特許第6591330号(P6591330)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6591330単数または複数の結石を回収する回収装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591330
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】単数または複数の結石を回収する回収装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/22 20060101AFI20191007BHJP
【FI】
   A61B17/22
【請求項の数】14
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-61741(P2016-61741)
(22)【出願日】2016年3月25日
(65)【公開番号】特開2016-187554(P2016-187554A)
(43)【公開日】2016年11月4日
【審査請求日】2019年1月9日
(31)【優先権主張番号】14/671,083
(32)【優先日】2015年3月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】本田 圭
(72)【発明者】
【氏名】神野 誠
【審査官】 後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0231677(US,A1)
【文献】 特表2008−522755(JP,A)
【文献】 特表2010−532211(JP,A)
【文献】 特表平9−508554(JP,A)
【文献】 特開2016−67702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/22−17/221
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の管腔内に位置する寸法を有し、先端側に吸引ヘッドの筐体が配設された長尺の部材と、
前記長尺の部材の内部に位置する回転可能な部材と、
前記回転可能な部材と一体となって移動するように前記回転可能な部材に接続されたシャフトであって、駆動源に接続可能とすることによって前記回転可能な部材とともに当該シャフトが回転することにより、前記回転可能な部材の回転が結石を前記長尺の部材に向けて吸引する吸引力を生成するように構成されたシャフトと、
中心軸を有する先端部と中心軸を有する基端部を有する軸があって、前記シャフトを覆うとともに前記長尺の部材と共に軸方向に移動し、かつ回転するように前記長尺の部材に接続されているシャフトカバーと、を備え、
前記シャフトカバーの前記先端部の前記中心軸は、前記シャフトカバーの前記基端部の前記中心軸からオフセットしている、生体の管腔内の結石を回収するための装置。
【請求項2】
前記シャフトカバーは、外力が付加されていない状態において折れ曲がる湾曲区間を有し、
前記湾曲区間は、前記シャフトカバーの先端区間の基端側に配置されており、
前記シャフトカバーは、長尺体のルーメン内に移動可能に配置されており、i)第1の位置であって、前記シャフトカバーの前記先端区間が前記ルーメンの入口に位置し、前記湾曲区間が前記ルーメン内に位置することにより、前記長尺体の前記中心軸と前記シャフトカバーの前記先端区間の前記中心軸との間に角度が形成される位置と、ii)第2の位置であって、前記湾曲区間が前記ルーメンの前記入口に位置しつつ、前記シャフトカバーの前記先端区間が前記長尺体の外部に位置することにより、前記長尺体の前記中心軸と前記シャフトカバーの前記先端区間の前記中心軸との間の角度が、前記長尺体の前記中心軸と前記第1の位置における前記シャフトカバーの前記先端区間の前記中心軸との間の角度よりも小さくなる位置と、の間を移動する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記シャフトカバーは、前記湾曲区間の基端側に位置する線形に延在する基端区間を備え、
前記先端区間は、線形に延在する先端区間であり、
前記基端区間は中心軸を有し、前記先端区間は中心軸を有し、
前記先端区間の前記中心軸と前記基端区間の前記中心軸は非同軸に配置されている請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記シャフトカバーは、前記湾曲区間の基端側に位置する線形に延在する基端区間を備え、
前記先端区間は、線形に延在する先端区間であり、
前記線形に延在する基端区間と前記線形に延在する先端区間はそれぞれ軸方向の範囲を有し、
前記線形に延在する基端区間の前記軸方向の範囲は前記線形に延在する先端区間の前記軸方向の範囲より大きい請求項2または請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記長尺体は、尿管鏡である請求項2〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
接触部が前記吸引ヘッドの筐体の基端側に配設されており、
前記接触部は、前記シャフトカバーが前記吸引ヘッドの筐体とともに長尺体に対して軸方向基端側に移動すると、前記吸引ヘッドの筐体を前記長尺体の先端部に対して折り曲げるように構成されており、
前記吸引ヘッドの筐体の中心軸が前記長尺体の前記先端部の中心軸に対して0°と180°を除く角度に折れ曲がる請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記接触部は、前記吸引ヘッドの筐体とともに一体的に組み込まれて形成される請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記接触部は、前記シャフトカバーが前記吸引ヘッドとともに前記長尺体に対して軸方向基端側に移動して、前記吸引ヘッドの筐体を前記長尺体の前記先端部に対して折り曲げる際に前記長尺体の前記先端部に接触する湾曲部を有する請求項6または請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記接触部は、前記シャフトカバーの少なくとも一部を囲む請求項6〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記接触部は、前記吸引ヘッドの筐体とは別体であるとともに、前記長尺体とは別体であり、前記接触部は、前記長尺体のルーメンに嵌合する突起を含む、請求項6に記載の装置。
【請求項11】
前記吸引ヘッドの筐体は、前記長尺体に対向する基端を有し、前記接触部は、前記吸引ヘッドの筐体とは別体であるとともに、前記長尺体とは別体であり、前記接触部は、前記シャフトカバーが前記長尺体に対して基端方向に移動すると、前記吸引ヘッドの筐体の基端に接触する湾曲した端部を有する請求項6に記載の装置。
【請求項12】
前記接触部は、前記吸引ヘッドに固定された板状の一方の部材と、前記シャフトカバーが貫通する貫通孔を備える他方の部材と、前記一方の部材と前記他方の部材を接続するヒンジと、を有し、
前記ヒンジは、前記シャフトカバーが軸方向基端側に移動して、前記一方の部材が前記長尺体の前記先端部に当接するのに伴って前記一方の部材に対して前記他方の部材を屈曲させる、請求項6に記載の装置。
【請求項13】
前記接触部は、前記吸引ヘッドの筐体とは別体であるとともに、前記長尺体とは別体であり、前記吸引ヘッド側に配置される第1脚部と、前記第1脚部から離間し、前記長尺体の前記先端部側に配置される第2脚部と、を含み、
前記第1脚部および前記第2脚部の各々は、前記シャフトカバーの軸方向に対して交差する方向に延在しており、かつ、前記シャフトカバーが貫通する貫通穴を有する請求項6に記載の装置。
【請求項14】
前記長尺体は尿管鏡である請求項6〜13のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体より塊を回収するためのシステムおよび装置を広く含む。より具体的には、本発明は、人体の一部から石(例えば単数または複数の結石)を回収し、回収した石を生体の他の箇所に移動する装置、およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
