(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記放射線強度分布が投影装置により点群データに投影された複数の投影結果を重ね合わせる合成装置を更に有して構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の放射線強度分布測定システム。
前記測定位置推定装置で推定された前記放射線測定装置の測定位置と、投影装置により放射線強度分布が点群データに投影された投影結果とを用いて、前記測定位置と前記点群データで表された対象物の部位との間の距離を計算し、前記測定位置で検知された放射線強度分布を前記対象物の表面における放射線強度分布に変換する距離補正装置を、更に有して構成されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の放射線強度分布測定システム。
前記測定位置推定装置により画像比較装置の比較結果から推定された放射線測定装置の測定位置と、前記測定位置推定装置により可視画像比較装置の比較結果からデータ記録装置に記録された測定位置を基準に推定された前記放射線測定装置の測定位置とを比較して、これらの両測定位置の良否を評価する評価装置を、更に有して構成されたことを特徴とする請求項6に記載の放射線強度分布測定システム。
対象物の可視画像を取得する可視画像取得手段、及び前記対象物から入射する放射線強度分布を検知する放射線検知手段を備えた放射線測定装置と、前記対象物の3次元位置を示した点群データを記録する3Dデータ記録装置とを用意し、
任意視点からの画像を前記3Dデータ記録装置の前記点群データから仮想的に作成して仮想画像とする仮想画像作成ステップと、
前記放射線測定装置からの前記可視画像と前記仮想画像作成ステップで得た前記仮想画像とを比較し、これらの両画像のそれぞれで濃淡が変化する前記対象物のエッジを検出し、このエッジから求めた抽出箇所を含む領域のうちで前記エッジの形状が最も類似した前記抽出箇所を前記対象物の同一箇所を表わす対応位置として前記両画像のそれぞれで求める画像比較ステップと、
前記可視画像上の3点以上の前記対応位置の3次元位置と、これらの位置にそれぞれ対応する前記仮想画像上の前記対応位置の3次元位置とから、幾何学的な関係に基づいて前記放射線測定装置の測定位置を計算して推定する測定位置推定ステップと、
前記測定位置推定ステップで推定された測定位置に基づいて、前記放射線測定装置で検知された放射線強度分布を前記3Dデータ記録装置の前記点群データに投影する投影ステップと、を有することを特徴とする放射線強度分布測定方法。
前記放射線測定装置が、移動装置によって対象物に沿って移動して走査すると共に、前記移動装置による走査によって取得された放射線強度分布が投影ステップにより点群データに投影された複数の投影結果を重ね合わせる合成ステップを、更に有することを特徴とする請求項8に記載の放射線強度分布測定方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
[A]第1実施形態(
図1〜
図8)
図1は、第1実施形態に係る放射性強度分布測定システムを示すブロック図である。この
図1に示す放射線強度分布測定システム10は、放射線測定装置11、3Dデータ記録装置14、仮想画像作成装置15、画像比較装置16、測定位置推定装置17、投影装置18及び距離補正装置19を有して構成される。
【0014】
放射線測定装置11は、対象物(例えば原子力発電プラントの構造物)の可視画像を取得する可視画像取得手段としての可視画像センサ12、及び対象物から入射する放射線強度分布を検知する放射線強度分布検知手段としての放射線検知センサ13を備える。また、3Dデータ記録装置14は、対象物の3次元(3D)位置を示した点群データを記録する。また、仮想画像作成装置15は、任意視点からの画像を3Dデータ記録装置14の点群データから仮想的に作成して仮想画像とする仮想画像作成ステップを行う。更に、画像比較装置16は、放射線測定装置11の可視画像センサ12からの可視画像と仮想画像作成装置15からの仮想画像とを比較して、対象物の同一箇所(部位)を表わす対応位置を両画像のそれぞれで求める画像比較ステップを行う。
【0015】
