特許第6591329号(P6591329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591329
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】流路分岐管および血液バッグシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/02 20060101AFI20191007BHJP
   A61K 35/16 20150101ALI20191007BHJP
   A61K 35/18 20150101ALI20191007BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20191007BHJP
   A61M 39/10 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   A61M1/02 121
   A61K35/16 A
   A61K35/18 A
   A61P7/00
   A61M39/10
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-61592(P2016-61592)
(22)【出願日】2016年3月25日
(65)【公開番号】特開2017-169982(P2017-169982A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2018年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 正
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 千明
【審査官】 松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0312481(US,A1)
【文献】 特表2013−512758(JP,A)
【文献】 特開2005−124814(JP,A)
【文献】 特開2008−188230(JP,A)
【文献】 特開2010−227167(JP,A)
【文献】 特開2000−005303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/02
A61K 35/16
A61K 35/18
A61M 39/10
A61P 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液を所定の血液成分に分離する分離装置の冶具に保持される流路分岐管であって、
本体ポートと、
前記本体ポートの端部から分岐される複数の分岐ポートと、を有し、
前記本体ポートと1つの前記分岐ポートとで形成される平面と、前記本体ポートと他の1つの前記分岐ポートとで形成される平面とが異なる立体非対称であり、
前記冶具に保持される下面の表面形状と、下面の反対面である上面の表面形状とが異なることを特徴とする流路分岐管。
【請求項2】
前記複数の分岐ポートの少なくとも1つは、その軸線と前記本体ポートの軸線とがなす角度が、他の分岐ポートの軸線と前記本体ポートの軸線とがなす角度と異なることを特徴とする請求項1に記載の流路分岐管。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の流路分岐管を有する血液バッグシステムであって、
血液を収容する収容バッグと、
前記収容バッグに収容された血液から遠心分離によって分離された血液成分の一部を保存する保存バッグと、
前記収容バッグに収容された血液から遠心分離よって分離された血液成分の一部に添加する薬液が予め収容された薬液バッグと、
一端が第1封止部材を介して前記収容バッグに接続され、他端が前記保存バッグに接続される第1チューブと、
一端が前記第1チューブの途中に接続された前記流路分岐管に接続され、他端が第2封止部材を介して前記薬液バッグに接続される第2チューブと、を有していることを特徴とする血液バッグシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、装置の冶具に保持されて医療用液体の流路の分岐に使用される流路分岐管およびそれを有する血液バッグシステムに関する。特に、本願発明は、血液製剤製造における血液成分の分離操作に用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来、血液製剤の製造には、特許文献1に記載されている血液バッグシステムが用いられる。特許文献1に記載された血液バッグシステムは、白血球等の不要物を除去した血液を収容する第1バッグと、第1バッグに収容された血液から遠心分離によって分離された血漿を保存する第2バッグと、第1バッグに収容された血液から遠心分離によって分離された濃厚赤血球に添加する薬液が予め収容された第3バッグと、第1バッグから血漿を第2バッグに移送する第1チューブと、第3バッグから薬液を第1バッグに移送する第2チューブと、を有している。