尿結石(例えば、腎臓結石および尿管結石)という用語は、人体内で形成される塊や石、典型的には固体の粒子が腎臓および/または尿管に位置していることをいう。結石は、シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、尿酸、シスチン、スツルバイトを含む様々な化学成分を呈する。
【0003】
石にまつわる疾病(例えば、腎臓結石や尿管結石)は、比較的一般的な泌尿器系障害である。結石が体内に存在すると、様々な症状を呈し、多くの内科的疾病を引き起こす可能性がある。例えば、腎盂および/または腎杯(例えば、腎臓の管腔)に結石が存在すると、血尿、尿路閉塞、感染、ひいては、鈍痛から通常の痛み止めでは治癒しない激痛まで、さまざまな度合いの痛みを引き起こす可能性がある。尿管に石や結石が存在することにより、比較的激しい度合いの痛みとなり、排尿時の痛みや血尿と同時に、脇腹や背中の痛み、肋骨の下の痛み、場合によっては下腹部や鼠径部にまで広がる場合もある。
【0004】
幸いにも、結石や石は特に医療が介入する必要がないまま、体から排出されてしまうことが多い。結石が自然に体から排出されないような状況では、医療処置が必要となってくる。
【0005】
今まで、結石または腎臓結石を処置または対処するため、3つの主要な治療法が使用されてきた。これらは、衝撃波砕石術(ESWL)、経尿道砕石術または尿管鏡検査(URS)、そして、経皮的腎結石摘出術(PCN)とも呼ばれる経皮的腎尿管切石術(PCNL)の3つが含まれる。
【0006】
衝撃波砕石術は、体外治療法として行う。この治療法は、砕石器とよばれる機器を使用し、超音波または衝撃波を体外から皮膚や組織を通して結石または石に当てることによって操作するものである。繰り返し衝撃波を当てることにより石に応力を与え、最終的に個々の石を細かく砕いて尿と一緒に尿路を通りやすくするものである。衝撃波砕石術の利点の一つとしては、処置が比較的簡単であるという点である。しかし、衝撃波砕石術の後、腎臓結石が再発する可能性が比較的高いということがわかっている。
【0007】
経尿道砕石術または尿管鏡検査はその代替の形態の治療法である。この治療法では、尿管や腎臓内の結石まで届く尿管鏡と呼ばれる小型の光ファイバー器を使用する。尿管鏡は、剛性の尿管鏡、または、より一般的には可撓性を有する尿管鏡である。尿管鏡により、医療の専門家は、尿管鏡を尿管に沿って移動させ、膀胱や尿道を通して腎臓に進入させる際に、石を可視化することができる。結石が可視化されると、かごのような装置を使って、より細かい石を捕らえて取り除く。結石が、1個の石として、取り除くには大きすぎるような場合には、レーザーエネルギーを使って細かくすることもできる。
【0008】
治療の第3の形態は、経皮的腎結石摘出術である。この処置は、ESWLやURSでは効果的に治療ができないような比較的大きい結石に対して使用されることが多い。経皮的腎結石摘出術では、腎瘻造設術、すなわち、適当な箇所を切開し、穿孔針を刺し、透視下でガイドワイヤを穿孔針の管腔に通して、腎臓内に進入させて位置決めし、穿孔した箇所を広げていく。そして、腎瘻造設術により、腎臓内視鏡を腎臓の中へ移動させ、結石を可視化する。結石は、超音波プローブまたはレーザを使って粉砕することができる。
【0009】
これらの処置は一般的に行われているが、欠点があるのは否めない。たとえば、結石は、生体内で、砕石術による治療では誘導しきれない場所に位置している場合もある。結石は、損傷した組織領域にある場合もあり、また/あるいは、適切な機器でもアクセスしにくい小さなスペースに位置している場合もある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
ここで、本開示の1つの態様は、生体の管腔内に位置する寸法を有し、先端側に吸引ヘッドの筐体が配設された長尺の部材と、前記長尺の部材の内部に位置する回転可能な部材と、前記回転可能な部材と一体となって移動するように前記回転可能な部材に接続されたシャフトであって、駆動源に接続可能とすることによって前記回転可能な部材とともに当該シャフトが回転することにより、前記回転可能な部材の回転が結石を前記長尺の部材に向けて吸引する吸引力を生成するように構成されたシャフトと、中心軸を有する先端部と中心軸を有する基端部を有する軸があって、前記シャフトを覆うとともに前記長尺の部材と共に軸方向に移動し、かつ回転するように前記長尺の部材に接続されているシャフトカバーと、を備え、前記シャフトカバーの前記先端部の前記中心軸は、前記シャフトカバーの前記基端部の前記中心軸からオフセットしている、生体の管腔内の結石を回収するための装置である。
【0011】
ここで開示する結石回収装置の他の特徴と態様および方法は、添付の図面を参照しながら考察した下記の詳細な説明より明らかとなろう。図面において、同様の要素については、同様の参照符号を付している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、長尺体内部のルーメンを介して操作部材(図1には図示せず)に接続された回収装置を含む、単数または複数の結石を回収するために有効なシステムの概略図である。
図2図2は、ここで開示する回収装置の例を表す実施形態に係る回収装置の側面図であり、一部を断面で示す。
図3図3は、図2に示す回収装置の一部を形成するインペラの正面図である。
図4図4は、人体解剖学の一部を示す、尿路を含む概略図である。
図5図5は、人間の腎臓の概略図である。
図6図6は、尿管鏡のような長尺体を介して操作部材に接続された回収装置を含む回収システムの概略図である。
図7A図7Aは、回収装置によって回収される人体内部の結石の例を示す図である。
図7B図7Bは、回収された結石を生体の異なる箇所に移動するために動かされている回収装置の概略図である。
図7C図7Cは、結石回収装置が、先に回収した結石を解放する際の概略図である。
図8図8は、図1に示す回収装置の一部を形成するシャフトカバーの斜視図である。
図9図9は、ここで開示する回収装置の別の例を表す回収装置の実施形態の概略図である。
図10A図10Aは、一操作状況による図8に示すシャフトカバーを装備した回収装置の側面図である。
図10B図10Bは、後方に向かって吸引ヘッドを移動させて吸引ヘッドを長尺体に対して折り曲げた後の、別の操作状況による回収装置を示す図である。
図10C図10Cは、図10Aに示す回収装置を示す図であり、吸引ヘッドが図10Bに示す位置から180°回転した状態の別の操作状況を示す図である。
図10D図10Dは、さらに吸引ヘッドを尿管鏡によって観察できる箇所に位置させるために前方へ移動させた操作状況による回収装置を示す図である。
図10E図10Eは、図10Bに示す位置からシャフトカバーを引っ張ったさらに別の操作状況にある回収装置を示す図である。
図11A図11Aは、ここに開示する回収装置の別の例を示す回収装置の一実施形態の側面図であり、回収装置を、吸引ヘッドを尿管鏡に対して折り曲がるように構成した例を示す図である。
図11B図11Bは、後方に向かって吸引ヘッドを移動させて吸引ヘッドを尿管鏡に対して折り曲げた後の、別の操作状況による回収装置を示す図である。
図11C図11Cは、図11Aに示す回収装置を示す図であり、吸引ヘッドが図11Aに示す位置から180°回転した状態の別の操作状況を示す。
図12A図12Aは、ここに開示する回収装置のさらに別の例を示す回収装置の一実施形態の側面図であり、回収装置を、吸引ヘッドを尿管鏡に対して折り曲がるように構成した例を示す図である。
図12B図12Bは、吸引ヘッドを後方に向かって移動させて吸引ヘッドを尿管鏡に対して折り曲げた後の、別の操作状況による回収装置を示す図である。
図13A図13Aは、ここに開示する回収装置の別の例を示す回収装置の一実施形態の側面図であり、回収装置を、吸引ヘッドを尿管鏡に対して折り曲がるように構成した例を示す図である。
図13B図13Bは、後方に吸引ヘッドを移動させて吸引ヘッドを尿管鏡に対して折り曲げた後の、別の操作状況による回収装置を示す図である。
図14A図14Aは、ここに開示する回収装置のさらに別の例を示す回収装置の一実施形態の側面図であり、回収装置を、吸引ヘッドを尿管鏡に対して折り曲がるように構成した例を示す図である。
