特許第6591337号(P6591337)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591337
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】蒸発燃料処理装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20191007BHJP
【FI】
   F02M25/08 Z
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-69342(P2016-69342)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-180322(P2017-180322A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸博
【審査官】 篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−187011(JP,A)
【文献】 特開2007−198358(JP,A)
【文献】 特開2009−138561(JP,A)
【文献】 特開2007−218148(JP,A)
【文献】 特開2007−170221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される蒸発燃料処理装置であって、
燃料タンクと大気のそれぞれに連通しており、燃料タンク内の蒸発燃料を吸着するキャニスタと、
内燃機関の吸気通路とキャニスタとの間に接続されており、キャニスタから吸気通路に送られる蒸発燃料と大気とが混合されたパージガスが通過するパージ通路と、
パージ通路内のパージガスの蒸発燃料濃度を検出する濃度検出装置と、を備え、
濃度検出装置は、
パージ通路内の流路面積を変化させることによって、パージ通路を流れているパージガスの圧力を変化させる圧力変化部と、
圧力変化部による変化前後のパージガスの圧力差を検出するセンサと、
センサによって検出される圧力差に基づいて、濃度検出装置が正常に作動しているか否かを判断する判断部と、を備え、
判断部は、
パージ通路に流れるパージガスが第1流量である場合のセンサにより検出される第1圧力差とパージ濃度との第1の関係を用いて、第1圧力差に対応する対応パージ濃度を特定し、
パージ通路に流れるパージガスが第2流量である場合のセンサにより検出される第2圧力差とパージ濃度との第2の関係を用いて、特定した対応パージ濃度に対応する第2圧力差を推定し、
パージ通路に流れるパージガスが第2流量である場合のセンサにより検出される第3圧力差と、第2圧力差と、を用いて濃度検出装置が正常に作動しているか否かを判断する、蒸発燃料処理装置。
【請求項2】
判断部は、第2圧力差と第3圧力差との差が第1範囲に含まれる場合に、濃度検出装置が正常に作動していると判断する、請求項1に記載の蒸発燃料処理装置。
【請求項3】
判断部は、第2圧力差と第3圧力差との差が第1範囲に含まれていない場合に、第2流量であって、センサに印加される電圧を変化させた場合のセンサにより検出される第4圧力差と、第3圧力差と、の差が第2範囲に含まれてない場合に、センサが正常に作動していないと判断する、請求項2に記載の蒸発燃料処理装置。
【請求項4】
判断部は、第2圧力差と第3圧力差との差が第1範囲に含まれていない場合であって、第2圧力差と第3圧力差との差が第1範囲よりも広い第3範囲に含まれていない場合に、圧力変化部が正常に作動していないと判断する、請求項2又は3に記載の蒸発燃料処理装置。
【請求項5】
濃度検出装置は、センサによって検出される圧力差と濃度との関係を示すデータベースを有し、
濃度検出装置は、内燃機関の排気管内に配置されている空燃比センサを用いて、パージガスの蒸発燃料濃度を推定する推定部をさらに備え、
第2圧力差と第3圧力差との差が第1範囲に含まれていない場合であって、第2圧力差と第3圧力差との差が第1範囲よりも広い第3範囲に含まれている場合に、推定部によって推定される蒸発燃料濃度を用いて、データベースを補正する、請求項2から4のいずれか一項に記載の蒸発燃料処理装置。
【請求項6】
濃度検出装置は、内燃機関の排気管内に配置されている空燃比センサを用いて、パージガスの蒸発燃料濃度を推定する推定部をさらに備え、
濃度検出装置が正常に作動していないと判断される場合に、濃度検出装置を用いずに、推定済みの蒸発燃料濃度を利用する、請求項1から5のいずれか一項に記載の蒸発燃料処理装置。
【請求項7】
