【実施例1】
【0015】
図1は本発明の建設機械の油圧制御装置の第1の実施の形態を備えた油圧ショベルを示す側面図である。
図1において、油圧ショベル301は左右一対の覆帯302a,302bを備えた下部走行体303と、下部走行体303の上部に旋回可能に設けた上部旋回体304と、一端が上部旋回体304に連結された多関節型のフロント機構300とを備えている。
【0016】
下部走行体303には、覆帯302a,302bを駆動させる走行油圧モータ318a,318bが搭載されている。上部旋回体304の前方左側には操作レバー(操作装置)36(
図2参照)が格納された運転室305が設置されている。上部旋回体304前方中央部にはフロント機構300が取り付けられている。
【0017】
フロント機構300は、上部旋回体304の前方中央部に設けられたブームフート(図示せず)に上下揺動自在に取り付けられたブーム310と、ブーム310の先端に前後方向に揺動自在に取り付けられたアーム312と、アーム312の先端に上下回動自在に取り付けられた作業具(アタッチメント)であるバケット314を備えている。
【0018】
また、フロント機構300は、ブームフートとブーム310に連結され、ブーム310を上下方向に揺動させる油圧アクチュエータのブームシリンダ311と、ブーム310とアーム312とに連結され、アーム312を上下方向に揺動させる油圧アクチュエータのアームシリンダ4と、アーム312とバケット314とに連結され、バケット314を上下方向に回動させる油圧アクチュエータのバケットシリンダ315とを有している。
【0019】
図2は、本発明の建設機械の油圧制御装置の第1の実施の形態のうち油圧ショベルのアームシリンダに関わる油圧回路部分を模式的に示す概略図である。
図2において、本実施の形態に係る油圧制御装置は、原動機1と、この原動機1によって駆動される油圧ポンプ2と、油圧ポンプ2の吐出ライン3に接続され、アームシリンダ4に供給される圧油の流量および方向を制御するアーム用の制御弁31を有する弁装置5と、アーム用の操作レバー装置であるパイロット弁6とを備えている。
【0020】
油圧ポンプ2は可変容量型であり、押しのけ容積可変部材、例えば斜板2aを有し、斜板2aは油圧ポンプ2の吐出圧が高くなるにしたがって容量を減らすように馬力制御アクチュエータ2bにより制御される。
【0021】
制御弁31は、センタバイパス型であり、センタバイパス部21がセンタバイパスライン32上に位置している。センタバイパスライン32は上流側を油圧ポンプ2の吐出ライン3に接続され、下流側をタンク33に接続されている。また、制御弁31はポンプポート31aおよびタンクポート31b,31gとアクチュエータポート31c,31dとを有し、ポンプポート31aはセンタバイパスライン32の油圧ポンプ2側に接続され、アクチュエータポート31c,31dはアクチュエータライン35,34を介してアームシリンダ4のボトム側4aとロッド側4bに接続され、タンクポート31bはタンクライン54を介してタンク33に接続され、タンクポート31gはメータアウトライン51に接続されている。メータアウトライン51は、分岐して再生ライン52を介してアクチュエータライン35に接続されているとともに、タンクライン53を介してタンク33に接続されている。再生ライン52には、アクチュエータライン35からタンクライン53への圧油の逆流を防止するチェック弁55が設けられている。
【0022】
パイロット弁6は、操作レバー36と、一対の減圧弁(図示せず)を内蔵したパイロット圧発生部37とを有し、パイロット圧発生部37はパイロットライン38,39を介して制御弁31のパイロット圧受圧部31e,31fに接続されている。操作レバー36が操作されると指令パイロット圧発生部37はその操作方向に応じて一対の減圧弁の一方を作動させ、その操作量に応じたパイロット圧をパイロットライン38,39の一方に出力する。
【0023】
制御弁31は、中立位置Aと切換位置B,Cを有し、パイロットライン38より受圧部31eにパイロット圧が与えられると、図示左側の位置Bに切り換えられ、アクチュエータライン35がメータイン側に、アクチュエータライン34がメータアウト側となり、アームシリンダ4のボトム側4aに圧油が供給されて、アームシリンダ4が伸長する。