図14B図14Bは、後方に向かって吸引ヘッドを移動させて吸引ヘッドを尿管鏡に対して折り曲げた後の、別の操作状況による回収装置を示す図である。
図15A図15Aは、ここに開示する回収装置の別の例を示す回収装置の一実施形態の側面図であり、回収装置を、吸引ヘッドを尿管鏡に対して折り曲がるように構成した例を示す図である。
図15B図15Bは、後方に向かって吸引ヘッドを移動させて吸引ヘッドを尿管鏡に対して折り曲げた後の、別の操作状況による回収装置を示す図である。
図16A図16Aは、ここに開示する回収装置の別の例を示す回収装置の一実施形態の側面図であり、回収装置を、吸引ヘッドを尿管鏡に対して折り曲がるように構成した例を示す図である。
図16B図16Bは、後方に向かって吸引ヘッドを移動させた後の、別の操作状況による回収装置を示す図である。
図16C図16Cは、図16Aに示す回収装置を示す図であり、吸引ヘッドが図16Bに示す位置から180°回転した状態の別の操作状況を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
開示する発明の例としてここに説明する回収システム、装置、および方法の特徴と態様を下記に詳細に説明する。ここに開示した回収するための方法、システムおよび装置は、特に、尿管に位置する単数または複数の結石(尿管結石)と、腎臓に位置する結石(腎臓結石)を含む、生体内にある単数または複数の結石を回収するために有効な適用方法であり、その方法、システム、および装置は、この点に関してそれらに限るものではない。下記に示す結石は、単数の結石とともに複数の結石も表すものとする。
【0014】
一般的に、ここで開示する結石除去/回収装置は、本発明の回収装置(および方法)の例を表すいくつかの実施形態によって代表されるように、生体内の、回収装置が回収すべき結石を吸引または引き込みすることができる位置に位置決めされるように構成される。以下、開示された発明の例を表すさまざまな実施形態により、ここで説明する結石回収装置、および方法を含む結石回収システムの特徴と態様を詳細に説明する。結石を回収するためにここで開示するシステム、装置、および方法は、人体内の、結石の除去が困難な場所に位置する結石を回収するのに特に有効な適用方法である。
【0015】
一般的に、ここで開示する結石回収装置は、本発明の結石回収装置(および方法)の例を表すいくつかの実施形態によって特徴付けられるように、生体から回収すべき、そして生体内の新たな(別の)箇所に移動すべき結石の箇所に隣接する生体の内部の位置に位置決めされるように構成される。結石(単数または複数の石)は、回収装置で吸引力を生成することにより、回収装置に向かって引き出される。結石が回収された後、回収装置が結石を保持または拘束し、回収装置が回収された結石を再配置する生体内の新たな箇所に移動する。保持された結石は、その後、生体内の新たな箇所で解放される。そして、移動した結石に対し、適当な処置(例えば、砕石術)を行う。
【0016】
図面に戻るが、図1は、生体内にある結石(単数または複数の石)を回収および移動させるためのシステム20を概略で示す図である。このシステム20は、回収装置30および、回収装置30を生体の所望の箇所まで送るためのルーメンを有する長尺体40を備える。ここで開示するシステムの一例を表す図示の実施形態では、長尺体40は尿管鏡である。尿管鏡40は、下記にさらに詳しく示すように、回収装置30の一部を受容するルーメンまたは機器通路42を有する。回収装置30の使用中、尿管鏡40は、尿管アクセスシース24を通って生体内に誘導される。尿管鏡40は、尿管アクセスシース24内のルーメン28内に通す。
【0017】
結石回収装置30に関するさらなる詳細な情報および特徴は、図1図2、および図3を参照しながら確認できる。結石回収装置30は、開放された先端52を有する筐体51、または、長尺の部材を有する吸引ヘッド50を備える。筐体51は、筐体51の内部を形成するルーメン54を有する管状の筐体である。筐体51は、筒型の長尺の部材または筐体として構成することができる。
【0018】
回収装置30は筐体51の内部に位置する回転可能な吸引生成部も有する。図示の実施形態では、回転可能な吸引生成部は、インペラ60の形態を有する。図1および図3に示すように、インペラ60は、筐体51の内部の、開放された先端52から離れた箇所に(すなわち、基端側にまたは後方に)位置している。インペラ60の例を図3に示す。インペラ60は、中心ハブ64に固定され、周方向に互いに間隔をあけて位置する複数のフィンまたは羽根62を有する。インペラ60のフィンまたは羽根62は、ねじれたフィンまたは羽根である。ハブ64は、回転可能に駆動されるシャフト(駆動軸)72に固定または接続されており、シャフト72およびインペラ60は、共に一体となって回転する。インペラ60は、インペラ60の一方の回転方向への回転が筐体51の(内部の)ルーメン54内で吸引を引き起こし、一方、インペラ60の反対の回転方向への回転が、逆の結果、すなわち、ルーメン54から外側に向いた力を引き起こす。図2および図3に示すインペラ60の羽根62は、羽根62の先端(径方向最も外側に位置する羽根の先端)から羽根62が取り付けられているインペラ60の底部に向かってねじれているのが好ましい。インペラ60の回転方向が、羽根62のねじれ方向と同じであると、吸引力が生成される。このインペラ60の回転方向は、オーバースピン方向と呼ぶ。
【0019】
インペラ60のハブ64に接続されたシャフト72は、シャフトカバー70内部に位置し、それによって覆われている。図示の実施形態では、シャフト72は、シャフトカバー70によって完全に覆われている。シャフトカバー70は、吸引ヘッド50を形成する筐体51に固定されており、シャフトカバー70の移動により、(筐体51とインペラ60を含む)吸引ヘッド50が移動する。
【0020】
吸引ヘッド50を形成する筐体51は、複数の周方向に間隔を空けた開口または貫通穴54を含む。これらの開口または貫通穴54は、筐体51の先端より、筐体51の基端より近傍に位置させる。下記の説明からさらに明確となるように、これら開口または貫通穴54は、回収装置30の操作中に排出通路を形成する。すなわち、回収装置30の操作中に吸引ヘッド50の筐体51の中に引き出される液体(例えば水)が、開口または貫通穴54を通って吸引ヘッド50から排出または放出される。
【0021】
吸引ヘッド50は、さらに、筐体51内の、インペラ60の先端と吸引ヘッド50の開放された先端52との間の位置にフィルタ56を備える。このフィルタ56は、流体(例えば、水のような液体)の通過を許容する一方、また、回収装置30の操作で回収した結石の通過を阻止する円板型の網状部材である。フィルタ56は、吸引ヘッド50の内周と接触する外周(外周面)を有する。フィルタ56は、吸引ヘッド50を形成する筐体51の内部に位置決めされ、固定されている。
【0022】
吸引ヘッド50は、また、フィルタ56と筐体51の開放された先端52の間に位置する回収空間58も備える。下記にさらに詳細に説明するように、この回収空間58は、回収装置30を操作して回収された結石を受容するように構成されている。
【0023】
回収装置30の操作中、吸引ヘッド50は結石を回収するため、生体内のある位置に位置する。すなわち、回収装置30の操作中は、吸引ヘッド50は、回収すべき結石に対して、吸引ヘッド50に向かって引き込む(向かって吸引する)ようにして結石を回収できるような位置に位置する。吸引ヘッド50が回収すべき結石に対して適した位置に位置決めされたら、インペラ60は、シャフト72に接続した駆動源28の操作を介して回転駆動される。駆動源28はシャフト72を回転させ、それにより同様にインペラ60を回転させる。インペラ60は、筐体51の内部で吸引力を生成する方向に回転駆動され、結石を吸引ヘッド50の開放された先端52に向かって引き出す。インペラ60の回転によって生成された吸引力は、吸引ヘッド50の開放された先端52を介して(参照符号68で図1に概略的に示す)筐体51内の回収空間58内に比較的小さい結石を引き出す。インペラ60の回転によって生成された吸引力は比較的大きい結石を引き出して吸引ヘッド50の先端に接触させることもできる。すなわち、比較的大きい結石を吸引ヘッド50の先端と接触して拘束する筐体51の内部で十分な吸引力を生成すれば、吸引ヘッド50の開放された先端52の寸法より大きい外寸を有する結石であっても、吸引ヘッド50に向かって引き出し、吸引ヘッド50で保持することができる。