パージ通路に配置されており、パージガスを圧送するポンプをさらに備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の蒸発燃料処理装置。
【請求項8】
パージ通路を遮断する遮断弁と、
遮断弁よりも上流側において、パージ通路を分岐する分岐通路と、を備え、
ポンプは、遮断弁によってパージ通路が遮断されている間に、分岐通路を介して、パージ通路内のパージガスを還流させ、
判断部は、パージガスが還流している間に濃度検出装置が正常に作動しているか否かを判断する、請求項7に記載の蒸発燃料処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、蒸発燃料処理装置に関する技術を開示する。特に、燃料タンク内で発生した蒸発燃料を、内燃機関の吸気通路にパージして処理する蒸発燃料処理装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、蒸発燃料処理装置が開示されている。蒸発燃料処理装置は、キャニスタから内燃機関の吸気通路に供給されるパージガスの濃度を検出する濃度検出部を備える。濃度検出装置は、パージガスが通過するパージ通路から分岐した濃度検出通路に配置されるオリフィスと、オリフィス前後のパージガスの圧力を検出する圧力センサと、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−348813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
濃度検出装置が常に正常に作動しているとは限らない。本明細書では、濃度検出装置が正常に作動しているか否かを判断する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する蒸発燃料処理装置は、車両に搭載される。蒸発燃料処理装置は、燃料タンクと大気のそれぞれに連通しており、燃料タンク内の蒸発燃料を吸着するキャニスタと、内燃機関の吸気通路とキャニスタとの間に接続されており、キャニスタから吸気通路に送られる蒸発燃料と大気とが混合されたパージガスが通過するパージ通路と、パージ通路内のパージガスの蒸発燃料濃度を検出する濃度検出装置と、を備える。濃度検出装置は、パージ通路内の流路面積を変化させることによって、パージ通路を流れているパージガスの圧力を変化させる圧力変化部と、圧力変化部による変化前後のパージガスの圧力差を検出するセンサと、センサによって検出される圧力差に基づいて、濃度検出装置が正常に作動しているか否かを判断する判断部と、を備える。判断部は、パージ通路に流れるパージガスが第1流量である場合のセンサにより検出される第1圧力差を用いて、第2流量である場合のセンサによる第2圧力差を推定し、パージ通路に流れるパージガスが第2流量である場合のセンサにより検出される第3圧力差と、第2圧力差と、を用いて濃度検出装置が正常に作動しているか否かを判断する。
【0006】
この構成では、パージガスが第1流量でパージ通路を流れる圧力差を利用して、第2流量のときの圧力差を推定するとともに実際に第2流量のときの圧力差を測定し、推定値と測定値を比較することによって、濃度検出装置が正常に作動しているか否かを判断する。これにより、濃度検出装置が正常に作動しているか否かを判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例の自動車の燃料供給システムの概略を示す。
図2】第1実施例の蒸発燃料処理装置を示す。
図3】濃度センサの一例を示す。
図4】濃度センサの一例を示す。
図5】濃度センサの一例を示す。
図6】濃度検出及び正常判定処理のフローチャートを示す。
図7】差圧―濃度の関係を表すデータマップを示す。
図8】変形例の蒸発燃料処理装置を示す。
図9】変形例の蒸発燃料処理装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0009】
(特徴1)本実施例の蒸発燃料処理装置では、判断部は、第2圧力差と第3圧力差との差が第1範囲に含まれる場合に、濃度検出装置が正常に作動していると判断してもよい。この構成によれば、第2流量のときの推定値と測定値の差が比較的に小さい場合に、正常に作動している判断することができる。
【0010】