【0003】
血液バッグシステムにおいては、流路分岐管として三方継手が用いられている。そして、第1チューブの途中に三方継手を接続して、その三方継手に上流側第1チューブと下流側第1チューブと第2チューブとを接続することによって、血漿流路となる下流側第1チューブと、薬液流路となる第2チューブと、を三方継手で分岐している。
【0004】
一方、前記血液バッグシステムを用いた血液成分の分離操作においては、操作者が第1チューブおよび第2チューブの選択を適宜確認しながら、マニュアルクランプ(コッヘル)を用いて第1チューブおよび第2チューブの閉塞/開通を制御してきた。近年、特許文献1に記載されているような自動分離装置が普及し、チューブの閉塞/開通は、自動クランプとセンサーによる制御が一般になってきた。
【0005】
自動分離装置は、第1バッグが設置される第1設置室と、第2バッグが設置される第2設置室と、第3バッグが設置される第3設置室と、第1チューブの閉塞/開通を制御する第1、第2クランプと、第2チューブの閉塞/開通を制御する第3クランプと、を有している。
【0006】
このような自動分離装置においても、血液バッグシステムをセットする際、操作者は、
クランプに適正なチューブを間違いなくセットするように意識する必要がある。操作者が間違ったチューブをクランプにセットして流路選択を間違えると、遠心分離によって分離された第1バッグの血漿が保存バッグではなく薬液バッグに移送されてしまい、分離操作を遠心分離から再度やり直さなければならなくなる。その結果、製造される血液製剤が減損してしまう。
【0007】
このような操作者のチューブセットミスによる間違った流路選択を防ぐため、自動分離装置では、三方継手の外形形状に適合する溝部を有する冶具を設け、この冶具の溝部に三方継手を嵌合していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−188230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、三方継手には、血液バッグシステムの遠心操作時に、バッグ等を傷つけないように、ポリ塩化ビニル樹脂等からなる軟質の樹脂管が使用されている。したがって、操作者が流路分岐管である三方継手の冶具への嵌合方向を間違えても、流路分岐管が冶具に嵌合してしまい、間違った流路が選択されてしまうという問題は依然として残っていた。
【0010】
そこで、本発明は、このような問題を解決すべく創案されたもので、その課題は人為的なミスによる流路選択の間違いが発生しない流路分岐管およびそれを有する血液バッグシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明に係る流路分岐管は、血液を所定の血液成分に分離する分離装置の冶具に保持される流路分岐管であって、本体ポートと、前記本体ポートの端部から分岐される複数の分岐ポートと、を有し、前記本体ポートと1つの前記分岐ポートとで形成される平面と、前記本体ポートと他の1つの分岐ポートとで形成される平面とが異なる立体非対称であり、前記冶具に保持される下面の表面形状と、下面の反対面である上面の表面形状とが異なることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る流路分岐管によれば、下面の表面形状と上面の表面形状とが異なることによって、人為的なミスによって流路分岐管を間違った方向で冶具に嵌合しようとしても、流路分岐管は冶具に嵌合せず、流路分岐管は冶具に保持されない。または、流路分岐管の嵌合方向が間違えていることを、操作者が認識できる。
【0015】
本発明に係る流路分岐管においては、前記複数の分岐ポートの少なくとも1つは、その軸線と前記本体ポートの軸線とがなす角度が、他の分岐ポートの軸線と前記本体ポートの軸線とがなす角度と異なることが好ましい。
【0016】
このように分岐ポートの角度が異なることによって、人為的なミスによって流路分岐管を間違った方向で冶具に嵌合しようとしても、流路分岐管は冶具にさらに嵌合しにくくなり、流路分岐管は冶具に保持されない。または、流路分岐管の嵌合方向が間違えていることを、操作者がさらに認識しやすくなる。
【0017】