【0024】
これにより、結石(すなわち回収すべき結石)が、インペラ60の回転操作により回収空間58の中に引き込まれるまたは吸引されるような位置に吸引ヘッド50の開放された先端52が位置するように、吸引ヘッド50を生体の中に位置決めすることによって、結石を回収し、回収した結石を回収空間58または吸引ヘッド50の先端に拘束することができる。インペラ60が回転し、吸引ヘッド50に向かって結石を引き出すと、吸引ヘッド50の開放された先端52を通って、液体(例えば水)が回収空間58の中まで引き込まれる。この液体は、フィルタ56を通過し、開口または貫通穴54を通って吸引ヘッド50の筐体51の外まで排出または放出される。一方、フィルタ56は、吸引ヘッド50の回収空間58の中に引き込まれた結石が、フィルタ56を挿通できない寸法となっている。インペラ60の回転操作は、液体の流れを引き起こし、液体が吸引ヘッド50の開放された先端52に入り、フィルタ56を通過し、吸引ヘッド50の貫通穴または開口54を通して外に出る。インペラ60の操作により、開口または貫通穴54を通って排出された液体は、少なくとも部分的に吸引ヘッド50の内部に引き戻すこともできるため、同じ液体が繰り返し吸引ヘッド50に引き込まれ、吸引ヘッド50から排出され、吸引ヘッド50に引き込まれるなど、やや乱流の連続した液体サイクルを生成する。この乱流の連続した液体のサイクルにより、吸引ヘッド50の回収空間58内の結石の回収が容易になる。これは、インペラ60の回転ごとの吸引力が増すからである。さらに、結石は、浮き上がる傾向にあるので、結石の引き込み、または回収が容易になる。結石を生体の狭い管腔(例えば尿管)に引き込むとき、連続した液体のサイクルにより、結石を包み込む流体が枯渇することを防ぐことができる。
【0025】
次に、ここで開示された結石を回収するためのシステムが使用され得る内容と、結石を回収するためのシステムの操作方法を説明する。生体内に位置する結石を破砕する必要がある場合、またはそのほうが望ましい場合もある。例えば、比較的小さい結石を本体から引き出すことができるが、結石が比較的大きいと(例えば、尿管の直径より大きいと)、結石を生体から取り除く事は不可能である。このような状況では、結石をより小さく破砕したほうが望ましい。これは、砕石術によってできることも多い。しかし、状況によっては砕石術を行って生体内の結石を破砕するのが困難な場合もある。例えば、損傷した組織がある場所や、例えば、損傷した組織がある尿管の一部に結石が位置している場合もある。あるいは、結石は、ややサイズが小さく(すなわち狭い空間で)、砕石術を行うのに適した機器や設備を使ってもアクセスするのが難しい生体(例えば尿管)の部分(例えば、下腎杯)に位置している場合もある。ここに説明する方法は、結石を回収する工程と、回収した結石を、砕石術を実施するためのより大きい空間(例えば、腎臓または上腎杯)を供する、あるいは正常な(損傷していない組織)組織がある領域を供する新たな(異なる)箇所に移動する工程を含む。
【0026】
ここで開示する回収装置およびシステムは、生体内の一箇所から結石を回収し、回収した結石を、例えば、結石を破砕するための砕石術がより行いやすい新たな(異なる)場所に移動し、新たな箇所で、回収して移動した結石を解放するように構成されている。例として、また、図4を参照して、尿管内の(狭いまたは損傷した組織領域の例を表す)箇所Xで結石を回収し、回収した結石を尿管内の(広いまたは正常で損傷していない組織の領域の例を表す)位置X’に移動することができる。また、(狭い、または損傷した組織の領域の例を表す)個所Yで結石を回収し、(広い、または正常な損傷していない組織の別の例を表す)腎臓内の位置Y’に回収した結石を移動することができる。
【0027】
結石を回収し、移動するため、図6に示す回収システム20を使用する。特に、結石回収装置30を、操作部材26と尿管鏡40と共に使用する。操作部材26は、シャフトカバー70に接続されているため、操作部材26の操作によりシャフトカバー70が移動する。すなわち、操作部材26の操作により、シャフトカバー70が軸方向に移動し、それが吸引ヘッド50(インペラ60とフィルタ56も含む)も同様に軸方向に移動させる。シャフトカバー70の内部に位置すると共にその軸方向の長さに沿って延在するシャフト72が駆動源28に接続されている様子を図6に概略的に示す。駆動源28の操作によりシャフト72が回転し、それにより、結石回収装置30の吸引ヘッド50の筐体51内に位置するインペラ60も同様に回転させる。図6に示すように、シャフトカバー70およびシャフト72は操作部材26から延在し、尿管鏡40内の機器通路42の入口44に進入し、尿管鏡40を通り、尿管鏡40の先端部46の出口から出る。
【0028】
使用中は、シャフトカバー70を吸引ヘッド50の筐体51に接続し、シャフトカバー70とシャフト72の先端は尿管鏡40の先端部46にある機器通路42の出口に挿入される。シャフトカバー70とシャフト72は、シャフトカバー70およびシャフト72の基端が尿管鏡40の入口44から出るまで、尿管鏡40のルーメン(機器通路42)を通じて、シャフトカバー70の基端まで押し込まれる。尿管鏡シャフト72の基端はさらに駆動源28に接続され、シャフトカバー70の基端は操作部材26に固定される。
【0029】
尿管鏡40は、可撓性を有する尿管鏡が好ましい。尿管鏡40は、図1図6の略図で示す対物レンズ48を有する観察システムを含む。周知のように、これにより、使用者またはオペレータの視野が結石の場所を突き止め、結石を回収し、結石を新たな箇所に移動し、新たな箇所で結石を解放するという処置が行いやすくなる。
【0030】
次に、図6に示すように尿管鏡40の先端側に配置された回収装置30が生体内に誘導される。これは、図1に略図で示す尿管アクセスシース24によって行うことができる。回収装置30を生体に一度導入したら、操作部材26を操作することによって回収装置30を生体内の所望の位置まで、前進させる。回収装置30は、吸引ヘッド50の開放された先端52が回収すべき単数または複数の結石の近傍または隣接して位置されるよう配置されるのが好ましい。すなわち、回収すべき結石に対し、吸引ヘッド50の操作(インペラ60の回転)中に生成された吸引力で結石を吸引ヘッド50へ向けて引き込む位置に開放された先端52が位置するように回収装置30を移動させるのである。
【0031】
吸引ヘッド50を回収すべき結石に対して適した位置に位置決めしたら、駆動源28(例えば歯車付き電動機)を操作して、インペラ60を吸引ヘッド50の内部で吸引が生成される方向に回転させる。これにより、吸引ヘッドの先端の開放端52に向けて、かつ吸引ヘッド50の先端部の回収空間58の内部に結石が吸い込まれる、または引き込まれる(結石が十分に小さいと仮定する)。上記のように、結石が吸引ヘッド50に向けて(回収空間58内部へ)引き込まれると、液体も一緒に吸引ヘッド50内へ引き込まれる。この液体は、フィルタ56を通過でき、開口54を通って排出される。一方、フィルタは、回収空間58内に引き込まれた結石がフィルタ56を通過するのを防ぐ。よって、回収空間58に入った、回収された結石は回収空間58の中に残る。
【0032】
図7Aから7Cは、ここに開示する、吸引ヘッド50の操作を通じて結石68を回収し(図7A)、吸引ヘッド50と回収した結石68を新たな箇所へ移動させ(図7B)、結石68を解放する(図7C)工程を含む方法の3つの態様を示している。図7Aは吸引ヘッド50に向けて引き出され吸引ヘッド50の開放された先端52に対して拘束されている結石68の概ねの様子を示す。この図示の形では、回収された結石68は吸引ヘッド50の内部のルーメン(回収空間58)の内径より大きい外形を有している。これは単なる例示に過ぎず、図1に略図で示すような、吸引ヘッドの開放された先端52を通過して回収空間58の内部に位置させることができるような小さい寸法の結石を回収する際にも同様の操作を行うということは理解しておくべき事項である。