(特徴2)本実施例の蒸発燃料処理装置では、判断部は、第2圧力差と第3圧力差との差が第1範囲に含まれていない場合に、第2流量であって、センサに印加される電圧を変化させた場合のセンサにより検出される第4圧力差と、第3圧力差と、の差が第2範囲に含まれてない場合に、センサが正常に作動していないと判断してもよい。この構成によれば、センサに印加される電圧が変化すると、センサから出力される電圧値も変化する。このため、実際の圧力差が変化していないにも関わらず、センサから出力される電圧値を用いて圧力差を特定すると、第3圧力差と異なる第4圧力差が特定される。このことから、構成によれば、濃度検出装置のうち、センサが適切に圧力差を測定することができずに、センサが正常に作動していないと判断することができる。
【0011】
(特徴3)本実施例の蒸発燃料処理装置では、判断部は、第2圧力差と第3圧力差との差が第1範囲に含まれていない場合であって、第2圧力差と第3圧力差との差が第1範囲よりも広い第3範囲に含まれていない場合に、圧力変化部が正常に作動していないと判断してもよい。この構成によれば、濃度検出装置のうち、圧力変化部が適切にパージガスの圧力を変化させることできずに、センサが正常に作動していないと判断することができる。
【0012】
(特徴4)本実施例の蒸発燃料処理装置では、濃度検出装置は、センサによって検出される圧力差と濃度との関係を示すデータベースを有していてもよい。濃度検出装置は、内燃機関の排気管内に配置されている空燃比センサを用いて、パージガスの蒸発燃料濃度を推定する推定部を備えていてもよい。第2圧力差と第3圧力差との差が第1範囲に含まれていない場合であって、第2圧力差と第3圧力差との差が第1範囲よりも広い第3範囲に含まれている場合に、推定部によって推定される蒸発燃料濃度を用いて、データベースを補正してもよい。この構成によれば、濃度検出装置の検出結果に多少の誤差が含まれている場合に、圧力差から濃度を特定するためのデータベースを修正することによって、濃度検出装置を用いて、適切に濃度を特定することが可能となる。
【0013】
(特徴5)本実施例の蒸発燃料処理装置では、濃度検出装置は、内燃機関の排気管内に配置されている空燃比センサを用いて、パージガスの蒸発燃料濃度を推定する推定部を備えていてもよい。濃度検出装置が正常に作動していないと判断される場合に、濃度検出装置を用いずに、推定済みの蒸発燃料濃度を利用してもよい。この構成によれば、燃料検出装置が正常に作動していない場合にも、パージガスの濃度を特定することができる。
【0014】
(特徴6)本実施例の蒸発燃料供給装置は、パージ通路に配置されており、パージガスを圧送するポンプを備えていてもよい。この構成によれば、パージガスを適切に吸気通路に供給することができる。また、パージ通路のパージガスの流量を容易に変化させることができる。
【0015】
(特徴7)本実施例の蒸発燃料供給装置は、パージ通路を遮断する遮断弁と、遮断弁よりも上流側において、パージ通路を分岐する分岐通路と、を備えていてもよい。ポンプは、遮断弁によってパージ通路が遮断されている間に、分岐通路を介して、パージ通路内のパージガスを還流させてもよい。判断部は、パージガスが還流している間に濃度検出装置が正常に作動しているか否かを判断してもよい。この構成によれば、パージガスを吸気通路に供給する前に、濃度検出装置によってパージガスの濃度を特定することができる。
【実施例】
【0016】
(第1実施例)
図1を参照し、蒸発燃料処理装置20を備える燃料供給システム6について説明する。燃料供給システム6は、ガソリン自動車やハイブリッド車等のエンジン2を有する車両に搭載される。燃料供給システム6は、燃料タンク14内に貯留されている燃料をエンジン2に供給するためのメイン供給通路10と、燃料タンク14内で発生した蒸発燃料をエンジン2に供給するためのパージ通路22を備えている。
【0017】
メイン供給通路10には、燃料ポンプユニット16と、供給管12と、インジェクタ4が設けられている。燃料ポンプユニット16は、燃料ポンプ、プレッシャレギュレータ、制御回路等を備えている。燃料ポンプユニット16は、ECU100(Engine Control Unitの略)から供給される信号に応じて燃料ポンプを制御する。燃料ポンプは、燃料タンク14内の燃料を昇圧して吐出する。燃料ポンプから吐出される燃料は、プレッシャレギュレータで調圧され、燃料ポンプユニット16から供給管12に供給される。供給管12は、燃料ポンプユニット16とインジェクタ4に接続されている。供給管12に供給された燃料は、供給管12を通過してインジェクタ4に達する。インジェクタ4は、ECU100によって開度(即ち燃料噴射時間)がコントロールされる弁(図示省略)を有している。インジェクタ4の弁が開かれると、供給管12内の燃料が、エンジン2に接続されている吸気管34に供給される。
【0018】