【0024】
一方、パイロットライン39より受圧部31fにパイロット圧が与えられると、図示右側の位置Cに切り換えられ、アクチュエータライン34がメータイン側に、アクチュエータライン35がメータアウト側となり、アームシリンダ4のロッド側4bに圧油が供給されて、アームシリンダ4が収縮する。アームシリンダ4の伸長はアームを引き込む動作すなわちクラウド動作に対応し、アームシリンダ4の収縮はアームを押し出す動作すなわちダンプ動作に対応する。
【0025】
また、制御弁31は、メータイン絞り22a,22bおよびメータアウト絞り23a,23bを有し、制御弁31が位置Bにあるときはメータイン絞り22aによりアームシリンダ4に供給される圧油の流量を制御し、メータアウト絞り23aによりアームシリンダ4からの戻り油の流量を制御する。一方、制御弁31が位置Cにあるときはメータイン絞り22bによりアームシリンダ4に供給される圧油の流量を制御し、メータアウト絞り23bによりアームシリンダ4からの戻り油の流量を制御する。
【0026】
図6は本発明の建設機械の油圧制御装置の第1の実施の形態において、メータアウト絞り23aの開口面積特性を示す特性図である。
図6において、横軸はアームクラウドパイロット圧を示し、縦軸はメータアウト絞り開口面積を示す。実線で示す特性線Aが本実施の形態における開口面積特性を示し、破線で示す特性線Bが重いアタッチメントを装着した状態を想定して調整された場合の一般的な開口面積特性を示す。本実施の形態における開口面積特性は、アームクラウドパイロット圧に対して一般的な開口面積特性よりも、大きくなるように設定されている。
【0027】
図2に戻り、本実施の形態の油圧制御装置は、その特徴的構成として、アームシリンダ4のボトム側の圧力を検出する圧力センサ41と、ロッド側の圧力を検出する圧力センサ42と、パイロット弁6より出力されるアームクラウドパイロット圧を検出する圧力センサ43と、パイロットライン38に配置されるメータアウト制御電磁比例弁としての電磁比例弁44と、タンクライン53に配置される再生解除弁56と、パイロットライン58に配置される再生制御電磁比例弁としての電磁比例弁57と、パイロットライン58に接続され電磁比例弁57にパイロット圧油を供給するパイロット油圧源59と、圧力センサ41、圧力センサ42および圧力センサ43の検出信号を入力し、所定の演算処理を行い、電磁比例弁44と電磁比例弁57に指令電流を出力するコントローラ45を有している。
【0028】
再生解除弁56は2ポート2位置弁であって、弁体の一端に閉方向作動のばね56aを設け、弁体の他端に開方向作動の受圧部56bを設けている。受圧部56bはパイロットライン58を介して電磁比例弁57に接続されている。
【0029】
以上において、パイロット弁6は、制御弁31のスプールの位置を操作量及び操作方向に応じて制御する操作装置を構成し、制御弁31内のメータイン絞り22aが位置する流路とアクチュエータライン35は、重力により
アームシリンダ4に加えられる負荷が負の負荷であるときに、油圧ポンプ2から
アームシリンダ4へ供給される圧油が流れるメータイン流路を構成し、制御弁31内のメータアウト絞り23aが位置する流路とアクチュエータライン34とメータアウトライン51は、重力により
アームシリンダ4に加えられる負荷が負の負荷であるときに、
アームシリンダ4から排出される圧油が流れるメータアウト流路を構成し、制御弁31内のメータアウト絞り23aは、メータアウト流路に設けられた可変絞りを構成し、再生ライン52は、メータアウト流路をメータイン流路につなげる再生流路を構成し、タンクライン53はメータアウト流路をタンクにつなげるタンク流路を構成し、再生解除弁56はそのタンク流
路に設けられている。また、圧力センサ41,42は、重力により
アームシリンダ4に加えられる負の負荷の大きさを検出する負荷検出
器を構成し、圧力センサ43は操作
レバー36の操作量を検出する操作量検出器を構成している。
【0030】
次に、本実施の形態におけるコントローラの処理内容を