測定位置推定装置17は、画像比較装置16で求めた両画像(可視画像、仮想画像)のそれぞれの対応位置から、放射線測定装置11の測定位置を計算して推定する測定位置推定ステップを行う。また、投影装置18は、測定位置推定装置17にて推定された放射線測定装置11の測定位置に基づいて、放射線測定装置11の放射線検知センサ13で検知された放射線強度分布を3Dデータ記録装置14の点群データに投影(マッピング)する投影ステップを行う。更に、距離補正装置19は、測定位置推定装置17にて推定された放射線測定装置11の測定位置と、投影装置18において放射線強度分布が点群データに投影された投影結果とを用いて、放射線測定装置11の測定位置と点群データで表された対象物の部位との距離を計算し、放射線測定装置11の測定位置で検知された放射線強度分布を対象物の表面における放射線強度分布に変換する距離補正ステップを行う。上述の各装置について更に詳説する。
【0016】
放射線測定装置11における可視画像センサ12は、例えばCCD(charge Coupled Device)や、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮影素子を内蔵したカメラで構成され、入射する光を結像して可視画像を取得する。この可視画像センサ12は、対象物となる、例えば
図2及び
図3に示すような原子炉建屋内の作業現場における構造物の可視画像を、放射線検知センサ13の検知タイミングに同期して取得し出力する。
図2は一般的な原子炉建屋の模式図での計測領域21を示しているのに対し、可視画像センサ12で取得した可視画像22の例を
図3に示す。
【0017】
放射線測定装置11における放射線検知センサ13は、例えばコリメータ、検出素子群及び信号処理基板を備えて構成される。コリメータは、放射線の飛来方向を制限し、一定方向の放射線のみを検出素子群に導く。検出素子群は、例えばアレイ状など2次元的に配置されてガンマ線などの放射線を検出する。信号処理基板は、検出素子群から出力される検出信号を処理する。尚、放射線検知センサ13は、可視画像センサ12と同様の画角を有し、放射線測定装置11内において、可視画像センサ12への入射光と同一方向から入射する放射線を検知できるように、その配置が調整される。
【0018】
この放射線検知センサ13は、可視画像センサ12で取得した領域(計測領域21)と同一方向から入射する放射線を検知して、2次元の放射線強度分布として出力する。
図2の計測領域21に対し、放射線検知センサ13が検知した放射線強度分布24の例を
図4に示す。
図4の例では、検知した放射線強度を濃淡で示したが、放射線検知センサ13は、検知した放射線強度を2次元の数値として出力する。
【0019】
3Dデータ記録装置14は、例えば3Dレーザスキャナなどで計測した、対象物としての作業現場における複数の構造物の形状と3次元位置を示す点群データを記録する。
【0020】
仮想画像作成装置15は、任意の視点からの画像を3Dデータ記録装置14の点群データから仮想的に作成して2次元の仮想画像(例えば、
図5(B)の仮想画像23)とする。任意の視点には、可視画像センサ12で撮影した領域(計測領域21)の少なくとも一部分を取得できる位置を設定する。任意の視点は、操作者が設定するか、または測定位置推定装置17が前回推定した放射性測定装置11の位置を利用してもよい。
【0021】
点群データが3Dレーザスキャナ―で計測されたデータの場合、各構造物の3次元位置データにレーザの反射強度(明暗)が付加されている。仮想画像作成装置15は、可視画像センサ12と同じ画角で、任意視点から取得される領域を計算し、この領域内のデータを点群データから抽出する。次に、仮想画像作成装置15は、可視画像と同じ解像度の仮想画像を作成し、この仮想画像の各画素に写像されるデータを、抽出した点群データから求め、点群データに付加されたレーザの反射強度を仮想画像の輝度として画素に設定する。
【0022】
また、各画素に写像されるデータを求める場合、点群データには任意視点からの死角情報がないため、1画素に対して複数の点群データが重なる場合がある。この場合には、仮想画像作成装置15は、求めた各点群データと任意視点との距離を計算し、任意視点に最も至近の点群データを選択することで、各点群データ間の死角情報を仮想画像に反映する。更に、点群データの密度が低いときには、画像の輝度が設定されていない画素が存在する場合がある。この場合には、仮想画像作成装置15は、設定された周辺画素の平均値で輝度を設定する。仮想画像の輝度として、点群データに付加されたレーザの反射強度を設定したが、任意視点と点群データ間の距離に基づいて、遠い箇所を暗く、近い箇所を明るくして画像の輝度を設定してもよい。
【0023】