【0033】
結石68の回収、吸引ヘッド50の移動中の結石68の保持、および回収された結石の解放は、吸引ヘッド50の様々な操作パラメータを制御することによって行うことができる。これらの操作パラメータには、インペラ60の回転操作(オン・オフ)を含み、インペラ60の回転速度、およびインペラ60の回転方向が含まれる。すなわち、インペラ60の回転操作、回転速度、および回転方向を変化させることによって、結石68の回収、保持、および解放が制御できる。
【0034】
結石68の回収中、インペラ60は、回転しており(すなわち、回転操作がオン)、また、比較的高い速度(例えば、15,000rpmから20,000rpm)で回転しており、さらに、吸引ヘッド50で吸引力を生成するようにオーバースピン方向に回転しているのが好ましい。このように、結石68は、吸引ヘッド50の開放された先端52に向かって引き込まれることになる。結石68が吸引ヘッド50の開放された先端52より小さい場合は、図1に示すように、結石68は回収空間58に入る。結石68が吸引ヘッド50の開放された先端52より大きい場合には、結石68は図7A図7Cに示すように吸引ヘッドの先端に拘束される。
【0035】
結石68が回収された後、回収された結石68を吸引ヘッド50の回収空間58内あるいは、吸引ヘッド50の先端に保持しながら吸引ヘッド50を移動して回収した結石68を新たな(異なる)箇所へ搬送する必要がある。回収した結石68を保持するため、駆動源28の操作を続けることにより(すなわち、回転操作をオンとすることにより)、インペラ60が回転を続ける。このときのインペラ60の回転方向は、結石68の回収中のインペラ60の回転方向と同じである。さらに、インペラ60の回転速度は単数または複数の結石を回収している間のインペラ60の回転速度と同様の比較的高速、もしくはわずかに低い回転速度(例えば12,000rpm〜15,000rpm)でよい。
【0036】
上記の方法で吸引ヘッド50を操作し、回収した結石68を保持している間、吸引ヘッド50は操作部材26の操作により移動し、吸引ヘッド50の開放された先端52を、回収した結石68を解放する新たな箇所に位置決めする。吸引ヘッド50がこの位置に到達したら、吸引ヘッド50を操作して、結石68を解放する必要がある。そのため、オペレータは、駆動源28の操作を止めて、保持力がなくなり、回収された結石68は吸引ヘッド50の開放された先端52から自然に落下する。この回転がオフの状態では、回収空間58にて保持されている回収された結石60は、吸引ヘッド50の小さな動きによって容易に解放することができる。結石68の解放をより厳密にまたは正確に制御すべき状況では、あるいは、結石68が回収空間58に詰まってしまって結石68を回収空間58から解放するのが困難な状況では、オペレータは、駆動源28がシャフト72とインペラ60を、単数または複数の結石の回収および保持中のインペラとシャフトの回転方向とは反対方向に回転させるように、駆動源28の操作を変更する。すなわち、インペラ60をバックスピン方向に操作する。結石68を解放中のインペラ60の回転速度は、好ましくは、吸引ヘッド50が新たな箇所に移動されるときは、結石68を保持している間のインペラ60の回転速度より遅いほうが好ましい。
【0037】
回収された結石68を解放後、回収装置30は生体から取り外されるか、あるいは生体内のある位置へ移動されて他の結石を回収する。
【0038】
上記のようにして、結石を除去するのに適せず、砕石術を使用するのにふさわしくない生体の部分から結石を好適に回収する。このように、回収装置30を使用することにより、結石を回収し、また、小片を体内から自然に、または適した機器を使って除去できるよう、結石を小片に破砕する砕石術を使用できる他の箇所に移動することができる。上記の説明では、回収装置30を使用して結石を回収し、回収した結石を生体の新たな箇所に移動すると説明している。しかし、ここで開示した回収装置はこの使用方法に限定されるものではない。例えば、回収装置30を生体から結石を取り除くための機器として使用することができる。
【0039】
図9は、上記の、図1図2、および図6に示した吸引ヘッド50の構成をわずかに変形したものを示す。図9に示す吸引ヘッド50’の実施形態は、吸引ヘッド50’の開放された先端にゲル状の材料53を有する。ゲル状の材料53は、吸引ヘッド50’上の結石68の保持をしやすくする圧縮性の部材53を構成するため、例えば、結石68は、結石68が新たな箇所に搬送されている間に吸引ヘッド50’から離れることがない。ゲル状の材料53は、それ以外の材料の場合に比べ、回収した結石68との接触面積が広い。ゲル状の材料53としては、シリコン、軟性ゴム、およびポリウレタンが挙げられる。ゲル状の材料53は、回収される結石68の寸法が吸引ヘッド50’の先端の開口より大きいと思われる場合に使用する。ゲル状の材料は、回収空間に入り込む小さい結石を回収しているような場合には、吸引ヘッド50’の端部に設けることもできる。
【0040】
ここで開示する回収装置の別の態様は、湾曲度が高く、到達するのにかなり難しい操作を必要とする生体の領域に位置する結石を回収することができる回収装置の機能である。回収装置は、シャフト72を覆う、特別な構成のシャフトカバー70を有する。上記のように、シャフトカバー70の先端は、吸引ヘッドに接続、または固定される。図1は、シャフトカバー70の構成を概ね図示しており、一方、図8は、シャフトカバー70の構成をさらに詳しく図示している。
【0041】
図8を参照すると、シャフトカバー70は、先端区間75、基端区間77、および、先端区間75と基端区間77の間に位置する中間湾曲区間79とを備える。図示の実施形態では、先端区間75と基端区間77は、線形に延在する(直線状の)区間である。中間湾曲区間79は、それぞれの湾曲部79’によって両端が固定されている。先端区間75は、シャフトカバー70の先端71から中間湾曲区間79に延在し、基端区間77は、シャフトカバー70の基端73から中間湾曲区間79まで延在する。湾曲区間79は、硬い湾曲区間である。これは、湾曲区間79が剛性のルーメンによって囲まれなければ、あるいはその影響を受けなければ、湾曲区間79は湾曲部79’により基端区間77と先端区間75に対して常に湾曲した状態となることを意味する。すなわち、湾曲区間79に力や負荷(外的または内的)がかからなければ、湾曲区間79は湾曲したままとなる。一方、湾曲区間79は、尿管鏡40の機器通路42に挿入されると、または位置すると、湾曲区間79には直線状の機器通路42による力または負荷がかかるため、湾曲区間79の形状は、湾曲から直線へと変化する(すなわち、湾曲区間79がまっすぐに延びる)。尿管鏡40の機器通路42に位置する湾曲区間79が機器通路42から引き出されると、湾曲区間79は自動的に湾曲した形状に戻る。
【0042】
シャフトカバー70の先端71が吸引ヘッド50に接続、または固定されており、一方、シャフトカバー70の基端73が操作部材26に接続されている。図示の実施形態では、先端区間75の中心軸と、基端区間77の中心軸が互いに平行であるが、互いにオフセットしているので、基端区間77と先端区間75は同軸ではない。
【0043】
図8は、シャフトカバー70の基端区間77が三つの部分、すなわち、基端区間77の先端部70b、基端区間77の中間部70c、および基端区間77の基端部70dを有することを示す。基端区間77の先端部70bは比較的硬い、あるいは剛性の材料から形成するのが好ましい。この比較的硬いまたは剛性の材料の目的とするところは、吸引ヘッド50がその自重で折り曲がらないように、先端の位置を維持することにある。適した材料としては、ゴムまたはプラスチック材が挙げられる。シャフトカバー70の中間区間79と先端区間75も比較的硬い、または剛性の材料で構成するのが好ましい。シャフトカバー70の中間区間79と先端区間75は基端区間77の先端部70bを形成する材料と同じ材料で作製してもよい。
【0044】
