(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591339
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
A47J 37/06 20060101AFI20191007BHJP
F24C 7/04 20060101ALI20191007BHJP
F24C 15/14 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
A47J37/06 371
F24C7/04 A
F24C15/14 B
F24C15/14 G
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-77724(P2016-77724)
(22)【出願日】2016年4月8日
(65)【公開番号】特開2017-185116(P2017-185116A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2018年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】関 真人
(72)【発明者】
【氏名】川村 光輝
(72)【発明者】
【氏名】山田 清司
【審査官】
谷川 啓亮
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−065538(JP,A)
【文献】
特開平09−072550(JP,A)
【文献】
特開2002−85261(JP,A)
【文献】
特開2010−35964(JP,A)
【文献】
実開昭54−162466(JP,U)
【文献】
特開昭57−127724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/00 − 37/07
F24C 7/00 − 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱調理器の本体に配置され、被加熱物の出し入れが可能な前面開口部と底部には左右に階段状の受け皿受け部とを有した調理庫と、
該調理庫の前記前面開口部を塞ぐドアと、
前記調理庫の上方に設けられる上加熱手段と、
前記調理庫の前記受け皿受け部の間に設けられる下加熱手段と、
該下加熱手段の上方に設け、前記被加熱物を載置する焼き網を保持し前記被加熱物からの滴下物を左右の両辺側に流すための凸部と、前記左右の両辺部で前記滴下物を溜める外周平坦部を設けた受け皿とを備え、
該受け皿の前記外周平坦部は前記受け皿受け部と近接し略対向し、
前記下加熱手段と前記受け皿の底面との間には空間を有する加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器において、
前記した加熱手段の上端よりも前記外周平坦部が上方にあるように前記受け皿が配置される、加熱調理器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の加熱調理器において、
前記受け皿受け部の上面にはガイドを有し、
前記外周平坦部には下方に突き出る引掛部を有し、
前記ドアを開けて前記受け皿を引き出す場合に、前記引掛部が前記ガイドに当たる、加熱調理器。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の加熱調理器において、
前記調理庫の側面には受け皿保持部を有し、
前記受け皿はフランジ部を有し、
前記受け皿保持部と前記フランジ部が当接する、加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚等の被調理物を加熱する時に受皿に水を必要としない加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の加熱調理器においては、受皿の下部に冷却通路を形成して受皿の温度を特定温度以下に抑える事で、調理中に魚等の調理物から出て受皿に滴下した時に発煙や引火が起こらないようにすることが特許文献1に公開されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−61515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載された加熱調理器において、受皿の下方に加熱源を設けた場合、受皿の下方に受皿を冷却する冷却通路を設けられない課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、加熱調理器の本体に配置され、被加熱物の出し入れが可能な前面開口部と底部には左右に階段状の受け皿受け部とを有した調理庫と、該調理庫の前記前面開口部を塞ぐドアと、前記調理庫の上方に設けられる上加熱手段と、前記調理庫の前記受け皿受け部の間に設けられる下加熱手段と、該下加熱手段の上方に設け、前記被加熱物を載置する焼き網を保持し前記被加熱物からの滴下物を左右の両辺側に流すための凸部と、前記左右の両辺部で前記滴下物を溜める外周平坦部を設けた受け皿とを備え、該受け皿の前記外周平坦部は前記受け皿受け部と近接し略対向