画像比較装置16は、まず、可視画像センサ12の可視画像と仮想画像作成装置15で作成された仮想画像とを比較する。仮想画像の輝度にレーザの反射強度が設定された場合でも、レーザを照射する3Dレーザスキャナの位置と、可視画像センサ12で可視画像を取得する際の照明の位置が異なるなどの要因により、可視画像と仮想画像では、対象物となる構造物の濃淡が異なる場合がある。そこで、画像比較装置16は、周辺画素との輝度差を利用し、可視画像と仮想画像のそれぞれで濃淡が変化する構造物のエッジを検出する。構造物のエッジを検出することにより、可視画像と仮想画像で濃淡が異なる場合でも、可視画像と仮想画像との間で同一の構造物が認識し易くなる。また、仮想画像に任意視点と各点群データ間の距離を設定した場合においても、周辺画素との距離差が周辺画素との輝度差となるため、同様の方法で構造物のエッジを検出することが可能となる。
【0024】
次に、画像比較装置16は、エッジを検出した可視画像と仮想画像とにおいて、同一構造物の同一箇所(部位)を表わす対応位置を求める。具体的な処理方法としては、画像比較装置16は、
図5(A)及び(B)に示すように、エッジを検出した可視画像22(
図5(A))と仮想画像23(
図5(B))のそれぞれで、エッジの端点や交点などの特徴的な箇所である抽出箇所25、25Aをそれぞれ抽出し、この抽出箇所25、25Aを中心とする矩形ブロック26、26Aをそれぞれ設定する。次に、画像比較装置16は、可視画像22と仮想画像23のぞれぞれで設定した複数の矩形ブロック26、26A間において、輝度差を用いた方法や輝度の相関を用いた方法などにより、両画像(可視画像22、仮想画像23)間で矩形ブロック26、26A内のエッジの形状が最も類似したものを選択して、これらの矩形ブロック26、26Aに含まれる抽出箇所25、25Aを構造物の同一箇所、つまり対応位置であるとして求める。
【0025】
測定位置推定装置17は、まず、仮想画像23の対応位置としての抽出箇所25Aの3次元位置を、3Dデータ記録装置14の点群データから参照する。参照した3次元位置は、仮想画像23の上記抽出箇所25Aに対応する可視画像22の対応位置としての抽出箇所25の3次元位置となる。次に、測定位置推定装置17は、3点以上の可視画像22上の点(対応位置としての抽出箇所25)の位置と、これらの点にそれぞれに対応する仮想画像23上の点(対応位置としての抽出箇所25A)の3次元位置とから、幾何学的な関係に基づいて放射線測定装置11の測定位置を計算する。
【0026】
例えば、測定位置推定装置17は、
図6に示すように、まず3次元空間に、可視画像22上の3つの点K1、K2、K3にそれぞれ対応する仮想画像23上の3つの点P1、P2、P3をプロットする。次に、測定位置推定装置17は、上記平面状の可視画像22を上記3次元空間に反映させるための変換行列を求め、この変換行列に基づいて平面状の可視画像22を上記3次元空間に設定する。その後、測定位置推定装置17は、点P1、点K1を結ぶ光軸M1と、点P2、点K2と結ぶ光軸M2と、点P3、点K3を結ぶ光軸M3とが、可視画像センサ12の光学中心である交点Oで交差することを前提に、光軸M1、M2、M3を表わす方程式を解くことで交点Oの位置を算出する。この交点Oと放射線測定装置11の測定位置との予め定められた位置関係から、上記交点Oの位置に基づいて放射線測定装置11の測定位置を求める。
【0027】
上述のように、対応位置としての抽出箇所25(25A)の3点で1箇所の測定位置が計算できるため、4点以上の上記抽出箇所25(25A)によって2箇所以上の測定位置が計算できる。測定位置推定装置17は、複数の測定位置が計算できる場合には、計算した複数の測定位置の平均値や、互いに密集した測定位置の平均値等によって、放射線測定装置11の最終的な測定位置を決定する。
【0028】
投影装置18は、測定位置推定装置17で計算した放射線測定装置11の測定位置を用いて、放射線検知センサ13で検知した放射線強度分布を、3Dデータ記録装置14の点群データに投影(マッピング)する。投影装置18は、まず、測定位置推定装置17で計算した放射線測定装置11の測定位置と放射線検知センサ13の画角とにより、放射線検知センサ13の放射線検知領域27(
図7(A))を計算し、この放射線検知領域27内の点群データを3Dデータ記録装置14から抽出する。
【0029】
図7は、投影装置18が行う点群データへの放射線強度分布の投影状況を説明する説明図である。
図7(A)に示す符号28は、3Dデータ記録装置14から測定位置を元に抽出した放射線検知領域27内の点群データを示しており、
図7(B)に示す符号24は、放射線検知センサ13が検知した放射線検知領域27内の放射線強度分布を示す。投影装置18は、放射線強度分布24の各検出セル29が検出した領域内の点群データを、検出セル29の位置と点群データの3次元位置とから幾何学的な関係に基づいて抽出する。例えば、検出セル30が検出した領域内の点群データは31、32、33の3個のデータとなる。また、検出セル29、30内の点群データを抽出する際には、仮想画像作成装置15と同様に、放射線測定装置11の測定位置と点群データとの距離を基に各点群データ間の死角を判断して、放射線強度分布に必要な点群データを抽出する。