本発明に係る血液バッグシステムは、前記流路分岐管を有する血液バッグシステムであって、血液を収容する収容バッグと、前記収容バッグに収容された血液から遠心分離によって分離された血液成分の一部を保存する保存バッグと、前記収容バッグに収容された血液から遠心分離によって分離された血液成分の一部に添加する薬液が予め収容された薬液バッグと、一端が第1封止部材を介して前記収容バッグに接続され、他端が前記保存バッグに接続される第1チューブと、一端が前記第1チューブの途中に接続された前記流路分岐管に接続され、他端が第2封止部材を介して前記薬液バッグに接続される第2チューブと、を有していることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る血液バッグシステムによれば、装置に血液バッグシステムを保持する際、前記流路分岐管を有することによって、人為的なミスによって流路分岐管を間違った方向で冶具に嵌合しようとしても、流路分岐管は冶具に嵌合しない。または、流路分岐管の嵌合方向が間違えていることを、操作者が認識できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る流路分岐管およびそれを有する血液バッグシステムによれば、人為的なミスによる流路選択の間違いが発生しない。その結果、流路分岐管およびそれを有する血液バッグシステムを分離装置に保持して血液成分分離を行った際、分離操作ミスが生じず、製造される血液製剤の減損が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る流路分岐管を示し、(a)は斜視図、(b)は上面側から平面視した平面図、(c)は正面図である。
図2】第1実施形態の流路分岐管の変形例を示し、(a)は側面図、(b)は上面側から平面視した平面図である。
図3】第1実施形態の流路分岐管の変形例を示し、(a)は側面図、(b)は上面側から平面視した平面図である。
図4】(a)、(b)は、本発明の第2実施形態に係る流路分岐管を示す上面側から平面視した平面図である。
図5】第2実施形態の流路分岐管の変形例を示す上面側から平面視した平面図である。
図6図1の流路分岐管を保持する冶具の平面図である。
図7図2または図3の流路分岐管を保持する冶具の平面図である。
図8】(a)は図4(a)の流路分岐管を保持する冶具の平面図、(b)は図4(b)の流路分岐管を保持する冶具の平面図である。
図9図5の流路分岐管を保持する冶具の平面図である。
図10】本発明の実施形態に係る血液バッグシステムの構成を示す概略図である。
図11図10の血液バッグシステムを用いる分離装置の構成を示す概略図である。
図12図10の血液バッグシステムを用いる遠心分離移送装置の構成の一部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る流路分岐管は、血液を所定の血液成分に分離する分離装置の冶具に保持されるもので、血液成分とは、例えば、濃厚赤血球、血小板等である。
【0022】
本発明に係る流路分岐管の第1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1図3に示すように、流路分岐管1は、装置の冶具10(図11図12参照)に保持され、本体ポート2と、本体ポート2の端部から分岐される複数の分岐ポート3、4と、を有し、冶具10に保持される下面1aの表面形状と、下面1aの反対面である上面1bの表面形状とが異なる、いわゆる上下非対象の構造を有する。上下非対称の構造とは、下面1aの表面形状が、本体ポート2を中心にして上面1bの表面形状を回転させた場合の反転形状と異なることを意味する。そして、本体ポート2、複数の分岐ポート3、4は、軟質樹脂製の管状体である。また、図1図3では、流路分岐管1の分岐ポートとして2つの分岐ポート3、4を示したが、分岐ポートは3つ以上であってもよい。
【0023】
本体ポート2は、血液等の医療用液体が最初に流入するポートを意味し、図10に示す血液成分分離に使用される血液バッグシステム21において、収容バッグ22側のポートである。また、分岐ポート3は保存バッグ23側のポート、分岐ポート4は薬液バッグ24側のポートである。なお、分岐ポート3が薬液バッグ24側のポート、分岐ポート4が保存バッグ23側のポートであってもよい。
【0024】
本体ポート2および複数の分岐ポート(例えば、分岐ポート3、4)では、チューブ(図10の第1チューブ25、第2チューブ26参照)が接続されて医療用液体の流路となる内腔6の断面形状は円形状であるが、外形断面形状は矩形状等の円形状以外の形状であってもよい。また、本体ポート2および複数の分岐ポート(例えば、分岐ポート3、4)の外形断面形状、外径および長さは、特に限定されず、同一でも異なるものでもよい。さらに、複数の分岐ポート(例えば、分岐ポート3、4)の各々の軸線と本体ポート2の軸線とがなす角度も、特に限定されず、同一でも異なるものでもよい。なお、複数の分岐ポートの少なくとも1つ(例えば、分岐ポート3)の軸線と本体ポート2の軸線とがなす角度が、他の分岐ポート(例えば、分岐ポート4)の軸線と本体ポート2の軸線とがなす角度と異なることが好ましい。これによって、流路分岐管1の冶具10への嵌合方向の取り付け誤りが防止される。
