(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1本体部および前記第2本体部の底面に配置され、前記第1本体部および前記第2本体部の設置面への設置性を向上させる設置力増強部材をさらに備える、請求項1に記載のウォーターフェンス。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1〜
図12を参照して、本発明の一実施形態によるウォーターフェンス100の構成について説明する。
【0021】
(ウォーターフェンスの構成)
図1〜
図12を参照して、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態によるウォーターフェンス100は、建物への浸水を防いだり、工事現場などにおいて水を長時間せき止めたり、流れを有する河川などをせき止めたりするために用いられる。ウォーターフェンス100は、
図1および
図2に示すように、ウォーターフェンス本体部1と、設置力増強部材2とを備えている。ウォーターフェンス100は、X方向に延びる細長形状を有しており、Y方向の水を止めるように設置される。また、
図1に示すように、ウォーターフェンス100には、自吸機能を有した自吸ポンプ(以下「ポンプ」と称す)3が接続されている。ポンプ3は、急な増水に対しても信頼性の高い水没使用が可能な防水構造を有するポンプとすることが望ましい。また、ウォーターフェンス本体部1には、重りとして水を注水したり、ペットボトルなどの重り部材を配置可能に構成されている。また、ウォータフェンス100は、
図2に示すように、設置力増強部材2の底面に配置されたチューブ材4を備えている。なお、ポンプ3は、特許請求の範囲の「吸水装置」の一例である。
【0022】
ウォーターフェンス本体部1は、
図1に示すように、第1本体部11と、第2本体部12と、連結部材13と、パイプ14と、補強部材15(
図4参照)と、底板16とを含んでいる。
図3に示すように、第1本体部11は、貫通穴111を有している。第2本体部12は、重り収容部121を有している。なお、パイプ14は、特許請求の範囲の「吸水装置取付部」の一例である。
【0023】
ウォーターフェンス本体部1は、浸水を防止するための堰を形成している。具体的には、ウォーターフェンス本体部1は、柱や壁或いは扉(図示せず)などの前面側(Y2方向側)に配置され、背面側(Y1方向側)への浸水を防止する堰を形成している。また、ウォーターフェンス本体部1は、
図1に示すように、第1本体部11のX方向の両端に、それぞれ、第2本体部12が連結されている。また、ウォーターフェンス本体部1は、複数に分割可能に構成されている。具体的には、第2本体部12は、第1本体部11に対してX方向に隣接して配置されている。
【0024】
また、第2本体部12は、X方向において第1本体部11を挟むように一対設けられている。一対の第2本体部12は、第1本体部11を挟み込んだ状態で、弾性を有する連結部材13により挟持されることにより、連結されている。具体的には、
図1および
図3に示すように、一対の第2本体部12が第1本体部11を挟んでX方向に隣接して配置された状態で、上方向(Z1方向)に設けられた連結部材13により、第1本体部11および一対の第2本体部12が連結されている。連結部材13は、Y方向において第1本体部11の貫通穴111の両側に設けられている。
【0025】
第1本体部11は、水を透過させない素材により形成されている。第1本体部11は、たとえば、ゴムや樹脂或いは金属などにより形成されている。好ましくは、第1本体部11は、弾性材料により形成されている。また、第1本体部11は、第2本体部12よりも比重が大きい材料により形成されている。
【0026】
図3に示すように、第1本体部11には、上下方向(Z方向)に延びる貫通穴111が設けられている。貫通穴111には、ポンプ3が接続されるためのパイプ14が挿入されている。また、第1本体部11のX方向の長さは、Y方向の長さよりも小さい。
【0027】
ここで、本実施形態では、
図1に示すように、第2本体部12は、X方向に延びるように形成されている。また、第2本体部12は、水を透過させない素材により形成されている。また、第2本体部12は、折り畳み可能な部材により組み立てられている箱型形状に形成されている。具体的には、第2本体部12は、細長の直方体形状に形成されている。第2本体部12は、たとえば、プラスチック製段ボールにより形成されている。プラスチック製段ボールの厚さは、3mm以上5mm以下程度である。プラスチック製段ボールは、ポリプロピレンなどのプラスチックにより形成されている。プラスチック製段ボールは、波状の芯部材を外側の一対の平板状の部材により挟み込んで形成されている。つまり、プラスチック製段ボールは、芯部材の波の筋方向により、異なる機械的強度を有している。具体的には、プラスチック製段ボールの筋方向の圧縮強度は、筋方向と直交する方向の圧縮強度より強い。