【0030】
次に、投影装置18は、放射線検知領域27内の放射線強度分布24における例えば検出セル30の面積を計算して、この検出セル30の放射線強度を距離によって検出範囲が変化するため、単位面積当たりの放射線強度に変換し、この単位面積当たりの強度を検出セル30内で抽出した点群データ31〜33のそれぞれに投影(マッピング)する。投影装置18は、放射線検知領域27内の放射線強度分布24における他の複数の検出セル29のそれぞれに対しても、上述と同様にして、各検出セル29の単位面積当たりの放射線強度を、その検出セル29内で抽出された点群データ28に投影(マッピング)し、このようにして
図7(C)に示すマッピング
図34を作成する。
【0031】
距離補正装置19は、投影装置18で点群データ28に投影された放射線強度について、測定位置推定装置17の測定位置計算結果に応じて距離補正を行い、その距離補正結果を点群データ28に再投影する。放射線強度は、放射線源から距離が遠くなるほど減衰する(減衰率α)。このため、距離補正装置19は、
図8に示すように、測定位置推定装置17で推定された放射線測定装置11の測定位置bと、放射線強度が投影された点群データ28で表される対象物の部位の位置aとの間の距離を計算し、予め設定した各距離に対する放射線減衰率の逆数(1/α)と、放射線測定装置11の測定位置bで検知された放射線強度Bとを掛け合わせて、対象物の部位の位置aにおける放射線強度A(=B×1/α)を求め、その結果を点群データに再投影して距離補正を行う。
【0032】
以上のように構成されたことから、本第1実施形態によれば、次の効果(1)を奏する。
(1)対象物としての作業現場の各構造物の形状及び3次元位置を示す3Dデータ記録装置14の点群データと、放射線測定装置11の可視画像センサ12による作業現場の可視画像とを画像比較装置16が比較し、この比較結果に基づいて測定位置推定装置17が放射線測定装置11の測定位置を計算して推定する。これにより、投影装置18が、3Dデータ記録装置14の点群データに放射線測定装置11の放射線検出センサ13で検知された放射線強度分布を投影する。従って、この点群データに投影された放射線強度分布を、放射線測定装置11と対象物(作業現場の構造物)との距離を反映して、対象物表面の放射線強度分布に補正できるので、この点群データに投影された放射線強度分布を正確に評価できる。
【0033】
[B]第2実施形態(
図9〜
図11)
図9は、第2実施形態に係る放射線強度分布測定システムを示すブロック図である。この第2実施形態において、第1実施形態と同様な部分については、同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0034】
第2実施形態の放射線強度分布測定システム40が第1実施形態と異なる点は、第1実施形態の放射線強度分布測定システム10に追加して、放射線測定装置11を対象物に沿って移動させて走査する移動装置41と、放射線測定装置11の移動装置41による走査によって取得した放射線強度分布が投影装置18により点群データに投影された複数の投影結果を、距離補正装置19により距離補正された後に重ね合わせる合成ステップを行う合成装置42とを、更に有して構成された点である。
【0035】
つまり、放射線測定装置11は、
図10に示すように、移動装置41により対象物の計測領域43A…43Bを矢印Pに示すように走査されながら、各計測領域43A…43Bで、第1の実施の形態と同様にして可視画像と入射する放射線強度分布とを取得する。
【0036】
画像比較装置16は、仮想画像作成装置15で点群データから作成した仮想画像と、放射線測定装置11の可視画像センサ12の可視画像とを比較し、この比較結果を基に測定位置推定装置17が放射線測定装置11の測定位置を計算して推定する。投影装置18は、測定位置推定装置17で推定された放射線測定装置11の測定位置を用いて、放射線測定装置11の放射線検知センサ13が検知した放射線強度分布を点群データに投影する。距離補正装置19は、投影装置18で点群データに投影された放射線強度について、測定位置推定装置17の計算結果(放射線測定装置11の測定位置)により距離補正を行い、その距離補正結果を点群データに再投影する。距離補正装置19からは、移動装置41の走査による計測領域43A…43B毎の距離補正された投影結果が出力される。
【0037】
合成装置42は、距離補正装置19から計測領域43A…43B毎に出力された投影結果を重ね合わせ、1つの投影結果として合成する。