図3を用いて説明する。
図3は本発明の建設機械の油圧制御装置の第1の実施の形態を構成するコントローラの処理機能を示す機能ブロック図である。
【0031】
コントローラ45は、アームシリンダ負荷演算部45aと、メータアウト開口演算部45bと、再生解除弁開口演算部45cと、制御弁用ソレノイド電流演算部45dと、再生解除弁用ソレノイド電流演算部45eとを備えている。
【0032】
アームシリンダ負荷演算部45aは、圧力センサ41が検出したアームシリンダ4のボトム側の圧力信号と、圧力センサ42が検出したアームシリンダ4のロッド側の圧力信号とを入力し、ボトム側の圧力信号とボトム側の受圧面積の積からロッド側の圧力信号とロッド側の受圧面積の積を減算して、アームシリンダ4の負荷(アームシリンダ推力)を演算する。算出したアームシリンダ4の負荷(アームシリンダ推力)信号は、メータアウト開口演算部45
bと再生解除弁開口演算部45cとへ出力される。
【0033】
メータアウト開口演算部45bは、圧力センサ43が検出したアームクラウドパイロット圧力信号と、アームシリンダ負荷演算部45aで算出されたアームシリンダ4の負荷(アームシリンダ推力)とを入力し、メータアウト開口演算部45b中に示したテーブルを用いてアームシリンダ4の負荷とアームクラウドパイロット圧とに応じたメータアウト絞り23aの目標開口面積を算出する。
【0034】
再生解除弁開口演算部45cは、アームシリンダ負荷演算部45aで算出されたアームシリンダ4の負荷(アームシリンダ推力)を入力し、再生解除弁開口演算部45c中に示したテーブルを用いてアームシリンダ4の負荷に応じた再生解除弁の目標開口面積を算出する。
【0035】
制御弁用ソレノイド電流演算部45dは、メータアウト開口演算部45bで算出されたメータアウト絞り23aの目標開口面積を入力し、入力値に応じたソレノイド電流値を算出し、電磁比例弁44へ出力する。
【0036】
再生解除弁用ソレノイド電流演算部45eは、再生解除弁開口演算部45cで算出された再生解除弁の目標開口面積を入力し、入力値に応じたソレノイド電流値を算出し、電磁比例弁57へ出力する。
【0037】
アームシリンダ負荷演算部45aは、アームシリンダ4が伸長するとき、掘削作業等による負荷、すなわちアームシリンダ4の伸長方向と逆方向の負荷が作用すると、アームシリンダ4の負荷を正の負荷として演算し、アームとアタッチメントの重量による負荷、すなわちアームシリンダ4の伸長方向と同じ方向の負荷が作用すると、アームシリンダ4の負荷を負の負荷として演算する。
【0038】
メータアウト開口演算部45bのテーブルは、アームシリンダ4の負荷(アームシリンダ推力)が正のときは、負荷の大きさによらずメータアウト絞り23aの目標開口面積を最大値として、負荷が負のときは、負の負荷の絶対値が大きくなるにしたがってメータアウト絞り23aの目標開口面積を最小値まで減少させるように設定されている。このメータアウト絞り23aの目標開口面積特性はアームクラウドパイロット圧によって、その最大値と最小値を変化させている。具体的には、アームクラウドパイロット圧が高くなるほど最大値、最小値共に増加させるように設定されている。
【0039】
再生解除弁開口演算部45cのテーブルは、アームシリンダ4の負荷(アームシリンダ推力)が正のときは、負荷の大きさによらず再生解除弁56の目標開口面積信号を最大値として、負荷が負のときは、負荷の大きさによらず再生解除弁56の目標開口面積信号を最小値(本実施の形態の場合はゼロ)とするように設定されている。
【0040】
すなわち、コントローラ45は、メータアウト流路に設けられた
メータアウト絞り23aの開口面積を、
圧力センサ41,42により検出される負の負荷の大きさと
圧力センサ43により検出される操作量に応じて低減し、再生解除弁56の開閉を負の負荷の検出の有無に応じて切り換える。
【0041】
また、メータアウト開口演算部45bと再生解除弁開口演算部45cとは、
圧力センサ41,42により負の負荷が検出されるときに、負の負荷の絶対値が大きくなるに従って、
メータアウト絞り23aの開口面積を低減させる低減特性を有し、低減特性を
