特許第6591381号(P6591381)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6591381
(24)【登録日】2019年9月27日
(45)【発行日】2019年10月16日
(54)【発明の名称】局部義歯
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/01 20060101AFI20191007BHJP
   A61C 13/225 20060101ALI20191007BHJP
【FI】
   A61C13/01
   A61C13/225
【請求項の数】5
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-203733(P2016-203733)
(22)【出願日】2016年10月17日
(65)【公開番号】特開2018-64656(P2018-64656A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2018年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】517313501
【氏名又は名称】日歯研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089026
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 高明
(72)【発明者】
【氏名】古賀 和憲
(72)【発明者】
【氏名】古賀 剛
(72)【発明者】
【氏名】萩原 潤
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0129563(US,A1)
【文献】 西独国特許出願公開第3440217(DE,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/01
A61C 13/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工歯を保持する複数の義歯床と、前記複数の義歯床を互いに連結する連結部とを有する局部義歯であって、
前記連結部は、装着者の軟組織である歯肉や口蓋に接触することなく、残存歯の内側面だけに沿って当接して固定されるように形成されていることを特徴とする局部義歯。
【請求項2】
前記連結部は、前記残存歯の内側面の表面形状と同一の形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の局部義歯。
【請求項3】
前記連結部は、セラミックス製であることを特徴とする請求項1又は2に記載の局部義歯。
【請求項4】
前記連結部は、金属製であることを特徴とする請求項1又は2に記載の局部義歯。
【請求項5】
前記連結部の外表面には被覆部が形成されていることを特徴とする請求項4記載の局部義歯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局部義歯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、部分的な歯の喪失を補う為に用いられる歯科の補綴装置として、局部義歯が知られている。一般に、局部義歯を口腔内に安定して固定し、その固定状態を維持するために、局部義歯は、口腔内の口蓋や歯肉、残存歯に対して支持固定するための装着構造を有している。
特に、2以上の義歯が離間して配置される局部義歯にあっては、義歯を連結するために、リンガルプレートと呼ばれる下顎の大連結子であって歯肉に沿って配置される幅広の薄いプレートや、リンガルバーと呼ばれる下顎の大連結子であって歯肉に沿って配置される細長の棒材、パラタルプレートと呼ばれる上顎の大連結子であって口蓋に沿って配置される幅広の薄いプレート、パラタルバーと呼ばれる上顎の大連結子であって口蓋に沿って配置される細長の棒材が用いられている。
【0003】
しかしながら、前記のような大連結子は、金属製又はセラミックス製であってある程度の硬度を有する一方で、軟組織である歯肉や口蓋に沿って配置固定されるため、例えば大連結子に舌が接触した場合の違和感が大きいという不具合があった。また、食物の咀嚼に影響し、会話、発音に障害を伴うという不具合もあった。
【0004】
本件特許出願人は先行技術を調査し、以下の文献を発見したが、前記不具合を解消するような文献ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3−94210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような従来からの不具合を解消するためのものであって、その課題は、舌が接触した場合の違和感を低減することができると共に、会話や発音に影響を与えることのない局部義歯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1記載の発明にあっては、人工歯を保持する複数の義歯床と、前記複数の義歯床を互いに連結する連結部とを有する局部義歯であって、前記連結部は、装着者の軟組織である歯肉や口蓋に接触することなく、残存歯の内側面だけに沿って当接して固定されるように形成されていることを特徴とする。
【0008】
従って、前記局部義歯を前記装着者に装着した場合には、前記連結部は前記装着者の軟組織である歯肉や口蓋に接触することなく、残存歯の内側面だけ前記残存歯の内側面に沿って当接して固定される。
【0009】
請求項2記載の発明にあっては、前記連結部は、前記残存歯の内側面の表面形状と同一の形状に形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明にあっては、前記連結部は、セラミックス製であることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明にあっては、前記連結部は、金属製であることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明にあっては、前記連結部の外表面には被覆部が形成されていることを特徴とする。
従って、前記連結部の外表面は、前記被覆部により被覆される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜5記載の局部義歯にあっては、前記局部義歯を前記装着者に装着した場合には、前記連結部は前記装着者の軟組織である歯肉や口蓋に接触することなく、残存歯の内側面だけ沿って当接して固定されるので、前記局部義歯を前記装着者の前記残存歯の内側面に確実に固定することができ、その結果、従来の局部義歯のように、軟組織である歯肉や口蓋に沿って配置固定されることがなく、舌が接触した場合の違和感を低減することができると共に、会話や発音に影響を与えることのない局部義歯を提供することができる。