【0025】
図1(a)〜(c)に示す流路分岐管1は、上下非対称の構造を、本体ポート2と1つの分岐ポート(例えば、分岐ポート3)とで形成される平面と、本体ポート2と他の1つの分岐ポート(例えば、分岐ポート4)とで形成される平面とが異なる立体非対称とすることによって達成したものある。
【0026】
具体的には、本体ポート2は、軸線方向に直線状に延びている。分岐ポート3は、平面視で本体ポート2の軸線に対して所定角度に傾斜して分岐ポート4とは異なる方向に延び、側面視で本体ポート2の軸線と同一方向に延びている。分岐ポート4は、平面視で本体ポート2の軸線に対して本体ポート2の軸線と同一方向に延び、側面視で所定角度に傾斜して分岐ポート3とは異なる方向に延びている。
【0027】
流路分岐管1は、下面1a側で図6に示す冶具10に嵌合する場合には、本体ポート2が冶具本体11に形成された溝部12に保持され、分岐ポート3が溝部13に保持される。しかしながら、流路分岐管1は、上面1b側で冶具10に嵌合する場合には、分岐ポート4が立体障害となって、冶具10に保持されない。これによって、流路分岐管1の冶具10への嵌合方向のミスによる流路選択の間違いが防止される。なお、分岐ポート3、4が左右で逆の場合、分岐ポートが3つ以上の場合でも同様である。
【0028】
図2(a)、(b)に示す流路分岐管1は、上下非対称の構造を、本体ポート2および複数の分岐ポートの少なくとも1つのポート(例えば、分岐ポート3、4)の上面1b側に凸部5を形成することによって達成したものである。また、本体ポート2および複数の分岐ポート(例えば、分岐ポート3、4)は、同一平面上に形成されている。また、凸部5は、図示しないが、ポートの軸方向に連続して形成されたものであってもよい。凸部5の幅D2、高さh1は、特に限定されないが、ポート径、例えば、本体ポート2のポート径D1に対して、D2≧0.5D1、h1≧0.5D1が好ましい。凸部5の断面形状は、特に限定されず、半円形状以外の三角形状等であってもよい。
【0029】
流路分岐管1は、下面1a側で図7に示す冶具10に嵌合する場合には、本体ポート2が冶具本体11に形成された溝部12に保持され、分岐ポート3が溝部13に保持され、分岐ポート4が溝部14に保持される。しかしながら、流路分岐管1は、上面1b側で冶具10に嵌合する場合には、凸部5が障害となって、冶具10に保持されない。これによって、流路分岐管1の冶具10への嵌合方向のミスによる流路選択の間違いが防止される。なお、分岐ポート3、4が左右で逆の場合、分岐ポートが3つ以上の場合でも同様である。
【0030】
図3(a)、(b)に示す流路分岐管1は、上下非対称の構造を、複数の分岐ポートの少なくとも1つのポート(例えば、分岐ポート3、4)を上面1b側に湾曲状に立設した構造とすることで達成したものである。立設した分岐ポート(例えば、分岐ポート3、4)の上面1b側の高さh2は、特に限定されないが、ポート径、例えば、本体ポート2のポート径D1に対して、h2≧0.5D1が好ましい。
【0031】
流路分岐管1は、下面1a側で図7に示す冶具10に嵌合する場合には、本体ポート2が冶具本体11に形成された溝部12に保持され、分岐ポート3の一部が溝部13に保持され、分岐ポート4の一部が溝部14に保持される。しかしながら、流路分岐管1は、上面1b側で冶具10に嵌合する場合には、分岐ポート3および分岐ポート4が障害となって、冶具10に保持されない。これによって、流路分岐管1の冶具10への嵌合方向のミスによる流路選択の間違いが防止される。なお、分岐ポート3、4が左右で逆の場合、分岐ポートが3つ以上の場合でも同様である。
【0032】
本発明に係る流路分岐管の第2実施形態について、図面を参照して説明する。
図4(a)、(b)、図5に示すように、流路分岐管1は、装置の冶具10(図11図12参照)に保持され、本体ポート2と、本体ポート2の端部から分岐される複数の分岐ポート(例えば、分岐ポート3、4)と、を有し、複数の分岐ポートの少なくとも1つ(例えば、分岐ポート3)の外形形状が、他の分岐ポート(例えば、分岐ポート4)の外形形状と異なる、いわゆる複数の分岐ポート(例えば、分岐ポート3、4)が本体ポート2に対して左右非対象の構造を有する。また、本体ポート2および複数の分岐ポート(例えば、分岐ポート3、4)は、同一平面上に形成されている。そして、本体ポート2、複数の分岐ポート(例えば、分岐ポート3、4)は、軟質樹脂製の管状体である。また、図4(a)、(b)、図5では、流路分岐管1の分岐ポートとして、2つの分岐ポート3、4を示したが、分岐ポートは3つ以上であってもよい。
