が熱移動制限器26を制御する。
【0057】
以上、射出成形機の実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0058】
例えば、上記実施形態では、加熱器25、熱移動制限器26、温度検出器27、および軸力検出器28などが、全てのタイバー16に取り付けられるが、一部のタイバー16のみに取り付けられてもよい。例えば、コントローラ90が鉛直方向における軸力のバランス(以下、「鉛直軸力バランス」と呼ぶ)と水平方向における軸力のバランスの両方を調整する場合、4本のタイバー16のうちの3本のみに、加熱器25、熱移動制限器26、および温度検出器27が取り付けられてもよい。また、コントローラ90が鉛直軸力バランスのみを調整する場合、天側および地側のうちの片側のタイバー16のみに、加熱器25、熱移動制限器26、および温度検出器27が取り付けられてもよい。また、コントローラ90が鉛直軸力バランスのみを調整する場合、天側の2本のタイバー16の一方、および地側の2本のタイバー16の一方に、それぞれ、軸力検出器28が取り付けられてもよい。
【0059】
また、上記実施形態の型締装置10は、型開閉方向が水平方向の横型であるが、型開閉方向が鉛直方向の竪型であってもよい。竪型の型締装置は、下プラテン、上プラテン、トグルサポート、トグル機構、およびタイバーなどを有する。下プラテンと上プラテンのうち、いずれか一方が固定プラテン、残りの一方が可動プラテンとして用いられる。下プラテンには下金型が取り付けられ、上プラテンには上金型が取り付けられる。下金型と上金型とで金型装置が構成される。下金型は、ロータリーテーブルを介して下プラテンに取り付けられてもよい。トグルサポートは、下プラテンの下方に配設される。トグル機構は、トグルサポートと下プラテンとの間に配設される。タイバーは、鉛直方向に平行とされ、下プラテンを貫通し、上プラテンとトグルサポートとを連結する。タイバーの本数は通常3本である。尚、タイバーの本数は特に限定されない。
【符号の説明】
【0060】
10 型締装置
12 固定プラテン
13 可動プラテン
16 タイバー
25 加熱器
26 熱移動制限器
27 温度検出器
28 軸力検出器
30 金型装置
32 固定金型
33 可動金型
90 コントローラ
図1
図2
図3