なお、吸気管34は、エアクリーナ30に接続されている。エアクリーナ30は、吸気管34に流入する空気の異物を除去するフィルタを備えている。吸気管34内に、スロットルバルブ32が設けられている。スロットルバルブ32が開くと、エアクリーナ30からエンジン2に向けて吸気が行われる。スロットルバルブ32は、吸気管34の開度を調整し、エンジン2に流入する空気量を調整する。スロットルバルブ32は、インジェクタ4より上流側(エアクリーナ30側)に設けられている。
【0019】
パージ通路22には、蒸発燃料処理装置20が配置されている。蒸発燃料処理装置20は、キャニスタ19と、ポンプ52と、制御弁26と、濃度検出装置57と、を備える。燃料タンク14とキャニスタ19が、連通管18によって接続されている。キャニスタ19と制御弁26は、主通路22aによって接続されている。主通路22a上には、キャニスタ19と制御弁26の間に、ポンプ52が配置されている。キャニスタ19と制御弁26の間には、主通路22aから分岐した分岐通路22bが配置されている。分岐通路22bは、一端がポンプ52の上流で主通路22aに接続されており、他端がポンプ52の下流で主通路22aに接続されている。分岐通路22b上には、濃度検出装置57の一部が配置されている。
【0020】
図2に示すように、キャニスタ19は、大気ポート19a,パージポート19b及びタンクポート19cを備えている。大気ポート19aは、連通管17を介して、エアフィルタ15に接続されている。大気ポート19aは、エアフィルタ15を介して大気と連通している。パージポート19bは、主通路22aに接続されている。タンクポート19cは、連通管18を介して、燃料タンク14に接続されている。キャニスタ19内に、活性炭19dが収容されている。活性炭19dに面するキャニスタ19の壁面のうちの、1つの壁面にポート19a,19b及び19cが設けられている。活性炭19dと、ポート19a,19b及び19cが設けられているキャニスタ19の内壁との間には、空間が存在する。ポート19a,19b及び19cが設けられている側のキャニスタ19の内壁に、第1仕切板19eと第2仕切板19fが固定されている。第1仕切板19eは、大気ポート19aとパージポート19bの間において、活性炭19dとキャニスタ19の内壁の間の空間を分離している。第1仕切板19eは、ポート19a,19b及び19cが設けられている側と反対側の空間まで伸びている。第2仕切板19fは、パージポート19bとタンクポート19cの間において、活性炭19dとキャニスタ19の内壁の間の空間を分離している。
【0021】
活性炭19dは、燃料タンク14から連通管18,タンクポート19cを通じてキャニスタ19の内部に流入する気体から蒸発燃料を吸着する。蒸発燃料が吸着された後の気体は、大気ポート19a,連通管17及びエアフィルタ15を通過して大気に放出される。キャニスタ19は、燃料タンク14内の蒸発燃料が大気に放出されることを防止することができる。活性炭19dで吸着された蒸発燃料は、パージポート19bより主通路22aに供給される。第1仕切板19eは、大気ポート19aが接続されている空間と、パージポート19bが接続されている空間を分離している。第1仕切板19eは、蒸発燃料を含んだ気体が大気に放出されることを防止している。第2仕切板19fは、パージポート19bが接続されている空間と、タンクポート19cが接続されている空間を分離している。第2仕切板19fは、タンクポート19cからキャニスタ19に流入する気体が直接主通路22aに移動することを防止している。
【0022】
主通路22aは、キャニスタ19と吸気管34を接続している。主通路22a上には、ポンプ52と制御弁26が設けられている。ポンプ52は、キャニスタ19と制御弁26の間に配置されており、蒸発燃料を含む空気、即ち、蒸発燃料と大気との混合気体(以下「パージガス」と呼ぶ)を圧送する。具体的には、ポンプ52は、主通路22aを通じてキャニスタ19内のパージガスを矢印60方向に引き込み、主通路22aを通じてパージガスを吸気管34に向けて矢印66方向に押し出す。なお、エンジン2が駆動している場合、吸気管34内は負圧である。そのため、キャニスタ19に吸着された蒸発燃料は、吸気管34とキャニスタ19の圧力差によって吸気管34に導入することもできる。しかしながら、主通路22aにポンプ52を配置することにより、吸気管34内の圧力がパージガスを引き込むために十分でない圧力の場合(正圧、あるいは、負圧であるがその圧力の絶対値が小さい)であっても、キャニスタ19に吸着された蒸発燃料を吸気管34に供給することができる。また、ポンプ52を配置することにより、吸気管34に所望量の蒸発燃料を供給することができる。
【0023】