【0033】
本体ポート2は、血液等の医療用液体が最初に流入するポートを意味し、図10に示す血液成分分離に使用される血液バッグシステム21において、収容バッグ22側のポートである。また、分岐ポート3は保存バッグ23側のポート、分岐ポート4は薬液バッグ24側のポートである。なお、分岐ポート3が薬液バッグ24側のポート、分岐ポート4が保存バッグ23側のポートであってもよい。
【0034】
本体ポート2および複数の分岐ポート(例えば、分岐ポート3、4)では、チューブ(図10の第1チューブ25、第2チューブ26参照)が接続されて医療用液体の流路となる内腔6の断面形状は円形状であるが、外形断面形状は矩形状等の円形状以外の形状であってもよい。また、本体ポート2および複数の分岐ポート(例えば、分岐ポート3、4)の外形断面形状、外径および長さは、特に限定されず、同一でも異なるものでもよい。さらに、複数の分岐ポート(例えば、分岐ポート3、4)の各々の軸線と本体ポート2の軸線とがなす角度も、特に限定されず、同一でも異なるものでもよい。なお、複数の分岐ポートの少なくとも1つ(例えば、分岐ポート3)の軸線と本体ポート2の軸線とがなす角度が、他の分岐ポート(例えば、分岐ポート4)の軸線と本体ポート2の軸線とがなす角度と異なることが好ましい。これによって、流路分岐管1の冶具10への嵌合方向の取り付け誤りが防止される。また、複数の分岐ポート(例えば、分岐ポート3、4)の各々の軸線方向も、特に限定されず、同一でも異なるものでもよい。
【0035】
図4(a)に示す流路分岐管1は、左右非対称の構造を、複数の分岐ポートの少なくとも1つ(例えば、分岐ポート3)の長さが、他の分岐ポート(例えば、分岐ポート4)の長さと異なる構造とすることで達成したものである。複数の分岐ポート(例えば、分岐ポート3、4)の長さは、特に限定されものではないが、複数の分岐ポートの少なくとも1つ(例えば、分岐ポート3)の外径L2が、他の分岐ポート(例えば、分岐ポート4)の長さL1に対して、L2≦0.5L1であることが好ましい。なお、図示しないが、L1≦0.5L2であってもよい。
【0036】
流路分岐管1は、下面側で図8(a)に示す冶具10に嵌合する場合には、本体ポート2が冶具本体11に形成された溝部12に保持され、分岐ポート3が溝部13に保持され、分岐ポート4が溝部14に保持される。しかしながら、流路分岐管1は、上面側で冶具10に嵌合する場合には、溝部13に形成された段差部13aが障害となって分岐ポート4が冶具10に保持されない。なお、段差部13aの間隔は、分岐ポート3に接続されるチューブ径とほぼ同じ距離である。図示しないが、分岐ポート3の長さが長い場合にも、溝部14に形成された段差部が障害となって分岐ポート3が冶具10に保持されない。これによって、流路分岐管1の冶具10への嵌合方向のミスによる流路選択の間違いが防止される。なお、分岐ポートが3つ以上の場合でも同様である。
【0037】
図4(b)に示す流路分岐管1は、左右非対称の構造を、複数の分岐ポートの少なくとも1つ(例えば、分岐ポート3)の外径が、他の分岐ポート(例えば、分岐ポート4)の外径と異なる構造とすることで達成したものである。複数の分岐ポート(例えば、分岐ポート3、4)の外径は、特に限定されものではないが、複数の分岐ポートの少なくとも1つ(例えば、分岐ポート3)の外径D3が、他の分岐ポート(例えば、分岐ポート4)の外径D4に対して、D3≦0.5D4であることが好ましい。なお、図示しないが、D4≦0.5D3であってもよい。
【0038】
流路分岐管1は、下面側で図8(b)に示す冶具10に嵌合する場合には、本体ポート2が冶具本体11に形成された溝部12に保持され、分岐ポート3が溝部13に保持され、分岐ポート4が溝部14に保持される。しかしながら、流路分岐管1は、上面側で冶具10に嵌合する場合には、分岐ポート4が障害となって、冶具10に保持されない。なお、図示しないが、分岐ポート3が大径の場合にも、分岐ポート3が障害となって、冶具10に保持されない。これによって、流路分岐管1の冶具10への嵌合方向のミスによる流路選択の間違いが防止される。なお、分岐ポートが3つ以上の場合でも同様である。
【0039】