し、前記下加熱手段と前記受け皿の底面との間には空間を有するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、被加熱物から滴下した油脂分からの発煙や発火を防止し、また被加熱物の下面の加熱ムラを防ぐ加熱調理器を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に関する加熱調理器をシステムキッチンに収納した状態の斜視図。
【
図4】同オーブンの
図2B−B位置の正面断面図である。
【
図5】同オーブンの
図2C−C位置の上面断面図である。
【
図6】
図5において受け皿を透過した説明図である。
【
図9】同調理庫の受け皿の支持を説明する斜視図である。
【
図10】同調理庫の受け皿の出し入れを説明する斜視図である。(a)は、壁部に入れた状態を示す図であり、(b)は、壁部から出した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例を上記した
図1から
図10に従って説明する。
【0009】
図1において、加熱調理器の本体2は、システムキッチン1の上面から落とし込んで設置され、設置後は本体2の後述するオーブン(ロースター)4がシステムキッチン1の前面部から操作できるようになっている。
【0010】
調理を行う際の調理鍋(図示せず)は、本体2の上面に配置された耐熱ガラス等からなるプレート3上に載置され、プレート3の周囲端面は、プレート枠14によって保護されている。
【0011】
プレート3には載置部6が描かれており、載置部6に調理鍋を載置することにより調理可能となる。載置部6は、プレート3の上面手前の右に載置部右6a、左に載置部左6bが配置され、これら両載置部6a,6b間の奥(中央後部)に載置部中央6cが配置されている。そして、プレート3を挟んで各載置部6の下に位置するように、本体2内の上部に調理鍋を加熱するための加熱コイルユニット(図示せず)が設置されている。
【0012】
また、プレート3の前面側には、上面操作部9とその奥側に位置する上面表示部10が設けられており、上面操作部9で前記加熱コイルユニットとオーブン4の操作を行う。
【0013】
本体2の内部には、上記した発熱部品である加熱コイルユニットとオーブン4や、電子部品およびこれらの発熱部品を冷却するための冷却ファン(いずれも図示せず)が配置されている。
【0014】
オーブン4は魚や肉,ピザ等の被加熱物を焼くためのもので、本体2の前面部の左側若しくは右側に配置されている(本実施例では、本体2の左側に配置されている)。なお、オーブンは、呼び名としてロースター、グリルと呼ぶこともある。
【0015】
次に、
図2と
図4を用いてオーブン4について詳細について説明する。
【0016】
調理庫26は、前面が開口した箱型をしており、後方上部には排気出口29が設けられ、排気出口29は排気通路(図示せず)を介して本体2の後部上面に開口した排気口8に連通している。
【0017】
また、調理庫26を前面から見て底部26cの左右には階段状の受け皿受け部26aを設けている。
【0018】
また、調理庫26の左右の側面26gに、受け皿受け部26aの上方に略受け皿31の高さ分の距離を離して調理庫26の内側に突状に設けた受け皿保持部26bを設けている。
【0019】
また、調理庫26の上方と下方にはシーズヒータやガスバーナ等の加熱手段27(上加熱手段27a,下加熱手段27b)が設置されている。特に下加熱手段27bは、底部26cに設けた左右の受け皿受け部26aの間に設けられている。
【0020】
また、調理庫26の前面開口部26e側の受け皿受け部26aの上面にはガイド28(
図9)が設けられている。
【0021】
さらに調理庫26の前面開口部26eはドア32によって塞がれており、ドア32の表側にはハンドル11が取り付けられている。またドア32の裏側には後述する受け皿31の連結部31jで受け皿31が着脱自在に連結されている。
【0022】
調理庫26の後方の奥面26hには温度センサ80が設けられている。
【0023】
次に
図5〜
図8を用いて受け皿31について詳細に説明する。
【0024】
受け皿31の前方には、ドア32と連結する舌部状の連結部31jを要し、ドア32の開閉に応じて調理庫26内に出し入れ自在に収納される。連結部31jは、この連結部31jを境に調理庫を上下に仕切り、熱の対流を略防止する働きをしている。
【0025】
受け皿31は、底面31eの全周に外周立上部31b設け、外周立上部31bの先端側には外側にカールしたフランジ部31hを備えた皿形状をしている。
【0026】
また、底面31eには中央部が上方に高く受け皿31の左右側に低く傾斜した富士山型の凸部31cを設け、凸部31cと左右の外周立上部31bとの間には平らな外周平坦部31dを設けている。この左右に設けられた外周平坦部31dは受け皿受け部26aに載置される。
【0027】
また、受け皿31の内部の底面31eの角部には、後述する焼き網33を載せるための網受け部31aを設け、焼き網33を底面31e(凸部31cを含む)から離している。
【0028】
また、受け皿31を調理庫26に入れて受け皿受け部26aに載置した時に、左右の受け皿受け部26aに設けたガイド28と一致する幅寸法に、受け皿31の外周平坦部31dの左右後方の下側に下方に突き出る引掛部31fを設けている。
【0029】