主通路22aには、分岐通路22bが接続されている。分岐通路22b上には、濃度検出装置57が配置されている。より具体的には、分岐通路22bは、第1分岐管56と第2分岐管58を備えている。第1分岐管56の一端は、ポンプ52の下流(吸気管34側)に接続されている。第2分岐管58の一端は、ポンプ52の上流(キャニスタ19側)に接続されている。第1分岐管56及び第2分岐管58の他端は、濃度検出装置57の圧力変化部(図3のベンチュリ管72、図4のオリフィス管74、図5の毛細管式粘度計76)に接続されている。濃度検出装置57は、分岐通路22bを通過するバージガスの濃度を検出する。
【0024】
蒸発燃料処理装置20では、ポンプ52を駆動した状態で制御弁26が開かれると、パージガスが矢印66方向に移動し、吸気管34に導入される。また、ポンプ52を駆動した状態で制御弁26が閉じられると、パージガスが矢印62方向に移動し、濃度検出装置57で濃度が検出される。パージ実行中は、吸気管34へのパージガスの供給量を調整するために、デューティ比に基づいて、制御弁26の開閉が繰り返される。蒸発燃料処理装置20は、パージ実行中に制御弁26が閉じられたタイミングを利用して、パージガスの濃度を検出することができる。なお、濃度検出装置57は、分岐通路22b上に設けられており、主通路22a上には設けられていない。そのため、蒸発燃料処理装置20は、主通路22aの抵抗が増大することが抑制され、吸気管34に供給されるパージガスの量が制限されることを抑制することができる。なお、主通路22a及び分岐通路22bの内径等を調整することにより、吸気管34にパージガスを供給しながら、濃度検出装置57にもパージガスを供給することもできる。この場合、吸気管34に供給されるパージガス中の蒸発燃料濃度(以下では「パージ濃度」と呼ぶ)をリアルタイムで検出することができる。
【0025】
濃度検出装置57は、圧力変化部と、差圧センサ70と、を備える。また、ECU100は、濃度検出装置57の処理装置として機能する。圧力変化部には、種々の態様が適用可能である。ここで、図3から図5を参照し、蒸発燃料処理装置20で利用可能な圧力変化部の幾つかを説明する。図3は、ベンチュリ管72を有する濃度検出装置57aを示している。ベンチュリ管72の一方の端部72aが第1分岐管56に接続されている。ベンチュリ管72の他方の端部72cが第2分岐管58に接続されている。ベンチュリ管の端部72aと中央部(絞り部)72bの間に差圧センサ70が接続されている。濃度検出装置57aは、端部72aと中央部72bの圧力差を差圧センサ70で検出する。端部72aと中央部72bの差圧を検出すれば、ベルヌーイの式よりバージガスの密度(バージ濃度)を算出することができる。
【0026】
図4は、オリフィス管74を内蔵した濃度検出装置57bを示している。オリフィス管74の一端は第1分岐管56に接続され、他端は第2分岐管58に接続されている。オリフィス管74の中央に、開孔74aを有するオリフィス板74bが設けられている。オリフィス板74bの上流側と下流側に、差圧センサ70が接続されている。濃度検出装置57bは、オリフィス板74bの上流側と下流側の圧力差を差圧センサ70で検出し、バージ濃度を算出する。
【0027】
図5は、毛細管式粘度計76を内蔵した濃度検出装置57cを示している。毛細管式粘度計76の一端は第1分岐管56に接続され、他端は第2分岐管58に接続されている。毛細管式粘度計76の内部には、複数の毛細管76aが配置されている。毛細管76aの上流側と下流側に、差圧センサ70が接続されている。濃度検出装置57cは、毛細管76aの上流側と下流側の圧力差を差圧センサ70で検出し、毛細管式粘度計76を通過する流体(即ちパージガス)の粘性を測定する。毛細管76aの上流側と下流側の差圧を検出すれば、ハーゲン・ポアズイユの式より、流体の粘性を算出することができる。パージガスの粘性は、パージ濃度と相関関係がある。そのため、パージガスの粘性を算出することにより、パージ濃度を検出することができる。
【0028】
差圧センサ70は、圧力変化部の上流側と下流側の両側のパージガスの圧力を受けて、その差圧を検出する。差圧センサ70は、パージガスの差圧によって電気的特性が変化する。ECU100は、所定の電圧(以下では「第1電圧」と呼ぶ)を差圧センサ70に印加する場合に、差圧センサ70から出力される電圧値を用いて、差圧を特定する。ECU100には、第1電圧を印加した場合の出力電圧値と差圧との関係を示すデータマップが予め格納されている。ECU100は、この出力電圧値―差圧データマップを用いて、差圧を特定する。
【0029】