図5に示す流路分岐管1は、左右非対称の構造を、複数の分岐ポートの少なくとも1つ(例えば、分岐ポート3)の外形形状が、他の分岐ポート(例えば、分岐ポート4)の外形形状と異なる構造とすることで達成したものである。具体的には、分岐ポート4の外形形状を軸方向に直線とし、分岐ポート3の外形形状を軸方向に直線以外の曲線等の形状とする。なお、図示しないが、分岐ポート3を直線、分岐ポート4を曲線等としてもよい。直線以外の外形形状は、曲線に限定されず、屈曲線等であってもよい。
【0040】
流路分岐管1は、下面側で図9に示す冶具10に嵌合する場合には、本体ポート2が冶具本体11に形成された溝部12に保持され、分岐ポート3が溝部13に保持され、分岐ポート4が溝部14に保持される。しかしながら、流路分岐管1は、上面側で冶具10に嵌合する場合には、分岐ポート3が障害となって、冶具10に保持されない。なお、図示しないが、分岐ポート4が曲線の場合にも、分岐ポート4が障害となって、冶具10に保持されない。これによって、流路分岐管1の冶具10への嵌合方向のミスによる流路選択の間違いが防止される。なお分岐ポートが3つ以上の場合でも同様である。
【0041】
次に、本発明に係る血液バッグシステムについて、前記流路分岐管を有する血液成分分離に用いられる血液バッグシステムを例にとって、図面を参照して説明する。
図10に示すように、血液バッグシステム21は、収容バッグ22と、保存バッグ23と、薬液バッグ24と、第1チューブ25と、第2チューブ26と、第1封止部材27と、第2封止部材28と、を有する。そして、血液バッグシステム21は、第2チューブ26の接続に前記流路分岐管1を有する。流路分岐管1につては、前記のとおりであるので、説明を省略する。以下、各構成について説明する。
【0042】
収容バッグ22、保存バッグ23、薬液バッグ24は、ポリ塩化ビニル等の軟質樹脂製のシート材を重ね、その周縁を融着または接着し、袋状に構成されたバッグである。
収容バッグ22は、その端部に軟質樹脂製の採液チューブ29が接続され、採液チューブ29を介して血液が採取されるバッグである。ここで、血液は、全血、または、全血から白血球、血小板等の不要物を除去した血液である。また、収容バッグ22は、収容された血液を遠心分離することによって得られる血液成分の一部、例えば濃厚赤血球等を保存するバッグである。保存バッグ23は、遠心分離することによって得られる血液成分の一部、例えば血漿等を保存するバッグである。薬液バッグ24は、遠心分離することによって得られる血液成分の一部に添加する薬液M、例えば赤血球保存液、血小板保存液等を予め収容するバッグである。
【0043】
第1チューブ25、第2チューブ26は、軟質樹脂製のチューブから構成されるものである。チューブを構成する軟質樹脂としては、たとえばポリ塩化ビニル等が挙げられる。第1チューブ25は、一端が第1封止部材27を介して収容バッグ22に接続され、他端が保存バッグ23に接続されもので、収容バッグ22から保存バッグ23に血漿等を移送するチューブ(血漿流路)である。第2チューブ26は、一端が第1チューブ25の途中に接続された軟質樹脂製の流路分岐管1に接続され、他端が第2封止部材28を介して薬液バッグ24に接続されるもので、薬液バッグ24から収容バッグ22に赤血球保存液等の薬液を移送するチューブ(薬液流路)である。第1封止部材27および第2封止部材28は、脆弱部を破断することによって流路が開通するように構成された硬質樹脂製の管状体である。なお、赤血球保存液等の薬液は、第2チューブ26、流路分岐管1および第1チューブ25の上流部および第1封止部材27を介して、収容バッグ22の濃厚赤血球等に添加される。
【0044】
血液バッグシステム21においては、前記した流路分岐管1を有するため、分離装置41および遠心分離移送装置51に冶具10を介して保持される際、前記したように流路分岐管1の冶具10への嵌合方向を間違えると、冶具10に保持されない。したがって、血液バッグシステム21においては、人為的ミスによる間違った流路選択が生じない。
【0045】
本発明に係る血液バッグシステム21は、前記構成に加え、特開2013−203659号公報に記載されているように、採液チューブ29の上流側に、ドナーから血液を採取する血液採取部としての採血針、初流血バッグ、採血バッグ等、採取した血液から不要物を除去する前処理部としての血液処理フィルター等を有するものでもよい。
【0046】
次に、本発明に係る流路分岐管および血液バッグシステムの使用方法について、図面を参照して説明する。血液バッグシシテムの構成については図10を参照する。
まず、遠心分離によって分離された血液成分を自動的にバッグに移送する分離装置に用いる場合について説明する。
【0047】