図11に、投影結果の合成状況の一例を示す。44と45は、点群データに投影された放射線検知センサ13の異なる走査位置での放射線強度分布を示しており、46は合成放射線強度分布である。放射線強度分布44の検出セル47Aは、合成放射線強度分布46の1A、2A、1B、2Bの点群データに投影された検出セルであり、放射線強度分布45の検出セル47Bは、合成放射線強度分布46の2B、3B、2C、3Cの点群データに投影された検出セルであるとする。
【0038】
次に、合成放射線強度分布46の作成について説明する。
図11の例において、合成放射線強度分布46の位置2Bは、放射線強度分布44の検出セル47Aと放射線強度分布45の検出セル47Bとが重なった位置であり、合成放射線強度分布46の位置2Bの放射線強度は、検出セル47Aと検出セル47Bの両放射線強度の例えば平均などを用いて計算される。本第2実施形態では、合成放射線強度分布46の作成方法を2個の放射線強度分布44、45で説明したが、合成装置42は、距離補正装置19から出力される3個以上の複数の投影結果を用いて合成処理を実行し、1つの投影結果として合成してもよい。
【0039】
以上のように構成されたことから、本第2実施形態によれば、第1実施形態の効果(1)と同様な部分を奏するほか、次の効果(2)を奏する。
【0040】
(2)移動装置41により放射線測定装置11を走査し、この走査過程で放射線測定装置11の放射線検知センサ13が検出した複数の放射線強度分布が投影装置18により点群データに投影された後に距離補正装置19により距離補正され、これらの距離補正された複数の投影結果が合成装置42により重ね合わされ合成されて、合成放射線強度分布が得られる。このように点群データに投影された複数の放射線強度分布が合成されることで、走査されない放射線測定装置11で取得される放射線強度分布よりも対象物の広範な放射線強度分布を取得できる。更に、走査されない放射線測定装置11で取得された放射線強度分布の分解能よりも高い空間分解能を有する放射線強度分布を得ることができる。
【0041】
[C]第3実施形態(
図12〜
図14)
図12は、第3実施形態に係る放射線強度分布測定システムを示すブロック図である。この第3実施形態において、第1及び第2実施形態と同様な部分については、同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0042】
第3実施形態の放射線強度分布測定システム50が第1及び第2実施形態と異なる点は、第2実施形態の放射線強度分布測定システム40に追加して、投影装置18により放射線強度分布が点群データに投影された投影結果から、任意方向の放射線強度分布を計算する計算装置51を、更に有して構成された点である。
【0043】
つまり、放射線測定装置11は、
図10に示すように、移動装置41により対象物の計測領域43A…43Bに走査されながら、第2実施形態と同様にして、各計測領域43A…43Bで可視画像と入射する放射線強度分布とを取得する。
【0044】
画像比較装置16は、仮想画像作成装置15で点群データから作成された仮想画像と、放射線測定装置11の可視画像センサ12の可視画像とを比較し、この比較結果を基に測定位置推定装置17が、放射線測定装置11の測定位置を計算して推定する。投影装置18は、測定位置推定装置17で推定された放射線測定装置11の測定位置を用いて、放射線測定装置11の放射線検知センサ13が検知した放射線強度分布を点群データに投影する。距離補正装置19は、投影装置18で点群データに投影された放射線強度について、測定位置推定装置17で推定された測定位置を基に距離補正を行い、その補正結果を点群データに再投影する。距離補正装置19から出力される計測領域43A…43B毎の距離補正された投影結果は、合成装置42で重ね合わせ処理が施されて、1つの投影結果に合成される。
【0045】
合成装置42により合成された放射線強度分布投影結果52(
図13)を用いて、計算装置51は、任意の3次元点における周囲から入射する放射線量を評価する。
図13は、計算装置51で計算に使用する設定項目の説明図である。計算装置51では、放射線強度分布投影結果52の総量を評価する評価領域53と、この評価領域53に対し相対的な放射線強度を計算する計算領域54と、評価基準点55(
図14)となる3次元点が評価者などにより設定される。始めに、計算装置51は、評価領域53及び計算領域54内の点群データを抽出し、設定した評価基準点55から死角となる点群データを除外する。
【0046】
この除外方法としては、例えば