特に、請求項2記載の局部義歯にあっては、前記連結部は、前記残存歯の内側面の表面形状と同一の形状に形成されているので、前記連結部は、前記残存歯の内側面に当接し、その結果、前記連結部を前記残存歯の内側面により確実に固定することができる。
【0014】
また、請求項3記載の局部義歯にあっては、前記連結部がセラミックス製であるので、前記連結部がセラミックス由来の十分な強度を有し、前記連結部が破損するといった事態を防止することができる。
【0015】
また、請求項4記載の局部義歯にあっては、前記連結部が金属製であるので、前記連結部が金属由来の十分な強度を有し、前記連結部が破損するといった事態を防止することができる。
【0016】
また、請求項5記載の局部義歯にあっては、前記連結部の外表面は、前記被覆部により被覆されるので、前記連結部が外部から見えて目立ってしまうという事態を防止することができ、その結果、審美性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明に係る局部義歯の一実施形態において、局部義歯を装着した状態を示す斜視図である。
図2図2は、本発明に係る局部義歯の一実施形態を示す正面側斜視図である。
図3図3は、本発明に係る局部義歯の一実施形態を示す背面側斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態に係る局部義歯を図面を参照して詳細に説明する。
図1図3に示すように、本実施の形態に係る局部義歯10は、装着者の口腔内30に配置され、人工歯11、11・・・を保持する義歯床12a、12bと、義歯床12a、12bを互いに連結する連結部13とを有している。
本実施の形態に係る義歯床12a、12bは、一般的に義歯床に使用されるPMMA(ポリメチルメタクリレート)等の加熱重合レジンや常温重合レジンにより構成されている。また、本実施の形態に係る人工歯11、11・・・は、一般的に人工歯に使用される白色の合成樹脂により構成されている。
図1図3に示すように、本実施の形態に係る局部義歯10は、下顎における歯列内の離れた位置にある左側7番〜5番欠損、及び、右側5番〜7番欠損を人工歯11、11・・・で補うためのものであって、人工歯11、11・・・を保持する義歯床12a、12bは、欠損した箇所の顎堤粘膜に係合するように、歯列に沿って平面円弧状のカーブを有すると共に、歯列方向断面が略U字状に凹設されている。
また、図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る残存歯14a、14b、14c、14d、14e、14f、14g、14hは、夫々、左側4番〜1番、右側1番〜4番に相当する。
【0019】
また、図1図3に示すように、本実施の形態に係る連結部13は、装着者の残存歯14a、14b、14c、14d、14e、14f、14g、14hの内側面15に沿って当接して固定されるように形成されている。本実施の形態に係る連結部13は金属製であって、例えば、装着者の残存歯14a、14b・・・の型取りをすることによって、残存歯14a、14b・・・の内側面15の表面形状と同一の形状に形成されていると共に、残存歯14a、14b・・・の平面円弧状のカーブと同一の曲率のカーブを以って形成されている。
【0020】
また、図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る連結部13の外表面には被覆部16が形成されている。本実施の形態に係る被覆部16は、金属製の連結部13の外表面にオペークを焼結することによって形成されている。
ここで、オペークとは、オペーク陶材とも呼ばれ、金属表面の酸化膜と結合した0.2〜0.3mmの被膜として焼結して形成される。
【0021】
また、図3に示すように、本実施の形態に係る連結部13には、両端部17、17から延設され、義歯床12a、12bの内部に固定される連結部固定部18、18が形成されている。図3に示すように、本実施の形態に係る連結部固定部18、18は、義歯床12a、12bを形成するPMMA(ポリメチルメタクリレート)等の加熱重合レジンや常温重合レジンに埋設されている。
【0022】
以下、本実施の形態に係る局部義歯10の作用について、添付図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る局部義歯10は、装着者の口腔内30に装着して使用する。この際、本実施の形態に係る局部義歯10にあっては、連結部13は前記装着者の残存歯14a、14b・・・の内側面15に沿って当接して固定されるので、局部義歯10を前記装着者の残存歯14a、14b・・・の内側面15に確実に固定することができる。
その結果、従来の局部義歯のように、軟組織である歯肉や口蓋に沿って配置固定されることがなく、舌が接触した場合の違和感を低減することができると共に、会話や発音に影響を与えることのない局部義歯を提供することができる。
特に、本実施の形態に係る連結部13は、残存歯14a、14b・・・の内側面15の表面形状と同一の形状に形成されているので、連結部13は、前記残存歯の内側面に当接し、その結果、連結部13を残存歯14a、14b・・・の内側面により確実に固定することができる。
【0023】
また、本実施の形態に係る連結部13は金属製であるので、連結部13が金属由来の十分な強度を有し、連結部13が破損するといった事態を防止することができる。
【0024】
また、本実施の形態に係る局部義歯10にあっては、連結部13の外表面は、被覆部16により被覆されるので、連結部13が外部から見えて目立ってしまうという事態を防止することができ、その結果、審美性を高めることができる。
【0025】
本実施の形態に係る局部義歯10にあっては、連結部13が金属製である場合を例に説明したが、前記構成に限定されず、連結部13がセラミックス製であってもよい。この場合には、連結部13がセラミックス由来の十分な強度を有し、連結部13が破損するといった事態を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係る局部義歯は、義歯の固定構造として広く使用することができ、産業上利用可能性を有している。
【符号の説明】
【0027】
10:局部義歯
11:人工歯
12a、12b:義歯床
13:連結部
14a、14b、14c、14d、14e、14f、14g、14h:残存歯
15:内側面
16:被覆部
17:両端部
18:連結部固定部
30:口腔内
図1
図2
図3