基端区間77の中間部70cは、比較的軟性の材料で形成するのが好ましい。基端区間70の中間部70cを形成する材料は、基端区間77の先端部70bを形成する材料より柔らかい。よって、基端区間77の中間部70cを形成する材料は、基端区間77の先端区間70bを形成する比較的硬いまたは剛性の材料よりさらに可撓性を有する材料である。言い換えれば、基端区間77の中間部70cは基端区間77の先端部70bよりさらに可撓性を有する。この材料の目的とするところは、基端区間77の中間部70cが尿管鏡40の屈折機能に悪影響を及ぼさないよう防ぐのを助けることにある。
【0045】
基端区間77の基端部70dは、適したトルク伝達が確実に行われるように特別に選択した、比較的硬いまたは剛性の材料から形成される。すなわち、基端部70dを形成する材料は、基端区間77の基端部70dにかかるトルク(例えば、操作部材26による)がシャフトカバー70の先端区間75に向かって適切に伝達されるように選択するのが好ましい。基端部70dの硬さは、先端部70bの硬さより硬いのが好ましい。
【0046】
シャフトカバー70の基端区間77を形成する部分70b、70c、70dの相対的な長さの例を挙げると、基端区間77の先端部70bは、長さ6mm〜15mmが好ましく、長さ8mmがさらに好ましく、中間部70cは、長さ60mm〜150mmが好ましく、長さ80mmがさらに好ましく、基端区間77の基端部70dは長さ800mm〜1200mmが好ましく、長さ1000mmがさらに好ましい。よって、基端区間77の先端部70bは、基端区間77の中間部70cと基端部70dより短く、中間部70cは、基端区間77の基端部70dより短い。さらに、中間区間79は、長さ1mm〜3mmが好ましく、約2mmがさらに好ましく、一方、先端区間75は、長さ3mm〜8mmが好ましく、約5mmがさらに好ましい。
【0047】
上記のように、中間湾曲区間79は湾曲部79’、79’の両端が固定されている。下記にさらに詳しく説明するように、湾曲部79’、79’は、使用中、回収装置30の吸引ヘッド50が、尿管鏡40の先端部の中心軸に対して25°の角度以上に折れ曲がるように構成するのが好ましい。そのためには、図8に示す角度70α、70α’は、120°が好ましく、一方、角度70β、70β’は30°が好ましい。
【0048】
図8に示す構成を有するシャフトカバー70へ吸引ヘッド50を接続することにより、回収装置30は、次のような操作特性を持つ。図10Aは、吸引ヘッド50に接続されたシャフトカバー70を示し、一方、基端区間77の基端部70d、基端区間77の中間部70c、および基端区間77の先端部70bの一部が尿管鏡40の機器通路42に位置している。シャフトカバー70の先端区間75、シャフトカバー70の中間湾曲区間79、およびシャフトカバー70の基端区間77の先端部70bの一部は図10Aに示すように尿管鏡40の外側に位置している。この位置で、吸引ヘッド50の中心軸50aは、尿管鏡40の先端部の中心軸40aと平行であると共にオフセットしている。生体内の湾曲度が高くない領域に回収装置を前進させるときには、尿管鏡40に対して吸引ヘッド50を同軸に配置する。
【0049】
図10Aに示す位置から開始し、シャフトカバー70を軸方向基端側に移動させる(引く)(すなわち、シャフトカバー70を図10Bに示す右向き矢印の後方へ向けて移動する)ことにより、シャフトカバー70の基端区間77の先端部70bの残りの部分が尿管鏡40の機器通路42に入ると共に、シャフトカバー70の湾曲区間79の一部が尿管鏡40の機器通路42にも入る。このように、回収装置30は、図10Bに示す配置または構成を取るようになる。
【0050】
図10Bに示すように、シャフトカバー70の湾曲区間79の一部を尿管鏡40の機器通路42まで軸方向に移動させることにより、吸引ヘッド50が尿管鏡40に対して折れ曲がる。特に、吸引ヘッド50の中心軸50aは、尿管鏡40の先端部の中心軸40aに対してある角度(すなわち、0°と180°以外の角度)を取るようになる。吸引ヘッド50の中心軸50aと尿管鏡40の中心軸40aの間の角度は、25°以上が好ましく、30°以上がさらに好ましい。このように吸引ヘッド50を尿管鏡40に対して角度をもたせることにより、図10Aに示す吸引ヘッド50の向きではアクセスが非常にむずかしいような生体内でも湾曲度が高い領域に吸引ヘッド50がアクセスできるようになる。
【0051】
例として、図5に示す、下腎杯(下側の腎杯)102、中央または中間腎杯(中央または中間に位置する腎杯)104、上腎杯(上側の腎杯)106、および腎杯102、104、106から間隔をあけた腎盂101を有する腎臓の概略図を参照する。下腎杯102の結石に到達するには、図5に概略で点線で示す通路に沿った尿管108を通ってアクセスする必要がある。一目でわかるように、この通路の湾曲度が高く、誘導するのが難しい場合もある。
【0052】
回収装置30が図8に示すシャフトカバー70を含むように構成すれば、シャフトカバー70を軸方向後方に移動することにより、図10Bに示すように、回収装置30の吸引ヘッド50を、尿管鏡40に対して折り曲げることができ、これにより、図5に点線で示す通路を行き来しやすく、または誘導しやすくすることができる。従って、下腎杯102の結石を回収し、回収した単数または複数の結石を中央または中間腎杯104へ、あるいは可能であれば上腎杯106へ移動させることができる。よって、回収され移動させられた結石に対してより簡単に砕石術を行うことができるようになる。
【0053】
図10Cは、シャフトカバー70を回転し、吸引ヘッド50が図10Bに示す向きに対して180°の向きに折り曲がっていること以外は、図10Bに示すものと同じ位置にある回収装置30を示す図である。図10Cに示す位置では、吸引ヘッド50は、尿管鏡40に対して折り曲がっており、吸引ヘッド50の中心軸50aと、尿管鏡40の中心軸40aの間の角度は25°以上が好ましく、30°以上がさらに好ましい。図10Bの位置から図10Cの位置までシャフトカバー70と吸引ヘッド50を回転させることができることにより、それに伴う利点を享受することができる尿管鏡は、典型的には偏向機能を備えているが、曲がり方に典型的には若干の制限がある。すなわち、尿管鏡の先端部の移動は、一面(単面移動またはX面移動)に限られている。よって、オペレータは吸引ヘッドの方向または向きを、尿管鏡の偏向機能にのみ頼って自由に制御するのは困難なのである。一方、オペレータが折れ曲がった状態の吸引ヘッド50を図10Bから図10Cの状態まで回転させると、吸引ヘッド50には、尿管鏡40の移動機能の面に、別の面の移動(y面移動)が追加される。さらに、オペレータがシャフトカバー70を押し引きすると、さらに別の移動方向が追加される(z面)。これが、折れ曲がった状態の吸引ヘッド50を(図10B図10Cの間で)回転させることにより、オペレータが吸引ヘッド50の方向を自由に制御できる理由である。別の観点から見ると、尿管鏡40の対物レンズ48の設置箇所が中心からずれている。したがって、オペレータが曲がった吸引ヘッド50を図10Bの位置から図10Cの位置まで回転させれば、オペレータは吸引ヘッド50の視野を変えることができる。
【0054】
図10Dはシャフトカバー70と吸引ヘッド50が軸方向前方(すなわち、図10Dの矢印で示す左方向)に移動させられた回収装置30を示す。これにより、吸引ヘッド50は軸方向前方に移動し、吸引ヘッド50の中心軸50aが尿管鏡40の先端部の中心軸40aに平行かつオフセット(同軸ではない)している位置までずれることになる。これにより、オペレータは、尿管鏡40の光学システムを使って視野110を得ることができるのである。
【0055】
図10Eは、回収装置30の別の操作態様を示す図である。回収装置30が図10B(または図10C)に示す位置にある状態で、オペレータがシャフトカバー70を軸方向に引き戻す(すなわち、シャフトカバー70を吸引ヘッド50と軸72とともに移動させる)ことにより、軸シャフトカバー70は長尺体40(尿管鏡)の中を移動し湾曲区間79をまっすぐにする。装置の先端部の全体の長さ(吸引ヘッド50+シャフトカバー70の露出した、またはカバーがかかっていない状態の部分+尿管鏡40の屈折不能の先端部)は図10Bに示す先端部の全体の長さより短い。図10Eに示す回収装置30の操作位置は、回収装置30を狭い管腔(例えば尿管と尿管アクセスシース)に移動または操作するときに有利である。