圧力センサ43により検出される操作量に応じて変化させるとともに、再生解除弁56を閉方向へ切換え、
圧力センサ41,42により負の負荷が検出されないときは、
メータアウト絞り23aの開口面積の低減を行わないとともに、再生解除弁56を開方向へ切換える。
【0042】
次に、本発明の建設機械の油圧制御装置の第1の実施の形態の動作を
図4及び
図5を用いて説明する。
図4は本発明の建設機械の油圧制御装置の第1の実施の形態において、アームを空中で地面に対して水平に近い角度から鉛直までクラウドした場合のアーム角度とアームシリンダに作用する負荷との関係を示す特性図、
図5は本発明の建設機械の油圧制御装置の第1の実施の形態において、アームを空中で地面に対して水平に近い角度から鉛直までクラウドした場合のアーム角度とメータアウト絞り23a及び再生解除弁56の目標開口面積との関係を示す特性図である。
【0043】
図4の横軸に示すアーム角度とは、水平面に対するアーム312の角度であって、アーム312が空中で地面に対して水平に保持された状態を0度とし、この状態から鉛直までクラウドした状態を90度とする。
図4において、実線で示す特性Aは、標準バケットを装着した場合のアームシリンダ4の負荷を示し、破線で示す特性Bは、標準バケットより重いアタッチメントを装着した場合のアームシリンダ4の負荷を示す。いずれの場合も、アーム角度が水平に近い角度では、アーム312とアタッチメントの重量によってアームシリンダ4の負荷は負の負荷となるが、アームの角度が鉛直に近づくにつれて負の負荷の絶対値は減少し、鉛直付近で正の負荷となる。
【0044】
このときのアーム角度とコントローラ45において演算されるメータアウト絞り23aの目標開口面積と再生解除弁56の目標開口面積との関係を
図5に示す。
図5において、実線で示す特性Aは、標準バケットを装着した場合のメータアウト絞り23aの目標開口面積を示し、短破線で示す特性Bは、標準バケットより重いアタッチメントを装着した場合のメータアウト絞り23aの目標開口面積を示、長破線で示す特性Cは、再生解除弁56の目標開口面積を示す。
【0045】
図5においてメータアウト絞り23aの目標開口面積は、標準バケットを装着した場合、アーム角度が水平に近い角度では、ある中間値に絞られているが、アームの角度が鉛直に近づくにつれて増加し、最大値になる。これに対して、標準バケットより重いアタッチメントを装着した場合は、アームが水平に近い角度では、最小値に絞られているが、アームの角度が鉛直に近づくにつれて増加し、最大値になる。これにより、アームシリンダ4に作用する負の負荷の大きさが変化する際の息継ぎ現象を防止しながら、メータアウト圧力損失を低減することができる。
【0046】
図3及び
図5に示すように、再生解除弁56の目標開口面積は、アームシリンダ4の負荷の大きさによらず、負荷の正負によって決定されるので、アタッチメントの重量がいずれの場合も、正の負荷が作用するときの目標開口面積は最大値となり、負の負荷が作用するときの目標開口面積はゼロとなる。
【0047】
これにより、アームシリンダ4に正の負荷が作用するときは、アームシリンダ4からの戻り油がタンクライン53を介してタンク33へ全て排出されるので、アームシリンダ4が発生する推力が減じられることがない。一方、アームシリンダ4に負の負荷が作用するときは、アームシリンダ4のロッド側からの戻り油が再生ライン52を介してボトム側へ全て再供給されるので、油圧ポンプ2からアームシリンダ4に供給される圧油の流量を削減する事ができる。
【0048】
このように、アームシリンダ4に作用する負の負荷の大きさに応じてメータアウト絞り23aの開口面積を変化させることで、負の負荷が作用するときの息継ぎ現象を防止しながらメータアウト圧損を低減できると共に、負荷の正負に応じて再生解除弁56の開閉を切り換えることで、負の負荷が作用するときに油圧ポンプ2からアームシリンダ4に供給される圧油の流量を削減できる。このことにより、高い省エネルギ効果を得ることができる。
【0049】