図14に示すように、計算装置51は、評価基準点55と除外を判断する評価点群データ56とを結んだ評価直線57を計算する。次に、計算装置51は、抽出した他の各点群データ58を中心とした評価直線57に鉛直な評価窓59を設定し、評価窓59内を評価直線57が通過するか否かを計算する。評価窓59内を評価直線57が通過する場合には、評価直線57に平行な評価点群データ56と点群データ58間の距離Lと、評価点群データ56と点群データ58との評価基準点55に対する前後関係とを評価する。点群データ58が評価点群データ56から評価基準点55側に任意の距離以上離れた位置の場合には、評価点群データ56は、評価基準点55からは点群データ58によって死角になると判断されて除外される。
【0047】
計算装置51は、死角となる点群データ除外後の評価領域53内の点群データに投影された放射線強度の累積強度を計算する。この累積強度を計算する際には、評価基準点55と点群データ58間の距離を計算し、放射線減衰率を放射線強度に掛け合わせて距離補正を行って、評価領域53の放射線強度の累積強度を計算する。計算装置51は、同様に、死角となる点群データ除外後の計算領域54内においても、放射線強度の累積強度を計算し、評価領域53内の累積強度に対する計算領域54内の累積強度の割合を求める。本第3実施形態では、距離補正装置19で使用した放射線減衰率で距離補正を説明したが、この放射線減衰率とは別に距離補正係数を予め準備して使用してもよい。
【0048】
以上のように構成されたことから、本第3実施形態においても、第1及び第2実施形態の効果(1)及び(2)と同様な効果を奏するほか、次の効果(3)を奏する。
【0049】
(3)計算装置51は、合成装置42により合成された放射線強度分布投影結果52に関する放射線強度の総量を評価するための評価領域53と、この評価領域53に対し相対的な放射線強度を計算するための計算領域54とのそれぞれにおいて、投影装置18により放射線強度分布が点群データに投影された投影結果(放射線強度分布投影結果52)を用いて任意方向の相対的な放射線強度分布を計算するので、この放射線強度分布を距離に応じて減衰させて評価できる。この結果、例えば計算領域54に設定される遮蔽体の仕様を最適に設計できる。
【0050】
[D]第4実施形態(
図15、
図16)
図15は、第4実施形態に係る放射線強度分布測定システムを示すブロック図である。この第4実施形態において、第1及び第2実施形態と同様な部分については、同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0051】
第4実施形態の放射線強度分布測定システム60が第2実施形態と異なる点は、この第2実施形態の放射線強度分布測定システム40に追加して、測定位置推定装置17で推定された放射線測定装置11の測定位置、及びこの測定位置の推定に使用された可視画像を記録するデータ記録装置61と、移動装置41による放射線測定装置11の走査後に取得された可視画像とデータ記録装置61に記録された可視画像とを比較して、対象物の同一箇所が撮影された対応位置を前記両可視画像間で求める可視画像比較装置62とを更に有し、測定位置推定装置17が、可視画像比較装置62による比較結果から、データ記録装置61に記録された測定位置を基準にして放射線測定装置11の走査後の測定位置を計算して推定するよう構成された点である。
【0052】
つまり、放射線測定装置11は、移動装置41により対象物の計測領域43A…43B(
図10)に走査されながら、第2実施形態と同様にして、各計測領域43A…43Bで可視画像と入射する放射線強度分布とを取得する。
【0053】
移動装置41による放射線測定装置11の走査前に取得した可視画像センサ12の可視画像と、仮想画像作成装置15で点群データから作成された仮想画像とを画像比較装置16が比較し、この比較結果を基に測定位置推定装置17が、放射線測定装置11の測定位置を計算して推定する。また、画像比較装置16で画像比較に使用された走査前の可視画像と、測定位置推定装置17により推定された測定位置とをデータ記録装置61が記録する。投影装置18は、測定位置推定装置17で計算された放射線測定装置11の測定位置を用いて、その放射線検知センサ13で検知された放射線強度分布を点群データに投影する。距離補正装置19は、投影装置18が点群データに投影した放射線強度分布について、測定位置推定装置17で計算された測定位置を基に距離補正を行い、この補正結果を点群データに再投影する。
【0054】
次に、放射線測定装置11が走査された後の初期動作以降の動作については、移動装置41による放射線測定装置11の走査後に取得した可視画像センサ12の可視画像が、可視画像比較装置62に出力される。
【0055】