【0056】
図11A図11Cは、ここで開示する本発明による回収装置の別の例を表す実施形態を示している。図11A図11Cに示す実施形態は、尿管鏡の先端部に対して吸引ヘッドを折り曲げる別の方法を示している。この図11A図11Cに示す回収装置の実施形態は、整形したチューブの代わりに整形した接触部によって吸引ヘッドを折り曲げやすくしたことを除けば、上記の、図10A図10Dに示す実施形態と類似している。
【0057】
図11Aを参照すると、吸引ヘッド150と尿管鏡40の間に接触部180を設けている。この実施形態では、接触部180は、吸引ヘッド150と同時に一体に組み込まれて形成されている。接触部180は、図11Aに示すように、吸引ヘッド150から後方に(基端方向に)突出している。本実施形態の接触部180は湾曲した突出部である。接触部180は、湾曲面181すなわち、凸面を備える。回収装置130は、さらに、線形に延在する(直線状の)シャフトカバー70’であるシャフトカバー70’を備える。図11Aは、接触部180が少なくとも部分的にシャフトカバー70’を囲むようにシャフトカバー70’が接触部180内の孔を通過している。
【0058】
シャフトカバー70’は図11Aに示す角度で接触部180の孔を通過し、吸引ヘッド150の中心軸とシャフトカバー70’の先端部の中心軸が互いに平行であるが、互いにオフセットしており、吸引ヘッド150とシャフトカバー70’の先端部が互いに同軸とはなっていない。このオフセットにより、図11図16に示す整形した接触部によって吸引ヘッドを折り曲げることができるようになっている。図11Aに示す吸引ヘッド150と尿管鏡40の先端部は、回収装置130を狭い管腔(例えば、尿管、または尿管アクセスシース)内で前進させる間、図11Aに示すような向きになっている。回収装置130を比較的狭い管腔内で操作または移動させる、または狭い管腔内で結石を回収するため、オペレータは、装置が図11Aに示す状態にあるのを選択する傾向があるか、またはそれを好む。回収装置130を湾曲した領域で操作または移動させるには(例えば下腎杯(下側の腎杯)に到達するには)、オペレータは、装置が図11Bに示す状態にあるのを選択する傾向があるか、またはそれを好む。広い領域(例えば、腎臓内の開放空間)で結石を回収するためには、オペレータは図11Aに示す状態もしくは図11Bに示す状態のいずれかに位置する装置を利用することができる。
【0059】
吸引ヘッド150を尿管鏡40の先端部に対して折り曲げると、まず、接触部180が尿管鏡40の湾曲した(凹んだ)先端面41と直接接触するまで、シャフトカバー70’が軸方向後方に(すなわち、図11Aの矢印の方向、右側へ)移動するまたは引っ張られる。この状態では(接触部180の湾曲面は尿管鏡40の先端面41とちょうど接触した状態)、吸引ヘッド150は折れ曲がっていない。シャフトカバー70’が軸方向後方に移動し続けるにつれ、この2つの湾曲面181、41の間の接触により、図11Bに示すように、吸引ヘッド150が尿管鏡40の先端部に対して折れ曲がる。よって、シャフトカバー70’(および吸引ヘッド50)を軸方向に移動させることにより、尿管鏡40に対して吸引ヘッド150を折り曲げることができる。
【0060】
図11Aに示す位置から、シャフトカバー70’を回転させることによって吸引ヘッド150を回転させることができる。吸引ヘッド150は、図11Aに示す位置から180°変位した図11Cに示す位置まで移動する。吸引ヘッド150が図11Aに示す位置にある時は、吸引ヘッド150と尿管鏡40の先端部は互いに平行かつ同軸である。吸引ヘッド150を図11Aの位置に回転させることによって、オペレータは回収装置130を比較的狭い管腔(例えば、尿管や尿管アクセスシース)の中を通過させることができる。吸引ヘッド150が図11Cに示す位置にある時は、吸引ヘッド150は尿管鏡40の対物レンズ48を通して見る視野110を妨げることがない。このように、吸引ヘッド150を回転させることによって、医療の専門家は回収装置130の前を見ることができるので処置を容易にすることができる。
【0061】
図12Aおよび12Bは、別の実施形態を示す。この回収装置230の実施形態は、接触部の構成が異なることを除いては、図11A図11Cに示す実施形態と類似している。図12A図12Bに示す回収装置230の実施形態は、ヒンジ283によって互いに接続した二つの部材282、284を含む接触部280を備える。二つの部材282、284は板状の要素である。一方の部材282は、吸引ヘッド250に固定されている、もしくは一体化されており、他方の部材284はシャフトカバー70’が通る貫通穴を有する。よって、部材284は部分的にシャフトカバー70’を囲む。シャフトカバー70’は線形に延在する(直線状の)シャフトカバー70’である。
【0062】
操作中は、シャフトカバー70’を軸方向後方(すなわち、図12Aの矢印の方向、右側へ)へ移動し、接触部280は、湾曲した(凹むように湾曲した)尿管鏡40の先端面41に接近し、尿管鏡40の凹むように湾曲した先端面41に最終的には接触する。接触部280の部材282が、尿管鏡40の凹んだ形状の先端面と接触した後、引き続きシャフトカバー70’を基端もしくは後方に向けて軸方向に移動させることにより、吸引ヘッド250が図12Bに示すような尿管鏡40の先端部に対して折り曲がる。このように、吸引ヘッド250の中心軸が、尿管鏡40の先端部の中心軸に対して角度(すなわち、0°と180°以外の角度)を形成する。吸引ヘッド250は尿管鏡40の先端部の中心軸に対して25°以上の角度に折り曲がるのが好ましく、30°以上がさらに好ましい。部材284は、部材282と尿管鏡40の先端面の間の接触状態を安定させるのに役立つ。
【0063】
図13Aおよび図13Bは、ここに開示する回収装置が、尿管鏡に対して吸引ヘッドを折り曲げるように構成されている別の例を表す実施形態を示す。この回収装置の実施形態は、接触部380が剛性の一体型部材である点が、図12Aおよび12Bに示す態様とは異なる。接触部380は、吸引ヘッド350と一体に組み込まれて形成されているが、吸引ヘッド350とは別体で吸引ヘッド350に定位置で固定されていてもよい。接触部380は、吸引ヘッド350から離れる方向に突出したアーム386と、尿管鏡40の凹んで湾曲した先端面41と接触するように構成されている半球部388を備える。半球状部388は、尿管鏡40の凹んで湾曲した先端面14と直接接触する凸面を呈する。接触部380の半球状部388は、シャフトカバー70’が通る貫通穴または開口を有しているので、接触部380の一部がシャフトカバー70’を取り巻く、または取り囲むように構成されている。シャフトカバー70’は線形に延在する(直線状の)シャフトカバー70’である。
【0064】
使用中は、シャフトカバー70’は軸方向後方へ(すなわち、図13Aの矢印の方向右側へ)移動する。これにより、吸引ヘッド350と接触部380も、半球状部388が直接尿管鏡40の先端面と接触するまで後方に移動する。シャフトカバー70’が引き続き軸方向後方に移動することにより、吸引ヘッド350が図13Bに矢印で示すように回動するので、吸引ヘッド350は尿管鏡40に対して折れ曲がる。すなわち、吸引ヘッド350の中心軸は、尿管鏡40の先端部の中心軸に対して25°以上の角度に折れ曲がり、30°以上が好ましい。
【0065】
図14Aおよび図14Bは、ここで開示する回収装置が、尿管鏡に対して吸引ヘッドを折り曲げるように構成されているさらに別の例を表す実施形態を示す。この回収装置430の実施形態は、吸引ヘッド450および尿管鏡40の両者と別体の接触部480を利用しているが、その後、尿管鏡40の先端部に取り付けまたは接続してある。接触部480は概ねU字型の部材であり、中間ベース496によって接続された2つの互いに離れた脚部492、494によって形成される。吸引ヘッド450にもっとも近い脚部492は、吸引ヘッド450に対向する湾曲面497を有する。中空の筒型要素498が一方の脚部494と一体に形成されるとともに、脚部494から離れる方向に突出している。筒型要素498は、接触部480が尿管鏡40と一体になって拘束されるように、尿管鏡40の機器通路42内の先端部に位置している。
【0066】