【0028】
また、
図5および
図6に示すように、第2本体部12は、矩形形状の1枚の部材が折り曲げられた構造を有するように構成されている。具体的には、
図5に示すように、第2本体部12は、1つの底面12aと、一対の第1側面12bと、一対の第2側面12cと、4つの折返部12dとを有している。底面12aは、X方向に延びる矩形形状を有している。一対の第1側面12bは、底面12aに接続され、互いに対向するように組み立てられる。一対の第2側面12cは、底面12aに接続され、互いに対向するように組み立てられる。折返部12dは、
図6に示すように、内側に折り返されて第2本体部12が組み立てられる。第2本体部12が組み立てられた状態で、折返部12dが第1側面12bに固定される。たとえば、折返部12dおよび第1側面12bは、クリップにより挟み込まれて固定されたり、マジックテープ(登録商標)やファスナーなどにより固定される。なお、折返部12dは、第2側面12cと固定されてもよいし、第2本体部12の外側で固定されてもよい。
【0029】
また、
図5に示すように、第2本体部12の底面部のプラスチック製段ボールの筋は、短手方向に延びている。つまり、プラスチック製段ボールの筋は、底面12aにおいて、矩形形状の底面12aの短手方向(Y方向)に沿って延びている。また、プラスチック製段ボールの筋は、第1側面12bにおいて、上下方向(Z方向)に沿って延びている。プラスチック製第ボールの筋は、第2側面12cにおいて、水平方向(Y方向)に沿って延びている。これにより、底面12aおよび第2側面12cにより、Y方向の機械的強度を高めることが可能である。また、第1側面12bにより、上下方向の機械的強度を高めることが可能である。
【0030】
図1に示すように、第2本体部12の重り収容部121には、重りとして水を注水したり、ペットボトルなどが取り付けられるように構成されている。第2本体部12の重り収容部121に水を注水したり、ペットボトルなどの重りが取り付けられることによりウォーターフェンス100に加わる荷重を増すことが可能なように構成されている。なお、重り収容部121に、石、砂、土などを入れて重りとしてもよい。
【0031】
パイプ14は、第1本体部11の貫通穴111に挿入されている。パイプ14は、たとえば、金属により形成されている。また、パイプ14は、略L字形状に形成されている。パイプ14には、設置面とウォーターフェンス100との間の水を吸い取るポンプ3が取り付けられるように構成されている。具体的には、パイプ14の上側(Z1方向側)の端部には、ポンプ3に接続される管(ホースなど)が接続されるように構成されている。パイプ14の下側(Z2方向側)の端部は、
図8に示すように、底板16の下方に配置されている。これにより、ウォーターフェンス本体部1の底面と設置面との間の水が、ポンプ3により吸水される。なお、パイプ14の吸水口部に、異物除去用のフィルターを設けてもよい。これにより、ポンプ3によって吸い込み、排出される水からゴミなどの異物を除去することができるので、緊急時の水として活用することも可能である。なお、フィルターは吸込みから排出までの間に設けられれば良いので、ポンプ3の吸水用ホースなどに設けてもよい。
【0032】
パイプ14は、第1本体部11および底板16を貫通するように配置されている。また、
図8に示すように、パイプ14の下部の外周には、ネジ山が切られている。パイプ14は、締結部材141と締結されて、第1本体部11と、底板16とを固定している。締結部材141は、たとえば、ナットである。
【0033】
補強部材15は、
図1および
図3に示すように、箱型形状の第2本体部12の上部に取り付けられ、第2本体部12を補強するように構成されている。具体的には、補強部材15は、第2本体部12の上方から差し込まれるように係合して、第2本体部12のY方向の機械的強度を補強するように構成されている。補強部材15は、たとえば、樹脂やゴムまたはプラスチック製段ボールにより形成されている。また、補強部材15は、