受け皿31は、耐熱性が高くフッ素塗料に比較して安価なホーロー塗装を行っている。
【0030】
次に
図2、
図4、
図6を用いて加熱手段27について説明する。
【0031】
ここでは加熱手段27としてシーズヒータを用いて説明する。
【0032】
調理庫26の上方に設けられる上加熱手段27aは、
図3に示すように、調理庫26の前後方向又は横幅方向に沿って適宜蛇行しながら調理庫26の上面部26dに固定して配置されている。上加熱手段27aに使用されているシーズヒータの電力は約1200Wの仕様である。
【0033】
調理庫26の下方に設けられる下加熱手段27bは、上加熱手段27aのように蛇行せずに略四角形の形状に成型されている。大きさは、受け皿31に設けた凸部31c範囲に収まる大きさとしている。下加熱手段27bに設けたシーズヒータの電力は上加熱手段27aに設けたシーズヒータの電力の約半分の660Wである。
【0034】
次に
図2、
図5を用いて焼き網33について説明する。
【0035】
焼き網33は、四角形の平面形状で、線材で略四角形状に形成した外周部33aと、外周部33aの左右辺に固定し所定の間隔を保持して後方から前方に向けて並べた直線状の載置部材33bとで構成されている。被加熱物30を載せる頻度が多い中央部33cは前方と後方に比べて載置部材33bの間隔を狭く設けられている。
【0036】
焼き網33は、裏表無くどちらの面を使用してもよい。
【0037】
受け皿31の底面31eと焼き網33との隙間は約3mmの隙間を設けている。
【0038】
ガイド28には、外側にガイド壁28c、内側には受け皿31が摺動する摺動部28bを設け、ガイド壁28cの前端に摺動部28bの前側を閉じるように内側へ延びる壁部28aを設けている。
【0040】
ドア32と受け皿31の連結部31jを連結し、受け皿31の後方を受け皿受け部26aに載置し、ドア32を閉める事で受け皿31が受け皿受け部26aを滑らせて調理庫26に収納する。
【0041】
詳細に述べると、
図9、
図10に示すように、収納時には、受け皿31の後方下部に設けた引掛部31fはガイド28の壁部28aを乗り越えて、ガイド壁28cに案内されて摺動部28bを摺動して、その後は受け皿31の後方に設けた引掛部31fが受け皿受け部26aの上を摺動する。また、ガイド28の摺動部28bが受け皿31の外周平坦部31dを摺動するので安定した受け皿31の出し入れが可能となる。受け皿31を引き出す時は、入れる時と反対に壁部28aに引掛部31fが当たり止まることで、受け皿の31の容易な抜け防止機構となっている。
【0042】
また、ドア32を引いて受け皿31を引き出す時、受け皿31に設けたフランジ部31hが調理庫26の側面26gに設けた受け皿保持部26b下面に保持されることで、ドア32の重さで受け皿31が前側に垂れ下がることはない。そのため、焼き網33に載置した被加熱物を不用意に落すことは無い。また、調理庫26の左右の側面26g間の幅より、受け皿31の左右に設けたフランジ部31h間の幅を若干小さくしておくことで、調理庫26での受け皿31の左右へのブレは無い。
【0043】
このように調理庫26に受け皿31を配置されると、
図4に示すように、下加熱手段27bは、調理庫26の底部26cと、調理庫26の底部26cと底面26cの左右に設けられた受け皿受け部26aとに囲まれる。また受け皿31の前後方向については、ドア32側は連結部31j、奥側は受け皿31の外周立上部31bのフランジ部31hが加熱庫26の奥面26hに近接されることで加熱庫26において受け皿31の上方と下方(空間26y)が略閉ざされ、下加熱手段27bは周囲を囲まれる。そのため下加熱手段27bの発熱が空間26yに止まり空間26yで温度ムラを少なくして効率良く受け皿31の底面31eを加熱することができる。
【0044】
受け皿31の底面31eと下加熱手段27bとの距離は約10mmでも被加熱物の焼きムラは発生しない。
【0045】
焼き網33に被加熱物となるサンマを載置して調理を開始するとサンマから油脂分が滴下し始める。受け皿の凸部31cに滴下した油脂は高低差の低い左右の外周平坦部31dへと流れて溜まる。
【0046】
受け皿31の左右側に設けた外周平坦部31dは、受け皿受け部26aと近接して対向するため下加熱手段27bによって直接加熱される事は無い。但し、下加熱手段27bと略対抗する受け皿31の凸部31cは、下加熱手段27bより直接加熱されため温度上昇が大きく、凸部31cの上方に設けた焼き網に載置した被加熱物をムラなく焼くことができる。反面、受け皿31の左右側に設けた温度の低い外周平坦部31dに溜まった油脂類からの発煙や発火の心配は無い状態で被加熱物を加熱調理する事ができる。
【0047】
受け皿保持部26bは、調理庫26の前方のみに設けても良く、側面26gを絞り加工で成型しても良く別部品を取り付けてもよい。
【0048】
上記したように、本実施例によれば、被加熱物から滴下した油脂分からの発煙や発火を防止し、また被加熱物の下面の加熱ムラを防ぐものである。
【符号の説明】
【0049】
2 本体
26 調理庫
26a 受け皿受け部
26c 底部
26e 前面開口部
26y 空間
27a 上加熱手段
27b 下加熱手段
30 被加熱物
31 受け皿
31d 外周平坦部
31e 底面
32 ドア
33 焼き網