上述した本発明の建設機械の油圧制御装置の第1の実施の形態によれば、油圧アクチュエータに作用する負の負荷の大きさと操作装置の操作量に応じてメータアウト絞りの開口面積を制御し、負の負荷の有無に応じて再生解除弁を制御するので、油圧アクチュエータに作用する負の負荷が変化しても操作性を悪化させることなく、かつ高い省エネルギ効果が得られる。
【実施例2】
【0050】
以下、本発明の建設機械の油圧制御装置の第2の実施の形態を図面を用いて説明する。
図7は本発明の建設機械の油圧制御装置の第2の実施の形態を構成するコントローラの処理機能を示す機能ブロック図、
図8Aは再生解除弁56の目標開口面積をアームシリンダ4の負荷の正負によって決定する場合における、アーム空中動作時のアームクラウドパイロット圧に対するアームシリンダロッド圧力とアームシリンダボトム圧力とポンプ吐出圧の関係を示す特性図、
図8Bは本発明の建設機械の油圧制御装置の第2の実施の形態におけるアーム空中動作時のアームクラウドパイロット圧に対するアームシリンダロッド圧力とアームシリンダボトム圧力とポンプ吐出圧の関係を示す特性図である。
図7乃至
図8Bにおいて、
図1乃至
図6に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0051】
本発明の建設機械の油圧制御装置の第2の実施の形態において、制御・油圧回路の概略システムは、第1の実施の形態と大略同じであるが、コントローラの処理機能において、アームクラウドパイロット圧がパイロット圧閾値より小さい場合(微小速度域)には、アームシリンダ4の負荷の正負に関わらず、再生解除弁56の目標開口面積を最大値とする制御回路を設けた点が異なる。
【0052】
まず、このような制御回路を設ける必要性について
図8Aを用いて説明する。
図8Aは、再生解除弁56の目標開口面積をアームシリンダ4の負荷の正負によって決定する場合における、アーム空中動作時のアームクラウドパイロット圧に対するアームシリンダロッド圧力とアームシリンダボトム圧力とポンプ吐出圧の関係を示す特性図である。
【0053】
図8Aにおいて、横軸はアームクラウドパイロット圧力を示し、P1はパイロット圧閾値を示し、アームクラウドパイロット圧力が閾値P1未満を微小速度域(以下、微速域という)として、閾値P1以上を中乃至高速度域(以下中乃至高速域という)とする。また、実線で示す特性Aはアームシリンダ4のロッド圧を、短破線で示す特性Bはアームシリンダ4のボトム圧を、長破線で示す特性Cは油圧ポンプ2の吐出圧を各々示している。
【0054】
図8Aにおいて、アームシリンダ4のロッド圧Aとボトム圧Bは、アームシリンダ4に作用する負の負荷を保持するのに必要な圧力で決まる。また、アームシリンダ4のロッド圧とボトム圧との差圧ΔPは、メータアウト絞り23aや再生ライン52を圧油が通過する際の圧力損失の合計値(以下、再生圧損という)と等しくなるように決まる。また、ポンプ吐出圧Cは、アームシリンダ4のボトム圧Bにメータイン絞り22aを圧油が通過する際の圧力損失を加えた値となる。
【0055】
ここで、アームクラウドパイロット圧が低い領域、すなわち微速域では、
図2に示すメータアウト絞り23aの開口面積が小さいことから、再生圧損が高くなる。このことにより、アームシリンダ4のロッド圧Aとボトム圧Bとポンプ吐出圧Cは、中乃至高速域におけるアームシリンダ4のロッド圧Aとボトム圧Bとポンプ吐出圧Cより高くなる。この結果、油圧ポンプ2の吐出圧が上昇するので、油圧ポンプ2から供給される圧油の流量削減による省エネルギ効果を減殺してしまうという課題が生じる。
【0056】
図8Bは、本発明の建設機械の油圧制御装置の第2の実施の形態におけるアーム空中動作時のアームクラウドパイロット圧に対するアームシリンダロッド圧力とアームシリンダボトム圧力とポンプ吐出圧の関係を示す特性図である。
図8Bにおいて、
図8Aに示す符号と同符号のものは同一部分である。
図8Bは、微速域ではアームシリンダ4の負荷の正負に関わらず、再生解除弁56の目標開口面積を最大値とする制御回路を設けた場合のアーム空中動作時のアームクラウドパイロット圧に対するアームシリンダロッド圧力とアームシリンダボトム圧力とポンプ吐出圧の関係を示している。
【0057】