ECU100は、CPU及びROM,RAM等のメモリを含む。ECU100は、インジェクタ4、蒸発燃料処理装置20、スロットルバルブ32等に接続されて、これらを制御する。ECU100のメモリには、後述する蒸発燃料処理装置20の処理に必要な値やデータマップ等が予め格納されている。具体的には、後述する処理の説明の中で明らかにされている。
【0030】
次いで、蒸発燃料処理装置20の動作について説明する。エンジン2が駆動中であってパージ条件が成立すると、ECU100は、制御弁26をデューティ制御することによってパージ処理を実行する。パージ条件とは、パージガスをエンジン2に供給するパージ処理を実行すべき場合に成立する条件であり、エンジン2の冷却水温や濃度センサ50による濃度の検出状況によって、予め製造者によってECU100に設定される条件である。ECU100は、エンジン2の駆動中に、パージ条件が成立するか否かを常時監視している。ECU100は、パージ濃度に基づいて、ポンプ52の出力及び制御弁26のデューティ比を制御する。ポンプ52が始動すると、キャニスタ19に吸着されていたパージガス及びエアクリーナ30を通過した空気が、エンジン2に導入される。
【0031】
なお、ECU100は、スロットルバルブ32の開度を制御する。ECU100は、インジェクタ4による噴射燃料量も制御する。具体的には、インジェクタ4の開弁時間を制御することによって、噴射燃料量を制御する。エンジン2が駆動されると、ECU100は、インジェクタ4からエンジン2に噴射される単位時間当たりの燃料噴射時間(即ちインジェクタ4の開弁時間)を算出する。燃料噴射時間は、空燃比を目標空燃比(例えば理想空燃比)に維持するために、実験によって予め特定された基準噴射時間を、フィードバック補正係数を用いて補正することによって算出する。なお、燃料噴射時間は、フィードバック補正係数に加えて、他の係数(暖機増量係数及び加速増量係数等)を用いて補正されてもよい。フィードバック補正係数は、空燃比センサの検出結果に基づいて、空燃比を目標空燃比に制御するための係数である。なお、空燃比センサは、エンジン2の排気管内に配置されている。
【0032】
具体的には、ECU100は、パージ条件が成立すると、パージ処理を開始する前に、濃度検出装置57を利用してパージ濃度を特定する。ECU100は、図7に示す差圧と濃度の関係を示すデータマップを格納している。この差圧―濃度データマップは、予め実験によって特定され、ECU100のメモリに格納されている。差圧―濃度データマップでは、横軸が濃度を示し、縦軸がパージガスのベンチュリ管72の通過前後の圧力差(以下では「差圧」と呼ぶ)を示す。データマップには、複数の流量の場合の差圧と濃度との関係が示されている。
【0033】
具体的には、ECU100は、パージ条件が成立すると、濃度検出及び正常判定処理を実行する。正常判定処理では、ECU100は、濃度検出装置57が正常に作動しているか否かを判定する。図6に示されるように、濃度検出及び正常判定処理では、まず、S10において、ECU100は、制御弁26が閉弁されている状態で、ポンプ52を、主通路22aと分岐通路22bとによって構成される循環通路に所定量(以下では「第1流量」と呼ぶ)のパージガスが流れるように駆動させる。例えば、S10の処理におけるポンプ52の回転数が予め決められている。この結果、パージガスは、循環通路を還流する。これにより、パージガスは、分岐通路22b上のベンチュリ管72を通過する。次いで、S12では、ECU100は、濃度検出装置57を用いて、差圧(以下では「第1差圧」と呼ぶ)を測定する。次いで、S14では、ECU100は、第1差圧と差圧―濃度データマップとを用いて、パージ濃度を特定する。具体的には、図7に示すように、ECU100は、S12において第1流量において第1差圧が測定されると、差圧―濃度データマップ上で、第1流量における差圧と濃度との関係を表す直線上の点200を特定する。次いで、ECU100は、点200に対応するパージ濃度を特定する。
【0034】
次いで、S16では、ECU100は、循環通路に第1流量と異なる所定量(以下では「第2流量」と呼ぶ)が流れている場合の差圧を推定する。具体的には、ECU100は、差圧―濃度データマップの第2流量における差圧と濃度との関係を表す直線上において、S14で特定された濃度に対応する点202を特定する。次いで、ECU100は、点202に対応する第2差圧を特定する。
【0035】