図4に示すように、係合部151と、壁部152と、下部折曲部153とを有している。係合部151は、Y方向の内側に折り曲げられた折曲部151aを含む。係合部151は、補強部材15の上部のY方向の両側に設けられている。係合部151は、第2本体部12のY方向の外側の側面と係合するように構成されている。係合部151の折曲部151aが第2本体部12のY方向の外側の側面に当接している。これにより、重りとして第2本体部12に水を注水したとしても、第2本体部12が内側からY方向外側に向けて広がることを抑制することが可能である。壁部152は、第2本体部12のY方向に対向する側面の両方に当接して、第2本体部12のY方向に対向する側面の距離を保つように構成されている。下部折曲部153は、壁部152の下に接続され、X方向に折り曲げられている。下部折曲部153は、壁部152と同様に、第2本体部12のY方向に対向する内側の側面の両方に当接して、第2本体部12のY方向に対向する側面の距離を保つように構成されている。たとえば、第2本体部12が浸水しようとする水から外力を受けたとしても第2本体部12が外側からY方向に変形することを抑制することが可能である。
【0034】
底板16は、
図3に示すように、第1本体部11および第2本体部12と、設置力増強部材2との間に配置されている。また、底板16は、第1本体部11および第2本体部12の底面を覆うように配置されている。また、底板16は、X方向に分割されて、2つ設けられている。具体的には、底板16は、X方向において、ウォーターフェンス本体部1のX方向における長さの略半分の長さを有するように形成されている。また、底板16には、パイプ14を通すための切り欠き161が設けられている。また、底板16には、設置力増強部材2が貼り付けられている。また、底板16は、樹脂などにより形成されている。また、底板16の厚さは、0.5mm以上1mm以下程度である。
【0035】
図2に示すように、設置力増強部材2は、ウォーターフェンス本体部1の底面に配置され、ウォーターフェンス本体部1の設置面への設置性を向上させるように構成されている。つまり、ウォーターフェンス本体部1の設置時の自重と、ポンプ3が吸水することとによって、設置力増強部材2は、弾性圧縮変形するとともに、外部の水を所定量透過させることにより、ウォーターフェンス本体部1の設置面内の圧力を低圧安定させるように構成されている。
【0036】
具体的には、設置力増強部材2は、ウォーターフェンス本体部1の自重と、重りの重力と、ポンプ3が吸水することにより生じる負圧とにより、圧縮されて、水の透過率が所定の値となることにより、ウォーターフェンス本体部1の底面と設置面との間に外部からの水を所定量透過させてポンプ3の自吸水を確保するように構成されている。
【0037】
設置力増強部材2は、半連続気泡構造を有しており、圧縮変形されることにより水の透過率が変化するように構成されている。設置力増強部材2は、たとえば、半連続気泡構造の気孔率50%〜60%程度のやわらかいスポンジ材により形成されている。また、設置力増強部材2は、半連続気泡構造のスポンジが圧縮されることによりスポンジの孔が小さくなり、水の透過率が変わるように構成されている。また、設置力増強部材2は、圧縮力がかからない状態において、たとえば、約20mm以上約30mm以下の高さを有する。重り収容部121に重りが取り付けられ、ポンプ3が駆動された場合、半連続気泡構造のスポンジは50〜80%程度圧縮されることが望ましい。また、設置力増強部材2は、第1本体部11よりも柔らかい材料により形成されている。
【0038】
設置力増強部材2は、ウォーターフェンス本体部1の自重と、重り収容部121に取り付けられた重りと、ポンプ3の吸引力によって生じる負圧とにより圧縮されるように構成されている。また、ポンプ3は設置力増強部材2を透過した水を、設置面内側の空間の空気と共に吸引するように構成されている。つまり、設置力増強部材2により吸水された水がパイプ14を介してポンプ3に吸引されるように構成されている。なお、ポンプ3は、空気とともに水を吸い込むので、ポンプ3の吐出口から水を吐き出す状態と、ポンプ3の吐出口から少しの水を空気とともに吐き出す状態とを数秒程度の周期で繰り返す間欠運転となる。
【0039】
また、ポンプ3により、設置力増強部材2を透過した水を、設置面内側の空間の空気と共に吸引することにより、ウォーターフェンス本体部1と設置面との間の空間の真空度が上げられる(空間の気圧が下がる)。これにより、設置面に対してウォーターフェンス本体部1を安定させて配置することが可能に構成されている。その結果、ウォーターフェンス本体部1が水により押されて変形したり、流されたりすることを効果的に抑制することが可能である。
【0040】
また、設置力増強部材2は、両面テープなどの接着層を介して、底板16に取り付けられる。また、
図2および
図7に示すように、設置力増強部材2は、平面視において(Z方向から見て)、ウォーターフェンス本体部1の底面の外周部に環状に配置されている。
【0041】
また、設置力増強部材2は、