図8Bでは、微速域では圧油の再生が行われないため、アームシリンダ4のロッド圧Aとボトム圧Bは、アームシリンダ4に作用する負の負荷を保持するのに必要な圧力で決まり、アームシリンダ4のロッド圧Aとボトム圧Bとポンプ吐出圧Cは、中乃至高速域におけるアームシリンダ4のロッド圧Aとボトム圧Bとポンプ吐出圧Cよりも高くなることは無い。
【0058】
次に、本実施の形態におけるコントローラの処理内容を
図7を用いて説明する。
図7に示すコントローラ45は、第1の実施の形態におけるアームシリンダ負荷演算部45aと、メータアウト開口演算部45bと、再生解除弁開口演算部45cと、制御弁用ソレノイド電流演算部45dと、再生解除弁用ソレノイド電流演算部45eとに加えて、大小比較部45fと、パイロット圧閾値45gと、開口面積最大値出力部45hと、最大値選択部45iとを備えている。
【0059】
大小比較部45fは、アームクラウドパイロット圧信号とパイロット閾値45gからの閾値信号とを入力し、これらを比較してアームクラウドパイロット圧信号が閾値信号未満のときに信号1を開口面積最大値出力部45hへ出力する。
【0060】
パイロット圧閾値45gにおける閾値信号は、上述した
図8Aと
図8Bにおけるアームクラウドパイロット圧のP1に相当し、アームクラウドパイロット圧がP1未満を微速域として、P1以上を中乃至高速域とするものである。
【0061】
開口面積最大値出力部45hは、大小比較部45fからの信号1が入力される場合に再生解除弁56の目標開口面積の最大値信号を最大値選択部45iへ出力し、大小比較部45fからの信号1が入力されない場合にはゼロ信号を最大値選択部45iへ出力する。
【0062】
最大値選択部45iは、再生解除弁開口演算部45cと開口面積最大値出力部45hからそれぞれ入力される再生解除弁56の目標開口面積信号を比較し、いずれか最大値を選択して、再生解除弁用ソレノイド電流演算部45eへ出力する。
【0063】
本実施の形態において、再生解除弁56の目標開口面積は、アームクラウドパイロット圧がパイロット圧閾値P1以下(微速域)の場合、アームシリンダ4に作用する負荷の正負や大きさによらず常に最大値となる。このことにより、
図6における第1の実施の形態におけるメータアウト絞り開口面積特性Aと一般的な開口面積特性Bとの差が小さいパイロット圧の範囲(微速域)では圧油の再生を行わず、開口面積特性の差が大きいパイロット圧の範囲(中乃至高速域)、すなわち高い省エネルギ効果が得られるパイロット圧の範囲においてのみ圧油の再生を行うことができる。
【0064】
上述した本発明の建設機械の油圧制御装置の第2の実施の形態によれば、上述した第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
また、上述した本発明の建設機械の油圧制御装置の第2の実施の形態によれば、省エネルギ効果が減殺される微速域では、圧油の再生を行わず、高い省エネルギ効果が得られる中乃至高速域で圧油の再生が行われるので、より高い省エネルギ効果が得られる。
【0066】
なお、上述した実施の形態は、本発明を油圧ショベルのアームシリンダの弁装置に適用した場合を例に説明したが、これに限るものではない。例えば、油圧ショベルのバケットクラウド操作においても、同様の問題があり、本発明をバケットシリンダの弁装置に適用しても良い。この場合、例えば、
図2に示す油圧回路でアームシリンダ4をバケットシリンダに、アーム用の制御弁31をバケット用の制御弁に、アーム用の
パイロット弁6をバケット用の
パイロット弁にそれぞれ置き換えれば良い。
【0067】
また、上述した実施の形態は、メータアウト絞り23aを制御弁31内に設けた場合を例に説明したが、これに限るものではない。例えば、制御弁31内ではなくメータアウトライン51に可変絞りを設けて、他の電磁比例弁で制御しても良い。
【0068】
また、本発明は、油圧アクチュエータに大小様々な負の負荷が作用するものであれば、油圧ショベルのアームシリンダやバケットシリンダ以外の油圧アクチュエータ、あるいは油圧ショベル以外の建設機械、例えば、ホイールローダ、クレーン等の油圧アクチュエータの弁装置にも同様に適用可能である。