続くS18では、ECU100は、ポンプ52を、第2流量のパージガスが流れるように駆動させる。次いで、S20では、ECU100は、S12と同様に、パージガスの差圧(以下では「第3差圧」と呼ぶ)を測定する。S22では、ECU100は、実測値である第3差圧から推定値である第2差圧を減算した値が第1所定範囲−αからαの範囲内に含まれているか否かを判断する。濃度検出装置57が正常に作動している場合、差圧―濃度データマップから推定される第2の差圧と実測された第3差圧とは略一致している。即ち、(第3差圧)―(第2差圧)≒0である。しかしながら、例えば、濃度検出装置57が正常に作動していない場合には、第2の差圧と第3差圧との差は大きくなる。濃度検出装置57が正常に作動していない場合とは、ベンチュリ管72が正常に作動していない場合と、差圧センサ70が正常に作動していない場合と、に分類される。ベンチュリ管72が正常に作動していない場合とは、例えば、ベンチュリ管72に異物が蓄積し、中央部72bの流路径が変化したり、ベンチュリ管72に一部が破損したりすることによって、ベンチュリ管72が当初設定されていた圧力変化が見込めなくなる場合がある。差圧センサ70が正常に作動していない場合とは、例えば、差圧センサ70が断線していたり、腐食によって正常に信号の通信ができなくなる場合がある。
【0036】
第3差圧から第2差圧を減算した値が第1所定範囲に含まれる場合(S22でYES)、処理を終了する。この場合、ECU100は、濃度検出装置57が正常に作動していると判断して、パージ処理を開始する。パージ処理中では濃度検出装置57を用いずにパージ濃度を特定する。例えば、パージ処理が開始されると、ECU100は、公知の手法で、フィードバック補正係数を利用してS14で特定済のパージ濃度を補正することによって、パージ濃度を推定する。なお、変形例では、パージ処理中では、濃度検出装置57を用いてパージ濃度を特定してもよい。例えば、パージ処理中にデューティ制御される制御弁26が閉弁されている期間に、矢印62方向に移動するパージガスを、濃度検出装置57で検出してもよい。
【0037】
一方で、第3差圧から第2差圧を減算した値が第1所定範囲に含まれない場合(S22でNO)、S24において、ECU100は、差圧センサ70に印加する電圧を変化させる。例えば、差圧センサ70に印加する電圧を、第1電圧から第2電圧に変化する。この結果、ベンチュリ管72による差圧が変化しなくても、差圧センサ70から出力される電圧値が変化する。ECU100は、予め格納されている印加電圧が第1電圧である場合の出力電圧値―差圧データマップと、印加電圧が第2電圧である場合の出力電圧値と、を用いて、差圧(以下では「第4差圧」と呼ぶ)を特定する。この構成では、圧力変化部における実際の差圧に変化は生じていないが、特定される差圧は変化する。S28では、ECU100は、第3差圧から第4差圧を減算した値が第2所定範囲−βからβの範囲内に含まれているか否かを判断する。第2所定範囲は、S20において差圧センサ70に印加される電圧と、S26において差圧センサ70に印加される電圧と、の変化によって差圧センサ70からの出力電圧から特定される差圧の変化の範囲に基づいて決定される。
【0038】
第3差圧から第4差圧を減算した値が第2所定範囲に含まれない場合(S28でNO)、ECU100は、差圧センサ70が正常に作動していないと判定する。即ち、異なる差圧センサ70に印加される電力を変化した場合に、所定の変化量が得られない場合に、差圧センサ70が正常に作動していないと想定される。この場合、S30において、ECU100は、差圧センサ70が正常に作動していないことを示す信号を、車両のインジケータに出力する。これにより、運転者は、インジケータを確認することによって、差圧センサ70が正常に作動していないことを知ることができる。S30が終了すると、S36に進む。
【0039】
第3差圧から第4差圧を減算した値が第2所定範囲に含まれている場合(S28でYES)、差圧センサ70は正常に作動していると想定される。この場合、S32において、ECU100は、第3差圧から第2差圧を減算した値が第3所定範囲−γからγの範囲内に含まれているか否かを判断する。第3所定範囲は、S22で用いた第2所定範囲よりも広い。第3差圧から第2差圧を減算した値が第3所定範囲に含まれていない場合(S32でNO)、ECU100は、圧力変化部が正常に作動していないと判定する。この場合、S34において、ECU100は、圧力変化部が正常に作動していないことを示す信号を、車両のインジケータに出力する。これにより、運転者は、インジケータを確認することによって、圧力変化部が正常に作動していないことを知ることができる。なお、変形例では、S30及びS34の少なくとも一方では、ECU100は、差圧センサ70、圧力変化部が正常に作動していないことを示す情報をECU100に格納しておいてもよい。この構成によれば、車両のメンテナンス時に、作業者は、ECU100の状態を確認することによって、圧力変化部が正常に作動していないことを知ることができる。S34が終了すると、S36に進む。