接触部480の脚部492、494のそれぞれには、シャフトカバー70’が通る貫通穴493、495が設けられている。シャフトカバー70’は線形に延在する(直線状の)シャフトカバー70’である。接触部480の脚部492、494の貫通穴493、495により、接触部480の一部が互いに離れた2箇所でシャフトカバー70’を囲んでいる。図14Aおよび14Bに示す回収装置430の一部を形成するシャフトカバー70’は、線形に延在する(直線)チューブである。シャフトカバー70’は、図14Aに示すような角度で接触部480の貫通穴493および/または495を通るので、吸引ヘッド450の中心軸とシャフトカバー70’の先端部の中心軸が互いに平行となるが、互いにオフセットしており、吸引ヘッド450とシャフトカバー70’の先端部は同軸ではない。
【0067】
使用中、接触部480は筒型要素498を、尿管鏡40の機器通路42の先端部に位置させることによって尿管鏡40に取り付けられる。そして、シャフトカバー70’を軸方向基端側に(すなわち、図14Aの矢印の方向右側へ)移動させる。これにより、吸引ヘッド450が尿管鏡40に近づき、最終的には接触部480の脚部492の湾曲面497と直接接触するまで移動する。シャフトカバー70’が引き続き軸方向基端側に移動すると(引っ張られると)、吸引ヘッド450に接触する接触部480の脚部492の湾曲面497により吸引ヘッド450が折り曲がるので、吸引ヘッド450は尿管鏡40に対して折り曲がる。
【0068】
図15Aおよび図15Bは、ここで開示する本発明の回収装置の別の例を表す回収装置の実施形態の概略図を示す。回収装置530のこの実施形態は、吸引ヘッド550および尿管鏡40の両者から離れた接触部580を含む。接触部580は、互いに頂点で接続された2本の脚部582、584を有する、概ねV字型の一体型接触部である。2本の脚部582、584は、互いに頂点から離れる方向に開いている。脚部582、584のそれぞれは、シャフトカバー70’が通って延在する貫通穴593、595をそれぞれ有する。接触部580の一部は、こうして二つの互いに離れる箇所においてシャフトカバー70’を取り巻く、または取り囲む。シャフトカバー70’は線形に延在する(直線状の)シャフトカバー70’である。
【0069】
使用中は、シャフトカバー70’を軸方向の基端側に(すなわち、図15Aの矢印の方向右側へ)移動させる。これにより、吸引ヘッド550も基端方向へ移動する。最終的には、吸引ヘッド550は接触部580の脚部582と接触し、接触部580の脚部584は尿管鏡40の先端と接触する。シャフトカバー70’が引き続き軸方向基端側に移動すると(引っ張られると)、吸引ヘッド550は、吸引ヘッド550と尿管鏡40の先端の両者に接触するV字型の接触部580によって折れ曲がるので、吸引ヘッド550は、図15Bに示すように、尿管鏡40に対して折れ曲がる。つまり、吸引ヘッド550は、図15Bに示す矢印の方向に移動するので、吸引ヘッド550の中心軸は、尿管鏡40の先端部の中心軸に対して(0°および180°以外)の角度で配設される。すなわち、吸引ヘッド550の中心軸は、尿管鏡40の先端部の中心軸に対して25°以上、好ましくは30°以上の角度に折れ曲がる。
【0070】
図15Aおよび図15Bに示す実施形態における尿管鏡40に対する吸引ヘッド550の傾斜角度は、接触部580を形成する材料を適切に選択することで制御することができる。例えば、接触部580は、金属のような比較的剛性の材料で形成できるため、2本の脚部582、584は比較的硬く、脚部582に吸引ヘッド550が接触し、脚部584が尿管鏡40の先端と接触しているときには、相対的な位置/向きを維持する。一方、図15Bに示す配置では、シャフトカバー70’が基端もしくは後方に向けて軸方向に引き続き動くことにより、吸引ヘッド550と尿管鏡40の間の角度が変化するような可撓性を有する材料で接触部580を形成してもよい。
【0071】
図16A図16Cは、ここで開示する回収装置の別の例を表す実施形態を示している。回収装置630のこの実施形態は、吸引ヘッド650を尿管鏡40に対して折り曲げるための別の機構を設けている。この実施形態は、二つの別体の接触部材681、683を備える接触部を有する。第1の接触部材681は、第1の接触部材681と吸引ヘッド650が一体で共に移動するように、吸引ヘッド650に接続または固定され、一方、第2の接触部材683は、第2の接触部材683と吸引ヘッド650が共に一体となって移動するように、機器通路42に嵌合する筒型突起683’を尿管鏡40の先端部に有している。このように第2の接触部材683は、尿管鏡40と一体化もしくは接続されている。第1および第2の接触部材681、683はそれぞれ、傾斜面または表面681’’、683’’を有している。これら第1と第2の接触部材681、683もそれぞれ、シャフトカバー70’が延在する貫通穴または開口を有している。この実施形態では、シャフトカバー70’は線形に延在する(直線状の)シャフトカバー70’である。接触部材681、683はそれぞれシャフトカバー70’の一部を取り巻く。
【0072】
二つの突起681a、681aが第1の接触部材681の傾斜面681’’から第2の接触部材683に向けて突出している。第2の接触部材683の傾斜面683’’には、二つの凹部683a、683aが設けてある。凹部683a、683aがそれぞれ、第1の接触部681から突出する突起681a、681aの一方を受容するように構成されている。
【0073】
使用中は、吸引ヘッド650が尿管鏡40に近づくように、シャフトカバー70’を軸方向基端側(すなわち図16Bに矢印で示す後方)に移動する。最終的には、第1の接触部材681から突出する突起681a、681aのそれぞれが、図16Bに示す第2の接触部材683のそれぞれの凹部683a、683aに進入する。これにより、吸引ヘッド650および尿管鏡40は互いに係合する(回転可能に係合する)。図16Bに示す配置では、回収装置630は、生体の比較的狭い管腔を通って所望の箇所まで移動する。
【0074】
尿管鏡40の先端部に対して吸引ヘッド650を折り曲げるには、第1と第2の接触部材681、683は互いに離れ、突起681a、681aはそれぞれの凹部683aから離れて(間隔をあけて)位置する。図16Cに矢印で示すように、第1の接触部材681は、第2の接触部材683に対して180°回転する。これは、シャフトカバー70’と吸引ヘッド650を尿管鏡40に対して回転させることによって行うことができる。図16Cに示すように、第1の接触部材681を回転させた後、第1の接触部材681から突出する突起681a、681aを第2の接触部材683のそれぞれの凹部に嵌合させる。図16Cに示す曲がった向きで、突起681a、681aを受容する第2の接触部683の凹部は、図16Aに示す凹部683a、683aとは異なる(すなわち、異なった曲がり方をする)。
【0075】
回収装置630のこの実施形態では、吸引ヘッド650の中心軸と尿管鏡40の先端部の中心軸との間の角度方向が固定される。この角度方向は、第1および第2の接触部材681、683の傾斜面681’’、683’’の角度によって決まる。傾斜面681’’、683’’の傾斜角を変更することによって角度方向を調整することができる。
【0076】
吸引ヘッドを尿管鏡40の先端部に対して折れ曲がった向きにするための上記で開示した回収装置の各実施形態により、シャフトカバーと吸引ヘッドを尿管鏡に対して軸方向に移動して、吸引ヘッドを折り曲げ位置とすることができるようになる。よって、過大な努力なしに、また、複雑な構造なしに、吸引ヘッドを所望の角度方向とすることが可能である。
【0077】
上記の詳細な説明は、尿管や腎盂のような生体の一部から結石を回収/除去するための装置と方法について説明してきた。しかし、本発明は、上記の実施形態や変形例に厳密に限定されるものではない。さまざまな変更、変形、および等価物は、添付の特許請求の範囲に定義した本発明の精神と範囲から離れることなく、当業者によって実施されるものである。特許変更の範囲に含まれるこれらすべての変更、変形、および均等物は、特許請求の範囲に包含されるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図16C