図3に示すように、分割可能に構成されている。具体的には、2つの設置力増強部材2は、一対の底板16の各々に取り付けられるように分割される。つまり、設置力増強部材2を一対の底板16に各々取り付けた状態で、第1本体部11、第2本体部12および底板16を、分割すること、または、組み立てることが可能である。
【0042】
また、2つの設置力増強部材2のうち少なくとも一方は、組み立てる前において、第1本体部11側の端部が底板16からX方向にはみ出している。たとえば、X1方向側の設置力増強部材2のX2側の端部が、X1方向側の底板16のX2側の端部よりも5mm程度突出している。なお、X2方向側の設置力増強部材2のX1側の端部が、X2方向側の底板16のX1側の端部よりも5mm程度突出していてもよい。また、X1方向側の設置力増強部材2のX2側の端部が、X1方向側の底板16のX2側の端部よりも3mm程度突出し、かつ、X2方向側の設置力増強部材2のX1側の端部が、X2方向側の底板16のX1側の端部よりも3mm程度突出していてもよい。また、X1方向側の設置力増強部材2のY方向における一方側のX2側の端部が、X1方向側の底板16のX2側の端部よりも5mm程度突出し、かつ、X2方向側の設置力増強部材2のY方向における他方側のX1側の端部が、X2方向側の底板16のX1側の端部よりも5mm程度突出していてもよい。また、突出量は、ウォーターフェンス100のX方向の長さ、設置力増強部材2の硬さなどに応じて適宜設定してもよい。これにより、2つの底板16のX方向の端部同士を合わせた場合に、2つの底板16に各々取り付けられた設置力増強部材2同士が圧縮されて端部が合わされる。これにより、2つの設置力増強部材2の端部間に隙間が生じるのを抑制して、密着させた状態でウォーターフェンス100を組み立てることができるので、ウォーターフェンス本体部1と設置面との間の気密性を高めることができる。その結果、ポンプ3の吸引により、ウォーターフェンス本体部1と設置面との間の空間の真空度を効果的に上げる(空間の気圧を下げる)ことが可能である。
【0043】
ポンプ3は、ウォーターフェンス本体部1の底面と設置面との間の水を吸い取るように構成されている。また、ポンプ3は、水深が浅い水を吸水可能に構成されている。これにより、ポンプ3は、設置面とウォーターフェンス本体部1の底面との間に浸水した少量の水を効果的に排水することが可能である。
【0044】
図2に示すように、チューブ材4は、設置力増強部材2の底面に配置されている。また、チューブ材4は、設置力増強部材2よりも低い吸水率を有するとともに、設置力増強部材2よりも柔らかい。具体的には、チューブ材4は、中空形状を有する管状部材である。また、チューブ材4は、外力により変形しやすい材料により形成されている。たとえば、チューブ材4は、ゴムにより形成されている。また、チューブ材4は、断面形状が楕円形状を有している。また、チューブ材4は、たとえば、1.5mm程度の肉厚を有する管状部材である。また、チューブ材4は、設置力増強部材2に、接着層を介して貼りつけられている。たとえば、チューブ材4は、ゲル状の瞬間接着材により設置力増強部材2に接着されている。なお、接着層は、テープ等であってもよい。また、接着層は、耐水性があるものが好ましい。
【0045】
また、チューブ材4は、設置面の目地などの凹凸に食い込むように構成されている。つまり、チューブ材4は、ウォーターフェンス本体部1の自重と、重り収容部121に取り付けられた重りと、ポンプ3の吸引力によって生じる負圧とにより圧縮されるように構成されている。これにより、チューブ材4が設置面の凹凸にフィッティングするように構成されている。また、チューブ材4が圧縮されて変形することにより、設置力増強部材2も設置面に密着して接するように構成されている。
【0046】
また、チューブ材4は、設置力増強部材2よりも小さい幅を有する。たとえば、チューブ材4は、設置力増強部材2の1/4程度の幅を有する。また、チューブ材4は、設置面の目地などの凹凸の深さと同程度、または、少し大きい高さを有する。たとえば、チューブ材4は、10mm以下の高さを有する。
【0047】
また、
図2および
図7に示すように、チューブ材4は、設置力増強部材2に沿って配置されている。具体的には、チューブ材4は、平面視において(Z方向に見て)略ロ字形状に配置された設置力増強部材2に沿って、略ロ字形状に配置されている。また、チューブ材4は、設置力増強部材2の略中央に配置されている。また、チューブ材4は、
図3に示すように、分割可能に構成されている。
【0048】
また、
図7に示すように、分割されたチューブ材4は、平面視において(Z方向に見て)、互いに端部がずれた状態で配置されている。具体的には、