【0040】
S36では、ECU100は、濃度検出装置57を利用せずに、上述したフィードバック補正係数を利用した濃度推定、即ち、空燃比に基づいて推定される濃度のみを利用して濃度を推定することを示す濃度フラグをECU100にセットして処理を終了する。濃度フラグがセットされた後に、パージ処理が開始されると、ECU100は、最初にパージ濃度が0であると推定して、パージ濃度の推定を開始する。
【0041】
第3差圧から第2差圧を減算した値が第3所定範囲に含まれている場合(S32でYES)とは、例えば、ベンチュリ管72に多少の異物が蓄積されており、差圧は特定できるものの、予め想定されている差圧とは異なるため、予め設定されている差圧―濃度データマップを用いてベーパ濃度を特定すると適切なベーパ濃度が特定できない場合である。この場合、S38において、ECU100は、差圧―濃度データマップを修正するための修正フラグをセットして、濃度検出及び正常判定処理を終了する。修正フラグがセットされた後に、パージ処理が開始されると、ECU100は、最初にパージ濃度が0であると推定して、パージ濃度の推定を開始する。次いで、ECU100は、空燃比を用いた推定濃度(以下では「濃度Y」と呼ぶ)が安定すると、差圧―濃度データマップ上に、S12に測定された第1差圧と濃度Yとの点206を通過し、第1流量における差圧とベーパ濃度との関係を示す直線と平行な直線L1を作成する。
【0042】
直線L1が作成された後に実行される濃度検出及び正常判定処理では、ECU100は、S14において、直線L1を用いて差圧からパージ濃度を特定する。なお、ECU100は、複数のパージ濃度において、差圧と推定パージ濃度の関係を特定し、直線L1の傾きを修正してもよい。
【0043】
濃度検出処理と正常判定処理とは、別々に実行してもよい。即ち、図6において、S14の処理を行わずに、正常判定処理のみを実行してもよい。そして、正常判定処理と並列にあるいは異なるタイミングで、図6のS10〜S14の処理、即ち、濃度検出処理を実行してもよい。
【0044】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0045】
例えば、上記の実施例では、濃度検出装置57は、分岐通路22b上に配置されている。しかしながら、図8に示すように、濃度検出装置57は、主通路22a上に配置されていてもよい。この場合、ECU100は、パージ処理中に濃度検出装置57を用いて濃度を検出することができる。あるいは、蒸発燃料処理装置20は、分岐通路22bを有していなくてもよい。この場合、図9に示すように、濃度検出装置57は、主通路22a上に配置されていてもよい。これらの変形例では、ECU100は、濃度検出及び正常判定処理を、パージ処理中に実行してもよい。この場合、空燃比に基づくパージ濃度の推定処理を、濃度検出及び正常判定処理と並列に実行してもよい。そして、図6のS38において、差圧―濃度データマップを修正する場合に、並列で実行されている推定パージ濃度を用いて、直線L1を作成してもよい。
【0046】
さらに、上記の蒸発燃料処理装置20では、分岐通路22bの下流端は、キャニスタ19とポンプ25の間の主通路22aに接続されている。しかしながら、分岐通路22bの下流端は、燃料タンク14とキャニスタ19との間、あるいは、キャニスタ19に接続されていてもよい。
【0047】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0048】
6 :燃料供給システム
10 :メイン供給通路
19 :キャニスタ
20 :蒸発燃料処理装置
22 :パージ通路
22a :主通路
22b :分岐通路
30 :エアクリーナ
32 :スロットルバルブ
34 :吸気管
52 :ポンプ
56 :第1分岐管
57 :濃度検出装置
58 :第2分岐管
70 :差圧センサ
72 :ベンチュリ管
72a :端部
72b :中央部
72c :端部
74 :オリフィス管
74a :開孔
74b :オリフィス板
76 :毛細管式粘度計
76a :毛細管
100 :ECU
図1
図2
図3
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図5
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図9