図11に示すように、分離装置41は、収容バッグ22が第1押圧部43で加圧制御されるように設置される第1設置室42と、薬液バッグ24が第2押圧部45で加圧制御されるように設置される第2設置室44と、保存バッグ23が設置される第3設置室46と、収容バッグ22、保存バッグ23、薬液バッグ24の各バッグ間を連結する第1チューブ25、第2チューブ26をそれぞれ独立に閉鎖/開通させる第1〜第3クランプ47〜49と、を有する。そして、分離装置41は、流路分岐管1を保持する冶具10を有する。
【0048】
分離装置41では、以下の(1)〜(4)を自動的に行うことにより、収容バッグ22に濃厚赤血球製剤、保存バッグ23に血漿製剤が製造される。
(1)採血後の血液バッグシステム21に遠心操作を施した後、収容バッグ22を第1設置室42に、保存バッグ23を第3設置室46に、薬液バッグ24を第2設置室44にセットする。このとき、流路分岐管1は冶具10によって保持される。そして、前記したように、流路分岐管1の冶具10への嵌合方向を間違えると、流路分岐管1が冶具10に保持されない。その結果、以下の(2)〜(4)において、第1〜第3クランプ47〜49が間違った第1、第2チューブを閉塞/開通させることがない。したがって、人為的なミスによる間違った流路選択が生じない。なお、収容バッグ22においては、採取した血液が3層に分離し、上層にエアー層、中層に血漿層、下層に濃厚赤血球層が分離している。また、第1、第2封止部材27、28については、脆弱部を破断して流路が開通した状態とする。
【0049】
(2)第1クランプ47が閉状態、第2、第3クランプ48、49が開状態で、収容バッグ22が第1押圧部43で押圧され、上層のエアーが第1チューブ25、流路分岐管1および第2チューブ26を通って薬液バッグ24に移送される。図示しない光センサー等で血漿層との界面が検出されると、第1押圧部43の押圧が停止する。
【0050】
(3)第2クランプ48が閉状態、第1、第3クランプ47、49が開状態となり、第1押圧部43による押圧が再開され、収容バッグ22から中層の血漿が第1チューブ25および流路分岐管1を通って保存バッグ23に移送される。図示しない光センサー等で濃厚赤血球層との界面が検出されると、第1押圧部43の押圧が停止する。
【0051】
(4)第1クランプ47が閉状態、第2、第3クランプ48、49が開状態となり、薬液バッグ24が第2押圧部45で押圧され、薬液バッグ24の薬液(赤血球保存液)Mが第2チューブ26、流路分岐管1および第1チューブ25を通って収容バッグ22に残存している濃厚赤血球層に移送される。
【0052】
次に、遠心操作行いながら血液成分のバッグへの移送を自動的に行う遠心分離移送装置に用いる場合について説明する。
【0053】
図12に示すように、遠心分離移送装置51は、複数のユニット53に区画された遠心ドラム52を有し、各ユニット53には、収容バッグ22が挿入される第1バッグポケット54と、保存バッグ23および薬液バッグ24が挿入される第2バッグポケット55と、第1バッグポケット54の側面側から回転径方向に進退可能な押圧部56と、バッグ間を連結する第1、第2チューブ25、26をそれぞれ独立に閉鎖/開通させる図示しない第1、第2クランプと、を有する。そして、遠心分離移送装置51は、流路分岐管1を保持する冶具10を有する。
【0054】
遠心分離移送装置51では、採血後の血液バッグシステムをユニット53にセットする際、流路分岐管1を冶具10に保持して、収容バッグ22を第1バッグポケット54に設置し、薬液バッグ24および保存バッグ23を第2バッグポケット55に設置する。なお、第1、第2封止部材27、28については、脆弱部を破断して流路が開通した状態とする。ここで、流路分岐管1は、前記したように、冶具10への嵌合方向を間違えると、冶具10に保持されない。その結果、図示しない第1、第2クランプが間違った第1、第2チューブ25、26を閉塞/開通することがない。したがって、人為的なミスによる間違った流路選択が生じない。
【0055】
次に、遠心分離移送装置51では、遠心ドラム52を回転させて、収容バッグ22に遠心力を負荷すると、収容バッグ22内の血液は、比重差によって回転半径方向の外側から濃厚赤血球層、血漿層、エアー層の順に分離される。そして、遠心ドラム52を回転させながら、図示しない第1、第2クランプおよび押圧部56を制御して、前記(2)〜(4)と同様な操作を自動的に行うことにより、収容バッグ22に濃厚赤血球製剤、保存バッグ23に血漿製剤が製造される。
【符号の説明】
【0056】
1 流路分岐管
1a 下面
1b 上面
2 本体ポート
3、4 分岐ポート
10 冶具
21 血液バッグシステム
22 収容バッグ
23 保存バッグ
24 薬液バッグ
25 第1チューブ
26 第2チューブ
27 第1封止部材
28 第2封止部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12