図7に示すように、X1側のチューブ材4は、端部がY方向における外側に曲げられて、X2側のチューブ材4に対して端部がずれるように配置されている。つまり、チューブ材4は、設置力増強部材2の中心位置を通るように配置されている。そして、X1側のチューブ材4の端部が設置力増強部材2の中心位置から外側になるように配置されている。
【0049】
図9を参照して、第2本体部12の特性の一例について説明する。
【0050】
図9に示すように、第2本体部12は、たとえば、見掛け密度が167kg/m
3であり、エンドクラッシュが、筋方向において63Nであり、筋と垂直方向において6Nである。なお、エンドクラッシュは、プラスチック製ダンボールの板方向に沿って、圧縮荷重をかけて、折れる際の機械的強度を測定したものである。また、このエンドクラッシュは、50mm間隔で測定している。また、フラットクラッシュが、300kPaである。なお、フラットクラッシュは、プラスチック製段ボールの板方向と直交する方向に荷重をかけて、座屈する際の機械的強度を測定したものである。
【0051】
図10を参照して、設置力増強部材2の特性の一例について説明する。
【0052】
図10に示すように、設置力増強部材2は、たとえば、見掛け密度が110kg/m
3であり、引張強さが80kPaであり、伸びが450%である。また、設置力増強部材2は、圧縮硬さが、圧縮率が25%の場合、3.3kPaであり、圧縮率が50%の場合、4.5kPaである。
【0053】
図11を参照して、設置力増強部材2の特性(水透過)の一例について説明する。
【0054】
図11に示すように、水透過について、設置力増強部材2は、圧縮率が60%の場合、水深100mmの水頭圧(100mmH
2O=0.01kgf/cm
2≒0.98kPa)に対して、10分以内に水漏れがあった。また、設置力増強部材2は、圧縮率が70%の場合、水深100mmの水頭圧(100mmH
2O=0.01kgf/cm
2≒0.98kPa)に対して、10分を超えて30分以内に水漏れがあった。また、設置力増強部材2は、圧縮率が80%および90%の場合、水深100mmの水頭圧(100mmH
2O=0.01kgf/cm
2≒0.98kPa)に対して、30分間水漏れしなかった。なお、水透過について、10分以内に水漏れがあった場合、「△」と示し、10分を超えて30分以内に水漏れがあった場合、「○」と示し、30分間水漏れしなかった場合、「◎」と示している。
【0055】
設置力増強部材2に用いる気孔率50%〜60%程度の半連続気泡構造のスポンジ材は、
図11に示す一例のように、圧縮率に応じた透過率となる。また、設置力増強部材2は、50%以上80%以下の圧縮率になるように圧縮抑制することにより、半連続気泡構造のスポンジを透過する水量をポンプ3の呼び水として適度な透過水量に抑えることが可能である。また、設置力増強部材2(スポンジ)を透過した水をポンプ3で排水するのでウォーターフェンス本体部1を越えて浸水させないようにすることが可能である。つまり、ポンプ3を駆動させた場合に、設置力増強部材2の圧縮率が50%以上80%以下になることが好ましい。
【0056】
図12を参照して、チューブ材4の特性の一例について説明する。
【0057】
図12に示すように、チューブ材4は、たとえば、見掛け密度が780kg/m
3であり、引張強さが340kPaであり、伸びが750%である。つまり、チューブ材4は、設置力増強部材2よりも柔らかい。また、チューブ材4は、200%に伸ばした際の引張応力が80kPaである。なお、引張強さ、伸び率、200%引張応力は、長さ10cmのチューブ材4に2.5mmほどの切り込みを入れて試験を行った。また、チューブ材4は、吸水率が1.0%以下である。つまり、チューブ材4は、設置力増強部材2よりも低い吸水率を有する。
【0058】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0059】
本実施形態では、上記のように、ポンプ3によりウォーターフェンス100の底面と設置面との間の水が空気とともに吸い取られるので、ウォーターフェンス100の底面と設置面との間に負圧を発生させることができる。これにより、ウォーターフェンス100が設置面に対して浮き上がるのを抑制することができるので、ウォーターフェンス100の総重量を小さくした場合でも、ウォーターフェンス100が水に流されるのを抑制することができる。これにより、ウォーターフェンス100を高く積み上げる必要がない。また、ポンプ3により、侵入しようとする水を排出することができるので、浸水を効果的に抑制することができる。また、第2本体部12を折り畳むことができるので、ウォーターフェンス100の保管時のスペースが大きくなるのを抑制することができる。