この可視画像比較装置62は、可視画像センサ12から出力された最新の可視画像と、データ記録装置61に記録された前回の可視画像との画像比較を行い、これにより、放射線測定装置11の移動経路が把握される。画像比較装置16では、比較する画像が可視画像と点群データから作成した仮想画像とであるため、可視画像と仮想画像で構造物の濃淡が違う場合があり、この違いを比較処理で考慮する必要がある。しかし、可視画像比較装置62では、比較する両画像とも可視画像であるため、同様の違いが発生する可能性は低く画像を比較しやすい。そこで、可視画像比較装置62は、例えば、ブロックマッチング処理により、同一構造物の同一部位が撮影された位置を計測する。
【0056】
図16は、ブロックマッチング処理の説明図である。ブロックマッチング処理は、データ記録装置61に記録された前回(例えば走査前)の可視画像64と、放射線測定装置11の可視画像センサ12から出力された最新の可視画像63とにおいて、最新の可視画像63の各画素に撮影された同一構造物の同一部位を、データ記録装置61の前回の可視画像64から求める処理である。
【0057】
具体的な処理方法は、最新の可視画像63に、評価する評価画素65を中心とした矩形ブロック66を設定し、この矩形ブロック66内の輝度の分散を求める。矩形ブロック66内の輝度の分散があるしきい値以上である場合には、データ記録装置61の前回の可視画像64に対してブロック走査Qを行い、輝度の差を用いた方法や輝度の相関を用いた方法などにより、データ記録装置61の前回の可視画像64において、ブロック走査したブロック67が矩形ブロック66に最も類似した位置を求める。本処理で矩形ブロック66に最も類似していると判断した走査ブロック67の位置が、最新の可視画像63における評価画素65と同一構造物の同一部位が撮影されたデータ記録装置61の前回の可視画像64での位置となる。ブロックマッチング処理は、この処理を最新の可視画像63の全画素に対して実行する。
【0058】
上述のブロックマッチング処理では、輝度の分散の高い矩形ブロック66に対してのみ処理を実行する。輝度の分散が高いということは画像のテクスチャが特徴的であり、ブロックマッチング処理に適しているということである。逆に、輝度の分散が低いということは、画像のテクスチャが一様であり特徴的でないため、ブロックマッチング処理を実行した結果の信頼性が低い可能性がある。このようにブロックマッチング処理に適している矩形ブロックについてブロックマッチング処理を実行することで、信頼性の高い計測が可能になる。また、輝度の分散以外に画像のテクスチャの特徴性を評価できる情報を用いて判断してもよい。
【0059】
測定位置推定装置17は、可視画像比較装置62の比較結果を基に放射線測定装置11の測定位置を計算して推定する。尚、可視画像比較装置62の比較結果から計算した放射線測定装置11の測定位置は、データ記録装置61に記録された放射線測定装置11の前回の測定位置からの相対位置であるため、測定位置推定装置17は、データ記録装置61に記録された放射線測定装置11の前回の測定位置を基に、今回計算した放射線測定装置11の相対的な測定位置を放射線測定装置11の絶対位置に変換する。また、可視画像比較装置62で画像比較に使用した最新の可視画像と、測定位置推定装置17で推定された放射線測定装置11の測定位置とがデータ記録装置61に記録されて、データ記録装置61のデータが更新される。
【0060】
投影装置18は、測定位置推定装置17で推定された放射線測定装置11の測定位置を用いて、この放射線測定装置11の放射線検知センサ13が検知した放射線強度分布を点群データに投影する。距離補正装置19は、投影装置18で点群データに投影された放射線強度分布について、測定位置推定装置17で推定された放射線測定装置11の測定位置を基に距離補正を行い、この補正結果を点群データに再投影する。距離補正装置19から出力される計測領域43A…43B毎の投影結果は、合成装置42で重ね合わせ処理が施されて1つの投影結果に合成される。
【0061】
以上のように構成されたことから、本第4実施形態によれば、第1及び第2実施形態の効果(1)及び(2)と同様な効果を奏するほか、次の効果(4)を奏する。
【0062】
(4)可視画像比較装置62が、放射線測定装置11の可視画像センサ12で検知された最新の可視画像と、データ記録装置11に記録され且つ測定位置推定装置17により放射線測定装置11の測定位置の推定に使用された前回の可視画像とを比較し、この比較結果に基づいて測定位置推定装置17が、放射線測定装置11の最新の測定位置を計算して推定する。このように、可視画像どうしの比較により放射線測定装置11の測定位置が推定されるので、この放射線測定装置11の測定位置を高い信頼性で推定できる。
【0063】