【0060】
また、本実施形態では、上記のように、第1本体部11および第2本体部12の底面に配置され、第1本体部11および第2本体部12の設置面への設置性を向上させる設置力増強部材2を設ける。これにより、凹凸のある設置面に対しての設置性や水密性を向上させることができるので、安定してウォーターフェンス100を設置することができる。その結果、ウォーターフェンス100の底面からの浸水を効果的に抑制することができる。
【0061】
また、本実施形態では、上記のように、第1本体部11を挟み込んだ状態の一対の第2本体部12を挟持する連結部材13を設ける。これにより、折り畳み可能な第2本体部12および第1本体部11を容易に連結させることができるので、ウォーターフェンス100を容易に組み立てることができる。
【0062】
また、本実施形態では、上記のように、第2本体部12を、矩形形状の1枚の部材が折り曲げられた構造を有するように構成する。これにより、ウォーターフェンス100の保管時に、第2本体部12を容易に小さく折り畳むことができるので、保管時のスペースを効果的に小さくすることができる。
【0063】
また、本実施形態では、上記のように、第2本体部12を、細長の直方体形状に形成する。これにより、ウォーターフェンス100を細長形状にすることができるので、建物の出入り口にウォーターフェンス100を設置した場合などに、細長形状のウォーターフェンス100により、建物内への浸水を抑制することができるとともに、ウォーターフェンス100を跨いで容易に建物に出入りすることができる。
【0064】
また、本実施形態では、上記のように、箱型形状の第2本体部12の上部に取り付けられ、第2本体部12を補強する補強部材15を設ける。これにより、折り畳み可能な第2本体部12の機械的強度を補強部材15により高めることができるので、ウォーターフェンス100が、押し寄せる水や、重りとして入れる水などにより変形するのを抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態では、上記のように、第2本体部12を、プラスチック製段ボールにより形成する。これにより、第2本体部12を容易に組み立てることができる。また、第2本体部12の底面部のプラスチック製段ボールの筋は、短手方向に延びている。これにより、水が押し寄せる方向の第2本体部12の機械的強度を高めることができるので、ウォーターフェンス100が、押し寄せる水により変形するのを抑制することができる。
【0066】
また、本実施形態では、上記のように、第1本体部11および第2本体部12と、設置力増強部材2との間に配置され、第1本体部11および第2本体部12の底面を覆う底板16を設け、設置力増強部材2を、底板16に貼り付ける。これにより、事前に設置力増強部材2を底板16に、また、チューブ材4を設置力増強部材2に貼り付けておくことで、設置力増強部材2およびチューブ材4を第1本体部11および第2本体部12の底面に容易に取り付けることができるので、ウォーターフェンス100を短時間で組み立てることができる。
【0067】
また、本実施形態では、上記のように、パイプ14を、第1本体部11および底板16を貫通するように配置し、パイプ14の下部に締結され、第1本体部11と、底板16とを固定する締結部材141を設ける。これにより、第1本体部11と底板16とを確実に連結することができるので、ウォーターフェンス100の底部からの浸水を効果的に抑制することができる。
【0068】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0069】
たとえば、上記実施形態では、第2本体部を1枚の部材を折り曲げて形成する構成の例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、
図13に示す第1変形例のように、第2本体部12を、箱型形状で、かつ、折り曲げ可能に形成してもよい。つまり、第2本体部12は、底面部および側面部を折り曲げて、折り畳み、平らな状態にして、さらに、折り畳むことが可能としてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、1枚の部材から1つの第2本体部を組み立てる構成の例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、
図14に示す第2変形例のように、1枚の部材を中央で2つに切断して、2つの第2本体部を組み立ててもよい。この場合、切断せずに、1つの長い第2本体部を組み立ててもよい。また、1枚の部材から3つ以上の第2本体部を組み立ててもよい。なお、折り曲げる部分は、折り目ではなく、目印となる線が付されていることが好ましい。