[E]第5実施形態(
図17)
図17は、第5実施形態の放射線強度分布測定システムを示すブロック図である。この第5実施形態において、第1、第2及び第4実施形態と同様な部分については、同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0064】
第5実施形態の放射線強度分布測定システム70が第4実施形態と異なる点は、この第4実施形態の放射線強度分布測定システム60に追加して、測定位置推定装置17により画像比較装置16の比較結果から推定された放射線測定装置11の測定位置と、測定位置推定装置17により可視画像比較装置62の比較結果から、データ記録装置61に記録された放射線測定装置11の前回の測定位置を基準にして推定された放射線測定装置11の測定位置とを比較して、これらの両測定位置を評価する評価装置71を、更に有して構成された点である。
【0065】
つまり、放射線測定装置11は、移動装置41により対象物の計測領域43A…43B(
図10)に走査されながら、第4実施形態と同様にして、各計測領域43A…43Bで可視画像と入射する放射線強度分布とを取得する。
【0066】
放射線測定装置11が走査された後の初期動作以降の動作については、移動装置41による放射線測定装置11の走査後に取得した可視画像センサ12の可視画像が、画像比較装置16及び可視画像比較装置62に出力される。
【0067】
放射線測定装置11の測定位置における第1の計算方法としては、画像比較装置16が、仮想画像作成装置15で点群データから作成された仮想画像と可視画像センサ12の可視画像とを比較し、この比較結果を基に、測定位置推定装置17が放射線測定装置11の測定位置を計算して推定し、この推定した放射線測定装置11の測定位置を評価装置71に出力する。
【0068】
放射線測定装置11の測定位置における第2の計算方法としては、可視画像比較装置62が、データ記録装置61に記録された前回の可視画像と可視画像センサ12から出力された最新の可視画像とを比較し、その比較結果を基に測定位置推定装置17が、放射線測定装置11の前回の測定位置に対する放射線測定装置11の相対的な測定位置を計算して推定する。その後、測定位置推定装置17は、データ記録装置61に記録された放射線測定装置11の前回の測定位置を基に、今回計算した放射線測定装置11の相対的な測定位置を絶対位置に変換して推定し、この推定した放射線測定装置11の測定位置を評価装置71に出力する。
【0069】
評価装置71は、異なる方法で計算した測定位置推定装置17から出力される放射線測定装置11の2つの測定位置を比較し、例えばしきい値判定によって計算結果の良否を判断する。このしきい値判定は、放射線測定装置11における2つの測定位置の距離(差)に対して判定値を予め設定しておき、放射線測定装置11の2つの測定位置の距離(差)が判定距離以下の場合には、測定位置推定装置17の計算結果が正しいと判断し、判定距離以上の場合には測定位置推定装置17の計算結果が正しくないと判断するものである。
【0070】
評価装置71は、測定位置推定装置17の計算結果が正しいと判断した場合には、可視画像比較装置62で画像比較に使用した最新の可視画像と、測定位置推定装置17で推定された測定位置とをデータ記録装置61に記録して、このデータ記録装置61のデータを更新させると共に、投影装置18以降の動作が実行される。また、評価装置71は、測定位置推定装置17の計算結果が正しくないと判断した場合には、データ記録装置61のデータは更新させず、測定位置推定装置17が、データ記録装置61に記録されている放射線測定装置11の測定位置と再度取得した最新の可視画像とを用いて、放射線測定装置11の測定位置の計算を実行する。
【0071】
以上のように構成されたことから、本第5実施形態によれば、第1、第2及び第4実施形態の効果(1)、(2)及び(4)と同様な効果を奏するほか、次の効果(5)を奏する。
【0072】
(5)評価装置71は、測定位置推定装置17により画像比較装置16の比較結果から推定された放射線測定装置11の測定位置と、測定位置推定装置17により可視画像比較結果62の比較結果から、データ記録装置61に記録された前回の測定位置を基準にして推定された放射線測定装置11の測定位置とを比較して、両測定位置の良否を評価する。このため、放射線測定装置11の測定位置をより一層高い信頼性で推定できる。
【0073】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができ、また、それらの置き換えや変更は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。