【0071】
また、上記実施形態では、第2本体部を1枚の部材を折り曲げて形成する際に、折返部を長手方向に延びる側面である第1側面に固定させる構成の例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、
図15に示す第3変形例のように、折返部を短手方向に延びる側面である第2側面に固定させてもよい。これにより、第2本体部の短手方向に延びる第2側面の強度を大きくすることができる。
【0072】
また、上記実施形態では、設置力増強部材が底板に貼り付けられている構成の例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、底板を設けずに、設置力増強部材を、第1本体部および第2本体部に貼り付けるようにしてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、第2本体部をプラスチック製段ボールにより形成する構成の例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、第2本体部を、水を透過させないで、かつ、折り畳み可能で自立する素材であれば、プラスチック製段ボール以外により形成してもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、補強部材を設ける構成の例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、補強部材を設けなくてもよい。また、上記実施形態では、補強部材が4つ設けられている構成の例を示したが、本発明はこれに限らない。補強部材は、1つ以上3つ以下設けられていてもよいし、5つ以上設けられていてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、ウォーターフェンスが一対の第2本体部を備える構成の例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、第1本体部を挟むように一体の第2本体部を配置してもよいし、第1本体部の一方側のみに第2本体部を配置してもよい。また、ウォーターフェンスが3つ以上の第2本体部を備えていてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、ウォーターフェンスが直線的に形成されている構成の例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、ウォーターフェンスが折れ曲がるように形成されていてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、ウォーターフェンスに入れる重りとして水を注水したり、ペットボトルを用いた例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、水やペットボトル以外の部材を重りとして用いてもよい。たとえば、バーベルや石などを重りとして用いてもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、第1本体部にパイプ(吸水装置取付部)を挿入する構成の例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、第1本体部にパイプを挿入せずに、吸水装置と接続してもよい。つまり、第1本体部に吸水装置取付部を一体的に設けてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、設置力増強部材が、1層により形成されている例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、設置力増強部材を2層以上により形成してもよい。
【0080】
たとえば、設置力増強部材を1層により形成した場合、設置力増強部材を、気孔率80%〜90%程度のスポンジ材により形成してもよい。また、設置力増強部材を、吸水率が大きい材料により形成してもよい。たとえば、設置力増強部材を、PVA(ポリビニールアルコール)製のスポンジ材により形成してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、吸水装置として自吸式のポンプを用いる例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、自吸式に限らず、吸水機能を有するポンプであれば特に限定されない。また、真空ポンプや掃除機などの真空吸引方式の吸引装置を用いてもよい。